Oracle WebLogic Suiteを使用した、エンタープライズJavaの効果的な仮想化

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Oracle ホワイト・ペーパー 2010 4 Oracle WebLogic Suite を使用した、 エンタープライズ Java の効果的な仮想化

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Oracle WebLogic Suiteは運用レベルと実行時レベルでのイノベーションを通じて、Java EEデプロイメントの効果的な仮想化を実現する業界唯一のインフラストラクチャを提供します。このテクニカル・ホワイト・ペーパーでは、Java EEアプリケーション向けの新しい仮想化デプロイメント・パラダイムを支えるテクノロジーについて詳しく説明します。また、これらの進歩に貢献しているテクノロジーだけでなく、運用環境でのメリットについても説明します。

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Oracle ホワイト・ペーパー

2010 年 4 月

Oracle WebLogic Suite を使用した、

エンタープライズ Java の効果的な仮想化

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「Oracle WebLogic Server on Oracle JRockit Virtual Edition を使用すれば、仮想化による効率を得る代わりに専用ハードウェア

のパフォーマンスをあきらめるといったトレードオフは必要ありません。Oracle VM 上でOracle WebLogic Server on Oracle JRockit

Virtual Edition を実行すると、この両方を実現できるだけでなく、信じられないほどの簡便性とセキュリティが手に入ります」

-オラクル Vice President、Adam Messinger

はじめに

何年にもわたってハードウェアの利用効率が低迷し、運用コストは上昇し、データセンターが急

速に拡大し続けたことで、仮想化はもっとも説得力のある IT テクノロジーとなりました。デスク

トップおよびサーバー環境での仮想化はここ数年で発展を続けた結果、運用コストの削減とハー

ドウェア利用効率の向上という期待をついに実現しました。仮想化によって多数の問題が解決さ

れた一方で、複数の層やコンポーネントで構成された複雑なアプリケーションをデプロイし、運

用化することは依然として困難な状況にあります。さらに現在、仮想化は必需品となりつつあり、

仮想化による次の恩恵を受けるために、オペレーティング・システムをターゲットとした仮想化

からより直接的なアプリケーションの仮想化へと焦点が移ることが予想されています。これを実

現するため、データセンターでのコスト効率を高める手段として、Platform as a Service(PaaS)

イニシアチブに対する評価と導入が進んでいます。現在のところ、このレベルの仮想化はアプリ

ケーション・プロバイダやインフラストラクチャ・プロバイダによって十分にサポートされてい

ないため、実際の移行には困難が伴うことが考えられます。Sun の買収を終えたオラクルは、自

身がテクノロジー・スタック全体を通じた統合機能を提供できる唯一の立場にあることを認識し

ました。また、PaaS の提供に最適で運用可能な包括的統合環境を提供することで、仮想化に対す

るコスト削減への期待を次のレベルへと引き上げます。

Oracle WebLogic Suite は運用レベルと実行時レベルでのイノベーションを通じて、Java EE デプ

ロイメントの効果的な仮想化を実現する業界唯一のインフラストラクチャを提供します。このテ

クニカル・ホワイト・ペーパーでは、Java EE アプリケーション向けの新しい仮想化デプロイメ

ント・パラダイムを支えるテクノロジーについて詳しく説明します。また、これらの進歩に貢献

しているテクノロジーだけでなく、運用環境でのメリットについても説明します。

仮想化とは

仮想化とは、複数のオペレーティング・システムやアプリケーションによる同一ハードウェア・

リソースの共有を実現しながら、厳密に独立性を維持した方法で、CPU、メモリ、ストレージ、ネッ

トワーク・インタフェースなどのハードウェア・リソースを抽象化するプロセスを意味します。

この際ハードウェアでは、複数のオペレーティング・システムのインストールを可能にする仮想

化ソフトウェア(ハイパーバイザなど)が実行されます。それぞれのオペレーティング・システ

ムは専用のセキュアな環境において、同時に実行することも単独で実行することもできます。

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仮想化環境では、それぞれ分離されたパーティションでオペレーティング・システムとアプリケー

ションが実行されます。それぞれのパーティションは、独自の[仮想化]CPU、ネットワーク・イン

タフェース、ストレージ、オペレーティング・システムを備えた専用の物理コンピュータである

かのように動作します。図 1 に、複数のアプリケーションをハイパーバイザ・ベースの仮想化環

境にデプロイした例を示します。

図 1:ハイパーバイザ・ベースの仮想化環境でのアプリケーション実行

IT に対する仮想化の目的はそれぞれ異なりますが、一般に次のカテゴリのいずれかに当てはまります。

1. アプリケーション密度の向上、冷却コストおよびラック・スペースの節約を目的とした

ハードウェア統合

2. プロビジョニングしたハードウェアの利用効率の向上

3. 新規アプリケーションおよびインフラストラクチャのプロビジョニングの迅速化

4. デプロイ済みシステムのフォルト・トレランスおよび再構成に対する動的管理の改善

5. 同一ハードウェア上のオペレーティング・システムおよびアプリケーションの独立性の確保

6. 同一ハードウェア上でのレガシー・ソフトウェアと新しいソフトウェアの実行

ミドルウェア仮想化の課題

ほとんどのミドルウェアは仮想化環境でまったく問題なく機能しますが、複雑なアプリケーショ

ンを効果的に管理できるかどうか、また容易にデプロイできるかどうかといったアプリケーショ

ン固有の管理課題が存在します。大部分のミドルウェア・アプリケーションは複数の層(UI、計

算、キャッシング、永続性など)で構成されていますが、従来の仮想化インフラストラクチャは

デプロイメントの一貫性と正確性を保証する機能をほとんど提供していないため、新規デプロイ

メントのロールアウトには困難を伴う可能性があります。さらに悪いことに、仮想化環境を相手

にする場合、開発、テスト、本番などの各種環境からの移行はさらに複雑になります。これらの

懸念と課題に対処するため、仮想化デプロイメントを効果的に管理し、特に Java EE アプリケー

ション向けに最適化された環境を提供する機能が WebLogic Suite に追加されました。

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仮想化環境をデプロイする際の運用上の複雑さに関する問題を解決するのは、Oracle VM、Oracle

Virtual Assembly Builder、および Oracle WebLogic Server on Oracle JRockit Virtual Edition という 3 つ

の重要なテクノロジーです。

Oracle SOA Suite や Oracle WebCenter などの Oracle Fusion Middleware をベースとするアプリケー

ションのランタイムで WebLogic Suite を使用すると、これらの新しい仮想化機能を利用できます。

WebLogic Suite に対して認定されているアプリケーションであればすべて、Oracle VM 上での実行

や Oracle Virtual Assembly Builder を介して利用できる機能の使用が認定されています。SOA ベー

スのアプリケーションは複雑になる傾向があるため、特に、仮想アプライアンスを作成し、デプ

ロイしやすいアセンブリを構成するという概念は、デプロイを簡素化および迅速化するという点

から説得力を持ちます。この場合、アプリケーションが通常環境のライフ・サイクル(開発、テ

スト、本番)を進む際、構成エラーによるリスクが軽減されます。

物理的なデプロイメントの仮想イメージを作成するという、物理環境から仮想環境への移行(P2V)

は一見すると簡単に思えます。しかし、これは必然的にイメージ・スプロールをもたらし、それ

ぞれのイメージに OS レイヤーとアプリケーション・レイヤーのパッチを適用する必要があるため、

保守のオーバーヘッドと予想外のコストを発生させます。次の項では、ソフトウェア・アセンブ

リがアプリケーション間でのイメージの再利用を通じて、どのようにこの問題に対処するかにつ

いて確認していきます。

Java ミドルウェアは Java 仮想マシンを使用してすでに仮想化されています。この環境をハイパー

バイザ上で実行すると、望ましくないアプリケーション待機時間が発生します。カスタム Java EE

アプリケーションの場合、Oracle WebLogic Server on Oracle JRockit Virtual Edition を介して最適化され

た実行時環境を利用できるため、従来の仮想化環境と比べて大幅にパフォーマンスが向上します。

ソフトウェア・アセンブリ

アセンブリとは相互に関連するソフトウェア・アプライアンスの集合体であり、デプロイ時に自

動的に構成されます。アセンブリは通常、高水準のハードウェア利用率と効率を確保するため、

一連の仮想化ハードウェア・リソース上にデプロイされます。

アセンブリが仮想アプライアンスの集合体に相互接続を定義しただけのものであるとは言っても、

本番環境で有効に機能するためには、基本となる一連の原則に従う必要があります。次に、その

基本的な原則を示します。

1. 仮想アプライアンスだけでなく外部システムの構成を考慮に入れます。

2. アセンブリ自体を破損する恐れがなく容易に変更できるように、構成をメタデータの形で

外部化します。例としては、仮想 IP アドレスや仮想 LAN およびディスク・ボリュームが

あります。

3. 構成要素となるアプライアンス間で、バージョン(およびパッチ)レベルの依存関係を定

義します。

4. 起動順序や動的な起動パラメータを定義できるようにします。

5. メタデータの定義、デプロイ、監視、および診断ができる既存の管理インフラストラクチャ

に適合した管理手法を提供します。

アセンブリは仮想アプライアンスで構成されているだけでなく、アセンブリ自体に含まれていな

いシステムへの外部参照も含みます。これは、データベースや JCA エンドポイントなど、アセン

ブリに含むことができない、もしくは含むべきでないインフラストラクチャを加えるために欠か

せない手段です。

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「私たちが CERN オープン・ラボ・パートナーシップとの関連で Oracle WebLogic Server on Oracle JRockit Virtual Edition の

テストを実施した結果、CERN にとって目覚しいメリットがあることが明らかになりました。このソリューションではゲスト・

オペレーティング・システムが不要になるため、CERN のミドルウェア・ソリューションの保守が大幅に簡素化されるだけで

なく、費用対効果に優れたオンデマンドのスケーラビリティが実現できます。概して言うと、Oracle WebLogic Server on Oracle

JRockit Virtual Edition を使用することで、ユーザーの要求により素早く対応できるようになります」

-CERN コンピュータ科学者、Carlos Garcia Fernandez

Oracle Virtual Assembly Builder インフラストラクチャおよびその関連ツールは上述した原則に厳密

に従うことで、オラクルだけが提供できる包括的な Java EE 仮想化インフラストラクチャを実現し

ます。

アセンブリの持つ力

あらかじめ構築されたアセンブリをデプロイ向けに作成できるという概念は極めて強力であり、

運用のコストと複雑さを軽減するために役立つ多数のメリットを備えています。次にその例をあ

げます。

本番環境で簡単にアセンブリを複製することができ、さらに複雑さを増すことなくアセンブリ

の変形を作成できます。

開発、テスト、本番といった環境間をアセンブリが移行する際、構成エラーのリスクを軽減で

きます。

複製された環境では、アプリケーション・インフラストラクチャ間で高水準の標準化と一貫性

が維持されるため、ベスト・プラクティスを導入することが容易になります。

新規アプリケーションおよびインフラストラクチャのデプロイが迅速に実行できます。

Oracle Virtual Assembly Builder

シンプルな方法を使用して、仮想アプライアンスを含むより複雑なアセンブリを構成することが

求められています。特に必要とされているのは、仮想アプライアンスに加えて、データベースや

ERP システムなどの仮想アプライアンス・ベースでない大規模システムや外部化されたシステム

に対するエンドポイント・マッピングを構成できるツールです。

Oracle WebLogic Server Enterprise Edition と Oracle WebLogic Suite に含まれる Oracle Virtual Assembly

Builder は、直感的なビジュアル環境とコマンドライン・インタフェースからなるツール・セット

です。このツールを使用すると、管理者やデプロイ担当者は、複雑化する可能性のあるアプリケー

ション構造またはインフラストラクチャを構成する、すべてのコンポーネントやシステムを包含

する完全なアセンブリを構築できます。図 2 に Oracle Virtual Assembly Builder Studio のスクリーン

ショットを示します。

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図 2:Oracle Virtual Assembly Builder Studio

Oracle Virtual Assembly Builder の機能は次のとおりです。

既存のアセンブリおよび仮想アプライアンスのカタログを表示する機能を使用すると、既存イ

ンフラストラクチャを簡単に再利用できます。

メインのアセンブリ・エディタを使用すると、既存のアプライアンスや外部システムに基づい

て新規アセンブリを宣言的に構成できます。図 2 に示したとおり、アセンブリ・エディタ・セ

クションにはエントリおよびプロトコルのエンドポイントが表示されており、ドラッグ・アン

ド・ドロップを使用して簡単にこれらをアプライアンス間で接続できます。

プロパティ・インスペクタにはアセンブリ・コンポーネントのプロパティ(メタデータ)が表

示されており、編集することもできます。

自動パッケージ機能により、複雑な多層アプリケーションから自己完結型のソフトウェア・ア

プライアンスおよびアセンブリのセットが生成されます。

アプリケーションの構成および相互依存性を分析できます。

完全な構成定義をもとにテンプレートを作成することで、簡単なデプロイを実現します。

1 つの手順だけで、多層アプリケーション全体を仮想化リソース上にデプロイできます。

アセンブリを作成し、デプロイするプロセスは図 3 に示すとおり、4 つの簡単なステップからなる

分かりやすいものです。最初のイントロスペクション・フェーズで、アセンブリ内のアプライアン

スを構成するすべてのコンポーネントに対して、必要なメタデータと構成情報が物理デプロイメン

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トから取得されます。次に、アプライアンスおよび外部リソース間での関係が確立されます。パッ

ケージ・プロセスでは、特定の仮想化プラットフォーム(仮想イメージなど)に関連するアセン

ブリに必要なデプロイメント・アーチファクトが作成されます。最後のデプロイ・フェーズで、

開発、テスト、または本番環境に対してアセンブリがデプロイされます。

図 3:アセンブリの作成およびデプロイ・プロセス

このプロセスに従うと、次のような多数のメリットが得られます。

新規デプロイメント環境を手動で作成する必要がなくなります。仮想化リソースのプールが配

置されたら、追加の構成やセットアップを必要とすることなく簡単にアセンブリをデプロイで

きます。

時間とともに仮想アプライアンスと仮想リソースのカタログが確立され、作業を効率的に再利

用できるようになります。

Oracle Virtual Assembly Builder は、便利な P2V プロセスを提供します。

Oracle Virtual Assembly Builder のコマンドライン機能を使用すると、仮想アプライアンスおよびア

センブリを作成、構成、プロビジョニング、およびデプロイするプロセスがエンド・ツー・エンド

で自動化されます。

Oracle Virtual Assembly Builder は、仮想化リソースへアプリケーションとインフラストラクチャを

デプロイする際のオラクル推奨メカニズムとして位置づけられています。

外部リソース

アセンブリを作成する際、アセンブリ内に移動することができないシステムを組み込む必要があ

る場合があります。しかし、外部システムをパッケージ化してアセンブリ・パッケージ内に含め

ることは推奨されていません。このため、Oracle Virtual Assembly Builder では、仮想アプライアン

スの作成および構成機能だけでなく、仮想アプライアンスにパッケージできない外部システム

(データベースなど)のイントロスペクション機能が提供されています。これにより、もう 1 つの

仮想アプライアンスであるかのように、外部システムをアセンブリの一部として簡単に参照でき

るため、構成およびデプロイ・プロセスが一貫性を持つ簡単なものになります。

Oracle Virtual Machine

あらゆる仮想化デプロイメントでは、基盤となる堅実なハイパーバイザに加えて、プロビジョニ

ング、クローニング、VM 移行、高可用性を実現する管理機能が不可欠な重要要素になります。

Oracle Virtual Machine(Oracle VM)はハイパーバイザ・レイヤーだけでなく、Oracle WebLogic Server

on Oracle JRockit Virtual Edition を含むすべての Oracle Fusion Middleware の仮想化に対する基盤と

して、管理機能を提供します。

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最適な Java EE 仮想化

最新の仮想化テクノロジーは数多くの問題を解決してきましたが、依然としてパフォーマンスは

懸念の対象から外れておらず、特に Java ベースのサーバー・サイド・アプリケーションで問題が

存続しています。アプリケーションをハイパーバイザ上にデプロイした場合、全体的なアプリケー

ション・パフォーマンスにいくらかの悪影響が及びます。この原因の一端は、ハイパーバイザ・

レイヤーの I/O 制限に加えて、複数になる場合のあるゲスト・オペレーティング・システムやアプ

リケーション間で CPU タイムが分割されることにあります。

Oracle WebLogic Server on Oracle JRockit Virtual Edition の導入を通じて、オラクルは Java ベースの

ミドルウェアを仮想化環境にデプロイするための新たな方法を提供します。この方法を使用する

と、ハイパーバイザ上で実行する際に通常生じるパフォーマンスやスケーラビリティへの悪影響

を招くことなく、Java EE アプリケーションを仮想化環境にデプロイできます。

Oracle JRockit Virtual Machine の仮想マシン・レイヤーの発展に伴って、Oracle WebLogic Server は

ハイパーバイザ上で直接実行できるようになりました。これにより、ゲスト・オペレーティング・

システムの必要性が排除され、ゲスト・オペレーティング・システムとホスト・オペレーティン

グ・システムというレイヤーが不要になるため、貴重なリソースの消費やオーバーヘッドの発生

を回避できます。この結果、安全性、性能、スケーラビリティが向上し、従来の物理的デプロイ

に匹敵するパフォーマンスを提供する仮想化デプロイメントが実現されます。

Oracle JRockit Virtual Edition

Oracle WebLogic Server on Oracle JRockit Virtual Edition について理解するには、Java EE デプロイメ

ントの最適化を可能にする基盤について理解しておく必要があります。この基盤を提供するのが

Oracle JRockit であり、ここからはその技術的特性について説明します。

Oracle JRockit Java Virtual Machine はサーバー・サイドの Java 仮想マシンとして最高性能を誇ると

ともに、x86 および SPARC ベースのハードウェア上で Oracle WebLogic Server を実行している顧客

に人気のある Java 仮想マシンです。Oracle WebLogic Server にバンドルされた JRockit は、卓越し

たリアルタイム機能に加えてアプリケーション待機時間やメモリ・リークの診断ツールを提供し

ます。

Oracle WebLogic Server on Oracle JRockit Virtual Edition のおもな設計目標は、明確に仮想化デプロ

イメント向けに最適化された実行環境を提供することにあります。Oracle WebLogic Server は必要

なすべての要素(CPU、ディスク I/O、ネットワークなど)について、基盤となる Java 仮想マシン

と直接やり取りします。このため、オペレーティング・システム・リソースを直接利用しない Java

アプリケーションでは、ハイパーバイザを使用するほとんどのデプロイメントで必要なゲスト・

オペレーティング・システムが不要になります。

JRockit Java 仮想マシンで通常必要となるオペレーティング・システム・サービスは、JRockit Virtual

Edition 自体に実装されています。JRockit Virtual Edition は JRockit 仮想マシンをハイパーバイザ上

で直接実行するために必要なオペレーティング・システム機能を提供します。これはほとんどの

基本的アプリケーションに必要とされるベース・サービス(CPU、ディスク I/O、ネットワーク)

として見なすことができ、残りの機能は Java Runtime Environment(JRE)によって提供されます。

これらのサービスはできる限り軽量に実装されているため、ゲスト・オペレーティング・システ

ムや関連する多数のプロセスによって生じるすべてのオーバーヘッドを回避できます。図 4 は、

Java アプリケーションをホストする JRockit Virtual Edition の概念図を示したものです。

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図 4 に、従来の仮想化 Java ソリューションと JRockit Virtual Edition を使用した簡易ソリューショ

ンの比較を示します。

図 4:従来の仮想化スタックと JRockit Virtual Edition スタックの比較

JRockit 仮想マシンによるメリット

基盤となるハイパーバイザ上で JRockit を直接実行できるため、ゲスト・オペレーティング・シス

テムを気にすることなく、仮想化ハードウェアの持つ能力すべてを Java 仮想マシンだけに費やす

ことができます。その結果、ハードウェアの利用効率が向上するため、より優れたパフォーマン

スとスケーラビリティが得られます。さらに、1 つのハードウェア上でより多くの処理を実行でき

るようになります。ゲスト・オペレーティング・システムが消費していたリソースが解放される

ため、ゲスト・オペレーティング・システムを必要とする従来の仮想化環境と比較して、同じハー

ドウェア上でより多くの Oracle WebLogic Server インスタンスを実行できます。その他の利点は、

以下のとおりです。

JRockit Virtual Edition にこの機能が含まれるため、オペレーティング・システムの構成1、チュー

ニング、パッチ適用といった作業が不要になります。この結果、大幅に運用コストを節約でき

ます。JRockit Virtual Edition の構成は驚くほど簡単であり、CPU、ネットワーク、仮想ディス

ク2、仮想メモリに関する基本的パラメータを 1 つの XML 構成ファイルに指定するだけで完

了です。図 5に JRockit Virtual Edition 構成ファイルの代表的な例を示します。非常に簡単に Java

VM の構成が実行できることが分かります。

1 通常のオペレーティング・システムには数千個の構成ファイルが含まれています。

2 仮想ディスク・パラメータには NFS マウント・ポイントを指定します。

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図 5:JRockit Virtual Edition の構成ファイル例

オペレーティング・システムをセキュアに維持するためのコストと労力は、見過ごすことはで

きない要素です。セキュリティに関する各種ニュースを読み、それぞれの運用環境への影響を

評価するため、管理者はかなりの時間を割いています。ゲスト・オペレーティング・システム

が不要になることで、セキュリティに関するもっとも大きな悩みの種が取り除かれます。これ

により、運用スタッフはこの作業項目を日常作業から外すことができます。

管理者は、オペレーティング・システムの管理ではなくアプリケーションに集中できます。

JRockit Virtual Edition を使用すると、オフラインでの構成およびパッチ適用がサポートされる

ため、アプリケーションのパッチ適用がさらに簡単になります。これは、Linux、UNIX、Windows

を含む従来のオペレーティング・システムでは実現できなかったことです。

JRockit Virtual Machine のインスタンス起動は数秒で完了するため、ゲスト・オペレーティン

グ・システムを含む従来の仮想化システムが数分かかることを考えると、大幅にプロビジョニ

ングを迅速化できます。これにより、ユーザー要求に素早く適応する能力を備えた、より動的

なデプロイ環境を実現できます。

Oracle WebLogic Server on Oracle JRockit Virtual Edition

Oracle WebLogic Server on Oracle JRockit Virtual Edition は、Java EE アプリケーション向けに最適化

された包括的な仮想化ランタイム環境を提供します。図 6 に Oracle WebLogic Server on Oracle JRockit

Virtual Edition 実行スタックの図を示します。

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図 6:Oracle WebLogic Server on Oracle JRockit Virtual Edition の実行スタック

デプロイメントの概念的枠組みは新しくなりますが、WebLogic Server アプリケーションの開発、

デプロイ、および管理に慣れたユーザーであれば、既存の知識、ツール、およびテクニックを利

用できます。アプリケーションの開発とデプロイのプロセスは、仮想化されていない従来のデプ

ロイメント・パラダイムと一貫性を持ちます。仮想アプライアンスは WebLogic Server ドメインに

基づいて、簡単に作成できます。これらのドメインはデプロイ済みのアプリケーションを使用し

て事前に生成することも、仮想化環境で稼働中の WebLogic Server にデプロイされたアプリケー

ションに対して汎用にすることもできます。

また、WebLogic Scripting Tool(WLST)スクリプト、WebLogic Server Management Console、および

weblogic.Deployer などの WebLogic Server 管理ツールを使用して、Oracle WebLogic Server on Oracle

JRockit Virtual Edition を管理できます。WebLogic Server のコードベースにはランタイム変更が実施

されていないため、Oracle WebLogic Server on Oracle JRockit Virtual Edition への移行リスクが低く

抑えられています。さらに、AD4J や JRockit Mission Control などの監視および診断ツールは、非仮

想化デプロイメント環境と同様に機能します。

Oracle WebLogic Server on Oracle JRockit Virtual Edition はシンプルなコマンドライン・ツール

(wlsveimagetool.jar)を提供しており、WebLogic Server ベースの仮想アプライアンスの作成に使用

できます。シェル・スクリプトや[Apache] Ant を使用してイメージ・ツールが提供する機能を

スクリプトにすると、仮想アプライアンスの作成およびプロビジョニング・プロセスをエンド・

ツー・エンドで自動化できます。

WebLogic Server ベースの仮想アプライアンスを作成したら、Oracle VM を使用してアプライアン

スを物理サーバー上にデプロイするだけで完了です。仮想アプライアンスの保守は、構成、デプ

ロイ、ライフ・サイクル管理を行う標準の WebLogic 管理ツールを使用して実行できます。

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パフォーマンス

仮想化はハードウェア・コストを削減するための重要なテクノロジーですが、仮想化によるオー

バーヘッドが大きくて、本番デプロイは不可能でした。オラクルは Oracle WebLogic Server on Oracle

JRockit Virtual Edition を導入することで、Java EE ベースのアプリケーションに生じるパフォーマ

ンスの問題を克服しました。

Oracle WebLogic Server on Oracle JRockit Virtual Edition のパフォーマンス・ベンチマークでは、従

来の仮想化デプロイメントに比べて大幅なパフォーマンス向上が確認されました。表 1 には、同

じハードウェアを使用したパフォーマンス・テスト・シナリオでの構成情報が記載されています。

データから、従来の準仮想化デプロイメントと比較した場合、総合的なアプリケーション・スルー

プットが 30%も向上したことが分かります。また、物理デプロイメントの 83%のパフォーマンス

を達成しています。これはつまり、仮想化における目標の 1 つであり、全体的なコスト削減に貢

献するアプリケーション密度の向上が達成されたことを意味しています。また、従来の仮想化環

境と比べて、Dom0(ドメイン 0)の CPU 使用率が 26%削減されているという事実にも注目する必

要があります。これは、Dom0 の CPU 制限を超えてパフォーマンスが低下するような事態を招く

ことなく、Oracle WebLogic Server on Oracle JRockit Virtual Edition インスタンスを増加できること

を意味します。

表 1:パフォーマンス比較データの例

構成 物理

O/S

Oracle VM /

WebLogic Server

ゲスト OS/

準仮想化

WebLogic Server 10.3.1 GA 10.3.1 GA 10.3.1 GA

クロック速度 2.93GHz 2.93GHz 2.93GHz

メモリ 24GB 4GB 4GB

メモリ速度(MHZ) 1066 1066 1066

JRockit R27.6.2-20 R27.6.3-40 R27.6.2-20

ヒープ 3600M 3400M 2600M

処理数/秒 335.94 306.59 249.09

Dom0 の CPU 使用率 - 28.40% 39.51%

その他のパフォーマンス・メトリックは現在、公開の準備中です。

Oracle WebLogic Server on Oracle JRockit Virtual Edition を使用すべきでないケース

ほとんどの Java EE アプリケーションは明示的な OS コールは行わないため、Oracle WebLogic Server

on Oracle JRockit Virtual Edition は仮想化環境にとっての魅力的なデプロイメント・オプションにな

ります。ただし、Oracle WebLogic Server on Oracle JRockit Virtual Edition にデプロイするアプリケー

ションにはいくつかの制限が課されることを理解しておく必要があります。これらの制限には以下

が含まれます。

デプロイした Java EE アプリケーションから'System'オペレーティング・システム・コールを

実行すると、失敗します。

JRockit Virtual Edition は Pure Java アプリケーションの実行向けに最適化されているため、アプ

リケーションでネイティブ・コードを使用することはできません。

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まとめ

Oracle WebLogic Server on Oracle JRockit Virtual Edition を Oracle VM 上で直接実行すると、最適化

されたサーバー・サイドの Java 仮想化スタックが構築されるため、Java EE デプロイメントの仮想

化レベルが上がります。またゲスト・オペレーティング・システムが不要になるため、以下の重

要なメリットが得られます。

ハードウェアの利用効率が向上するため、ホストされている Java EE アプリケーションのパ

フォーマンスとスケーラビリティが全体的に向上します。

Oracle Virtual Assembly Builder との統合を通じて、仮想化リソースへの WebLogic Server ドメ

インのデプロイが簡素化されます。

Oracle VM のインフラストラクチャを利用して簡単にプロビジョニングを実行できます3。

従来のゲスト・オペレーティング・システムでは、保守やパッチ適用をオフラインで実行する

ことはできません。

セキュリティ上の脆弱性が軽減されます。

Oracle WebLogic Server on Oracle JRockit Virtual Editionは Java EEデプロイメント向けの新たなラン

タイム・パラダイムを作り出すだけでなく、この環境を Oracle Virtual Assembly Builder やランタイ

ム管理および運用ツールと組み合わせることで、包括的な仮想化ソリューションを提供します。

結果として、デプロイおよび管理の複雑さを軽減するために最適な仮想化インフラストラクチャ

が得られるため、ハードウェア効率と利用率が向上すると同時に運用コストの大幅な削減が実現

されます。

3 Oracle Enterprise Manager Grid Control に対するサポートは、WebLogic Suite の将来のリリースで提供される予

定です。

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Oracle WebLogic Suite を使用した、

エンタープライズ Java の効果的な仮想化

2010 年 4 月

著者:Erik Bergenholtz

共著者:Mark Prichard

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