修士論文発表:Siegert状態による量子系の時間発展

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Siegert状態による 量子系の時間発展 周期的半サイクルパルス による調和振動子の励起 電子物性工学専攻 渡邊 信一 研究室 田名部 誠一 9934030

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Siegert状態による量子系の時間発展周期的半サイクルパルス による調和振動子の励起

電子物性工学専攻渡邊 信一 研究室

田名部 誠一た な べ 9934030

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Contents

3. 量子力学と古典力学との対応

4. イオン化可能性の考察

5. まとめ

1. はじめに

2. Siegert状態による量子系の時間発展

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対象• 原子を周期的な半サイクルレーザーパルスでキックする

キック!

1. はじめに

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半サイクルパルスとは?• 電場E(t)について半周期分しか振動しない

– 一方向へのキックになる

普通のパルス

t

E(t) 半サイクルパルス

t

E(t)

時間幅

• 周期的に発生させる技術の発達

– 原子内電子の軌道周期(10-16n3秒程度)に

較べて 短い時間幅のパルスも

1. はじめに

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背景• 主量子数nが数十~数百の高励起原子を、

半サイクルレーザーパルスでキックする実験が行なわれている

• 意外にイオン化しにくい安定な状態が存在

• 高励起原子に対応する簡単なモデルで計算

興味

1. はじめに

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調和振動子• 調和振動子(3次元球面波)を用いて理論的研究

– エネルギー準位が等間隔(2 )– 途中でポテンシャルを切る(イオン化の定義)

1. はじめに

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ヒルベルト空間

戻らない有限の基底で

張られる

有限空間(束縛状態)(連続状態)

• 有限空間で無限ヒルベルト空間を滑らかに近似

2. Siegert状態による量子系の時間発展

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Siegert状態• 調和振動子H0について

連続状態

束縛状態 励起

球面波的に外に出てゆく

ことを表現

• 他の計算方法

を満たす解

マスキング法

2. Siegert状態による量子系の時間発展

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用いるハミルトニアン• 簡単のためキックをデルタ関数(t)にする

• ここではm,,を1とした単位系とする

調和振動子H0 キックHKick

• 運動量移行p 2(a.u.)で1準位の遷移

2. Siegert状態による量子系の時間発展

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パラメータについて• キックの間隔(周期)T

p=0.56(a.u.)

r0=10(a.u.)

T=0.1(a.u.)

• 運動量移行p– エネルギー変化に関係

• 距離のイオン化しきい値r0– イオン化ポテンシャルEionと、

– 束縛状態の数に関係

2. Siegert状態による量子系の時間発展

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時間発展• 波動関数に時間発展演算子U(T)を作用

U(T) (r,t) = (r,t+T)

• キックの効果も取り入れる

時間発展 時間発展キック

2. Siegert状態による量子系の時間発展

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波束の時間発展Siegert状態

マスキング法

r0

2. Siegert状態による量子系の時間発展

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生存確率• 束縛状態に残っている確率

連続状態

束縛状態

2. Siegert状態による量子系の時間発展

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生存確率の時間変化

生存確率

時刻 t (a.u.)

キックの間隔運動量移行

イオン化しきい値

Siegert状態

他の方法(量子力学)

古典力学

2. Siegert状態による量子系の時間発展

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生存確率の振る舞い• 量子力学計算では周期的に生存確率が低下する

– 波束が時間の関数として広がるので、r0近辺で外に出る

– 量子効果(しみ出し)として現われている

• Siegert状態を用いた計算:滑らかに低下

• 古典力学については一度下がるのみ

2. Siegert状態による量子系の時間発展

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古典力学計算• 初期条件アンサンブルの決定(r,p)

– 量子力学的確率分布関数を用いてランダムに決定

• 時間発展とキックを繰り返す

– 位相空間上に軌跡を描く

3.量子力学と古典力学との対応

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漸化式• 時間発展 rn+1 = rncosT + pnsinT

pn+1 = -rnsinT + pncosT

• キック pn+1= pn+1 +p

3.量子力学と古典力学との対応

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イオン化と生存確率• イオン化の定義

r > r0

• 古典力学的生存確率

3.量子力学と古典力学との対応

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位相空間の例• 調和振動子の軌道周期()に比べ、キック周期Tが小さいとき

距離 r (a.u.)

T=0.1 (a.u.)p=0.56(a.u.)イオン化する場合

イオン化しない場合

キックがないときの軌跡

3.量子力学と古典力学との対応

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量子力学と古典力学

• 古典力学での粒子の運動

– 位置と運動量が決まっている

不確定性原理

• エーレンフェストの定理– 波束の中心の運動は古典力学に従う

• 量子力学での「粒子」の運動

– 位置と運動量が同時に定まらない

3.量子力学と古典力学との対応

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伏見表示• 波動関数(r,t)から位置と運動量の情報を得る

• 不確定性原理を考慮

– 局在したガウス型の波束に射影(粗視化)

3.量子力学と古典力学との対応

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T = 0.1 (a.u.) p = 0.56 (a.u.)Siegert状態 マスキング法

3.量子力学と古典力学との対応

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量子・古典間の対応3.量子力学と古典力学との対応

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キック周期による生存確率の違い• 古典共鳴周期では少し生存確率が低い

4.イオン化可能性の考察

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位相空間を描く軌道• キック周期Tが()の有理数(k/n)倍付近

k/nの共鳴

• 初期条件によりいずれかを描く

a. 安定なトーラスが位相空間上に形成

• 一つの楕円

• いくつかの「安定な島」

b. 共鳴による複雑な図形(トーラスの補空間)

• 「不安定な海」

4.イオン化可能性の考察

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a. 安定なトーラス

4

0 2 4 6 8

0

2

-2

-4位置 r (a.u.)

T=1.1(a.u)~π/3(a.u.)

Δp=0.56(a.u.)

• イオン化に寄与しにくい

r < 10 (a.u.)

4.イオン化可能性の考察

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b. トーラスの補空間T=1.1(a.u)~π/3(a.u.)

Δp=0.56(a.u.)

• イオン化に寄与しやすいp

r

r0=10(a.u.)

r > 10 (a.u.)

4.イオン化可能性の考察

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生存確率の振る舞い

• 量子力学計算:生存確率が より減少

T = 1.1 (a.u.)Δp = 0.56 (a.u.)

キックの回数0 1000 2000

1

0.99

0.98

0.97

トンネル効果

量子力学計算(Siegert状態)

古典力学計算

4.イオン化可能性の考察

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100000パターン

10000パターン

T = 1.1 (a.u.)Δp = 0.56 (a.u.)

キックの回数0 1000 2000

1

0.99

0.995

4.イオン化可能性の考察

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まとめ• 高励起原子に対応する簡易なモデルを構築し、Siegert状態を使用して量子力学的計算をした。

• 比較のため、古典力学的計算も行った。

• イオン化しやすい条件としにくい条件が存在することがわかった。

5.まとめ