土壌診断法を併用した 果樹の白紋羽病の 生物防除剤及び防除法 · 10 ....

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1 土壌診断法を併用した 果樹の白紋羽病の 生物防除剤及び防除法 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 主任研究員 中村

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土壌診断法を併用した 果樹の白紋羽病の

生物防除剤及び防除法

(独)農業・食品産業技術総合研究機構

果樹研究所

主任研究員 中村 仁

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根が腐って枯れたナシの樹

• 化学薬剤による防除対策のみ • 環境保全型の生物防除技術の必要性

白紋羽病 果樹の重要病害

白紋羽病が蔓延したナシ園

病原菌(白紋羽病菌)

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従来技術とその問題点 生物防除剤および防除方法開発における

室内試験 野外試験

• 土壌診断が伴っていない。 • 土壌中における定着性を考慮していない。

防除剤候補となる 拮抗微生物の選抜

防除効果が得られない 防除効果が安定しない

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• 従来の土壌が有する病害(白紋羽病含む) 抑止性の評価法では、寒天培地で培養する必要があることなどから、広く利用されるに至っていない。

• 従来の白紋羽病に対する生物防除剤や防除法では、使用した有用微生物の土壌中での 定着性を確保できず、防除効果が安定しないことなどから、実用レベルに至っていない。

従来技術の現状

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① 白紋羽病抑止活性に基づいた、土壌 診断法

② 病気を起こす能力のない白紋羽病菌 を活用した、生物防除剤および防除法

③ 土着の拮抗微生物を活用した、生物 防除剤および防除法

3つの新技術

キーワード 定着性・持続性

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新技術におけるキーファクター 病気を起こす能力のない白紋羽病菌

(非病原性菌)

病原菌 非病原性菌

• 病気を起こさないこと以外、病原菌との大きな違いはない。

• 単一の有性胞子から得られた菌であり、遺伝的に病気を起こす

能力を失っていると考えられる。

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新技術① 特徴・従来技術との比較

• 開発した土壌診断法は、従来にない簡便な方法であり、生産現場でも使用可能である。

• 本法で評価される白紋羽病抑止活性は、 土壌中における拮抗微生物の多様性または密度を反映している。

白紋羽病抑止活性に基づく土壌診断法

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供試土壌に挿入 白紋羽病菌 爪楊枝培養

白紋羽病抑止活性に基づく土壌診断法

スモールスケール

ラージスケール

供試土壌に挿入 白紋羽病菌 割り箸培養

評価

評価

一部 死滅

一部 死滅

• 専門知識や技術は

不要! • 特別な装置は不要!

• 野外でも実施可能!

非病原性菌を使用

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白紋羽病抑止活性

異なる果樹園 同じ果樹園の2地点

白紋羽病抑止活性

ナシ園1 ナシ園2 地点1 地点2

診断例

白紋羽病抑止活性に基づく土壌診断法

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新技術① 想定される用途

• 白紋羽病の生物防除法との併用による防除効果の向上と安定化。

• 生物防除剤の開発時における各種微生物および土壌定着性の評価

• 生物防除法の現地検証試験時における防除効果と持続性の評価。

• 本法による診断結果は、拮抗微生物の多様性あるいは密度を反映しており、土壌の生物性の評価法としての利用も可能と思われる。

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白紋羽病抑止活性

用途例

白紋羽病抑止活性に基づく土壌診断法

新規または既存の 微生物資材の評価

土壌改良法の評価 下草管理の評価

異なる下草管理

土壌改良

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新技術② 特徴・従来技術との比較 病気を起こす能力のない白紋羽病菌を活用した生物防除剤および防除法

• 同じ白紋羽病菌でありながら病気を起こさない非病原性菌は、病原菌が生息している土壌に定着できる。

• 非病原性菌が病原菌の伸展を阻止することにより、白紋羽病を予防できる。

ポイント: 白紋羽病抑止活性が低い土壌が有利

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13 病原菌の伸展を阻止

病気を起こす能力のない非病原性菌を活用した生物防除剤および防除法

樹木枝チップ

非病原性菌

病原菌

生物防除剤

非病原性菌培養

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新技術③ 特徴・従来技術との比較 土着の拮抗微生物を活用した生物防除剤 および防除法

• 任意の土壌中に生息している土着の拮抗菌を増殖させて作製した防除剤であるため、用いた土壌中で拮抗菌が定着できる。

• 高密度で存在する拮抗菌が病原菌の伸展を阻止することにより、白紋羽病を予防できる。

ポイント: 白紋羽病抑止活性が高い土壌が有利

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白紋羽病抑

止活

果樹園土壌 作製土壌

非病原性菌

土着の拮抗微生物を活用した生物防除剤および防除法

生物防除剤

果樹園土壌

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新技術②③ 想定される用途 • 土壌環境を考慮した果樹白紋羽病の生物防除体系の確立。

• 非病原性菌が木質を分解することで肥料効果を得られるので、白紋羽病が発生してない園を対象とした利用も可能。

• 土着拮抗菌を活用した防除剤は、いかなる土壌を用いても作製できるので、得られた抑止活性に応じて利用することが可能。

• 温水処理による白紋羽病治療法(温水治療)と組み合わせた環境保全型防除体系の確立。

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罹病樹周辺に50℃の温水を点滴

約35℃が2日間以上続く

病原菌は死滅する

約45℃以上にはならない

ナシ・リンゴ樹には 影響はない

罹病樹を治療できる!

果樹白紋羽病の温水治療法 専用の温水処理機

点滴チューブ

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温水治療は,物理的防除と生物防除の組合せ手法 (温水) (拮抗微生物)

温水熱で死滅しなかった病原菌が拮抗菌によって死滅する。

治療効果は土壌が有する抑止活性と深く関わる

高い治療効果と持続性の付与

罹病根周辺で 拮抗菌 が増殖 (トリコデルマ菌)

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② 非病原性菌防除剤 ③ 土着拮抗菌防除剤

白紋羽病発生園

抑止活性が上昇したら移行

白紋羽病が発生したら、まず温水治療。その後は・・・

抑止活性

定期的に 処理

定期的に 処理

温水治療と3つの新技術で白紋羽病問題は解決!

① 土壌診断

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実用化に向けた課題

• 土壌診断法に関して、菌の培養資材の選定が必要となる。

• 生物防除剤に関して、非病原性菌 を用いた防除剤および土着拮抗菌を用いた防除剤の大量作製技術の開発が必要である。

• 生物防除法に関して、剤の形状等に合わせた施用法を確立する必要がある。

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企業への期待

• 土壌診断法に関して、本法に使用する器具を作製可能な企業との共同研究を希望。

• また、生物防除剤や防除法を開発中の企業には、本法の導入が有効と思われる。

• 生物防除剤や防除法に関して、本剤を作製可能な技術を持つ、企業との共同研究を希望。

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本技術に関する知的財産権 -1-

• 発明の名称: 白紋羽病の生物防除剤及び防除方法 • 登録番号: 第4936444号 • 出願人: 農業・食品産業技術総合研究機構 • 発明者: 中村仁、吉田幸二

• 発明の名称: 土壌が有する白紋羽病抑止活性の評価方法 • 出願番号: 特願2012-052593 • 出願人: 農業・食品産業技術総合研究機構 • 発明者: 中村仁、佐々木厚子、兼松聡子

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本技術に関する知的財産権 -2-

• 発明の名称: 優れた白紋羽病抑止活性を有する土壌の 作製方法 • 出願番号: 特願2012-239297 • 出願人: 農業・食品産業技術総合研究機構 • 発明者: 中村仁、八重樫元、佐々木厚子、兼松聡子

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お問い合わせ先 【特許ライセンス契約について 】

農研機構連携普及部 連携広報センター

TEL: 029-838-8641 TEL: 029-838-8982

E-mail: [email protected]

【共同研究について 】

農研機構果樹研究所 運営チーム

武川真大(たけかわ まさひろ)

TEL: 029-838-6438 FAX: 029-838-6440

E-mail: [email protected]

【研究内容について 】

中村 仁(なかむら ひとし)

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