SFI研修会資料 55 - kohwa-shoji.co.jp

12
1 SFI研修会資料 55 東日本大震災後の製造ラインの復旧 (富士通アイソテック/日経エレクトロニクス)

Transcript of SFI研修会資料 55 - kohwa-shoji.co.jp

1

SFI研修会資料 55

東日本大震災後の製造ラインの復旧(富士通アイソテック/日経エレクトロニクス)

2

SCM概要

4

SCMは「必要なものを、必要なときに、必要なところに、必要な量だけ」届けるためのサプライヤーから最終顧客までの業務を効率的に行なう仕組みを構築すること。売れるものは確実に供給して「売り逃がし」を防止し、一方売れないもの滞留して「過剰在庫」となることを防ぐ ①

サプライチェーン・マネジメント(SCM):SCに関する企業活動の管理手法の一つ。取引先との間の受発注、資材の調達から在庫管理、製品の配送まで事業活動の一貫したSCの事業活動をIT技術を使って総合的に管理。余分な在庫を削減し、欠品を防ぎ、コストを引き下げる効果がある。川上から川下までの生産・供給プロセスが整流化されることで、ビジネススピードが向上するため、競争力強化も図れる

図55-1 SCの3つの流れ(SFI 26/物流より)

サプライチェーン(SC):製品の流れの下流側からみて、顧客-小売業-卸売業-製造業-部品・資材サプライヤー等の供給活動の連鎖構造をいう。東日本大震災では物流を中心とした連鎖の流れの阻害がクローズアップされたが、従来は製造業等の一企業内部での資材調達から製品納入のラインもSCとして注目されている

図55-2 企業内・企業間SCのイメージ (日本ビジネスクリエイト)

印: 当社の位置づけ

(流通) (販売)

SC事業の流れ

3

SCMの目的 SCMの狙いはサプライチェーン全体で改革し、儲けを最大化すること。顧客を出発点とし、経営戦略と連動し、ITの最大活用を通じて、サプライチェーン全体の最適解を追求する。作り過ぎと欠品をできる限り抑えることにより、最大の利益を確保する。「後工程はお客様」「JIT」「かんばん方式」等はこの概念の一環

図55-3 SCMの狙い ⑩

1.売り上げの最大化

欠品売り逃し防止、売残り滞留品を最小化する

a.売れ筋商品は何かを的確につかみ、その補充・供給をタイムリーに行なうb.供給のリードタイムに併せた需要予測精度の向上

2.在庫の適正化

在庫を調整し、過不足を最小にする

a. 顧客ニーズの発生に対応できる必要最小の在庫量を決定b.原料倉庫、工場、営業倉庫、店舗の各ステージでの適正な在庫量を決定

3.コストダウンの追及

無駄な在庫、輸送を避けてコストダウンを図る

a.在庫による倉庫保管料、金利、長期保管による評価損、廃棄損失の低減b.運行回数と積載効率、輸送手段の選択、3PLの適用等の物流の最適化

4.供給スピード 業務スピードアップでサービス向上と在庫減達成

a.物流方式の最適化で、供給、補修のスピードを改革し、顧客評価を高めるb. 業務計画の見直しサイクルをきめ細かくし、需要・市況の変動に即応

5. キャッシュフローの増大

無駄な在庫・経費を削減する a.在庫品は売れて初めて現金化。売れない在庫は黒字経営も圧迫b.輸送効率、返品の改善で無駄なキャッシュ流出に歯止め

図55-4 キャッシュフローの増大 ①

図55-5 コストダウンの徹底追及

表55-1 SCMの導入目的

在庫の費用:在庫製造費、倉庫賃貸料、評価減、在庫減耗損、廃棄処理費、輸送費付帯経費:保険料、人件費、水光熱費、固定資産税、立替金利

在庫最適化、輸配送効率化でコスト削減

4

ロジスティクス ロジスティクスはもともとは兵站(戦場への弾薬・兵糧などの物資輸送)の意味。ビジネスではビジネスモデル(戦略図)を実現するモノの生産、調達、保管、輸送に関する仕組みづくりで、SCMの重要な要素の一つ

販売物流=顧客へのサービスレベルが最大化するように構築。 販売拠点と倉庫拠点の配置、輸送ルート、輸送モードを計画。JIT納入を求める製造業の顧客には納入応答性が高まる場所に納入倉庫を配置する調達物流=生産や販売に使う資材の調達に関係し、コスト最優先。自社工場への納入輸送、在庫の倉庫配置と輸送などがある。通常、サプライヤー側が受け持つ回収物流=製造ラインで発生した不良品、整備交換部品、医療器材の回収・適正処理が対象。回収品の発生時期・量の予測が難しい

JIT(Just in Time):部品、場所、タイミング、量をニーズに合わせて調達する形態。滞留する在庫をなくし在庫コストの削減を目指す。サプライヤーがJIT対応のために事前に生産して在庫として保管すれば、全体最適のSCMコンセプトにそぐわない

VMI(Vendor Managed Inventory):サプライヤー(=Vendor)が自己の責任でその納入先の在庫を管理する手法。この在庫品はサプライヤーの所有とする。デルコンピュータはこのVMI方式で急速に業績を伸ばした。多くの物流企業では複数のサプライヤーが共通して利用できるVMI倉庫を提供している

図55-6 かんばん方式概念図 (トヨタ)

かんばん方式:量販店等で使用の商品名、品番、置き場所など、商品に関する情報が記載されている商品管理用をトヨタでは「かんばん」と称し、生産工程管理に使用。後工程が前工程に部品を調達しに行く際に、使われた品番を相手に伝える道具として利用

図55-7 VMI倉庫の例 (安川ロジステック)

仕組みづくりの制約条件

1.既存の工場(新工場建設の制約)、2.既存の販社、代理店の存在(切換えの制約)、3.倉庫、小売店の有無

物流体制の構築-目的に合わせたロジスティクスを構築

5

在庫の適正化-過剰在庫は資金繰りを圧迫。 欠品は顧客の要求に応えられず、売上げ機会の損失

SCの各段階(素材、中間製品、出荷前完成品)トータルで必要最少限の在庫を確保

ビジネスモデル:企業が収益を上げるためのビジネスのあり方を定義すること。ビジネスモデルは戦略図である

SCMを構成する企業・組織:企業構成としては最終顧客の側からみて; 小売・代理店、卸・商社、製品の製造業、部品の製造、原材料業者業、最近はリサイクル品の引き取り業者も注目。各企業・組織をつなぐ物流業者として、倉庫業、輸送業、通関業者などがある。企業内では営業、生産、調達、物流、その他多くの部門が関係

図55-8 SCMを構成する組織と業務 ①

図55-9 SCMとビジネスモデル (三菱商事)

1.顧客-対象とする顧客を明確にする <個人、民間企業、公的機関、販社(小売、出し利点、商社)、製造業>2.売り方-在庫販売か受注生産か、直接販売か間接販売(小売店、代理店)か。 需要情報の取りやすさが重要3.つくり方-見込み生産方式か受注生産方式か、自社生産か外注委託か4.届け方-顧客の近くに在庫するか工場近くに在庫するか、顧客が持ち帰るか(コンビニ方式)届けるか。配送は空輸か、海運か、配送会社へ委託か

ビジネスモデルの構成項目

SCMを構成する業務の仕組み:業務の土台となる物流のインフラと計画、実行、評価の3業務がある ①

計画業務-企業の収益構造を決定づける。長期計画(設備投資、開発計画)、月次計画(生産計画、調達計画など)実行業務-計画業務の範囲内で実行。部材購入、製造、在庫評価業務-計画との差異、目標の達成度を評価

構成業務

情報の共有化:SCMの観点で企業がそのサプライヤーと実施すべき情報の共有は、計画情報、在庫情報、納期情報、能力情報、品質情報などがある

実行業務 評価業務計画業務

設備投資開発計画販売計画生産計画調達計画人員計画

受注出荷配送部材納入製造

計画との差異目標の達成度

物流インフラ

工場ライン設備、倉庫設備、トラック、工場拠点配置、倉庫配置、物流ネットワーク

SCMを構成する業務

6

図55-11 DBRのイメージ(飯塚革新コンサルティング)

SCM業務全体像 自己の仕事は前後の間に存在しており、前工程で処理された仕事に自分の仕事で付加価値をつけて後工程に流す。どのような仕事のやり方がベストの価値を生むのかを理解することによりSCMの効果を高める。商社の活動も、伝票処理も同様の考え方が大切

SCMの発想で仕事の渋滞を解消:キーワードは連鎖(仕事は前後工程の間に存在)、バランス(何を重視、どこまえやるか)、全体最適(SC

全体での仕事の進め方)、ベンチマーキング(他人よりも劣る部分を知る)、サービスレベル(求められる品質と使う時間)、アウトソーシング(適性を見て得意な人にまかせる) 等

制約理論(TOC):SCの障害となる「制約条件」を見出し、その障害を修正、強化することで全体の効率と収益の向上を図る経営手法 ④。 制約条件の設備の能力を上げると、次は別の設備が制約条件となり、制約条件は移動する

キャッシュフロー:低成長期には大量生産による過剰在庫は資産ではなく経営圧迫の要因となる。そこでSCMではキャッシュフローに着目。キャッシュは企業活動で生じるお金で、在庫を少なく商品がよく売れればキャッシュは増える

SCMの基本コンセプト:全体最適:全体を巨視的にみてその状態をベストにする。部分最適の総和は必ずしも全体最適にらない。自動車メーカの無在庫生産システムも部品メーカがそのために在庫の山となっては全体システムの競争力アップとはならない

「見える化」:組織の業務で管理、作業など見えにくい部分を可視化するために、客観的な尺度を使って数値化し、組織内で共有・管理できるようにする。需要情報と供給情報を把握し、その変化の異常、需給バランスの異常を早期に把握し、その影響を検証したうえでアクションが取れる仕組みを構築することを目指す

図55-10 考慮すべき制約条件 ②

ドラム・バッファー・ロープ/DBR:制約理論において、スループットを最大化するために行進の人を互いに『ロープ』で繋げて行列の全体の長さを規定する概念。進むスピードを最も遅い人に合わせて『ドラム』を鳴らし、全体の同期をとる。一方で、『ロープ』をある程度長くすることで前後の距離(『バッファ』)をとり、最も遅い人の前を進んでいる人が何らかの理由で遅れても、前にぶつかることを防ぐ

制約条件の例

物理的な制約 生産能力(設備、人員、治工具、金型)、部品確保数量、原材料確保、数量、輸送数量の上限、倉庫保管数量の上限など

時間的な制約 賞味期限、使用期限 など

法律上の制約 事業認可、環境規制 など

会社の方針 事業規模、ルール など

●考慮すべき制約条件はどれか?●必須の制約と必須でない契約は?●制約に依存関係はあるか?●制約に考慮すべき順序はあるか?

ドラム 制約工程を特定し、その工程をフル活用する生産スケジュールのこと

バッファー 制約工程が受注変動に左右されないように保護時間を設定する

ロープ 制約工程に同期した部材の配当計画のこと

7

図55-13 SCMの流れの中の情報取得ポイント (日本オラクル)

RFIDの活用 RFID(Radio Frequency Identification/ICタグ):単品品物、一括箱入りの品物を現場管理するもので、原材料、製造情報の上書きが可能で、製造ラインや物流の正確・迅速なトレーサビリティの仕組みができる

SCMや物流では、RFIDを積極的に活用して業務改善を進め、多くの場所で情報収集が行われている。 ISOではSCの管理モデルを6つに定義し、それぞれの階層において、RFIDを活用して効率的に管理する (日本オラクル)

図55-12 物流における階層別RFID活用 (日本オラクル)

RFIDにより自動的に実績データをすべて取得することで倉庫内、工場内の在庫だけでなくSCM内を移動する物流在庫の完全な把握ができるようになる。取得した実績データは一元的に管理し、そのデータからあらかじめ設定しておいたKPI(重要業績評価指標)と照らし合わせる (日本オラクル)

SCの中でのRFIDの活用のメリットが注目され、導入が進んでいる。1つの企業内のSCを別の企業のと連携させることが普及しつつある。米国ではWal-MartやBestBuy、日本の家電量販店その他多くの企業で、サプライヤーに対してRFID

を付けて納品するように要求している (日本オラクル)

SCM全体の流れとしては、はすべての情報を受注番号に

ひも付け、それぞれの業務プロセスを細かく分けて、実績データを各プロセスの最初と最後に取得している。RFID

やバーコードを活用しデータを効率的に取得する①-⑥:情報取得ポイント

サイクルタイム、コスト、紛失、ミス、破損

8

BCP BCP(Business Continuity Plan)/事業継続計画):企業が大地震、大火災、テロ、新型インフルエンザの流行に社員が感染などの緊急事態に遭遇した場合、事業資産の損害を最小限にとどめ、中核事業の継続や早期復旧を可能とするために、平常時の備えとして、事業継続のための方法、手段、緊急事態における復旧までのプランなどを決めておく計画(経営用語集)

図55-15 中小企業BCP策定運用指針 (中小企業庁)

東日本大震災発生では多くの企業で製品・サービスを供給するSCが寸断され、事業継続が危ぶまれる事態に陥った。危機に切れないSCを作るBCPは喫緊の課題。大震災による大混乱の要因は、1.部品等で極めて高い市場シェアを持つメーカの工場が被災してその供給量が激減したこと、2.代替品にすぐ移行できないカスタム部品を製造する工場が被災したことである。復旧後各社は再発防止のために種々の対策を取込んでいる ⑮ メーカ-では部品の共通化、社外を含めた製造拠点の多重化、供給網の可視化などの対策がとられつつある ⑮

経済産業省の「事業継続ガイドライン第二版(2009年)」-BCP作成に当たっての検討項目はSCMの確保に加えて「指揮命令系統の明確化」、「重要拠点の機能確保」、「対外的な情報発信および情報共有」、「情報システムのバックアップ」を挙げている

BCP と SCM:SCM は、SCを構成する企業全体で経営効率を追求する経営管理手法で、構成する一企業の事業中断が、他の企業の事業中断へと波及する。そこで自企業だけで はなく、SC構成の全企業で BCP を構築する必要がある(経済産業省)

図55-14 BCPの概念(内閣府 BCP策定促進方策に関する検討会第二版)

トヨタでは平素からサプライヤーとあらゆる問題の可能性について早い時期から連絡を取り合う態勢を築いている

SCの問題を明確化するには、実際に事件が起きる前に潜在的危機の早期発見も重要。 たとえば;

●部品発注部門が輸送の遅れに気づく●部品管理部門が部品不良率の突然の変化に気づく●購買担当部門がサプライヤーの定期検証中に深刻な財務状況悪化を発見●マスコミが自然災害やテロの発生を伝える 等

サプライヤーの管理/村田製作所:東日本大震災では複数の一次サプライヤーと契約していても、その先の二次、三次サプライヤーの被災で各一次サプライヤーの生産がストップするケースが顕在化した。同社では大震災後一次サプライヤーの情報に加えてその主要部材を生産する二次サプライヤーの情報も盛り込んだデータベースを構築

震災後の取り組み強化の例:

9

SCM支援システム

WMS(Warehouse Management System/倉庫管理システム):倉庫や物流センターを効率的

に運用していくための倉庫管理情報システム。入出庫、ロケーション、在庫、ピッキング、流通加工、検品など作業を効率的に進める上で必要になる情報を統合管理する情報システム。在庫品には検査中のものもあり、WMSでは仕掛りとして区別するがMRSでは完成品として扱われ、システム全体での区別を明確にしておくことが必要 ①

SCMの効率的な運用のため各種の支援の自動化システムがIT企業により開発・販売されている。SCMのチェーンを中核的に担う企業は数億円以上を費やしてこれを購入したが、必ずしも永続きしていないものもある

SCP(Supply Chain Planning):自動最適化計算法として2000年頃から導入。あらゆる制約条件を一気に計算し、全体を一括で自動最適化できるというもの。複数の拠点、組織、製品意を戦略的に計画・調整する「意思決定マネジメント」は必ずしも数学的な最適解では及ばない領域であり、現在は下火 ①

MRP(Material Requirement Planning/資材所要量計算システム):生産計画に基づいて必要な部品の数量計画を行なう。MRPを実行するには部品構成を示すBOM(Bill of Material

/部品表)が必要。在庫の現品管理、生産進捗管理、工程管理の体制が出来上がっていることが前提 ①

ERP(Enterprise Resource Planning/統合基幹システム):会計、在庫、販売、生産、調達などの指示情報、実績情報を蓄積した巨大なデータベースで、Planning(計画用)のシステムではなく指示と実績の機能を担うシステム ①

MES(Manufacturing Execution System/製造現場統合データベースシステム):MESは生産現場への作業指示と実績収集を行なう。作業指示には在庫引当て、製造指図、出庫指図など、実績収集としては機器からの実績自動取込み、バーコード確認、出庫確認、作業・製造電子記録、詳細稼動実績分析、進捗管理などがある。 MRP(ERP)では原価計算のための所要量展開、MESは作業指示用の所要量展開という分担になる ①

MRPⅡ(Manufacturing Resource Planning / 製造資源計画):製造業において資材、人員、設備、資本など、すべての資源要素を管理対象として、MRPの資材所要量計画に加えて、資材以外に労働力配員計画、資金所要量計画、ロット管理、オーダー管理など、製造に必要な資源計画や管理を統合的に行う仕組み、もしくはシステム (注:MとRはMRPのMaterial Requirement

とは異なる)

図55-17 SCMと関連支援システム ①

経費伝票経理伝票

受注伝票出荷伝票請求書

製造指図

入庫伝票出庫伝票

発注伝票検収伝票請求書

給与伝票

配属伝票

図55-16 ERPの業務範囲 ①

在庫データの「正」はWMSにあり、各システムん在庫データが提供される

10

グリーンSCMSCM目的はコスト、効率など経済効果を最大化であるが、近年の地球温暖化問題にも配慮して「環境負荷低減、CO2削減」の指標を取込む必要性が出てきた

SCMは原材料の調達、製造、包装、販売の供給ライン(動脈物流)の効率化を狙い、その環境対策取込みを「グリーン物流」という。さらに消費された後の回収、廃棄に至るまでのSC上の活動で環境負荷低減を目指す「静脈物流」を包含することが大切

設計・製造過程の見直し 製造・流通・使用の各段階で消費エネルギーが小さくなる環境に配慮した製品を設計、汚染物質や有毒物質、排ガスなどの削減等の製造工程での取組み

グリーン・サプライヤーの起用 環境負荷の小さなサプライヤー(仕入先)や部材に切り替えること

移動距離・輸配送経路の短縮

調達・製造・流通のネットワークを販売市場を基点に合理的に見直し、移動距離を短縮、最適な輸配送経路と輸送手段を計画

サービス・レベル契約の見直し サプライヤーに要求する納品頻度やリードタイムなどのサービス・レベルのニーズ以上の過剰を防止

小さな梱包 新しい梱包材や設計により出荷品の体積を減し、トラックにより多くの荷物を積めるようにする

まとめ出荷 出荷をより小頻度・多量にするように在庫レベルなどを慎重に検討

パートナーとの協業 より環境に配慮したSC構築には、上流と下流両方のパートナーと慎重に協業することが必要

製品ライフサイクル、リバースSCの計画

リサイクルやリユース、修理・点検などにかかるコストを分析し改善機会を見つけ、製品の回収や改良、修理などの必要性発生を前もって計画・準備

グリーンSCM戦略の立案 まず自社内でコントロールできる部分からスタートし、その後に上流・下流に対象を広げていく

表55-2 環境配慮型SC構築のポイント (IBM資料より集約)

図55-18 共同配送とリターナブル資材活用のグリーンSCM概要図(ヤマトシステム開発)

グリーン物流パートナーシップ会議:国土交通省が経済産業省、(公益)日本ロジスティクスシステム協会、(社)日本物流団体連合会、日本経済団体連合会と連携して、2005年4月に設立。荷主企業や物流事業者が単独では困難なグリーン物流の実現を目指して産業横断的に協働してグリーン物流を進めて行こうとするもの。登録会員数は約3200社

11

バリューチェーンバリューチェーン(VC):マーケティング、製造、輸送、販売、サービス等企業活動を技術的、経済的に複数の活動に分割するとそれぞれが付加価値を発生させており、その価値活動を結びつけた価値連鎖のこと。企業の利益はこの価値発生と価値活動のコストの差額と考え、付加価値を高める「差別化戦略」か、価値活動の低コスト化を図る「コストダウン戦略」のいずれかが必要。SCMを理解する上でも重要な概念

プロフィット・プール:ある産業のVCの中のすべての事業分野で獲得した利益の総和 ⑨

各価値活動はIT革命で差別化の強化が進み、SCM構築で生産・物流のコスト削減が進んだ。バリューチェーン・マネジメント(VCM)ではこのトータルの業務の仕組みづくりを直したり、事業の重点分野をシフトしたりする

図55-20 アメリカ自動車産業のプロフィットプールの例 ⑨

VCはM.ポーターが提唱した企業の競争優位の源泉を明らかにするための分析のフレームワークで、ポーターはVCの企業活動を「主活動」と「支援活動」に分類。主活動は事業の流れに沿い「購買物流」、「製造オペレーション」、「出荷物流」、「マーケティングと販売」、「サービス」の5活動、支援活動はこれを支援する調達、技術開発等からなる。VC全体で生み出される価値と主活動+支援活動で派生するコストの差がマージンとなる。トヨタではSC自体をVCの一部と考えている

販売・マーケティング

製 造 サービス出荷物流購買物流

人的資源管理

技術開発

調達活動

インフラス トラクチャー

主 活 動

支援活動

図55-19 VC概念図

12

SCM構築の際のマイナス要因

1.日本独特の商習慣(委託販売/売れ残り品のメーカへの返品、リベート/リベート受領を見越した過剰在庫の大幅値引き販売) 2.複雑な流通・物流の仕組み(メーカから一次問屋、二次問屋、小売り業の多段階関係者の余分コス・在庫アップの要因)、 3.系列・下請け企業(系列企業の市場競争力の低下、上下関係は生産性、コストで妥協、馴れ合いが生じやすい)、 4.パッケージソフト導入に対する企業の抵抗感(情報インフラの標準化にはマイナスで競争力を阻害)、 5.大企業と健全なパートナーを築く上で情報の共有化は不可欠

BCP強化 機器メーカーは震災で明らかになったSC弱点克服に向けて動いている。代替生産体制の確立、在庫の増加、

海外発注を含めた生産拠点の分散化、使用材料や部品の報告、標準化率を高めること等の対策が取り上げられている。また、機器メーカはサプライヤーに対してもBCP取組み強化を求める動きが加速(日経エレクトロニクス)

(社)SCM共同ネット研究会

本研究会は、独自のネットワーク構築でSCM(全体最適)を可能とするビジネスモデルを掲げ、会員企業支援を目的に活動している。昨今の不景気の中、中小企業が生き残るためにはどうしたらよいか、より永続的な組織運営はどのようにしたらできるのか、という課題に対し、サポートする。全国260社が加盟

スループット会計

モノの移動スピードとそれにまつわるお金の流れ。売上高から原資材費などを差引いた残りを「利益」と考え、それを高める時間に着目したもの。スループットが増大すればそれにつれて企業の利益も増大することにSCMは着目

ブルウィップ効果

ブル(bull)は牛、ウィップ(whip)は鞭。 川下にある小売店での需要変化が、卸業者、メーカーとSCの川上に向かっていく段階で、その変動幅が拡大してしまい、全体で過剰な在庫を生み出してしまう現象。これを防止するのが SCMで、需要情報の共有や、在庫管理に共通の認識を持つなどの、流通に関する統合的な管理体制によって、ブルウィップ効果を抑制する (価格開拓.com)

不良在庫

売れる前提で生産される商品も供給過剰となれば売れない商品=不良在庫が派生する。保管、移動などで不良在庫もコストが発生する。SCMではSC全体で極力不良在庫の削減を目的としている

リードタイム

注文から納品までに要する最小時間。SCの供給能力の評価指標はスループット(供給可能な量)とリードタイム(以下LT)が重要なポイント。LTが長くなれば欠品と同じ結果になってしまうので、供給能力ではLTが短いほどよい評価が得られる。SCにおけるLTはそのチェーンを構成する企業もしくは部門間全体の供給時間の合計で計る ③

図55-22 ブルウィップ

図55-21 スループット

課 題

キーワード