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空売りが活発な市場における 金融ショック伝播分析 13回人工知能学会金融情報学研究会 20141011八木 勲(神奈川工科大学) 水田 孝信(スパークス・アセット・ マネジメント株式会社) 和泉 潔(東京大学) 1

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空売りが活発な市場における 金融ショック伝播分析 第13回人工知能学会金融情報学研究会 2014年10月11日 八木 勲(神奈川工科大学) 水田 孝信(スパークス・アセット・マネジメント株式会社) 和泉 潔(東京大学)

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空売りが活発な市場における金融ショック伝播分析

第13回人工知能学会金融情報学研究会

2014年10月11日

八木勲(神奈川工科大学)水田孝信(スパークス・アセット・

マネジメント株式会社)和泉潔(東京大学)

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発表の流れ

はじめに

– 研究動機と先行研究

人工市場モデル

– 概要

– エージェントモデル

実験とその結果

– 市場価格変動とそのメカニズムについて

おわりに

– まとめと今後の課題

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研究動機

金融市場ではこれまでに大規模金融ショック(サブプライム問題,リーマンショックなど)が発生してきた.

平常時:

– 一般に,ある資産の価格は,他の資産の価格からの影響をほとんど受けることなく変動する.

→分散投資でリスク回避が可能である.

大規模金融ショック発生時:

– その悪影響はあらゆる市場に伝播し,全ての資産価格を一斉に下落させてしまう.

→分散投資によるリスク回避が困難となる.

これまでにもショックの伝播に関する研究は行われてきた.

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関連研究

Kyle ら[1]は,金融ショックにおける価格伝播は,逆資産効果によって起こると述べている.

Serguieva ら[2]は,ある金融市場でショックが発生したとき,金融市場間の価格変動に強い相関性があることを,人工市場にて再現している.

[1]: A. S. Kyle and W. Xiong, “Contagion as a Wealth Effect,” Journal of Finance, Vol.56, No.4, pp.1401--1440, 2001.[2]: A.Serguieva, F.Liu, and P. Date, “Financial Contagion Simulation through Modelling Behavioural Characteristics of Market Participants and Capturing Cross-Market Linkages,” in Proc. of CIFEr2011, pp.81--86, 2011.

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研究動機(cont.)

既存研究は金融ショック時の価格伝播の原因やそのときの特徴について議論している.

→そもそも金融ショックによる価格伝播が発生しない市場はあるのか?

本研究では,人工市場を用いて金融ショックによる価格伝播が発生しない市場がもつ特徴があるのかどうか,を確認した.

その結果,空売りが活発に行われている市場では発生しない可能性があることを発見した.

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人工市場とは

金融市場に対応したエージェントベースシミュレーションである.

以下の検証に有効である.

– 市場参加者(エージェント)の振る舞いと市場価格変動の因果関係.

– 市場に何らかの制約(市場規制等)を与えた時の市場への影響.

など.

1) Price Prediction

2) Order4) Evaluation5) Learning strategies(GA)

Price3)Transaction

Result ofTransaction

Agent 1 Agent 2

Agent N

Artificial market

Information(EconomicIndicator etc.)

t t+1

Trade

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提案市場モデル

高リスク資産(資産1)市場

ファンダメンタリスト30体

チャーティスト60体

ノイズトレーダー10体

注文

低リスク資産(資産2)市場

計100体

無リスク資産(Cash)

初期理論価格:どちらも1000

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エージェントモデル

ファンダメンタリスト チャーティストノイズ

トレーダー

リスク資産(資産1と資産2)保有割合の決定法

平均分散モデルに基づく ランダム

ボラティリティ 資産価格変動率の標準偏差

期待リターン 理論価格と直近資産価格の乖離率

資産価格の移動平均と直近資産価格との乖離率

注文価格の決定法 理論価格に基づく 将来割引価格に基づく

直近の資産価格に基づく

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提案市場の妥当性

TOPIX*Our markets

Asset 1 Asset2

Kurtosis of returns 11.67 7.33 9.38

Autocorrelation coefficient for square returns

Lag

1 0.27 0.25 0.16

2 0.23 0.08 0.22

3 0.24 0.06 0.07

4 0.17 0.04 0.03

5 0.16 0.06 0.01*: Tokyo Stock Price Index(16 May 1949 -- 4 April 2014)

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実験

一方の資産価格が急落したとき,他方の資産価格はどのような動きをするのかを確認する.

Step 1: 人工市場で取引を開始する.

Step 2: 第999期終了後に資産1の理論価格を半減させ

(1000 -> 500),資産1の取引価格を強制的に下落させる.

Step 3:このとき資産2の取引価格が下落するかどうかを観察する.

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実験結果

400500600700800900

10001100

990 992 994 996 998 1000 1002 1004 1006 1008 1010

Theoritical Price of asset 1 Price of asset 1Theoritical Price of asset 2 Price of asset 2

Fig. 1: The change in price of Asset 2 by comparing the price before and after the sudden drop in the price of Asset 1

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なぜ資産2は下落しなかったのか?

一般に,資産1の価格が急落したならば,

– 資産1を保有しているエージェントの総資産は大きく減少する.

-> リバランスのため資産2を売る.

例:資産1と資産2をそれぞれ50%づつ保有するとき

資産150%

資産250% 1 2 1

50%2

50%

資産1価格が急落

資産のリバランス

資産2を売却し,資産1を購入する.総資産

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なぜ資産2は下落しなかったのか?

一方,– 資産1を空売りしているエージェントの総資産は大きく増加する.

-> リバランスにより資産2を買う.

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例:資産1を50 %空売り,資産2を50%保有

資産1-50%

資産250% 1 2 1

-50%2

50%

資産1価格が急落

資産のリバランス

資産1を買い戻し,資産2を購入する.総資産

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なぜ資産2は下落しなかったのか?(cont.) この実験では,エージェントは資産保有と同じくらい活発

に空売りを行っている.

-> 全エージェントが保有する資産1の総数が,空売りされた資産1の総数とほぼ同数存在する.

-> リバランスのため売買される資産2は需給バランスがとれた状態となる.

-> 資産2の価格はそれほど変わらず.

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まとめと今後の課題

本研究では,金融ショックの伝播が発生しない市場の特性が存在するか調査した.

その結果,空売りが資産保有と同等に行われる市場においては,ショックの伝播は発生しない可能性をみつけることができた.

今後の課題としては,

– 更なるショック伝播が発生しない市場要因

– ショック伝播時における市場規制の効果性

の調査が考えられる.

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ご清聴ありがとうございました.

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