Rを研究でどう使うか: 迷信の伝播と人類学から (Kashiwa.R#1)

第1回　Kashiwa.R

Rを研究でどう使うか？～迷信の伝播と人類学から～

2011.11.11田村光平

2011年11月14日月曜日

自己紹介

•名前：田村光平•所属：理学系研究科人類学大講座•住処：本郷キャンパス理学部2号館


2つの人類学

文化人類学自然人類学


2つの人類学

文化人類学自然人類学

こちら


生物学の立場からヒトを研究する


文化的適応ヒトの特性・拡散の要因

http://world-heritages.com/wh14/ryuukyuu.html




生物学の立場から文化を研究する


「受け継がれるモノ」は遺伝子だけじゃない

“Beyond DNA: integrating inclusive inheritance into an extended theory of evolution”

Danchin et al. 2011. Nature Reviews Genetics


文化進化

Boyd & Richerson (1985)

Cavalli-Sforza & Feldman (1981)


（生物）進化

t

集団中の遺伝的構成の時間変化2011年11月14日月曜日

文化進化

t

集団中の文化的構成の時間変化2011年11月14日月曜日

文化進化Boyd & Richerson

(1985)Cavalli-Sforza & Feldman

(1981)集団遺伝学の理論を文化に適用


例えばこんなトピックが

•遺伝子と文化の共進化

• 乳糖分解酵素と酪農文化

• セロトニン関連遺伝子と社会の志向

•言語系統学

• 言語の分岐年代から移住過程などを推測

•文化進化実験

• 伝言ゲームによってランダムな記号列に構造が


生物学の立場からみても文化は面白い！


文化的適応ヒトの特性・拡散の要因





文化的「非適応」非適応的行動が文化によって引き起こされる

http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/australiaandthepacific/papuanewguinea/4159654/Woman-burned-at-stake-after-being-accused-of-witchcraft.html




非適応的文化

• 儀式、呪術、迷信、人口転換...etc

• Boyd and Richerson (1985）、Richerson and Boyd (2005）、Ihara and Feldman (2004)、Ihara (2008)


なぜ非適応的文化を研究するのか？

•進化生物学の問題→なぜ自らの適応度を下げるのか？

•文化伝達の心理バイアスの理解


ヒツジとヤギも「育ての親」を好む

“Mothers determine sexual preferences”

Kendrick et al. 1998. Nature


丙午の迷信「丙午の女は夫を食い殺す」

http://jp.123rf.com/photo_7927160_the-vampire-women-bites-the-man.html2011年11月14日月曜日

http://jp.123rf.com/photo_7927160_the-vampire-women-bites-the-man.html

http://jp.123rf.com/photo_7927160_the-vampire-women-bites-the-man.html

丙午の迷信• ？？？　丙午の年には火事が多い

• 1682?　八百屋お七事件（江戸）

• 1686　井原西鶴『好色五人女』（大阪）

• 1704　紀海音『八百屋お七』（大阪）

• 1726　丙午の男女共に相手を殺す→人工流産の報告

• 1726~1786?　丙午の女は夫を食い殺す


丙午の出生減少

• 60年に一度の出生減少

• 1846年　13％（0~30%）

• 1906年　7%（0~15%）

• 1966年　25%（19~36%）


丙午出生減少の地域差

出生減少大


この地域差の要因は何か？


今日のメインはRなのであんまり詳しくやりません


仮説: 丙午の出生減少と方言の距離に関係がある？


方言間距離• 方言間の単語の共有度から計算• 各県について、ある単語を使っていれば１，いなければ０をコードし

てビット列を作成

• ハミング距離（文字列の違い）を計算

• データはLi and Hasegawa (2011)から（調査は1950~1970年代）


1966年丙午の出生減少と東京からの方言間距離の相関

※「とりあえず回帰」は良い習慣ではありません


とりあえず散布図> plot(x,y)


線とか引いてみる> abline(lm(y~x))


相関係数を求めてみる> cor.test(x,y)


出力


出生減少と方言間距離の相関

•相関係数: -0.497

• p値<0.001　→　偶然では起こりそうにない


単に距離が近いところに伝達しやすいだけでは？


東京からの地理的距離との相関をみてみる


出生減少と地理的距離の相関

•相関係数: -0.382

• p値<0.0089　→　偶然では起こりそうにない

…が、文化的距離との相関のほうがスコアが良い


単に値の大小以外で議論できないか？


モデル選択> stepAIC(lm(y~x1+x2))


出力


もう少し詳しく解析したい


因果関係を推測すると

•地理的な分布で方言のパターンが形成

•方言間の距離が出生減少に影響

地理的距離方言間距離出生減少


因果関係を推測すると

•地理的な分布で方言のパターンが形成

•方言間の距離が出生減少に影響

地理的距離方言間距離出生減少

これを統計的に表現したい


パス解析> library(sem)


入力


出力


よくわからん


結果をGraphvizにつっこむ

> path.diagram(ans, "data", ignore.double=FALSE, edge.labels="values", digits=3)


パス図


空間構造を取り入れたい


空間統計> library(spdep)


空間同時自己回帰ラグモデル

• Y = ρWY + βX + e

•隣接県の出生減少の仕方が似ている


空間統計

> result<-lagsarlm(y~x,listw=W) > summary(result)aaaaaaaaaaa


空間統計結果

•隣接県で出生減少の下がり方は似ている

•空間効果を入れても方言間距離の効果は有意

•空間効果をいれたモデルのほうが良い


シミュレーション

•出生減少と距離との相関→どのような伝達ネットワークでできやすい？


2つの文化伝達モデル完全グラフモデル星型モデル

各県が文化伝達東京が文化伝達

伝達確率が距離に依存2011年11月14日月曜日

2つの文化伝達モデル完全グラフモデル星型モデル

各県が文化伝達東京が文化伝達

申し訳ありませんが時間の関係上詳細は省略させて下さいm(_ _)m


結果：相関係数の分布完全グラフモデル星型モデル

ggplot2で作図2011年11月14日月曜日

結果：相関係数の分布完全グラフモデル星型モデル

ggplot2で作図

こんな感じでシミュレーション終了と同時にグラフが出ます


シミュレーションまとめ•相関係数が初期状態より大きくなるのは星型モデルのみ→伝達には中心地があった？

•シミュレーションもできる、ということが伝われば…

•データ出力→統計解析→グラフ作成まで一気にできて便利


まとめ：丙午編

•出生減少と方言間の距離に相関

•説明変数同士にも関係がありそう

•隣接県で出生減少が似ている

•伝達の中心地があった可能性


まとめ：R編•相関係数（cor.test()）

•モデル選択（stepAIC()）

•パス解析（library(sem)）

•空間統計（library(spdep)）

•シミュレーション


Rの良い所•なんでもできる•統計解析

•シミュレーション

•グラフ

•勉強用の資料が豊富


やりたいこと

どうやってやるか？

勉強

ここが一番大変


やりたいこと

どうやってやるか？

勉強

ここが一番大変ここのコストを削減していけると嬉しい


ご清聴ありがとうございました


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