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59 3. 準天頂衛星実機からの補正情報を用いた技術実証実験 3.1. 概要 国土地理院では、平成 21 年度までに、準天頂衛星による高精度測位補正情報の生成・配信 装置及び測位補正情報を受信し解析する装置を開発し、通信衛星を利用した試験観測により その測量精度について評価を進めてきた。平成 22 9 月には準天頂衛星初号機「みちびき」 が打ち上がり、実機から配信される補正情報を活用した測量が可能となった。 平成 22 年度は、準天頂衛星初号機から配信される高精度測位補正情報を用いた測量手法 (以下、「QZS-QS 法:Quasi-Static positioning with GPS correction data via QZS LEX channel」という。)の実証実験を行い、得られた結果について測位精度や Fix 率の検証を行うと ともに、実証実験全体の結果を最終報告書として取りまとめ、測量作業用マニュル(案)作成の 基礎資料とする。 0km 30km 28km 49km 50km 78km 74km 97km 98km 121km 116km 54km 83km 119km 領域4 134km 領域3 99km 領域4 125km 領域6 88km ⑭滝 ②結 ③野 ⑬日 ⑮いわき 南足柄 ⑦稲 ⑧黒 ⑨厚 ⑩矢 ⑪二 ⑫日本橋 地区名 基線長 ①つくば ④宇都宮 ⑤板 ⑥矢 注.基線長は、参照基準点「つくば1 (領域4)」からの距離を示す。領域3 と領域6の参照基準点はそれぞれ 「白鷹(山形県)」、「焼津 A(静岡 県)」である。 また、図中の青破線は、領域4の 境界位置を示す。 3-1 実証実験地区の位置と参照基準点からの距離 :参照基準点(つくば1)

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3. 準天頂衛星実機からの補正情報を用いた技術実証実験

3.1. 概要

国土地理院では、平成 21 年度までに、準天頂衛星による高精度測位補正情報の生成・配信

装置及び測位補正情報を受信し解析する装置を開発し、通信衛星を利用した試験観測により

その測量精度について評価を進めてきた。平成 22 年 9 月には準天頂衛星初号機「みちびき」

が打ち上がり、実機から配信される補正情報を活用した測量が可能となった。

平成 22 年度は、準天頂衛星初号機から配信される高精度測位補正情報を用いた測量手法

(以下、「QZS-QS 法:Quasi-Static positioning with GPS correction data via QZS LEX

channel」という。)の実証実験を行い、得られた結果について測位精度や Fix 率の検証を行うと

ともに、実証実験全体の結果を最終報告書として取りまとめ、測量作業用マニュル(案)作成の

基礎資料とする。

0km30km28km49km50km78km74km97km98km121km116km54km83km119km

領域4 134km領域3 99km領域4 125km領域6 88km

⑭滝

②結 城③野 田

標準的な地区

⑬日 光特徴的な地区

⑮いわき

⑯南足柄

⑦稲 城⑧黒 磯⑨厚 木⑩矢 吹⑪二 宮⑫日本橋

地区名 基線長

①つくば

④宇都宮⑤板 橋⑥矢 板

注.基線長は、参照基準点「つくば1

(領域4)」からの距離を示す。領域3

と領域6の参照基準点はそれぞれ

「白鷹(山形県)」、「焼津 A(静岡

県)」である。

また、図中の青破線は、領域4の

境界位置を示す。

図 3-1 実証実験地区の位置と参照基準点からの距離

★:参照基準点(つくば1)

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LEX 信号を用いた実証実験期間は、準天頂衛星実機「みちびき」の打上が延期されたことも

あり、国土地理院割り当て分は実質 20 日間程度と短期間であったため、図 3-1 に示す関東周

辺の次の地区について実施した。

(1) 標準的な地区として、一般的に測量が行われていると想像される参照基準点(つくば1)か

らほぼ南北に 25km ごとに各5地区

(2) 特徴的な地区として、都市部、山間部、海岸部および領域境界部として5地区

(3) マニュアル案作成のための基礎調査地区として、つくば、矢板、いわき及び郡山(参照基

準点から約 140km)の4地区

3.2. 基線長による測位精度の検証試験

3.2.1. 実験の目的

参照基準点からの距離による測位精度について把握するため、参照基準点(つくば1)からの

距離が南北に概ね25km、50km、75km、100km、125kmにあたる標準的な地区(通常,測量

が頻繁に行われると考えられる地域)として, 10 地区で観測を実施し、Fix 率、セット間較差、

測位精度等について、参照基準点からの距離、スカイプロット等の結果を踏まえ検証する。

3.2.2. 実験の概要

各地区での観測は、上空視界の開けた1点を公共基準点等から選点し実施した。

【観測地区】 25km:②結城地区及び③野田地区

50km:④宇都宮地区及び⑤板橋地区

75km:⑥矢板地区及び⑦稲城地区

100km:⑧黒磯地区及び⑨厚木地区

125km:⑩矢吹地区及び⑪二宮地区 ※各地区の○番号は図 3-1 に対応

(1) 選点方法

使用する観測点は、周辺環境や地盤の安定性等に留意し、既存の三角点、公共基準点の中

から、上空視界が GPS 観測に十分に確保された点を選点した。

(2) 観測期間及び時間

2 班で 12 月 3 日~16 日の 9 日間で実施。各地区とも約 7 時間の連続観測とした。

観測セット数は概ね 28 セットである(1セットに 15 分を要する)。

(3) 観測手法

QZS-QS 法の測位精度検証試験として初めに観測方法の確認を行った。その方法は、参照基

準点(電子基準点「つくば1」)の近傍にて、QZS-QS 法の観測前後にネットワーク型 RTK-GPS

法及び観測中は分配機を用いて QZS-QS 法と GPS によるスタティック観測を同時に実施し、各

観測方法で算出された測位結果と既存の成果値等を比較し、QZS-QS 法の測位精度について

検証するとともに、Fix 率等の受信状況について確認するものとした。

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なお、観測器の構成は以下の通りである。

・ GNSS アンテナ

・ LEX 受信機

・ GPS 受信機(1 周波)

・ PC(測位補正情報受信・測位装置:SJS)

ア. QZS-QS 法の観測方法

QZS-QS 法は、1周波型 GPS 受信機用に生成した測位補正情報を準天頂衛星の放送電

波(LEX 信号)を経由して利用者提供し、短時間で測量を行う方法で、必要エポック数の観

測データを用いてバイアスを決定する意味ではスタティック法に近い方式である。QZS-QS 法

は、日本全国の陸域を対象とした測量で、気象条件によらず cm 級の測位精度を目標に開発

された。

QZS-QS 法による観測は、準天頂衛星から配信される LEX 信号を受信し、GPS 衛星の観

測データと合わせて測位補正情報受信・測位装置(以下「SJS」という)によって測位解を求め

る方法により実施した。

また、1観測(以下「1セット」という。)に 15 分要する観測の点検として、5 分間ずらして再ス

タートさせる併行観測手法を実施した。これは、測量の点検手法として、1セット 2 回の観測を

実施すると 30 分を要するため、できるだけ短時間で点検を含めた観測の実施を考慮した手

法の有効性を確認するためのものである(表 3-1 及び図 3-3 参照)。

表 3-1 QZS-QS 法の観測方法

併行観測: 使用 GPS 衛星数:

共通衛星5衛星以上*

データ取得間隔

1セットの観測時間:15 分

1セット目の5分後に2セット目開始

観測時間: 7 時間超

GPS データ 補正情報

GPS 衛星の最低高度角

:15°以上 30 秒 1秒

*共通衛星5衛星以上とは、参照基準点と観測点の双方で観測される GPS 衛星が5異性以上で、

かつその衛星が 15 分連続して観測可能であること

図 3-2 QZS-QS 法の観測機器構成と観測風景

⑤板橋地区の観測点

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イ. ネットワーク型 RTK-GPS 法の観測方法

ネットワーク型 RTK-GPS 法による観測は、株式会社ジェノバが提供する VRS 方式を

QZS-QS 法による観測の前後に各 2 セット、計 4 セット実施した。

表 3-2 ネットワーク型 RTK-GPS 法の観測条件

観測量 10 エポック、QZS-QS 法観測の前後 2 セット、計 4 セット

データ取得間隔 1 秒間隔

GPS 衛星の最低高度角 15°以上

使用 GPS 衛星数 5 衛星以上

ウ.スタティック法の観測方法

スタティック法の観測方法は、既知点を次の2つに区分して、表 3-3 の設定により実施した。

・ 参照基準点を既知点とする

・ 観測点に近接する3点の電子基準点を既知点とする

表 3-3 スタティック法の観測方法

観測時間 7 時間以上

データ取得間隔 30 秒間隔

GPS 衛星の最低高度角 15°以上

使用 GPS 衛星数 4 衛星以上

なお、上記3種類の観測方法は、後述する実際の測量作業を想定した検証試験(3.4)でも

実施した。

1セット目の観測 2セット目の観測

30 分

15 分15 分

1セット目の観測

2セット目の観測5 分

20 分

図 3-3 独立した2セット(上)と併行した2セット(下)の観測のイメージ

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0% 20% 40% 60% 80% 100%

0

30

50

74

83

97

99

119

125

Fix

MissFix

NotFix

3.2.3. 評価

(1) QZS-QS 法の観測方法の評価

QZS-QS 法の点検手法として、「つくば地区」での併行観測結果が極めて良好であったため、

以降の検証にはすべてこの方法を適用して実証実験を行った。

結果として、10 分間を共通させ、補正情報も共有するため、独立した観測とはならず、互いに

影響される傾向であった。また、同じ外れ値を得ることもあって、この場合現地での点検が出来

ないことになる。したがって、観測値の点検に用いるべき手法とはならないことが判明した。

(2) Fix 率

表 3-4、図 3-4 は、図 3-1 に示した 16 地区の Fix 率に関する結果である。Fix 率は、

表 3-4 各地区の Fix 率等(地区名の背景の網掛は特徴的な地域を表す)

図 3-4 各地区の Fix 率等

標準偏差(cm)

総数 Fix %(Fix) Miss NotFix 水平 上下0 12/3 28 28 100 0 0 0.2 0.4

30 12/14 28 26 93 0 2 0.4 2.028 12/13 28 28 100 0 0 0.5 1.749 12/14 28 24 86 1 3 4.5 8.850 12/15 28 27 96 0 1 0.5 2.078 12/12 28 18 64 1 9 5.5 3.774 12/12 27 17 63 2 8 10.2 2.497 12/11 28 26 93 0 2 3.4 2.098 12/11 28 17 61 1 10 6.0 3.9121 12/10 28 9 32 2 17 18.5 52.7116 12/10 28 17 61 6 5 25.0 48.954 12/3 28 18 64 3 7 25.3 16.383 12/13 28 28 100 0 0 0.5 1.8119 12/9 28 17 61 2 9 6.8 12.8

領域4 134 27 23 85 1 3 3.5 4.5

領域3 99 28 24 86 1 3 1.9 9.9

領域4 125 28 23 82 1 4 7.8 4.3

領域6 88 28 19 68 3 6 13.7 13.3

地区名基線長

km観測月日2010年

①つくば

②結城

③野田

④宇都宮

⑤板橋

対象外

12/15

⑯南足柄

12/16

外れ値

⑪二宮

⑫日本橋

⑬日光

⑮いわき

⑭滝

⑥矢板

⑦稲城

⑧黒磯

⑨厚木

⑩矢吹

注.表中の「外れ値」は平均値から大きく外れた観測値で、下図では MissFix と表現している。

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基線長(参照基準点との距離)と相関関係の傾向である。この傾向は平成 20 年度、および平成

21 年度の実証実験(1)でも同様であった。しかし、100km を超えても Fix 率が 80%以上の地区

もある。

QZS-QS 法では、測位時に必要な衛星の組み合わせ数である5衛星以上のアンビギュイティ

が解決した場合は Fix 解となるが、1セット 30 エポック(15 分)中、28 エポック以上が連続してア

ンビギュイティが推定されないと解は得られず破棄される(NotFix)。

測位解が得られた場合を『Fix 解』とし、全体の観測数に対する割合を『Fix 率(式 1-1)』とし

て評価した。

表 3-4中の外れ値(図 3-4中のMissFix)は、平均値から大きく外れた観測値である。ただし、

解は得られているので、標準偏差の計算には外れ値も含めている。

以下図 3-5~図 3-22 に参照基準点「つくば1」を基準としたスタティック解の比較図を示す

(図 3-20、図 3-22 は、領域境界地区のため、他の参照基準点を基準とした図を表してる)。図

中○印は先行、●は併行観測を、ピンクの丸印はネットワーク型 RTK-GPS 法(VRS 方式)を表し

ている。VRS 方式による解はセミ・ダイナミック補正を加味して「今期」とし比較している。

なお、各観測点のスカイプロット図を 3.6.2 に参考資料として残す。

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結城地区 : 25 km参照基準点:つくば1

-1000

-800

-600

-400

-200

0

200

400

600

800

1000

-10

00

-800

-600

-400

-200 0

200

400

600

800

1000

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

結城地区 : 25 km参照基準点:つくば1

-200

-100

0

100

200-2

00

-100 0

100

200

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

図 3-5 ①つくば地区

図 3-6 ②結城地区(30km)

図 3-7 ③野田地区(28km)

つくば地区 : 0 km参照基準点:つくば1

-200

-100

0

100

200

-200

-100 0

100

200

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

つくば地区 : 0 km参照基準点:つくば1

-1000

-800

-600

-400

-200

0

200

400

600

800

1000

-1000

-800

-600

-400

-200 0

200

400

600

800

1000

ΔE  [mm]Δ

N 

 [m

m]

先行

併行

VRS

野田地区 : 25 km参照基準点:つくば1

-1000

-800

-600

-400

-200

0

200

400

600

800

1000

-1000

-800

-600

-400

-200 0

200

400

600

800

1000

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

野田地区 : 25 km参照基準点:つくば1

-200

-100

0

100

200

-200

-100 0

100

200

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

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宇都宮地区 : 50 km参照基準点:つくば1

-1000

-800

-600

-400

-200

0

200

400

600

800

1000

-10

00

-800

-600

-400

-200 0

200

400

600

800

1000

ΔE  [mm]Δ

N 

 [m

m]

先行

併行

VRS

宇都宮地区 : 50 km参照基準点:つくば1

-200

-100

0

100

200

-200

-100 0

100

200

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

板橋地区 : 50 km参照基準点:つくば1

-1000

-800

-600

-400

-200

0

200

400

600

800

1000

-1000

-800

-600

-400

-200 0

200

400

600

800

1000

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

板橋地区 : 50 km参照基準点:つくば1

-200

-100

0

100

200-200

-100 0

100

200

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

矢板地区 : 75 km参照基準点:つくば1

-1000

-800

-600

-400

-200

0

200

400

600

800

1000

-1000

-800

-600

-400

-200 0

200

400

600

800

1000

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

矢板地区 : 75 km参照基準点:つくば1

-200

-100

0

100

200

-200

-100 0

100

200

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

図 3-8 ④宇都宮地区(49km)

図 3-9 ⑤板橋地区(50km)

図 3-10 ⑥矢板地区(78km)

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稲城地区 : 75 km参照基準点:つくば1

-1000

-800

-600

-400

-200

0

200

400

600

800

1000

-1000

-800

-600

-400

-200 0

200

400

600

800

1000

ΔE  [mm]Δ

N 

 [m

m]

先行

併行

VRS

稲城地区 : 75 km参照基準点:つくば1

-200

-100

0

100

200

-200

-100 0

100

200

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

黒磯地区 :100 km参照基準点:つくば1

-1000

-800

-600

-400

-200

0

200

400

600

800

1000

-1000

-800

-600

-400

-200 0

200

400

600

800

1000

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

黒磯地区 :100 km参照基準点:つくば1

-200

-100

0

100

200-200

-100 0

100

200

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

厚木地区 : 100 km参照基準点:つくば1

-1000

-800

-600

-400

-200

0

200

400

600

800

1000

-1000

-800

-600

-400

-200 0

200

400

600

800

1000

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

厚木地区 : 100 km参照基準点:つくば1

-200

-100

0

100

200

-200

-100 0

100

200

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

図 3-11 ⑦稲城地区(74km)

図 3-12 ⑧黒磯地区(97km)

図 3-13 ⑨厚木地区(98km)

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二宮地区 : 125 km参照基準点:つくば1

-1000

-800

-600

-400

-200

0

200

400

600

800

1000

-1000

-800

-600

-400

-200 0

200

400

600

800

1000

ΔE  [mm]Δ

N 

 [m

m]

先行

併行

VRS

二宮地区 : 125 km参照基準点:つくば1

-200

-100

0

100

200

-200

-100 0

100

200

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

二宮地区 : 125 km参照基準点:つくば1

-1000

-800

-600

-400

-200

0

200

400

600

800

1000

-1000

-800

-600

-400

-200 0

200

400

600

800

1000

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

二宮地区 : 125 km参照基準点:つくば1

-200

-100

0

100

200-200

-100 0

100

200

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

図 3-14 ⑩矢吹地区(121km)

図 3-15 ⑪二宮地区(116km)

図 3-16 ⑫日本橋地区(54km)

日本橋地区 : 都市部参照基準点:つくば1

-1000

-800

-600

-400

-200

0

200

400

600

800

1000

-1000

-800

-600

-400

-200 0

200

400

600

800

1000

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

日本橋地区 : 都市部参照基準点:つくば1

-200

-100

0

100

200

-200

-100 0

100

200

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

Page 11: QZS-QS - GSIQZS-QS 法の点検手法として、「つくば地区」での併行観測結果が極めて良好であったため、 以降の検証にはすべてこの方法を適用して実証実験を行った。

69

図 3-17 ⑬日光地区(83km)

図 3-18 ⑮いわき地区(119km)

図 3-19 ⑭滝地区(134km)

日光地区 :山間部参照基準点:つくば1

-1000

-800

-600

-400

-200

0

200

400

600

800

1000

-1000

-800

-600

-400

-200 0

200

400

600

800

1000

ΔE  [mm]Δ

N 

 [m

m]

先行

併行

VRS

日光地区 :山間部参照基準点:つくば1

-200

-100

0

100

200

-200

-100 0

100

200

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

いわき地区 : 海岸部参照基準点:つくば1

-1000

-800

-600

-400

-200

0

200

400

600

800

1000

-1000

-800

-600

-400

-200 0

200

400

600

800

1000

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

いわき地区 : 海岸部参照基準点:つくば1

-200

-100

0

100

200-200

-100 0

100

200

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

滝地区 : 領域境界 4参照基準点:つくば1

-1000

-800

-600

-400

-200

0

200

400

600

800

1000

-1000

-800

-600

-400

-200 0

200

400

600

800

1000

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

滝地区 : 領域境界 4参照基準点:つくば1

-200

-100

0

100

200

-200

-100 0

100

200

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

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70

図 3-20 ⑭滝地区(99km) 参照基準点「白鷹」(領域 3)を基準

図 3-21 ⑯南足柄地区(125km)

図 3-22 ⑯南足柄地区(125km) 参照基準点「焼津 A」(領域 6)を基準

滝地区 : 領域境界 3参照基準点:白鷹

-1000

-800

-600

-400

-200

0

200

400

600

800

1000

-10

00

-800

-600

-400

-200 0

200

400

600

800

1000

ΔE  [mm]Δ

N 

 [m

m]

先行

併行

VRS

滝地区 : 領域境界 3参照基準点:白鷹

-200

-100

0

100

200

-200

-100 0

100

200

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

南足柄地区 : 領域境界 4参照基準点:つくば1

-1000

-800

-600

-400

-200

0

200

400

600

800

1000

-1000

-800

-600

-400

-200 0

200

400

600

800

1000

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

南足柄地区 : 領域境界 4参照基準点:つくば1

-200

-100

0

100

200

-200

-100 0

100

200

ΔE  [mm]Δ

N 

 [m

m]

先行

併行

VRS

南足柄地区 : 領域境界 6参照基準点:焼津A

-1000

-800

-600

-400

-200

0

200

400

600

800

1000

-1000

-800

-600

-400

-200 0

200

400

600

800

1000

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

南足柄地区 : 領域境界 6参照基準点:焼津A

-200

-100

0

100

200

-200

-100 0

100

200

ΔE  [mm]

ΔN

  

[mm

]

先行

併行

VRS

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71

3.3 作業マニュアル(案)作成のための基礎調査

3.3.1 実験の目的

基線長による測位精度検証結果等を踏まえ、QZS-QS 法を実際の測量作業で利用するため

の測量作業マニュアル(案)作成のため、公共測量作業規程「準則」の1級~4級基準点測量の

新点間距離や点検計算の許容範囲等を考慮しつつ基礎調査を行った。

3.3.2 実験の概要

基礎調査を次の4地区で実施した。各地区での観測は、事前の選点作業により決定した 10

点程度で、既知点及び新点を仮定した測量網を用いて行った。

【観測地区】

・ つくば地区 12/16~18 及び 1/4(2011 年)

・ 矢板地区 1/5~1/7

・ 郡山地区 1/11~1/12

・ いわき地区 1/13~1/14

つくば地区、郡山地区は、測位精度検証点と異なる観測点で実施した。

4地区の内、つくば地区は参照基準点の近傍である地区として、矢板地区は参照基準点から

約75km離れた地区、郡山地区及びいわき地区は、参照基準点からも遠く(それぞれ約140km、

120km)、また、いわき地区は東側が海であり補正情報を生成する電子基準点に偏りがある地

区として選定した。こうした様々なケースにおいて QZS-QS 法のよる基準点測量で所定の精度

が得られれば、「測量作業マニュアル(案)」が作成できるはずである。

観測方法は、ネットワーク型 RTK-GPS 法に準じた以下の方法で実施し、実際の測量作業を

想定した点検計算、網平均計算を行い、QZS-QS 法の適用範囲、必要な観測時間、精度管理

方法等について検証し、測量作業マニュアル(案)作成の資料とする。

・間接観測法(2台同時観測法、複数台同時観測法)。(3.3.3(6)参照)

・単点観測法

(1) 観測点の選点作業

観測点については、周辺環境等に留意し、最近観測された公共基準点等で、かつ GPS 観測

できる箇所を「準則」の新点間距離(1級基準点 1,000m、2級基準点 500m、3級基準点 200m、

4級基準点 50m)を考慮し各級 3 点程度を目安に実施した。

4地区の内、つくば地区は参照基準点の近傍である地区として、矢板地区は参照基準点から

約75km離れた地区、郡山地区及びいわき地区は、参照基準点からも遠く(それぞれ約140km、

120km)、また、いわき地区は東側が海であり補正情報を生成する電子基準点に偏りがある地

区として選定した。こうした様々なケースにおいて QZS-QS 法のよる基準点測量で所定の精度

が得られれば、「測量作業マニュアル(案)」が作成できるはずである。

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72

(2) 観測方法

QZS-QS 法を用いる基準点測量の観測方法は、これまでに行ってきた精度検証の結果や点検

方法を考慮し、複数台(2台)同時に参照基準点との相対測位を行い、両者の観測基線ベクトル

の差である計算基線ベクトルで観測点間(既知点及び新点間等)を結合させる方法で実施した

(図 3-23)。

また、公共基準点測量が対象とする最も長い点間距離は、1 級基準点で 1,000m 程度、4 級

基準点の場合 50m 程度である。つまり、参照基準点から 100km 程度離れていても、測量現地

では、数 km2 の範囲内に基準点が散在していることになる。このため、観測におけるセット数や

点検値の許容範囲は、級別に区分せず観測を実施した。

なお、各級とも計算基線ベクトルによる環を閉合させ点検できることを念頭に観測網を計画し

実施した。

この計算基線ベクトルで結合させ観測網を作る方法は、「準則」のネットワーク型 RTK-GPS

法で採用されている方法であり、同時観測することによって観測基線ベクトルに含まれる共通誤

差を相殺させる効果がある。

測量機1台で参照基準点と相対測位し観測基線ベクトルを得る方法をここでは「直接観測法

(または「単点観測法」)」と呼び、複数台同時に観測して計算基線ベクトルを得る方法を「間接

観測法」と以下呼ぶことにする。

図 3-23 QZS-QS 法による間接観測法のイメージ

参照基準点 (電子基準点)

観測点 A (X1、Y1、Z1)

観測点 B (X2、Y2、Z2)

測量機②

測量機①

観測点 C (X3、Y3、Z3)

測量機②

測量機①

観測基線ベクトル

計算基線ベクトル

観測基線ベクトル 観測点 A における①の観測結果 X1,Y1,Z1 観測点 B における②の観測結果 X2,Y2,Z2 A-B 間の計算基線ベクトル dX=X2-X1, dY=Y2-Y1, dZ=Z2-Z1

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73

(3)点検方法と許容範囲

観測値の点検方法は、独立した2セット観測で実施し、セット間較差が許容範囲に収まらない

場合は再測を行った。点検値の許容範囲は、級別に区分せず「準則」のネットワーク型

RTK-GPS 法で使われている数値等(表 3-5 ~表 3-7)を想定し点検を行った。

また、QZS-QS 法による観測の前後にネットワーク型 RTK-GPS 法による観測を行い、両者の

三次元網平均計算を実施し得られた座標値と公共測量成果の座標値とを比較する点検も行っ

た。

表 3-5 セット間較差の想定した許容範囲

方 向 許容範囲 備 考

水平(ΔN,ΔE) 20mm 独立または併行した

2 セットのセット間較差 高さ(ΔU) 30mm

表 3-6 環閉合差の想定した許容範囲

方 向 許容範囲 備 考

水平(ΔN,ΔE) 20mm N N :路線の変数

高さ(ΔU) 30mm N

表 3-7 重複基線の想定した許容範囲

方 向 許容範囲

水平(ΔN,ΔE) 20mm

高さ(ΔU) 30mm

3.3.3 評価

以下各地区の実施状況を示す。つくば地区は、当初参照基準点の北側の畑作地域に選点し

たが、アマチュア無線(3.4 参照)のレピータ局がある筑波山がどの観測点からも目視でき、干渉

防御のシールドを装着しても LEX 信号が取得出来ない状態だったため、参照基準点南側のつ

くば市街地へ再選点し観測を行った。

(1) つくば地区

・ 観測日:12/16~18 間接観測法の精度検証 参照基準点からの距離:約 2km

・ 使用した公共点:街区三角点、街区多角点(2006/1 観測)

1 級基準点以外は、セット間較差の精度管理(許容範囲:ΔN、ΔE=20mm、ΔU=30mm)を

行わずに実施した。1 級基準点はセット間較差が許容範囲以内になるまで観測した結果、表

3-8 のように良好な結果であったが、この環閉合差を得るために QZS-QS 法で 2 セット以上の観

測を要し、9 セット、2 時間以上の観測時間を費やした観測点もある。2 級~4 級基準点では1辺

を除きすべて2セットで終了している。

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ア) 観測セット数と環閉合差

表 3-8 つくば地区環閉合差

環 網(級) 路線辺数

(N)

ΔN

(mm)

ΔE

(mm)

許容範囲

20mm√N

ΔU

(mm)

許容範囲

30mm√N

① 1級 4 +20 - 9 40 +26 60

(a)1 級基準点相当観測網 (b)2 級基準点相当観測網

(c)3 級基準点相当観測網 (d)4 級基準点相当観測網

図 3-25 つくば地区級別基準点観測網と環

④ ⑤

1 級

2 級

3 級

4 級

既知点 1013A

既知点 1017A 既知点 1016A

2 級 10B23

2 級 10A97

1 級 10A91

1 級 10A58

3 級 3001

3 級 3002

4 級 4001~4003

図 3-24 つくば地区観測

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② 2級 4 - 9 +12 40 -25 60

③ 2級 3 + 9 +18 34 -52 51

④ 3級 4 -147 +212 40 +11 60

⑤ 4級 5 +46 -13 44 -167 67

イ)座標値の比較

QZS-QS 法による計算基線ベクトルを三次元網平均計算し座標値で比較を行った。表 3-9

は公共測量成果と、表 3-10 は NW 型 RTK-GPS 法による座標値との比較である。どちらも大き

な差は認められない。しかし、水平成分の X 方向が Y 方向に比べてやや大きいことの原因はつ

かめていないため、追加検証等を要する。

表 3-9 公共測量成果と QZS-QS 法の比較

観測点 公共成果(m) QZS-QS 法(m) QZS-QS 法-公共成果(m)

X Y H X Y H ΔX ΔY ΔH

10A58 +9,804.274 +25,435.782 +21.208 +9,804.281 +25,435.772 +21.195 +0.007 -0.010 -0.013

10A91 +10,268.366 +24,494.763 +25.148 +10,268.380 +24,494.768 +25.114 +0.014 +0.005 -0.034

10A97 +10,007.501 +24,849.385 +22.513 +10,007.525 +24,849.384 +22.500 +0.024 -0.001 -0.013

10B23 +9,593.372 +24,775.444 +25.113 +9,593.376 +24,775.443 +25.123 +0.004 -0.001 +0.010

表 3-10 ネットワーク型(NW 型)RTK-GPS 法と QZS-QS 法の比較

観測点 NW 型 RTK-GPS 法(m) QZS-QS 法(m) QZS-QS 法-NW 型(m)

X Y H X Y H ΔX ΔY ΔH

3001 +10,353.741 +24,657.770 +23.251 +10,353.756 +24,657.771 +23.212 +0.015 +0.001 -0.039

3002 +10,194.983 +24,750.834 +23.331 +10,195.020 +24,750.833 +23.307 +0.037 -0.001 -0.024

4001 +10,312.439 +24,667.655 +23.215 +10,312.471 +24,667.653 +23.228 +0.032 -0.002 +0.013

4002 +10,277.407 +24,702.498 +23.403 +10,277.441 +24,702.491 +23.404 +0.034 -0.007 +0.001

4003 +10,228.207 +24,733.532 +23.515 +10,228.235 +24,733.534 +23.529 +0.028 +0.002 +0.014

注.表 3-31、31 とも既知点とした観測点および新点は、座標値の比較対象とはしていない。

注.網掛けセルは、許容範囲を超過したもの

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(2) 矢板地区

・ 観測日:2011/1/5~7 参照基準点からの距離:約 78km

・ 使用した公共点:主に街区三角点、街区多角点(2006/10 観測)

ア) 観測セット数と環閉合差

矢板地区の 2 級基準点では、セット間較差

が 20mm の許容範囲以内になるまで観測し

たが、最多3セットの観測であった。

3 級、4 級基準点ではセット間較差による精

度管理をしていない。

3 級、4級基準点での最多の観測辺は、2

級 10A33-3 級Ⅳ東町の6セットで、それ以

外はすべて2セットで終了している。

環閉合による各級別観測の結果は、表

3-11 の通りで、3 級、4 級の高さ方向(ΔU)

において許容範囲を超過しているが、水平方

向は各級とも許容範囲内であった。

高さ方向の許容範囲超過は、アンテナシー

ルドの影響も考えられる。

(a)2 級基準点相当観測網 (b)3 級基準点相当観測網 (c)4 級基準点相当観測網

表 3-11 矢板地区環閉合差

環 網(級) 路線辺数

(N)

ΔN

(mm)

ΔE

(mm)

許容範囲

20mm√N

ΔU

(mm)

許容範囲

30mm√N

① 2級 4 -14 +4 40 +40 60

2 級

3 級

4 級

2 級 10A23

3 級Ⅳ東町

3 級 10A42

4 級 4001~4003

2 級 10A33

2 級 10A44

2 級 10A43

3 級 10A41

図 3-26 矢板地区観測図

図 3-27 矢板地区級別基準点観測網と環

③ ②①

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77

② 3級 5 -6 +4 44 +116 67

③ 4級 5 -5 -5 44 -70 67

イ) 座標値の比較

つくば地区と同様に QZS-QS 法による計算基線ベクトルを三次元網平均計算し座標値で比

較を行った。表 3-12 は公共点成果と表 3-13 はネットワーク型 RTK-GPS 法による座標値との

比較である。どちらも大きな差は認められないが、高さ成分の H 方向はつくば地区同様水平成

分に比べてやや大きい。表 3-12、表 3-13 及び図 3-27 から、3者が共通に比較できる観測点

の公共成果を基準とした比較では、QZS-QS 法により得られた座標値は、公共成果よりネットワ

ーク型 RTK-GPS 法との座標値と、より整合性が高いようだ。これは、使用した公共点が 2006

年に観測された街区三角点・多角点で広範囲の誤差を含んでいることが考えられる。

表 3-12 公共測量成果と QZS-QS 法の比較

観測点 公共成果(m) QZS-QS 法(m) QZS-QS 法-公共成果(m)

X Y H X Y H ΔX ΔY ΔH

10A33 +89,023.761 +9,222.644 +193.843 +89,023.771 +9,222.635 +193.859 +0.010 -0.009 +0.016

10A44 +88,403.117 +9,125.273 +188.510 +88,403.150 +9,125.290 +188.525 +0.033 +0.017 +0.015

10A41 +88,589.652 +9,387.447 +190.962 +88,589.666 +9,387.437 +190.983 +0.014 -0.010 +0.021

10A42 +88,427.187 +9,424.881 +190.139 +88,427.196 +9,424.874 +190.153 +0.009 -0.007 +0.014

Ⅳ東町 +88,798.933 +9,310.851 +193.280 +88,798.948 +9,310.840 +193.298 +0.015 -0.011 +0.018

表 3-13 NW 型 RTK-GPS 法と QZS-QS 法の比較

観測点 NW 型 RTK-GPS 法(m) QZS-QS 法(m) QZS-QS 法-NW 型(m)

X Y H X Y H ΔX ΔY ΔH

10A33 +89,023.777 +9,222.624 +193.831 +89,023.771 +9,222.635 +193.859 -0.006 +0.011 +0.028

10A44 +88,403.144 +9,125.287 +188.498 +88,403.150 +9,125.290 +188.347 +0.006 +0.003 +0.027

10A41 +88,589.671 +9,387.448 +190.973 +88,589.666 +9,387.437 +193.859 -0.005 -0.011 +0.011

10A42 +88,427.189 +9,424.880 +190.145 +88,427.196 +9,424.874 +188.525 +0.007 -0.006 +0.008

Ⅳ東町 +88,798.957 +9,310.836 +193.274 +88,798.948 +9,310.840 +190.983 -0.009 +0.004 +0.024

4001 +88,547.744 +9,400.705 +190.656 +88,547.735 +9,400.691 +190.635 -0.009 -0.014 -0.021

4002 +88,502.630 +9,401.044 +190.532 +88,502.628 +9,401.039 +190.498 -0.002 -0.005 -0.034

4003 +88,467.437 +9,411.806 +190.456 +88,467.436 +9,411.808 +190.468 -0.001 +0.002 +0.012

注.10A23、10A43 は既知点として公共成果座標を固定したため、また、4級点は新点のため比較していない。

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(3) 郡山地区

・ 観測日:1/11~12 参照基準点からの距離:約 141km

・ 使用した公共点:街区三角点、街区多角点(2005/2 観測)

ア) 観測セット数と環閉合差

郡山地区は、今回の実証実験地区では参

照基準点からの距離が最長の場所である。

郡山地区は、セット間較差による精度管理

は実施していない。2級基準点では、10D70

-1056A 間で4セット、4級基準点では、

4001-4002 間で4セット、3級基準点では、

3001-3002 間で FIX が出来ず 14 セットの

観測を要した以外すべて2セットの観測で終

了した。3001、3002 両観測点とも上空視界

に問題はなく 14 セットを要した原因は特定で

きていない。

環閉合による各級別観測の結果は、表

3-14 の通りで、2級、3級で高さ方向(ΔU)に

おいて許容範囲を超過している。また、水平

方向は3級で ΔN 方向に許容範囲超過があ

った。

2 級

3 級 4 級

2 級 10D67

3 級 3002

4 級 4001~4003

2 級 10D70

3 級 3001

3 級 10D69

1級 10D30

1級 1056A

図 3-28 郡山地区観測図

(a)2 級基準点相当観測網 (b)3 級基準点相当観測網 (c)4 級基準点相当観測

図 3-29 郡山地区級別基準点網と環

③ ②

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表 3-14 郡山地区環閉合差

環 網(級) 路線辺数

(N)

ΔN

(mm)

ΔE

(mm)

許容範囲

20mm√N

ΔU

(mm)

許容範囲

30mm√N

① 2級 4 -16 -1 40 +71 60

② 3級 5 -49 -35 44 +76 67

③ 4級 5 -33 -3 44 -21 67

イ) 座標値の比較

これまでと同様に QZS-QS 法による計算基線ベクトルを三次元網平均計算し座標値で比較を

行った。表 3-15 は公共点成果と表 3-16 はネットワーク型 RTK-GPS 法による座標値との比較

である。どちらも大きな差は認められないが、高さ成分の H 方向はこれまでと同様水平成分に比

べてやや大きい。また、公共点を基準とした QZS-QS 法とネットワーク型 RTK-GPS 法による座

標値の比較(表 3-16)から、矢板地区同様使用した公共点が 2005 年に観測された街区三角

点・多角点で広範囲の誤差を含んでいるため、整合性が悪いと考えられる。

表 3-15 公共測量成果と QZS-QS 法の比較

観測点 公共成果(m) QZS-QS 法(m) QZS-QS 法-公共成果(m)

X Y H X Y H ΔX ΔY ΔH

10D67 +106,461.147 +95,284.543 +2.041 +106,461.143 +95,284.546 +2.024 -0.004 +0.003 -0.017

10D70 +105,992.026 +95,931.929 +2.610 +105,992.018 +95,931.940 +2.586 -0.008 +0.011 -0.024

10D69 +106,330.104 +95,454.345 +1.980 +106,330.124 +95,454.366 +1.938 +0.020 +.0.021 -0.042

表 3-16 NW 型 RTK-GPS 法と QZS-QS 法の比較

観測点 NW 型 RTK-GPS 法(m) QZS-QS 法(m) QZS-QS 法-NW 型(m)

X Y H X Y H ΔX ΔY ΔH

3010A +106,461.141 +95,284.536 +2.007 +106,461.143 +95,284.546 +2.024 +0.002 +0.010 +0.017

30A60 +105,992.020 +95,931.934 +2.570 +105,992.018 +95,931.940 +2.586 -0.002 +0.006 +0.016

30A67 +106,330.089 +95,454.319 +1.958 +106,330.124 +95,454.366 +1.938 +0.035 +.0.047 -0.020

30A94 +106,175.777 +95,640.863 +2.292 106,175.791 +95,640.854 +2.207 +0.014 -0.009 -0.085

8A054 +106,145.978 +95,721.993 +1.627 +106,145.986 +95,721.976 +1.608 +0.008 -0.017 -0.019

8A058 +106,089.731 +95,809.071 +2.506 +106,089.750 +95,809.074 +2.472 +0.019 +0.003 -0.034

4001 +106,044.037 +95,853.309 +1.954 +106,044.016 +95,853.324 +1.941 -0.021 +0.015 -0.013

注.1056A、10D30 は既知点として公共成果座標を固定したため、また、3級2点と4級点は新点のため比較していない。

注.3005A、30A89 は既知点としたため比較していない。

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(4) いわき地区

・ 観測日:1/13~14

・ 参照基準点からの距離:約 119km

ア) 観測セット数と環閉合差

いわき地区は、東側に太平洋があり、

電子基準点に取り囲まれていないところ

であり、また、参照基準点からも遠いと

場所である。

2級基準点では、3010A-30A60 間

で 10 セット、3級基準点では、3010A-

30A67 間で6セット、4級基準点では、

30A94-8A054 間で4セットの観測を

要し、すべての級で FIX 率が悪い結果

となった。

環閉合による各級別観測の結果は、

表 3-17 の通りで、3級で水平方向

(ΔX)において許容範囲を超過した以

外は、許容範囲以内であった。

図 3-30 いわき地区観測図

2 級

3 級

4 級

3 級 30A67

3 級 30A94

1級 30A89

2 級 30A60

1 級 3005A

2 級 3010A

4 級 8A054

4 級 8A058

4 級 4001

(a)2 級基準点相当観測網 (b)3 級基準点相当観測網 (c)4 級基準点相当観測

図 3-31 いわき地区級別基準点網と環

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表 3-17 いわき地区環閉合差

環 網(級) 路線辺数

(N)

ΔN

(mm)

ΔE

(mm)

許容範囲

20mm√N

ΔU

(mm)

許容範囲

30mm√N

① 2級 4 +29 -12 40 +26 60

② 3級 4 +75 -10 40 -51 60

③ 4級 5 +4 +19 44 -12 67

表 3-18 公共測量成果と QZS-QS 法の比較

観測点 公共成果(m) QZS-QS 法(m) QZS-QS 法-公共成果(m)

X Y H X Y H ΔX ΔY ΔH

3010A +106,461.147 +95,284.543 +2.041 +106,461.143 +95,284.546 +2.024 -0.004 +0.003 -0.017

30A60 +105,992.026 +95,931.929 +2.610 +105,992.018 +95,931.940 +2.586 -0.008 +0.011 -0.024

30A67 +106,330.104 +95,454.345 +1.980 +106,330.124 +95,454.366 +1.938 +0.020 +.0.021 -0.042

30A94 +106,175.796 +95,640.850 +2.250 106,175.791 +95,640.854 +2.207 -0.005 +0.004 -0.043

8A054 +106,145.979 +95,721.966 +1.595 +106,145.986 +95,721.976 +1.608 +0.007 +0.010 +0.013

8A058 +106,089.748 +95,809.056 +2.466 +106,089.750 +95,809.074 +2.472 +0.002 +0.018 +0.006

表 3-19 NW 型 RTK-GPS 法と QZS-QS 法の比較

観測点 NW 型 RTK-GPS 法(m) QZS-QS 法(m) QZS-QS 法-NW 型(m)

X Y H X Y H ΔX ΔY ΔH

3010A +106,461.141 +95,284.536 +2.007 +106,461.143 +95,284.546 +2.024 +0.002 +0.010 +0.017

30A60 +105,992.020 +95,931.934 +2.570 +105,992.018 +95,931.940 +2.586 -0.002 +0.006 +0.016

30A67 +106,330.089 +95,454.319 +1.958 +106,330.124 +95,454.366 +1.938 +0.035 +.0.047 -0.020

30A94 +106,175.777 +95,640.863 +2.292 106,175.791 +95,640.854 +2.207 +0.014 -0.009 -0.085

8A054 +106,145.978 +95,721.993 +1.627 +106,145.986 +95,721.976 +1.608 +0.008 -0.017 -0.019

8A058 +106,089.731 +95,809.071 +2.506 +106,089.750 +95,809.074 +2.472 +0.019 +0.003 -0.034

4001 +106,044.037 +95,853.309 +1.954 +106,044.016 +95,853.324 +1.941 -0.021 +0.015 -0.013

注.3005A、30A89 は既知点として公共成果座標を固定したため、また、4級点は新点のため比較していない。

注.3005A、30A89 は既知点としたため比較していない。

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(5) 用地境界測量等短距離基線の精度検証の調査

概要の項ではふれていないが、測量作業マニュアル(案)作成のため短距離基線での検証を

国土地理院構内の「鋼巻尺比較基線場」で実施した。この基線場は 0m、25m、30m、50m の

各端点が光波測距儀で高精度に求められている。

QZS-QS 法による観測は、1台の測量機を各端点に順次移動させ単点観測法により2回づつ

観測を実施した実施した。

観測結果は、表 3-20 に示すとおりで極めて良好であった。ただし、1セットの観測に 15 分を

要するため、用地測量等で通常使われている TS での観測に比べて迅速性に乏しいと言える。

この短距離基線の検証は、つくば地区以外では実施していない。

また、4端点とも筑波山は建物の陰となりアマチュア無線の影響(3.4 参照)は受けていないと

考えられる。

表 3-20 基線長比較の観測結果 (m)

0m-25m 区間 25m-30m 区間 30m-50m 区間 観測時間 成果(測地基準課) 24.9939 4.9977 19.9977

1 回目の観測 24.9921 4.9998 19.9986 11:32-13:02 2 回目の観測 24.9929 5.0003 20.0002 13:29-14:53

表 3-21 再現性比較(1回目と 2 回目の座標差) mm

0m 端点 25m 端点 30m 端点 50m 端点 ΔN -2 -3 -5 -8 ΔE 2 1 0 2 ΔU -1 -4 6 9

50m 地点 30m 地点 25m 地点 0m 地点 0m 点25m 点30m 点50m 点

図 3-32 国土地理院構内の鋼巻尺比較基線場と端点構造(写真左下)及び観測風景(写真右上)

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(6) QZS-QS 法の間接観測法の検証とその考察(平成 21 年度)

QZS-QS 法を実際の測量作業に利用する際の測位方法の一つとして考えている間接観

測法(複数台同時観測法)の有効性を評価するため、電子基準点データを用いた測位精

度検証計算を行った。国土地理院構内にある電子基準点 「つくば 1(92110)」及び「つく

ば 3(960627)」を観測点と見立て、両点からの基線長を考慮して、電子基準点「 練馬

(93017)」、「塩谷(960587)」、「厚木(93029)」、「福島郡山 1A(010845)」、「楢葉(950208)」

を参照基準点に設定し、両点の観測データを用いて QZS-QS 法による測位解析を実施し

た。つくば 1 及びつくば 3 の測位結果の差分から得られた計算基線ベクトルについて、

F3 解から求めた基線長を真値とした比較・検証を行った。なお、ここで、観測点として

つくば 1 及び、つくば 3 を選点した理由として、両点間の基線長が約 300m であり、公

共測量作業規程準則で定められている基準点測量の路線長を模擬できると期待されたた

めである。また、この程度の基線長間の 2 点では、QZS-QS 法で使用される測位補正情

報がほぼ同一とみなすことができるため、複数台同時観測法において、2 点の測位結果の

差分から計算基線ベクトルを取ることにより、両点に共通に含まれる補正情報の誤差が

キャンセルされ、測位精度が向上することが期待される。

平成 21 年 10 月 13 日、14 日の観測データを上述した方法で後処理解析した。解析結

果を表 3-22、23 に示す。

表 3-22 各参照基準点との基線解析結果

表 3-23 計算基線ベクトルの解析結果

図 3-33 間接観測法の検証配置

2 つの表から計算基線ベクトルの方が単点観測結果より精度の向上が期待できる。つまり、複数

台同時観測法が有効であることを示唆している。

水平 上下 水平 上下

練馬 56 95 2.2 3.3 95 1.7 3.4塩谷 77 92 3.6 4.9 93 3.6 4.9厚木 98 87 5.3 5.2 87 5.1 5.6

福島郡山1A 141 75 6.3 8.5 82 4.8 6.7楢葉 154 76 7.7 10.1 86 6.2 9.6

基線長km

参照基準点

つくば1 つくば3RMS(cm) RMS(cm)Fix率

%Fix率

%

共通Fix率

%水平

上下(cm)

練馬 56 94 1.2 2.4塩谷 77 90 2.7 3.5厚木 98 85 4.0 2.6

福島郡山1A 141 79 4.2 3.9楢葉 154 82 5.1 6.0

RMS(cm)参照基準点

基線長km

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3.4 LEX 信号とアマチュア無線の干渉問題

3.4.1 概要

実証実験開始前の初期機能確認の受信テスト時に、LEX 信号が遮断される現象が確認され

た。この原因は、筑波山中腹からのアマチュア無線の影響と考えられ、12月1日にアマチュア無

線のレシーバーを準備して観測を実施し調査を行った。この結果レシーバーで音声が受信でき

る状況時は、LEX 信号が受信出来ないこと、また、無線発信がない時間帯は正常に観測できる

ことが確認できた。

図 3-33 に示すように、アマチュア無線のレピータ局割り当て周波数が LEX 信号のインバン

ドであり、レピータ局からの送信電波は 10W 以下の大出力であるため、LEX 信号が影響(ジャミ

ング)を受ける可能性が大きいことが分かった。

このため、実際の観測では、

・無線が届かない場所で観測するか

・無線を遮るか

いずれかの方法を検討する必要に迫られたが、準天頂衛星実機のスケジュールは確定しており、

2 番目の無線を遮る方法で実証実験に臨むこととなった。

図 3-34 LEX 信号スペクトラムとアマチュア無線バンドプラン

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3.4.1 シールドによる対応

レピータ局は、実証実験地区のどこにあってどの方向に影響が出るのか不明なため、レピータ

局からの送信電波をアンテナに金属板を巻いて影響を除去することを試みた。

金属板の材質や形状をいくつか試した結果、アルミニウム製の薄い板で、アンテナとの間にはス

ポンジ製の緩衝材を置き、シールドを高く設置すると GPS 衛星からの信号も遮断されるので、信

号受信の仰角マスク 15°と同じ程度なるように設定した(図 3-35)。

図 3-35 アマチュア無線との干渉対策のアンテナシールド

3.4.2 シールドの影響調査

この対応は、理論的な解析結果から得られたものではない。実記を用いた実証実験は期間が

限られていたためのデータを得るためにとった手法である。このため、シールドの有無による座

標値への調査を実施した。

(1) シールドの有無による影響調査 その1(12/16) シールドを着けることにより、測位に利用するGPS信号の受信状況に悪影響を及ぼす可能性

がある(低仰角衛星が取得できない、マルチパスの増加、電波の回折による誤差等)ため、その

調査を行った。

データ取得方法は、国土地理院構内の綱巻尺基線場 0m 端点を利用し、シールドを1時間ご

とに装着と取り外しを繰り返し観測を実施した。

図 3-36 アンテナシールドの有(左)、アンテナシールドの無(右)による実験

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結果を表 3-24 及び図 3-37 に示す。

シールド無しの観測値の平均を基準とすると高さ方向に最大 30mm 程度の較差が見られた。

表 3-24 シールドの影響調査(シールド無の平均値を基準)1 時間毎

観測年月日 2010/12/16 B 360622.0117 φ観測場所 地理院構内 L 1400513.8855 λ

時刻 X (m) Y (m) Z (m) ΔN(mm) ΔE(mm) ΔU(mm) ΔN(mm) ΔE(mm) ΔU(mm)13:0013:15 -3957137.925 3310260.376 3737718.339 9 1 -29 7 1 -2113:30 -3957137.938 3310260.385 3737718.344 4 3 -14 2 3 -513:45 -3957137.941 3310260.391 3737718.346 2 0 -7 0 0 114:00 -3957137.946 3310260.393 3737718.351 3 2 0 1 2 814:15 -3957137.945 3310260.395 3737718.348 0 0 -2 -2 0 714:30 -3957137.945 3310260.394 3737718.347 0 0 -3 -2 0 614:45 -3957137.949 3310260.398 3737718.351 0 0 4 -2 0 1315:00 -3957137.946 3310260.396 3737718.348 0 -1 -1 -2 0 815:15 -3957137.937 3310260.391 3737718.343 2 -2 -12 -1 -2 -315:30 -3957137.922 3310260.375 3737718.337 10 0 -33 7 0 -2415:45 -3957137.929 3310260.383 3737718.337 3 -1 -24 1 -1 -1616:00 -3957137.934 3310260.390 3737718.339 0 -4 -16 -2 -4 -816:15 -3957137.946 3310260.398 3737718.346 -3 -2 -1 -5 -2 816:30 -3957137.947 3310260.395 3737718.349 0 1 0 -2 1 916:45 -3957137.947 3310260.395 3737718.350 1 1 1 -1 1 917:00 -3957137.947 3310260.395 3737718.350 1 1 1 -1 1 9

平均値 X (m) Y (m) Z (m)

シールド無 -3957137.947 3310260.396 3737718.349

全体 -3957137.940 3310260.391 3737718.345

0.6301705192.44497842

シールド無の平均値からの差観測値 全体平均値からの差

注.網掛け部分は、シールド装着時を示す。また、BLは、最

初の観測結果値である。

(2) シールドの有無による影響調査 その2(12/17~19)

同一観測点で1時間ごとにシールド有無の調査後、国土地理院校内の GPS アンテナ検定架

‐40

‐30

‐20

‐10

0

10

20

30

40

13:00 13:30 14:00 14:30 15:00 15:30 16:00 16:30 17:00

ΔN(mm)

ΔE(mm)

ΔU(mm)

シールド有 シールド無 シールド無

シールド有

図 3-37 シールドの影響調査(シールド無の平均値を基準)1 時間毎

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87

台で 24 時間比較を実施した。

結果を表 3-25 及び図 3-38 に示す。(1)と同様にシールドを装着すると高さ方向に水平方

向より大きな影響がでることがわかった。

表 3-25 シールドの影響調査(シールド無の平均値を基準)連続観測 観測年月日 2010/12/17

観測年月日 2010/12/19 B 360622.0117 φ観測場所 地理院構内 L 1400513.8855 λ

観測年月日時刻 X (m) Y (m) Z (m) ΔN(mm) ΔE(mm) ΔU(mm) ΔN(mm) ΔE(mm) ΔU(mm)

2010/12/17 19:00 -3957196.812 3310212.964 3737701.886 -2 -2 -9 -4 -2 -22010/12/17 20:00 -3957196.803 3310212.959 3737701.884 2 -4 -18 1 -4 -112010/12/17 21:00 -3957196.804 3310212.952 3737701.886 6 2 -20 5 2 -132010/12/17 22:00 -3957196.809 3310212.956 3737701.888 4 2 -14 2 2 -72010/12/17 23:00 -3957196.804 3310212.962 3737701.885 1 -6 -16 0 -6 -92010/12/18 0:00 -3957196.802 3310212.957 3737701.886 5 -4 -19 4 -3 -122010/12/18 1:00 -3957196.801 3310212.954 3737701.884 5 -2 -22 4 -2 -152010/12/18 2:00 -3957196.815 3310212.958 3737701.899 9 4 -3 8 4 42010/12/18 3:00 -3957196.813 3310212.962 3737701.887 -1 0 -9 -2 0 -22010/12/18 4:00 -3957196.806 3310212.957 3737701.888 5 -1 -15 3 -1 -82010/12/18 5:00 -3957196.816 3310212.956 3737701.887 0 6 -10 -2 6 -32010/12/18 6:00 -3957196.815 3310212.958 3737701.884 -3 4 -11 -4 4 -5

2010/12/18 19:00 -3957196.819 3310212.967 3737701.894 0 0 2 -1 0 92010/12/18 20:00 -3957196.816 3310212.964 3737701.891 0 0 -4 -1 0 32010/12/18 21:00 -3957196.818 3310212.965 3737701.894 1 1 0 0 1 72010/12/18 22:00 -3957196.817 3310212.966 3737701.893 0 -1 -1 -1 -1 62010/12/18 23:00 -3957196.815 3310212.966 3737701.892 0 -2 -3 -1 -2 42010/12/19 0:00 -3957196.819 3310212.966 3737701.894 0 0 1 -1 1 82010/12/19 1:00 -3957196.815 3310212.965 3737701.892 1 -1 -3 0 -1 42010/12/19 2:00 -3957196.819 3310212.965 3737701.895 1 1 1 0 1 82010/12/19 3:00 -3957196.820 3310212.967 3737701.894 -1 0 2 -2 0 92010/12/19 4:00 -3957196.819 3310212.966 3737701.894 0 0 1 -1 1 82010/12/19 5:00 -3957196.819 3310212.965 3737701.892 -1 1 -1 -2 1 62010/12/19 6:00 -3957196.821 3310212.968 3737701.894 -2 0 3 -3 0 10

シールド無平均値 -3957196.818 3310212.966 3737701.893全観測平均値 -3957196.813 3310212.962 3737701.890

0.6301705192.44497842

観測値 シールド無の平均値からの差 全体平均値からの差

注.網掛け部分は、シールド装着時を示す。また、BLは、12/16

‐30

‐20

‐10

0

10

20

30

2010/12/17 12:00 2010/12/18 0:00 2010/12/18 12:00 2010/12/19 0:00 2010/12/19 12:00

ΔN(mm)

ΔE(mm)

ΔU(mm)

シールド有

シールド無

図 3-38 シールドの影響調査(シールド無の平均値を基準)連続観測

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88

(3) シールド無しによる追加調査 その1

基線長による実証実験で Fix 率が最も低かった⑩矢吹地区の追加観測を⑧黒磯地区ととも

に 2 月 25 日に実施した。LEX 信号は、観測スケジュールが終了しているため利用できず、観測

時間帯の補正情報を別途生成し、オフラインでの QZS-QS 法を実施した。

結果は、表 3-26、表 3-27、図 3-39 、図 3-40 に示す。Fix 率、標準偏差ともに大きく改

善(矢吹地区)された。つまり、シールドの影響が示されたと言える。

表 3-26

表 3-27

図 3-39 ⑧黒磯地区(97km)

図 3-40 ⑩矢吹地区(121km)

標準偏差(cm)

水平 上下97 12/11 93% (26/28) 3.4 2.0

121 12/10 39% (11/28) 18.5 52.7

地区名基線長

km観測月日2010年

Fix率Miss Fix含む

⑧黒磯

⑩矢吹

標準偏差(cm)

水平 上下97 2/25 92% (22/24) 1.8 7.0

121 2/25 71% (17/24) 0.8 2.4

⑧黒磯

⑩矢吹

地区名基線長

km観測月日2011年

Fix率Miss Fix含む

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(4) シールド無しによる追加調査 その2

8 月及び 9 月に行った追加観測の観測図を以下に示す。つくば地区は、3級基準点の新点間

距離 200m を、守谷地区は2級基準点の新点間距離 500m を想定し実施した。

0001

A

0002

B0003

C

0004

Y0005

Z

図 3-41 つくば地区(2011/8/15)観測図 2008 年撮影

国土地理院

0001

出張所

0002

守谷 SA

0003

明治乳業

0004

飛行場

明治乳業

守谷出張所

国土交通省

守谷サービスエリア

常磐自動車道

図 3-42 守谷地区(2011/9/16)観測図 2008 年撮影

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90

‐50

‐25

0

25

50

‐50 ‐25 0 25 50

ΔN[mm]

ΔE[mm]

‐50 

‐25 

25 

50 

12:00 12:15 12:30 12:45 13:00 13:15 13:30

ΔN

ΔE

ΔU

[mm] 観測点 0001 A

‐50 

‐25 

25 

50 

12:00 12:15 12:30 12:45 13:00 13:15 13:30

ΔN

ΔE

ΔU

[mm]

‐50

‐25

0

25

50

‐50 ‐25 0 25 50

ΔN[mm]

ΔE[mm]

観測点 0002 B

0 ‐5 

1  0  1  ‐1 4 

‐50 

‐25 

25 

50 

12:00 12:15 12:30 12:45 13:00 13:15 13:30

ΔN

ΔE

ΔU

[mm]

‐50

‐25

0

25

50

‐50 ‐25 0 25 50

ΔN[mm]

ΔE[mm]

観測点 0003 C

‐50 

‐25 

25 

50 

12:00 12:15 12:30 12:45 13:00 13:15 13:30

ΔN

ΔE

ΔU

[mm]

‐50

‐25

0

25

50

‐50 ‐25 0 25 50

ΔN[mm]

ΔE[mm]

観測点 0004 Y

‐50 

‐25 

25 

50 

12:00 12:15 12:30 12:45 13:00 13:15 13:30 13:45

ΔN

ΔE

ΔU

[mm]

‐50

‐25

0

25

50

‐50 ‐25 0 25 50

ΔN[mm]

ΔE[mm]

観測点 0005 Z

図 3-43 つくば地区 各観測点の観測結果の較差

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各観測点のスタティック解を基準とした ΔN、ΔE、ΔU の較差の時系列分布図は、両地区とも

に、時間とともに同じように変化している。つまりアンテナシールドが無い場合は、良好な結果が

得られることが改めて示された。

また、複数台同時観測によって差分の計算基線ベクトルを得る方法は、共通誤差を相殺して

おり、この手法が有効であると言える。

‐50 

‐25 

25 

50 

11:30 11:45 12:00 12:15 12:30 12:45 13:00 13:15 13:30 13:45

ΔN

ΔE

ΔU

[mm] 観測点 0002 守谷 SA

‐50 

‐25 

25 

50 

11:30 11:45 12:00 12:15 12:30 12:45 13:00 13:15 13:30 13:45

ΔN

ΔE

ΔU

[mm]

‐50

‐25

0

25

50

-50 -25 0 25 50

ΔN[mm]

ΔE[mm]

観測点 0001 出張所

‐50

‐25

0

25

50

-50 -25 0 25 50

ΔN[mm]

ΔE[mm]

‐50 

‐25 

25 

50 

11:45 12:00 12:15 12:30 12:45 13:00 13:15 13:30 13:45

ΔN

ΔE

ΔU

[mm]

‐50

‐25

0

25

50

-50 -25 0 25 50

ΔN[mm]

ΔE[mm]

観測点 0003 明治乳業

‐50 

‐25 

25 

50 

11:15 11:30 11:45 12:00 12:15 12:30 12:45 13:00 13:15 13:30 13:45

ΔN

ΔE

ΔU

[mm]

‐50

‐25

0

25

50

-50 -25 0 25 50

ΔN[mm]

ΔE[mm]

図 3-44 守谷地区 各観測点の観測結果の較差

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3.5 QZS-QS 法のまとめ

本実証実験は、測量作業マニュアル(案)作成のためのデータ取得が主であり、補正情報を

使用することや短時間での観測等から共通性の高いネットワーク型 RTK-GPS 法に注目して、こ

の方法と比較検証する作業を中心に行った。

QZS-QS 法は、ネットワーク型 RTK-GPS 法と同様に測量現場で観測点の座標値を得ること

ができる測量方法であるが、ネットワーク型 RTK-GPS 法と比べると即時性に劣る。しかし、ネット

ワーク型 RTK-GPS 法の欠点である携帯電話のサービスエリア外でも測位解を得ることができる。

また、受信機は、ネットワーク型 RTK-GPS 法で使われる 2 周波型に比べて廉価な 1 周波型受

信機ですむと言う利点がある。

実証実験の期間が実質 20 日間程度と短期間であったため十分なデータが得られたとは言い

難いが、測量作業マニュアル(素案)作成のための基礎要素を以下に述べる。

(1) QZS-QS 法は、参照基準点からの距離に依存する傾向がある。

(2) 観測点(新点)間の距離には依存しない。

(3) セット間の点検は、独立した観測を要する。ただし、上記は参照基準点からの距離が近いか

らといって必ずしも許容範囲等に収まる精度が得られない場合がある。

(4) 上記の要素とアンテナシールドの有無の関係は調査が不十分と考えられる

また、技術的改良・改善が必要である点を以下に述べる。

(1) アマチュア無線信号との干渉(3.4 参照)。

(2) NotFix への対応。

(3) 「外れ値」への対応。

上記をもとに測量作業マニュアル(素案)は、以下について

(1) 基準点測量では、1~4 級基準点全てに適応が可能(新点間の距離に依存しない)である。

観測方法は、観測時の共通誤差が相殺される複数台同時観測法を行い同時観測の差をとっ

た計算基線ベクトルによって結合多角網を構成する方法とする。

(2) 基準点測量の点検方法は、「複数点で同時に行う 1 セットの観測を 1 セッション」と考え、環

閉合や重複辺の点検を行う。または、各観測点で独立した 2 セット(30 分)の観測による点検

を行う。

(4) 地形測量、応用測量で QZS-QS 法を用いる場合は、各観測点で独立した 2 セット(30 分)

の観測による点検を行う。

以上のことから、測量作業マニュアル(素案)への適用は、概ね以下のとおりと考えられる。

(1) 基準点測量

QZS-QS 法の実証実験結果から参照基準点からの離れるにつれて、測位精度が劣化する傾

向にある。しかし、公共基準点測量の場合、最も長距離の基準点間の距離は 1 級基準点で

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93

1km程度であり、4級基準点では50m程度である。つまり、作業地区が参照基準点から100km

離れていても、測量現地では 1km 程度以内で基準点が隣接していることになる。したがって、

複数台で同時観測を行えば、参照基準点から各観測点までの観測基線ベクトルに含まれる誤

差要因は同程度で共通していると推測される。

複数台で 15 分の同時観測を実施し、観測基線ベクトルの差をとることによって得られる計算

基線ベクトルによって結合多角網を形成させる(図 3-44)。

点検手法は、計算基線ベクトルによって構成された多角網の環閉合又は重複辺の点検等によ

り行う。

具体的には、複数台で観測点を順次移動しながら同時観測を行い既知点、新点、交点等で

構成する環閉合差(準則では、水平方向:20mm√N、高さ方向:30mm√N)の結果から観測の

良否を判定する。また、必要に応じて往復観測による点検を行う。

図 3-45 複数台同時観測(上図は2台の場合)のイメージ

また、QZS-QS 法は、水準点標識の水平位置の決定や基準点の復旧測量にも利用できる。

(2) 地形測量及び写真測量

「標定点」、「航空レーザ測量などの調整用基準点」などを山間部の携帯電話サービスエリア

外では、QZS-QS 法はその効果を発揮するものと思われる。

観測方法は、「単点観測」で、独立した 2 セットの観測を実施し、それらのセット間較差で点検

する。この場合、セット間間隔はできるだけ時間を空けた方が望ましい。

(3) 応用測量

用地境界測量を模した短距離において極めて良好な結果を得ることができたが、実験場所が

国土地理院構内で参照基準点直下であり、他の地区で実施していないことから、現状としては

データ不足として取り込むべきではない。また、ネットワーク型 RTK-GPS 法は、現場での測設

に効果を発揮するが、QZS-QS 法はリアルタイム性に乏しいため利用することは難しい。

参照基準点(電子基準点)

既知点

新 点

B2

A1

B1 A2

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94

3.6 参考資料

3.6.1 電離層の情報

QZS-QS 法実証実験時の上空の TEC 値、総電子数 TEC(Total Electron Content)は、

eTEC N ds (式 3-1)

で定義される。ここに、s は衛星とアンテナを結ぶ直線に沿った幾何学的な距離であり、 eN は

伝搬経路に沿った単位体積当たりの電子数(電子密度)である。

位相屈折率あるいは群屈折率から距離の次元を持つ電離層遅延の最終結果をIonoとし、周

波数を f (L1 波:1.575[Hz]など)とすると、

2

40.3Iono TECf

(式 3-2)

TEC は、

1 [TECU] = 1016 [electron/m2] (式 3-3)

定義された単位 [electron/m2] で表される。

例えば、C/A コード(L1 波:1.575[Hz])の遅れは、TEC が 1 [electron/m2] の場合、

Iono =0.16 [m]程度の電離層遅延の影響となる。すなわち、電離層遅延は TEC 値の影響を受

ける。

鉛直方向に沿った全電子数 TVEC(Total Vertical Electron Content)といい、図 3-45 ~

図 3-49 は、TVEC 値を北緯 37°(関東上空)の鉛直方向を表したものである。

各観測時の TEC 値は約 10 [TECU]程度であり、Iono≒1.5[m]程度は影響を受けている可

能性があるが、RMS は 10cm 以内であり、補正情報の生成が有効であることを確認した。

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95

N37°

2011/12/01 2011/12/02 2011/12/03 2011/12/04

図 3-46 観測日を含む 4 日間の関東上空の TEC 値(12 月 1 日~4 日)

2011/12/06 2011/12/07 2011/12/08 2011/12/09

図 3-47 観測日を含む 4 日間の関東上空の TEC 値(12 月 6 日~9 日)

2011/12/09 2011/12/10 2011/12/11 2011/12/12

図 3-48 観測日を含む 4 日間の関東上空の TEC 値(12 月 9 日~12 日)

2011/12/12 2011/12/13 2011/12/14 2011/12/15

図 3-49 観測日を含む 4 日間の関東上空の TEC 値(12 月 12 日~15 日)

2011/12/14 2011/12/15 2011/12/16 2011/12/17

図 3-50 観測日を含む 4 日間の関東上空の TEC 値(12 月 14 日~17 日)

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3.6.2 観測点の上空視界と観測時の衛星配置

図 3-51 ①つくば地区 12/3

図 3-52 ⑫日本橋地区 12/9 図 3-53 ⑮いわき地区 12/9

図 3-54 ⑩矢吹地区 12/10 図 3-55 ⑪二宮地区 12/10

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図 3-56 ⑧黒磯地区 12/11 図 3-57 ⑨厚木地区 12/11

図 3-58 ⑥矢板地区 12/12 図 3-59 ⑦稲城地区 12/12

図 3-60 ③野田地区 12/13 図 3-61 ⑬日光地区 12/13

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図 3-62 ②結城地区 12/14 図 3-63 ④宇都宮地区 12/14

図 3-64 ⑤板橋地区 12/15 図 3-65 ⑭滝地区 12/15

図 3-66 ⑯南足柄地区 12/16