Quantum Cryptigraphy

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量子力学と 量子暗号の かんたんなお話 Kuniaki IGARASHI 2008.12.6

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量子力学と量子暗号の簡単なお話

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量子力学と量子暗号のかんたんなお話Kuniaki IGARASHI2008.12.6

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五十嵐邦明 (igaiga)

1998年群馬高専電気工学科卒

大学(物理専攻)編入

札幌で就職(プログラマ)→東京で転職

C++プログラマ/動画とかセキュリティとか

趣味は執筆:たまに雑誌に書いてます

自己紹介

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量子力学と量子暗号を

すごく簡単に説明します。数式は出てきません。

小出昭一郎先生に捧ぐ

今日のお話は

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高専4年のとき電気材料の授業で2人は出会いました。

私と量子力学の出会い

私が生涯で最も読み込んだ本量子力学(I) 小出昭一郎著

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私の第一印象

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なんじゃこりゃーーー!!

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常識が通用しない

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(例)見てるだけで現象が変わる

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(例)ダブルスリットの実験

電子

干渉縞ができる

波の性質を持ってるから

カウント数電子は波である性質と粒である性質を両方持ってます。

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ところが!

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ダブルスリットの実験観測あり

電子

干渉縞が消える!!

測定によって波の性質がなくなったから

カウント数どちらを通過するか測定します。

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測定の有無で結果が変わるのを

どう理解するか?

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Ле́в Дави́дович Ланда́у = Евгений Михайлович Лифшиц

квантовая механикаランダウ=リフシッツ

量子力学1

量子力学における測定とは、いかなる観測者とも別に、独立に行われる

古典的対象と量子的対象との相互作用のあらゆる過程である。

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今回重要なとこを抜き出すと

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測定とは古典的対象と量子的対象との相互作用

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測定とは古典的対象と量子的対象との相互作用

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測定とは古典的対象と量子的対象との相互作用

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とても大事なことなので

3回言いました。

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つまり

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「相互作用」なので、測定すると

状態を破壊する!

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すごく簡単に言うと

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「見てるだけ」で状態を破壊する!!

ってことです。

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すごく簡単に絵で描くと

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電子測定

空間的に広がりを持って存在している

測定した瞬間、ある座標に決定する

空間的な広がり(波の性質)が消え1点に決まる(粒子の性質)

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ダブルスリット実験(測定無し)

電子

波の性質によって干渉縞ができる

カウント数

測定しない場合は、波の性質

電子

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ダブルスリット実験(測定有り)

電子

カウント数

測定により、粒子の性質に

干渉縞できない

測定

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まとめ

量子力学の世界では測定すると状態を破壊する

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この性質を暗号に利用したのが量子暗号

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引き続きまして量子暗号編をお楽しみください

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共通鍵暗号 AES

弱点:鍵配送問題鍵が漏洩したら解読される

おさらい従来の暗号

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公開鍵暗号RSA

巨大な数の素因数分解の数学的な難しさを利用

弱点:素因数分解を劇的に速く解く仕組みができると解読されてしまう

従来の暗号

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盗聴を検知できる!安全を確かめてから通信

将来どんな技術が生まれても

絶対に解読不可能という究極の安全性を持つ暗号

量子暗号の特徴

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量子力学的対象の光を使います。直線偏光の光を考えます。

量子暗号で使う道具

偏光面:光の電場振動が作る平面

偏光方向:ばらばら

偏光方向:¦ (垂直)

偏光子:特定の偏向面を持つ光だけを通過させる素子

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4つの直線偏光の光と基本要素

2つの偏光子を使います

0 1 0 1

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偏光子を通過させて測定します基本要素の性質

入力偏光子 測定結果

or

or50% 50%

0

1

0

1

0

1

0 1

0 1

正しい偏光子を使わないと結果はランダム

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もう1つの偏光子を使った場合基本要素の性質

入力 偏光子 正しい偏光子を使わないと結果はランダム

or

or50% 50%

0

1

0

1

0 1

0

1

0 1

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量子暗号で通信してみましょう!

Alice Bob

量子暗号経路

光ファイバー

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Alice-Bob通信Aliceが送信するビット列 1 1 1 0 0 1 0 0 1 0 1 1

Aliceが選んだ偏光子 X + + X + X + + + X X +

偏光子通過後 \ | | / ー \ ー ー | / \ |

Bobが任意に選んだ偏光子 X X + X + + + X + X + X

Bobが得られた光子列 \ / | / ー ー ー / | / | /

Bobが得られたビット列 1 0 1 0 0 0 0 0 1 0 1 0

ここで通信

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Alice-Bob通信

Aliceが送信するビット列 1 1 1 0 0 1 0 0 1 0 1 1

Aliceが選んだ偏光子 X + + X + X + + + X X +

偏光子通過後 \ | | / ー \ ー ー | / \ |

Bobが任意に選んだ偏光子 X X + X + + + X + X + X

Bobが得られた光子列 \ / | / ー ー ー / | / | /

Bobが得られたビット列 1 0 1 0 0 0 0 0 1 0 1 0

公共回線でチェック ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

ここで通信

公共回線(盗聴されてOK)で使用した偏光子をチェック、違う偏光子を使用した回のデータは捨てる

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Alice-Bob通信

Aliceが送信するビット列 1 1 0 0 0 1 0

Bobが得られたビット列 1 1 0 0 0 1 0

公共回線でチェック ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

パリティチェックを行い、通信エラーがないことを確認して通信完了ビット列を通信することができた!通信エラーのビットを排除すれば、

原理的に2人が共有できたビット列は100%同一

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盗聴者Eveがいた場合は?EveはAliceにもBobにもばれないように盗聴できるか?

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Eveは盗聴を試みるAliceが送信するビット列 1 1 1 0 0 1 0 0 1 0 1 1

Aliceが選んだ偏光子 X + + X + X + + + X X +

偏光子通過後 \ | | / ー \ ー ー | / \ |

Eveが任意に選んだ偏光子 + X + X + + X + X + + X

Eveが得られた光子列 ー / | / ー ー / ー \ | | /

Eveが得られたビット列 0 0 1 0 0 0 0 0 1 1 1 0

公共回線チェックができないと、正解率は最大75%しかもAliceが送信した信号は測定で破壊している→Aliceの信号そのものをBobへ送信できない

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EveはBobにばれないようにAliceがつくったっぽいデータを送るが・・・Alice送信 1 1 1 0 0 1 0 0 1 0 1 1Alice偏光子 X + + X + X + + + X X +偏光子通過後 \ | | / ー \ ー ー | / \ |

Eve送信 0 0 1 0 0 0 0 0 1 1 1 0Eve偏光子 + X + X + + X + X + + X偏光子通過後 ー / | / ー / / ー \ | | /

Bob偏光子 X X + X + + + X + X + XBob光子列 / / | / ー | ー / ー / | /Bob受信 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 0チェック ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

エラー率が上がり、AliceとBobはEveの盗聴に気づく→盗聴されていたら通信をやり直せば良い

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通信路でのエラー最大75%の確率でばれる問題

なりすましDoS攻撃

について考えてみます。

量子暗号に死角はないのか?

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パリティチェックでエラーがないことを確認

このとき、エラーと盗聴は区別不可→通信路エラーは可能な限り

抑える必要がある(実際は1%程度)

通信路でのエラー

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One Time Pad の利用解読不可能であることが数学的に証明されている暗号

例) 鍵bit列と送信bit列のXOR

デメリット: 送信文と同じ長さの鍵が必要

最大75%ばれる問題

送信文 1 1 1 0 0 0 1 1 1 0 0 0鍵(乱数) 1 0 1 0 0 1 0 1 1 0 0 1暗号文

(鍵と送信文のXOR)0 1 0 0 0 1 1 0 0 0 0 1

鍵 1 0 1 0 0 1 0 1 1 0 0 1復号文

(鍵と暗号文のXOR)XOR

1 1 1 0 0 0 1 1 1 0 0 0

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量子暗号:One Time Pad鍵を送る送信文はOne Time Padで暗号化して古典暗号経路で送信

量子暗号経路で盗聴されても、漏れるのは無意味なbit列

古典暗号経路はOneTimePad暗号

最大75%ばれる問題

鍵 (乱数) 1 0 1 0 0 1 0 1 1 0 0 1送信文 1 1 1 0 0 0 1 1 1 0 0 0

OneTimePad暗号文 0 1 0 0 0 1 1 0 0 0 0 1

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証明書などを使って相手が本当にAlice(Bob)である

ことを確認する。

なりすまし他の人のふりをすること

EveがBobになりすましてAliceと使用偏光子チェックすると

解読できてしまう。

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盗聴をし続ければ、(盗聴はできなくても)Alice-Bob間通信はできなくなってしまう。

DoS攻撃Denial of Service Attack

使用不可にさせる攻撃

量子暗号経路でも、旧来の信号経路でも、線を切られたら無理・・・。

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一般的には20-30km, 約1Mbps

QKD 87km (2002 Mitsubishi)(quantum key distribution)

DPS-QKD 105km, 17kbit/s (NTT)(differential phase shift quantum key distribution)

200kmの通信も実験されている模様

量子暗号の現状

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量子暗号は「量子力学の世界では

測定すると状態を破壊する」という物理法則を利用した暗号

盗聴に気づける=絶対に盗聴されない究極の暗号

まとめ

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ご静聴ありがとうございました。

special thanks to量子暗号に関する調査・研究報告書

情報処理振興事業協会http://www.ipa.go.jp/security/fy12/report/ryoushi.pdf

国際量子暗号会議2008資料

あんずもじフォントhttp://www8.plala.or.jp/p_dolce/

おしまい