PDPの省電力化に向けた 材料技術 -...

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PDPの大画面化と高精細化に伴う消費電力の増大を回避するために,電極保護膜を改良 し,放電電圧を低電圧化してPDPを省電力化する技術の研究を進めている。当所では, 現在使われているMgO電極保護膜の放電電圧の決定要因を理論的に明らかにし,これを 低電圧化するための指針を示してきた。また,放電電圧を更に低減するために,新しい 電極保護膜材料をパネルに導入し,その製作方法を工夫した。その結果,従来のパネル と比較して放電電圧を30%以上低減することに成功し,PDPパネルを省電力化できる見 通しを得た。本稿では,これらの研究を中心に解説する。 1.まえがき 当所では,スーパーハイビジョン(SHV:SuperHi-Vision)用の直視型のディスプレイ をPDPで実現するための研究を進めている。スーパーハイビジョンでは大画面化と高精 細化が求められており,PDPの消費電力の増大が課題となっている。そのため,SHV 用のPDPを普及させるためにはいっそうの省電力化が求められる。 まず,PDPの発光原理について簡単に説明する(1図)。誘電体とその表面を覆う電極 保護膜に被覆された表示電極間の放電によって,封入ガスが励起され紫外線を放出する。 この紫外線がセルの内側に塗布された蛍光体を励起して発光する。封入ガスとしてはNe (ネオン)とXe(キセノン)の混合ガスが主に使用され,放電時にXeが紫外線を放射す る。各セルにはR(赤),G(緑),B(青)のいずれかの色に発光する蛍光体が塗布され ており,3原色の発光を制御してカラー画像を表示する。 ここで,一般的なPDPの効率分析の例を2図に示す。入力電力のうち実際に放電に使 われる電力の割合を回路効率と呼び,2図の例では60%である。PDPは容量性負荷を 持っており,パネルを充・放電する際に電気回路で電力が消費される。この回路損失は f を駆動周波数,C をパネル容量,V を駆動電圧とすると fCV に比例する。実際には回 路損失の多くは電力回収回路によって回収されるが,それでも回収しきれない回路損失 が40%である。スーパーハイビジョンの場合には,画素数の増加と高フレームレート化 に伴う f の増加,高精細化に伴う電極の線間容量Cと放電電圧Vの増加によって,回路損 失は50%以上になる。 放電に使われる電力から表示出力光への変換効率は一般的に発光効率と呼ばれ,この 効率を高くすることがディスプレイの省電力化に直結する。放電電力のうち実際に紫外 線に変換される割合を放電効率と呼び,2図の例では6%である。放電電力の94%が紫 ふくしゃ 外線を発生させる際の熱エネルギーまたは不要輻射 *1 目的とする紫外線以外の電磁波 が放出されること。 *1 エネルギーとなって失われている。 PDPの省電力化に向けた 材料技術 本山 解説 NHK技研 R&D/No.130/2011.11 14

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PDPの大画面化と高精細化に伴う消費電力の増大を回避するために,電極保護膜を改良し,放電電圧を低電圧化してPDPを省電力化する技術の研究を進めている。当所では,現在使われているMgO電極保護膜の放電電圧の決定要因を理論的に明らかにし,これを低電圧化するための指針を示してきた。また,放電電圧を更に低減するために,新しい電極保護膜材料をパネルに導入し,その製作方法を工夫した。その結果,従来のパネルと比較して放電電圧を30%以上低減することに成功し,PDPパネルを省電力化できる見通しを得た。本稿では,これらの研究を中心に解説する。

1.まえがき当所では,スーパーハイビジョン(SHV:Super Hi-Vision)用の直視型のディスプレイをPDPで実現するための研究を進めている。スーパーハイビジョンでは大画面化と高精細化が求められており,PDPの消費電力の増大が課題となっている。そのため,SHV用のPDPを普及させるためにはいっそうの省電力化が求められる。まず,PDPの発光原理について簡単に説明する(1図)。誘電体とその表面を覆う電極保護膜に被覆された表示電極間の放電によって,封入ガスが励起され紫外線を放出する。この紫外線がセルの内側に塗布された蛍光体を励起して発光する。封入ガスとしてはNe(ネオン)とXe(キセノン)の混合ガスが主に使用され,放電時にXeが紫外線を放射する。各セルにはR(赤),G(緑),B(青)のいずれかの色に発光する蛍光体が塗布されており,3原色の発光を制御してカラー画像を表示する。ここで,一般的なPDPの効率分析の例を2図に示す。入力電力のうち実際に放電に使われる電力の割合を回路効率と呼び,2図の例では60%である。PDPは容量性負荷を持っており,パネルを充・放電する際に電気回路で電力が消費される。この回路損失はfを駆動周波数,Cをパネル容量,Vを駆動電圧とすると fCV2 に比例する。実際には回路損失の多くは電力回収回路によって回収されるが,それでも回収しきれない回路損失が40%である。スーパーハイビジョンの場合には,画素数の増加と高フレームレート化に伴う fの増加,高精細化に伴う電極の線間容量Cと放電電圧Vの増加によって,回路損失は50%以上になる。放電に使われる電力から表示出力光への変換効率は一般的に発光効率と呼ばれ,この効率を高くすることがディスプレイの省電力化に直結する。放電電力のうち実際に紫外線に変換される割合を放電効率と呼び,2図の例では6%である。放電電力の94%が紫

ふくしゃ

外線を発生させる際の熱エネルギーまたは不要輻射

*1目的とする紫外線以外の電磁波が放出されること。 *1エネルギーとなって失われている。

PDPの省電力化に向けた材料技術本山 靖■

解 説

NHK技研 R&D/No.130/2011.1114

可視光出力

前面基板

誘電体

誘電体

放電

紫外線

隔壁

蛍光体

背面基板

書き込み電極

表示電極

電極保護膜

入力電力

回路損失40% ∝ f CV 2

f :駆動周波数

C :パネル容量

V :駆動電圧

熱・不要輻射

隔壁等への吸収

蛍光体損失

隔壁等への吸収

表示出力光

可視光

有効紫外線

紫外線

放電電力

回路効率60%

発光効率

放電効率6%

紫外線利用効率60%

蛍光体効率25%

可視光利用効率80%

この放電効率の低さが発光効率を低下させている最大の原因であり,これを改善することがPDPの省電力化にとって重要である。2章で詳しく述べるが,放電効率を改善するための主要な方法として,紫外線を放射するXeの濃度を高くする技術が知られている1)2)。しかし,Xeの濃度を高くすると放電電圧が上昇するという問題が生じるので,放電電圧を低減させるための電極保護膜の研究が重要となっている。実際に,ここ数年のSID(Society for Information Display)やIDW(International Display Workshops)などの主要な国際会議では,PDP関係の発表件数のうち約半数が電極保護膜に関するものであり,この研究分野の注目度の高さを示している。本稿では,まず,PDPの省電力化における課題について解説し,その課題を解決するための電極保護膜の研究の重要性について述べる。次に,電極保護膜における放電電圧の決定要因について解説する。更に,現在実際に使われているMgO電極保護膜における低電圧化技術について解説し,最後に,MgO電極保護膜に代わる新しい電極保護膜を用いた低電圧化技術の動向を紹介する。

1図 PDPの発光原理(1発光点の拡大図)

2図 PDPの効率分析の例

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3

2

1

00 10 20 30 40 50

100

150

200

250

300

350

正規化した放電効率

Xe 濃度(%)

放電効率

最小維持放電電圧

最小維持放電電圧 (V)

V s

2.PDPの省電力化技術とその課題ここ数年,メーカーにおいてパネル構造や駆動技術などが改善され,PDPの省電力化が進んでいる。その中心となっている技術が紫外線を放射するXeの濃度を高くする技術である。以下,その詳細を説明する。Xeの濃度が高くなると,封入ガス中のXe準安定原子*2

励起された電子を持つ寿命の長い原子。

*2とXe原子とNe原子との3体衝突過程が促進され,蛍光体を励起する波長173nmの紫外線を放出するXe2励起分子(エキシマー)の生成が増加し3),放電効率が改善される。近年,この技術の進展により,従来5%であったXe濃度が2倍以上に高められた。PDPの現在の放電効率は数年前の2倍以上に改善されていると推測される。しかし,Xeガスの濃度を高くすると①放電電圧が上昇する,②放電遅れが大きくなるといった問題が生じる。②の問題を解決するために,電極保護膜の上に放電のトリガーとなる電子を放出するMgOの単結晶粒子を設置する技術が提案されている。この技術を用いることによって,高濃度のXeにおける放電遅れを実用上問題のないレベルにまで改善することができている4)。しかし,①の問題は依然として残っている。3図に示すように,Xeの濃度を高くすると放電効率は高くなるが,放電を維持させるために必要な最小の電圧値(最小維持放電電圧)も高くなる。従って,Xe濃度を高くしすぎると,放電効率は改善できるが,駆動電圧の上昇により V2に比例する回路損失が増大し,放電効率の改善分が相殺されてしまう。また,駆動回路の高耐圧化によるコストの増加や回路面積の増大といった問題も生じる。従って,Xe濃度を高くして放電効率を改善するためには,放電電圧の上昇を抑えるための低電圧化技術が必要となる。PDPの電極保護膜は放電電圧と密接な関係があり,放電電圧の低電圧化を目的とした電極保護膜の研究はPDPの省電力化において重要な研究テーマとなっている。

3.電極保護膜における放電電圧の決定要因PDPの省電力化を進めるためには,放電電圧を低電圧化する必要がある。ここでは,放電電圧の決定要因について解説する。放電における最小放電開始電圧Vfとそのときの電界強度 Emは(1)式~(3)式で表す

3図 Xe濃度と放電効率および最小維持放電電圧Vsの関係(MgO電極保護膜,NeとXeの混合ガス:66kPa)

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500

400

300

200

100

10-3 110-2 10-10

Xe

Ne

He

(V)

Vf

ことができる5)。

(1)

(2)

(3)

ここで,γiは陰極とガスの種類によって決まる2次電子放出利得であり,陰極にガスのイオン粒子1個が入射したときに陰極から放出される2次電子の数で定義される。eは自然対数の底,αは電離係数,pはガス圧,Eは電界である。α/pはガスの種類によって決まる定数 Aと Bを用いて(3)式で近似することができる。4図に(1)式を使って求めたHe,NeおよびXeガス単体におけるVfとγiの関係を示す。4図は γiが高くなるに従ってVfが低下することを示している。PDPでは,陰極の役割を電極保護膜が担うので,電極保護膜の γiが放電電圧を決定する重要な要因となる。従って,PDPを低電圧化するためには電極保護膜の γiの値を高くすることが重要な研究テーマとなる。PDPの場合には,低速イオンが固体(絶縁体)である電極保護膜に入射する。Hagstrumの研究によれば,このような場合には,電極保護膜からの2次電子放出は運動エネルギーではなく,ポテンシャルエネルギーによってほとんど引き起こされる6)。PDPの主な2次電子放出機構は,次の2種類であると考えられている。①Auger(オージェ)中和による2次電子の放出②共鳴中和とAuger(オージェ)脱励起による2次電子の放出(共鳴中和によって入射イオンが準安定原子となり,その準安定原子がAuger脱励起して2次電子を放出する)Auger中和,共鳴中和およびAuger脱励起の電子遷移の様子を5図(a),(b)および

(c)に示す。5図で使用している物理パラメーターを1表で一括して定義する。Auger中和とは,5図(a)に示すように,固体(絶縁体)の価電子帯の電子が入射イオンの基底準位に遷移するとき,この準位間のエネルギー差に等しいエネルギーを価電

4図 He,NeおよびXeガスにおける最小放電開始電圧Vfと2次電子放出利得γiとの関係

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ξ ξ ξ

ε0ε

εCε0

εεC

ε0εC

εg

εV

χ

0

εgεg

0

εVεV

0

価電子帯

伝導帯

絶縁体

(a)Auger中和 (b)共鳴中和 (c)Auger脱励起

絶縁体 絶縁体

イオン イオン 準安定原子

励起準位励起準位

基底準位 基底準位 基底準位

s s s

Ei

Ei EiEmEm

χ χ

子帯の他の電子に与え,エネルギーを与えられた電子が励起する現象である。Auger中和が起こるための必要条件は Ei≧ ζ+εgであり,電子が実際に放出されるための必要条件は Ei>2 ζである。共鳴中和とは,5図(b)に示すように,固体(絶縁体)の価電子帯の電子のエネルギー準位が入射イオンの準安定状態のエネルギー準位(励起準位)と一致するときに,価電子帯の電子が入射イオンの励起準位に遷移する現象である。共鳴中和によって入射イオンは準安定原子になる。共鳴中和が起こるための必要条件は入射イオンの励起準位が0~εvの範囲にあることであり,ε0≧ Ei-Em≧ ζ である。Auger脱励起とは,5図(c)に示すように,準安定原子の励起準位の電子が基底準位に遷移するときに,このエネルギー差に等しいエネルギーを固体(絶縁体)の価電子帯の電子に与え,この電子が励起する現象(5図(c)の実線),または,固体(絶縁体)の価電子帯の電子が準安定原子の基底準位に遷移するときに,この準位間のエネルギー差に等しいエネルギーを準安定原子の励起準位の電子に与え,この電子を更に励起する現象(5図(c)の破線)である。Auger脱励起によって電子が実際に放出されるための必要条件は Em> ζ である7)。なお,電極保護膜とガスの組み合せの種類によって,2次電子放出機構の①または②の両方が起こる場合と,①と②のいずれかが起こる場合と,両方とも起こらない場合がある。Auger中和(5図(a))による電子の遷移確率はイオンと電極保護膜表面の距離 sによって大きく変化するが,低速でイオンが接近する場合にはほぼ100%の確率で遷移が起こることが実験的に確認されている。従って,Auger中和による2次電子放出利得 γN

を導出する際には遷移確率を100%と考えてよく,そのうちの何%が外部に放出されるか

ε : 2次電子のエネルギー※

ε0 : 真空準位のエネルギー※

εc : 伝導帯の底のエネルギー※

εv:価電子帯の頂上のエネルギー※

εg ≡εc-εv : 禁制帯幅χ≡ε0-εc : 電子親和力ζ ≡χ+εg ≡ε0 -εv : 価電子帯の頂上から真空準位までのエネルギーs : 個体表面から入射イオン(または,準安定原子)までの距離Ei:距離sにおけるイオンの電離エネルギー(真空準位と基底準位のエネルギー差)Em:距離sにおける準安定原子の励起エネルギー(励起準位と基底準位のエネルギー差)

※ ε,ε0 ,εc ,εv は価電子帯の底からのエネルギー。

5図 低速イオンによる絶縁体からの2次電子放出機構

1表 5図における物理パラメーターの定義

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という比率を求めれば十分である。当所では,Hagstrumの理論による計算式の簡略化を行い,PDP電極保護膜材料の γNの理論式を導出し,電極保護膜の γNは電極保護膜材料のバンドパラメーターの禁制帯幅 εg,電子親和力 χ,価電子帯幅 εvと入射原子の電離エネルギー Eiでほぼ決まることを示した8)。また,理論式から, εgとχが一定の場合にはεvが小さいほど γNの値が高くなること,εgと εvが一定の場合には χ が小さいほど γN

の値が高くなることなど,電極保護膜の γNを高くするための条件を得た。共鳴中和とAuger脱励起による2次電子放出利得 γDの理論式をHagstrumの理論に基づいて導出した。準安定原子に対する電極保護膜のような絶縁体からの γDの理論式はこれまで導出された例がなく,我々の導出が初めてである8)。理論式から,電極保護膜のγDを高くするための条件を得た。入射イオンによる2次電子放出利得 γiはAuger中和と共鳴中和の遷移の比を

g:(1-g)とすれば,γi= gγN+(1-g)γDで与えられる。また,放電によって生じる準安定原子の2次電子放出利得 γmは γDにほぼ一致すると考えてよく,γm= γDである。これらの理論検討は,その後,高い γiを有する電極保護膜材料の探索,γiを高くするための電極保護膜の改質等の実験を進めるうえで有用な指針となった。

4.MgO電極保護膜における低電圧化技術γiの理論検討を基に,現行のMgO電極保護膜の低電圧化について検討した結果を解説する。4.1 欠陥準位の無いMgO電極保護膜PDPの電極保護膜には,放電電圧が低く,ガス粒子の衝突に対する耐性が良いMgO電極保護膜が30年以上前から使用されている9)10)。その間,MgO電極保護膜の放電電圧の低電圧化を目指して,MgO電極保護膜の2次電子放出利得 γiを調べる実験が行われてきた11)~16)。一方,Xeガスの紫外線放射を利用したPDPパネルが実用化され,各種の希ガスに対するMgO電極保護膜の γiを理論的に検討する必要性が高まっていたが,NeとArに対する理論的検討が報告されただけであった17)。そこで,当所では,3章で導出した理論式を用いて,欠陥準位の無いMgO電極保護膜における希ガスイオンによる γiと準安定粒子(準安定原子とエキシマー)による γmの理論的な検討を行った8)18)19)。計算に使用したMgO電極保護膜のバンドパラメーターを2表に,希ガス原子イオンによる γiの理論値を3表に示す。3表には,実験的に測定されていたMgO電極保護膜の γiも併せて示した11)~16)。ただし,絶縁体では帯電などの影響があるのでイオンによる γiの正確な測定は容易ではなく,各機関からの測定値にはばらつきがある。欠陥準位の無い場合の理論的な γiの値はAr+,Kr+,Xe+においては0であるが,He+とNe+の理論値は測定値とほぼ合っている。一方,Xe準安定原子の γmを理論的に計算した結果,γmは有限の値をとり,Xe準安定

エネルギー (eV)

εvεcε0

χ≡ε0-εcεg ≡εc-εvζ ≡χ+εg

5.011.812.650.856.87.65

2表 計算に使用したMgOのバンドパラメーター

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成膜時の酸素分圧

80

60

40

20

300 400 500 600 7000

発光強度(任意単位)

80

60

40

20

0

発光強度(任意単位)

80

60

40

20

0

発光強度(任意単位)

波長(nm)

300 400 500 600 700波長(nm)

300 400 500 600 700波長(nm)

(a) 16.0mPa

(b) 5.3mPa

(c) 0mPa

F+

F+

F

F

F+ F

*3前の放電で発生したXe準安定原子が次の放電を起こしやすくする効果。

原子によるプライミング効果*3があることが明らかになった。これらの結果において特に重要なことは,MgO電極保護膜に欠陥準位などが無い場合には,MgO電極保護膜に入射する主たる粒子と考えられるXeイオンでは2次電子が放出されず( γi=0),放電が開始しないことを初めて明らかにしたことである8)。しかし,MgO電極保護膜の γiの測定値は有限の値を取っているので,実際のMgO電極保護膜には欠陥準位や不純物準位が存在すると考えられる。MgO電極保護膜の γiを更に高くするためには,これらの欠陥準位や不純物準位についての検討が重要であるということを理論的に初めて明らかにした。

ガス He+ Ne+ Ar+ Kr+ Xe+

理論値

欠陥準位の無い場合 0.329 0.257 0 0 0

欠陥準位の有る場合 0.338 0.273 0.0481 0.0474 0.00300

測定値

IBM,イオンビームより11) - 0.45 0.05 - -

日立,放電特性より12) - 0.25 - - 0.035

Seoul大,イオンビームより13) 0.17~0.35

0.06~0.17 ≦0.05 ≦0.015 ≦0.007

Paul Sabatier大,放電特性より14) 0.13 0.3 0.009 0.009 0.002

PHILIPS,放電特性より15) - 0.5 0.03 - 0.003

Kwangwoon大 ,イオンビームより16) 0.14 0.12 0.06 - 0.04

3表 希ガス原子イオンによる MgO電極保護膜のγiの理論値と測定値の比較

6図 3種類のMgOサンプルのCL測定の結果

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500

電圧(V)

圧力(kPa)

40016.0mPa酸素分圧

5.3mPa

0.0mPa

16.0mPa

5.3mPa

0.0mPa

300

200

100

00 10 20 30 40 50

Vf

Vs

4.2 欠陥準位の有るMgO電極保護膜MgO電極保護膜における欠陥準位の研究で,バンドギャップ中に生じるエネルギー準位によって,放電電圧が影響を受ける可能性があることが報告されている20)21)。MgO電極保護膜の成膜時の条件がバンドギャップ中に生じるエネルギー準位にどのような影響を与えるのかを調べるために,基板温度や酸素分圧を変えて成膜したMgO電極保護膜をカソードルミネッセンス(CL:Cathodoluminescence)測定*4 *4

試料に電子線を照射した際に放出される光を検出する測定手法で,結晶における微量な格子欠陥や不純物の準位を調べるのに適している。

した結果も報告されている22)23)。しかし,いずれの報告においても,バンドギャップ中に生じるエネルギー準位と放電電圧や2次電子放出利得との関係は明らかにされていなかった。当所では,成膜時の酸素分圧を16.0mPa,5.3mPaおよび0.0mPaとして成膜したMgO電極保護膜を製作し,CL測定と放電電圧の測定を行った。CL測定の結果を6図に,放電電圧の測定結果を7図に示す。6図においては,全てのサンプルで400nm付近と510nm付近にCLピークが観測される。観測されたCLピークはMgOのバンドギャップ6.8eV(波長換算で182nm)とは異なるので,これらのピークは欠陥準位や不純物準位に関与したものと考えられる。MgO結晶において,F+センター(酸素欠損に電子が1個捕獲されたもの)またはFセンター(酸素欠損に電子が2個捕獲されたもの)に捕獲されている電子が伝導帯に励起された後,再結合する過程での発光がそれぞれ375nm,525nmの波長になるという報告があり(8図)24)25),6図にある2つのCLピークがこれに相当する。3種類のサンプルを比較すると,MgO電極保護膜の成膜時の酸素分圧が高いほど,酸素の欠陥準位によるCL強度,特に,F+が大きくなっていることが分かる。一方,放電電圧に関しては,7図に示すように,MgO電極保護膜の成膜時の酸素分圧が高くなるほど最小放電開始電圧 Vfと最小維持放電電圧 Vsが低くなる。成膜時の酸素濃度を高くすることによってMgO電極保護膜における酸素の欠陥密度が高くなり,放電電圧を低減することが可能になる。このように,MgO電極保護膜における欠陥準位と放電電圧との関係を初めて明らかにすることができた26)。更に,MgO電極保護膜において,価電子帯の電子と共に,F+センターおよびFセンターに捕獲されている電子もAuger過程による2次電子放出にかかわり,その遷移確率がCL強度に比例すると仮定して,希ガス原子・分子のイオンによる γiおよび準安定原

7図 成膜条件を変えて作製したMgO電極保護膜を用いたパネルの放電電圧

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伝導帯

価電子帯

525nm375nm

Fセンター

F+センター

λλ

子・エキシマーによる γmの理論値を求めた26)27)。 γiに関する結果を3表に示す。欠陥準位の有る場合の γiの理論値はAr+,Kr+,Xe+においても0ではなく,希ガスの種類に対応した変化の様子は欠陥準位の無い場合よりも測定値とよく合っている。また,PDPにおいて,電極保護膜に入射する主たる粒子と考えられるXeイオンによる γiが有限な値を持つことを初めて理論的に示した。欠陥準位によってMgOの放電電圧が低減できることを実験と理論の両面から初めて示すことができた。これらの結果は,その後のMgO電極保護膜における欠陥準位や不純物準位の研究にとって有効な指針を与えるものとなった。

5.新しい電極保護膜における低電圧化技術欠陥準位や不純物準位を制御することによって,MgO電極保護膜における放電電圧を低減する技術は現在かなり進んでおり,更なる改善は容易ではない。そこで,放電電圧の抜本的な低減を目指した研究として,MgOに代わる低電圧電極保護膜材料の研究,すなわち,高い γi値を有する電極保護膜材料の研究を解説する。これまで,MgO以外の絶縁体の γi値の理論計算はBaOだけであった28)。当所では,まず,高い γi値を持つ絶縁材料を探索するために,いくつかの欠陥準位の無い絶縁材料について,γN値の理論計算を行った8)29)。結果を4表に示す。4表からMgOよりも大きな γi値を持つ材料として,CaO,SrO,BaOおよびY2O3が考えられる。アルカリ土類金属*5

Ca,Sr,Ba,Raの4元素。*5の酸化物(CaO,SrO,

BaO)は低電圧電極材料として実験的に古くから知られており30),今回,初めてそれを理論的に確認した。4種類の電極保護膜を作製し,実験をした結果,以下のことが明らかになった。BaOは化学的な安定性が特に弱く,室温の大気中にさらしただけで低電圧特性が劣化する。Y2O3はMgOより放電電圧は低いが,その差は10V以下と小さい。そこで,当所ではMgOに代わる低電圧電極保護膜材料として,SrOとCaOを中心とした複合酸化物について研究を進めた。5.1 SrCaO電極保護膜PDP開発初期のNeオレンジ単色発光のPDPにおいて,SrCaO電極保護膜を用いた場合にMgO電極保護膜より低い放電電圧となることが報告されていた。しかし,そのガスの組成は蛍光体を励起する今日のカラーPDPと大きく異なる(Xe濃度にして1/20以下)だけでなく,発光効率などは測定されていなかった30)31)。その後,SrCaO電極保護膜の再検討32)や,さまざまな材料の電極保護膜がカラーPDP用に検討されてきたが,MgO

8図 CLで観測されるMgO結晶の酸素欠損に起因する発光

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電極保護膜より低い放電電圧の報告はなかった。SrCaO電極保護膜で低い放電電圧の報告がなかった理由は,SrCaO中のSrOやCaOは大気中の水や二酸化炭素と反応しやすく,Sr(OH)2やCa(OH)2の水酸化物やSrCO3やCaCO3の炭酸塩に変化し,これらの水酸化物や炭酸塩の γi値が酸化物の γi値よりも小さかったからである。従って,前面板と背面板を大気中で焼成・封着 *6

パネルの前面板と背面板を高温で溶かしたシール材で接合すること。

*6する従来の製作法で製作したパネルでは,SrCaO電極保護膜を用いても低い放電電圧特性が得られない。これを解決する方法として,加熱してSrCO3やCaCO3の炭酸塩を再びSrOやCaOに戻す方法があるが,ガラスの融点よりも高い温度で加熱する必要があり,現在のPDPの製作工程には導入できない。そこで,当所では,水や二酸化炭素の影響を除くために,高温の窒素雰囲気中でパネル封着を行う実験装置を製作した。以下,この装置を用いて製作したパネルで低い放電電圧特性が実現できたことを紹介する33)34)。前面基板上の表示電極を覆う透明絶縁体の表面に電子ビーム蒸着法でSrCaO電極保護膜を形成した。SrCaO蒸着材料にはSrOとCaOの組成比が50%のSr0.5Ca0.5Oを用いた。X線回折装置を用いて,形成したSrCaO電極保護膜を測定した結果,膜の組成比はSr0.62Ca0.38Oであった。Xeガスの圧力がパネル全体の圧力に占める比率(濃度)とSrCaO電極保護膜の Vfおよび Vsの関係を9図に示す。9図には比較のために,従来のMgO電極保護膜の測定結果も併せて示した。Xe濃度5%~30%のNeとXeの混合ガスにおいて,SrCaO電極保護膜を用いたパネルの Vfおよび Vsは従来のMgO電極保護膜を用いたものと比較して20%~40%低い。この結果は,今回製作したSrCaO電極保護膜が,現在,最も低い電圧で放電する電極保護膜であることを示している。SrCaO電極保護膜を用いたパネル(NeとXeの混合ガス:66kPa,Xe濃度:10%および30%,緑色蛍光体)の発光効率を測定した。比較のために,MgO電極保護膜を用いたパネルの発光効率も測定した。10図に維持放電パルス電圧 Vsと発光効率の関係を示す。なお,維持放電パルス電圧は各パネルを駆動できる最小値である。2章で述べたように,Xe濃度を高くするに従って発光効率だけでなく,パネルの駆動電圧が上昇するという問題がある。10図は,Xe濃度を10%から30%にした場合,SrCaO,MgOいずれの電極保護膜においても,発光効率は高くなるが,維持放電パルス電圧の駆動範囲も高くなることを示している。MgO電極保護膜の場合には維持放電パルス電圧(最小値)を160Vから210Vにする必要があり,回路損失の電力は約1.72倍になる。SrCaO電極保護膜の場合には,Xe濃度が30%の場合でも,MgO電極保護膜を用いたXe濃度が10%のパネルと同等の維持放電パルス電圧(160V~200V)で駆動することができた。160V~200Vの範囲で,等しい電圧でパネルを駆動した場合に,SrCaO電極保護膜を用いたXe濃度が30%のパネルの発光効率は,MgO電極保護膜を用いたXe濃度が10%のパネルの発光効率の1.8倍~

ガス He+ Ne+ Ar+ Kr+ Xe+

MgO 0.329 0.257 0 0 0

BaO 0.362 0.326 0.232 0.211 0.0830

SrO 0.383 0.358 0.299 0.289 0.242

CaO 0.325 0.278 0.0856 0.00295 0

Y2O3 0.370 0.291 0 0 0

ZrO2 0.237 0.133 0 0 0

Al2O3 0.195 0.0489 0 0 0

SiO2 0.225 0.0391 0 0 0

4表 各種の絶縁体材料における希ガス原子イオンによるγNの理論値

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350

300

250

200

150

100

50

00 10 20 30

(NeとXeの混合ガス:66kPa)

SrCaOのVs

SrCaOのVf

MgOのVf

MgOのVs

Xe濃度(%)

放電電圧(V)

0

1

2

3

4

5

6

100 150

(緑色蛍光体)

200 250 300

SrCaO,Xe:30%

MgO,Xe:30%

MgO,Xe:10%

SrCaO,Xe:10%

発光効率(lm/W)

維持放電パルス電圧(V)

1.9倍である。電圧が等しい場合の輝度はほぼ等しいが,放電電流は1/1.8~1/1.9であった。すなわち,SrCaO電極保護膜を使用し,Xe濃度を高くすることによって,輝度と駆動電圧が従来のPDPと同じ場合に,放電電流を約1/2に,発光効率を約2倍に改善することができた35)。SrCaO保護膜を用いたXe濃度30%のパネルを維持放電パルス電圧160Vで駆動している様子を11図に示す36)。低電圧電極保護膜を用いたパネルを高温の窒素雰囲気や真空中などで製作することで,放電電圧を大幅に低減でき,発光効率を改善できることが明らかになった。この報告の後,SrOやCaOなどを用いた低電圧電極保護膜に関する研究が活性化し,国際会議などにおける報告件数も増加した。5.2 CaMgO電極保護膜SrCaO電極保護膜のパネルを製作するためには,高温の窒素雰囲気中や真空雰囲気中でパネルを製作する必要がある。製造装置が高価になり,製造工程も複雑になる。低電圧電極保護膜を実用化するためには,現行の高温大気中での製造プロセスにおいても,

9図 SrCaO電極保護膜を用いたパネルの放電電圧

10図 SrCaOおよびMgO電極保護膜における発光効率と維持放電パルス電圧(NeとXeの混合ガス:66kPa,パルス周波数:20kHz)

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電極保護膜の低電圧特性が劣化しないことが求められる。高温大気中での製造プロセスに導入可能な技術として,CaOやSrO電極保護膜を安定性の高いMgOの薄膜でコートし,パネル製作後,放電によるスパッターでこのMgO膜を除去する方法が提案されている37)38)。この場合には,膜を2層構造とするための工程の増加や,MgO膜を除去するためのエージング時間などが課題となる。当所では,単層のCaMgO電極保護膜において,成膜時の膜質制御と膜組成の最適化を行い,低い放電電圧と高い化学的安定性を両立させるための技術の開発を進めている39)40)41)。この研究については本号の報告「PDP用低電圧電極保護膜の化学的安定性の改善」で詳しく述べる。

6.あとがき本稿では,PDPパネルの発光効率を改善し,省電力化する技術について,当所における電極保護膜の低電圧化技術を中心に解説した。現行のPDPを低電圧化してきたこれまでの改善は,MgO電極保護膜における欠陥準位や不純物準位の制御など,小さな改善の積み重ねによるものである。一方,今回紹介したような新しい電極保護膜を実用化するためには,低電圧特性だけでなく,高温の製造プロセスに対する耐性なども考慮する必要がある。更なる省電力化が可能な新しい電極保護膜の実用化が期待されている。

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11図 SrCaO電極保護膜を用いた実験パネル(NeとXeの混合ガス:66kPa,Xe濃度:30%,維持電圧パルス:160V,パルス周波数:20 kHz)

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もとやま やすし

本山 靖1986年入局。新潟放送局を経て,1989年から放送技術研究所にて,プラズマディスプレイパネルの研究に従事。現在,放送技術研究所表示・機能素子研究部主任研究員。博士(工学)。

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