しゃじくも · 2016. 6. 24. · しゃじくも 車軸藻類の保全をめざして しゃじくもレッドリスト ★絶滅種 培・・・ 5種類(種類とはここでは種や変種などのこと*)
SHIMADZU APPLICATION NEWSM. Sugioka...
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分析計測事業部グローバルアプリケーション開発センター
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0120-131691(075)813-1691
島津コールセンター
アルコール飲料の中でビールは人気が高く消費量が多いも
のですが,昨今ではビールに似た風味を備えた発泡酒やノン
アルコールビールなども発売され,市場は賑わいを見せてい
ます。ビール,発泡酒,ノンアルコールビールを “ ビール類 ”
と呼ぶことにすると,これらビール類では原料や成分に変化
を加え,アルコール度数やカロリー等を調節したものが多数
販売されています。分光分析の観点から見ると,成分の種類
や量が異なるビール類はその違いを反映した特有の吸収スペ
クトルを示すと考えられますが,実際にどのような相違が見
られるかを調べることはたいへん興味深いことと言えます。
今回,紫外可視近赤外分光光度計 UV-3600 を用いて様々
なビール類を測定し,その吸収スペクトルの差異を確認しま
したので紹介致します。また多変量解析を用いてビール類の
分類を試みましたので合わせて報告致します。
M. Sugioka
UV-3600 を用いて市販のビール類 14 種(ビール 4 種,発
泡酒 6 種,ノンアルコールビール 4 種)の吸収スペクトル
を測定しました。超音波を 3 分間照射し脱気してから光路長
2 mm の石英セルを用い Air をブランクとして測定しました。
測定結果を Fig. 1 に,分析条件を Table 1 に示します。さら
に紫外域(230 ~ 400 nm)と近赤外域(1400 ~ 1500 nm
と 1650 ~ 1750 nm)を拡大した図を Fig. 2 ~ Fig. 4 に示
します。Fig. 3 の 1450 nm 付近の大きなピークは主に水の
吸収によるものであり,Fig. 4 における 1695 nm 周辺のピー
クは主にエタノールの吸収によります。参考として水とエタ
ノール(99.5 % 濃度)の吸収スペクトルを Fig. 5 に示します。
矢印で示した 1450nm 付近のピークは Fig. 3 のピークに対
応し,1695 nm 付近のピークは Fig. 4 のピークに対応して
いることがわかります。
今回のデータでは紫外域で信号が飽和しているため,全試
料を純水で 5 倍に希釈し,紫外域(230 ~ 400 nm)の吸収
スペクトルを再度測定しました。その結果を Fig. 6 に示しま
す。250 ~ 300 nm に見えるピークは,主にビール類に含ま
れる蛋白質の吸収によると考えられます。
■試料と測定結果Sample and Instrument
Fig. 1 ビール,発泡酒,ノンアルコールビールの吸収スペクトル (太線:ビール,細線:発泡酒,点線:ノンアルコールビール)
Absorption Spectra of Beers, Low-malt Beers and Non-alcoholic Beers(Thick Line: Beers, Thin Line: Low-malt Beers, Dotted Line: Non-alcoholic Beers)
nm230.0 500.0 1000.0 1500.0 1900.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
Abs.
Table 1 分析条件Analytical Conditions
使用装置 : 島津紫外可視近赤外分光光度 UV-3600測定波長範囲 : 230 nm ~ 1900 nmスキャンスピード : 中速サンプリングピッチ : 1.0 nm測光値 : 吸光度スリット幅 : 3 nm検出器切替波長 : 870 nm, 1650 nm
試料に含まれるアルコール量は,ビール:5 %,発泡酒:
3 % ~ 5.5 %,ノンアルコールビール:0 %,また蛋白質量
は 100 mL 中でビール:0.2 ~ 0.4 g,発泡酒とノンアルコー
ルビール:0 ~ 0.3 g となっています。商品ラベルにはこれ
らの範囲に含まれる “ ある値 ” や “ 範囲 ” として記されてい
ます。本データにおける紫外域と近赤外域での吸収の大きさ
は,蛋白質とアルコールのそれぞれの含有量を凡そ反映した
ものになっています。
ApplicationNews
No.A447
LAAN-A-UV033
ビール類の分光分析と多変量解析を用いた分類Spectroscopic Mesurement and Multivariate Analysis to Classification for Various Kinds of Beer
光吸収分析Spectrophotometric Analysis
-
ApplicationNews
No.
nm230.0 250.0 300.0 350.0 400.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
Abs.
Fig. 2 Fig. 1 の拡大図(230 ~ 400 nm) (太線:ビール,細線:発泡酒,点線:ノンアルコールビール)
Expanded Spectra of Fig. 1 (230 ~ 400 nm)(Thick Line: Beers, Thin line: Low-malt Beers, Dotted Line: Non-alcoholic Beers)
Abs.
nm230.0 500.0 1000.0 1500.0 1900.0
3.0
2.0
1.0
0.0
Fig. 5 水とエタノールの吸収スペクトル(青線:水,赤線:エタノール)Absorption Spectra of Water and Ethanol (Blue Line: Water, Red Line: Ethanol)
Abs.
nm230.0 250.0 300.0
1.5
1.0
0.5
0.0400.0350.0
Fig. 6 5 倍に希釈した試料の吸収スペクトル (太線:ビール,細線:発泡酒,点線:ノンアルコールビール)
Absorption Spectra of 5 times diluted Samples(Thick Line: Beers, Thin Line: Low-malt Beers, Dotted Line: Non-alcoholic Beers)
Abs.
nm1400.0 1420.0 1440.0 1460.0 1480.0 1500.0
3.0
2.8
2.6
2.4
2.2
2.0
ノンアルコールビール 発泡酒
ビール
Fig. 3 Fig. 1 の拡大図(1400 ~ 1500 nm) (太線:ビール,細線:発泡酒,点線:ノンアルコールビール)
Expanded Spectra of Fig. 1 (1400 ~ 1500 nm) (Thick Line: Beers, Thin line: Low-malt Beers, Dotted Line: Non-alcoholic Beers)
nm1650.0 1660.0 1680.0 1700.0 1720.0 1740.0 1750.0
Abs. 0.7
0.6
0.5ノンアルコールビール
発泡酒ビール
Fig. 4 Fig. 1 の拡大図(1650 ~ 1750 nm) (太線:ビール,細線:発泡酒,点線:ノンアルコールビール)
Expanded Spectra of Fig. 1 (1650 ~ 1750 nm)(Thick Line: Beers, Thin Line: Low-malt Beers, Dotted Line: Non-alcoholic Beers)
A447
-
スコア
PC-1 (94 %)
PC-2 (5 %)
C3
C1 C4
B4
B5
B3
B6
A4
A3 A1
A2
B1B2
C2
-4 -3
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
-0.2
-0.4
-0.6
-0.8
-1-2 -1 0 1 2 3 4 5
発泡酒
ビール
ノンアルコールビール
Fig. 7 スコアプロットScore Plot
Fig. 8 A1 と A3,C1 と C2 の吸収スペクトル (赤線:A1,青線:A3,黒線:C1,緑線:C2)
Absorption Spectra of A1 and A3, C1 and C3(Red Line:A1, Blue Line: A3, Black Line: C1, Green Line: C2)
Abs.
nm230.0 250.0 300.0 350.0 400.0
1.5
1.0
0.5
0.0
Fig. 9 ローディングプロットLoading Plot
ローディング
1400 ~ 1480 nm
230 ~ 300 nm
PC-1 (94 %)- 0.1 0.1
0.1
0
0
- 0.1
PC-2 (5 %)
多変量解析を用いてビール類の分類を試みました。5 倍希
釈の吸光度データ(230 ~ 400 nm)と希釈無しの吸光度デー
タ(401 ~ 1870 nm) を 用 い て, 主 成 分 分 析(PCA) を 行
いました 1)。得られたスコアプロット 2)を Fig. 7 に示します。
A がビール,B が発泡酒,C がノンアルコールビールに対応
します。A, B, C の各試料でグループを形成していることが
わかります。スコアプロット上において近い点ほど “ よく似
た試料 ” となります。例えば,A1 と A3 や C1 と C2 は似て
いると考えられますが,Fig. 8 に示したそれらの紫外域のス
ペクトルを見ると互いによく似ていることがわかります。
Fig. 9 にローディングプロット 3)を示します。ローディン
グプロットを見ることで分類された各グループの特徴を把
握することができます。Fig. 9 を見ると,中心から右(また
は右上)方向に紫外域のデータ成分に対応するローディン
グベクトル 3)成分が多くプロットされています。そのこと
は,Fig. 7 のスコアプロットで右方向にプロットされた試料
ほど紫外域の吸収が大きいことを意味します。実際その方向
にある A1 ~ A4(ビール)は,Fig. 6 を見ても紫外域の吸光
度が高いものになっています。また Fig. 9 のローディングプ
ロットで,中心から左上方向に水の吸収に対応する 1400 ~
1480 nm のローディングベクトル成分が多くプロットされ
ています。このことはスコアプロットで左上方向にプロット
されている試料ほど,純水に近い(アルコール分の少ない)
試料であることを意味します。実際その方向にある C1 ~
C4(ノンアルコールビール)は,Fig. 3 を見ても水の吸収に
対応する 1450 nm 付近の吸光度が高いものになっています。
以上より,スコアプロットの右方向ほど主に紫外域の吸光
度が高い試料が,また左上方向ほどアルコール分が少ない試
料がプロットされていると言うことができます。表現を変え
ると,スコアプロット上で右方向に位置する試料ほど蛋白質
等の有機物を多く含み,また左上方向に位置する試料ほどア
ルコール分の少ない試料であるということができます。B1
~ B6 の発泡酒は,紫外域の吸光度がそれほど高くなく(ノ
ンアルコールビールと同程度),アルコール分はビールと同
程度のものも多いことから,スコアプロット上で左下方向に
位置していると考えられます。
■多変量解析を用いたビール類の分類Classification for Various Kinds of Beer by Multivariate Analysis
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島津コールセンター
ApplicationNews
No.
3100-07203-560-IK2012.7
初版発行:2012年7月
今回,ビール類の吸収スペクトルを見ることで,アルコー
ルや蛋白質等の含有量の相違を確認することができました。
また測定データに多変量解析を適用することで,ビール類を
種類によって各グループに分類し,それらの特徴を把握する
ことができました。食品の開発・研究においては多数の商品
を比較検討する必要がありますが,主成分分析(PCA)を用
いると試料間の類似度を把握することができます。今回の結
果は,分光分析と多変量解析の組み合わせがビール類を含む
食品の開発に有効であることを示唆していると考えられま
す。
■まとめSummary
1) 多 変 量 解 析 ソ フ ト ウ ェ ア The Unscrambler® を 用 い て 計 算 を 行 な い ま し た。The Unscrambler は CAMO 社 の 商 標 ま た は 登 録 商 標 で す。 なお,本解析に関してはデータに対し中心化(mean centering)を行い主成分分析を行いました。
2) スコアプロットとは,多次元空間中に表現された各試料の点を二つのローディングベクトル上に射影し,2 次元グラフとして表現したものです。ローディングベクトルに関しては下記 3)を参照下さい。
3) ローディングプロットとは,第一主成分,第二主成分(あるいは他の主成分の組み合わせ)の各ローディングベクトルの対応成分を 2 次元座標にプロットしたものです。ここでローディングベクトルは,データ行列に対し固有値計算を行うことにより得られるベクトルです。
A447