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大型土槽模型地盤を用いた防腐対策の違いによる木材の腐朽...
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大型土槽模型地盤を用いた防腐対策の違いによる木材の腐朽促進試験結果Test result of preservative countermeasure difference with the wood pile decay
which used in the large−size−tank−model of earth ground
久保 光・沼田 淳紀*・上杉 章雄*・桃原 郁夫**・安部 久**・野村 崇***
要 旨
地下水位変動域及びそれ以浅においては、木材の腐朽を防ぐために何らかの防腐処置を行
う必要がある。そこで、大型土槽を用いた模型地盤を造り、各種腐朽対策を行った木材(ス
ギ・カラマツ)を埋め込み、地下水位を変動させて腐朽促進試験を行い、腐朽対策方法の効
果の確認を行った。その結果、埋設後7ヶ月の時点では無対策を含め腐朽は認められなかっ
た。ただし、無対策では黒色の変色が認められ、ワックス状樹脂被覆と粘性土被覆では木材
表面に変色が全く認められず、腐朽対策効果が高い可能性があることがわかった。
キーワード:木杭、木材、間伐材、カーボンストック、腐朽対策、地下水位
1.はじめに
福井県建設技術公社コーディネートにおける産学官
共同研究「脱地球温暖化社会へ向けた建設工事への木
材利用に関する調査研究」【H18-H19】1)にて、文献
調査及び足羽川等の木材の掘出し調査結果から地下水
位変動域及びそれ以浅においては木材が腐朽すること
がわかった。よって、地下水位変動域及びそれ以浅に
おいては木材に何らかの防腐処置を行う必要がある。
そこで、大型土槽を用いた模型地盤を造り、各種腐
朽対策を行った木材(スギ・カラマツ)を埋め込み、
地下水位を変動させて腐朽促進試験を行い、腐朽対策
方法の効果の確認を行ったので報告する。
2.腐朽対策実験
2.1 目的
土槽を用いた模型地盤による木材腐朽実験の目的は
以下の3つである。
①地下水変動域による腐朽状況の確認
②スギとカラマツの腐朽状況の相違の確認
③考案された腐朽対策方法の効果の確認
2.2 実験方法
2.2.1 実験概要
木材の腐朽しやすさを相対的に評価する試験方法と
して、「ファンガスセラー試験」という試験方法(JIS
K1571:2004「木材保存剤の性能試験方法及び性能基
準」に記載)がある。ファンガスセラー試験は、木材
腐朽菌が生育している土壌に木材を差し込んで、温度
と土壌水分を腐朽に好適な条件に調節しながら木材を
腐朽させる室内試験であり、本実験はこのファンガス
セラー試験を応用した。
写真-1は、実験システムの全体を示す。図-1は、
実験概要図(断面模式図)を示す。実験は、土槽内に
腐朽した木材を配合した土を入れ、木材を埋設し腐朽
させることを基本としている。木材樹種についてはス
ギとカラマツを使用し、樹種の違いによる差異を確認
する。土槽内には地下水位を設けるとともにこの水位
を周期的に変動させ、「地下水位変動域」、「変動域以
浅」、「変動域以深」の3ゾーンを作り出す。試験は、
飛島建設技術研究所屋内にて、平成19年8月7日から
平成20年3月14日まで実施した。
2.2.2 実験装置
図-2は、水位調整システムの模式図を示す。当該
実験では大型土槽および中型土槽と呼ばれる2つの土
槽に木材を埋設している。二つの土槽は、給水タンク
および排水タンクを介して水槽と接続されている。制
御盤の操作により設定した時間に水位を調整すること
ができる。この際、水位は排水タンクに設置された電
極で感知される。排水タンク、給水タンク、中型土槽、
大型土槽はそれぞれ連通しているので、給排水によっ
* 飛島建設株式会社** 独立行政法人森林総合研究所*** 県総合グリーンセンター
第1編 調査研究報告
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て水位変動がおこっても4者の自由水面は同レベルを
保つ。土槽での水位は、水位計を設置し、記録されて
いる。水は土槽と水槽の間を行き来し基本的には交換
されることがなく、蒸発により不足した分は当研究所
の中水が水槽に随時追加される。図-2は、水位変化
の模式グラフを示す。水位は日周期で変動させた。9
時に最低水位から水位上昇を開始し、最高水位に達し
た後はこれを維持、21時から水位低下を開始し、最低
水位に達した後は9時までこれを維持する周期である。
大型土槽では、無処理の木材と4種類の処理(後述)
を施した木材を埋設し、腐朽状況を比較する。中型土
槽では、土壌の締固め程度を2種類に変えて、締固め
程度による影響を調べた。
2.2.3 使用木材
使用木材は、長さ1m、直径8㎝の円柱材を用いた。
これは直径8㎝より太い原木の外側を削って加工され
たもので、軸(年輪の中心)を含む。
樹種は、スギとカラマツを用いた。スギは福井県美
山森林組合から購入した福井県産の間伐材である。カ
ラマツは宮城県内の製材所で加工された国産材である
が生産地は不明である。
使用木材は、軸がなるべく中心にあるものを選定し
た。また、カラマツについては心材と辺材の区別が明
瞭ではなかったため留意しなかったが、スギについて
は、外周面(木口面以外)全体が辺材となっているも
のを選定した。
2.2.4 腐朽対策方法
木材の腐朽とは、菌類が木材を分解することであり、
腐朽を起こす菌類を木材腐朽菌と呼ぶ。木材腐朽菌は
好気性菌であり、酸素がない状態では成長できない。2)
このことから腐朽を防止するためには、周囲から木材
への酸素の供給を遮断することが有効だと考えられる。
そこで、地下水位変動域以浅について、木材の周囲に
空気を遮断する層を設けることが考案した腐朽対策の
原理である。
大型土槽では空気を遮断する方法として、次の4方
法を実施した。
① ワックス状樹脂による被覆
最低地下水位の約10㎝下から上の部分について
木材にワックス状樹脂を塗布した。ワックス状樹
脂には、「特開60-190494号」の原理を用いて電
線被覆管に利用されたオレフィン系廃プラを解重
合・低粘度化して製造した液体状の物質を用いた。
この樹脂は、廃プラスチックを原料として製造さ
れるもので、120℃程度で塗布可能な液状となり
常温で固形状となる。色は黒色である。
写真-1 実験システム全体(撮影用に囲いの手前側の壁を取り外した状態。通常は壁があり内部は見えない。)
図-1 実験概要図(断面模式図)
図-2 水位変動模式図
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②粘性土による被覆
最低地下水位の約10㎝下から上の部分について
木材を厚さ約1㎝の粘性土で被覆した。粘性土と
して藤粘土3)を用いた。被覆作業は、含水比40%
に調整した粘性土を、ヘラなどを用いて所定の厚
さになるように、粘性土外周の寸法を計りながら
木材に張りつけた。さらに粘性土を保護するため
薄手の不織布(農業用シート、透光率約85%、透
水性あり)で被覆した。土壌に埋設するまでは粘
性土が乾燥しないように樹脂ラップで被覆してお
いた。
③砂層の造成(2種類)
木材の周囲約6㎝(木材中心から半径10㎝)を
砂で被覆した。砂は密に締固めたものと緩く締固
めたものの2種類を設けた。密な砂の乾燥密度は
1.58g/�、緩い砂の乾燥密度は1.25g/�とした。
当該砂の土質および被覆方法の方法については後
述する。
2.2.5 土槽の寸法および木材の配置
図-4は、土槽における木材等の配置図を示す。大
型土槽の内寸は、長さ×幅×高さ=4.0m×1.0m×1.2
mであり、中型土槽の内寸は、長さ×幅×高さ=2.0
m×0.5m×1.2mである。土槽は骨組みが鉄骨ででき
ており、底面は鉄製、長手方向の側面はアクリル板が
張られていて内部が観察可能である。底面には目詰ま
り防止のフィルター付きの給排水孔が大型土槽で8個、
中型土槽で4個設置されている。
大型土槽の木材配置は、無処理および4種類の腐朽
対策の組みがスギ、カラマツそれぞれについて4組(+
アクリル壁面に貼り付けた半割れのもの4組)となっ
ている。アクリル面には半割りにした木材を貼り付け
た。これは腐朽対策処理の様子が観察できるようにし
たもので、半割りにした木材とアクリルとの接合面外
周部は、土壌が接合面に侵入しないようにシリコーン
シーラントにより隙間を埋めた。
中型土槽内の土壌は、締固め程度を2種類に変えた。
一方は乾燥密度が木材打設後に0.45g/�となるよう
にしており、もう一方は0.56g/�となるようにした。
それぞれの密度に対して、無処理のスギ10本、カラマ
ツ5本を埋設した。
2.2.6 土槽への木材埋設方法
大型土槽への木材(腐朽対策処理および無処理のも
の)の埋設は、土槽底面に配置した木製板に木材を固
定し、その後に土壌を投入する方法とした。無処理、
ワックス状樹脂塗布および粘性土被覆で処理された木
材については、処理された木材を土槽に固定後に土壌
を投入したが、砂層の造成処理は土壌の投入と砂層の
造成を平行して行った。土壌は、所定の乾燥密度を満
たすように、締固め後の層厚10㎝ごとに必要な土壌の
質量を計量し、まずその約半量を投入し、ある程度突
固めた後、残りを投入し、層厚10㎝となるように突固
めた。突く道具としては木製ないし金属性の棒などを
用いた。
砂層を造成する木材には内径200㎜、高さ200㎜、厚
さ約1㎜の円筒をかぶせ、土壌と同様に砂の必要量を
計量し、こちらは層厚5㎝ずつ突固めてから円筒を5
㎝上方にずらすという作業を、周囲への土壌投入の進
捗に合わせて実施することを繰り返して砂層を造成し
た。また一部の砂対策は、所定の大きさおよび密度に
なるように試料を凍らせ、これを土壌作製に先行して
木材周囲に設置した。中型土槽では、先に土壌を投入
した後に、先端を尖らせた木材を掛矢(木製ハンマー)
を用いて打ち込んだ。
なお、大型土槽、中型土槽ともに木材は末口側が下
になるように埋設した。
2.2.7 温度の管理
当該実験では温度管理を実施した。当該実験システ
ムは、飛島建設(株)技術研究所の多目的実験棟(天
井高さ6.4mの建物)の一角に設置し、その周囲には
高さ×幅×奥行き=4.3m×5m×5.5mの囲いを設置
し、囲いの内部はエアコンによって冷暖房を行った。
囲いの壁面はベニヤ板で作り、その内側には断熱材と
して厚さ3㎝のスタイロフォームを貼り付けた。図-
4に示す位置に熱電対を設置し、室内気温と土槽内の
温度を測定した。土槽内の温度が26~28℃に維持され
るようにエアコンの調整を行った。
2.2.8 土壌条件
①土壌
土槽に投入した腐朽試験用土壌は、黒土、鹿沼土お
第1編 調査研究報告
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よびバーミキュライトをそれぞれ6:2:2(容積
比)=60:20:6(乾燥質量比)の比で混合したもの
である。この配合については、ファンガスセラー試験
に関する文献2)に記載された事例「殖壌土:鹿沼土:
バーミキュライト=6:2:2(容積比)」を参考とし
た。さらにこの土壌に、腐朽した木材を配合した。ま
ず腐朽菌を培養した。当技術研究所構内の樹林地など
にて腐朽した木材を採集し、前述の配合土を混合し約
2ヶ月間室内に保管した。腐朽菌の生育に好適な環境
とするため文献2)を参考に、室内の温度は26~28℃に、
土壌水分については散水などにより土壌水分計((株)
ケット科学研究所製HJ-510)の計測値で0.007~
0.04MPaになるように管理を行った。次に、前述の
配合土83.5�(湿潤質量)にこの木材を4�(湿潤質
量)の割合で配合した。こうして配合された腐朽試験
用土壌を土槽に投入した。
図-5は、土壌(腐朽木材配合前)の粒径加積曲線
を示す。当該土壌は粒径加積曲線に示されるように地
盤工学的にはシルト質土に分類される。
図-6は、土壌(腐朽木材配合前)の締固め曲線お
よび突固め透水試験の結果を示す。ρdmax=0.586g
/�となり、この約75%として大型土槽および中型土
槽の緩締固め区の乾燥密度0.450g/�を設定するとと
もに、約95%として中型土槽の密締固め区の乾燥密度
0.556g/�を設定した。透水試験結果の曲線は腐朽木
材配合前の土壌の透水性を示す。2本の点直線は、締
固め後の中型土槽の緩締固め区および密締固め区それ
ぞれから採取した腐朽木材を含む、乱さない土壌の透
図-4 土槽における木材等の配置図(上:大型土槽、下:中型土槽)
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図-5 腐朽試験用土壌(腐朽木材配合前)の粒径加積曲線
図-6 腐朽試験用土壌の締固め曲線(締固め曲線は腐朽木材配合前)
図-7 締固め透水曲線(透水曲線は腐朽木材配合前。透水の点直線は、締固め後の土槽から採取した腐朽木材を含む、乱さない土の透水試験結果)
第1編 調査研究報告
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水性を示す。緩締固め区の透水係数k=8×10-5�/s、
密締固め区の透水係数k=2×10-5�/sであった。
②砂
腐朽対策に用いた砂は、利根川砂:函館シルト:北
海道T砂=4:3:3(乾燥質量比)にて配合したも
のである(以下、混合砂と称す)。
図-8、9は、混合砂の締固め曲線および締固め透
水曲線を示す。ρdmax=1.662g/�となり、この約
75%として緩い砂の乾燥密度1.25g/�を設定すると
ともに、約95%として密な砂の乾燥密度1.58g/�を
設定した。
③粘土
腐朽対策に用いた粘土は、藤森粘土3)である。木材
を被覆する際の粘性土の含水比については、整形しや
すい範囲でなるべく含水比を低くするように検討し、
含水比w=40%とした。
3.調査方法・評価方法
3.1 木材に関する測定方法
3.1.1 初期木の処理
購入した木材からスギおよびカラマツそれぞれ8本
を初期木として選定し、試験材料としての性状を測定
した。8本は4本を飽和(飽水)状態、残りの4本を
気乾状態にて保管しその後に試験に供した。
飽和および気乾状態のそれぞれの木材について、次
の要領で1本の木材から縦圧縮試験用供試体とピロデ
ィン試験用供試体を4個ずつ得た。木材を25㎝間隔で
切断し、このうち下側(末口側)16㎝分を切断して縦
圧縮試験に供した。残りの部分についてはピロディン
試験に供した。各試験の内容については後述する。
3.1.2 掘出した木材の処理
中型土槽の木材については、掘出した木材を次のよ
図-8 混合砂の締固め曲線
図-9 混合砂の締固め透水曲線
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うに処理した。図-10に測定区画配置図を示す。個別
の試験内容方法については後述する。
①掘出した木材を水で洗浄し、図-10に示す実線の位
置で切断した。末口からの距離で17㎝、50㎝、79㎝の
位置では切断時におが屑を採取し、このおが屑を密度
試験(木材実質密度の測定)に供した。
②掘出し時含水比を測定する部位については速やかに
表面水をふき取って湿潤質量を測定し、乾燥炉に入れ
た。
③目視評価用の枠(正方形)を図-10に示す。上下方
向の位置に円周方向に木材中心から90°ずつ、ずらし
て4つ設け、枠内について目視評価を実施した。
④掘出し時含水比測定用以外の部分について飽和化の
処理を施した。
⑤ピロディン試験および縦圧縮試験を実施した。
3.1.3 目視評価
目視評価は先述した目視評価用の枠内について、JIS
K1571:2004中に記載の目視観察による腐朽度の判定
基準に準じて行った。判定基準を表-1に示す。
3.1.4 飽和化処理
木材の強度は供試体の含水比の影響を受けることが
知られている。一方、実際に埋設されている木材は、
地中の地下水位以下に長期間あれば飽和状態だと考え
られる。以上のことから供試体の水分条件を揃えるた
め飽和化を実施した。木材の飽和化は、次のように行
った。図-11に示す真空チャンバーに木材を入れ、チ
ャンバー内を真空状態にし半日程度放置する。チャン
バー内を真空状態に保ったまま十分に脱気した水をチ
ャンバー下部より流し込み、木材を十分に脱気水に浸
す。さらにこの状態で半日以上真空状態を保つ。その
後、上のバルブを開放しチャンバー内を大気圧に戻す。
表-1 腐朽度の判定基準(JISK1571:2004より)
木材
図-11 木材の飽和化に用いた真空チャンバー
図-10 測定区画配置図
第1編 調査研究報告
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この時に木材が浮き上がるようであれば再度バルブを
閉じ、チャンバー内を真空状態に保ちさらに数日間放
置する。大気圧に戻した状態で、さらに三日以上水に
浸したまま放置する。一度飽和化した木片は試験に供
するまで水に浸したまま保管した。
3.1.5 ピロディン試験
ピロディン試験は、木材の軟質腐朽の程度を知るた
め実施するもので、ばねの力により直径2.5㎜のスチ
ール製打ち込みピンを木材へ貫入させ、ピンの貫入量
を計測するものである。ピロディン試験は、図-10に
示されたピロディン試験の各実施区画について、その
軸方向の中央位置の木材周囲面において木材中心から
90°ごとに4点、周囲から木材中心に向かってピンを
貫入させた。
3.1.6 縦圧縮試験
木材の繊維方向(長軸方向)に平行に荷重を与える
圧縮試験を縦圧縮試験と呼ぶ。先述の直径8㎝、高さ
16㎝の供試体について、JIS Z2101に準じて縦圧縮試
験を実施した。なお当該JISにおいて縦圧縮試験の際
に記録が必要とされている「平均年輪幅」(年輪にほぼ
垂直方向の同一直線上における年輪幅の平均値)につ
いても、JIS Z2101に記載の方法に準じて測定した。
3.1.7 含水比
掘出し時含水比測定用木片、測定後のピロディン試
験体および縦圧縮試験体については、含水比w{(湿潤
質量-乾燥質量)/乾燥質量×100}を測定した。試
料の乾燥は110℃で行った。試料の乾燥時間は一定質
量になるまでとし、掘出し時含水比測定用木片は1日、
ピロディン試験および縦圧縮試験体については約1~
2ヶ月を要した。
3.1.8 密度試験
木材切断時に発生したおが屑について、木材実質部
分の密度を測定した。測定方法は、JIS A1202に規定
される「土粒子の密度試験」を準用した。
3.1.9 掘出し時期および本数
実験開始後約3ヶ月の時点および4ヶ月の時点にて、
中型土槽の緩締固め区および密締固め区からそれぞれ
スギ2本、カラマツ1本ずつを掘出して後述する測定
を行った。掘出した木材は目視評価を行った後に飽和
化処理を行った。
また、約7ヶ月後の時点では大型土槽から無処理お
よび4種類の腐朽対策処理の試験体それぞれ1本ずつ
を掘出し、目視評価を行った。
3.2 実験の工程
木材腐朽に影響すると考えられる実験操作の実施日
および木材の掘出し日について表-2に示した。
投光器による加温とは、冬期にエアコンのみでは暖房
能力が不足したため、囲い内に投光器を設置し床面を
照らすことで温度を上昇させたものである。
2007年12月7日の実施事項は、新たに入手した腐朽
したスギの木片を土槽表層に差し込んだもので、事前
に表層土壌を耕して軟らかくした。
2007年12月21日の実施事項は、木材腐朽菌の栄養分
として、かんな屑を大型土槽の表層に混合したもので
ある。
表-2 実験操作工程
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4.実験結果および考察
4.1 温度および水位の記録
8月上旬は、エアコン稼動前の高温と稼動後に急速
に冷房を行った反動により温度が大きく上下したが、
9月には概ね安定した。冬に向かって外気温が低下す
るとエアコンの暖房能力が不足し、11月、12月は25℃
を下回った。しかし、投光器を設置し加温したことで、
それ以降は概ね25℃以上を維持することができた。水
位の変動は、9時および21時から急速に変化するもの
の、変化は次第に緩やかになり、最高水位ないし最低
水位の状態にある時間は僅かであった。これは、土壌
内における水位変化が水位観測用パイプ内よりはるか
に遅いことを示していると考えられる。土壌内の水位
はゆっくりと変化し、9時および21時といった水位変
化時刻の直前にようやく最低水位ないし最高水位に到
達しているものと考えられる。
4.2 掘出した杭の観察結果
4.2.1 目視観察結果
中型土槽から3ヶ月後および4ヶ月後に掘出した木
材について目視による腐朽度評価を実施した。その結
果、樹種および地盤の締固め程度、掘出し時期に関わ
らず、全ての部位で評価0(健全)となった。大型土
槽から掘出された7ヶ月後に掘出した木材について目
視による腐朽度評価を実施した。掘出し直後の木材状
況を写真-2に示す。いずれも明確な腐朽はみられな
かったが、粘性土に被覆されていた部分については粘
性土を除去すると、変色が見られず非常にきれいな状
態であった。ワックス状樹脂を被覆したものについて
も、樹脂を除去するときれいな表面が現れた。砂で処
理された木材は、部分的に黒ずんでいたが、表面はし
っかりしていた。
以上、埋設後7ヶ月の時点では腐朽に明確な差は見
られないが、防腐対策処理ごとに見た目での違いは現
れてきていることから、今後試験を継続することによ
り、防腐対策処理の効果を確認できると考える。
4.2.2 ピロディン試験結果及び含水比試験結果
スギについて、初期木を飽和処理したものおよび中
型土槽から3ヶ月後および4ヶ月後に掘出した木材に
ついてのピロディン試験結果および含水比試験結果を
図-12、13に示す。
ピロディン試験結果をみると、初期木よりも埋設さ
れていた木材の方が、貫入量が小さい。含水比試験結
果と併せて見ると、掘出された木材でピロディン貫入
量が初期木より小さいのは、含水比が低いからだと考
えられる。腐朽が進むと貫入量は大きくなることから、
3ヶ月および4ヶ月では腐朽は進行していないと言え
る。密締固め区から掘出された木材の最上部(末口か
らの距離98㎝付近)では同じ木材の他の部位より含水
比が高いが、密締め固め区では地盤が固かったため、
木材打設時に掛矢で何度も叩いたことにより杭頭部分
が割れるなどして水を含みやすくなったことが原因と
考えられる。
カラマツについては、飽和化に時間を要したため試
験が終了しなかった。
図-12 ピロディン試験結果
図-13 含水比試験結果
第1編 調査研究報告
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5.終わりに
今回の試験では、樹種による腐朽の違いや、腐朽対
策処理の違いによる腐朽の程度の明確な差は出なかっ
た。
今後、継続して試験を行うとともに、最も経済的な
方法である砂層の密度管理により空気を遮断する方法
を基本として現場実験を行い、木材を用いた軟弱地盤
改良工法の研究開発を行いたい。
謝 辞
本研究は(独)森林総合研究所および飛島建設株式
会社との共同研究で行われた。また、温暖化対策のた
めの木材利用研究会(会長:濱田政則早稲田大学教
授)の皆様には貴重なご助言をいただいた。
当該実験の作業については、(有)TNSの染谷氏
および飛島建設の知久氏に多大なご活躍をいただいた。
ここに記して感謝の意を表する。
【参考文献】
1)脱地球温暖化社会へ向けた建設工事への木材利用
に関する調査・研究,(財)福井県建設技術公社,
pp.109
2)長野行紘:耐朽性評価方法としてのファンガスセ
ラー法について,木材保存,vol.26-2,pp22-32,2000
3)粘性土の動的性質に関する研究委員会:EX(試験)
部会報告,粘性土の動的性質に関するシンポジウ
ム発表論文集,地盤工学会,pp20-46,1995
写真-2 掘出し直後の木材状況
福井県雪対策・建設技術研究所 年報地域技術第21号 2008.8
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