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ISSN 0386-5878 土木研究所資料第 4139 土木研究所資料 杭の軸方向の変形特性に関する研究 平成 21 3 独立行政法人土木研究所 構造物メンテナンス研究センター

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ISSN 0386-5878 土木研究所資料第 4139号

土木研究所資料

杭の軸方向の変形特性に関する研究

平成 21 年 3 月

独立行政法人土木研究所 構造物メンテナンス研究センター

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土 木 研 究 所 資 料 第 4139号 2009年 3月

杭の軸方向の変形特性に関する研究

構造物メンテナンス研究センター 橋梁構造研究グループ 上席研究員 中谷 昌一

主任研究員 白戸 真大

交流研究員 横幕 清

要 旨

本研究は、杭の軸方向荷重・変形特性に関するものである。道路橋示方書では、杭基礎の鉛

直方向の安定照査は支持力照査式によるものとされており、直接には荷重にのみ着目した照査が

行われている。しかし、間接的には変位をも制限することが意図されており、多数の載荷試験結

果から得られる杭軸方向荷重・変位曲線の分析結果がこの背景にある。近年開発された杭工法の

新技術には、先端抵抗力が卓越するものが多く、これらの杭軸方向荷重・変位曲線は従来のそれ

とは異なる可能性がある。そこで、最新の基準に規定される杭工法を対象に、多数の載荷試験結

果を用いて杭軸方向荷重・変位曲線の傾向を確認した。また、任意の杭頭荷重に対する杭頭にお

ける杭軸方向変位は杭体の変形量と杭先端変位の和であることを利用して、杭軸方向荷重・変位

曲線の定式化を行い、これを利用した杭軸方向バネ定数の新しい推定式を提案し、現行推定式に

対する優位性を確認した。

キーワード:杭、荷重・変位曲線、杭軸方向バネ定数

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土木研究所資料

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目 次

1. はじめに ······································································································ 1

2. 道路橋杭基礎の安定照査の概要 ········································································ 4

2.1 道路橋の性能と基礎の状態 ········································································ 4

2.2 杭基礎の安定照査 ···················································································· 5

3. 杭の軸方向荷重・変位曲線 ············································································ 14

3.1 背景および対象とする杭工法 ··································································· 14

3.2 整理方法・採用データ ············································································ 15

3.3 整理結果 ······························································································ 21

4. 杭軸方向荷重・変位曲線に関する考察 ····························································· 26

4.1 杭軸方向荷重・変位曲線に対する降伏変位の感度 ········································· 26

4.2 降伏点の判定について ············································································ 27

4.2.1 降伏点の判定方法 ············································································ 27

4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて ··················· 31

4.3 杭頭降伏変位の大きさ ············································································ 36

4.3.1 施工方法との関係 ············································································ 36

4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合 ·························································· 37

4.3.3 先端伝達率の影響 ············································································ 40

4.3.4 杭寸法の影響 ·················································································· 43

4.4 変位指数mの大きさ ··············································································· 45

4.5 降伏支持力に対する現象論的解釈 ····························································· 47

4.6 杭軸方向の安定照査のあり方 ··································································· 50

5. 杭軸方向バネ定数の推定式 ············································································ 65

5.1 現行の推定式の課題 ··············································································· 65

5.1.1 既往の載荷試験結果に基づく推定式(L / D法) ····································· 65

5.1.2 土質試験結果に基づく推定式(Cs - kv法) ············································ 69

5.2 すべり係数によらない杭頭変位および杭軸方向バネ定数の推定式 ···················· 74

5.3 杭軸方向バネ定数の意義 ········································································· 78

5.4 推定式の精度検証 ·················································································· 80

5.4.1 杭体変形量の推定精度の検証 ····························································· 80

5.4.2 杭先端変位の推定精度の検証 ····························································· 85

5.4.3 杭頭変位の推定精度の検証と現行式に対する改善効果 ····························· 93

5.4.4 推定精度検証のまとめ ···································································· 100

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5.5 杭軸方向バネ定数の実用推定式 ······························································ 103

5.6 地震時の杭軸方向バネ定数に関する考察 ··················································· 118

6. 杭軸方向荷重・変位曲線に及ぼす因子の整理 ·················································· 122

7. 結論 ········································································································ 125

参考文献 ········································································································ 127

付属資料

1 杭軸方向バネ定数の推定方法と応答値の推定精度 ··············································· 130

2 杭頭荷重の大きさと先端伝達率に関する試算 ····················································· 135

3 周面抵抗力の降伏変位とすべり係数································································· 140

4 周面抵抗力の残存強度 ·················································································· 146

5 支持力推定式の作成方法の標準化と支持力推定式の見直し ··································· 148

参考文献 ········································································································· 185

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1. はじめに

道路橋の設計1)では、杭基礎の鉛直方向(杭軸方向)の安定性に対する照査は、設計で想定

される杭軸方向荷重が期待される抵抗値を超過しないことを原則に行われる。ここで、抵抗

値には、常時、暴風時およびレベル 1 地震時においては許容支持力が、またレベル 2 地震時

においては極限支持力が、それぞれ用いられている。ここに、許容支持力とは、極限支持力

を安全率で除した値であり、安全率の値は常時は 3、暴風時およびレベル 1 地震時は 2 であ

る。常時、暴風時およびレベル 1 地震時における安全率の値は、道路橋下部構造設計指針・

くい基礎の設計篇2

このように、直接には最大強度点である極限支持力に対する安全性が照査されているが、

照査の理念は、これに加えて設計供用期間内に発生する確率が高い荷重に対して弾性挙動範

囲内であることをも担保することにある

)が昭和 39 年に刊行されて以来不変であるが、現在、日本道路協会橋梁委

員会等において、道路橋示方書の改定作業が鋭意進められており、照査結果の確からしさを

数値で示そうとする信頼性の考え方を利用した安全係数の導入が検討されている。

3), 4

杭軸方向の荷重・変位曲線は、載荷試験によって知ることができ、極限支持力も載荷試験

結果に基づき判定される。しかし、実際の載荷試験では変位の増加に伴って抵抗力が漸増す

ることが多く、文字通り抵抗力の最大値である極限支持力が明確に判定できることは少ない。

伝統的な施工方法である打撃工法および場所打ち杭工法の多数の載荷試験結果によれば、杭

頭部における軸方向変位が杭径の 10%に達する時の杭頭荷重は、杭が発揮する最大抵抗力と

みなしうることが既往の研究によって明らかとされている

)。さらに、杭頭に作用する荷重が許容支持力以下

であることを照査することにより杭の軸方向変位を小さめに抑え、道路橋の鉛直変位を制限

することも意図されている。すなわち、杭基礎の軸方向の安定問題は、剛塑性理論に基づい

た変位と無関係であるとするものではなく、弾塑性理論に基づき杭軸方向荷重・変位曲線が

明確に意識されたものである。

5)。そのため、平成 2 年に改定され

た道路橋示方書 6)以降においては、杭頭部における軸方向変位が杭径の 10%に達する時の杭

頭抵抗力を極限支持力と定められている。また、先端抵抗力が卓越する杭の軸方向荷重・変

位曲線は、そうでない杭に比べて同一荷重に対する変位が大きい傾向にあることも示されて

いる 5)

我が国の道路橋には杭基礎が頻繁に使用され、最新の調査では、基礎数ベースで 75%に及

7)、各機関における杭工法の開発意欲は旺盛である。この状況を受けて、近年、民間で開発

された優れた技術を建設事業へ適切に早期普及を図る等の目的で、建設技術審査証明事業等8)

が公益法人において事業化され、杭工法についても種々の新技術が審査証明されている。こ

れら新技術は、データの蓄積等その熟度に応じて最終的には道路橋示方書に規定されていく。

平成 2 年の道路橋示方書 6)に規定される杭工法は 3 種類であったが、平成 21 年現在 1)では、

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杭基礎設計・施工便覧 9), 10

本研究では、まず、

)に記載のものまで含めると、その数は 7 種類に増加している。新

技術には、概して先端抵抗力が卓越するものが多い。これは、新技術の多くは、道路橋分野

に先行して市場規模の大きい建築分野(建築物基礎)において使用されることを前提に開発

されたもので、建築分野における技術基準は道路橋示方書に比べると先端抵抗力の評価によ

り重点を置いていることによるものと思われる。よって、最新の基準に規定される杭工法の

杭軸方向荷重・変位曲線は、従前のそれに対する理解とは異なる可能性もあり、この意味で

最新の杭工法の杭軸方向荷重・変位曲線を再度整理し、鉛直方向の安定照査との関係につい

て確認しておくことは有用である。

2. において道路橋杭基礎の安定照査について概観する。次に、3. にお

いて最新の基準に規定される杭工法の載荷試験結果を用いて杭軸方向荷重・変位曲線を整理

し、4. において杭軸方向荷重・変位曲線を特徴付ける因子や安定照査のあり方について考察

する。

また、基礎への転倒モーメントの作用に対する各杭の応答値を求めるためには、杭軸方向

荷重・変位曲線が必要となるが、これを直接予測することは非常に難しい。このため、道路

橋示方書1)

なお、冒頭述べたような信頼性設計への移行を前提とすれば、提案する推定式は一定の信

頼性が確保されることを示す必要があるが、経済性と引換えの関係にある信頼性の度合いを

どの程度とするのが相応しいのかについては社会的合意が必要であると考えられる。よって、

本研究では信頼性については基本的に議論の対象としない。ただし、後に行われるであろう

信頼性の度合いの検討に資することになると考えられるので、推定結果のばらつき具合を極

力明示するよう努めた。また、鉛直方向の安定照査に関する事項としては、杭軸方向バネ定

数の他に、支持力推定式の作成方法の標準化に関する検討や支持力推定式そのものの見直し

も必要に応じて行う必要があるので、これらの検討結果

においては、杭軸方向荷重・変位曲線の降伏点における割線勾配が杭軸方向バネ定

数と定義され、この値を予測するための推定式が整備されている。杭軸方向バネ定数の推定

式は、杭の諸元(杭径D、杭長L、軸剛性EA)と施工方法別係数によって簡便な形で構成され

ており、杭基礎の安定計算の実務に供されている。杭軸方向バネ定数の値は、水平方向地盤

反力係数と並び、応答値(変位および断面力)に与える感度が大きい。しかし、現行の推定

式は、推定精度が決して高くないこと、杭を支持する地盤強度特性の違いがバネ定数の値を

決定する因子として考慮されていないこと、杭長杭径比L / Dが 10 に満たないような短い杭に

対しては矛盾を生じる場合があること等が問題点として指摘されている。そこで、5. におい

ては杭軸方向バネ定数の現行の推定式の課題について述べた後に新しい推定式の提案を試み、

多数の載荷試験結果を用いて提案した推定式の推定精度を検証する。

11

最後に、用語について断っておく。杭に作用する「荷重」とその反力である「抵抗力」と

は、常に対の関係にあり、作用側を主体に考えれば「荷重」と呼ばれ、抵抗側を主体に考え

)を付属資料-5 に示しておいた。

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れば「抵抗力」と呼ばれる。よって、載荷試験で得られた「荷重・変位曲線」も、杭を主体

に考えれば「抵抗力・変位曲線」ということになるが、一般には「抵抗力・変位曲線」とは

呼ばれないため、「荷重」と「抵抗力」とを明確に区別する必要がない限り、本研究では慣例

に倣い「荷重・変位曲線」と呼ぶことにする。その他、杭の抵抗力に関する主な用語として、

道路橋示方書1)で使用される「極限支持力」「許容支持力」「降伏支持力」、地盤工学会の基準12)

で使用される「先端抵抗力」「周面抵抗力」等を使用する。

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2. 道路橋杭基礎の安定照査の概要

2.1 道路橋の性能と基礎の状態

道路橋示方書1)

ここで、杭基礎の安定照査は、杭基礎が設置される地盤が長期に亘って安定して存在する

ことを前提とし、上部の構造からの荷重が作用したときの杭基礎の挙動に着目して行われる。

これは、上部構造からの荷重を支持し、復元力を与えることが基礎の安定そのものであるか

らである。設計供用期間内に発生する確率が高い状態、すなわち、常時、暴風時およびレベ

ル 1 地震時に橋が要求される性能と、それを担保するための基礎の状態との関係は、

では、橋に要求される性能として、常時、暴風時およびレベル 1 地震時には、

「橋としての健全性を損なわない」こと、すなわち、「設計供用期間内に発生する確率が高い

荷重に対し、橋全体系としての挙動が力学特性における弾性域を超えない状態であること」

が示されている。そして、上部構造、支承、橋脚、基礎等の各部位に関して弾性限界状態が

設定され、これら各部位が弾性限界状態を超えないことを照査することにより、橋全体系と

して弾性範囲内にあることを担保する体系となっている。

表- 2.1.1

のように整理される。基礎には、滑動・転倒・沈下等の終局的な不安定現象に対して十分に

安全な状態であり、かつ、基礎を構成する部材、基礎を支持する地盤との相互作用の特性に

大きな力学的な変化が生じない状態であることが要求されている。

なお、基礎の挙動に大きく影響を与える地震の影響には、1) 基礎が支持する上部の構造の

質量による慣性力の影響および 2) 周辺地盤の振動変位による影響があるが、1) に分類され

る慣性力の影響が基礎の安定に対して支配的なものとして考慮されている。

表- 2.1.1 想定している設計状況と基礎の状態

想定する設計状況 橋に求められる性能 基礎の状態

常時 暴風時

レベル 1 地震時 橋として健全性を損なわない性能

(A) 十分に安全な状態であり、 (B) 基礎の各部材の力学特性が弾性域

を超えることなく、 (C) 基礎の各部材を支持する地盤の力

学特性に大きな変化が生じていな

い状態

レベル 2 地震時

【耐震性能 2】地震による損傷が限定

的なものにとどまり、橋としての機能

の回復が速やかに行いうる性能 【耐震性能 3】地震による損傷が致命

的とならない性能

【耐震性能 2、3 に共通】 【原則】基礎が降伏しない状態(基礎全

体系の挙動が弾性限界内にとどまる状

態) 【例外】復旧に支障となるような過大な

変形や損傷が生じない状態

また、表- 2.1.1 に併せて示すように、道路橋の設計供用期間中に発生することは想定しに

くいものの大きな強度を持つ地震動(レベル 2 地震時)に対しては、「地震による損傷が限定

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的なものにとどまり、橋としての機能の回復が速やかに行いうる」こと、もしくは「地震に

よる損傷が限定的とならない」ことのいずれかが要求される。基礎については、他の部位に

比べて維持管理・修復が困難であることから、原則として副次的な塑性化に留め、止むを得

ない場合においてのみ補修可能な程度の範囲に損傷を収めることが規定されている。

2.2 杭基礎の安定照査

道路橋示方書 1)における杭基礎の照査項目を表- 2.2.1 に示す。荷重が作用した時の杭基礎

に生じる各応答値(杭頭に作用する軸方向荷重Po

図- 2.2.1

、杭基礎の杭軸直角変位yおよび杭基礎の各

部材断面に生じる応力度σ)が許容値以下であることが照査される。応答値は、 に

示すように、フーチングを剛体、杭および地盤を杭軸方向、杭軸直角方向および回転方向の

杭頭集約線形バネとしてモデル化した、いわゆる変位法によって算定される。ここで、杭基

礎の各部材の照査は、鉛直(杭軸)方向・水平(杭軸直角)方向の安定照査で想定する抵抗

力が発揮されるための前提条件となる。

図- 2.2.1 杭基礎の計算モデル(概念図)

杭頭鉛直荷重 Po

杭頭鉛直変位 Sv

Pou Kv

鉛直支持を杭頭集約バネ(線形)にモデル化

kH

杭頭水平荷重 PH

Po(C), Sv(C)

Sv(C)

or Sv(T)

押込み

水平支持を杭頭集約バネ(線形)にモデル化

⇒さらにそれを杭軸直角方向バネにモデル化

杭体は弾性体(線形)

にモデル化

引抜き

Po(T), Sv(T)

PH, yH

Poy Po(C)

or Po(T) Svy

PHu

PHy

PH

杭頭水平変位 yH yHy (ya)

yH

鉛直

水平

●:降伏点

☆:計算された反力・変位

Ra

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表- 2.2.1 杭基礎の照査項目

照査の観点 照査項目 鉛直(杭軸)方向の安定性 杭頭に作用する軸方向荷重Po ≦ 許容支持力R

水平(杭軸直角)方向の安定性 a

杭基礎の軸直角方向変位y ≦ 許容水平変位y杭基礎の各部材の健全性

a 杭基礎の各部材断面に生じる応力度σ ≦ 許容応力度σ

a

次に、杭基礎の杭軸方向・杭軸直角方向に対する安定照査の考え方について述べる。

(1) 杭軸方向(鉛直方向)

杭基礎の杭軸方向の安定性については、式(2.2.1)を用い、杭頭荷重が許容支持力を超え

ないことが照査される。

Po≦Ra = Rud

ここに、P

/ n ················································································· (2.2.1)

o:杭頭に作用する軸方向荷重、Ra:許容支持力、Rud:設計上の極限支持力、n:

安全率で常時は 3、レベル 1 地震時は 2 である。ここで、極限支持力は、載荷試験結果から

一定の規則にしたがって判定された値もしくは過去の載荷試験結果から導かれた支持力推定

式によって算定された値とされている。しかし、実際の載荷試験では、変位の増大に伴って

抵抗力が漸増することが多く、文字通り抵抗力の最大値である極限支持力が明確に確認でき

ることは少ない。数多くの載荷試験結果を対象に杭軸方向荷重・変位曲線を整理すると、降

伏荷重(降伏支持力)Poyは極限荷重(極限支持力)Pouの約 0.63 倍となり、さらに多くのデ

ータではPou ≒ P10(P10:杭頭における杭軸方向変位が杭径の 10%に達する時の杭頭荷重)

とみなしうることが明らかにされている 5)。そこで、平成 2 年に改定された道路橋示方書 6)か

らは、杭頭における杭軸方向変位(以降、単に杭頭変位と呼ぶ)が杭径の 10%に達した時の

杭頭荷重P10を設計上の極限支持力Rudと定義されている(Rud = Pou ≒ P10

設計上の極限支持力R

)。

udを推定するための支持力推定式は、全国の多数の載荷試験結果を推

定できるように極限支持力Rudを先端抵抗力Rpdと周面抵抗力Rfd

R

との和で表した式(2.2.2)が

整備されている。

ud = Rpd + Rfd = qd・A + U∑(f i・L i

ここに、 q

) ······················································ (2.2.2)

d :杭先端における単位面積あたりの先端抵抗力度(kN/m2

A :杭先端の閉鎖断面積(m

) 2

f

i :周面抵抗力を考慮する土層の周面抵抗力度(kN/m2

U :杭の周長(m)

L i

すなわち、杭の寸法(杭径、杭長)から決まる杭体の先端および周面の表面積に杭の施工

方法や地盤種別・強度に応じて定められた先端および周面の抵抗力度(q

:周面抵抗力を考慮する土層の層厚(m)

d、f i)を乗ずること

によって極限支持力が推定できるようになっている。

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しかし、支持力推定式により得られる推定値には不確実性が含まれており、これを完全に

排除することは一般に難しい。よって、式(2.2.1)を満足するように照査を行うことには、

支持力推定式による推定値の不確実性を考慮してこれを(安全率 3 もしくは 2 で除して)低

減した値を許容値とすることによって、杭頭荷重Poが極限支持力Rud

1) 最大強度(極限支持力)に対する安全性(破壊しない)

を超えない安全性を担保

することが意図されていると解釈される。ここで、上記のとおり極限支持力と降伏支持力と

の間には一定の関係が成立するので、降伏支持力に対する安全性も同様の思想で担保されて

いることになる。すなわち、道路橋示方書に定義される極限支持力を用い、式(2.2.1)を満

足するように照査を行うことによって、以下 2 点の限界値に対する安全性をある余裕をもっ

て担保することが意図されていることになる。

2) 弾性限界強度(降伏支持力)に対する安全性(挙動の可逆性が確保される:使用限

界)

今後採用されていくであろう信頼性を考慮した設計を「照査結果の確からしさを定量的に

示す設計である」と定義するなら、上記 2 点の限界値に対して許容値が有する安全性の度合

いは、安全率の値(2 あるいは 3)によって評価するのではなく、許容値の限界値に対する非

超過確率で評価すべきである。

一般に、限界値Ruとその推定値Rdとの比Ru / Rd(以降、推定比と呼ぶ)の値は、正規分布

もしくは対数正規分布に従うことが多い。したがって、ある推定比の(対数の)値と推定比

の(対数の)平均との差分を推定比の(対数の)標準偏差で除した値を安全性指標βと呼ぶ

ことにすれば、推定値Rdに安全係数φ(信頼性設計の分野では、一般に抵抗係数と呼ばれる)

を乗じた値である許容値Ra = φRdの限界値Ru

図- 2.2.2

に対する非超過確率は、安全性指標βの値に

よって表現することができる。推定比が対数正規分布に従う場合を例に挙げると、これらの

関係は のように表すことができる。

Page 15: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 8 -

対数の平均 M(ln)対数の標準偏差 SD (ln)( =幾何標準偏差GSD )

β×GSD

M(ln)ln(φ)

超過

R u < R a = φR c

R a = φR c

ln(φ) = M(ln)-β×GSD

ln(R u / R c)

β 非超過確率

3.0 99.9%2.0 97.7%1.5 93.3%1.0 84.1%0.5 69.1%

図- 2.2.2 非超過確率と安全性指標(対数正規分布)

作用荷重のばらつきを別にすれば、常時、暴風時およびレベル 1 地震時の許容支持力が最

大強度および弾性限界強度に対して有する安全性指標βの値は、推定比の統計量(平均およ

び標準偏差)と抵抗係数φ(φは安全率nの逆数となる)によって逆算することができる。既

往の研究によると、これまで意図されてきた安全性指標の目標値β t

表- 2.2.2

の値(打撃工法および場

所打ち杭工法に対する値)は、 に示すとおりであると考えられる 3)

なお、このように見かけ上は限界点として極限支持力に着目し、結果として弾性限界点に

対しても余裕を確保するという現在の設計法から、照査式における担保の意図を理解するの

は難しく、ここで述べたような説明を常に要することになる。そこで、今後は、弾性限界点

に対する照査と最大強度点に対する照査を個別に行う方が望ましいという考え方があり、こ

の考え方に基づいた検討もなされている

。杭軸方向荷重・

変位曲線と許容支持力が有する安全性余裕との関係を図- 2.2.3 に示す。

3)。なお、信頼性設計の詳細な説明については、文

献3), 13)

表- 2.2.2 鉛直支持に関して意図されてきたと考えられる安全性指標β

を参照されたい。

t

最大強度点に対するβ 弾性限界点に対するβt 常時

t 3.0 1.5

暴風時・レベル 1 地震時 1.8 0.5

Page 16: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 9 -

杭頭変位S o

杭頭荷重P o

P ou

(最大抵抗力)

R ud = P 10

(設計上の極限支持力)⇒推定式を整備

P oy ≒ 0.63 P ou

許容支持力(常時)

R a = R ud / 3(φ=1/3)

許容支持力(暴風時・レベル1地震時)

R a = R ud / 2(φ=1/2)

S o / D = 10%

K v

⇒推定式を整備

レベル2地震時の安定照査に用いる

荷重変位関係モデル

S o / D = 0.3~1.7%(両側90%信頼区間)

S o / D = 0.5~2.9%(両側90%信頼区間)

(弾性限界:挙動の可逆性が担保される限界点)

βt = 1.5

βt = 1.8

βt = 3.0

βt = 0.5

荷重変位関係(載荷試験)

図- 2.2.3 杭軸方向荷重・変位曲線と許容支持力が有する安全性余裕との関係

このように、杭軸方向については荷重に着目した照査が行われ、上部構造に少なからず影

響を与えると考えられる杭頭変位は直接の照査項目とはなっていない。これは、多種多様な

上部構造に対して統一的に杭頭変位の許容値を定めるには至っていないこと、杭軸方向荷

重・変位曲線を正確に推定する適切な手法が整備されていないことがその理由である。

一方、直接基礎やケーソン基礎では、基礎底面の地盤反力度の上限値が規定されており、

過大な沈下を避けるための配慮がなされている1)。これは、直接基礎やケーソン基礎の基礎底

面地盤の極限支持力の推定式は剛塑性理論に基づいて求められたものであり、鉛直変位と関

連付けられたものではないためである1)

では、杭基礎の場合、杭頭変位に対する配慮はなされていないのであろうか。ここで、設

計上の極限支持力R

udは杭頭における杭頭変位Soが杭径Dの 10%となるときの杭頭荷重P10で

あると定義されていることに着目する。許容支持力Raは、設計上の極限支持力Rudを安全率 3

あるいは 2 で除した値であるから、数多くのデータにおける杭軸方向荷重・変位曲線から常

時、暴風時およびレベル 1 地震時に想定される杭頭における杭頭変位Soを求めることができ

る。ここでは、支持力推定式の推定誤差の影響を排除するために、極限支持力の実測値(P10

図- 2.2.3

を 2 あるいは 3 で除した値に対応する杭頭変位を求める。すると、 中に示すように、

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- 10 -

常時における杭頭変位Soの値はその 90%が 0.003D(D:杭径)から 0.017Dの範囲に(換言

すれば、常時における杭頭変位Soの 95%は 0.017D以下の範囲に)、暴風時およびレベル 1 地

震時における杭頭変位Soの値はその 90%が 0.005D(D:杭径)から 0.029Dの範囲にあり(同

様に、杭頭変位So

3) 杭頭変位レベルS

の 95%は 0.029D以下の範囲にある)、その値は比較的小さい。よって、式

(2.2.1)による杭軸方向支持力に対する照査によって、前述の 1)、2) に加え、間接的には、

o

が同時に担保されていることになる。

/ Dがその上限値を超えることによって生ずる上部構造の想定外

の変状に対する安全性(供用性)

ただし、供用性が担保されるための杭頭変位レベルSo

ここで、杭頭変位S

/ Dの上限値は明らかにされていない

ため、1)、2)と同様の手法で上限値に対する安全性指標(非超過確率)を想定することはで

きない。一方、これまでの道路橋の実績から、上述した杭頭変位レベルの値程度で設計を収

めておけば、常時、暴風時及びレベル 1 地震時に少なくとも上部構造から決まる軸方向変位

の上限値を超えていないことは推定される。なお、道路橋の供用性が担保される杭頭変位レ

ベルの上限値は一律の値ではなく、道路橋の上部構造あるいは土工部を含めた道路の個々の

状況によって異なるはずである。よって、供用性が担保されるための杭頭変位レベルの上限

値が明らかであり、かつ、載荷試験を行うなどして杭の杭軸方向荷重・変位曲線が精度よく

推定できる場合には、これを照査すればよい。

oに伴って上部構造の供用性が阻害されるリスクRを変位Soの絶対値で

はなく、杭径Dにより正規化した値So / Dで整理することは、以下の前提がある。桁下の余裕

の観点や下部構造間の変位差の観点から、杭基礎の杭頭変位So

( )LSfR 1=

に伴って上部構造の供用性が

阻害されるリスクの大きさRは、支間Lが大きいほど小さいと考えられる(仮に式で表すと、

)。次に、支間Lが大きければ、杭基礎が負担すべき荷重(死荷重、活荷重)は大

きいため、経済的合理性から杭寸法、すなわち杭径Dの大きなものが使用されるはずである(杭

長は、一般に架橋地点の支持層深さで決定されるため、選択の余地はほとんどない。同様に、

( )LfD 2= )。2 者の関係から、上部構造の変状リスクRは杭頭変位レベルSo

( )DSfR =

/ Dで整理するのが

合理的である( )。さらに、隣り合う下部構造間での不同沈下の制限、上部構造に

与える影響を検討するためには、フーチング下面、すなわち杭頭位置での変位が用いられる

ので、杭頭部における杭径Dを用いて極限支持力や許容支持力を論じるのが適切であると考え

られる。

基礎への転倒モーメントの作用に対する各杭の応答値を求めるためには、杭軸方向荷重・

変位曲線が必要となるが、地盤の非線形性の影響を受けるため、杭軸方向荷重・変位曲線は

本来その初期の時点から非線形である。しかし、橋全体系の挙動の観点からは、残留変位が

さほど大きくない範囲においては、繰返し荷重に対する挙動の再現性が確保されるものと解

釈し、この範囲を弾性域と捉えるのが一般的である。そこで、杭頭における残留変位が急増

Page 18: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 11 -

する点を降伏点とし、この限界点に着目した割線勾配として杭軸方向バネ定数Kvが規定され、

杭の諸元(軸剛性EA、杭長L、杭径D)および載荷試験結果から経験的に定めた施工方法別係

数aを用いる杭軸方向バネ定数Kvの推定式が整備されている。杭軸方向バネ定数Kv

また、レベル 2 地震時における照査には、

は、変位

法による応答値の計算において杭頭反力に対応する杭頭変位の推定に用いられ、杭の変形に

応じて杭部材の断面照査が行われる。

図- 2.2.3 に示す弾完全塑性型の杭軸方向荷重・

変位関係モデルが使用されるが、基礎には原則として塑性化を考慮しないことから、杭軸方

向荷重・変位関係モデルにおける完全塑性の領域は、やむを得ず基礎の副次的な塑性化を考

慮する場合にのみ考慮される。

(2) 杭軸直角方向(水平方向)

杭基礎の杭軸直角方向に対する安定照査は、杭頭における杭軸直角方向変位が許容変位を

超えないことを照査することによって杭軸直角方向荷重・変位曲線が実用上の弾性範囲内に

あることを担保することが意図されている。ここで、杭基礎の杭軸直角方向の挙動も初期の

時点から非線形である。しかし、杭軸方向と同様に杭頭における残留変位が急増する点を降

伏点とすると、載荷試験結果からは降伏変位の平均値は一般に杭径の 4%程度の変位に対応す

る点であることが明らかとされている5), 14), 15)。そこで、安全余裕度を考慮して、設計上は杭

径の 1%もしくは 15mmのいずれか大きい方の値が許容変位とされている。ここで、杭軸方向

と同様に許容変位が弾性限界点(降伏変位)に対して有する安全性指標βtを求めると、杭径

1,000mmの場合にはβ t 表- 2.2.2 = 0.5 となり、 に示した杭軸方向の照査における暴風時・レ

ベル 1 地震時における弾性限界点に対するβ t

設計計算モデルでは、許容変位を基準変位としてこれに対して逆算される深さ方向に一様

な水平方向地盤反力係数k

の値と同じとなる。

Hの推定式が示されている。そして、水平方向地盤反力係数kH

なお、杭軸直角方向の抵抗力は、杭体そのものの抵抗力と地盤の抵抗力との連成作用から

なる抵抗機構であると考えられる。杭体の降伏点をX点、地盤の降伏点をA点で表すと、

、杭

径Dおよび杭体の曲げ剛性EIを用いて林・Changの方法により各杭は杭頭水平・回転バネに変

換され、設計地盤面において計算される変位が許容変位を超えないことを照査することによ

って、各杭に対する地盤の杭軸直角方向の抵抗が弾性域にあるものとみなされている。

図-

2.2.4 に示すように荷重・変位曲線上に 2 つの変位急増点が現れることになる。図- 2.2.4 は杭

体降伏が先行する場合の荷重・変位曲線の例であるが、地盤抵抗の降伏が先行する試験結果

を対象に地盤抵抗から決まる降伏変位を再評価すると、その平均値は杭径の 5%程度となる。

そして、杭軸方向と同等の弾性限界に対する安全性指標β tが確保されるような地盤の許容変

位として、常時に対しては杭径の 2%、暴風時およびレベル 1 地震時に対しては杭径の 3.5%

が提案されている 3), 16)。

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- 12 -

図- 2.2.4 杭軸直角方向荷重を受ける杭の荷重・変位曲線(模式図)

杭軸直角方向荷重・変位曲線と上記の許容変位の提案値が有する安全性余裕との関係を図-

2.2.5 に示す。図中の荷重・変位曲線は、降伏変位がyy

3.2

= 0.057 D(平均値)である荷重・変

位曲線を変位指数をm = 1 として近似して描いたWeibull分布曲線である(Weibull分布曲線や

変位指数mについては で説明する)。十分な載荷を行った試験結果を対象とすれば、杭頭

における杭軸直角方向変位yが杭径Dの 15%に達すると、杭頭荷重(地盤反力度)は平均で極

限荷重の 95%程度となる。そこで、y = 0.15 Dにおける杭頭荷重を杭軸直角方向の極限支持

力と定義することが考えられる。この場合、荷重・変位曲線上の許容変位における杭頭荷重

は、常時:極限支持力の 0.3 倍、暴風時およびレベル 1 地震時:0.46 倍となり、これを安全

率nで表現すれば、杭軸方向の値と同じく常時:n ≒ 3、暴風時およびレベル 1 地震時:n ≒

2 となる。

杭軸直角方向の応答値を求めるためには、水平方向地盤反力係数kHが必要である。ここで

は、水平方向地盤反力係数kHの値(常時に対する値)は、これまで同様に杭径の 1%を基準

変位とし、荷重・変位曲線上の基準変位における割線勾配として示した。水平方向地盤反力

係数kHの値は、杭軸方向バネ定数Kvと同様に降伏点を基準にした割線勾配として整理するこ

とも考えられるが、上記のとおり杭径の 1%を基準変位とすると、これまで蓄積された杭径の

1%に対して整理された水平方向地盤反力係数kHのデータの活用が容易となり、鉛直方向地盤

反力係数kvを求める時の基準変位が杭径の 1%とされていることと整合が図られる点が利点

となる。ただし、この場合には基準変位に対して求められた水平方向地盤反力係数kHを用い

て許容変位以下に収まるように設計された杭軸直角方向変位は、非線形性(ひずみ依存性)

のために危険側の推定となる。よって、着目変位に応じたひずみ依存性(-1/2 乗則)17), 18)を

考慮して水平方向地盤反力係数kHの値を補正するのがよいと考えられる。

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- 13 -

杭頭変位y

地盤反力度p(杭頭荷重P o)

p u

(地盤反力度の上限値)⇒推定式を整備

y / D = 15%

k H

⇒推定式を整備

βt = 1.5 (常時)

荷重変位関係(載荷試験)

弾性限界:挙動の可逆性が担保される限界点

yy / D = 5.7%

許容変位(常時)

ya / D = 2%

許容変位(暴風時・レベル1地震時)

y a / D = 3.5%

基準変位

yo / D = 1%

k H' = k H (y /yo)-0.5

(ひずみ依存を考慮)

βt = 0.5 (暴風時・レベル1地震時)

≒ p u / 2

≒ p u / 3

図- 2.2.5 杭軸直角方向荷重・変位曲線と許容変位の提案値が有する安全性余裕との関係

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- 14 -

3. 杭の軸方向荷重・変位曲線

3.1 背景および対象とする杭工法

2.2 で概観したように、道路橋示方書 1)における杭基礎の杭軸方向の安定照査には、極限支

持力やこれを安全率で除した許容支持力が用いられているが、この背景には、土木研究所資

料第 2919 号において分析された杭の軸方向荷重・変位曲線がある。土木研究所資料第 2919

号5)では、多数の載荷試験データを用いて、杭の軸方向荷重・変位曲線を施工方法および支持

形式別に分類してその傾向を説明し、杭頭変位が杭径の 10%に達した時の杭頭荷重を最大抵

抗力とみなしうることを示している。なお、この当時、道路橋示方書 6)

杭工法の開発意欲は旺盛で、その後も次々と新技術が開発されている。平成 14 年に改訂さ

れた道路橋示方書には、次の 4 条件を満足する施工方法を規定の対象とする方針が示された。

に規定される杭工法

は、打撃工法、場所打ち杭工法および中掘り杭工法の 3 種類であった。

1) 鉛直載荷試験および水平載荷試験の結果から支持力特性が明らかである。ここで、

支持力特性とは、鉛直方向には極限支持力および沈下特性であり、また、水平方向

には水平力~変位曲線である。

2) 杭と地盤との間にゆるみがなく、変位の小さい段階から地盤抵抗を確保できる。

3) 杭体の変形性能、曲げ耐力およびせん断耐力の算定方法が載荷試験結果より明らか

である。

4) 工法の施工管理手法が明らかであり、所定の方法によれば、上記 1)、2) および 3) が

確実に発揮できる。

この時点では、既往の打撃工法、場所打ち杭工法および中掘り杭工法に加え、上記 4 条件

を満足すると判断された 3 工法(バイブロハンマ工法、鋼管ソイルセメント杭工法およびプ

レボーリング杭工法)が新たに規定された。さらに、平成 19 年に 15 年ぶりに改訂された杭

基礎設計便覧 )および杭基礎施工便覧 )

土木研究所資料第 2919 号

では、回転杭工法が参考資料に紹介された。すなわち、

現在では、平成 2 年当時の 3 工法に 4 工法が加えられ、合計 7 工法に達している。 5)

杭頭に軸方向荷重が作用する時、杭頭変位は、杭体の収縮量(以降、杭体変形量と呼ぶ)

と杭先端変位との和である。杭頭反力を構成する周面抵抗力および先端抵抗力の大きさは、

地盤の荷重・変形特性、すなわち杭体と地盤との相対変位の大きさによって決定される。こ

こで、軸力を受ける棒部材の収縮量は、周面抵抗力が小さいほど大きい。また、先端抵抗力

は、作用荷重と周面抵抗力との差分であるから、周面抵抗力が小さければ、先端抵抗力すな

わち杭先端変位も大きくなる。よって、同一荷重に対する杭頭反力に占める先端抵抗力の割

合が大きいほど、杭体変形量と杭先端変位との和である杭頭変位は大きいということになる。

では、先端抵抗力に多くを期待する杭の軸方向変位は一般に大

きくなる傾向が指摘されている。このことは、以下のように考えれば理解される。

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- 15 -

新技術には、概して先端抵抗力が卓越するものが多い。よって、最新の基準に規定される

杭工法の杭軸方向荷重・変位曲線は、従前のそれに対する理解とは異なる可能性がある。そ

こで、最新の基準に規定される 7 工法を対象に杭軸方向荷重・変位曲線を再度整理すること

にする。ここで、収集データの都合上、中掘り杭工法はセメントミルク噴出撹拌方式のみを

対象とし、場所打ち杭工法では杭径が深度方向に一定であるもの(いわゆるストレート杭)

を対象とし、建築分野で使用される杭先端径が杭径に対して拡大されたもの(いわゆる拡底

杭)を含まない。また、プレボーリング工法の杭軸方向荷重・変位曲線は、掘削孔の泥水中

にセメントミルクが注入されてこれが固化したもの(以降、杭周固化体と呼ぶ)の強度や掘

削径によっても異なると考えられるが、これらを収集されたデータから判別することができ

なかった。このため、本研究ではプレボーリング杭工法のデータを新たに分析することは行

わず、平成元年に整理された土木研究所資料第 2919 号に示される統計量5)

3.2 整理方法・採用データ

を用いる。

整理に用いるデータは、土木研究所が過去から収集を継続してきた杭の鉛直載荷試験結果

である。収集先は、各地方整備局、都道府県および旧道路 4 公団であり、さらに新しい施工

方法の詳細データは、杭工法の開発者からも提供を受けた。

整理方法は次のとおりで、既往の方法と基本的に同様である。

杭の支持機構は施工方法や支持形式によって異なり、これは杭頭荷重Po・杭頭変位So曲線

に反映される。しかし、Po - So曲線は杭の諸元(杭寸法や地盤特性)によっても異なるため、

杭頭荷重Poを極限支持力Pouで、杭頭変位Soを杭径Dで除して正規化することによって比較す

る。ここで、鋼管ソイルセメント杭工法の杭径Dには、公称のソイルセメント柱径を用いる。

また、回転杭工法の場合、杭径が深度方向に異なり、杭先端部における外径Dpのみがそれ以

外の部位における外径Dn(以降、杭一般部径と呼ぶ)に比べて大きい(Dp = 1.5~2.0Dn

2.2

)が、

における考察を踏まえてここでの杭径Dは杭一般部径Dn

また、極限支持力P

で整理する。

ouや降伏支持力Poyは、一般にはPo - So曲線の形状から判定されるが、

判定結果の人為的誤差を排除するために、Weibull分布関数によって近似もしくは外挿した曲

線を利用する。Weibull分布関数は、強度分布を統計的に表すために考案されたものであるが、

あてはめの融通性が高いことから、時間に対する劣化現象や寿命を統計的に記述する場合等、

幅広い分野で応用されている。杭軸直角方向および杭軸方向の荷重・変位曲線については、

式(3.2.1)が提案されている19

m

os

o

DSDS

ou

o ePP

−= 1

)。

············································································ (3.2.1)

ここに、 Po :杭頭における任意の杭軸方向荷重(杭頭荷重)

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- 16 -

Pou

e :自然対数の底

:杭頭における極限支持力

So

S

:任意の杭頭荷重によって生ずる杭頭変位

os :杭頭変位の特性値(≒杭頭降伏変位Soy

D :杭径

m :変位指数

Weibull分布曲線の例を図- 3.2.1 に示す。杭頭変位の特性値Sosおよび変位指数mの値によっ

て曲線は様々な形状となり、Weibull分布曲線のあてはめの融通性が高いことが分かる。文献 )

によると、杭頭変位の特性値Sosは、載荷荷重がする仕事量と関連付けられる基準となる点で

あり、式(3.2.1)においてSo = Sosとおけば、Po / Pou = 1 - e-1 ≒ 0.63 の関係が常に成立す

る。よって、杭頭変位の特性値Sosは杭頭降伏変位Soyに、この時の杭頭荷重Po = Posは降伏支

持力Poyに相当すると説明されており、既往の研究5), 14)においてもこのように読み替えられて

いる。本研究では、杭頭変位の特性値Sosおよび変位指数mがいかなる値であっても曲線が必

ず通る座標(Sos、Poy)で示される点を特性点と呼ぶことにする。なお、Po = Pouの時の杭頭

変位は、So

0% 20% 40% 60% 80% 100%P o / P u

So

/ D

m = 0.5

m = 1.0

m = 1.5

P os / P u = 0.63

S os / D 特性点

0% 20% 40% 60% 80% 100%P o / P u

So

/ D

m = 0.5

m = 1.0

m = 1.5

P os / P u = 0.63

S os / D特性点

= ∞(無限大)となる。また、変位指数mは、曲線の曲がり具合を表す。すなわ

ち、変位指数mの値が大きいと初期には線形的であり、変位が大きくなると一定の荷重に落

ち着く、弾完全塑性型のような傾向となる。一方、変位指数mの値が小さいとその形状は初

期から非線形性を帯び、変位が大きくなっても荷重が漸増するという 2 次勾配を有する弾塑

性型のような傾向となる。

図- 3.2.1 Weibull 分布曲線

データ整理においては、一つ一つの鉛直載荷試験から得られたPo - So曲線をWeibull分布曲

Page 24: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 17 -

線で近似・外挿し、各試験結果を最も精度よく近似できる極限支持力Pou、杭頭変位の特性値

Sos

ここで、支持形式の区分は、道路橋示方書に定義される支持杭であるか否かとする。すな

わち、道路橋示方書

、変位指数mを求め、施工方法および支持形式毎に各々の値の統計量を求める。

1)に定義される支持層(砂層・砂礫層:N値 30 程度以上、粘性土:N値

20 程度 or 一軸圧縮強度 0.4 N/mm2

4.3.3

程度以上)に杭先端が設置されているものを支持杭、こ

れ以外のものを摩擦杭と区分する。後述の で述べるように、杭軸方向荷重・変位曲線の

形状には、杭頭反力に占める先端抵抗力の比率(以降、先端伝達率と呼ぶ)の大きさが影響

を与える。このため、本来は先端伝達率の大きさにより分類する方が適切であると考えられ

るが、杭体軸力の深度方向分布が不明であるために先端伝達率を求めることができないデー

タも多いため、地盤条件のみで区分することにした。したがって、以降に示す支持形式別の

諸数値は、厳密なものではなく、おおよその傾向を示したものであることを理解されたい。

多数のデータを取り扱う場合、その取捨選択の方法が明らかであり、かつ妥当であること

に注意を払うことが望ましい。ここでは、杭軸方向荷重・変位曲線を Weibull 分布曲線で近

似もしくは外挿して整理・考察を行うため、外挿された曲線が信用できるものであるとみな

すためには、載荷試験において杭の最大抵抗力近くまで載荷されていることが望ましい。こ

こでのデータの採用基準は、表- 3.2.1 に示す条件- 1 および条件- 2 の両者を満足するものと

する。

条件- 2 が、載荷荷重不足のために近似精度が不十分であると考えられるデータを排除する

ことを意図している。1.2 倍という数値は、試行錯誤の上、既往の研究成果3)を参考にしたが、

図- 3.2.2(b)(c)に示すように、条件-2 を満足しないデータは、両対数軸上の杭頭荷重Po・杭頭

変位So

表- 3.2.1 データの採用基準

関係が直線状に分布し、折れ点を明確に見出せない傾向にあった。

採用条件 内容 条件- 1 載荷荷重・変位、杭寸法および地盤条件等の基本情報が整っているもの。

条件- 2 杭頭における実測最大荷重Pomaxが、Weibull分布関数にあてはめた結果得られる杭頭

荷重の特性値Pos≒0.63 Pouの 1.2 倍以上であるもの(Pomax≧1.2 Pos≒0.76 Pou

)。

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- 18 -

1.E+02

1.E+03

1.E+04

1.E+00 1.E+01 1.E+02杭頭変位 S o (mm)

杭頭荷重

P o (kN)

Pomax = 1.54 Pos

● 実測値

○ P os ≒ 0.63 P ou

1.E+02

1.E+03

1.E+04

1.E+05

1.E+00 1.E+01 1.E+02杭頭変位 S o (mm)

杭頭荷重

P o (kN) Pomax = 1.08 Pos

● 実測値

○ P os ≒ 0.63 P ou

1.E+02

1.E+03

1.E+04

1.E+05

1.E+00 1.E+01 1.E+02 1.E+03杭頭変位 S o (mm)

杭頭荷重

P o (kN)Pomax = 0.71 Pos

● 実測値

○ P os ≒ 0.63 P ou

(a) Pomax = 1.54 Pos (b) Pomax = 1.08 Pos (c) Pomax = 0.71 P

図- 3.2.2 載荷荷重の大きさとlog P

os

o - log So

最終的な採用データ数の一覧を

関係における折れ点の有無の例

表- 3.2.2 に示す。採用データ数は全データ数の半分未満で

あり、打撃工法、場所打ち杭工法および中掘り杭工法では採用できないデータが非常に多い。

また、打撃工法および場所打ち杭工法では、軸力分布が不明のデータの割合が多い。

表- 3.2.2 採用データ数一覧表

施工方法 全データ

数 採用データ数

軸力分布あり 軸力分布不明 合計 打撃 285 29 61 90

バイブロハンマ 9 4 0 4 場所打ち杭 125 37 22 59 中掘り杭 165 71 16 87

鋼管ソイルセメント杭 28 23 1 24 回転杭 40 20 0 20

プレボーリング杭* 18 0 18 18 合計 670 184 118 302

*:文献5)におけるケムン工法、RODEX工法およびニーディング工法のデータ(後 2 者は、杭基礎

施工便覧10)

の参考資料に紹介される施工方法)

採用データにおける杭径および杭長の範囲を図- 3.2.3 に示す。図中に併せて示した線で囲

まれる範囲は、国土交通省の各地方整備局および内閣府の沖縄総合事務局における平成 16 年

度の道路橋基礎としての使用実績 7)

採用データは近年の使用実績における寸法範囲を概ね包含している。ただし、中掘り杭工

法では近年の使用実績のうち杭長の短いものに対するデータが欠けており、場所打ち杭工法

においては杭長の長い範囲および短い範囲に対するデータが欠けている。また、打撃工法に

おける採用データは近年の使用実績における寸法範囲よりも杭径の分布範囲が広く、バイブ

ロハンマ工法における採用データは近年の使用実績における寸法範囲よりも杭径が小さめで

ある。

の寸法範囲である。なお、この時点では回転杭の使用実

績はない。

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- 19 -

0

10

20

30

40

50

60

70

80

0 400 800 1,200 1,600 2,000杭径 D (mm)

杭長

L (m

)

近年の使用実績

0

10

20

30

40

50

60

70

80

0 400 800 1,200 1,600 2,000杭径 D (mm)

杭長

L (m

)

近年の使用実績

0

10

20

30

40

50

60

70

80

0 400 800 1,200 1,600 2,000杭径 D (mm)

杭長

L (m

)

近年の使用実績

(a) 打撃 (b) バイブロハンマ (c) 場所打ち杭

0

10

20

30

40

50

60

70

80

0 400 800 1,200 1,600 2,000杭径 D (mm)

杭長

L (m

)

近年の使用実績

0

10

20

30

40

50

60

70

80

0 400 800 1,200 1,600 2,000杭径 D (mm)

杭長

L (m

)

近年の使用実績

0

10

20

30

40

50

60

70

80

0 400 800 1,200 1,600 2,000杭径 D (mm)

杭長

L (m

)

(d) 中掘り杭 (e) 鋼管ソイルセメント杭 (f) 回転杭

図- 3.2.3 採用データの寸法範囲

また、杭軸方向荷重・変位曲線を近似・外挿する Weibull 分布曲線の各パラメータの決定

方法にも配慮した。図- 3.2.4(a) は、一般的な最小二乗法により決定した各パラメータに基づ

く近似曲線(Weibull 分布曲線)と実測値とを併せて示したものであるが、実測最大荷重の近

傍において、近似曲線が実測値からやや乖離していることが分かる。載荷試験は一般に荷重

制御で実施されるため、荷重間隔が一定であっても、地盤の非線形挙動によって荷重が大き

いほど変位間隔も大きくなる。よって、一般的な最小二乗法により決定されたパラメータに

よって描かれる近似曲線は、結果として変位の実測値の間隔が密である変位(荷重)の小さ

な領域を尊重したものとなる。

この不具合を解消するために、式(3.2.2)に示すように、近似曲線は実測変位の間隔を考

慮したものとした。すなわち、実測変位の間隔So(i) - So(i-1)

∑ 2)(iε

の重み付けを考慮した残差平方和

が最小となるような近似曲線の係数を求めることとした。図- 3.2.4(b) は、式(3.2.2)

によって補正した近似曲線である。最大荷重近傍での近似精度が向上していることが分かる。

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- 20 -

( ))()()()(

)(

1

2

1

2 1 −=

−−=∑∑ ioio

n

i

SS

ouioi SSePP

m

os

io

ε ········································· (3.2.2)

ここに、 Po(i)

S

:i番目の杭頭荷重の実測値

o(i)

P

:i番目の杭頭変位の実測値

ou

S

:極限支持力(極限支持力)

os

m :変位指数

:杭頭変位の特性値(≒杭頭降伏変位)

0

5

10

15

20

25

0 50 100 150 200 250杭頭変位S o (mm)

杭頭

荷重

Po (

MN

)

変位間隔が増加

残差εi

0

5

10

15

20

25

0 50 100 150 200 250杭頭変位S o (mm)

杭頭

荷重

Po (

MN

)

(a) 通常の最小二乗法(全データ均等) (b) 重み付け最小二乗法(変位間隔考慮)

図- 3.2.4 Weibull 分布関数による近似曲線の描き方

なお、ごく微小な変形領域に着目した検討を行う場合には、上記のような補正を行わない

方が望ましいと考えられる。あるいは、計測される変位間隔の差が大きくならないように、

試験における載荷荷重の間隔を調整するか、変位制御によって行うのがよいと考えられる。

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- 21 -

3.3 整理結果

杭頭変位の特性値Sosを杭径Dで正規化した値Sos

表- 3.3.1

/ D(以降、杭頭変位特性値レベルと呼ぶ)

の統計量を施工方法・支持形式別に整理した結果を および表- 3.3.2 に示す。表- 3.3.1

および表- 3.3.2 には、平均M、標準偏差SDおよび変動係数CV(= SD / M)に加えて、幾何平

均GM、幾何標準偏差GSDおよび下記に定義する標準偏差相当値SD’(±) の値を示した。この

理由は次のとおりである。

正規分布に従うデータの代表値には、相加平均M(以降、単に平均と呼ぶ)および標準偏

差SDがよく用いられる。しかし、Sos / Dの値は、正規分布よりも対数正規分布への適合性が

高いことが示されている 5)。図- 3.3.1 は、Sos / Dおよびこれを自然対数に変換した値ln(Sos / D)

の度数分布図である。図には、分布の傾向が分かりやすいようにデータを平滑化した 5 区間

移動平均線を併せて示している。これからも、Sos / Dの値は対数正規分布に従うと考えてよ

さそうである。この場合、Sos / Dの代表値として適正な意味を持つのは、平均Mや標準偏差

SDではなく、データを対数変換した値の平均M (ln(Sos / D)) や標準偏差SD (ln(Sos

n個のデータx

/ D)) であ

ると考えられる。一方、対数変換した値は、直接にはその工学的意味が分かりにくいため、

得られた値を逆変換して表すことにする。具体的には、次のとおりである。

iの平均をM(x)、標準偏差をSD(x) とし、x iを自然対数に変換して得られる値

ln x iの平均をM(ln x)、標準偏差をSD(ln x) とすると、M(ln x) を逆変換した値eM(ln x)は、式

(3.3.1)のとおりx iの幾何平均(相乗平均)GM(x) となる。ここで、平均M(x) ≧幾何平均

GM(x) の関係が常に成立し、x1 =・・・= xn

( ) ( ) ( ) ( ) ( )( ) ( )xGMe

xGMxxxxxxn

xn

xM

xM

nnni

=∴

=×⋅⋅⋅××=×⋅⋅⋅××== ∑ln

lnlnlnlnln1

212111

の場合には等号が成立する。

······· (3.3.1)

また、ばらつきの大きさを表す対数変換値の標準偏差SD(ln x) は、幾何標準偏差GSDと呼

ばれる無次元数であり、正規分布の性質より、M(ln x)±GSDの範囲に全データの 68%が含ま

れる。ただし、これらの値を逆変換した値と幾何平均GMとの差分の絶対値、すなわちeM(ln x)

±SD(ln x)とeM(ln x)

( ) ( ) ( ) )(lnlnln xMxSDxM eeDS −=+′ +

との差分の絶対値は、式(3.3.2)および式(3.3.3)に示すように、±の符号

によって異なってくる。本研究では、これらをそれぞれ上側標準偏差相当値SD’(+) および下

側標準偏差相当値SD’(-) と呼ぶことにする。

······························································· (3.3.2)

( ) ( ) ( ) ( )xSDxMxM eeDS lnlnln −−=−′ ······························································· (3.3.3)

また、式(3.3.4)および式(3.3.5)に示す関係を利用すれば、M(ln x) および SD(ln x) は

M(x) および SD(x) から求められる。

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- 22 -

( ) ( ) ( ){ }2

21 xSDxMxM lnlnln −= ································································ (3.3.4)

( ) ( ){ }( ){ }

+=

2

21

xMxSDxSD lnln ··································································· (3.3.5)

なお、式(3.3.5)から変動係数 CV があまり大きくない範囲では幾何平均 GSD ≒ 変動係

数 CV となり、表- 3.3.1 および表- 3.3.2 からもこのことが分かる。

表- 3.3.1 杭頭変位特性値レベルSos

施工方法

/ D (施工方法・支持形式別)

支持 形式

データ数

平均 標準 偏差

変動

係数

幾何 平均*

幾何標準

偏差** 標準偏差 相当値**

M SD CV GM GSD SD'(-) SD'(+)

打撃 支持杭 62 2.29% 1.63% 0.71 1.87% 0.64 0.88% 1.67% 摩擦杭 28 1.24% 0.40% 0.32 1.18% 0.31 0.32% 0.44%

バイブロ ハンマ 支持杭 4 3.18% 1.26% 0.40 2.96% 0.38 0.94% 1.37%

場所打ち杭 支持杭 40 1.61% 1.24% 0.77 1.28% 0.68 0.63% 1.25% 摩擦杭 19 1.95% 2.13% 1.09 1.32% 0.89 0.77% 1.88%

中掘り杭 支持杭 87 5.86% 3.31% 0.56 5.11% 0.53 2.09% 3.53% 鋼管ソイル

セメント杭 支持杭 19 3.31% 1.46% 0.44 3.03% 0.42 1.04% 1.59% 摩擦杭 5 1.43% 0.78% 0.55 1.26% 0.51 0.50% 0.84%

回転杭 支持杭 20 7.08% 5.75% 0.81 5.50% 0.71 2.80% 5.70% プレボーリ

ング杭*** 支持杭 18 5.29% 2.65% 0.50 4.73% 0.47 1.78% 2.86%

全種類 302 3.67% 3.33% 0.91 2.72% 0.77 1.47% 3.18%

*:GM = ( )xMe ln 。 ( )xM ln は、対数変換値ln(Sos

**:GSD =

/ D) の平均値を表す。

( )xSD ln 。SD’(±) = ( ) ( ) ( )xMxSDxM ee lnlnln −± 。 ( )xSD ln は、ln(Sos

***:文献

/ D) の標準偏差を表す。 5)

表- 3.3.2 杭頭変位特性値レベルS

におけるケムン工法、RODEX工法およびニーディング工法の統計量

os

施工方法

/ D (施工方法別)

データ数

平均 標準 偏差

変動

係数 幾何 平均*

幾何標準

偏差** 標準偏差 相当値**

M SD CV GM GSD SD’(-) SD’(+)

打撃 90 1.97% 1.45% 0.74 1.58% 0.66 0.76% 1.48% バイブロハンマ 4 3.18% 1.26% 0.40 2.96% 0.38 0.94% 1.37% 場所打ち杭 59 1.72% 1.59% 0.92 1.26% 0.78 0.69% 1.51% 中掘り杭 87 5.86% 3.31% 0.56 5.11% 0.53 2.09% 3.53%

鋼管ソイルセメント杭 24 2.92% 1.55% 0.53 2.58% 0.50 1.01% 1.67% 回転杭 20 7.08% 5.75% 0.81 5.50% 0.71 2.80% 5.70%

プレボーリング杭*** 18 5.29% 2.65% 0.50 4.73% 0.47 1.78% 2.86% 全種類 302 3.67% 3.33% 0.91 2.72% 0.77 1.47% 3.18%

*:GM = ( )xMe ln 。 ( )xM ln は、対数変換値ln(Sos

**:GSD =

/ D)の平均値を表す。

( )xSD ln 。SD’(±) = ( ) ( ) ( )xMxSDxM ee lnlnln −± 。 ( )xSD ln は、ln(Sos

***:文献

/ D)の標準偏差を表す。 5)におけるケムン工法、RODEX工法およびニーディング工法の統計量

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- 23 -

0

10

20

30

40

50

60

0% 2% 4% 6% 8% 10% 12% 14% 16%S os /D (普通目盛)

度数

M= 3.43%

M+SD= 6.55%

M-SD= 0.31%

5区間

移動平均プレボーリング杭工法を除く

0

5

10

15

20

25

30

35

0.2% 0.6% 2.0% 6.3% 20.0%S os /D (対数目盛)

度数

GM= 2.54%

GM+SD '(+)= 5.52%

GM-SD '(-)= 1.17%

5区間

移動平均

プレボーリング杭工法を除く

(a) 普通目盛 (b) 対数目盛

図- 3.3.1 杭頭変位特性値レベルSos

施工方法毎のS

/ Dの度数分布

os / Dの幾何平均GMは、小さい順に、場所打ち杭工法:1.3%、打撃工法:

1.6%、鋼管ソイルセメント杭工法:2.6%、バイブロハンマ工法:3.0%、プレボーリング杭

工法:4.7%、中掘り杭工法:5.1%、回転杭工法:5.5%となり、新しい杭工法のSos

4.3.3

/ Dは大

きい傾向にあり、これらは で述べるように先端抵抗力への依存度と有意な関係がある。

支持形式毎では、中掘り杭工法やプレボーリング杭工法等の摩擦杭のデータはないものの、

場所打ち杭を除けば摩擦杭のSos / Dは支持杭に比べて小さい。場所打ち杭の支持杭と摩擦杭

とでSos

ばらつきの大きさに着目すると、施工方法毎のS

/ Dの値が大差ないのは、場所打ち杭の場合、杭先端付近の沈殿物等のために、降伏

荷重程度では先端抵抗があまり発揮されないものと考えられる。

os

次に、変位指数mの整理結果を

/ Dの幾何標準偏差GSD の値は、小さい

順に、バイブロハンマ工法:0.38、プレボーリング杭工法:0.47、鋼管ソイルセメント杭工

法:0.50、中掘り杭工法:0.53、打撃工法:0.66、回転杭工法:0.71、場所打ち杭工法:0.78

とほぼ全てにおいて全データの値 0.77 より小さい。すなわち、施工方法毎に分類することに

よって説明性が向上することになる。

表- 3.3.3 に、度数分布図を図- 3.3.2 に示す。変位指数mは

正規分布に従うと考えて差し支えない。施工方法毎の変位指数mの平均は、既往の整理結果5)

とほぼ同様に 0.7 から 1.0 程度である。打撃工法が 1.0 と比較的大きく、荷重・変位曲線は初

期には線形的な挙動を示す傾向にあるのに対し、場所打ち杭工法や回転杭工法が 0.7 程度と

比較的小さめであり、荷重・変位曲線は初期から非線形的な挙動となる。また、支持杭より

も摩擦杭のmがわずかに大きくなる傾向も確認できる。なお、変動係数CVの値に着目すると、

mのばらつきはSos

/ Dに比べて小さい。

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- 24 -

表- 3.3.3 変位指数 m

施工方法 支持 形式 データ数 平均 標準偏差 変動係数

M SD CV

打撃 支持杭 62 0.98

1.00 0.18

0.17 0.18

0.17 摩擦杭 28 1.03 0.14 0.13

バイブロハンマ 支持杭 4 0.81 0.81 0.13 0.13 0.16 0.16

場所打ち杭 支持杭 40 0.72

0.73 0.18

0.19 0.25

0.26 摩擦杭 19 0.74 0.21 0.28

中掘り杭 支持杭 87 0.87 0.87 0.18 0.18 0.21 0.21 鋼管ソイル セメント杭

支持杭 19 0.80 0.80

0.17 0.18

0.22 0.23

摩擦杭 5 0.81 0.20 0.24 回転杭 支持杭 20 0.67 0.67 0.16 0.16 0.24 0.24

プレボーリング杭* 支持杭 18 0.98 0.98 0.10 0.10 0.10 0.10 全種類 302 0.87 0.21 0.24

*:文献5)

におけるケムン工法、RODEX工法およびニーディング工法のデータ

0

5

10

15

20

25

30

0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 1.25 1.50m (普通目盛)

度数

M= 0.87

M+SD= 1.07

M-SD= 0.66

5区間

移動平均

プレボーリング杭工法を除く

図- 3.3.2 変位指数 m の度数分布

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- 25 -

図- 3.3.3 は、施工方法・支持形式毎の杭頭変位特性値レベルSos / Dの幾何平均GM、変位

指数mの算術平均Mを用いて描いたPo / Pou - So

既往の研究

/ D曲線である。 5)では、打撃工法および場所打ち杭工法の場合、Weibull分布関数で近似もしく

は外挿される極限支持力Pouの値は、杭頭変位Soが杭径Dの 10%(So = 0.1 D)に達する時の

杭頭反力P10にほぼ等しいことが示されている。最新のデータを対象に両者の比率P10 / Pou

を示すと、大きい順に、打撃工法・場所打ち杭工法・鋼管ソイルセメント杭工法(摩擦杭):

99%~100%、バイブロハンマ工法・鋼管ソイルセメント杭工法(支持杭):92%~93%、プ

レボーリング杭工法:88%、中掘り杭工法:83%、回転杭工法:78%となる。すなわち、新

しい杭工法では、道路橋示方書に定義される設計上の極限支持力Rud( = P10)は、文字通り

抵抗力の最大値である極限支持力Pou

また、道路橋示方書においては、打撃工法とバイブロハンマ工法の極限支持力推定式は同

一であり、杭軸方向バネ定数K

を過小評価する傾向にある一方で、極限支持力が発現さ

れるまでに要する変位が大きい。

v

は異なっているが、両者の杭軸方向荷重・変位曲線が異なる

傾向を示すことも確認できる。

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

14%

16%

18%

20%

0% 20% 40% 60% 80% 100%P o / P ou

So

/ D

S o / D = 10%

打・支

場・支

回・支

中・支

プ・支

ソ・支

バ・支

打・摩

場・摩

ソ・摩

P oy ≒ 0.63 P ou

施工法打:打撃バ:バイブロハンマ場:場所打ち杭中:中掘り杭ソ:鋼管ソイルセメント杭回:回転杭プ:プレボーリング杭

支持形式支:支持杭摩:摩擦杭

図- 3.3.3 施工方法別平均Po / Pou - So

/ D曲線

Page 33: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 26 -

4. 杭軸方向荷重・変位曲線に関する考察

4.1 杭軸方向荷重・変位曲線に対する降伏変位の感度

Weibull分布関数の定義から、Po / Pou - So / D曲線の形状を決める変数は、杭頭変位特性値

レベルSos 3.3 / Dと変位指数mの 2 つである。 に示した整理結果では、これら 2 変数の施工方

法毎の平均M(幾何平均GM)は、GM(Sos

図- 4.1.1

/ D)= 1.0~5.5%程度、M(m)= 0.65~1.0 程度

である。

は、2 変数をこの範囲内で変化させてPo / Pou - So / D曲線を描いたものである。

杭頭変位特性値レベルSos / Dの値が大きい(小さい)ほど、同一の杭頭変位レベルSo / Dに対

するPo / Pouの値は小さい(大きい)。すなわち、曲線は左下方向(右上方向)に位置する。

一方、変位指数mの値の大きさについては、So ≦ Sos(Po / Pou ≦ 0.63)なる区間とSos ≦

So(0.63 ≦ Po / Pou

なお、図から明らかなように、2 変数の実際の分布範囲内では、曲線の形状に与える感度

は、mよりもS

)なる区間とで異なり、前者ではmが大きい(小さい)ほど曲線は左上

方向(右下方向)に位置し、後者ではその逆である。

os / Dの方が大きい。しかも、mのばらつき(変動係数)は、Sos / Dのそれに比

べて小さい。後述するように、ほとんどの場合で杭頭変位特性値Sosを杭頭降伏変位Soyと読

み替えることができるので、杭軸方向荷重・変位曲線を大きく支配するのは、杭頭降伏変位

レベルSoy

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

0% 20% 40% 60% 80% 100%P o / P ou

So /

D (%

)

S os / D = 1.0%m = 1.0

S os / D = 3.0%m = 1.0

S os / D = 5.5%m = 1.0

m = 0.65

/ Dの値であると言える。

図- 4.1.1 杭頭変位特性値レベルおよび変位指数と Weibull 曲線の形状

Page 34: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 27 -

4.2 降伏点の判定について

杭軸方向荷重・変位曲線をWeibull分布曲線で近似する場合、その特性点は降伏点であると

読み替えられてきた。すなわち、Weibull分布曲線から得られる杭頭変位の特性値Sosが杭頭降

伏変位Soy、杭頭荷重の特性値Posが杭頭降伏荷重Poy

4.2.1 降伏点の判定方法

であるとみなされてきた。以降では主に

降伏点に着目した検討を行うが、これに先立ち、両者の関係について確認しておく。

杭軸方向荷重・変位曲線は、杭体および地盤が対象となるため、土の非線形性が強く影響

し、厳密な意味での弾性範囲はほとんどない。しかし、橋全体系の挙動の観点からは、残留

変位がさほど大きくない範囲においては、繰返し荷重に対する挙動の再現性が確保されると

解釈し、この範囲を工学的な弾性範囲として捉えるのが一般的である。

弾性限界、すなわち降伏点の判定方法は、種々提案されており 12), 19), 20 表- 4.2.1)、これらは、

に示すように、1) 残留変位の急増点を直接求める方法、2) 普通目盛で表した荷重・変位曲

線における応答変位の急増点を降伏点とする方法、3) 両対数目盛で表した荷重・変位曲線の

折れ点や変位の径時変化から判定する方法、4) 荷重・変位曲線の曲率に着目した方法、5)

Weibull分布曲線における特性点に大別できる。

表- 4.2.1 降伏点の判定方法

法 降伏点と判定される点 長所・短所

1) 残留変位の急増点 工学的な弾性限界点を直接求めていることになる。載荷と

除荷をこまめに繰り返した試験でないと明確に判断できな

い。

2) 応答変位の急増点 残留変位の急増点とほぼ一致する。荷重・変位曲線から明

確な変位急増点が判断できる場合には有効である。

3)-A 荷重・変位の両対数関係 (log Po - log So関係)の折れ点

残留変位の急増点とほぼ一致する。折れ点が複数現れるこ

とや、折れ点が明確に現れない場合がある。

3)-B

S変位の

径時変

o - log t関係が直線か

ら曲線に変化または 勾配が変化する点 P -

残留変位の急増点とほぼ一致する。載荷荷重および変位の

径時変化の記録が必要である。 ΔSo / Δlog t

関係の折れ点

4) 荷重・変位曲線の最大曲率点 数学的な一点を客観性をもって判定できるが、軸目盛の取

り方によって最大曲率点が異なる。

5) Weibull関数における特性点

数学的な一点を客観性をもって判定できるが、弾性限界と

の関係が不明確である。

方法 1) ~3) による降伏点の判定方法の概要を図- 4.2.1 および図- 4.2.2 に示す。方法 1) は、

上述したように工学的な弾性限界点を直接求めるものであるが、載荷と除荷をこまめに繰り

返した試験結果でないと、明確な判定が困難である。方法 2) は、応答変位 = 弾性変位 + 塑

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- 28 -

性変位の関係が成立することを利用して、普通目盛で表した荷重・変位曲線上の変位急増点

を降伏点とするものである。図- 4.2.1(a) に示すように、荷重・応答変位曲線上に明確な変位

急増点が認められる場合には有効である。しかし、荷重・変位曲線が図- 4.2.1(b) のような形

状の場合、視覚によって変位急増点を判断するのは難しい。方法 3) は、地盤工学会の基準12)

に示される方法である。方法 3)-Aは、図- 4.2.2(a) に示すように、両対数目盛に表した荷重・

変位曲線の折れ点を降伏点とするもので、普通目盛に表した荷重・変位曲線が図- 4.2.1(b) の

ような形状の場合に有効である。しかし、折れ点が複数現れる場合や、明確に折れ点が現れ

ない場合もある。そこで、地盤工学会の基準12)では、方法 3)-Aと方法 3)-Bとを併用して判定

することとされている。方法 3)-Bは、荷重を保持した状態における変位の径時変化に着目し

て変化点を見出すものであり(図- 4.2.2(b)(c))、これは地盤のクリープ限界に相当すると推定

されている27)

なお、本研究で扱ったデータにおいて、残留変位や変位の径時変化の記録が残っているも

のは少ないため、方法 1) や方法 3)-B は適用できず、ここでは方法 2) と方法 3)-A とを併用

することになる。また、方法 1) ~方法 3) のいずれにおいても、視覚から判断することとな

るため、判定結果に人為的誤差が含まれる可能性が否定できないことに加え、多くのデータ

を対象にこうした作業を行うのは非常に面倒でもある。

0

1

2

3

4

5

6

7

0 20 40 60 80杭頭変位 S o (mm)

杭頭

荷重

Po

(MN

)

降伏点

○荷重・応答変位関係▲荷重・弾性変位関係●荷重・残留変位関係

0

1

2

3

4

5

6

7

0 20 40 60 80杭頭変位 S o (mm)

杭頭

荷重

Po

(MN

)

降伏点?

(a) 残留変位・応答変位急増点の判断が可能な場合 (b) 判断が困難である場合

図- 4.2.1 降伏点の判定方法(方法 1)、2))

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- 29 -

0.1

1

10

100

0.1 1 10 100杭頭変位 S o (mm)

杭頭

荷重

Po

(MN

)

降伏点

(a) log Po - log So

0

20

40

60

80

0.1 1 10 100荷重保持時間 t (min)

杭頭

変位

So

(mm

)

降伏点

P o=6.0MN

P o=5.5MN

P o=5.0MN

P o=4.5MN

P o=4.0MN

P o=3.5MN

関係

0

1

2

3

4

5

6

7

0 2 4 6 8 10ΔS o /Δlog t (mm / min)

杭頭

荷重

Po

(MN

)

降伏点

t = 30 min

(b) So - log t関係 (c) ΔSo

図- 4.2.2 降伏点の判定法(方法 3))

- Δlog t関係

次に、方法 4) は、「急増点」や「折れ点」を数学的に捉えようとするもので、最大曲率点

がそれらに対応するものとしている )

dsdφκ =

。数学的な一点を客観性をもって判定できるため、本研

究のような多くのデータを対象にした分析作業には適しているようにも思われる。曲率の定

義は、式(4.2.1)で表される。

··························································································· (4.2.1)

ここに、κ :曲率

φ :曲線の接線と x 軸との角度

s :曲線の長さ

すると、曲線 ( )xfy = の曲率の一般式は、次の手順で求められる。

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- 30 -

x xΔx +

ds

( )xfy =

φ φφ d+x

y

図- 4.2.3 曲率

接線の傾きは φtan であるから、 y ′=φtan である。よって、式(4.2.2)となる。

( )y ′= −1tanφ ····················································································· (4.2.2)

式(4.2.2)を x で微分すると、式(4.2.3)が得られる。

( )( )

( )22 111

yyy

dxd

ydxd

′+

′′=′

′+=

φ ······························································· (4.2.3)

微小区間における曲線長さ s は直線の長さに近似できるので、式(4.2.4)となり、これを

x で微分すると式(4.2.5)となる。

( ) ( ) ( ){ }22 xfxΔxfxΔs −++= ································································ (4.2.4)

( )21 yxΔ

sdxds ′+== ··········································································· (4.2.5)

よって、曲率を求める一般式は式(4.2.6)となる。

( ) ( ) ( ){ } 23222

11

11 y

y

yyy

dsdx

dxd

dsd

′+

′′=

′+⋅

′+

′′=⋅==

φφκ ·································· (4.2.6)

すなわち、荷重・変位曲線を関数 ( )xfy = で与えれば、曲率の最大値およびそのときの x お

よび y の値は、式(4.2.6)の微分値が 0 となる値を求めることにより定量的に得られる。な

お、関数 ( )xfy = が非線形方程式の場合に理論解を求めるのは困難であるが、市販ソフトを利

用すれば近似解は容易に求められる。

ここで、式(4.2.6)により得られる曲率は、x 軸と y 軸の目盛寸法が等しい座標上に描か

れた関数 ( )xfy = で表される曲線の幾何学形状に対する値である。よって、軸目盛の単位が重

要になってくる。

例を挙げて説明する。荷重 x(N)と変位 y(mm)との関係が 3

51 xy = で表されるデータを

仮定する。ここで、変位 y の単位を(cm)として表すと、両者の関係は 3

501 xy = となる。2

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- 31 -

つの関数で表される曲線に対し式(4.2.6)により求めた最大曲率点は、図- 4.2.4 に示すとお

りとなり、両者は一致しない。

0

1

2

3

4

5

0 1 2 3 4 5

x:荷重 (N)

y :変

位 (m

m o

r cm

)

y軸単位が

(mm)の場合

y軸単位が

(cm)の場合

κmax点

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0 1 2 3 4 5

x :荷重 (N)

曲率

κ

( )1yκ

( )2yκ

κmax点

図- 4.2.4 軸目盛の取り方による曲率最大点の相違の例

すなわち、曲率最大点の位置を特定するためには、次の 2 点が確保される必要がある。

・ 荷重および変位の単位を何らかの約束にしたがって統一する

・ 2 軸の軸目盛の寸法が等しい座標軸上に曲線を描く

しかし、様々な寸法、抵抗力の杭の荷重・変位曲線に対し、次元の異なる 2 変数の単位に

約束を設けるのは困難であると考えられたため、本研究では方法 4) を採用しなかった。しか

し、先述した方法 1) 、方法 2) および方法 3)-A は、視覚により曲率最大点を判断することと

本質的に同様である。よって、方法 4) は、例えば変数の無次元化等によって上述の 1 点目の

前提を確保することができれば、人為的誤差を排除した降伏点の判定方法として有効なので

はないかと考えている。

4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて

以上のことから、本研究においては、既往の知見に倣い、Weibull分布曲線上の特性点を降

伏点であるとみなすことを基本としている。ここで、Weibull分布曲線上の特性点は、載荷荷

重がする仕事量と関連付けられる基準となる点ではある )が、弾性限界との関連については説

明されていない。杭軸直角方向荷重・変位曲線に対しては、Weibull分布曲線上の特性点を降

伏点とみなしうることが確認されている14), 16)

図- 4.2.5

。そこで、杭軸方向荷重・変位曲線に対しても、

Weibull分布曲線における特性点と方法 1) ~方法 3) による判定値との比較を行う。

は、文献21)に示される打撃工法、場所打ち杭工法および中掘り杭工法のWeibull

分布曲線から求めた杭頭荷重の特性値Posと残留変位急増点から求めた降伏荷重Poyとの関係

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- 32 -

を示したものである。在来の杭工法では、Poy ≒Pos = 0.63 Pou

0

5

10

15

20

25

30

0 5 10 15 20 25 30x : P oy (MN) (残留変位急増点)

y : P

oy (M

N) (

Wei

bull判

定値

)

● 打撃○ 場所打ち杭▲ 中掘り杭

とみなせることが分かる。

図- 4.2.5 Weibull 特性点と降伏点との関係(在来の杭工法)

では、新しい杭工法でも同じことが言えるであろうか。鋼管ソイルセメント杭工法および

回転杭工法の載荷試験結果を記した文献22), 23), 24), 25), 26)には、方法 1) ~3) により判定された

降伏荷重Poy 図- 4.2.6の値が記されている。 は、杭頭荷重の特性値Posと杭頭降伏荷重Poyとの

関係、および杭頭変位特性値レベルSos / Dと杭頭降伏変位レベルSoy

図- 4.2.6

/ Dとの関係を示したも

のである。図中には、施工方法別に回帰直線を併せて示している。 (a) より、杭頭荷

重の特性値Posは、杭頭降伏荷重Poy 図- 4.2.6にほぼ等しいとみなすことができる。次に、 (b) を

参照すると、鋼管ソイルセメント杭工法では、個々の値は必ずしも一致しないが、平均的に

は杭頭変位特性値レベルSos / Dは杭頭降伏変位レベルSoy / D に等しい。この傾向は、杭の杭

軸直角方向荷重・変位曲線に対する整理結果14), 16)と同様である。一方、回転杭工法では、杭

頭変位特性値レベルSos / Dの値が杭頭降伏変位レベルSoy / Dに対して突出して大きなデータ

があり、平均では約 2 倍となる。よって、荷重・変位曲線の形状によってSos = Soy

そこで、Weibull分布曲線の形状を決定するパラメータである変位指数 mに着目してみる。

とみなせ

る場合とそうでない場合がありそうである。

図- 4.2.7 は、判定方法による値の相違と変位指数mとの関係を示したものである。図- 4.2.7

(a) はPos / Poy 図- 4.2.7と変位指数mとの関係、 (b) はSos / Soyと変位指数mとの関係である。

Pos / Poyの値は、mの値に関係なく 1 に近い。一方、Sos / Soy

さらに、載荷荷重の大きさにも着目してみる。

の値が著しく大きいデータは、

m < 0.7 の範囲に集中している。しかし、m < 0.7 であっても両者が比較的よく一致するデー

タもある。

図- 4.2.8 は、判定方法による値の相違Sos / Soy

と載荷荷重の大きさの指標Pomax / Pos(Pomax:実測最大荷重)および変位指数mとの関係を

示したものである。Sos / Soyの値が著しく大きいデータは、『m < 0.7 かつPomax / Pos ≦ 1.4』

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- 33 -

の範囲にある。

3.2 で述べたように、変位指数mの値が小さい場合の荷重・変位曲線は、変位が大きくなっ

ても荷重が一定の値に落ち着かずに漸増を継続する傾向にあり、曲線の形状は丸みを帯びて

いる。また、Weibull分布曲線の定義によりPos ≒ 0.63 Pouであるから、Pomax / Pos ≦ 1.4

を満足する実測最大荷重は、Pomax ≦ 0.88 Pouとなる。すなわち、変位指数m < 0.7 となるよ

うな荷重・変位曲線の場合、最大抵抗力の 9 割程度まで載荷されたものでなければ、Weibull

分布曲線における杭頭変位の特性値Sosが杭頭降伏変位Soy

0

10

20

30

40

50

0 10 20 30 40 50x : P oy (MN) (降伏点)

y : P

oy (M

N) (

Wei

bull特

性値

)

● 鋼管ソイルセメント杭

○ 回転杭

y = 0.97 x(鋼管ソイルセメント杭)

y = 1.14 x(回転杭)

であるとはみなすことができない

と考えられる。

0%

5%

10%

15%

20%

25%

0% 5% 10% 15% 20% 25%

x : S oy / D (降伏点)

y : S

os /

D (W

eibu

ll特性

値)

● 鋼管ソイルセメント杭

○ 回転杭

y = 1.04 x(鋼管ソイルセメント杭)

y = 1.90 x(回転杭)

(a) Pos - Poy (b) Sos - S

図- 4.2.6 Weibull 特性点と降伏点との関係(新しい杭工法)

oy

0

1

2

3

4

5

6

0.4 0.6 0.8 1.0 1.2変位指数 m

Pos

(Wei

bull特

性値

) / P

oy (降

伏点

)

鋼管ソイルセメント杭

回転杭

0

1

2

3

4

5

6

0.4 0.6 0.8 1.0 1.2変位指数 m

Sos

(Wei

bull特

性値

) / S

oy (降

伏点

)

鋼管ソイルセメント杭

回転杭

(a) Pos / Poy - m関係 (b) Sos / Soy

図- 4.2.7 判定法による降伏点の相違と変位指数 m との関係

- m関係

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- 34 -

0

1

2

3

4

5

6

1.0 1.2 1.4 1.6 1.8P omax / P oy

Sos

(Wei

bull特

性値

) / S

oy (降

伏点

)

△ m <0.7● m ≧0.7

図- 4.2.8 判定法による降伏点の相違と載荷荷重の大きさおよび変位指数 m との関係

以上のことから、『m < 0.7 かつPomax / Pos ≦ 1.4』に該当するデータについては、Weibull

分布曲線上の特性点を降伏点とはみなさないことにする。以降では降伏点に着目した検討を

行うため、改めて降伏点の見直しを行う。すなわち、『m < 0.7 かつPomax / Pos ≦ 1.4』に該

当するデータに対しては、普通目盛で表したPo - So曲線における変位急増点もしくは両対数

目盛でのlog Po - log So

降伏変位の見直し結果を

関係の折れ点における変位を求め、この点を改めて降伏点とみなすこ

とにする。

表- 4.2.2 に示す。見直しの対象となったデータは全体の約 10%で

あり、これらの杭頭変位特性値レベルの幾何平均GM (Sos / D) の値は、全データの値よりも

大きい。しかし、全データのGM (Sos / D)の値とGM (Soy

表- 4.2.2 降伏変位の見直し結果

/ D)の値とを比較すると、30%のデ

ータが見直しの対象となった回転杭工法以外はほぼ同程度である。

施工方法 見直し対象データ 全データ

データ数 GM(SosGM(S / D) oy データ数 /

D) GM (Sos GM (S / D) oy

打撃

/ D)

0 - - 90 1.58% 1.58% バイブロハンマ 0 - - 4 2.96% 2.96% 場所打ち杭 11 3.01% 1.29% 59 1.26% 1.10% 中掘り杭 8 9.46% 4.82% 87 5.11% 4.75%

鋼管ソイルセメント杭 3 3.93% 2.15% 24 2.58% 2.36% 回転杭 6 11.87% 3.52% 20 5.50% 3.62%

プレボーリング杭 - - - 18 4.73% 4.73% 全種類 27 6.10% 2.62% 302 2.72% 2.51%

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- 35 -

以降の降伏点の扱いについて表- 4.2.3 に整理しておく。『m<0.7 かつPomax / Pos≦1.4』の

条件に合致するデータでは荷重・変位曲線から見直した値を降伏変位Soyとし、『 』内の条件

に合致しないデータでは杭頭変位の特性値Sosを降伏変位Soyとみなすことにする。降伏荷重

については、条件によらず降伏荷重Poy = 杭頭荷重の特性値Pos

表- 4.2.3 降伏点の扱い

とみなすことにする。

条件 降伏荷重P 降伏変位Soy

m<0.7 かつ

oy

Pomax / PosP

≦1.4 oy = Pos= 0.63 P

(杭頭荷重の特性値) S

ou

oy

上記以外

= 見直した値(荷重・変位曲線における

変位急増点または両対数目盛での荷重・変位

曲線の折れ点) Soy = Sos

(杭頭変位の特性値)

Page 43: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 36 -

4.3 杭頭降伏変位の大きさ

4.3.1 施工方法との関係

図- 4.3.1 は、杭頭降伏変位レベルSoy

施工方法別に分類することによって、各施工方法の幾何平均GMの値は異なる傾向を示し、

幾何標準偏差GSDの値は全種類のそれよりも小さいことから、S

/ Dの幾何平均GMおよび幾何標準偏差GSDの値を施

工方法および支持形式毎に示したものである。図中には、[幾何平均GM]+[上側標準偏差相

当値SD’(+)]および[幾何平均GM]–[下側標準偏差相当値SD’(-)]の値を併せて示してお

り、これはデータの 68%が含まれる範囲を表している。

oy

/ Dの大きさは施工方法お

よび支持形式毎に分類することにより概ね説明可能であると考えられる。

0%

2%

4%

6%

8%

10%

支持杭 摩擦杭 支持杭 支持杭 摩擦杭 支持杭 支持杭 摩擦杭 支持杭 支持杭

打撃 バイブロハンマ

場所打ち杭 中掘り杭

鋼管ソイルセメント杭

回転杭 プレボーリング杭

全種類

GM

(Soy

/D),

SD

(Soy

/D)

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

GS

D (S

oy/D

)GM

GM + SD '(+)

GM - SD '(-)

GSD

図- 4.3.1 施工方法・支持形式毎の杭頭降伏変位レベルSoy / D

Page 44: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 37 -

4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

杭頭変位Soは、杭体変形量ΔLと杭先端変位Spとの和である。ここでは、杭頭降伏変位Soy

杭頭荷重P

に占めるこれらの割合を調べてみる。

o、杭先端荷重Pp、杭頭変位Soおよび杭先端変位Sp 図- 4.3.2の実測値を用いると、

に示すように 4 本のWeibull分布曲線を描くことができる。4 本のWeibull分布曲線は、式

(4.3.1)~式(4.3.4)で表される。

変位S

荷重

P

f 1 :P o-S o曲線

f 3 :P o-S p曲線

f 2 :P p-S o曲線

f 4 :P p-S p曲線

P oy

P py

S oyS py

杭体変形量:ΔL y

周面抵抗力:P f y

A

B

C

D

A点の座標を (S oy , P oy ) とした場合

S oy:杭頭降伏変位、P oy:杭頭降伏荷重

図- 4.3.2 4 本の Weibull 曲線

−⋅=

1

1111

m

s

o

SS

uo ePPf : ·································································· (4.3.1)

−⋅=

2

2122

m

s

o

SS

up ePPf : ································································· (4.3.2)

−⋅=

3

3133

m

s

p

SS

uo ePPf : ································································· (4.3.3)

−⋅=

4

4144

m

s

p

SS

up ePPf : ································································· (4.3.4)

ここに、Po:杭頭荷重、Pp:杭先端荷重、Pu1~Pu4:各Weibull分布曲線の極限荷重(Pu1 =

Pu3、Pu2 = Pu4)、Ss1~Ss4:各Weibull分布曲線の変位の特性値、m1~m4:各Weibull分布曲

線の変位指数である。

Page 45: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 38 -

図におけるf1:Po - So曲線上のA点を杭頭降伏荷重Poyおよび杭頭降伏変位Soyとすると、A

点を通る変位軸に平行な直線がf3:Po - Sp曲線と交わる点(C点)の変位座標の値が杭頭降伏

時の杭先端変位Spyであり、線分ACの長さは杭頭降伏時の杭体変形量ΔLyの大きさとなる。

同様に、A点を通る荷重軸に平行な直線がf2:Pp - So曲線と交わる点(B点)の荷重座標の値

は杭頭降伏時の杭先端荷重Ppyであり、線分ABの長さは杭頭降伏時の周面抵抗力Pfyとなるこ

とも分かる。ここで、杭頭降伏時の杭先端荷重Ppyと杭頭荷重Poyとの比Ppy / Poyを杭頭降伏時

の先端伝達率γy(0≦γy

なお、杭頭降伏時の杭先端荷重P

≦1)と呼ぶことにすれば、この値は杭頭降伏時における先端抵抗

力への依存度を表す指標となる。

pyや杭先端変位Spyは、必ずしも杭先端における降伏荷重

や降伏変位であるとは限らない。また、杭頭降伏時の杭先端変位SpyをA点 ⇒ B点 ⇒ D点の

順に求め、杭頭降伏時の杭体変形量ΔLy

を線分BDの長さから求めることも可能であるが、誤

差の累積を避けるため、ここでは上記の方法により求めた。

図- 4.3.3 は、杭頭降伏時の杭頭変位Soyに対する杭先端変位Spyの比Spy / Soy

打撃工法および中掘り杭工法は、杭先端変位の割合が比較的小さいデータが多く、累積曲

線は上に凸の形状を呈している。これに対し、場所打ち杭工法は、杭先端変位の割合が比較

的大きなデータが多く、累積曲線は下に凸の形状である。バイブロハンマ工法、鋼管ソイル

セメント杭工法および回転杭工法は、両者の中間的な特徴となる。

の度数分布を

施工方法毎に整理したものである。

場所打ち杭工法の杭先端変位が支配的となるのは、これが充実断面であるために軸剛性EA

が大きいことに加え、5.4.2 で述べるように施工による地盤の緩みのために杭先端地盤反力係

数kv

4.3.3

が他に比べて小さいためであると考えられる。一方、既製杭は中空断面であるために杭

体変形量が支配的となる傾向が強いが、 や 4.3.4 で述べるように杭頭降伏時の先端伝達

率γy

が大きい場合あるいは軸剛性バネEA / Lが大きい場合には、杭先端変位の影響が現れる

ようである。

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- 39 -

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0.1 0.3 0.5 0.7 0.9 S py /S oy

度数

0%

20%

40%

60%

80%

100%

中央値

0.29

0

1

2

0.1 0.3 0.5 0.7 0.9 S py /S oy

度数

0%

20%

40%

60%

80%

100%

中央値0.53

0

2

4

6

8

10

12

14

0.1 0.3 0.5 0.7 0.9 S py /S oy

度数

0%

20%

40%

60%

80%

100%

中央値0.77

(a) 打撃 (b) バイブロハンマ (c) 場所打ち杭

0

1

2

3

4

5

6

7

0.1 0.3 0.5 0.7 0.9 S py /S oy度

0%

20%

40%

60%

80%

100%

中央値0.52

0

1

2

3

4

5

6

0.1 0.3 0.5 0.7 0.9 S py /S oy

度数

0%

20%

40%

60%

80%

100%

中央値0.50

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

0.1 0.3 0.5 0.7 0.9 S py /S oy

度数

0%

20%

40%

60%

80%

100%

中央値0.37

(d) 中掘り杭 (e) 鋼管ソイルセメント杭 (f) 回転杭

図- 4.3.3 杭頭降伏時の杭頭変位Soyに対する杭先端変位Spyの比Spy / Soyの度数分布

Page 47: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 40 -

4.3.3 先端伝達率の影響

図- 4.3.4~図- 4.3.6 は、杭頭降伏時の杭頭変位レベルSoy / D、杭先端変位レベルSpy / Dお

よび杭体変形量レベルΔLy / Dと杭頭降伏時の先端伝達率γyとの関係を示したものである。

これらより、杭頭降伏時における、杭先端変位レベルSpy / D、杭体変形量レベルΔLy / D、そ

して両者の和である杭頭変位レベルSoy / Dの大きさは、杭頭降伏時の先端伝達率γy

このことは、

の影響を

受けることが読み取れる。

図- 4.3.7 に示すように、図- 4.3.4~図- 4.3.6 に示したSoy / D、Spy / D、ΔLy /

Dおよびγyの施工方法別の幾何平均GMを用いてこれらを同一図上に示すことにより、より

鮮明となる。すなわち、既往の研究5)において指摘されるように、杭頭変位の大きさと先端抵

抗力への依存度に有意な関係があるのは確かなことのようであり、杭頭降伏変位レベルSoy

ここで、

/

Dの大きさが施工方法に依存することも理解される。

図- 4.3.7 中に示した薄い線の矢印は、以下のことを定性的に示している。中掘り

杭工法および鋼管ソイルセメント杭工法では、先端抵抗力の確認を主目的として杭体表面に

すべり材料等を施して周面抵抗力を意図的に低減した試験結果が相当数含まれており、周面

抵抗力の低減長さは、幾何平均で中掘り杭:17 D、鋼管ソイルセメント杭:5.5 Dである。仮

にこれらで周面抵抗力の低減が行われていなければ、杭頭降伏時の先端伝達率γyの値はより

小さくなるはずであるから、この場合、Soy / D、ΔLy / DおよびSpy

なお、

/ Dはより小さいと考えら

れる。

図- 4.3.8 に示すように、杭頭降伏時の先端伝達率γyが大きければ杭頭降伏時の杭先

端変位Spyの杭頭変位Soyに対する比Spy / Soy

0%

4%

8%

12%

16%

20%

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0杭頭降伏時の先端伝達率 γy

降伏

変位

レベ

ル S

oy /

D

打撃バイブロハンマ場所打ち杭中掘り杭鋼管ソイルセメント杭回転杭

R =0.58

先端抵抗力が支配的

は大きくなる傾向にあるが、施工方法によってま

ちまちである。

図- 4.3.4 Soy / D - γy関係

Page 48: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 41 -

0%

2%

4%

6%

8%

10%

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0杭頭降伏時の先端伝達率 γy

杭頭

降伏

時の

杭先

端変

位レ

ベル

Spy

/ D

打撃バイブロハンマ場所打ち杭中掘り杭鋼管ソイルセメント杭回転杭

R =0.55

先端抵抗力が支配的

図- 4.3.5 Spy / D - γy

関係

0%

2%

4%

6%

8%

10%

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0杭頭降伏時の先端伝達率 γy

杭頭

降伏

時の

杭体

変形

量レ

ベル

ΔL

y /

D

打撃バイブロハンマ場所打ち杭中掘り杭鋼管ソイルセメント杭回転杭

R =0.47

先端抵抗力が支配的

図- 4.3.6 ΔLy / D - γy関係

Page 49: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 42 -

0%

1%

2%

3%

4%

5%

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

GM (γy )

GM

(Soy

/D,Δ

Ly/D

, Spy

/D)

中掘り杭

回転杭

バイブロハンマ

鋼管ソイルセメント杭

打撃

場所打ち杭

● S oy / D- ΔL y / D■ S py / D

先端抵抗力が支配的

図- 4.3.7 図- 4.3.4~図- 4.3.6 の関係を施工方法別の幾何平均 GM で表現したもの

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0杭頭降伏時の先端伝達率 γy

杭頭

降伏

時の

先端

変位

比 S

py /

Soy

先端抵抗力が支配的

先端変位が支配的

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0杭頭降伏時の先端伝達率 γy

杭頭

降伏

時の

先端

変位

比 S

py /

Soy

先端抵抗力が支配的

先端変位が支配的

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0杭頭降伏時の先端伝達率 γy

杭頭

降伏

時の

先端

変位

比 S

py /

Soy

先端抵抗力が支配的

先端変位が支配的

(a) 打撃 (b) バイブロハンマ (c) 場所打ち杭

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0杭頭降伏時の先端伝達率 γy

杭頭

降伏

時の

先端

変位

比 S

py /

Soy

先端抵抗力が支配的

先端変位が支配的

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0杭頭降伏時の先端伝達率 γy

杭頭

降伏

時の

先端

変位

比 S

py /

Soy

先端抵抗力が支配的

先端変位が支配的

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0杭頭降伏時の先端伝達率 γy

杭頭

降伏

時の

先端

変位

比 S

py /

Soy

先端抵抗力が支配的

先端変位が支配的

(d) 中掘り杭 (e) 鋼管ソイルセメント杭 (f) 回転杭

図- 4.3.8 杭頭降伏時の先端伝達率γyと先端変位比Spy / Soy

との関係

Page 50: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 43 -

4.3.4 杭寸法の影響

図- 4.3.9 は、杭頭降伏時の杭体変形量レベルΔLy / Dと軸剛性バネの逆数L / EAとの関係を

示したものである。軸剛性バネEA / Lの値が小さい(細長い)ほど、ΔLy / Dの値が大きくな

る傾向が明白である。これは、既往の研究5)

一方、杭が細長ければ先端伝達率が小さくなると推測されるが、

における指摘、すなわち、杭軸方向荷重・変位曲

線は杭長杭径比L / Dの影響を受けるとする指摘に合致する結果である。

図- 4.3.10 に示すように、

軸剛性バネEA / Lと杭頭降伏時の先端伝達率γy

4.3.3

との間には特別な傾向は認めにくい。先端伝

達率には、杭寸法のみならず、施工方法や杭を支持する地盤の特性が大きく影響するためで

あると考えられる。逆に言えば、収集された載荷試験結果が、様々な施工方法や地盤の特性

を反映したものであることにもなろう。

で述べたように、杭頭降伏変位レベルSoy / Dの大きさには、その時の先端伝達率γy

の大きさが影響している。先端伝達率γy

したがって、

は、地盤条件にもよるが、各施工方法の特性を概ね

反映したものであると言える。しかし、場所打ち杭が充実断面であるためにその断面積Aが他

に比べて大きいことを除けば、軸剛性バネEA / Lの値は施工方法の特性とは無関係である。

4.3.1 に示したとおり杭頭降伏変位レベルSoy / Dの大きさが施工方法によって

異なるのは、各施工方法の抵抗力特性によって杭頭降伏時の先端伝達率γyの大きさが異なる

ことに加え、収集したデータの軸剛性バネEA / Lの値が施工方法毎に異なることも一因である

ことになる。よって、一般にはSoy / Dが小さい場所打ち杭工法においても、例えば杭長が短

い場合、もしくは期待できる周面抵抗力が小さな地盤中に設置された場合には、先端伝達率

γyが相対的に大きくなるためにSoy / Dの値は大きくなると考えられ、Soy

なお、中掘り杭工法等における新技術のデータには、建設技術審査証明報告書に示される

試験結果が多く含まれている。建設技術審査証明の適用範囲には、載荷試験実績における最

大値程度の値が杭長の最大値として示されているが、最小値は示されていない。

/ Dの幾何平均が最

大となる中掘り杭においても、その逆のことが生じうる。

図- 3.2.3 に

示したように、新技術の載荷試験データが近年の使用実績における杭長が大きめの範囲に偏

る傾向にあるのは、このためであろう。

Page 51: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 44 -

0%

2%

4%

6%

8%

10%

0.0E+00 5.0E-06 1.0E-05 1.5E-05

L / EA (m/kN)

ΔL

y /

D

打撃バイブロハンマ場所打ち杭中掘り杭鋼管ソイルセメント杭回転杭

R =0.75

図- 4.3.9 ΔLy

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0E+00 5.0E-06 1.0E-05 1.5E-05L / EA (m/kN)

γy

打撃バイブロハンマ場所打ち杭中掘り杭鋼管ソイルセメント杭回転杭

/ D - L / EA関係

図- 4.3.10 γy

- L / EA関係

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- 45 -

4.4 変位指数mの大きさ

図- 4.4.1 に示すように、Weibull 分布曲線の形状は、変位指数 m の値が大きいと初期には

線形的であり、変位が大きくなると一定の荷重に落ち着く、弾完全塑性型のような傾向とな

る。一方、変位指数 m の値が小さいとその形状は初期から非線形性を帯び、変位が大きくな

っても荷重が漸増するという 2 次勾配を有する弾塑性型のような傾向となる。

図- 4.4.2 は、変位指数mと杭頭降伏時の杭頭変位Soyに対する杭先端変位Spyの比Spy / Soy

との関係を示したものである。杭先端変位の割合が大きいほど、変位指数mの値が小さい傾

向にある。これより、杭体の弾性変形が支配的であれば、杭軸方向荷重・変位曲線は線形的

であり、杭先端変位が支配的である場合には、杭先端地盤の荷重・変位曲線の非線形性の影

響を強く受けるために荷重・変位曲線も非線形的となると考えられる。また、場所打ち杭工

法の載荷試験結果において両対数軸上の荷重・変位曲線(log Po - log So関係)に明瞭な折れ

点が現れにくいのは 27

なお、

)、場所打ち杭の杭頭変位が主に杭先端変位によって生ずるためである

と考えられる。

図- 4.4.3 に示すように、杭頭降伏変位レベルSoy

/ Dと変位指数mとの間に明確な関

係を見出すのは難しい。

0% 20% 40% 60% 80% 100%P o / P u

So

/ D

m = 1.0

m = 1.5

m = 0.5

(P oy / P u , S oy / D )

図- 4.4.1 変位指数 m と荷重・変位曲線の形状

Page 53: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 46 -

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

1.6

0% 20% 40% 60% 80% 100%杭先端変位の比率 S py / S oy

変位

指数

m

R = - 0.67

先端変位が支配的

荷重変位曲線が初期は線形的

図- 4.4.2 変位指数mと杭頭降伏時の杭先端変位の比率Spy / Soy

との関係

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

1.6

0% 3% 6% 9% 12% 15%S oy / D

変位

指数

m

図- 4.4.3 変位指数m と 降伏変位レベルSoy / Dとの関係

Page 54: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 47 -

4.5 降伏支持力に対する現象論的解釈

降伏支持力Poyは、Poy ≒0.63 Pou 4.2.2とみなすことが可能であることを で確認した。し

かし、杭の軸方向抵抗力機構において「0.63」という数値の持つ意味は明確ではない。ここ

では、降伏支持力が発現されたときに生じている現象について考察する。

図- 4.5.1 は、降伏支持力Poyと杭頭変位レベルSo / D が 10%に達した時の周面抵抗力Pf10

との関係を示したものである。打撃工法や場所打ち杭工法ではPoy ≒ Pf10の関係が成立し、

これら以外の杭工法ではPoy > Pf10

0

2

4

6

8

10

12

0 2 4 6 8 10 12S o / D = 10%時の周面抵抗力 P f 10 (MN)

降伏

支持

力 P

oy (M

N)

GM(P oy / P f 10)=1.07

P oy = P f 10

0

5

10

15

20

25

0 5 10 15 20 25S o / D = 10%時の周面抵抗力 P f 10 (MN)

降伏

支持

力 P

oy (M

N)

P oy = P f 10

GM(P oy / P f 10)=1.08

0

2

4

6

8

0 2 4 6 8S o / D = 10%時の周面抵抗力 P f 10 (MN)

降伏

支持

力 P

oy (M

N)

P oy = P f 10

GM(P oy / P f 10)=1.68

となる傾向が伺える。

(a) 打撃 (b) バイブロハンマ (c) 場所打ち杭

0

3

6

9

12

15

0 3 6 9 12 15S o / D = 10%時の周面抵抗力 P f 10 (MN)

降伏

支持

力 P

oy (M

N)

P oy = P f 10

GM(P oy / P f 10)=2.33

0

5

10

15

20

25

0 5 10 15 20 25S o / D = 10%時の周面抵抗力 P f 10 (MN)

降伏

支持

力 P

oy (M

N)

P oy = P f 10

GM(P oy / P f 10)=1.48

0

10

20

30

40

0 10 20 30 40S o / D = 10%時の周面抵抗力 P f 10 (MN)

降伏

支持

力 P

oy (M

N)

P oy = P f 10

GM(P oy / P f 10)=2.12

(d) 中掘り杭 (e) 鋼管ソイルセメント杭 (f) 回転杭

図- 4.5.1 降伏支持力PoyとSo / D =10%時の周面抵抗力Pf10

打撃工法および場所打ち杭工法では、降伏支持力は周面抵抗力が降伏に達した時に現れ、

埋込み杭工法では周面抵抗力が降伏した後、先端抵抗力が降伏した時に現れることが、既往

の研究

との関係

27), 28)において示されている。4.3.3 で述べたように、打撃工法や場所打ち杭工法に比べ、

その他の杭工法では杭頭降伏時の先端伝達率γy

図- 4.5.2

が大きい傾向にある。このことから、周面抵

抗力が卓越する場合と先端抵抗力の影響が無視できなくなる場合(対比のために先端抵抗力

が卓越すると表現する)とに分類することにより、降伏支持力の発現時に生じている現象に

対する解釈は、 のように概念的に表すことができる。すなわち、周面抵抗力が卓越

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- 48 -

する場合には、杭頭における荷重・変位曲線には周面抵抗力の降伏時に顕著な変化が現れる。

この時点での先端抵抗力は小さいため、降伏支持力Poy ≒周面抵抗力Pfyとなる。一方、先端

抵抗力が卓越する場合には、杭頭における荷重・変位曲線には周面抵抗力の降伏によっても

わずかな変化が生ずるが、先端抵抗力の影響により顕著な変化とはならず、先端抵抗力の降

伏時に顕著な変化が現れ、降伏支持力Poyは周面抵抗力Pfyとこの時の先端抵抗力Ppyとの和、

すなわちPoy ≒ Pfy + Ppy

杭頭変位So

杭頭荷重Po

周面抵抗Pf

先端抵抗Pp

変位

Pf

So= 0.1D

周面抵抗が卓越

Po

変位

Pp

周面降伏

先端降伏 先端最大

Poy≒0.63Pou= Pfy+ Pp≒Pfy

Pou

P10

降伏点:周面抵抗力の降伏で決定Pou≒P10

先端抵抗が卓越

杭頭変位So

杭頭荷重Po

周面抵抗Pf

先端抵抗Pp

変位

Pf

So= 0.1D

Po

変位

Pp

周面降伏

先端降伏

先端最大

Poy≒0.63Pou= Pfy + Ppy

Pou

P10

降伏点:先端抵抗力の降伏で決定Pou>P10

Pfy

Ppy

Pfy

Ppy

伝統的な杭工法長い杭周面地盤が良好

新しい杭工法短い杭周面地盤が軟弱

となると考えられる。

図- 4.5.2 降伏支持力の解釈(概念図)

図- 4.5.3 は、So / D = 10%時の杭頭降伏支持力Poyの周面抵抗力Pf10に対する比Poy / Pf10と

杭頭降伏時の先端伝達率γyとの関係を示したものである。γyの増加に伴い加速度的にPoy /

Pf10の値が大きくなることから、先端抵抗力が降伏支持力と無関係ではないことが確認できる。

また、このことから、降伏支持力は、So / D = 10%時の周面抵抗力Pf10と杭頭降伏時の先端伝

達率γyとによっても推定できそうである。降伏支持力Poyは、降伏に至った周面抵抗力Pfyと

その時の先端抵抗力γy Poy

oyyfyoy PPP γ+=

との和であるとすると、式(4.5.1)となる。 ·············································································· (4.5.1)

ここで、図- 4.5.1(a)(c)に示される関係や付属資料- 3 等を参考に、Pfy ≒0.9 Pf10

1019.0

11

fy

fyy

oy PPPγγ −

=−

=

と仮定す

ると、式(4.5.2)が得られる。

································································ (4.5.2)

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- 49 -

図- 4.5.3 中には、式(4.5.2)で表される推定曲線を併せて示した。実測値の分布と推定曲

線とはよく一致している。

0

1

2

3

4

5

6

7

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0杭頭降伏時の先端伝達率γy

Poy

/ P

f10

図- 4.5.3 Poy / Pf10-γy

以上のことから、式(2.2.2)に示した、設計上の極限支持力R

関係

ud = P10

udyd RR 63.0=

を推定するための支

持力推定式を利用して、降伏支持力の推定式として式(4.5.3)および式(4.5.4)の 2 通りが

準備できることになる。 ················································································· (4.5.3)

fdy

yd RRγ−

=1

9.0 ················································································ (4.5.4)

ここに、Ryd

R

:降伏支持力の推定値

ud

R

:極限支持力の推定値

fd

γ

:極限支持力の推定値における周面抵抗力

y :杭頭降伏時の先端伝達率(0≦γy

ただし、式(4.5.4)における杭頭降伏時の先端伝達率γ

≦1)

y

ud

fdyd R

R63.09.0

1−=γ

は未知数となるが、式(4.5.3)

および式(4.5.4)とからその推定式を導けば、式(4.5.5)となる。

············································································· (4.5.5)

ここに、γyd

:杭頭降伏時の先端伝達率の推定値

10190

fy

oy PPγ−

=.

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- 50 -

4.6 杭軸方向の安定照査のあり方

2.2 で述べたように、杭軸方向の安定性は支持力照査によって確認されるが、照査における

安全性担保の理念は表- 4.6.1 に示すとおりであると考えられる。

表- 4.6.1 杭軸方向の安定照査による安全性担保の理念

担保の意図 担保の項目 担保の手段

1 破壊させない 最大強度(極限支持力)

Ru

極限支持力の推定値R

に対する安全性

udの不確実性を考慮し、真のRu

を超えない確率が一定以上となるような許容支持力

Ra =φuRud

2

を定める。 挙動の可逆性

(使用限界)

を確保

弾性限界強度(降伏支持

力)Ry

降伏支持力の推定値R

に対する安全性

ydの不確実性を考慮し、真のRy

を超えない確率が一定以上となるような許容支持力

Ra =φyRyd

3

を定める。

供用性を確保 杭頭変位So 杭頭変位レベルSに起因する

上部構造の想定外の変

状に対する安全性

o / Dが上部構造から決まる目標上限

値Sot / Dを超えない確率が一定以上となるような許

容支持力φuRud、φyRyd

とする。

また、上記の安全性の定量的指標として、許容支持力が限界強度(極限支持力、降伏支持

力)に対して有する目標安全性指標β tおよびこの時の杭頭変位レベルの目標上限値Sot

表- 4.6.2

/ Dを

挙げることができ、これまでの道路橋杭基礎に意図されていたと考えられる値は、

に示すとおりである。

許容支持力の算定に用いる安全率の値は、昭和 39 年に規定2)されて以来不変であるから、

上記 3 点の安全性の度合いは長い間同一であったことになる。改めて言うまでもなく、安全

性指標βの値は大きいほど望ましいが、これを大きくすれば、経済性は低下することになる。

よって、最適な目標安全性指標β t

表- 4.6.2

の値を定めるためには、社会的合意が必要であると考えら

れる。そこで、ここでは、これまでの実績を尊重して に示す値を提案値としておく。

なお、杭頭変位レベルの目標上限値Sot / Dは、直接基礎の許容鉛直支持力の算定に用いる

最大地盤反力度の上限値の規定1)と同様の考え方に基づいて常時に対してのみ設ける案と、ケ

ーソン基礎の底面地盤の許容鉛直支持力度の規定1)

表- 4.6.2 目標とする安全性指標(提案値)

と同様の考え方に基づいて常時、暴風時お

よびレベル 1 地震時に対して設ける案とが考えられる。

荷重状態 β St ot

極限支持力R / D

u 降伏支持力Rに対して y 片側 95%信頼限界* に対して 常時 3.0 1.5 2.0%

暴風時・L1 時 1.8 0.5 3.5% *:GM + 1.65GSD 注:Sot

/ Dは 2 案が考えられる(常時のみor常時・暴風時・レベル 1 地震時)

本研究は、信頼性について議論することを目的としていないが、ここでは今後の安定照査

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- 51 -

モデルとして考えられる案を挙げ、これらの得失について考察する。

(1) 現行の極限支持力の定義とする場合(案 1)

表- 4.6.4 は、3.3 で整理した最新のデータを対象に、常時、暴風時およびレベル 1 地震時

の許容支持力が極限支持力および降伏支持力に対して有する安全性指標βの値を文献3)に示

される方法に準じて逆算した結果である。ここで、極限支持力の実測値には、道路橋示方書

に定義される杭頭変位が杭径の 10%に達した時の杭頭反力P10を、降伏支持力の実測値には、

0.63 P10

11

をそれぞれ用いた。また、極限支持力の推定値は、最新の研究成果による支持力推定

式 )(表- 5.5.2 および付属資料- 5 に示す)により算定し、降伏支持力の推定値は極限支持力

の推定値Rudに 0.63 を乗じた値とした。さらに、許容支持力Raの算定のために極限支持力の

推定値Rud

表- 4.6.3

に乗じる抵抗係数φの値は、現行の安全率n(常時n = 3、暴風時・レベル 1 地震時

n = 2)の逆数(常時φ= 0.33、暴風時・レベル 1 地震時φ= 0.5)とした( )。

表- 4.6.3 安全性指標の逆算に用いた値

実測値 推定値 Ra =φRud

常時

における抵抗係数φ 暴風時・

レベル 1 地震時

極限支持力 So = 0.1Dの時

の杭頭反力P支持力推定式による

10 極限支持力の推定値R 0.33 ud 0.5 降伏支持力 0.63 P 0.63 R10

ud

表- 4.6.4 の値は、表- 4.6.2 に示す値とほぼ同等であることが確認できる。すなわち、道路

橋示方書に定義される極限支持力の推定式を整備し、これに現行の安全率に相当する抵抗係

数を乗じた値を許容支持力とすることによって、許容支持力が最大強度点および弾性限界点

に対して有する安全性余裕およびその時の杭頭変位レベルは既往と同程度の水準となること

が分かる。

なお、4.5 に示したように、降伏支持力の推定式を式(4.5.4)とすることも考えられる。

表- 4.6.4 安全性指標の逆算結果(極限支持力の定義:据置き)

荷重状態 β So

極限支持力R / D

u 降伏支持力Rに対して y 片側95%信頼限界* に対して 常時 3.16 1.77 1.9%

暴風時・L1 時 1.93 0.54 3.2% *:GM + 1.65GSD

(案 1)における杭軸方向の安定照査モデルを図- 4.6.1 に示す。また、表- 4.6.1 に示した

安全性担保の 3 つの意図に対応する(案 1)における照査式を示すと、表- 4.6.5 のとおりと

なる。

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- 52 -

杭頭変位S o

杭頭荷重P o

P ou

(最大抵抗力)

R ud = P 10

(設計上の極限支持力)⇒推定式を整備

許容支持力(常時)

R au1 = 0.33 R ud

R ay 1 = 0.53 R y d

許容支持力(暴風時・レベル1地震時)

R au2 = 0.50 R ud

R ay 2 = 0.79 R y d

S o / D = 10%

K v

⇒推定式を整備

レベル2地震時の安定照査に用いる

荷重変位関係モデル

S ot / D = 2.0%(片側95%信頼限界)

S ot / D = 3.5%(片側95%信頼限界)

βt = 1.5

βt = 1.8

βt = 3.0

βt = 0.5

荷重変位関係(載荷試験)現行

提案

杭頭反力を過小評価

R y d ≒ 0.63 R ud orR y d ≒ 0.9 R f 10 / (1-γy )

図- 4.6.1 杭軸方向の安定照査モデル(案 1)

表- 4.6.5 杭軸方向の安定照査式(案 1)

担保の意図 常時 暴風時・レベル 1 地震時 備考

1 破壊させない P ≦ Rau1 = φu1 R(φ

ud

u1

P ≦ R = 0.33)

au2 = φu2 R(φ

ud

u2R = 0.5) ud:P10

2

の推定式

挙動の可逆性を確保

(使用限界) P ≦ Ray1 = φy1 R

(φyd

y1

P ≦ R = 0.53)

ay2 = φu2 R(φ

yd

y2

R = 0.79)

yd = 0.63 Rud

R or

yd = 0.9 R fd / (1-γy

3 )

供用性を確保 - - 許容支持力により担保 *:φy1およびφy2の値は、降伏支持力の推定式をRyd = 0.63 Rud

ここに、 P :杭頭作用荷重(kN) とした場合に対するものである。

Rau1

R

:最大強度を越えないための常時に対する許容支持力(kN)

au2

R

:最大強度を超えないための暴風時およびレベル 1 地震時に対する許容支

持力(kN)

ay1 :弾性限界強度を超えないための常時に対する許容支持力(kN)(Ray1 =

Rau1

R

ay2 :弾性限界強度を超えないための暴風時およびレベル 1 地震時に対する許

容支持力(kN)(Ray2 = Rau2

φ

u1 :最大強度を越えないための常時に対する許容支持力の算定に用いる極限

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- 53 -

支持力の推定値Rud

φ

に乗ずる抵抗係数

u2 :最大強度を超えないための暴風時およびレベル 1 地震時に対する許容支

持力の算定に用いる極限支持力の推定値Rud

φ

に乗ずる抵抗係数

y1 :弾性限界強度を越えないための常時に対する許容支持力の算定に用いる

降伏支持力の推定値Ryd

φ

に乗ずる抵抗係数

y2 :弾性限界強度を超えないための暴風時およびレベル 1 地震時に対する許

容支持力の算定に用いる降伏支持力の推定値Ryd

R

に乗ずる抵抗係数

ud

R

:極限支持力の推定値(kN)

yd

R

:降伏支持力の推定値(kN)

fd :極限支持力の推定値Rud

γ

における周面抵抗力(kN)

y :杭頭降伏時の先端伝達率(0≦γy

≦1)

レベル 2 地震時の安定照査に用いる杭軸方向荷重・変位関係モデルは、杭軸方向バネ定数

Kvを勾配とし、設計上の極限支持力Rud 図-

4.6.1

を上限とする弾完全塑性型で与えられている(

中の破線)。実際の杭軸方向荷重・変位曲線は曲線であるから、これを 2 本の直線で表

現しようとすると、実際の曲線との誤差が大きくなる。さらに、弾性限界点である降伏点を

超える領域までも弾性として扱っているかのような誤解も生じやすい。現在では、設計計算

にはコンピュータを用いることが一般的であることを鑑みて、図- 4.6.1 中には提案モデルと

して原点、降伏点および極限支持力点を結ぶトリリニア型の直線を示した。

(案 1)の利点は、極限支持力あるいは降伏支持力に対して目標安全性指標β tが確保され

る許容支持力とすることによって、結果的に常時、暴風時およびレベル 1 地震時における杭

頭変位レベルSo / Dをその目標上限値Sot

1 点目は、杭基礎の降伏の目安である。道路橋示方書には、杭基礎の降伏の目安として以

下のいずれか 2 点が解説されている。

/ D以内に抑えることができる点である。一方、(案

1)の課題としては、次に示すようにレベル 2 地震時に対する照査に係る 2 点が挙げられる。

1) 全ての杭において杭体が塑性化する。

2) 1 列の杭頭反力が押込み支持力の上限値に達する。

これは、現行の弾完全塑性型モデルを使用して解析された上部構造の慣性力作用位置にお

ける水平荷重・変位曲線から設けられたものである。よって、レベル 2 地震時の照査に用い

る杭軸方向の荷重・変位関係を提案モデルとする場合には、杭基礎の降伏の目安のうち、2) の

内容を見直す必要が生じる可能性がある。

2 点目は、杭頭反力の過小評価である。図- 4.6.1 に示したように、提案モデルによると、

杭頭変位レベルSo / Dの値が 10%を超える領域では杭頭反力が過小評価されることになる。

フーチングの曲げ・せん断に対する設計において、杭頭反力は支配的な荷重であり、杭頭反

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- 54 -

力を過小評価することはフーチングの設計に対して危険側となる場合がある。よって、この

不具合を解消するためには、フーチングの設計に用いる杭頭反力を何らかの係数等によって

割増す必要がある。ただし、これは、杭頭反力が設計上の上限値Rud

ここで、杭頭反力が過小評価される場合がどのくらいの頻度で生じうるのか考察する。

に達することを前提とす

る場合、すなわち、レベル 2 地震時において橋脚が十分大きな終局水平耐力を有している場

合や液状化が生じる場合において基礎に主たる塑性化を許容する場合であり、かつ、先端抵

抗力が卓越する杭の場合に限定される。

まず、図- 4.6.2 に示すように、杭基礎の塑性化を考慮した設計が行われ、その制限によっ

て規模が決定される割合はごくわずか7)

0%

20%

40%

60%

80%

100%

橋軸方向 橋軸直角方向

常時

16%

44%

14%3%

1%22%

7%

23%

13%2%

4%

51%

レベル1地震時

レベル2地震時

(塑性化させない)

決まらない

レベル2地震時(許容回転角)

レベル2地震時(許容塑性率)

杭基礎の規模の決定ケース

である。

図- 4.6.2 杭基礎の規模の決定ケース

さらに、道路橋示方書では、現状、レベル 2 地震時において基礎の塑性化を考慮する場合

には、橋脚の杭基礎における許容塑性率μ

7)

a = 4 および許容回転角θa = 0.02 radが規定されて

いる。ここで、杭頭位置すなわちフーチング下面における回転角θFは、杭の曲げ変形による

回転角θMと杭の杭軸方向変位に伴う回転角θvとの和となる。仮に、フーチング下面におけ

る回転角θFの全てが杭の杭軸方向変位に伴う回転角θvであると仮定すると、道路橋示方書

にしたがって杭中心間隔を 2.5 Dとした場合の許容回転角θa

図- 4.6.3

から決まる杭軸方向変位の上限

値は、 に示すように、常時における軸方向変位を大きめの値(片側 95%信頼限界)

である 0.02 Dとしても、2 列配置の場合にはSo = 0.045 D、5 列配置の場合にはSo = 0.12 D

となる。気中における組杭の交番水平載荷試験結果29), 30), 31), 32)によると、塑性率(水平変位

の降伏変位に対する倍率)が 4 となる時の杭の曲げ変形による回転角θMは、θM = 0.005~

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- 55 -

0.010 rad程度であるから(この時の杭軸方向変位はごく小さい)、実際には杭軸方向変位に伴

う回転角θvがフーチング下面における回転角θFの大半を占めることは考えにくい。よって、

杭頭位置における回転角をθa

DDDS ao 045.0tan25.102.0 ≈⋅+= θ

杭 フーチング

許容回転角 θa = 0.02 rad 2 列配置

DDDS ao 12.0tan0.502.0 ≈⋅+= θ

5 列配置 許容回転角 θa = 0.02 rad

2.5D

軸方向変位 So

フーチング

5.0D

2.5D 1.25D

D 軸方向変位

So

初期変位 (常時)

So = 0.02 D 初期変位 (常時)

So = 0.02 D

= 0.02 rad程度以下に抑えておけば、壁式橋脚の橋軸直角方向

のように杭列数が相当多い場合を除き、杭の杭軸方向変位が 0.1 Dを超えることによって杭頭

反力が過小評価される可能性はほとんどないようにも思われる。

図- 4.6.3 許容回転角から決まる杭の杭軸方向変位

なお、橋軸方向の杭配置に想定される杭列数が少ない場合、比較的小さな杭軸方向変位に

おいても杭頭位置における回転角は許容回転角を超えると考えられる。このことは、レベル

2 地震時に基礎の塑性化を考慮した場合の許容回転角の設定に関する新たな問題提起である

ことも示唆している。

(2) 極限支持力の定義を変更する場合(案 2)

極限支持力の定義をRud = Pouと変更することも考えられる。この場合、降伏支持力もRyd =

0.63 Rud( = 0.63 Pou

極限支持力の定義を変更する場合、常時、暴風時およびレベル 1 地震時の許容支持力は、

)に変更することになる。(案 2)では、頻度は少ないと考えられるも

のの、(案 1)において示したレベル 2 地震時の照査における杭頭反力の過小評価の可能性が

解消されることが期待できる。

表- 4.6.6 に示す手順によって定められることとなる。

まず、ここでの定義にしたがった極限支持力および降伏支持力の推定式RudおよびRydを整

備する。ここでも、降伏支持力の推定式には 2 通りの案が考えられる。また、杭頭変位が杭

径の 10%に達する時の杭頭反力P10の推定式R10d

次に、推定式による推定結果の偏り(推定比の平均)およびばらつき(推定比の標準偏差)

を評価する。なお、降伏支持力の実測値はP

も併せて整備しておけば、(案 1)で提案し

たようなレベル 2 地震時におけるトリリニア型の設計モデルの構築が容易となる。

oy = 0.63 Pouで与えられるので、降伏支持力の推

定式をRyd = 0.63 Rudとした場合には、極限支持力および降伏支持力の推定比の統計量は等し

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- 56 -

くなる。

そして、表- 4.6.2 に提案した 4 通りの目標安全性指標β tおよび 2 通りの杭頭変位レベルの

目標上限値Sot / Dを満足するように 4 通りの抵抗係数φを求め、これらを極限支持力あるい

は降伏支持力の推定値RudおよびRydに乗ずることによって、許容支持力の算定式Ra

表- 4.6.6

が決定さ

れる。

中に示した記号の添え字は、表- 4.6.5 に示した記号の添え字と同様であり、最大

強度(極限支持力)に対するものには「u」、弾性限界強度(降伏支持力)に対するものには

「y」、常時に関するものには「1」、暴風時およびレベル 1 地震時に関するものには「2」を付

している。

表- 4.6.6 許容支持力を定める手順(案 2:極限支持力の定義を変更)

検討項目・手順 検討成果

常時 暴風時・ レベル 1 地震時

1 支持力推定式の整備(極限支持力推定式Rud、杭頭 10%変位支持力推定式R10d、降伏支持力推定式Ryd

R

ud = qdu・A + U∑(f iu・L i

R)

10d = qd・A + U∑(f i・L i

R)

yd = 0.63 Rud or 0.9R f10d / (1-γy

2

)

推定結果の偏り、ばらつきの評価 Pou / Rud

Pおよび

oy / Ryd(= 0.63 Pou / Ryd

の平均、標準偏差 )

3 許容支持力の決定

(目標安全性指標β t

極限支持力R

を満

足する抵抗係数φの算定)

u Rに対し au1 =φu1 R Rud au2 =φu2 R降伏支持力R

ud y Rに対し ay1 =φy1 R Ryd ay2 =φy2 R

杭頭変位の目標上限値 yd

Sot

S / Dに対し

o / D≦Sot / D ( = 2% or 3.5%)を満足す

るRau1、Ray1、Rau2、R

ay2

ここで、杭頭変位レベルの目標上限値Sot / Dは、極限支持力あるいは降伏支持力の定義と

は無関係に決定され、許容支持力は現行の値と同程度となる。一方、推定結果の偏りおよび

ばらつきが同程度であれば、極限支持力および降伏支持力に対して目標安全性指標β tが満足

されるような許容支持力(抵抗係数φ)の値は、現行よりも大きくなると考えられる。逆に

言えば、杭頭変位レベルの目標上限値Sot / Dによって決定される許容支持力が極限支持力あ

るいは降伏支持力に対して有する安全性指標βは、目標とする値β t

参考までに、2 通りの極限支持力(R

よりも大きくなると考え

られる。

ud = P10、Rud = Pou)に対し、許容支持力RaをRa = Rud

/ 3(常時)、Ra = Rud / 2(暴風時・レベル 1 地震時)とした場合の許容支持力に対応する杭

頭変位レベルSot 図- 4.6.4 / Dの値を示しておく。 は、極限支持力の定義をRud = P10

図- 4.6.5

とした場

合、 は、Rud = Pouとした場合である。図には、各施工方法の支持杭における杭頭特

性変位レベルSos / Dの幾何平均GMおよび変位指数mの算出平均Mを用いて描いた杭軸方向荷

重・変位曲線を併せて示す。Rud = Pouとした場合には、常時、暴風時およびレベル 1 地震時

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- 57 -

における杭頭変位レベルSo

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

7%

8%

9%

10%

0% 20% 40% 60% 80% 100%P o / P 10

So

/ D

(常時)R a = 1/3 R ud

S ot / D* = 0.2%~1.9%

(暴風時・レベル1地震時)R a = 1/2 R ud

S ot / D* = 0.5%~3.2%

打撃

場所打ち杭

回転杭

中掘り杭

プレボーリング杭

鋼管ソイル杭

バイブロハンマ

*:S ot / D の値は両側90%信頼区間

/ Dの片側 95%信頼限界の値は、常時:2.9%、暴風時・レベル 1

地震時:5.8%となり、既往の想定に比べて明らかに大きい。

図- 4.6.4 許容支持力に対応する杭頭変位レベルSo / D (Ra = 1/3Rud&1/2Rud、Rud = P10

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

7%

8%

9%

10%

0% 20% 40% 60% 80% 100%P o / P ou

So

/ D

(常時)R a = 1/3 R ud

S ot / D* = 0.2%~2.9%

(暴風時・レベル1地震時)R a = 1/2 R ud

S ot / D* = 0.5%~5.8%

打撃

場所打ち杭

回転杭

中掘り杭

プレボーリング杭

バイブロハンマ

鋼管ソイルセメント杭

*:S ot / D の値は両側90%信頼区間

図- 4.6.5 許容支持力に対応する杭頭変位レベルSo / D (Ra = 1/3Rud&1/2Rud、Rud = Pou)

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- 58 -

(案 2)における杭軸方向の安定照査モデルを図- 4.6.6 に示す。レベル 2 地震時の照査に

用いる提案モデルとして、原点、降伏点、杭頭変位が杭径の 10%となる点および最大強度点

を結ぶトリリニア型の直線を示した。ここで、4.3.3 や 4.3.4 で示したように、杭の軸剛性バ

ネ EA / L 等の条件によって杭体変形量が異なるため、一律の杭頭変位レベルを基準として最

大強度点を示すことは難しいと考えられる。そこで、提案モデルでは、杭先端変位が杭径の

10%に達する時の杭頭反力を極限支持力(A 点)とした。このように、極限支持力の定義を

変更し、レベル 2 地震時の照査に用いるモデルを 3 次勾配を有する直線で表すことによって、

(案 1)において課題となったレベル 2 地震時における杭頭反力の過小評価を解消すること

ができる。

表- 4.6.1 に示した安全性担保の 3 つの意図に対応する(案 2)における照査式を示すと、

表- 4.6.7 のとおりとなる。

杭頭変位S o

杭頭荷重P o

R ud = P ou

⇒ 推定式を整備

R 10d = P 10

⇒ 推定式を整備

許容支持力(常時)R au1 = φu1 R ud

R ay 1 = φy 1 R y d

許容支持力(暴風時

・レベル1地震時)R au2 = φu2 R ud

R ay 2 = φu2 R y d

S o / D = 10%

K v

⇒推定式を整備

レベル2地震時の安定照査に用いる

荷重変位関係モデル

S o / D = 2.0%(片側95%信頼限界)

S o / D = 3.5%(片側95%信頼限界)

βt > 1.7

βt > 1.8

βt > 3.0

βt > 0.5

荷重変位関係(載荷試験)

先端変位S p / D = 10%

A

R y d ≒ 0.63 R ud orR y d ≒ 0.9 R f 10 / (1-γy )

図- 4.6.6 杭軸方向の安定照査モデル(案 2)

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- 59 -

表- 4.6.7 杭軸方向の安定照査式(案 2)

担保の意図 常時 暴風時・レベル 1 地震時 備考

1 破壊させない P ≦ Rau1 = φu1 R(φ

ud

u1

P ≦ R > 0.33)(推定)

au2 = φu2 R(φ

ud

u2R > 0.5)(推定) ud:Pou

2

の推定値

挙動の可逆性を確保

(使用限界) P ≦ Ray1 = φy1 R(φ

yd

y1

P ≦ R > 0.53)(推定)

ay2 = φu2 R(φ

yd

y2

R

> 0.79)(推定)

yd = 0.63 Rud

R or

yd = 0.9 R f10d / (1-γy

3 )

供用性を確保 - - 許容支持力により担保 *:φy1およびφy2の値は、降伏支持力の推定式をRyd = 0.63 Rud

とした場合に対するものである。

以上のように、極限支持力の定義を変更する(案 2)では、レベル 2 地震時の照査に用い

る設計モデルによって杭頭反力が過小評価される可能性を解消することができる。一方で、

許容支持力は杭頭変位レベルの目標上限値Sot / Dによって支配される可能性が高いと考えら

れ、この場合、極限支持力あるいは降伏支持力に対して有すべき目標安全性指標β t

よって、(案 2)によって安定照査の合理化を目指す場合には、供用性を担保するための杭

頭変位レベルの目標上限値S

よりも大

きな(過剰な)安全性指標βを有するにも関わらず、許容支持力を大きくすることができな

い点が課題である。

ot / Dについての研究を深めていく必要があると考えられる。ま

た、杭頭変位レベルSo / Dが 10%を超えてからも抵抗力が増加するような杭に対して極限支

持力推定式を整備しようとすると、より大きな変位までの載荷が行われた試験結果が必要と

なるため、支持力推定式の信頼性が課題となる可能性がある。仮に、提案したように、杭先

端変位レベルが 10%に達する時の杭頭反力を極限支持力Pou

とする場合、全体の 40%を占め

る軸力分布が不明のデータは使用できないことになり、サンプル数の減少に伴う信頼性の低

下の可能性は否定できない。

(3) 杭頭変位レベルの上限値を杭先端の地盤反力度で規定する場合(案 3)

(案 1)や(案 2)では、杭頭変位レベルの目標上限値Sot

2.2

/ Dは許容支持力によって間接的

に担保されるとみなされることになる。 で若干述べたように、安全性担保の 3 つの意図に

対して担保の手段(照査式)が 1 つあるいは 2 つであると、照査式からその意図を理解する

のは難しくなるため、担保の意図と担保の手段(照査式)とは 1 対 1 で対応している方が望

ましいという考え方もある。担保の意図と担保の手段を 1 対 1 で対応させることによって、

照査の結果として担保される安全性は変わらないが、照査式に含まれる担保の意図に対する

正しい理解が促進されることが期待できる。また、今後の新しい技術の開発が目指すべき方

向性を明確に示すことにもなると考えられる。そこで、(案 1)あるいは(案 2)に加えて、

杭頭変位レベルの目標上限値Sot

直接基礎やケーソン基礎においても、基礎底面地盤の極限支持力の推定式が整備されてい

/ Dを担保するための照査式について考察してみる。

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- 60 -

るが、これは剛塑性理論に基づいて求められたものであり、軸方向(鉛直方向)変位と関連

付けられたものではない。このため、過大な沈下を避けるために支持力推定式で推定される

極限支持力を安全率で除した許容支持力に対する上限値が設けられている。直接基礎の設計1)

では、表- 4.6.8 に示すように常時における最大地盤反力度の上限値が規定されている。また、

ケーソン基礎の設計1)では、常時における基礎底面の許容鉛直支持力度は、その有効根入れ深

さに応じて図- 4.6.7 に示す値が規定され、暴風時およびレベル 1 地震時に対しては常時の値

の 1.5 倍とすることが規定されている。ニューマチックケーソンにおいて有効根入れ深さD f

表- 4.6.8 直接基礎の常時の最大地盤反力度の上限値

を 0 とした場合の許容鉛直支持力度の値は、直接基礎の最大地盤反力度の上限値と一致して

いる。

地盤の種類 最大地盤反力度(kN/m2

砂礫地盤 )

700 砂地盤 400

粘性土地盤 200

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 10 20 30 40

有効根入れ深さ D f (m)

許容

鉛直

支持

力度

qa

(MN

/m2 )

ニューマチック(砂礫)

48D f + 700 (kN/m2)

ニューマチック(砂)

48D f + 400 (kN/m2)

オープン(砂礫)

48D f + 300 (kN/m2)

オープン(砂)

48D f (kN/m2)

図- 4.6.7 ケーソン基礎底面地盤の許容鉛直支持力度の上限値(常時)

よって、(案 3)として、(案 1)もしくは(案 2)に加え、杭基礎においても、ケーソン基

礎と同様に許容支持力における杭先端抵抗力に対し、地盤反力度の上限値を設けることによ

って杭頭変位レベルの目標上限値Sot

ただし、杭先端の地盤反力度・変位関係がケーソン基礎と同様であるとは限らない。さら

/ Dを担保するための照査を行うことが考えられる。(案

3)では、上述した利点に加え、異なる基礎種別間の照査体系の連続性が確保されることも利

点となる。

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- 61 -

に、既往の研究成果5)

もしくは、常時、暴風時およびレベル 1 地震時において杭先端に伝達される荷重を、杭先

端抵抗力の最大値にある抵抗係数φ

および後述する 5.4.2 にも示されるように、杭先端の地盤反力度・変位

関係は、杭の施工方法によっても異なる。もちろん、杭先端地盤の種別や強度によっても異

なるはずである。よって、杭の施工方法および地盤種別・強度別の杭先端の荷重・変位関係

を検討した上で杭先端の地盤反力度の上限値を設定することが必要となる。

s

表- 4.6.1

を乗じた値以下に抑える方法も考えられる。

に示した安全性担保の 3 つの意図に対応する(案 3)における照査式を示すと、

表- 4.6.9 のとおりとなる。

表- 4.6.9 杭軸方向の安定照査式(案 3)

担保の意図 常時 暴風時・ レベル 1 地震時 備考

1 破壊させない P ≦ Rau1 = φu1 R P ≦ Rud au2 = φu2 R Rud

ud

(案 2)に対応 :(案 1)もしくは

2 挙動の可逆性を確保

(使用限界) P ≦ Ray1 = φy1 R P ≦ Ryd ay2 = φu2 RR

yd yd = 0.63 Rud

R or

yd = 0.9 R f10d / (1-γy

3

)

供用性を確保

qa1 A ≦ Min (φu1 Rupd, φy1 Rypd

または )

P – α1 Rufd ≦ φs1 R

q

upd

a2 A ≦ Min (φu2 Rupd, φy2 Rypd

または )

P – α2 Rufd ≦ φs2 R

q

upd

a1, qa2, α1, α2, φs1, φs2

ここに、 q

の値は要検討

a1

q

:常時における杭先端の地盤反力度の上限値(kN)

a2

A :杭先端の閉鎖断面積(m

:暴風時およびレベル 1 地震時における杭先端の地盤反力度の上限値(kN) 2

α

1

α

:常時における周面抵抗力の極限値に対する比率

2

φ

:暴風時およびレベル 1 地震時における周面抵抗力の極限値に対する比率

s1

φ

:常時における杭先端抵抗力の極限値に対する抵抗係数

s2

R

:暴風時およびレベル 1 地震時における杭先端抵抗力の極限値に対する抵

抗係数

upd

R

:極限支持力の推定値における先端抵抗力(kN)

ypd

:降伏支持力の推定値における先端抵抗力(kN)

(4) 杭軸方向バネ定数Kv

(案 4)として、(案 1)もしくは(案 2)に加え、安定計算における杭軸方向バネ定数K

を用いて推定される杭頭変位を照査する場合(案 4)

v

によって算定される杭頭変位レベルSo / Dの推定値が目標上限値Sot

表- 4.6.1

/ Dを超えないことを照

査することも考えられる。

に示した安全性担保の 3 つの意図に対応する(案 4)における照査式を示すと、

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- 62 -

表- 4.6.10 のとおりとなる。

表- 4.6.10 杭軸方向の安定照査式(案 4)

担保の意図 常時 暴風時・ レベル 1 地震時 備考

1 破壊させない P < Rau1 = φu1 R P < Rud au2 = φu2 R Rud

ud

(案 2)に対応 :(案 1)もしくは

2 挙動の可逆性を確保

(使用限界) P < Ray1 = φy1 R P < Ryd ay2 = φu2 RR

yd yd = 0.63 Rud

R or

yd = 0.9 R f10 / (1-γy

3

)

供用性を確保 Max ( Rau1 , Ray1 )/ Kvd

≦ SMax ( R

ot au2 , Ray2 )/ Kvd ≦ S

S

ot

ot

ここに、 K

= 0.02 D(常時)、

0.035 D(暴風時および

レベル 1 地震時)

vd

:杭軸方向バネ定数の推定値(kN/m)

杭軸方向バネ定数Kvは、杭軸方向荷重・変位曲線上の実用上の弾性限界点における割線勾

配であるので、杭軸方向バネ定数Kv

図- 4.6.8

を精度よく推定することができれば、(案 4)は合理的で

あるように思える。

は、(案 1)に対する常時における杭頭変位レベルSo 5.5 / Dの実測値と に示す杭

軸方向バネ定数Kvの提案式によって得られる推定値Kvdによる推定値との関係を示したもの

である。ここで、常時における杭頭変位レベルの実測値は、杭頭荷重PoがP10 / 3 となるとき

の値であり、推定値を求める時の杭頭荷重Po 図- 4.6.8は、 (a)では極限支持力の実測値の 1 / 3

(Po = P10 図- 4.6.8 / 3)、 (b)では極限支持力の推定値の 1 / 3(Po = Rud

図- 4.6.8

/ 3)を用いた。

より、(案 4)では、杭頭変位レベルの実測値に対し推定値は過大評価となり、全

データの 25%~30%程度に対しては杭頭変位レベルの目標上限値を超えると推定されること

が分かる。これは、2.2 で述べたように、実際には杭軸方向荷重・変位曲線は初期の時点から

非線形であるためであり、杭軸方向荷重・変位曲線上の実用上の弾性限界点における割線勾

配で定義される杭軸方向バネ定数Kv

によって杭頭変位を推定しようとすると、降伏変位より

も小さな変位となる領域においては実測値よりも大き目の値となるためである。

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- 63 -

0%

1%

2%

3%

4%

5%

0% 1% 2% 3% 4% 5%K v (提案値)による推定値 S o / D

実測

値 S

o / D

R 2 = 0.73GM = 0.56GSD = 0.47

推定S o / D > 2%となるデータの割合

25%

0%

1%

2%

3%

4%

5%

0% 1% 2% 3% 4% 5%K v (提案値)による推定値 S o / D

実測

値 S

o / D

R 2 = 0.51GM = 0.52GSD = 0.47

推定S o / D > 2%となるデータの割合

30%

(a) 推定So = (P10 / 3)/ Kvd (b) 推定So = (Rud / 3)/ K

図- 4.6.8 P

vd

10 / 3 の時の杭頭変位So / Dの実測値と杭軸方向バネ定数の提案値Kvd

による推定値

との関係(常時)

(5) 荷重・変位曲線を曲線でモデル化する場合(案 5)

何らかの方法、例えば後述するような杭周面地盤のすべり係数を用いた方法等により、杭

軸方向荷重・変位曲線を直接予測する計算モデルを構築し、極限支持力、降伏支持力および

杭頭変位レベルの目標上限値に対する照査を行うことも考えられる。この場合、杭軸方向荷

重・変位曲線を予測する計算モデル中には、支持力推定式や杭軸方向バネ定数の推定式が含

まれることになる。よって、この計算モデルによって十分な推定精度が確保されれば、支持

力推定式や杭軸方向バネ定数の推定式は不要となる。究極の理想である。

しかし、杭軸方向荷重・変位曲線を直接予測する計算モデルにおいて十分な精度を確保す

るのは現時点では困難であると考えられる。

以上、杭軸方向の安定照査のあり方、考えられる安定照査モデルの案およびその得失につ

いて考察した。ここで考察した安定照査モデルの案の概要とこれらの得失は、表- 4.6.11 のよ

うにまとめられる。

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- 64 -

表- 4.6.11 杭軸方向の安定照査の案とその得失

案 概要

照査の意図

と照査項目

との対応* 主な長所・課題

1 2 3

1

極限支持力および降伏支持力に対する

支持力推定式を整備し、これらが一定の

水準で担保されるように許容支持力を

定める。 極限支持力は、杭頭変位レベルが 10%に達する時の杭頭反力P10

A

とする。

A B

・ 現行の照査と同様である。 ・ レベル 2 地震時において基礎の塑性化

を考慮する場合には、杭頭反力が過小

評価される可能性がある。 ・ 照査の意図と照査項目とが 1 対 1 で対

応しない。

2

極限支持力および降伏支持力(および杭

頭変位レベルが 10%に達する時の杭頭

反力P10

極限支持力は、最大抵抗力(Weibull分布曲線による最大値P

)に対する支持力推定式を整備

し、これらが一定の水準で担保されるよ

うに許容支持力を定める。

ou

A

)とする。

A B

・ 照査の意図と照査項目とが 1 対 1 で対

応しない。 ・ レベル 2 地震時に杭頭反力が過小評価

される可能性を排除できる。 ・ 常時、暴風時およびレベル 1 地震時に

おける杭頭変位レベルの目標上限値

を変更しなければ、合理的な許容支持

力を得ることができない。 ・ 十分大きな変位を付与した載荷試験

結果が必要となるため、支持力推定式

の信頼性が課題となる可能性がある。

3

(案 1)もしくは(案 2)に加え、ケー

ソン基礎同様に杭先端の地盤反力度の

上限値を設けることによって杭頭変位

レベルを抑制する。 もしくは、先端抵抗力の最大値に対する

一定の安全性余裕が確保されるように、

杭先端に伝達される荷重の上限値を定

める。 極限支持力の定義は、案 1 もしくは案 2に準ずる。

A A A

・ 照査の意図と照査項目とが 1 対 1 で対

応する。 ・ 適切な地盤反力度の上限値を設ける

必要がある。

4

(案 1)もしくは(案 2)に加え、杭軸

方向バネ定数Kv

極限支持力の定義は、案 1 もしくは案 2に準ずる。

の推定式を利用して得

られる杭頭変位がその目標上限値を超

えないことを照査する。 A A A

・ 照査の意図と照査項目が 1 対 1 で対応

する。 ・ 杭軸方向荷重・変位曲線の初期からの

非線形性によって、実際より大き目の

杭頭変位が予測される。 ・ 杭軸方向バネ定数Kv

5

の推定精度が課

題となる。 杭軸方向荷重・変位曲線を直接推定し、

極限支持力、降伏支持力および杭頭変位

レベルの目標上限値に対する照査を行

う。

A A A

・ 支持力推定式や杭軸方向バネ定数の

推定式が不要となる。 ・ 杭軸方向荷重・変位曲線を推定するこ

とは現時点では極めて困難である。 *: 数値(1~3)は、表- 4.6.1 に示した照査の意図 (意図 1 = 破壊させない、意図 2 = 挙動の再現性を確保、意図 3 = 供用性を確保)。 A = 意図に対して直接照査が行われる。 B = 意図 1,2 に対する照査によって意図 3 に対する照査が間接的に行われる。

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- 65 -

5. 杭軸方向バネ定数の推定式

2.2 で述べたように、杭軸方向バネ定数Kvは、杭の杭軸方向荷重・変位曲線における割線

勾配で定義される。道路橋示方書には、杭軸方向バネ定数Kvの推定式が解説されており、こ

れは水平方向地盤反力係数kHと並び、安定照査において作用荷重に対する応答値(変位およ

び断面力)を推定するための主要なパラメータである。ここでは、杭軸方向バネ定数Kv

5.1 現行の推定式の課題

の現

行の推定式について概観した上でその課題を挙げ、新しい推定式の提案を行う。

道路橋示方書および杭基礎設計便覧では、杭軸方向バネ定数Kvを鉛直載荷試験による荷

重・変位曲線から直接求めるか、既往の載荷試験結果に基づく推定式や土質試験の結果によ

って推定するものとされている。なお、圧倒的に前者の既往の載荷試験結果に基づく推定式

が利用されており、後者の土質試験結果による推定法が用いられることは滅多にない7)

ここでは、これらの推定方法の概要と課題について述べる。

5.1.1 既往の載荷試験結果に基づく推定式(L / D法)

道路橋示方書 1)および杭基礎設計便覧 9)には、既往の載荷試験結果に基づく杭軸方向バネ定

数Kv

LEA

DL

LEAaKv

+

== βα

の推定式として、式(5.1.1)が示されている。

································································· (5.1.1)

ここに、 Kv

EA :杭の軸剛性(kN)で、鋼管ソイルセメント杭工法では、鋼管およびソイ

ルセメントの軸剛性を加算する。

:杭軸方向バネ定数(kN/m)

L :杭長(m)

D :杭径またはソイルセメント柱径(m)。回転杭工法のDは、杭一般部の外

径Dn

α,β :施工方法別係数であり、

とする。

表- 5.1.1 に示す値である。

この推定式は、載荷試験で得られた実測Kv

表- 5.1.1

および軸剛性バネEA / Lから式(5.1.1)のaを求

め、aの値と杭長杭径比L / Dとの関係から に示す施工方法別係数α、βを求める方

法によって得られている。そこで、この方法をL / D法と呼び、設計実務での使用頻度が圧倒

的に多いことからL / D法による推定式を現行式と呼ぶことにする。

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- 66 -

表- 5.1.1 現行式に用いる施工方法別係数の値

施工方法 α β 打撃 0.014 0.72

バイブロハンマ 0.017 -0.014 場所打ち杭 0.031 -0.15 中掘り杭 0.010 0.36

プレボーリング杭 0.013 0.53 鋼管ソイルセメント杭 0.040 0.15 回転杭(1.5 倍径*) 0.013 0.54 回転杭(2.0 倍径*) 0.010 0.36

*:杭一般部径Dnに対する杭先端部径Dpの比率Dp / D

n

現行式は、杭体変形の生じにくさを表す軸剛性バネEA / Lの関数として与えられており、

一見すると、杭先端変位の影響は無視しうるとの仮定が前提にあるようにも思える。この仮

定の元では、EA / Lの値が大きいほどKv

図- 5.1.1

の値は大きいと推定される。

は、杭軸方向バネ定数Kvの実測値と軸剛性バネEA / Lとの関係を示したものであ

る。多くの場合、KvとEA / Lとは正の相関関係が認められるものの、場所打ち杭工法では、

両者に相関関係を見出すのは困難で、回帰直線の勾配はわずかに負となる。すなわち、場所

打ち杭では、杭体変形が生じやすい条件の方がむしろKv

4.2

が大きい傾向にあり、杭先端変位を

無視しうるとした上記の仮定は誤りであることになる。このことは、 で整理したように、

杭頭降伏変位Soyに占める杭先端変位Spyの割合Spy / Soyは決して無視できる大きさではなく、

場所打ち杭の場合、逆に杭体変形量ΔLyよりも杭先端変位Spy

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

1.6

1.8

2.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2軸剛性バネ EA / L (GN/m)

杭軸

方向

バネ

定数

Kv (G

N/m

)

打撃バイブロハンマ中掘り杭鋼管ソイルセメント杭回転杭

R =0.63

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

0.0 1.0 2.0 3.0軸剛性バネ EA / L (GN/m)

杭軸

方向

バネ

定数

Kv (G

N/m

)

回帰直線

の方が大きいことからも分かる。

すなわち、現行式の係数aには、実は杭先端変位の影響が含まれているのである。

(a) 場所打ち杭以外 (b) 場所打ち杭

図- 5.1.1 Kv - EA / L関係

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- 67 -

現行式では、杭先端変位の影響は、係数aとL / Dとの相関式において考慮されている。すな

わち、L / Dの値が小さいほど、杭頭反力に占める杭先端抵抗力の割合が大きく、先端変位の

影響は大きいとするものである。図- 5.1.2 は、係数aとL / Dとの関係を施工方法別に示した

ものである。施工方法によらずaとL / Dとは正の相関関係にあることから、L / Dの値が小さ

いほど杭先端変位の影響が大きくなるとする上記の考えを定性的に説明できている。なお、

杭先端変位が 0 であれば、杭の周面抵抗力が 0 でない限り、Kv

しかし、場所打ち杭ではL / Dの値が小さくなるとaは負の値となり、短い杭に対して不都合

である。道路橋示方書においても、L / D法によるK

≧EA / L すなわちa≧1 とな

る。よって、少なくともa < 1 となる範囲では、杭先端変位の影響が含まれていることになる。

v

図- 3.2.3

の推定式の適用はL / D≧10 の範囲に制限

されているが、 および図- 5.1.3 に示す7)ように、L / D < 10 となる条件は決して無視

できる寸法範囲ではない。さらに、現行式の実測値の推定精度が決して高くないこと、現行

式には杭を支持する地盤強度特性の違いがKv

y = 0.042 x - 0.440R 2 = 0.551

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

0 20 40 60 80 100 120x : L / D

y : 逆

算a

( = K

v /

(EA

/ L

) )

y = 0.015 x + 0.212R 2 = 0.548

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

0 20 40 60 80 100 120x : L / D

y : 逆

算a

( = K

v /

(EA

/ L

) )

y = 0.008 x + 0.939R 2 = 0.073

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

0 20 40 60 80 100 120x : L / D

y : 逆

算a

( = K

v /

(EA

/ L

) )

の推定値に反映されない点も課題として指摘さ

れている。

(a) 打撃 (b) バイブロハンマ (c) 場所打ち杭

y = 0.003 x + 0.747R 2 = 0.031

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

0 20 40 60 80 100 120x : L / D

y : 逆

算a

( = K

v /

(EA

/ L

) )

y = 0.019 x + 0.542R 2 = 0.187

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

0 20 40 60 80 100 120x : L / D

y : 逆

算a

( = K

v /

(EA

/ L

) )

y = 0.003 x + 0.644R 2 = 0.110

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

0 20 40 60 80 100 120x : L / D

y : 逆

算a

( = K

v /

(EA

/ L

) )

(d) 中掘り杭 (e) 鋼管ソイルセメント杭 (f) 回転杭

図- 5.1.2 a - L / D 関係

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- 68 -

0%

20%

40%

60%

80%

100%

<10 <20 <30 <40 <50 <60 <70 <80 <90

杭長杭径比 L / D

比率

0%

20%

40%

60%

80%

100%

<10 <20 <30 <40 <50 <60 <70 <80 <90

杭長杭径比 L / D比

0%

20%

40%

60%

80%

100%

<10 <20 <30 <40 <50 <60 <70 <80 <90

杭長杭径比 L / D

比率

(a) 打撃 (b) バイブロハンマ (c) 場所打ち杭

0%

20%

40%

60%

80%

100%

<10 <20 <30 <40 <50 <60 <70 <80 <90

杭長杭径比 L / D

比率

0%

20%

40%

60%

80%

100%

<10 <20 <30 <40 <50 <60 <70 <80 <90

杭長杭径比 L / D

比率

(d) 中掘り杭 (e) 鋼管ソイルセメント杭

図- 5.1.3 近年の使用実績における杭長杭径比L / D7)

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- 69 -

5.1.2 土質試験結果に基づく推定式(Cs - kv

前述のように、杭軸方向バネ定数の推定式として道路橋示方書に解説される現行式すなわ

ちL / D法による推定式は、地盤強度特性の違いが反映されていないことに加え、L / D < 10

となる短い杭には適用できない。このため、既往の研究

法)

5), 33), 34)において、土質試験結果に基

づく推定式が示されており、その一部は道路橋示方書1)や杭基礎設計便覧9)

長さがLである杭の頭部に軸方向荷重P

にも解説されてい

る。その概要は次のとおりである。

o

)(xv

が作用する時、杭頭部を原点として杭軸方向下向き

を正とするx座標をとると、深度xにおける杭体と地盤との相対変位 のx軸方向分布に関す

る微分方程式は、式(5.1.2)となる。

02

2

=− )()( xDfdx

xvdAE π ······································································ (5.1.2)

ここに、

A :杭体の断面積(m2

E :杭体の弾性係数(kN/m

) 2

D :杭径(m)

)(xf :深度xにおける単位面積あたりの周面抵抗力(kN/m2

sC

vk

x

oP

)(xv

)(xf

sC

(kN/m2)

(m)

(kN/m3)

)(Lv

42 /)(

pDLN

π

vk

(kN/m2)

(m)

(kN/m3)

L)(xfu

図- 5.1.4 Cs - kv

さらに、式(5.1.3)のように

法の概要

)(xf と )(xv との間には線形関係が成立すると仮定する。

)()( xvCxf s ⋅= ················································································· (5.1.3)

ここで、係数Cs

02

2

=− )()( xvDCdx

xvdAE sπ

はすべり係数と呼ばれ、上記仮定により一定の値である。式(5.1.3)を式

(5.1.2)に代入すると、式(5.1.4)となる。

·································································· (5.1.4)

単位面積あたりの杭先端荷重を杭先端変位で除した値を杭先端の地盤反力係数kvとし、こ

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- 70 -

れを一定と仮定すると、杭頭および杭先端における境界条件から、式(5.1.5)が得られる。

これは、土質試験結果もしくは載荷試験結果によって求まるパラメータである杭周面のすべ

り係数Csおよび杭先端の地盤反力係数kv

)(0N

を未知数とする任意の深度における杭の軸方向変位

に関する一般解である。また、式(5.1.5)をxで微分することにより、式(5.1.6)示す任意

の深度における軸方向力の一般解も得られる。ここで、境界条件は、杭頭部(x = 0)におい

て、 = Po )()( LvDkLN pv ⋅⋅= 42π、杭先端部(x = L)において、 である。

xx GeFexv αα −+=)( ·········································································· (5.1.5)

( )xx GeFeAEdx

xdvAExN ααα −−−=−=)()( ··············································· (5.1.6)

ここに、

AEDCsπα =

( )λθλλ

θλλ

λ

coshsinh +−

⋅=−e

AELP

F o

2

( )λθλλ

θλλ

λ

coshsinh +−

⋅=e

AELP

G o

2

AEDC

L sπλ =

AELkD vp

4

2πθ =

Dp

L :杭長(m)

:杭先端部の外径(m)

すると、Kv = Po )(xv / に式(5.1.5)を代入してx = 0 とおいてこれを整理すると、杭軸方

向バネ定数Kv

LEAaKv =

は式(5.1.7)となる。

······················································································ (5.1.7)

ここに、 λλλθθλλ

++

=tanhtanha であり、現行式と同様にKv θはEA / Lの関数となる。なお、 に

は杭先端の地盤反力係数kv

式(5.1.7)においても未知数は地盤パラメータであるすべり係数C

が含まれることから、係数aには杭先端変位の影響が考慮されてい

ることが確認できる。このように、理論上はパラメータの複雑な組合せにより構成される係

数aの値が、現行式においては載荷試験結果から逆算して求められているのである。

sおよび杭先端の地盤反

力係数kvであり、これをCs - kv法による推定式と呼ぶことにする。

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- 71 -

Cs - kv法による推定式における課題について考察する。式(5.1.7)によると、Csおよびkv

の値が既知であれば、杭頭における杭軸方向荷重Po・変位So曲線における降伏点の判定とは

無関係に杭軸方向バネ定数Kvの値が決定されることに気付かれる。式(5.1.5)より、杭頭変

位SoはSo λ = F + Gである。ところが、式(5.1.3)の仮定により の値は一定であり、また、

杭先端の地盤反力係数kv θの値を一定と仮定すれば の値も一定である。したがって、同一の

杭に対しては、F、Gおよび杭頭変位Soは杭頭荷重Poの 1 次関数となる。よって、式(5.1.5)

~式(5.1.7)に示される一般解は、杭軸方向荷重Po・変位So関係が直線であるとの仮定に基

づいたものであることになる。すなわち、Csおよびkvを一定であると仮定すると、杭軸方向

荷重Po・変位So

よって、C

関係が実際には曲線となることを説明できない。

s - kv法によって杭軸方向荷重Po・変位So曲線や杭軸方向バネ定数Kvの値を推定

する場合には、すべり係数Csや杭先端の地盤反力係数kv

)(xv

を一定と仮定するのではなく、杭体

と地盤との相対変位 の増加に伴いこれらが低下していくことを考慮する必要がある。例

えば、周面抵抗力 )(xf ・相対変位 )(xv 関係を弾完全塑性型と仮定する場合、その傾きCs

)(xfu

およ

び上限値 を適切に決定する必要がある。

既往の研究では、Csおよびkv

の値は次のように仮定された。

(1) すべり係数を一定と仮定した方法

杭軸方向バネ定数Kvは、杭軸方向荷重Po・変位So曲線上の工学的な弾性限界点における割

線勾配であるから、弾性範囲内であれば、杭軸方向荷重Po・変位So関係を直線とみなしても

実用上は支障がないと考えることもできる。文献 33)では、杭先端の地盤反力係数をkv

)(xf

≒0 と

仮定した上で、打撃工法および場所打ち杭工法の載荷試験結果から、各層における周面抵抗

力 ・相対変位 )(xv 関係を弾完全塑性型に近似してすべり係数CsとN値との相関式が導か

れている。ここで、相関式は、地盤種類および施工方法によらず、Cs = N / 15(kgf/cm3)と

された。そして、すべり係数Csの値を一定である(= 上限値がない)と仮定して、式(5.1.7)

から求められるKvの推定値と実測値(ただし、Kvの実測値は杭頭降伏時における割線勾配で

はなく、杭頭変位So = 1cmおよびSo

= 0.01Dに対応する 2 通りの値である)とが比較されて

いる。なお、現実の多層系地盤に対しては、平均N値が使用されている。この方法については、

統計量は示されていないものの、推定精度はあまり高くないようである。

(2) 見かけのすべり係数による方法

文献5)では、すべり係数Cs

)(xf

の値が変化することを前提に検討が行われている。打撃工法お

よび場所打ち杭工法の載荷試験結果から、各層における周面抵抗力 ・相対変位 )(xv 曲線

上の杭頭降伏時に対応する割線勾配をすべり係数Csとし、CsとN値およびkvとN値との相関式

が導かれている。ここでは、相関式は、地盤種別(砂質土、粘性土)および施工方法(打撃

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- 72 -

工法、場所打ち杭工法)別に求められた。なお、現実の多層系地盤に対しては、層厚を考慮

したCsの加重平均値(等価Cs

この方法により求められたすべり係数の値は、いわば、杭頭降伏時に対して逆算された各

層における見かけのすべり係数C

)が使用された。

s’である。この方法であれば、すべり係数の値が変化するこ

とは逆算値である見かけのすべり係数Cs’に反映されているため、式(5.1.7)を矛盾なく適用

できる上に杭軸方向バネ定数Kvが高い精度で推定可能なように思われるが、Cs

)(xv

- N関係のば

らつきが大きいために、推定結果のばらつきはL / D法によるものと大差ないようである。こ

れは、ある杭頭変位に着目した場合でも、杭体と地盤との相対変位 が深さによって異な

るために、図- 5.1.5 に示すように全く同一の )(xf - )(xv 関係を有する地層であっても、それが

分布する深度によって見かけのすべり係数Cs

111 us fCN ,,f

2uf

′2sC

v2v

f2uf

′4sC

v4v

f

1uf

′1sC

v1v

f ′3sC

v3v

1uf

1) f - v 関係が同一 2) 深度が異なる ような 2 層を想定 (v :杭体と地盤との相対変位) ⇒ v1>v2>v3>v4 であるから、 地盤の強度特性が同一でも、 見かけの Cs’には相違

Cs1’<Cs3’ Cs2’<Cs4’

第 1 層

第 2 層

第 3 層

第 4 層

1sC

1sC

2sC

2sC

222 us fCN ,,

111 us fCN ,,

222 us fCN ,,

’は異なる値であると評価されることも原因し

ていると考えられる。

図- 5.1.5 見かけのすべり係数の評価に係る課題

(3) すべり係数が上限値に達することを考慮する方法 文献34) )(xfでは、一様な地盤中における周面抵抗力 ・相対変位 )(xv 関係を弾完全塑性型と

仮定した場合には、 )(xf が上限値に達する範囲(塑性化長さ)を考慮することにより、曲線

となる荷重・変位曲線の計算法が示されている。この方法は、多層系地盤においても、杭頭

部から順に周面抵抗力が上限値に達する場合には適用可能であると解説されている。

しかし、この方法で式(5.1.7)からKv

)(xf

を推定する場合には、塑性化長さを推定する必要が

あるが、そのためには - )(xv 関係を正確に把握する必要がある。逆に、 )(xf - )(xv 関係が

正確に推定できれば、式(5.1.5)および式(5.1.6)によって杭軸方向荷重・変位曲線が直接

推定できることになり、Kv

C

の推定式は勿論のこと、支持力推定式も不要となる。理想的であ

る。

s - kv法による推定式が提案されてから既に 45 年近く経過しているが、数多くのデータに

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- 73 -

対してすべり係数Csを用いた推定結果のばらつきがL / D法によるものよりも小さいという成

果を筆者らは現在のところ見聞していない。よって、Cs - kv法は理想的な方法ではあるが、

これを実用化することは、当面の間は困難であると考えられる。なお、付属資料- 3 にもすべ

り係数Csの整理結果を示しておく。

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- 74 -

5.2 すべり係数によらない杭頭変位および杭軸方向バネ定数の推定式

周面抵抗力・相対変位曲線の傾き(すべり係数Cs)やその上限値fuによらない杭軸方向バ

ネ定数Kvの推定式を検討する。まず、弾性係数Eおよび断面積Aが深度方向に一定である長さ

Lの杭の上端に、押込み力Poが作用する時の杭頭変位So

)(xε軸ひずみ )(xN軸力)(xf周面抵抗力)(xS変位

)()(xEA

xNε=

dxxNxf

)()(

−=

dxxS

xSL

xp ∫+=

)(

)(

ε

x xxx

L

( ) pSLS =

dxxf

xx

o ∫−=

0)(

)(

ε

ε

oε oP

oP

の理論上の一般解を求める。杭頭部

を原点とした任意の深度xにおける杭体の軸方向変位、軸ひずみ、軸力および杭体が受ける単

位長さあたりの周面抵抗力をそれぞれ、S(x)、ε(x)、N(x) およびf(x) と表す。なお、載荷試

験では、一般にEAが一定の試験体とすることが多いので、載荷試験結果の分析を行う場合に

は弾性係数Eおよび断面積Aが深度方向に一定であるとする仮定は実用的である。

図- 5.2.1 押込み力の作用する杭の変位、ひずみ、周面抵抗力、軸力の深度方向分布

杭頭変位So ( ) pSLS =は、軸ひずみを積分して得られる杭体変形量ΔLと杭先端変位 との和

であるから、式(5.2.1)で表すことができる。

( ) ∫ +=+=L

po SdxxLSLΔS0

)(ε ···························································· (5.2.1)

任意の 2 深度を挟む区間に作用する周面抵抗力は軸力の差であるから、単位長さ当たりの

周面抵抗力 )(xf は、軸方向力の微分となり、式(5.2.2)で表される。

dxxEA

dxxNxf )()()( ε

−=−= ···································································· (5.2.2)

式(5.2.2)を積分し、杭頭部における境界条件(EAPo=)(0ε )を考慮すると、式(5.2.3)

となる。

∫ +−=x

odxxfEA

x0

)(1)( εε (EAPo

o =ε :杭頭ひずみ) ······························· (5.2.3)

式(5.2.3)を式(5.2.1)へ代入すると、式(5.2.4)を得る。

Page 82: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 75 -

∫ ∫∫

∫ ∫∫

++−=

+

+−=+=

L

p

L

o

x

L

p

x

o

L

po

SdxdxdxxfEA

SdxdxxfEA

SdxxS

0 00

0 00

)(1

)(1)(

ε

εε ································ (5.2.4)

さらに、周面抵抗力 )(xf の深度方向分布を式(5.2.5)で表し、式(5.2.4)を展開する。

xabxf ff +=)( ················································································· (5.2.5)

ここに、式(5.2.5)は、図- 5.2.2 に示すように、周面抵抗力の深度方向分布が、 fa = 0 で

一定型、 fa < 0 で単調減少型、 fa > 0 で単調増加型であることを表現しており、周面抵抗力

)(xf ・変位 )(xS 曲線の形状には無関係である。

)(xf )(xf )(xf

0=fa 0<fa 0>fax

fb fb fb

x x

一定型 減少型 増加型

図- 5.2.2 周面抵抗力の深度方向分布

まず、 ( )∫∫ +=+=x

ffff

xxaxbdxxabdxxf

0

2

0 21)( であり、周面抵抗力の平均値を f とすれば

2

21 LaLbLf ff += であるから、

332

32

0

2

0 0

121

2121

21

2

61

21

21)(

LaLfLLaLaLbL

LaLbdxxaxbdxdxxf

ffff

ff

L

ff

L x

−=−

+=

+=

+= ∫∫ ∫

································ (5.2.6)

となる。式(5.2.6)を式(5.2.4)へ代入すると、

pfo

pofo

SLaLfPEAL

SLPEA

LaLfEALS

+

+−=

++

−−=

2

2

612

2

1121

21

················································ (5.2.7)

ここで、 fPLf = (周面抵抗力の合計)であるから、杭頭荷重Poに対する杭先端荷重Ppの比

率Pp / Po oopfo PPPPP γγ +−=+= )(1を先端伝達率γ(0≦γ≦1)とおけば、 であるから、

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- 76 -

これを式(5.2.7)へ代入すると式(5.2.8)が得られる。

po

foo S

PLa

PEALS +

++=

61

2

2

γ ···························································· (5.2.8)

式(5.2.8)より、 fa が大きい、すなわち、周面抵抗力の発揮深度が大きいほど、杭体変形

量が増加することに伴い、杭頭変位So

なお、周面抵抗力が深度方向に一定である(

も大きくなる。

fa = 0)と仮定すれば、式(5.2.9)となる。

( ) poo SPEALS ++= γ1

2 ····································································· (5.2.9)

式(5.2.9)の第 1 項は、図- 5.2.3 に示すように、周面抵抗力P f = (1 -γ) Poと先端抵抗力

Pp =γPo

EALP

LΔ o=

の合力の作用深度 (1 +γ) L / 2 を軸剛性EAで除したものに等しく、γ=1 のときに

最大値 となり、一様圧縮のときの杭体変形量となる。すなわち、杭体変形量の観点

からは、周面抵抗力の存在(γ≠1)によって一様圧縮される見かけ上の杭長が短縮したこと

と等価になる。

また、一般に杭頭荷重Po・杭頭変位So関係は曲線となることから、式(5.2.9)における先

端伝達率γの値は、杭頭荷重Poもしくは杭頭変位So

oP

( )10 ≤≤= γγ op PP

L

21 L)( γ+

( ) o

f

PP

γ−= 1

2L

pf PP +

の大きさによって変化するであろうこと

も同時に推察される。

図- 5.2.3 杭体変形量の解釈

次に、単位面積あたりの地盤反力度と変位との比で定義される杭先端地盤反力係数kvを用

いると、杭先端変位Sp

vp

o

pvp

pp

kDP

kD

PS

22

44

π

γ

π==

は式(5.2.10)で表される。

··································································· (5.2.10)

ここに、 pD :杭先端径である。よって、杭頭変位Soの理論上の一般解は、式(5.2.11)と

なる。

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- 77 -

ovp

oo

fo P

kDP

PLa

EALS 2

2 46

12 π

γγ +

++= ················································· (5.2.11)

式(5.2.11)は、次のことを定性的に説明している。

また、式(5.2.11)において、杭頭降伏時の先端伝達率γyを与えれば、杭頭降伏変位Soy

は式(5.2.12)によって得られる。さらに、杭軸方向荷重・変位曲線における杭頭降伏時の

割線勾配Poy / Soyで定義される杭軸方向バネ定数Kv faの一般解は、周面抵抗力の深度勾配を

= 0 とすれば、式(5.2.13)となる。

oyvp

yoy

o

fyoy P

kDP

PLa

EALS 2

2 46

12 π

γγ +

++= ··········································· (5.2.12)

( )vp

yy

oy

oyv

kDEALS

PK

2

41

2

1

π

γγ ++

== ······················································ (5.2.13)

式(5.2.13)は、設計時点で明らかな杭寸法や弾性係数に加え、杭頭降伏時の先端伝達率

γyおよび杭先端地盤反力係数kvを与えれば、杭軸方向バネ定数Kvが得られることを示してお

り、Cs - kv法において考慮すべき周面抵抗力・相対変位曲線におけるすべり係数Csおよびそ

の上限値fuが先端伝達率γyに置き換わったことになる。また、式(5.2.11)からは、任意の

杭頭荷重Poに対する杭体変形量ΔLおよび杭先端変位Spを求めることができ、両者の和とし

ての杭頭変位Soが得られる。以降、式(5.2.12)および式(5.2.13)をそれぞれ杭頭降伏変位

および杭軸方向バネ定数の提案式と呼ぶ。

1) 杭頭荷重Poが等しい場合、軸剛性バネの逆数L / EAまたは先端伝達率γが大きい(=

周面抵抗力が小さい)ほど、杭体変形量ΔL は大きい。

2) さらに、杭体変形量ΔL は、周面抵抗力の発揮深度( fa )が大きい杭ほど大きい。

3) 杭頭荷重 Po が等しい場合、先端伝達率γが大きいほど、杭先端径 Dp または先端地

盤反力係数 kvが小さいほど、先端変位 Spは大きい。

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- 78 -

5.3 杭軸方向バネ定数の意義

2.2 で述べたように、道路橋杭基礎の安定照査では、フーチングを剛体と仮定し、杭および

地盤を杭軸方向、杭軸直角方向および回転方向の杭頭集約線形バネに置き換えた計算モデル

を用いる、いわゆる変位法によって応答値が算定される。変位法における応答値の算定手順

は次のとおりである。

手順- 1:作用荷重と線形バネとの関係からフーチング変位(すなわち杭頭変位)を求める。

手順- 2:手順- 1 で得られた杭頭変位と線形バネとの関係から杭頭反力を求める。

杭軸方向バネ定数Kv

ここで、n個の杭軸方向バネ定数K

は、手順-1 では荷重から杭頭変位を求めるための、手順-2 では杭頭変

位から杭頭反力を求めるための媒介となる。

vの実測値Kve(i)(i = 1, 2, ・・・, n)および任意の方法によ

るn個のKvの推定値Kvc(i)(i = 1, 2, ・・・, n)があるとする。Kve(i) およびKvc(i) を用いると、手順

- 1 ではn個ずつの杭頭変位Soの実測値Se(i) および推定値Sc(i) が、手順- 2 ではn個ずつの杭頭

反力Poの実測値Pe(i) および推定値Pc(i) が得られる。これらの実測値と推定値とに偏りがある

場合、Kvの推定値を改めてαKvc(i)

ここで、応答値の算定における手順- 1 ではK

として偏りを補正することを考える。個々の実測値と推定

値との比を推定比と呼ぶことにすると、推定比が正規分布に従う場合には、推定比の相加平

均Mが 1.0 となるような補正係数αを与えれば、推定比のばらつき(標準偏差もしくは変動係

数)も最小となる。

v

方法- 1:手順- 1 で求める杭頭変位S

は分母側となり、手順- 2 では分子側となる

ため、以下に示すように最適な補正係数αは異なってくる。

o

杭頭変位S

の相加平均を 1.0 とする方法

oの推定比の相加平均Mが 1.0 となるような補正係数αの値は、式(5.3.1)に示

すように、Kvの推定比Kve(i) / Kvc(i)

=

=

)(

)(

)(

)(

)(

)(

ive

ivc

ivc

ive

ic

Ie

KK

nKPKP

MSS

α1

の調和平均となる。

= 1.0

=∴

)(

)(

ive

ivc

KK

M

1α ·············· (5.3.1)

方法- 2:手順- 2 で求める杭頭反力Po

杭頭反力P

の相加平均を 1.0 とする方法

oの推定比の相加平均Mが 1.0 となるような補正係数αの値は、式(5.3.2)に示

すように、Kvの推定比Kve(i) / Kvc(i)

=

=

)(

)(

)(

)(

)(

)(

ivc

ive

ivc

ive

ic

ie

KK

nKK

MPP

Mαα

1

の相加平均となる。

= 1.0

=∴

)(

)(

ivc

ive

KK

Mα ·················· (5.3.2)

ここで、相加平均≧調和平均の関係が常に成立する。図- 5.3.1 に模式的に示すように、杭

頭荷重Poから杭頭変位Soを推定する場合には、Kvを調和平均とすれば変位の推定比は 1.0 と

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- 79 -

なり、相加平均とすると、推定比は 1.0 よりも大きくなる。変位法においては、まず杭頭変

位(フーチング変位)を計算し、得られた変位を用いて杭頭反力を推定するため、杭頭変位

(フーチング変位)の推定誤差の小さいKv

また、K

の調和平均の方が望ましいと考えられる。

vの推定方法が安定計算における応答値に及ぼす影響について試算した結果を巻末

の付属資料-1 に示す。これによると、Kv

以上のことから、杭軸方向バネ定数K

を相加平均とした場合、フーチング変位は鉛直方向、

水平方向および回転方向の全てが小さく見積もられ、その結果、杭の最大曲げモーメントを

過小評価して危険側の設計となる。一方、調和平均とした場合では、フーチング変位の推定

比は 1.0 に近い代わりに、フーチング変位を用いて計算した杭軸方向力を過小評価すること

になるが、その程度はわずかである。

v

なお、推定比が正規分布ではなく対数正規分布に従う場合には、式(5.3.1)および式(5.3.2)

の相加平均 M を幾何平均 GM に読み替えると、方法-1 および方法-2 で得られる補正係数は等

しくなる。

の推定式は、フーチング変位の推定精度を尊重した

方法-2 によって控えめの値とする方が望ましいことが分かる。

0

1

2

3

0 1 2 3変位S

荷重

P

相加平均P = 1.25 S

● 実測値○ 推定値

× 0.625

× 2.5

0.5

2.0

1.25

K vの期待値 =実測K vの相加平均

とする場合

K v の期待値

= ( 2.0 + 0.5 ) / 2= 1.25

K vの期待値、荷重Pから変位S を推定

実測値 / 推定値の

平均値= ( 0.625 + 2.5 ) /2= 1.5625

0

1

2

3

0 1 2 3変位S

荷重

P

調和平均P = 0.80 S

● 実測値○ 推定値

× 0.4

× 1.6

0.5

0.8

K vの期待値 =実測K vの調和平均

とする場合

K v の期待値

= 1 / 1.25= 0.80

K vの期待値、荷重Pから変位S を推定

実測値 / 推定値の

平均値= ( 0.4 + 1.6 ) /2= 1.00

2.0

図- 5.3.1 Kvの平均方法と変位Soの推定比(模式図)

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- 80 -

5.4 推定式の精度検証

5.2 で示した提案式(5.2.12)(5.2.13)による推定精度を検証する。5.3 で述べたように、

杭軸方向バネ定数Kvの推定式の良否は、変位の推定精度で評価することとし、その指標には

推定結果の偏り(実測値と推定値の比の平均値Mもしくは幾何平均値GM)、ばらつき(実測

値と推定値の比の標準偏差SDもしくは幾何標準偏差GSD)および説明性(実測値と推定値の

説明係数R2)を用いる。提案式では、杭頭降伏時の杭頭変位Soyは、このときの杭体変形量Δ

Lyと先端変位Spyとの和で表されるので、Soy、ΔLy、Spy

5.4

それぞれの推定値と実測値との比較

を行う。なお、 では杭頭降伏時の先端伝達率γyは実測値を用い、γy

5.5

を推定値とした実用

的な方法については、 で述べる。

5.4.1 杭体変形量の推定精度の検証

長さL、周面抵抗力の深度方向勾配 fa である杭の、杭頭降伏荷重Poyに対する杭体変形量Δ

Ly

oyoy

fyy P

PLa

EALLΔ

++=

61

2

2

γ

は、提案式より次式で求められる。

····························································· (5.4.1)

まず、周面抵抗力は深度方向に一定である( fa = 0)と仮定した場合について検討する。軸

剛性 EA には以下に述べる考察を踏まえて表- 5.4.1 に示す値を用いる。

表- 5.4.1 推定ΔLy

杭種(材料)

/ Dの計算に用いる軸剛性EA

断面積 A 弾性係数 E (N/mm2

弾性係数 E の ) 引用元・前提

鋼管杭 杭体+保護鋼材の断面積* 2.0×10 道路橋示方書 5

場所打ち杭 杭体断面積 2.7×10 道路橋示方書(1980)**

4

RC 杭 杭体断面積 3.1×10 道路橋示方書 4 σck= 40 N/mm

PC 杭

2

杭体断面積 3.3×10 道路橋示方書 4 σck= 50 N/mm

PHC 杭、SC+PHC 杭

2

杭体断面積 3.8×10 道路橋示方書 4 σck= 80 N/mm

全長 SC 杭

2 鋼管 鋼管断面積 2.0×10 道路橋示方書 5

コンクリート コンクリート断面積 3.8×10 道路橋示方書 4 σck= 80 N/mm

鋼管ソイル

セメント杭

2 鋼管 鋼管断面積 2.0×10 道路橋示方書 5

ソイルセメント ソイルセメント断面積 5.0×10 道路橋示方書 2 qu = 1.0 N/mm*:保護鋼材の断面積が確認できた場合のみ

2

**:昭和 55 年版の道路橋示方書

表- 5.4.1 に示す軸剛性EAの設定理由は以下のとおりである。コンクリートは弾性体ではな

く、弾性係数Ecの値はひずみの増加とともに低下し、さらに施工の良否や地域によっても異

なると言われる。すなわち、密度、骨材の体積比率、骨材の弾性係数および各種混和材等の

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- 81 -

影響を受けるようである。しかし、使用されたコンクリートの呼び強度や弾性係数の実測値

が確認できるデータはほとんどない。そこで、コンクリートの弾性係数Ec

場所打ち杭では、コンクリートが水中で打設されることに伴う強度低下に配慮して、一般

に呼び強度 30 N/mm

の値は、道路橋示

方書に示される設計基準強度に応じた推定値を用いることとした。

2のコンクリートが使用される。道路橋示方書 35)ではこの設計基準強度

をσck = 24 N/mm2としている。σck = 24 N/mm2のコンクリートの弾性係数Ecの値は、平成 2

年に改訂された道路橋示方書においては、良質な骨材の不足を反映し、Ec = 2.7×105 N/mm2

からEc = 2.5×105 N/mm2に低減された36)。ここでは、場所打ち杭の試験結果のほとんどが平

成 2 年以前に実施されたものであることを考慮して、Ec = 2.7×105 N/mm2

次に、弾性係数E

とした。

cの値とひずみの大きさとの関係については次のとおりである。道路橋示

方書では、ひずみが 2,000μ以下の領域における応力・ひずみ関係を 2 次曲線で与えている37)。

設計基準強度σck = 24 N/mm2 図- 5.4.1における応力・ひずみ関係を に示す。土木学会では、

応力・ひずみ曲線上の、ひずみが 50μとなる点(A点)と応力が圧縮強度σmaxの 1/3 となる

点(B点)とを結ぶ割線勾配をコンクリートの弾性係数Ecと定義している38

図- 5.4.2

)。なお、A点とB

点との割線勾配の値と原点とB点との割線勾配の値は、1.5%程度の差であり、ほぼ等しい。

また、場所打ち杭の杭頭降伏時における平均杭頭応力( = 杭頭降伏荷重 / 断面積)の分布

を に示す。これより、杭頭降伏時の杭体応力は、B点以下の領域にあると考えて差

し支えない。よって、杭頭降伏までの範囲では、弾性係数を一定として扱うことにした。

0

5

10

15

20

25

30

0 2,000ひずみε(μ)

応力

σ (N

/mm

2 )

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0弾

性係

数 E

(104

N/m

m2 )σ-ε (道路橋示方書)

A点 ( 50μ点)

B点 (1/3σmax点)

E (道路橋示方書の規定値)

E (土木学会)

(AB間の割線勾配)

E ( σ-ε曲線から

の逆算値)

図- 5.4.1 σ - ε、E - ε関係 (σck = 24 N/mm2)

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0

5

10

15

20

25

30

0~2

2~4

4~6

6~8

8~10

10~12

12~14

杭頭降伏時の平均杭頭応力 (N/mm2)

度数

図- 5.4.2 場所打ち杭の杭頭降伏時における平均杭頭応力の分布

なお、図- 5.4.1 には、道路橋示方書に規定される弾性係数と、応力・ひずみ関係から逆算

した弾性係数Ecとを併せて示しているが、両者は一致しない。応力・ひずみ関係から逆算し

た弾性係数Ecの値が規定値よりも小さいのは、道路橋示方書の応力・ひずみ関係が載荷時間

や養生条件の相違等に配慮して39

既製コンクリート杭の弾性係数E

)安全側に与えられているためである。

cは、道路橋示方書に規定される杭の種類毎の設計基準強

度に対応する値とした。なお、杭基礎設計便覧に示されるPHC杭およびSC杭の弾性係数Ec

の値は、これらの設計基準強度σck = 80 N/mm2に対応して道路橋示方書に規定される弾性係

数Ec

鋼管ソイルセメント杭におけるソイルセメントの弾性係数E

の値とは異なるが、ここでは道路橋示方書に規定される値とした。

scは、道路橋示方書に解説され

る推定式Esc = 500 qu(単位:N/mm2)により算定し、このときの一軸圧縮強度quは、砂質土

中の杭一般部に対する値であるqu = 1.0 N/mm2

鋼管杭等の鋼材の弾性係数は、2.06×10

を用いた。 5 N/mm2である40)。道路橋示方書に規定される値は

2.0×105 N/mm2

次に、道路橋示方書では、コンクリート部材の照査に用いる断面力を算出する場合、鋼材

を無視した剛性を用いることとしている。さらに、試験結果の軸方向鋼材比(鋼材断面積 / 全

断面積)の値は、場所打ち杭が平均で 1%未満であり、既製コンクリート杭(データ中では、

ほとんどが A 種)では 0.5%程度である。よって、コンクリート杭の軸剛性 EA の計算では、

鋼材(鉄筋)を無視した全断面積とすることにした。ただし、SC 杭は軸方向鋼材比が 6~8%

と大きいため、コンクリートと鋼材の剛性をそれぞれ考慮することにした。

とこれよりやや小さいが、その差は 3%と十分に小さいと考え、ここでも道

路橋示方書に規定される値とした。

なお、計測機器の破損防止のための保護鋼材が配置され、その断面積も軸剛性に寄与する

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- 83 -

と考えられるが、その寸法が確認できたのは、鋼管杭のデータの一部である。

杭頭降伏時の杭体変形量レベルΔLy 図- 5.4.3 / Dの実測値と推定値との関係を に示す。なお、

ΔLy / Dの推定値を求めるためには、杭頭降伏時の先端伝達率γyが必要であるが、ここでは、

精度検証を行うため、杭頭降伏時の実測杭頭荷重Poyに対する杭頭降伏時の実測杭先端荷重

Ppyの比すなわちγy = Ppy / Poyの実測値としている。推定比は、正規分布に従うようである

ので、図中には、両者の説明係数R2

表- 5.4.2

(相関係数Rの 2 乗)、推定比( = 実測値 / 推定値)の

平均Mおよび標準偏差SDの値を併せて示す。なお、 に示すように、ΔLy / Dの推定

比の平均Mと幾何平均GM、標準偏差SDと幾何標準偏差GSDはそれぞれ近い値となる。これ

は、ΔLy

表- 5.4.2 ΔL

/ Dの推定比の平均が 1 に近く、ばらつきも比較的小さいためである。

y

/ Dの推定比の統計量

平均 M

幾何平均 GM

標準偏差 SD

幾何標準偏差GSD

打撃 0.93 0.89 0.29 0.30 バイブロハンマ 0.83 0.82 0.15 0.18 場所打ち杭 0.86 0.80 0.37 0.41 中掘り杭 0.97 0.96 0.13 0.14

鋼管ソイルセメント杭 0.78 0.76 0.18 0.23 回転杭 0.82 0.81 0.11 0.13 全種類 0.90 0.87 0.24 0.26

提案式による杭体変形量レベルΔLy

fa

/ Dの推定精度は、ほぼ十分な水準にあると考えられ、

= 0 と仮定しても問題なさそうである。なお、場所打ち杭工法では他に比べてばらつきが

やや大きい。これは、前述したようにコンクリートの弾性係数Ec

に与えるパラメータが非常

に多いことが原因していると考えられる。しかし、打撃工法や中掘り杭工法にも既製コンク

リート杭のデータが含まれている。場所打ち杭のデータに特有な点は、1) 使用されたコンク

リートの設計基準強度を仮定していること、2) コンクリートが水中打設されることに伴って

設計基準強度を低減していること、3) 杭体断面積Aの不確実性の 3 点が挙げられる。これら

を適切に評価することにより、推定精度はより向上するものと考えられるが、場所打ち杭の

場合、一般に杭頭降伏変位に占める杭体変形量の割合は小さいことから、杭体変形量の推定

精度が杭頭変位の推定精度に与える影響は比較的小さいと考えられる。

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- 84 -

0%

1%

2%

3%

4%

5%

0% 1% 2% 3% 4% 5%x : 推定ΔL y / D (提案式, 実測γy )

y : 実

測Δ

Ly

/ D

R 2 = 0.98 M = 0.83SD = 0.15

y = x

0.0%

0.2%

0.4%

0.6%

0.8%

1.0%

0.0% 0.2% 0.4% 0.6% 0.8% 1.0%x : 推定ΔL y / D (提案式, 実測γy )

y : 実

測Δ

Ly

/ D

y = x

R 2 = 0.68 M = 0.86SD = 0.37

0%

1%

2%

3%

4%

5%

0% 1% 2% 3% 4% 5%x : 推定ΔL y / D (提案式, 実測γy )

y : 実

測Δ

Ly

/ D

R 2 = 0.81 M = 0.93SD = 0.29

y = x

(a) 打撃 (b) バイブロハンマ (c) 場所打ち杭

0%

1%

2%

3%

4%

5%

0% 1% 2% 3% 4% 5%x : 推定ΔL y / D (提案式, 実測γy )

y : 実

測Δ

Ly

/ D

y = x

R 2 = 0.92 M = 0.78SD = 0.18

0%

2%

4%

6%

8%

10%

0% 2% 4% 6% 8% 10%x : 推定ΔL y / D (提案式, 実測γy )

y : 実

測Δ

Ly

/ D

y = x

R 2 = 0.95 M = 0.97SD = 0.13

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

0% 1% 2% 3% 4% 5% 6%x : 推定ΔL y / D (提案式, 実測γy )

y : 実

測Δ

Ly

/ D

y = x

R 2 = 0.97 M = 0.82SD = 0.11

(d) 中掘り杭 (e) 鋼管ソイルセメント杭 (f) 回転杭

0%

2%

4%

6%

8%

10%

0% 2% 4% 6% 8% 10%x : 推定ΔL y / D (提案式, 実測γy )

y : 実

測Δ

Ly

/ D

打撃バイブロハンマ場所打ち杭中掘り杭鋼管ソイルセメント杭回転杭y=x

R 2 = 0.97 M = 0.90SD = 0.24

(g) 全種類

図- 5.4.3 ΔLy / Dの実測値・推定値関係 (γy実測値)

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- 85 -

5.4.2 杭先端変位の推定精度の検証

杭頭降伏時の杭先端変位Spy oyvp

ypy P

kDS 2

4

π

γ=の推定値は、提案式より (Dp:杭先端径)で

得られる。杭先端地盤反力係数kvの推定には、道路橋示方書に解説される載荷幅依存性を考

慮した鉛直地盤反力係数の推定式(以降、道示kv

4343

30301

30

−−

=

=...DEBkk o

vvov α

と呼ぶ)を利用する。すなわち、式(5.4.2)

を用いる。

·························································· (5.4.2)

ここで、地盤反力係数の推定に用いる係数は、常時に対する値α = 1.0 とし、データ中に

杭先端地盤の変形係数Eoが測定された試験結果はないため、先端地盤のN値から算定する。

また、Eo / Nの値は最新の研究成果41 表- 5.4.3)等を参考に、 に示す値を用いる。ここで、先

端地盤のN値が 50 を超えると思われるものもあるが、換算N値を求められないデータが圧倒

的に多いため、ここでのN値の上限値は 50 とする。

表- 5.4.3 変形係数Eo(kN/m2)の算定式

地盤種別 変形係数 Eoの算定式 備考 E砂質土、砂礫、岩盤 o N

= 3,900N 値の上限値は 50 とする。 E粘性土 o

= 6,000N

図- 5.4.4 は、杭頭降伏時の杭先端変位レベルSpy / Dの実測値と道示kvから求めた推定値と

の関係である。ここでも、杭頭降伏時の先端伝達率γyには実測値を用いている。推定比(= 実

測値 / 推定値)は対数正規分布に従うようであるので、図中には、両者の説明係数R2

全種類を対象とした幾何標準偏差GSDの値に着目すると、杭体変形量レベルΔL

、推定

比の幾何平均GMおよび幾何標準偏差GSDの値を併せて示す。

y / Dでは

GSD(≒CV)= 0.25 程度であったのに対し、杭先端変位レベルSpy

これより、杭先端地盤の荷重・変形特性は、既往の研究

/ DではGSD (≒CV)=

0.7 程度と非常に大きく、推定精度は極めて低いことが分かる。さらに、幾何平均GMの値に

着目すると、施工方法によって推定結果の偏り方が異なり、打撃工法、中掘り杭工法および

鋼管ソイルセメント杭工法ではGM = 0.5 程度と推定値は小さめとなる傾向にあるのに対し、

場所打ち杭工法ではGM = 1.5 と推定値は大きめとなる。 5)でも指摘されているように、施工

の影響により変化していることが伺える。すなわち、自然状態での地盤の変形係数Eo

表- 5.4.3

とN値

との関係が平均的には に示す関係で与えられるものとした場合、場所打ち杭工法で

は施工の過程で先端地盤が乱される傾向にあり、打撃工法では先端地盤が締固められる傾向

にあることになる。また、中掘り杭工法および鋼管ソイルセメント杭工法では、杭先端部に

設けられる根固め球根によって見かけの剛性が増加しているものと考えられる。

Page 93: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 86 -

なお、杭先端地盤の変形係数Eo

0%

1%

2%

3%

4%

5%

0% 1% 2% 3% 4% 5%x : 推定S py / D (道示k v , 実測γy )

y : 実

測S

py /

D

GM = 0.87

y = x

R 2 = 0.80GSD = 0.18

0%

1%

2%

3%

4%

5%

0% 1% 2% 3% 4% 5%x : 推定S py / D (道示k v , 実測γy )

y : 実

測S

py /

D

GM = 1.49

y = x

R 2 = 0.28GSD = 0.62

0%

1%

2%

3%

4%

5%

0% 1% 2% 3% 4% 5%x : 推定S py / D (道示k v , 実測γy )

y : 実

測S

py /

D

y = x

GM = 0.51

R 2 = 0.00GSD = 0.80

の推定に用いるN値の上限値をここでは 50 としたが、N値

の上限値を設けずに同様の計算を行うと、推定結果の偏りの傾向は同一であったが、むしろ

ばらつきが大きくなった。

(a) 打撃 (b) バイブロハンマ (c) 場所打ち杭

0%

2%

4%

6%

8%

10%

0% 2% 4% 6% 8% 10%x : 推定S py / D (道示k v , 実測γy )

y : 実

測S

py /

D

GM = 0.63

y = x

R 2 = 0.47GSD = 0.53

0%

1%

2%

3%

4%

5%

0% 1% 2% 3% 4% 5%x : 推定S py / D (道示k v , 実測γy )

y : 実

測S

py /

D

GM = 0.57

y = x

R 2 = 0.14GSD = 0.54

0%

2%

4%

6%

8%

10%

0% 2% 4% 6% 8% 10%x : 推定S py / D (道示k v , 実測γy )

y : 実

測S

py /

DGM = 0.90

y = x

R 2 = 0.37GSD = 0.55

(d) 中掘り杭 (e) 鋼管ソイルセメント杭 (f) 回転杭

0%

2%

4%

6%

8%

10%

0% 2% 4% 6% 8% 10%x : 推定S py / D (道示k v , 実測γy )

y : 実

測S

py /

D

打撃バイブロハンマ場所打ち杭中掘り杭鋼管ソイルセメント杭回転杭

GM = 0.74

y = x

R 2 = 0.45GSD = 0.74

(g) 全種類

図- 5.4.4 Spy / Dの実測値・推定値関係(道示kv、γy実測値)

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- 87 -

そこで、杭先端地盤反力係数kvの推定式は、式(5.4.3)に示すように施工法別の係数αkl

によって道示kv

43

30301 −

=

..DEk oklv α

を補正したものとする。

······································································ (5.4.3)

図- 5.4.4 に見られるように、杭先端地盤反力係数kvの値は施工方法の影響を受けるようで

ある。また、道路橋示方書における支持力推定式における先端抵抗力の項は、施工方法およ

び地盤種別に応じて定められている。そこで、杭先端地盤反力係数kvも施工方法および地盤

種別に応じて補正した値とすることにより、施工方法および地盤種別による偏りが解消され

ることが期待できる。杭先端地盤反力係数kvの推定に用いる道示kv

表- 5.4.4

に対する補正係数を、施

工方法・地盤種別毎に先端変位の推定比の幾何平均GMが 1.0 となるように求めると、

に示す値が得られる。

表- 5.4.4 施工方法の影響を考慮したkvの補正係数(線形補正)

施工方法 道示 kvに乗ずる補正係数αkl 砂質土 砂礫・岩 粘性土

打撃 2.59 2.02 1.26 バイブロハンマ 0.96 データ1.37 なし 場所打ち杭 0.67 0.71 0.60 中掘り杭 1.56 1.70 0.86 鋼管ソイルセメント杭 1.33 1.97 3.25 回転杭 1.08 データ1.18

なし

杭頭降伏時の杭先端変位レベルSpy / Dの実測値と式(5.4.3)によって補正したkv

図- 5.4.5

による推

定値との関係を に示す(杭頭降伏時の先端伝達率γyは実測値である)。図中には、

両者の説明係数R2

推定比の幾何平均GMの値は全ての施工方法でほぼ 1.0 となり、施工方法毎の偏りが解消さ

れた。さらに、全種類を対象とすると説明係数R

、推定比の幾何平均GMおよび幾何標準偏差GSDの値を併せて示す。

2の値が向上し、幾何標準偏差GSDの値は、

0.6 まで低下した。しかし、杭体変形量ΔLy

/ Dと比較すると、依然としてばらつきは大きい。

Page 95: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 88 -

0%

1%

2%

3%

4%

5%

0% 1% 2% 3% 4% 5%x : 推定S py / D (線形補正k v , 実測γy )

y : 実

測S

py /

D

GM = 1.00

R 2 = 0.99GSD = 0.05

0%

1%

2%

3%

4%

5%

0% 1% 2% 3% 4% 5%x : 推定S py / D (線形補正k v , 実測γy )

y : 実

測S

py /

D

GM = 1.00

R 2 = 0.27GSD = 0.61

0%

1%

2%

3%

4%

5%

0% 1% 2% 3% 4% 5%x : 推定S py / D (線形補正k v , 実測γy )

y : 実

測S

py /

D

GM = 0.96

R 2 = 0.00GSD = 0.81

(a) 打撃 (b) バイブロハンマ (c) 場所打ち杭

0%

2%

4%

6%

8%

10%

0% 2% 4% 6% 8% 10%x : 推定S py / D (線形補正k v , 実測γy )

y : 実

測S

py /

D

GM = 1.00

R 2 = 0.47GSD = 0.54

0%

1%

2%

3%

4%

5%

0% 1% 2% 3% 4% 5%x : 推定S py / D (線形補正k v , 実測γy )

y : 実

測S

py /

D

GM = 0.98

R 2 = 0.33GSD = 0.53

0%

2%

4%

6%

8%

10%

0% 2% 4% 6% 8% 10%x : 推定S py / D (線形補正k v , 実測γy )

y : 実

測S

py /

D

GM = 1.00

R 2 = 0.36GSD = 0.55

(d) 中掘り杭 (e) 鋼管ソイルセメント杭 (f) 回転杭

0%

2%

4%

6%

8%

10%

0% 2% 4% 6% 8% 10%x : 推定S py / D (線形補正k v , 実測γy )

y : 実

測S

py /

D

打撃バイブロハンマ場所打ち杭中掘り杭鋼管ソイルセメント杭回転杭

GM = 0.98

R 2 = 0.53GSD = 0.62

(g) 全種類

図- 5.4.5 Spy / Dの実測値・推定値関係 (線形補正kv、γy

実測値)

Page 96: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 89 -

前述の杭先端変位の推定に当たっては、杭先端地盤反力係数kvを荷重あるいは変位の大き

さによらず一定であるとして扱っている。しかし、地盤の荷重・変形関係は非線形であるか

ら、kvの大きさも、変位に応じて変化するはずである。そこで、kv

非線形性を考慮した道示k

の非線形性を考慮するこ

とを考える。

vに対する補正係数は、次式に示す実測変位Spy(ex)と道示kvによる

推定変位Spy(cal)

( ) kncalpyknexpy SS βα )()( ⋅=

との関係から求める。

(mm) ·························································· (5.4.4)

式(5.4.4)により補正係数αkn、βknが求まれば、非線形性を考慮したkv

knkn

DED

Pk okn

p

oyyv

ββ

απ

γ

⋅⋅

×=

−−

− 431

1

32 3030

1104

..

の推定式は式(5.4.5)

となる。

(kN/m3

得られた補正係数α

) ··················· (5.4.5)

kn、βkn 表- 5.4.5の値を に示す。

表- 5.4.5 施工方法の影響を考慮したkvの補正係数(非線形補正)

施工方法 地盤種別 αkn βkn

打撃 砂質土 -15.31 0.70 砂礫・岩 1.43 0.47 粘性土 1.10 0.60

バイブロ ハンマ

砂質土 0.39 1.41 砂礫・岩 0.65 1.05

データ粘性土 なし

場所打ち杭 砂質土 4.53 0.31 砂礫・岩 1.44 0.96 粘性土 2.36 0.49

中掘り杭 砂質土 0.60 1.01 砂礫・岩 0.57 0.99 粘性土 1.17 1.00

鋼管ソイルセ

メント杭

砂質土 0.53 1.12 砂礫・岩 1.70 0.62 粘性土 -9,566 3.24

回転杭 砂質土 2.77 0.54 砂礫・岩 1.18 0.86

データ粘性土

なし

杭先端変位レベルSp / Dの実測値と式(5.4.5)により非線形性を考慮して補正したkv

図- 5.4.6

によ

る推定値との関係を に示す(杭頭降伏時の先端伝達率γyは実測値である)。図には、

両者の説明係数R2、推定比の幾何平均GMおよび幾何標準偏差GSDの値を併せて示す。線形

補正したkvによる場合と比較すると、改善効果はほとんどない。

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- 90 -

0%

1%

2%

3%

4%

5%

0% 1% 2% 3% 4% 5%x : 推定S py / D (非線形補正k v , 実測γy )

y : 実

測S

py /

D

GM = 1.00

R 2 = 1.00GSD = 0.00

0%

1%

2%

3%

4%

5%

0% 1% 2% 3% 4% 5%x : 推定S py / D (非線形補正k v , 実測γy )

y : 実

測S

py /

D

GM = 1.05

R 2 = 0.37GSD = 0.57

0%

1%

2%

3%

4%

5%

0% 1% 2% 3% 4% 5%x : 推定S py / D (非線形補正k v , 実測γy )

y : 実

測S

py /

D

GM = 1.06

R 2 = 0.22GSD = 0.78

(a) 打撃 (b) バイブロハンマ (c) 場所打ち杭

0%

2%

4%

6%

8%

10%

0% 2% 4% 6% 8% 10%x : 推定S py / D (非線形補正k v , 実測γy )

y : 実

測S

py /

D

GM = 1.04

R 2 = 0.47GSD = 0.54

0%

1%

2%

3%

4%

5%

0% 1% 2% 3% 4% 5%x : 推定S py / D (非線形補正k v , 実測γy )

y : 実

測S

py /

D

GM = 1.00

R 2 = 0.44GSD = 0.42

0%

2%

4%

6%

8%

10%

0% 2% 4% 6% 8% 10%x : 推定S py / D (非線形補正k v , 実測γy )

y : 実

測S

py /

D

GM = 1.05

R 2 = 0.32GSD = 0.53

(d) 中掘り杭 (e) 鋼管ソイルセメント杭 (f) 回転杭

0%

2%

4%

6%

8%

10%

0% 2% 4% 6% 8% 10%x : 推定S py / D (非線形補正k pv , 実測γy )

y : 実

測S

py /

D

打撃バイブロハンマ場所打ち杭中掘り杭鋼管ソイルセメント杭回転杭GM

GM = 1.02

R 2 = 0.56GSD = 0.61

(g) 全種類

図- 5.4.6 Spy / Dの実測値・推定値関係 (非線形補正kv、γy

実測値)

Page 98: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 91 -

図- 5.4.7 は、杭頭降伏時の杭先端変位Spyの実測値と道示kvによる推定値との関係を示した

ものである。推定に用いた杭頭降伏時の先端伝達率γy

表- 5.4.5

は実測値である。図中には、式(5.4.4)

および から求められる近似曲線を併せて示す。地盤反力係数がひずみの増加ととも

に低下する場合、変位の実測値と地盤反力係数を一定と仮定した場合の推定値との関係は、

正の勾配を有する下に凸の形状の曲線となるはずであり、その場合、表- 5.4.5 の指数βknの

値はβkn > 1.0 となるはずである。しかし、近似曲線は、βkn < 1.0 となり、曲線の形状が上

に凸であるものが大半で、さらにはβkn

よって、提案式における杭先端地盤力係数k

< 0 と負勾配を有するものもある。よって、求めた近

似曲線の多くは、データの分布状況を表現してはいるものの、地盤の非線形性を表現したも

のとはならないことになる。

vの推定式は、道示kv

y = 15.31 x -0.70

y = 1.43 x 0.47

y = 1.10 x 0.60

0

5

10

15

20

25

0 5 10 15 20 25x : 道示k vによる推定値 S py (cal) (mm)

y : 実

測値

Spy

(ex)

(mm

)

● 砂質土○ 砂礫・岩▲ 粘性土

砂質土

粘性土

砂礫・岩

y = 0.39 x 1.41

y = 0.65 x 1.05

0

5

10

15

20

0 5 10 15 20x : 道示k vによる推定値 S py (cal) (mm)

y : 実

測値

Spy

(ex)

(mm

)

● 砂質土○ 砂礫

砂礫

砂質土

y = 4.53 x 0.31

y = 1.44 x 0.96

y = 2.36 x 0.49

0

10

20

30

40

50

0 10 20 30 40 50x : 道示k vによる推定値 S py (cal) (mm)

y : 実

測値

Spy

(ex)

(mm

)

● 砂質土○ 砂礫▲ 粘性土

砂質土

粘性土

砂礫

を地盤種別および施工方

法別に線形補正した式(5.4.3)によることとする。

(a) 打撃 (b) バイブロハンマ (c) 場所打ち杭

y = 0.60 x 1.01

y = 0.57 x 0.99

0

10

20

30

40

50

60

0 10 20 30 40 50 60x : 道示k vによる推定値 S py (cal) (mm)

y : 実

測値

Spy

(ex)

(mm

)

● 砂質土○ 砂礫▲ 粘性土 砂質土

粘性土y = 1.17 x

砂礫

y = 0.53 x 1.12y = 1.70 x 0.62

y = 9565.53 x -3.24

0

10

20

30

40

50

60

0 10 20 30 40 50 60x : 道示k vによる推定値 S py (cal) (mm)

y : 実

測値

Spy

(ex)

(mm

)

● 砂質土○ 砂礫▲ 粘性土

砂質土

粘性土

砂礫

y = 2.77 x 0.54

y = 1.18 x 0.86

0

10

20

30

40

50

0 10 20 30 40 50x : 道示k vによる推定値 S py (cal) (mm)

y : 実

測値

Spy

(ex)

(mm

)

● 砂質土○ 砂礫・岩

砂質土

砂礫

(d) 中掘り杭 (e) 鋼管ソイルセメント杭 (f) 回転杭

図- 5.4.7 杭先端地盤反力係数kv

の非線形性の確認

Page 99: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 92 -

杭先端変位の推定精度は、杭先端地盤反力係数kvの推定精度に依存し、その値は、施工方

法、地盤種別、地盤強度、載荷幅および地盤のひずみレベルに左右される。ここでは、杭先

端地盤の変形係数EoをやむなくN値から推定したが、N値と変形係数Eoとの相関はあまり高く

ないことも知られている。杭先端変位をよりよく推定するためには、変形係数Eoの測定を行

うか、より精度の高い変形係数Eoの推定方法の検討が必要である。

Page 100: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 93 -

5.4.3 杭頭変位の推定精度の検証と現行式に対する改善効果

現行式および提案式による杭頭降伏変位レベルSoy / Dの推定精度を検証し、提案式の現行

式に対する改善効果を確認する。杭先端地盤反力係数kvは本来一定ではなく変位の増加に伴

って低下する非線形性を示すはずであるが、前述のように適切な推定式を導くことはできな

かった。したがって、ここでは、便宜的に杭先端地盤反力係数kv

杭頭降伏変位レベルS

を一定の値として扱う。

oy 図- 5.4.8 / Dの実測値と推定値との関係を、 および図- 5.4.9 に示す。

図- 5.4.8 の推定値は現行式による値、図- 5.4.9 の推定値は杭頭降伏時の先端伝達率γy

図- 5.4.10

の実測

値を用いた場合の提案式による値である。また、 は、図- 5.4.8 と図- 5.4.9 とを重

ね書きしたものである。推定比は対数正規分布に従うようであるので、図中には、実測値と

推定値の説明係数R2

なお、提案式における推定値は、杭頭降伏時の先端伝達率γ

、推定比の幾何平均GMおよび幾何標準偏差GSDの値を併せて示す。

y

図- 5.4.9

の実測値を用いているため、

杭体軸力分布(杭体ひずみ)が不明のデータについては推定値を算定できない。提案式によ

る推定値の数( )が現行式による推定値の数(図- 5.4.8)よりも少ないのは、このた

めである。

現行式による推定値(図- 5.4.8)では、バイブロハンマ工法を除く全種類で推定比の幾何

平均GMは 1 よりも大きく、推定値はやや大きめに偏る傾向にある。施工方法別に見ると、場

所打ち杭および回転杭の幾何平均GMの値が他に比べて大きく、特に場所打ち杭では推定比が

非常に大きくなるものもある。ばらつきに着目すると、全種類を対象とした推定比の幾何標

準偏差GSDの値は 0.54 であり、図- 5.4.3 に示した提案式における杭体変形量レベルΔLy / D

の推定比の幾何標準偏差GSDの値が 0.26 であったことに比べると、ばらつきは大きい。施工

方法別では、場所打ち杭工法の幾何標準偏差GSDの値は 0.7 と際立って大きい。また、相関

の良否を表す説明係数R2の値は、施工方法による差が大きく、場所打ち杭工法の場合、R2

次に、提案式から求めた推定値(

=

0.08 と極端に小さい。このことは、場所打ち杭工法における推定値が実測値とは無関係に狭

い範囲に集中していることからも確認できる。

図- 5.4.9)では、いずれの施工方法においても、幾何平

均GMの値は 1 に近く、推定値の偏りはほぼない。ばらつきに着目すると、全種類を対象とし

た推定比の幾何標準偏差GSDの値は 0.36 まで低下し、この値は提案式における杭体変形量レ

ベルΔLy / Dの推定比の幾何標準偏差の値(GSD = 0.26)に比較的近い。また、実測値と推

定値の説明係数R2の値は、施工方法による差が大きいものの、全種類を対象とすればR2

正規分布の性質より、平均 M±標準偏差 SD の 2 倍の範囲には、全データの 95%が含まれ

る。幾何平均 GM = 0.96、幾何標準偏差 GSD = 0.36 となる対数正規分布における幾何平均

GM に対しては、GM±2GSD の値を逆変換すると、95%信頼区間の上限値は 2.05、下限値は

= 0.88

まで改善される。場所打ち杭工法における改善効果も視覚から確認できる。

Page 101: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 94 -

0.49 となり、いわゆる「倍・半分」にほとんどのデータが含まれることになる。ちなみに、

現行式による推定結果に対して同様の計算を行うと、95%信頼区間の上限値は 2.94、下限値

は 0.33 となり、同様に表現すれば「3 倍・1/3」となる。

このように、提案式では、現行式による推定値の偏りが是正され、ばらつきが減少し実測

値との相関性も向上することが分かる。

以上のことは、杭軸方向バネ定数Kvについても同様である。杭軸方向バネ定数Kv

図- 5.4.11

の実測値

と推定値との関係を および図- 5.4.12 に示す。図- 5.4.11 に示す推定値は現行式に

よる値、図- 5.4.12 に示す推定値は杭頭降伏時の先端伝達率γyの実測値を用いた場合の提案

式による値である。同様に図中には、実測値と推定値の説明係数R2、推定比の幾何平均GM

および幾何標準偏差GSDの値を併せて示す。杭軸方向バネ定数Kvで見た場合でも、現行式に

比べて提案式は、偏り(幾何平均GM)、ばらつき(幾何標準偏差GSD)および説明性(説明

係数R2)のいずれも改善されていることが確認できる。また、場所打ち杭工法において、現

行式による推定値が実測値と無関係に狭い範囲に集中していることが提案式で解消される点

も同様である。

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- 95 -

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

0% 1% 2% 3% 4% 5% 6%x : 推定S oy / D (現行式)

y : 実

測S

oy /

D

GM = 0.84

y = x

R 2 = 0.76GSD = 0.26

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

0% 1% 2% 3% 4% 5% 6%x : 推定S oy / D (現行式)

y : 実

測S

oy /

D

GM = 1.31

y = x

推定値は狭い範囲に集中

R 2 = 0.08GSD = 0.70

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

0% 1% 2% 3% 4% 5% 6%x : 推定S oy / D (現行式)

y : 実

測S

oy /

D

GM = 1.10

R 2 = 0.73GSD = 0.39

(a) 打撃 (b) バイブロハンマ (c) 場所打ち杭

0%

3%

6%

9%

12%

15%

0% 3% 6% 9% 12% 15%x : 推定S oy / D (現行式)

y : 実

測S

oy /

D

GM = 1.15

y = x

R 2 = 0.53GSD = 0.37

0%

2%

4%

6%

8%

10%

0% 2% 4% 6% 8% 10%x : 推定S oy / D (現行式)

y : 実

測S

oy /

D

GM = 1.20

y = x

R 2 = 0.55GSD = 0.37

0%

3%

6%

9%

12%

15%

0% 3% 6% 9% 12% 15%x : 推定S oy / D (現行式)

y : 実

測S

oy /

D

GM = 1.37

y = x

R 2 = 0.64GSD = 0.40

(d) 中掘り杭 (e) 鋼管ソイルセメント杭 (f) 回転杭

0%

3%

6%

9%

12%

15%

0% 3% 6% 9% 12% 15%x : 推定S oy / D (現行式)

y : 実

測S

oy /

D

打撃バイブロハンマ場所打ち杭中掘り杭鋼管ソイルセメント杭回転杭

GM = 1.14

y = x

R 2 = 0.71GSD = 0.54

(g) 全種類

図- 5.4.8 Soy / Dの実測値・推定値関係 (現行式)

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- 96 -

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

0% 1% 2% 3% 4% 5% 6%x : 推定S oy / D (提案式, 実測γy )

y : 実

測S

oy /

D

GM = 0.94

R 2 = 0.99GSD = 0.04

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

0% 1% 2% 3% 4% 5% 6%x : 推定S oy / D (提案式, 実測γy )

y : 実

測S

oy /

D

GM = 0.94

R 2 = 0.27GSD = 0.54

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

0% 1% 2% 3% 4% 5% 6%x : 推定S oy / D (提案式, 実測γy )

y : 実

測S

oy /

D

GM = 0.96

R 2 = 0.49GSD = 0.37

(a) 打撃 (b) バイブロハンマ (c) 場所打ち杭

0%

3%

6%

9%

12%

15%

0% 3% 6% 9% 12% 15%x : 推定S oy / D (提案式, 実測γy )

y : 実

測S

oy /

D

GM = 1.02

R 2 = 0.82GSD = 0.22

0%

2%

4%

6%

8%

10%

0% 2% 4% 6% 8% 10%x : 推定S oy / D (提案式, 実測γy )

y : 実

測S

oy /

D

GM = 0.90

R 2 = 0.84GSD = 0.24

0%

3%

6%

9%

12%

15%

0% 3% 6% 9% 12% 15%x : 推定S oy / D (提案式, 実測γy )

y : 実

測S

oy /

D

GM = 0.88

R 2 = 0.76GSD = 0.32

(d) 中掘り杭 (e) 鋼管ソイルセメント杭 (f) 回転杭

0%

3%

6%

9%

12%

15%

0% 3% 6% 9% 12% 15%x : 推定S oy / D (提案式, 実測γy )

y : 実

測S

oy /

D

打撃バイブロハンマ場所打ち杭中掘り杭鋼管ソイルセメント杭回転杭

GM = 0.96

R 2 = 0.88GSD = 0.36

(g) 全種類

図- 5.4.9 Soy / Dの実測値・推定値関係 (提案式、γy実測値)

Page 104: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 97 -

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

0% 1% 2% 3% 4% 5% 6%x : 推定S oy / D

y : 実

測S

oy /

D

GM (提案式) = 0.94

GM (現行式) = 0.84

△ ●現行式 提案式

R 2 0.76 0.99GM 0.84 0.94GSD 0.26 0.04

推定式

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

0% 1% 2% 3% 4% 5% 6%x : 推定S oy / D

y : 実

測S

oy /

D

GM (提案式) = 0.94

GM (現行式) = 1.31

現行式の推定範囲

△ ●現行式 提案式

R 2 0.08 0.27GM 1.31 0.94GSD 0.70 0.54

推定式

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

0% 1% 2% 3% 4% 5% 6%x : 推定S oy / D

y : 実

測S

oy /

D

GM (現行式) = 1.10

GM (提案式) = 0.96

△ ●現行式 提案式

R 2 0.73 0.49GM 1.10 0.96GSD 0.39 0.37

推定式

(a) 打撃 (b) バイブロハンマ (c) 場所打ち杭

0%

3%

6%

9%

12%

15%

0% 3% 6% 9% 12% 15%x : 推定S oy / D

y : 実

測S

oy /

D

GM (提案式) = 1.02

GM (現行式) = 1.15

△ ●現行式 提案式

R 2 0.53 0.82GM 1.15 1.02GSD 0.37 0.22

推定式

0%

2%

4%

6%

8%

10%

0% 2% 4% 6% 8% 10%x : 推定S oy / D

y : 実

測S

oy /

D

GM (提案式) = 0.90

GM (現行式) = 1.20

△ ●現行式 提案式

R 2 0.55 0.84GM 1.20 0.90GSD 0.37 0.24

推定式

0%

3%

6%

9%

12%

15%

0% 3% 6% 9% 12% 15%x : 推定S oy / D

y : 実

測S

oy /

D

GM (提案式) = 0.88

GM (現行式) = 1.37

△ ●現行式 提案式

R 2 0.64 0.76GM 1.37 0.88GSD 0.40 0.32

推定式

(d) 中掘り杭 (e) 鋼管ソイルセメント杭 (f) 回転杭

0%

3%

6%

9%

12%

15%

0% 3% 6% 9% 12% 15%x : 推定S oy / D

y : 実

測S

oy /

D

GM (現行式) = 1.14

GM (提案式) = 0.96

△ ●現行式 提案式

R 2 0.71 0.88GM 1.14 0.96GSD 0.54 0.36

推定式

(g) 全種類

図- 5.4.10 Soy / Dの実測値・推定値関係 (現行式&提案式、提案式のγyは実測値)

Page 105: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 98 -

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.30

0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30x : 推定K v (GN/m) (現行式)

y : 実

測K

v (G

N/m

)

GM = 1.20

y = x

R 2 = 0.60 (R <0)GSD = 0.27

0.0

0.4

0.8

1.2

1.6

2.0

0.0 0.4 0.8 1.2 1.6 2.0x : 推定K v (GN/m) (現行式)

y : 実

測K

v (G

N/m

)

GM = 0.75

y = x

R 2 = 0.22GSD = 0.56

推定値は狭い範囲に集中

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0x : 推定K v (GN/m) (現行式)

y : 実

測K

v (G

N/m

)

GM = 0.91

R 2 = 0.65GSD = 0.38

(a) 打撃 (b) バイブロハンマ (c) 場所打ち杭

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6x : 推定K v (GN/m) (現行式)

y : 実

測K

v (G

N/m

)

GM = 0.88

y = x

R 2 = 0.39GSD = 0.40

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2x : 推定K v (GN/m) (現行式)

y : 実

測K

v (G

N/m

)

GM = 0.84

y = x

R 2 = 0.13GSD = 0.43

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2x : 推定K v (GN/m) (現行式)

y : 実

測K

v (G

N/m

)

GM = 0.73

y = x

R 2 = 0.68GSD = 0.31

(d) 中掘り杭 (e) 鋼管ソイルセメント杭 (f) 回転杭

0.0

0.4

0.8

1.2

1.6

2.0

0.0 0.4 0.8 1.2 1.6 2.0x : 推定K v (GN/m) (現行式)

y : 実

測K

v (G

N/m

)

打撃バイブロハンマ場所打ち杭中掘り杭鋼管ソイルセメント杭回転杭

GM = 0.85

y = x

R 2 = 0.47GSD = 0.42

(g) 全種類

図- 5.4.11 Kvの実測値・推定値関係 (現行式)

Page 106: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 99 -

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.30

0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30x : 推定 K v (GN/m) (提案式, 実測γy )

y : 実

測 K

v (G

N/m

)

GM = 1.06

R 2 = 0.99GSD = 0.06

0.0

0.4

0.8

1.2

1.6

2.0

0.0 0.4 0.8 1.2 1.6 2.0x : 推定 K v (GN/m) (提案式, 実測γy )

y : 実

測 K

v (G

N/m

)

GM = 1.11

R 2 = 0.17GSD = 0.47

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0x : 推定 K v (GN/m) (提案式, 実測γy )

y : 実

測 K

v (G

N/m

)

GM = 1.05

R 2 = 0.50GSD = 0.31

(a) 打撃 (b) バイブロハンマ (c) 場所打ち杭

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6x : 推定 K v (GN/m) (提案式, 実測γy )

y : 実

測 K

v (G

N/m

)

GM = 0.98

R 2 = 0.76GSD = 0.21

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2x : 推定 K v (GN/m) (提案式, 実測γy )

y : 実

測 K

v (G

N/m

)

GM = 1.10

R 2 = 0.56GSD = 0.21

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0x : 推定 K v (GN/m) (提案式, 実測γy )

y : 実

測 K

v (G

N/m

)

GM = 1.14

R 2 = 0.73GSD = 0.32

(d) 中掘り杭 (e) 鋼管ソイルセメント杭 (f) 回転杭

0.0

0.4

0.8

1.2

1.6

2.0

0.0 0.4 0.8 1.2 1.6 2.0x : 推定 K v (GN/m) (提案式, 実測γy )

y : 実

測 K

v (G

N/m

)

打撃バイブロハンマ場所打ち杭中掘り杭鋼管ソイルセメント杭回転杭

GM = 1.04

R 2 = 0.51GSD = 0.32

(g) 全種類

図- 5.4.12 Kvの実測値・推定値関係 (提案式、γy実測値)

Page 107: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 100 -

5.4.4 推定精度検証のまとめ

提案式における杭頭降伏時の杭体変形量レベルΔLy / D、杭先端変位レベルSpy / D、杭頭変

位レベルSoy / Dの推定精度の指標値(幾何平均GM、幾何標準偏差GSD、説明係数R2

図- 5.4.13

)を比

較したものを にまとめておく。ここで、5.4.1 に示したように、杭頭降伏時の杭体

変形量レベルΔLy / Dの推定比の値は正規分布に従うようであるが、ばらつきが小さいために、

ΔLy

幾何標準偏差GSDや説明係数R

/ Dの推定比の平均Mと幾何平均GM、標準偏差SDと幾何標準偏差GSDはそれぞれ近い値

となる。そこで、同一図中で表現するために指標値は幾何平均GMおよび幾何標準偏差GSD

で統一している。 2の値に着目すると、提案式における杭先端変位レベルSpy /

Dの推定精度は、現行式における杭頭降伏変位レベルSoy / Dよりも劣るものの、提案式におけ

る杭体変形量レベルΔLy / Dの推定精度が向上することによって両者が相殺され、提案式にお

ける杭頭降伏変位レベルSoy

また、

/ Dの推定精度は現行式に対して向上していることが分かる。

図- 5.4.14 は、提案式における杭頭降伏変位Soyの推定比(= 実測値 / 推定値)とこ

のときの杭頭変位Soyに対する杭先端変位Spyの比Spy / Soyとの関係を示したものである。図に

示すように、杭先端変位の比率Spy / Soy

が小さいほど、提案式における推定精度が高い傾向

にあることが分かる。

Page 108: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 101 -

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

1.6

打撃 バイブロ

ハンマ

場所打ち杭 中掘り杭 鋼管ソイル

セメント杭

回転杭 全種類

幾何

平均

GM

提案式(ΔL y / D )提案式(S oy / D )

提案式(S py / D )

現行式(S oy / D )

(a) 幾何平均 GM(1.0 に近いほど良好)

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

打撃 バイブロ

ハンマ

場所打ち杭 中掘り杭 鋼管ソイル

セメント杭

回転杭 全種類

幾何

標準

偏差

GS

D

提案式(ΔL y / D )提案式(S oy / D )

提案式(S py / D )現行式(S oy / D )

(b) 幾何標準偏差 GSD(0.0 に近いほど良好)

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

打撃 バイブロ

ハンマ

場所打ち杭 中掘り杭 鋼管ソイル

セメント杭

回転杭 全種類

説明

係数

R2

提案式(ΔL y / D )

提案式(S oy / D )

提案式(S py / D )

現行式(S oy / D )

(c) 説明係数R2

図- 5.4.13 現行式と提案式の推定精度の指標値の比較

(1.0 に近いほど良好)

Page 109: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 102 -

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0% 20% 40% 60% 80% 100%杭頭降伏時の杭先端変位の比率 S py/S oy

杭頭

降伏

変位

の実

測値

/推

定値

打撃バイブロハンマ場所打ち杭中掘り杭鋼管ソイルセメント杭回転杭

図- 5.4.14 杭頭降伏変位の推定精度と杭頭降伏時の杭先端変位の比率

5.2 において周面抵抗力・杭体と地盤との相対変位曲線(すべり係数Csおよび上限値fu)に

変えて杭頭降伏時の先端伝達率γyを用いた杭軸方向バネ定数Kvの推定式を提案した。そして、

提案式において、γyの実測値を与えた場合の杭体変形量ΔLy、杭先端変位Spyおよび杭頭変

位Soy

・ 杭頭降伏時の先端伝達率γ

の推定精度を検証し、現行式との比較を行った。以上の結果は、次のようにまとめられ

る。

y faの値が既知であれば、周面抵抗力の深度方向分布 を一

定と仮定しても、杭体変形量ΔLy

・ 道路橋示方書に解説される杭先端の地盤反力係数k

はほぼ十分な精度で推定可能である。

vの推定値を用いると、杭先端変

位Spy

・ 杭頭降伏時の先端伝達率γ

の推定結果には施工方法や地盤種別による偏りがある。

yの値を既知とした場合、道路橋示方書に解説される推定

式に施工方法の影響および地盤種別を考慮した補正を加えた杭先端の地盤反力係数

kvを用いると、杭先端変位Spyの推定結果の偏りはほぼ解消される。しかし、杭先端

変位Spyの推定精度は、杭体変形量ΔLy

・ 杭頭降伏時の先端伝達率γ

に比べて低い。

y

・ 提案式における杭頭降伏変位S

が既知である場合には、推定式の推定精度は、現行式よ

りも高い。

oyの推定精度は、杭体変形量ΔLyおよび杭先端変位

Spyの推定精度が相殺されたものとなり、杭頭降伏変位に占める杭体変形量が支配的

な杭ほど、提案式の推定精度が高い。

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- 103 -

5.5 杭軸方向バネ定数の実用推定式

5.4 における検討により、杭頭降伏時の先端伝達率γyの値が既知であれば、提案式の推定

精度は現行式よりも高いことが分かった。ここでは、実用的な提案式として、杭頭降伏時の

先端伝達率γy

本来、提案式に必要な杭頭降伏時の先端伝達率γ

を推定値とした場合の推定精度を検証する。

yの値は、載荷試験を行わなければ知るこ

とができないが、この値は、杭の施工方法、杭の諸元(材料および寸法)および杭を支持す

る地盤の性状によって決定されるはずである。これらは、道路橋示方書に解説される支持力

推定式によって評価できると考えられるため、杭頭降伏時の先端伝達率γy

しかし、

の推定には、支持

力推定式を用いることとする。

5.2 や付属資料-2 に示すように、先端伝達率γの値は、杭頭荷重Poもしくは杭頭

変位Soの大きさによっても変化するはずである。道路橋示方書に解説される支持力推定式は、

杭頭変位レベルSo / D = 10%における杭頭荷重P10を推定するためのものであるから、これか

ら推定される先端伝達率γは、杭頭変位レベルSo / D = 10%における値γ10であり、杭頭降伏

時の値γy

ここで、杭頭降伏時における先端伝達率γ

ではない。

yの推定方法としては、2 通りを考えることがで

きる。すなわち、一つは、杭頭降伏時における先端伝達率γyの実測値と支持力推定式によっ

て推定される先端伝達率γ10との相関関係を利用してγ10からγy

4.5

を推定する方法(方法 1)、

もう一つは、 で示した式(4.5.5)(γy = 1 - 0.9 Rfd / 0.63 Rud

( )∑ ⋅+⋅= iidud LfUAqR

)によって推定する方法(方

法 2)である。ここで、支持力推定式は、道路橋示方書における支持力推定式の一部を見直

したものを用いる。道路橋示方書における支持力推定式は、式(5.5.1)で与えられる。

··································································· (5.5.1)

ここに、 Rud

q

:地盤から決まる極限支持力(kN)

d :杭先端の有効断面積あたりの先端抵抗力度(kN/m2

A :杭先端の有効断面積(= 杭先端の有効径D

pの 2 乗×π/4)(m2

U :杭の有効周長(= 杭の有効径 D×π)(m)

f i :周面抵抗力を期待する土層の周面抵抗力度(kN/m2

L

i

式(5.5.1)において、先端抵抗力度q

:周面抵抗力を期待する土層の層厚(m)

dおよび周面抵抗力度f i

最新の研究成果

の推定式は、既往の載荷試験

結果に基づき、施工方法および地盤種別毎に土質定数の関数として与えられている。 11)および付属資料- 5 によると、先端抵抗力度qdおよび周面抵抗力度f i

表- 5.5.2

の推

定式は、 に示すとおりとなる。表- 5.5.2 に示す推定式は、杭頭変位が杭径の 10%に

達する時の杭頭荷重の実測値R10と式(5.5.1)による推定値Rudとの比R10 / Rudの平均値が 1

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- 104 -

となるように定められたものである。杭頭変位レベルSo / D = 10%における先端伝達率γ10

表- 5.5.2は、式(5.5.1)および に示すqdおよびf i

表- 5.5.1 杭の有効径

の推定式を用いて推定する。なお、杭体表

面に処理を施して周面抵抗力を意図的に低減させた区間の周面抵抗力の推定値には、実測値

を用いる。

11

施工方法

)

杭および杭先端の有効径D、D打撃

p

D = Dpバイブロハンマ

= 杭体の直径

場所打ち杭 D = Dp

中掘り杭 =杭体の直径(設計径)

D = Dp

鋼管ソイルセメント杭 =杭体の直径

D = Dp

回転杭

=ソイルセメント柱の直径(設計径) D = 杭体一般部の直径DD

n p = 杭先端部の直径D

表- 5.5.2 先端抵抗力度q

p

dおよび周面抵抗力度f iの推定式11

施工方法

)

先端抵抗力度qd(kN/m2)* 周面抵抗力度f1 i(kN/m2

)*先端地盤

1 qdの推定式* 周面地盤 2 f iの推定式*

打撃

3

(先端解放)

粘性土 (20 DLb +35) N ( N ≦30, DLb ≦5) 粘性土 C または 8 N (≦75)

砂質土 (30 DLb +35) N ( N ≦50, DLb ≦5) 砂質土 10 N (≦100)

砂礫・岩盤 (35 DLb +35) N ( N ≦50, DLb ≦5)

打撃 (先端閉鎖)

粘性土 200 N ( N ≦30) 粘性土 C または 8 N (≦75) 砂質土 300 N ( N ≦50) 砂質土 10 N (≦100)

砂礫・岩盤 300 N ( N ≦50)

バイブロ ハンマ

粘性土 - 粘性土 C または 8 N (≦50) 砂質土 (20 DLb +35) N ( N ≦50, DLb ≦5) 砂質土 2 N (≦50)

砂礫 (25 DLb +35) N ( N ≦50, DLb ≦5)

場所打ち杭 粘性土 115 N ( N ≦30) 粘性土 C または 8 N (≦80) 砂質土 125 N ( N ≦30) 砂質土 5 N (≦80) 砂礫 135 N ( N ≦50)

中掘り杭*粘性土

4 150 N ( N ≦40) 粘性土 C または 5 N (≦50)

砂質土 200 N ( N ≦50) 砂質土 4 N (≦75) 砂礫 250 N ( N ≦50)

鋼管ソイル セメント杭

粘性土 150 N ( N ≦40) 粘性土 C または 10 N (≦200) 砂質土 200 N ( N ≦50) 砂質土 10 N (≦350) 砂礫 250 N ( N ≦50)

回転杭*粘性土

5 - 粘性土 C または 10 N (≦80)

砂質土 135 N (1.5 倍径), 150 N (2 倍径)( N ≦50) 砂質土 2 N (≦100) 砂礫 150 N ( N ≦50)

*1:qd

*2:

の推定式は、設計上の杭先端位置(支持層上面が基本)における値の推定に用い、周面抵抗力は設計上

の杭先端位置より上方の範囲を考慮する。 N :杭体先端から杭径の 3 倍下方までの範囲の平均 N 値

*3:N:杭周面地盤の平均N値、C:粘性土の粘着力(kN/m2

*4:セメントミルク噴出撹拌方式の場合 )

*5:現行式9)における値(支持力推定式の見直しを行っていない)

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- 105 -

図- 5.5.1 にγyの実測値とγ10 表- 5.5.3の推定値との関係を示す。 には、両者の相関式およ

び説明係数R2の値を示す。鋼管ソイルセメント杭工法を除き、両者の相関はあまり高くない。、

場所打ち杭では、γyの実測値に対してγ10

y = 0.573 x + 0.086R 2 = 0.411

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

x : 計算 γ10

y : 実

測γ

y

y = 0.850 x + 0.047R 2 = 0.353

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

x : 計算 γ10

y : 実

測γ

y

y = 0.555 x - 0.034R 2 = 0.456

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

x : 計算 γ10

y : 実

測γ

y

の推定値が小さいことが特徴的である。

(a) 打撃 (b) バイブロハンマ (c) 場所打ち杭

y = 0.732 x + 0.097R 2 = 0.304

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

x : 計算 γ10

y : 実

測γ

y

y = 0.917 x - 0.076R 2 = 0.875

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

x : 計算 γ10

y : 実

測γ

y

y = 0.833 x - 0.128R 2 = 0.281

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

x : 計算 γ10

y : 実

測γ

y

(d) 中掘り杭 (e) 鋼管ソイルセメント杭 (f) 回転杭

図- 5.5.1 実測γy ・ 推定γ10

表- 5.5.3 実測γ

関係

yと推定γ10

施工方法

の相関式

実測γyと推定γ10 説明係数Rの相関式 打撃

2 γy = 0.573γ10 0.411 + 0.086

バイブロハンマ γy = 0.850γ10 0.353 + 0.047 場所打ち杭 γy = 0.555γ10 0.456 - 0.034 中掘り杭 γy = 0.732γ10 0.304 + 0.097

鋼管ソイルセメント杭 γy = 0.917γ10 0.875 - 0.076 回転杭 γy = 0.833γ10 0.281 - 0.128

方法 1 と方法 2 によるγy 図- 5.5.2の実測値と推定値との関係を に示す。方法 1 による方が

推定結果のばらつきが小さくなるようである。よって、ここでは、杭頭降伏時の先端伝達率

γyの推定値は、方法 1(支持力推定式によって得られるγ10から推定)による値を使用する

ことにする。

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- 106 -

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

推定γy

実測

γy

R 2 = 0.65GM = 0.91GSD = 0.51

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

推定γy

実測

γy

R 2 = 0.43GM = 0.97GSD = 0.96

(a) 方法 1(γyと推定γ10

図- 5.5.2 実測γ

の相関関係) (b) 方法 2(式(4.5.5))

y ・ 推定γy

関係

なお、上記の方法でγyの値を推定するのは、やや乱暴であるかもしれない。付属資料- 2

に示す試算を行ったところ、γyとγ10との関係は、周面抵抗力が上限値に至るときの変位の

大きさに依存するようである。周面抵抗力・変位曲線を考慮することはすなわちCs - kv法を

適用することに他ならず、付属資料- 3 にも示すように、すべり係数Cs

の値を精度よく推定す

ることは現時点では困難であると考えている。

杭頭降伏時の先端伝達率γyの推定値を用いて提案式により求めた杭頭降伏時の杭体変形

量レベルΔLy / D、杭先端変位レベルSpy / Dおよび杭頭変位レベルSoy

図- 5.5.3

/ Dと各々の実測値との

関係を ~図- 5.5.5 に示す。

また、図- 5.5.6 は、ΔLy / D、Spy / Dの推定比の幾何平均GMおよび幾何標準偏差GSDの値、

実測値と推定値の説明係数R2の値を示したものであり、先に示したγy

図- 5.4.3

の実測値を用いた場合

の値( および図- 5.4.5)も併記してある。ここでも、指標値はGM、GSDおよびR2

図- 5.5.3

統一した。

および図- 5.5.6 から、杭頭降伏時の杭体変形量レベルΔLy / Dについては、幾何

平均GM、幾何標準偏差GSDおよび説明係数R2の値は、γyを実測値とした場合とほぼ同一で

あり、γyを推定値とした場合でもほぼ十分な精度で予測可能であることが確認できる。これ

は、提案式の形からも明らかなように、ΔLy / Dに対する感度は、杭頭降伏時の先端伝達率γ

y

一方、杭頭降伏時の杭先端変位レベルS

よりも軸剛性バネL / EAの方が高いためである。

py / Dについては、γyを推定値とするとばらつきが

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- 107 -

やや大きくなった。

図- 5.5.7 は、杭頭変位レベルSoy / Dの推定精度を、現行式、提案式(γyは実測値を使用)

および提案式(γyは推定値を使用)の 3 つの結果を比較したものである。提案式においてγ

yを推定値とした場合、幾何平均GMの値は 1 に近いが、γyを実測値とした場合に比べると幾

何標準偏差GSDの値は増加し、説明係数R2の値は低下した。しかし、これを現行式と比較す

ると全般に同等以上の精度は確保されている。場所打ち杭工法では、杭先端変位レベルSpy

また、

/ D

の推定誤差の影響を受け、現行式よりもばらつきが大きくなったものの、推定結果の偏りは

解消された。

図- 5.4.8(杭頭降伏変位レベルSoy / Dの実測値と道示Kv

図- 5.5.5

から求めた推定値との関係)

と (杭頭降伏変位レベルSoy / Dの実測値とγy

図- 5.5.8

の推定値を用いて提案式から求めた推

定値との関係)を重ね書きしたものを に示しておく。

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- 108 -

0%

1%

2%

3%

4%

5%

0% 1% 2% 3% 4% 5%x : 推定ΔL y / D (提案式, 推定γy )

y : 実

測Δ

Ly

/ D

R 2 = 0.99 M = 0.82SD = 0.11

y = x

0.0%

0.2%

0.4%

0.6%

0.8%

1.0%

0.0% 0.2% 0.4% 0.6% 0.8% 1.0%x : 推定ΔL y / D (提案式, 推定γy )

y : 実

測Δ

Ly

/ D

R 2 = 0.66 M = 0.86SD = 0.35

y = x

0%

1%

2%

3%

4%

5%

0% 1% 2% 3% 4% 5%x : 推定ΔL y / D (提案式, 推定γy )

y : 実

測Δ

Ly

/ D

R 2 = 0.76 M = 0.93SD = 0.29

y = x

(a) 打撃 (b) バイブロハンマ (c) 場所打ち杭

0%

1%

2%

3%

4%

5%

0% 1% 2% 3% 4% 5%x : 推定ΔL y / D (提案式, 推定γy )

y : 実

測Δ

Ly

/ D

R 2 = 0.93 M = 0.77SD = 0.17

y = x

0%

2%

4%

6%

8%

10%

0% 2% 4% 6% 8% 10%x : 推定ΔL y / D (提案式, 推定γy )

y : 実

測Δ

Ly

/ D

R 2 = 0.95 M = 0.96SD = 0.14

y = x

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

0% 1% 2% 3% 4% 5% 6%x : 推定ΔL y / D (提案式, 推定γy )

y : 実

測Δ

Ly

/ D R 2 = 0.95 M = 0.82SD = 0.12

y = x

(d) 中掘り杭 (e) 鋼管ソイルセメント杭 (f) 回転杭

0%

2%

4%

6%

8%

10%

0% 2% 4% 6% 8% 10%x : 推定ΔL y / D (提案式, 推定γy )

y : 実

測Δ

Ly

/ D

打撃バイブロハンマ場所打ち杭中掘り杭鋼管ソイルセメント杭回転杭

R 2 = 0.96 M = 0.89SD = 0.24

y = x

(g) 全種類

図- 5.5.3 ΔLy / Dの実測値・推定値関係 (提案式、γy推定値)

Page 116: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 109 -

0%

1%

2%

3%

4%

5%

0% 1% 2% 3% 4% 5%x : 推定S py / D (提案式, 推定γy )

y : 実

測S

py /

D

GM = 0.96

R 2 = 0.52GSD = 0.31

0%

1%

2%

3%

4%

5%

0% 1% 2% 3% 4% 5%x : 推定S py / D (提案式, 推定γy )

y : 実

測S

py /

D

GM = 0.82

R 2 = 0.24GSD = 0.74

0%

1%

2%

3%

4%

5%

0% 1% 2% 3% 4% 5%x : 推定S py / D (提案式, 推定γy )

y : 実

測S

py /

D

GM = 0.80

R 2 = 0.03GSD = 0.78

(a) 打撃 (b) バイブロハンマ (c) 場所打ち杭

0%

2%

4%

6%

8%

10%

0% 2% 4% 6% 8% 10%x : 推定S py / D (提案式, 推定γy )

y : 実

測S

py /

D

GM = 0.96

R 2 = 0.20GSD = 0.63

0%

1%

2%

3%

4%

5%

0% 1% 2% 3% 4% 5%x : 推定S py / D (提案式, 推定γy )

y : 実

測S

py /

D

GM = 0.96

R 2 = 0.26GSD = 0.48

0%

2%

4%

6%

8%

10%

0% 2% 4% 6% 8% 10%x : 推定S py / D (提案式, 推定γy )

y : 実

測S

py /

D

GM = 0.95

R 2 = 0.06GSD = 0.61

(d) 中掘り杭 (e) 鋼管ソイルセメント杭 (f) 回転杭

0%

2%

4%

6%

8%

10%

0% 2% 4% 6% 8% 10%x : 推定S py / D (提案式,推定γy )

y : 実

測S

py /

D

打撃バイブロハンマ場所打ち杭中掘り杭鋼管ソイルセメント杭回転杭

GM = 0.90

R 2 = 0.34GSD = 0.67

(g) 全種類

図- 5.5.4 Spy / Dの実測値・推定値関係 (提案式、γy推定値)

Page 117: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 110 -

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

0% 1% 2% 3% 4% 5% 6%x : 推定S oy / D (提案式, 推定γy )

y : 実

測S

oy /

D

GM = 0.94

R 2 = 0.92GSD = 0.12

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

0% 1% 2% 3% 4% 5% 6%x : 推定S oy / D (提案式, 推定γy )

y : 実

測S

oy /

D

GM = 0.98

R 2 = 0.04GSD = 0.83

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

0% 1% 2% 3% 4% 5% 6%x : 推定S oy / D (提案式, 推定γy )

y : 実

測S

oy /

D

GM = 0.91

R 2 = 0.71GSD = 0.31

(a) 打撃 (b) バイブロハンマ (c) 場所打ち杭

0%

3%

6%

9%

12%

15%

0% 3% 6% 9% 12% 15%x : 推定S oy / D (提案式, 推定γy )

y : 実

測S

oy /

D

GM = 0.95

R 2 = 0.68GSD = 0.33

0%

2%

4%

6%

8%

10%

0% 2% 4% 6% 8% 10%x : 推定S oy / D (提案式, 推定γy )

y : 実

測S

oy /

D

GM = 0.92

R 2 = 0.84GSD = 0.34

0%

3%

6%

9%

12%

15%

0% 3% 6% 9% 12% 15%x : 推定S oy / D (提案式, 推定γy )

y : 実

測S

oy /

D GM = 0.86

R 2 = 0.56GSD = 0.40

(d) 中掘り杭 (e) 鋼管ソイルセメント杭 (f) 回転杭

0%

3%

6%

9%

12%

15%

0% 3% 6% 9% 12% 15%x : 推定S oy / D (提案式, 推定γy )

y : 実

測S

oy /

D

打撃バイブロハンマ場所打ち杭中掘り杭鋼管ソイルセメント杭回転杭

GM = 0.88

y = x

R 2 = 0.78GSD = 0.61

(g) 全種類

図- 5.5.5 Soy / Dの実測値・推定値関係 (提案式、γy推定値)

Page 118: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 111 -

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

打撃 バイブロ

ハンマ

場所打ち杭 中掘り杭 鋼管ソイル

セメント杭

回転杭 全種類

幾何

平均

GM

ΔL y / D (実測γy)

ΔL y / D (推定γy)S py / D (実測γy)

S py / D (推定γy)

(a) 幾何平均 GM(1.0 に近いほど良好)

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

打撃 バイブロ

ハンマ

場所打ち杭 中掘り杭 鋼管ソイル

セメント杭

回転杭 全種類

幾何

標準

偏差

GS

D

ΔL y / D (実測γy)

ΔL y / D (推定γy)S py / D (実測γy)

S py / D (推定γy)

(b) 幾何標準偏差 GSD(0.0 に近いほど良好)

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

打撃 バイブロ

ハンマ

場所打ち杭 中掘り杭 鋼管ソイル

セメント杭

回転杭 全種類

説明

係数

R2

ΔL y / D (実測γy)

ΔL y / D (推定γy)

S py / D (実測γy)

S py / D (推定γy)

(c) 説明係数R2

図- 5.5.6 杭体変形量レベルΔL

(1.0 に近いほど良好)

y / D、杭先端変位レベルSpy / Dの推定精度の比較

Page 119: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 112 -

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

打撃 バイブロ

ハンマ

場所打ち杭 中掘り杭 鋼管ソイル

セメント杭

回転杭 全種類

幾何

平均

GM

提案式,実測γy現行式

提案式,推定γy

(a) 幾何平均 GM(1.0 に近いほど良好)

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

打撃 バイブロ

ハンマ

場所打ち杭 中掘り杭 鋼管ソイル

セメント杭

回転杭 全種類

幾何

標準

偏差

GS

D

提案式,実測γy

現行式提案式,推定γy

(b) 幾何標準偏差 GSD(0.0 に近いほど良好)

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

打撃 バイブロ

ハンマ

場所打ち杭 中掘り杭 鋼管ソイル

セメント杭

回転杭 全種類

説明

係数

R2 現行式

提案式,実測γy提案式,推定γy

(c) 説明係数R2

図- 5.5.7 杭頭変位レベルS

(1.0 に近いほど良好)

oy / Dの推定精度の比較

Page 120: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 113 -

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

0% 1% 2% 3% 4% 5% 6%推定S oy / D

実測

Soy

/ D

GM (提案式) = 0.94

GM (現行式) = 0.84

△ ●現行式 提案式

R 2 0.76 0.92GM 0.84 0.94GSD 0.26 0.12

推定式

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

0% 1% 2% 3% 4% 5% 6%推定S oy / D

実測

Soy

/ D

GM (提案式) = 0.98

GM (現行式) = 1.31

△ ●現行式 提案式

R 2 0.08 0.04GM 1.31 0.98GSD 0.70 0.83

推定式

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

0% 1% 2% 3% 4% 5% 6%推定S oy / D

実測

Soy

/ D

GM (現行式) = 1.10

GM (提案式) = 0.91

△ ●現行式 提案式

R 2 0.73 0.71GM 1.10 0.91GSD 0.39 0.31

推定式

(a) 打撃 (b) バイブロハンマ (c) 場所打ち杭

0%

3%

6%

9%

12%

15%

0% 3% 6% 9% 12% 15%推定S oy / D

実測

Soy

/ D

GM (提案式) = 0.95

GM (現行式) = 1.15

△ ●現行式 提案式

R 2 0.53 0.68GM 1.15 0.95GSD 0.37 0.33

推定式

0%

2%

4%

6%

8%

10%

0% 2% 4% 6% 8% 10%推定S oy / D

実測

Soy

/ D

GM (提案式) = 0.92

GM (現行式) = 1.20

△ ●現行式 提案式

R 2 0.55 0.84GM 1.20 0.92GSD 0.37 0.34

推定式

0%

3%

6%

9%

12%

15%

0% 3% 6% 9% 12% 15%推定S oy / D

実測

Soy

/ D

GM (提案式) = 0.86

GM (現行式) = 1.37

△ ●現行式 提案式

R 2 0.64 0.56GM 1.37 0.86GSD 0.40 0.40

推定式

(d) 中掘り杭 (e) 鋼管ソイルセメント杭 (f) 回転杭

0%

3%

6%

9%

12%

15%

0% 3% 6% 9% 12% 15%推定S oy / D

実測

Soy

/ D

GM (提案式) = 0.88

GM (現行式) = 1.14

△ ●現行式 提案式

R 2 0.71 0.78GM 1.14 0.88GSD 0.54 0.61

推定式

(g) 全種類

図- 5.5.8 Soy / Dの実測値・推定値関係 (現行式&提案式、提案式はγy推定値)

Page 121: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 114 -

最後に、図- 5.5.9 には、Kvの実測値と提案式においてγy

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.30

0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30x : 推定 K v (GN/m) (提案式, 推定γy )

y : 実

測 K

v (G

N/m

)

GM = 1.07

GM - SD '(-)= 0.94

R 2 = 0.83 (R < 0)GSD = 0.12

0.0

0.4

0.8

1.2

1.6

2.0

0.0 0.4 0.8 1.2 1.6 2.0x : 推定 K v (GN/m) (提案式, 推定γy )

y : 実

測 K

v (G

N/m

)

GM = 0.99

GM - SD '(-)= 0.58

R 2 = 0.20GSD = 0.53

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0x : 推定 K v (GN/m) (提案式, 推定γy )

y : 実

測 K

v (G

N/m

)

GM = 1.10

GM - SD' (-)= 0.77

R 2 = 0.70GSD = 0.36

の推定値を用いた場合の推定値と

の関係を示しておく。なお、提案式は、推定比の平均(幾何平均)が 1 となるように定めて

いるため、実測値を下回るものもある。冒頭で述べたように、今後の設計法は信頼性を考慮

したものとなるため、杭頭変位の推定値についても何らかの形で信頼性を考慮する必要があ

ろう。杭軸方向バネ定数の推定値そのものに信頼性を考慮することになるかもしれない。仮

に、社会的合意の得られた非超過確率を 85%程度とするならば、正規分布における片側 85%

信頼区間の下限値は平均Mから標準偏差SDを減じた値となり、対数正規分布においては幾何

平均GMから上側標準偏差相当値SD’(-)を減じた値となる。参考までに、図中には片側 85%信

頼区間の下限値となるGM - SD’(-)も併記しておく。

(a) 打撃 (b) バイブロハンマ (c) 場所打ち杭

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6x : 推定 K v (GN/m) (提案式, 推定γy )

y : 実

測 K

v (G

N/m

)

GM = 1.06

GM - SD '(-)= 0.75

R 2 = 0.56GSD = 0.34

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2x : 推定 K v (GN/m) (提案式, 推定γy )

y : 実

測 K

v (G

N/m

)

GM = 1.09

GM - SD '(-)= 0.83

R 2 = 0.36GSD = 0.27

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2x : 推定 K v (GN/m) (提案式, 推定γy )

y : 実

測 K

v (G

N/m

)

GM = 1.17

GM - SD '(-)= 0.82

R 2 = 0.77GSD = 0.35

(d) 中掘り杭 (e) 鋼管ソイルセメント杭 (f) 回転杭

図- 5.5.9 Kvの実測値・推定値関係 (提案式、γy推定値)

Page 122: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 115 -

以上のことから、杭軸方向バネ定数Kv

( )vp

yy

vd

kDEAL

K

2

41

2

1

π

γγ

β++

=

の提案式は、次のようにまとめられる。

····························································· (5.5.2)

ここに、Kv

L :杭長 (m)

:杭軸方向バネ定数(kN/m)の推定値

E :杭体の弾性係数 (kN/m2

A :杭体の断面積 (m

) 2

D

)

p :杭先端面積 (m2

γ

)

yd :杭頭降伏時の先端伝達率の推定値(0≦γyd≦1)で、γyd = Xγ10d

γ

+Yによ

り求める。

10d :杭頭変位レベルSo / Dが 10%に達する時の先端伝達率の推定値で、γ10d =

Rpd / Rud

R

により求める。

pd 表- 5.5.2 :式(5.5.1)および に示す支持力推定式で求めた杭先端抵抗力の

推定値

Rud 表- 5.5.2 :式(5.5.1)および に示す支持力推定式で求めた極限支持力の推

定値

X, Y :極限時における先端伝達率から杭頭降伏時の先端伝達率を推定するため

の補正係数で、表- 5.5.4 に示す値とする。

kv :杭先端の地盤反力係数 (kN/m343

30301

=

..p

oklvD

Ek α)で、 により算定す

る。

αkl :kv 表- 5.5.5の推定における施工方法毎の補正係数で、 に示す値とする。

Eo :地盤の変形係数 (kN/m2)で、N値から推定する場合には、砂質土、砂礫、

岩盤ではEo = 3,900N、粘性土の場合、Eo

= 6,000Nにより算定する。

表- 5.5.4 γy

施工方法

を算定するための係数

X Y 打撃工法 0.573 0.086

バイブロハンマ工法 0.850 0.047 場所打ち杭工法 0.555 - 0.034 中掘り杭工法 0.732 0.097

鋼管ソイルセメント杭工法 0.917 - 0.076 回転杭工法 0.833 - 0.128

*:回転杭工法における X、Y の値は、支持力推定式の見直しに伴

って変更されるべきものである。

Page 123: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 116 -

表- 5.5.5 杭先端地盤反力係数の補正係数α

施工方法

kl

補正係数α

砂質土 kl

砂礫・岩 粘性土 打撃工法 2.59 2.02 1.26 バイブロハンマ工法 0.96 1.37 -* 場所打ち杭工法 0.67 0.71 0.60 中掘り杭工法 1.56 1.70 0.86 鋼管ソイルセメント杭工法 1.33 1.97 3.25 回転杭工法 1.08 1.18 -*

*:先端地盤が粘性土の場合のバイブロハンマ工法および回転杭の補正係数

αkl

の値は、載荷試験等によって求める。

杭頭降伏時の先端伝達率γyの推定式には、1) 実測γyと推定γ10

4.5

との相関関係を利用して

推定する方法、2) で示した式(4.5.5)(γy = 1 - 0.9 Rfd / 0.63 Rud

)による方法の 2 通り

が考えられる。ここでは、推定精度を尊重して前者 1) の方法を採用したが、後者 2) の方が

直接的で分かりやすいかもしれない。

なお、本研究において検討できなかったプレボーリング杭工法における杭軸方向バネ定数

Kvの値は、掘削径および杭周固化体の強度との関係に応じて同様に推定式を検討するか、載

荷試験結果から定めることになる。これらの検討を行わない場合には、杭頭降伏時の先端伝

達率γy

の値を大きめに、杭先端地盤反力係数の補正係数を小さめに仮定することによって、

安全側の設定となると考えられる。

以上、すべり係数(Cs - kv法)によらない杭軸方向バネ定数Kv

・ 提案式は、道路橋示方書に示される推定式よりも推定精度が高い。

の提案式と推定精度の改善

効果について述べてきた。道路橋示方書に示されるL / D法による推定式(現行式)に対し、

提案式は次の点で優位であることが確認できた。

・ 先端伝達率によって杭を支持する地盤の特性を考慮することができる。

・ 杭長杭径比 L / D の値による不都合がない。

・ 施工方法毎の偏りが是正された。

また、提案式では、杭頭変位を構成する杭体変形量と杭先端変位とがそれぞれ推定可能で

あることによって、推定精度向上のための優先課題は杭先端変位の推定法にあることが明確

となった点も意義がある。加えて、提案式における不確定パラメータは杭頭降伏時の先端伝

達率γyおよび杭先端地盤反力係数kvの 2 つであり、Cs - kv法と比較すると、これらパラメー

タが杭頭荷重・変位曲線に与える影響が直感的に分かりやすい点も実用的であると考えてい

る。

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- 117 -

なお、杭軸方向荷重・変位曲線が杭を支持する地盤の影響と無関係に決まることは考えら

れず、簡易な形で地盤の影響を考慮した推定式を利用していくことにより、今後の地盤工学

上の技術の発展も期待できる。

さらに、推定式に先端伝達率が含まれることにより、杭の軸方向支持機構に対する正しい

理解の下に設計が行われることと同時に、杭の断面力に対する照査においても、杭頭荷重が

そのまま杭先端まで伝達されるという軸力分布の仮定が合理化されることも期待される。

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- 118 -

5.6 地震時の杭軸方向バネ定数に関する考察

本研究では、静的な鉛直載荷試験結果を利用して杭軸方向荷重・変位曲線およびこれに基

づく杭軸方向バネ定数Kv

杭軸方向の正負交番荷重を受ける杭では、降伏点を上回る荷重が作用すると周面抵抗力が

顕著に低下し、一方向荷重の載荷試験で得られる極限支持力を期待できないとの研究成果も

ある

について議論してきた。しかし、杭基礎は死荷重に代表される静的

荷重を支持するだけではなく、地震動による杭軸方向・杭軸直角方向の動的繰返し荷重に対

する抵抗力を有し、地震の後にもこれが保持されることが重要である。

42)。一方で、急速載荷試験や衝撃載荷試験の基本原理12)

次に、杭軸直角方向については、鉄道の基準

にも示されるように、杭軸方向

の動的荷重に対する抵抗力は、その速度効果によって静的荷重に対する抵抗力より大きいと

も考えられる。よって、地震による杭軸方向の作用の影響については、現時点ではまだ明確

ではないと考えられる。 43

44EI

DkH=β

)では、杭の鉛直支持力および鉛直バネ定数

の算定において、地震時には杭の軸直角方向の挙動によって杭体と地盤との間に隙間が生じ

ることに配慮して、杭頭部から 1 / βの深さまでの範囲の周面地盤の抵抗を無視することと

されている。なお、βは杭の特性値と呼ばれる式(5.6.1)で定義される値であり、1 / βは

杭軸直角方向の抵抗に支配的な地盤中の杭長である。

(m-1

ここに、

) ············································································ (5.6.1)

Hk :水平方向地盤反力係数(kN/m3)、D:杭径(m)、EI:杭の曲げ剛性(kN/m2

また、最新の研究によると、プレボーリング杭工法により粘性土地盤中に設置された杭に、

レベル 2 地震時に想定される杭軸方向および杭軸直角方向の大変形を与えた後には、周面抵

抗力および杭軸直角方向の抵抗力は初期の値に対して低下し、6 ヶ月以上の放置期間の後に

もこれらがほとんど回復しない現象が確認されている

44), 45), 46

図- 5.6.1

)。この現象が大変形による杭周

固化体(掘削孔の泥水中にセメントミルクが注入されてこれが固化したもの)の損傷による

ものなのか、地盤抵抗の可逆性が喪失したことによるものなのかは現時点では断定できない

が、仮に後者であるとするならば、上述したような杭軸方向の抵抗力特性における設計上の

配慮の必要性が示唆される。

に概念的に示すように、杭軸直角方向の大変形によって周面抵抗力が低下すると、

同一の杭軸方向荷重に対する抵抗力を保持するために先端抵抗力すなわち先端伝達率γの値

が増加する。これまで繰返し述べてきたように、先端伝達率γの値が大きくなれば、杭体変

形量ΔLおよび杭先端変位Spはともに増加することに伴って杭頭変位Soは増加し、杭軸方向

バネ定数Kv

そこで、周面抵抗力の喪失に伴う支持機構の変化によって杭軸方向バネ定数K

は低下することになる。

vがどの程度

Page 126: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 119 -

変化しうるのか試算を行ってみる。ここでは、大変形後の杭周面抵抗力の喪失は、施工方法、

地盤条件を問わず全ての場合で生ずると仮定する。

oPγ

L

β1

( ) oPγ−1

oP

β1−L

oP

( )L

LPo

βγ1

1−

×−

( )L

Poβγ

11 ×−

+oPγ

図- 5.6.1 大変形後の周面抵抗力の喪失に伴う支持機構の変化(概念図)

具体の手順は次のとおりである。まず、杭頭降伏時における先端伝達率γy、軸剛性バネEA

/ L、杭先端径Dp、杭先端地盤反力係数kvの各施工方法の代表値を用い、提案式(5.2.13)か

ら初期の杭軸方向バネ定数Kvの値を求める。次に、杭長杭径比L / Dの各施工方法の代表値に

応じて杭頭部付近の周面抵抗力が喪失した後の先端伝達率γyを求め、大変形後の杭軸方向バ

ネ定数Kvの値を算定し、初期の値と比較する。ここで、周面抵抗力が喪失する区間の長さは

1/βとし、1/βの値は杭頭部から 5Dおよび 10Dの 2 通りの値を仮定する。また、各々の値の

分布の傾向から、初期のγyの値には平均Mを、EA / L、Dp、L / Dおよびkvの値には幾何平均

GMをそれぞれ用いる。なお、本来は、先端地盤反力係数kv

試算結果を

は変位の増加に伴って低下する非

線形性を示すと考えられるが、ここでは簡単のため線形(一定値)として扱う。

図- 5.6.2 に示す。大変形後に杭頭部付近の周面抵抗力が完全に喪失したと仮定

すると、多くの場合でKv

図- 5.6.3

は初期の値の 80%~90%に低下する。場所打ち杭工法では、これが

40%~60%程度となり、低下の割合が顕著である。

は、試算結果における杭軸方向バネ定数Kv

( )yEAL γ+1

2

の提案式(5.2.13)の分母中の杭体変

形量の成分 および先端変位の成分vp

y

kD 2

4

π

γの値の変化を示したものであり、杭頭

に作用する単位荷重当たりの杭体変形量および先端変位の大きさを表している。これより、

先端伝達率の増加に伴う杭軸方向バネ定数Kv

場所打ち杭工法は、軸剛性バネEA / Lが大きいために、杭体変形量は他に比べてかなり小

さい。しかし、杭長が短いために先端伝達率が大きく変化することに加え、杭先端地盤反力

の低下(杭頭変位の増加)は、主に先端変位の

増加によってもたらされることが分かる。先端伝達率の変化に対して先端変位が敏感である

ことは、提案式からも類推されることではある。

Page 127: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 120 -

係数kv

0%

20%

40%

60%

80%

100%

打撃

バイブ

ハンマ

場所打

ち杭

中掘

り杭

鋼管

ソイ

メント杭

回転杭

大変

位後

Kv /

初期

Kv

周面抵抗力10D無視

周面抵抗力5D無視

が小さいために、先端伝達率の変化に対して先端変位が敏感に増加し、杭頭変位が急

増すると解釈できる。

図- 5.6.2 周面抵抗力の喪失に伴うKv

0.E+00

1.E-06

2.E-06

3.E-06

4.E-06

5.E-06

打撃

バイブ

ハンマ

場所打

ち杭

中掘

り杭

鋼管

ソイ

メント杭

回転杭

杭体

変形

バネ

の逆

数 (m

/kN

)

初期

周面抵抗力10D無視

周面抵抗力5D無視

0.E+00

1.E-06

2.E-06

3.E-06

4.E-06

5.E-06

打撃

バイブ

ハンマ

場所打

ち杭

中掘

り杭

鋼管

ソイ

メント杭

回転杭

先端

変位

バネ

の逆

数 (m

/kN

)

初期

周面抵抗力10D無視

周面抵抗力5D無視

の変化の試算結果

(a) 杭体変形 (b) 先端変位

図- 5.6.3 単位杭頭荷重当たりの杭体変形量と先端変位の変化

以上のことから、支持機構の変化(先端伝達率の増加)に伴って杭軸方向バネ定数Kv

・ 場所打ち杭のように、先端地盤反力係数が小さい場合

は低

下する可能性が高く、この傾向は次の条件に該当する場合に顕著となると言える。

・ 杭長が短い場合

・ 杭頭付近の地盤が軟弱な場合(1 / βが大きい場合)

Page 128: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 121 -

なお、大変形に伴う周面抵抗力の低下の程度は、地盤や施工方法等の種々の条件によって

異なる可能性もあり、これを明らかにした上でここに示した試算結果は修正する必要がある。

さらに、地震時における水平方向地盤反力係数kHの値は常時の 2 倍としている一方で、本研

究ではこれまでの慣例に倣い、杭軸方向バネ定数Kv

の値は両者とも同じとしている。動的繰

返し荷重の作用下における杭軸方向荷重・変位特性についての研究事例は少なく、動的載荷

試験の活用等による研究が必要である。

Page 129: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 122 -

6. 杭軸方向荷重・変位曲線に及ぼす因子の整理

本研究で着目してきた杭軸方向荷重・変位曲線を表す各因子の関係は、図- 6.1 のような連

関図にまとめられる。

杭軸方向荷重・変位曲線の形状は、杭頭降伏時の杭頭変位レベルSoy / Dの値に概ね支配さ

れ、Soy / Dが大きいほど、極限支持力が発現されるまでに大きな杭頭変位を要する。杭頭降

伏時の杭頭変位レベルSoy / Dは、杭材料および寸法(軸剛性バネEA / L)に加え、施工方法や

地盤条件によって決定される杭頭降伏時の先端伝達率γyの影響を大きく受ける。さらに、杭

頭変位に占める杭先端変位の割合Spy / Soy

軸剛性バネの逆数 L / EA

杭頭降伏時の 先端変位比 Spy / Soy

変位指数 m

設計極限支持力 / 真の極限支持力 Pud ( = P10) / Pou

杭頭降伏変位レベル Soy / D

杭頭降伏時の 先端伝達率 γy

降伏支持力 / So/D=10%時の周面抵抗力

Poy / Pf10

R = 0.25 R = - 0.50

R = - 0.67

R = 0.41

R = 0.66

R = 0.53

R = - 0.84

正の相関関係

負の相関関係

線の太さは、相関係数 R の絶対値の大きさを表す

*:杭頭降伏変位の実測値 Soy(e)と提案式(γy:実測

値)により求めた推定値 Soy(c)との比 Soy(e) / Soy(c)

施工法,地盤条件

抵抗力の指標

荷重変位関係の

指標

抵抗特性

杭材料・寸法

杭頭降伏変位 の推定比*

R = 0.43 R = 0.58

が大きいと、杭軸方向荷重・変位曲線は非線形性

を帯びた形状となり、杭軸方向バネ定数により推定される杭頭降伏変位は、ばらつきが大き

くなる。

図-6.1 杭軸方向荷重・変位曲線の各因子の連関図

最後に、本研究で扱った載荷試験結果を対象とした場合の、施工方法毎の杭軸方向荷重・

変位曲線および主な指標値の傾向を表- 6.1 にまとめておく。

Page 130: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 123 -

表-6.1 施工方法毎の杭軸方向荷重・変位曲線および主な指標値の傾向

施工

方法 杭長杭径比

L / D

杭頭降伏 *ⅰ 変位レベル

Soy / D

極限 *ⅰ 支持力

先端伝達率γ

*ⅱ

y

杭頭変位の主体 と

降伏支持

力と周面

抵抗力

杭軸方向バネ定数の

推定精度

*ⅲ (杭頭降伏変位の

*ⅳ

推定比)

大変形

とKv

変化

打撃

工法

*ⅴ

26.9 ≦L / D ≦58.7

0.8% ≦Soy

≦3.1% / D P10

1.00 P ≒

GM(γ

ou

y

杭体変形が主体

となる。

) ≒0.23 Poy

1.07 P ≒

R

f10

2

GM : 1.10 ⇒ 0.96 : 0.73 ⇒ 0.49

GSD :0.39 ⇒ 0.37

75% ~86%

バイ

ブロ

ハン

マ工

有効データ

が少ない。25.8

≦L / D ≦61.6

(全データ)

1.3% ≦Soy

≦4.8% / D

(全データ)

P10

0.93 P ≒

GM(γ

ou

y

杭体変形が主体

となる場合と杭

先端変位が主体

となる場合とが

ある。

) ≒0.41

Poy

1.68 P ≒

R

f10

2

GM : 0.84 ⇒ 0.94 : 0.76 ⇒ 0.99

GSD :0.26 ⇒ 0.04

83% ~90%

場所

打ち

杭工

15.6 ≦L / D ≦30.8

0.6% ≦Soy

≦2.0% / D P10

0.99 P ≒

GM(γ

ou

y

杭先端変位が主

体となる。

) ≒0.17 Poy

1.08 P ≒

R

f10

2

GM : 1.31 ⇒ 0.94 : 0.08 ⇒ 0.27

GSD :0.70 ⇒ 0.54

41% ~58%

中掘

り杭

工法

42.1 ≦L / D ≦84.7

2.8% ≦Soy

≦7.9% / D P10

0.83 P ≒

GM(γ

ou

y

杭体変形が主体

となる。

) ≒0.50 Poy

2.33 P ≒

R

f10

2

GM : 1.15 ⇒ 1.02 : 0.53 ⇒ 0.82

GSD :0.37 ⇒ 0.22

92% ~96%

鋼管

ソイ

ルセ

メン

ト杭

工法

15.1 ≦L / D ≦38.3

1.4% ≦Soy

≦3.9% / D

P100.92 P

≒ ou

1.00 P~

GM(γ

ou

y

杭体変形が主体

となる場合と杭

先端変位が主体

となる場合とが

ある。

) ≒0.35

Poy

1.48 P ≒

R

f10

2

GM : 1.20 ⇒ 0.90 : 0.55 ⇒ 0.84

GSD :0.37 ⇒ 0.24

73% ~84%

回転

杭工

23.3 ≦L / D ≦73.0

2.0% ≦Soy

≦6.6% / D P10

0.78 P ≒

GM(γ

ou

y

杭体変形と杭先

端変位が半々と

な る も の が 多

い。

) ≒0.48

Poy

2.12 P ≒

R

f10

2

GM : 1.37 ⇒ 0.88 : 0.64 ⇒ 0.76

GSD :0.40 ⇒ 0.32

86% ~93%

プレ

ボー

リン

グ杭

工法

- *

2.9% ≦Soy

≦7.6% / D P10

0.88 P ≒

- ou

- - -

*ⅰ :LおよびSoy

*ⅱ :P

/Dの数値はGM±SD’(±)(全データの 68%が含まれる)の範囲(バイブロハンマ

工法を除く) 10 = 杭頭変位レベル 10%時の杭頭支持力、Pou

*ⅲ :P = Weibull分布関数で外挿される極限支持力

oy = 降伏支持力、P f10

*ⅳ :R = 杭頭変位レベル 10%時の周面抵抗力

2:説明係数、GM:幾何平均、GSD:幾何標準偏差。数値は、前者が現行式による結果、

後者がγy

*ⅴ :杭軸直角方向の大変形によって杭頭から 5Dないし 10Dの範囲で周面抵抗力が喪失したと仮

定した場合に低下すると考えられる杭軸方向バネ定数K

の実測値を用いた場合の結果。

v

*ⅵ :プレボーリング杭工法の値は、土木研究所資料第 2919 号

の初期値に対する比率。平均的な指

標値に対する試算結果。 5)

の整理結果

Page 131: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 124 -

ところで、現在、我が国には約 15 万の橋梁が供用されている。最も多く建設されたのはガ

ソリン税が創設(1955 地方道路税法、1957 揮発油税法)された直後の 1960 年代であり、単

純平均でも供用開始後約 30 年余りが経過したことになり、今後は本格的な維持管理もしくは

更新の時代に入ることが想定される47), 48

杭の軸方向支持力の推定精度は、施工方法のみならず地盤性状の地域差などにより、必ず

しも十分な水準にあるとは言えないが、杭軸方向荷重・変位特性の因子とその感度の大きさ

を把握しておくことは、維持管理の際の判断材料となるかもしれない。すなわち、周面抵抗

力が卓越する杭では、最大抵抗力を発揮するまでに要する変位は小さいものの、ある時点を

境に杭頭変位が急増する可能性のあることを示しており、このような杭については杭頭変位

が維持管理の目安として利用可能となるかもしれない。

)。

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- 125 -

7. 結論

本研究で得られた知見等をまとめると次のとおりである。

1) 道路橋杭基礎の杭軸方向の安定照査では、最大強度点および弾性限界点に対する安

全性の担保に加え、間接的に杭頭変位に対する安全性が担保されていると考えられ

る。

2) 杭軸方向の安定照査と杭軸直角方向の安定照査とを比較すると、意図されている安

全余裕度は同程度であると考えられる。

3) 杭軸方向荷重・変位曲線を Weibull 分布曲線で近似する場合、荷重の増加に伴い実測

される変位の間隔が広がっていくことを考慮した、重み付け最小二乗法により各パ

ラメータを求めた方が適切な近似曲線となる。

4) 現在の道路橋示方書および杭基礎設計便覧に規定される 7 工法の平均的な杭軸方向

荷重・変位曲線を対象とした場合、道路橋示方書に定義される極限支持力は、多く

の施工方法の最大抵抗力に対して過小評価となる。

5) 道路橋示方書に定義される極限支持力に対し、これを安全率で除した値を許容支持

力とすると、最大強度点および弾性限界点に対する安全余裕度はこれまでに意図さ

れてきたと考えられる水準と同程度となり、許容支持力に対応する杭頭変位も従来

と同程度となる。

6) 杭軸方向荷重・変位曲線の形状は、降伏変位の値に大きく支配され、この値は先端

抵抗力への依存度(先端伝達率)が大きいほど、また杭が細長い(軸剛性バネが小

さい)ほど大きい。その結果、施工方法によって降伏変位の大きさが異なることに

なる。

7) 杭軸方向荷重・変位曲線を Weibull 分布曲線で近似した時、杭頭変位に占める先端変

位の割合が大きな杭では変位指数 m の値が小さく、荷重・変位曲線はその初期から

非線形を帯びた形状となる。

8) 残留変位急増点を弾性限界としての降伏点とした場合、Weibull 分布曲線で定義され

る特性点は、多くの場合で降伏点にほぼ一致する。ただし、杭軸方向荷重・変位曲

線がその初期から強い非線形性を示す場合には両者は一致しないこともあるため、

この場合には降伏点の判定は慎重に行った方がよい。

9) 降伏支持力は、周面抵抗力のみでは決定されず、杭頭降伏時の先端抵抗力の影響を

受ける。

10) 杭軸方向の安定照査について考察した結果、杭軸方向の安定照査項目には、3 つの意

図(意図 1:破壊させない、意図 2:挙動の可逆性を確保、意図 3:供用性を確保)

が含まれていることを示した。

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- 126 -

11) 今後の杭軸方向の安定照査モデルとしては、5 通りの案が考えられ、照査の 3 つの意

図と照査項目とを 1 対 1 で対応させる場合に必要となる、意図 3 に対する照査項目

の案を挙げた。

12) 既往の載荷試験結果から定められた杭軸方向バネ定数の推定式として道路橋示方書

に解説され広く活用されている L / D 法は、杭を支持する地盤の強度特性が反映され

ず、短い杭に対しては矛盾を生じる等の課題がある。

13) 杭周面地盤のすべり係数を用いて杭軸方向バネ定数を推定する方法(Cs - kv

14) すべり係数に替えて先端伝達率をパラメータとした杭頭荷重・変位曲線および杭軸

方向バネ定数の一般式を導いた。これは、杭頭変位が杭体の弾性変形量と杭先端変

位の和であることを利用したものである。

法)は

理想的な手法であるが、推定精度を向上させるためには、汎用性のあるすべり係数

の推定方法の検討が課題である。

15) 変位法を前提とする安定計算においては、杭軸方向バネ定数は、変位の予測精度を

尊重して控えめの値とすることが望ましい。

16) 新しく提案した杭軸方向バネ定数の推定式は、現在の道路橋示方書に示される推定

式に対し、次の点で優位である。①良好な予測精度が確保される、②杭を支持する

地盤の強度特性が考慮される、③杭長杭径比に関係なく適用可能である、④施工方

法毎の偏りが是正される。

17) 杭体の弾性変形量は、杭頭降伏時の先端伝達率を推定値としても十分な精度で予測

できる一方、杭先端変位の予測精度は相対的に低い。よって、提案式は、杭体が充

実断面である場合、杭長が短い場合および杭先端地盤の緩みが大きい場合等、杭先

端変位が支配的となる条件では予測精度が低い。すなわち、杭先端変位の推定に用

いる杭先端地盤反力係数の予測精度を向上させることが今後の課題である。

18) 地震による杭軸直角方向の変形によって杭頭部付近の地盤による周面抵抗力が低下

すると仮定すると、杭軸方向バネ定数は低下する可能性がある。しかし、杭軸方向

の動的繰返し荷重に対する挙動と静的荷重に対するそれとの相違については、今後

の研究が必要である。

謝辞

関係各位ならびに新技術の開発に従事された団体からは、載荷試験データを快く提供して

いただきました。ここに深く謝意を表します。

Page 134: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 127 -

参考文献 1) (社) 日本道路協会:道路橋示方書・同解説 Ⅳ下部構造編, 2002. 3.

2) (社) 日本道路協会:道路橋下部構造設計指針 くい基礎の設計篇, 1964. 3.

3) 中谷 昌一, 白戸 真大, 井落 久貴, 野村 朋之:性能規定化における杭基礎の安定照査に

関する研究, 土木研究所資料, 第 4036 号, 2007. 1.

4) (社) 日本道路協会:道路橋示方書・同解説 Ⅴ耐震設計編, 2002. 3.

5) 岡原 美知夫, 高木 章次, 中谷 昌一, 木村 嘉富:単杭の支持力と柱状体基礎の設計法に

関する研究, 土木研究所資料, 第 2919 号, 1991. 1.

6) (社) 日本道路協会:道路橋示方書・同解説 Ⅳ下部構造編, 1980. 5.

7) 中谷 昌一, 石田 雅博, 白戸 真大, 井落 久貴:橋梁基礎形式の選定手法調査, 土木研究

所資料, 第 4037 号, 2007. 2.

8) 建設技術審査証明協議会:建設技術審査証明事業について,

http://www.jacicnet.jacic.or.jp/sinsa/jugyounaiyou.html, 2009. 1. 16.アクセス

9) (社) 日本道路協会:杭基礎設計便覧 平成 18 年度改訂版, 2007. 1.

10) (社) 日本道路協会:杭基礎施工便覧 平成 18 年度改訂版, 2007. 1.

11) 横幕 清, 白戸 真大, 中谷 昌一:杭の鉛直支持力推定式の作成方法の標準化とそれに基

づく推定式の見直し, 土木技術資料, Vol. 51, No. 5, 2009.5.(投稿中)

12) (社) 地盤工学会:地盤工学会基準 杭の鉛直載荷試験方法・同解説 -第一回改訂版-, 2002.

5.

13) 例えば、星谷 勝, 石井 清:構造物の信頼性設計法, 鹿島出版会, 1986.5.

14) 岡原 美知夫, 高木 章次, 中谷 昌一, 田口 敬二, 坂本 昭夫:載荷試験データによる杭

の水平抵抗特性に関する調査, 土木研究所資料, 第 2721 号, 1989. 1.

15) (社) 日本道路協会:杭基礎設計便覧, 1992. 10.

16) 例えば、中谷 昌一, 白戸 真大, 井落 久貴, 松井 謙二:水平力を受ける杭の弾性限界状

態に関する研究, 土木学会論文集 C, Vol. 64, No. 3, pp. 616-628, 2008. 8.

17) 今井 常雄:地盤の横方向 K 値の研究 (3)-設計に用いる K 値-, 土と基礎, Vol. 17, No. 11,

pp. 13-18, 1969. 11.

18) 今井 常雄:地盤の横方向 K 値の研究 (4)-LLF 測定結果によるクイの横方向挙動の計算

法-, 土と基礎, Vol. 18, No. 1, pp. 11-16, 1970. 1.

19) 宇都 一馬, 冬木 衛, 桜井 学:杭の載荷試験結果の整理方法, 基礎工, Vol. 10, No. 9,

1982. 9.

20) (社) 日本港湾協会:港湾の施設の技術上の基準・同解説, 2007. 7.

Page 135: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 128 -

21) 本間 政幸, 金道 繁紀, 高野 公作, 宇都 一馬, 冬木 衛, 佐藤 正人, 桜井 学:杭の載荷

試験管理の一手法, 杭の鉛直載荷試験方法および支持力判定法に関するシンポジウム発

表論文集, pp. 55-62, 1991. 9.

22) (財) 国土開発技術研究センター:一般土木工法・技術審査証明報告書 HYSC 杭(鋼管

ソイルセメント杭工法), 2000. 12.

23) (財) 国土技術研究センター:建設技術審査証明事業(一般土木工法)報告書 ガンテツ

パイル(鋼管ソイルセメント杭工法), 2006. 1.

24) (財) 土木研究センター:建設技術審査証明報告書 先端翼付き回転貫入鋼管杭 つばさ杭,

2003. 5.

25) (財) 国土技術研究センター:建設技術審査証明事業(一般土木工法)報告書 NS-エコ

パイル工法, 2004. 1.

26) (財) 土木研究センター:建設技術審査証明報告書 先端翼付き回転貫入鋼管杭 ジオウィ

ング・パイル, 2005. 9.

27) (社) 土質工学会:杭の鉛直載荷試験方法・同解説, 1993. 6.

28) 高野 昭信, 青木 一二三, 小粥 庸夫, 小笠原 政文:第 1 限界荷重、第 2 限界荷重の意

義と特徴について, 杭の鉛直載荷試験方法および支持力判定法に関するシンポジウム発

表論文集, pp. 47-54, 1991. 9.

29) 福井 次郎, 中野 正則, 木村 嘉富, 石田 雅博, 大越 盛幸, 阪野 彰:杭基礎の変形性能

に関する載荷試験, 土木研究所資料, 第 3553 号, 1998. 3.

30) 中野 正則, 木村 嘉富, 石澤 毅, 嶋津 晃臣, 小山 清一:鋼管杭基礎の模型水平載荷実

験(その 1)、第 32 回地盤工学研究発表講演集, pp. 1573-1574, 1997. 7.

31) 福井 次郎, 木村 嘉富, 吉田 映, 鈴木 規彦, 平田 尚:鋼管杭基礎の模型水平載荷実験

(その 2)、第 32 回地盤工学研究発表講演集, pp. 1575-1576, 1997. 7.

32) 中谷 昌一, 竹口 昌弘, 井落 久貴, 横幕 清:鋼管杭を用いた斜杭基礎の変形性能に関す

る載荷実験, 土木研究所資料, 第 4108 号, 2008. 3.

33) 駒田敬一, 山川朝生:くいの支持力と変形特性に関する調査, 土木研究所資料, 第 963

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34) 佐藤 悟:基礎杭の支持力機構 (1)~(5), 土木技術, Vol. 20, No. 1~5, 1965.

35) (社) 日本道路協会:道路橋示方書・同解説 Ⅰ共通編, 2002. 3.

36) (社) 日本道路協会:道路橋示方書・同解説 Ⅰ共通編, 1990. 2.

37) (社) 日本道路協会:道路橋示方書・同解説 Ⅲコンクリート編, 2002. 3.

38) (社) 土木学会:コンクリート標準示方書 規準編, 1999. 11.

39) プレストレストコンクリート技術協会, 日本コンクリート会議:コンクリート構造物 設

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- 129 -

計施工国際指針, 1970.

40) 国立天文台:理科年表 平成 20 年版, 2007.

41) 中谷 昌一, 白戸 真大, 河野 哲也:地盤調査結果に基づく地盤反力係数の評価方法に関

する研究, 土木研究所資料, 2009.(出版準備中)

42) 福井 次郎, 大塚 雅裕, 秋田 直樹, 野々村 佳哲, 喜多 直之:杭の地震時の鉛直支持力

特性に関する研究, 土木研究所資料, 第 4106 号, 2008. 3.

43) (財) 鉄道総合技術研究所:鉄道構造物等設計標準・同解説 基礎構造物・抗土圧構造物,

2000. 6.

44) 鳥畑 淳, 寺川洋平, 津田 和義, 村上 浩, 中谷 昌一, 竹口 昌弘, 昇 健次:杭基礎の大

変形挙動後における支持力特性に関する研究 (その 1), 第 63 回土木学会年次学術講演

会, III-116, 2008. 9.

45) 本間 裕介, 木谷 好伸, 吉原 雅美, 岡田 亮太, 中谷 昌一, 野々村 佳哲, 平田 尚:杭基

礎の大変形挙動後における支持力特性に関する研究 (その 2), 第 63 回土木学会年次学

術講演会, III-117, 2008. 9.

46) 長谷川 央, 西村 裕, 飯田 努, 中谷 昌一, 白戸 真大, 大久保 浩弥:杭基礎の大変形挙

動後における支持力特性に関する研究 (その 3), 第 63 回土木学会年次学術講演会,

III-118, 2008. 9.

47) 市川 明広, 武田 達也, 玉越 隆史:既設橋梁の架替実態調査結果, 土木技術資料, Vol. 50,

No. 5, 2008. 5.

48) 例えば、道路橋の予防保全に向けた有識者会議:道路橋の予防保全に向けた提言, 2008.

5.

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付属資料

1. 杭軸方向バネ定数の推定方法と応答値の推定精度 ·········································· 130

2. 杭頭荷重の大きさと先端伝達率に関する試算 ················································ 135

3. 周面抵抗力の降伏変位とすべり係数 ···························································· 140

4. 周面抵抗力の残存強度 ············································································· 146

5. 支持力推定式の作成方法の標準化と支持力推定式の見直し ······························ 148

参考文献 ······································································································ 185

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- 130 -

1. 杭軸方向バネ定数の推定方法と応答値の推定精度

(1) 目的

道路橋杭基礎の安定照査では、フーチングを剛体と仮定し、杭および地盤を杭軸方向、杭

軸直角方向および回転方向の杭頭集約線形バネに置き換えた計算モデルを用いる、いわゆる

変位法によって応答値が算定される。変位法における応答値の算定手順は次のとおりである。

手順- 1:作用荷重と線形バネとの関係からフーチング変位(すなわち杭頭変位)を求める。

手順- 2:手順- 1 で得られた杭頭変位と線形バネとの関係から杭頭反力を求める。

杭軸方向バネ定数Kv

ここで、n個の杭軸方向バネ定数K

は、手順- 1 では荷重から杭頭変位を求めるための、手順- 2 では杭頭

変位から杭頭反力を求めるための媒介となる。

vの実測値Kve(i)(i = 1, 2, ・・・, n)および任意の方法によ

るn個のKvの推定値Kvc(i)(i = 1, 2, ・・・, n)があるとする。Kve(i) およびKvc(i) を用いると、手順

- 1 ではn個ずつの杭頭変位Sの実測値Se(i) および推定値Sc(i) が、手順- 2 ではn個ずつの杭頭反

力Pの実測値Pe(i) および推定値Pc(i) が得られる。これらの実測値と推定値とに偏りがある場合、

Kvの推定値を改めてαKvc(i)

ここで、応答値の算定における手順- 1 ではK

として偏りを補正することを考える。個々の実測値と推定値との

比を推定比と呼ぶことにすると、推定比が正規分布に従う場合には、推定比の相加平均Mが

1.0 となるような補正係数αを与えれば、推定比のばらつき(標準偏差もしくは変動係数)も

最小となる。

v

方法- 1:手順- 1 で求める杭頭変位 S の相加平均を 1.0 とする方法

は分母側となり、手順- 2 では分子側となる

ため、以下に示すように最適な補正係数αは異なってくる。

杭頭変位Sの推定比の相加平均Mが 1.0 となるような補正係数αの値は、式(付 1.1)に示

すように、Kvの推定比Kve(i) / Kvc(i)

∑ =

=

=

011 .

)(

)(

)(

)(

)(

)(

ive

ivc

ivc

ive

ic

Ie

KK

nKPKP

MSS

α

の調和平均となる。

=∴

)(

)(

ive

ivc

KK

M

1α ···················· (付 1.1)

方法- 2:手順- 2 で求める杭頭反力 P の相加平均を 1.0 とする方法

杭頭反力Pの推定比の相加平均Mが 1.0 となるような補正係数αの値は、(式- 付 1.2)に示

すように、Kvの推定比Kve(i) / Kvc(i)

∑ =

=

=

011 .

)(

)(

)(

)(

)(

)(

ivc

ive

ivc

ive

ic

ie

KK

nKK

MPP

Mαα

の相加平均となる。

=∴

)(

)(

ivc

ive

KK

Mα ························ (付 1.2)

すなわち、正規分布に従うKvの実測値があった場合、杭頭変位の推定精度を尊重すれば実

測値の調和平均がKvの期待値として望ましく、杭頭反力の推定精度を尊重すれば実測値の相

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- 131 -

加平均が望ましいことになる。ここで、相加平均≧調和平均の関係が常に成立するため、上

記のことを逆に言えば、Kv

の調和平均は杭頭反力を過小評価、相加平均は杭頭変位を過小評

価することになる。そこで、簡単な試計算を行って 2 通りの方法の適否を確認する。

(2) 試算方法

杭軸方向バネ定数Kvの実測値が得られていると仮定し、Kvの実測値を用いて安定計算で得

られる応答値(フーチング変位および杭頭反力)を応答値の実測値とみなす。そして、方法-

1 および方法- 2 によるKv

の推定値を用いて安定計算で得られる応答値の推定値を求め、応答

値の実測値と推定値とを比較する。

(3) 計算条件

計算法は、道路橋示方書に解説される変位法とする。また、計算条件を図-付 1.1 に示す。

外径φ1,000mm の鋼管杭を、3 本×3 本 = 9 本の 2 軸対象に配置する。杭中心間隔は杭径

の 2.5 倍となるように配置し、全ての杭軸方向は鉛直である(直杭)とする。杭とフーチン

グの結合条件は、剛結合とする。

杭群(フーチング下面中心)に作用する荷重は、鉛直荷重Vo、水平荷重Ho = kh Voおよび

転倒モーメントMo = Ho

ここに、k

hとする。

hは、鉛直荷重Voに対する見かけの設計水平震度であり、kh

また、表層地盤の状況として、軟弱(N値 = 2)、良質(N値 = 10)の 2 通りを仮定する。

地盤の変形係数E

= 0.2 とする。また、

hは、水平荷重の合力のフーチング下面からの作用高さであり、h = 5m、10mの 2 通りを仮定

する。

oは、Eo

よって、計算ケースは

= 2800 Nで計算する。設計地盤面はフーチング下面とし、設計地盤

面からの杭の突出はないものとする。

表-付 1.1 に示す 4 通りとなる。

表-付 1.1 計算ケース

表層地盤の N 値 水平荷重作用高さ h 備考 CASE-1

N 値= 2 5 m 軟弱地盤、転倒モーメント小

CASE-2 10 m 軟弱地盤、転倒モーメント大 CASE-3

N 値= 10 5 m 良質地盤、転倒モーメント小

CASE-4 10 m 良質地盤、転倒モーメント大

Kvの実測値は 2 つ得られていると仮定し、それぞれ、Kv(1) = 100,000 kN/m、Kv(2) = 300,000

kN/mとすると、方法- 1 および方法- 2 による推定Kv 表-付 1.2は のとおりとなる。

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- 132 -

表-付 1.2 実測Kvと推定K

v

実測Kv 推定K(kN/m) v 備考 (kN/m) 方法- 1 Kv(1)

K = 100,000

v(2)

150,000 = 300,000

実測Kv

方法- 2 の調和平均

200,000 実測Kv

の相加平均

作用荷重 杭配置

)105( mormh

oo VH 2.0=

oVhHM oo = D5.2

D5.2

D5.2 D5.2

oH

表層地盤の

N 値=2 or 10

3×3 = 9 本

図-付 1.1 試計算で仮定する条件

(4) 計算結果

杭頭反力およびフーチング変位の推定比の平均値を図-付 1.2 に示す。図には、平均値±標

準偏差の範囲を併せて示す。

なお、軸力は最大値(押込み側の値)とし、曲げモーメントは杭軸方向の最大値としてい

る。

(5) 考察および結論

方法- 1 では、いずれのケースにおいても、フーチングの水平変位、鉛直変位および回転変

位ともに、推定比の平均は 1.0 もしくはわずかに 1.0 を下回る。すなわち、フーチング変位

を適正かつ安全側に推定できることになる。

一方、方法- 2 では、全てのケースおよび方向で推定比の平均値は 1.0 を上回り、危険側と

なることが確認できる。方法- 2 による鉛直変位の推定比は 1.33、水平変位では 1.1 程度、鉛

直変位は 1.15 程度である。安定計算における照査項目である水平変位を 10%程度小さく見積

もることになる。

次に、杭反力に着目すると、方法- 2 では、最大曲げモーメントも危険側に推定され、推定

比の平均値は 1.2~1.35 程度である。軸力は、方法- 1 および方法- 2 ともに大差なく、推定比

はいずれも 1.0 程度である。また、軸力のばらつき(標準偏差)は、最大曲げモーメントお

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- 133 -

よびフーチング変位のそれと比較して明らかに小さい(標準偏差の値そのものは実測値のば

らつきに依存するため、ここでは、相対差に意味がある)。方法- 1 によって与えた控えめの

Kvの推定値は、軸力を危険側に推定する傾向にあるはずであるが、その程度は無視しうるほ

ど小さい。なお、軸直角力は、Kv

以上のことより、変位法による安定計算に用いる時の杭軸方向バネ定数K

とは無関係に決まる。

v

の推定値の求め

方は、方法- 1、すなわち杭頭変位の推定精度を尊重した方法による方が望ましいと判断でき

る。

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- 134 -

CASE N値 h 結果

CASE-1

軟弱地盤

転倒モー

メント小

2 5m

CASE-2

軟弱地盤

転倒モー

メント大

2 10m

CASE-3

良質地盤

転倒モー

メント小

10 5m

CASE-4

良質地盤

転倒モー

メント大

10 10m

図-付 1.2 試算結果(杭反力・フーチング変位の推定比、数値は推定比の平均値)

0.951.000.981.01

1.001.13

1.181.33

1.07

0.981.00

1.36

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

軸力 軸直角力 最大曲げ 水平変位 鉛直変位 回転変位

推定

方法-1方法-2

0.951.000.971.01

1.000.98 1.18

1.331.10

0.971.00

1.24

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

軸力 軸直角力 最大曲げ 水平変位 鉛直変位 回転変位

推定

方法-1方法-2

0.941.000.961.01

1.00 0.961.14

1.331.08

0.981.00

1.19

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

軸力 軸直角力 最大曲げ 水平変位 鉛直変位 回転変位

推定

方法-1方法-2

0.941.000.961.02

1.00 0.941.14

1.33

1.100.97

1.00

1.19

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

軸力 軸直角力 最大曲げ 水平変位 鉛直変位 回転変位

推定

方法-1方法-2

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- 135 -

2. 杭頭荷重の大きさと先端伝達率に関する試算

本研究では、杭周面のすべり係数によらない杭頭荷重・変位関係の一般式を導き、杭軸方

向バネ定数の新しい推定式を提案した。ここで、提案式では、すべり係数の代わりに杭頭降

伏時の先端伝達率γyが必要であるが、γyの値は本来、杭の施工方法、杭の諸元(材料およ

び寸法)および杭を支持する地盤の性状によって決定されるものであり、これは載荷試験に

よらなければ得ることができない。一方で、これらは道路橋示方書に規定される支持力推定

式において評価できると考えられるため、本文中では、支持力推定式を用いて先端伝達率γ

を推定することとした。しかし、道路橋示方書に解説される支持力推定式は、設計上の極限

支持力Rud = P10(P10:杭頭変位レベルSo / D = 10%の時の杭頭荷重Po)を推定するためのも

のであるから、これを利用して得られる先端伝達率γは、P10に対応する値γ10であり、杭頭

降伏荷重Poyに対応する値γy

図-付 2.1

ではない。

は、本研究で使用したデータにおけるγyとγ10との関係(いずれも実測値)を

示したものである。γyの値は 0 から 1 の広範囲に分布しており、さらにγy =γ10とみなせる

ものもあれば、γy = 0.2γ10程度となるものもあり、同一のγ10に対するγy

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0杭頭10%変位時の先端伝達率 γ10

杭頭

降伏

時の

先端

伝達

率γ

y

打撃

バイブロハンマ

場所打ち杭

中掘り杭

鋼管ソイルセメント杭

回転杭

R =0.72

の比率は、大き

く異なっている。杭周面地盤と杭先端地盤の荷重変形特性によって差が生じているものと思

われる。

図-付 2.1 実測γy - 実測γ10

ここで、

関係

図-付 2.2 に示すような鉛直荷重・変位関係を仮定し、荷重(変位)の増加に伴っ

て先端伝達率γがどのように変化するのか試算を行ってみる。杭頭反力Poを周面抵抗力Pfと

先端抵抗力とに分離し、各抵抗力Po、PfおよびPpはWeibull分布関数により推定される極限抵

抗力Pouにより、杭頭変位Soは杭径Dによりそれぞれ正規化する。ここで、Pf / Pou - So / D関

係およびPp / Pou - So / D関係は、それぞれ弾完全塑性型であると仮定する。周面抵抗力Pfが

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- 136 -

降伏(上限値)に至る杭頭変位レベルSo(fy) / Dと、先端抵抗力Ppが降伏(上限値)に至る杭

頭変位レベルSo(py) / Dとは、必ずしも一致しないため、両者の和であるPo / Pou - So / D関係

は、2 つの折れ点を持つ直線となる。また、杭頭降伏の状態は、Weibull分布関数の定義によ

り、Poy ≒ 0.63 Pouで与えられる(図中の○印)。すると、荷重(変位)の増加に伴うγの変

化は、周面抵抗力Pfや先端抵抗力Ppが上限値に至るときの杭頭変位レベルSo(fy) / D、So(py) / D

や、極限状態(最大抵抗力が発揮される状態)における先端伝達率γu

0

20

40

60

80

100

0 5 10 15 20杭頭変位レベルS o/D (%)

Po/P

ou, P

f/Pou

, Pp/P

ou, γ

(%) P oy=

0.63P ou

S oy

杭頭P o

周面P f

先端P p

先端伝達率γ

S o(py )

S o(f y ):変化

γu:変化

によって変化すること

が予想される。

図-付 2.2 試算に用いる鉛直荷重・変位関係

そこで、試算では表-付 2.1 に示すようにこれらをパラメータとする。なお、ここでは先端

抵抗力Ppが降伏(上限値)に至る杭頭変位レベルSo(py) / Dの値は、12%に固定する。杭先端

変位が杭径の 10%に達した状態を極限状態とみなす基準が多いことから、この仮定に大きな

誤りはないと思われる。また、周面抵抗力が降伏に達する時の杭頭変位So(fy) / Dは、先端抵抗

力のそれSo(py) 3. / Dよりも小さいであろう。このことは付属資料- にも示している。

このような試算を行うと、先端伝達率の変化に関する定性的な理解が容易となる。

表-付 2.1 試算における組合せ

極限時の 先端伝達率γ

周面抵抗力が降伏に至る u 杭頭変位レベルSo(fy)

先端抵抗力が降伏に至る / D 杭頭変位レベルSo(py)

0%~100% / D

(5%刻み) 1%~9%(2%刻み) 12%(固定)

図-付 2.3 は、γu = 20%、50%、80%とSo(fy) / D = 1%、3%、7%の組合せを例に試算結果

を示したものである。これより、先端伝達率γ、杭頭降伏変位レベルSoy

・ γの値は、周面抵抗力が降伏に至った後に増加を始める。よって、荷重(変位)の

/ Dについて次の傾

向が確認できる。

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- 137 -

増加に伴う先端伝達率γの増加傾向は、周面抵抗力の降伏変位レベルSo(fy) / Dが小さ

いほど顕著である。一方、So(fy)

・ 極限状態の先端伝達率γ

/ D = 7%の場合ではほとんど変化しない。

uが大きいほど杭頭降伏時の先端伝達率γyは大きく、この

時Soy / Dは大きい(本文中 4.3.3 で示したとおりである)。またその程度は、So(fy) / D

が小さいほど顕著であり、So(fy)

・ 極限状態の先端伝達率γ

/ D = 7%の場合ではあまり変化しない。

uが小さいと、杭頭降伏は周面抵抗力の降伏とほぼ同じ時期

に生じる傾向にあり、γu

γu = 20% γu = 50% γu = 80%

S o(fy)/D= 1%

S o(fy)/D= 3%

S o(fy)/D= 7%

0

20

40

60

80

100

0 5 10 15 20杭頭変位レベルS o/D (%)

Po/P

ou, P

f/Pou

, Pp/P

ou, γ

(%)

P oy

杭頭P o

周面P f

先端P pγ

S oy/D =0.8%

0

20

40

60

80

100

0 5 10 15 20杭頭変位レベルS o/D (%)

Po/P

ou, P

f/Pou

, Pp/P

ou, γ

(%)

P oy

杭頭P o

周面P f

先端P pγ

S oy/D =3.2%0

20

40

60

80

100

0 5 10 15 20杭頭変位レベルS o/D (%)

Po/P

ou, P

f/Pou

, Pp/P

ou, γ

(%)

P oy

γ

S oy/D =6.5%

杭頭P o

周面P f

先端P p

0

20

40

60

80

100

0 5 10 15 20杭頭変位レベルS o/D (%)

Po/P

ou, P

f/Pou

, Pp/P

ou, γ

(%)

P oy

杭頭P o

周面P f

先端P p

γ

S oy/D =2.2%

0

20

40

60

80

100

0 5 10 15 20杭頭変位レベルS o/D (%)

Po/P

ou, P

f/Pou

, Pp/P

ou, γ

(%)

P oy

杭頭P o

周面P f

先端P p

γ

S oy/D =3.2%0

20

40

60

80

100

0 5 10 15 20杭頭変位レベルS o/D (%)

Po/P

ou, P

f/Pou

, Pp/P

ou, γ

(%)

P oy

γ

S oy/D =6.5%

杭頭P o

周面P f

先端P p

0

20

40

60

80

100

0 5 10 15 20杭頭変位レベルS o/D (%)

Po/P

ou, P

f/Pou

, Pp/P

ou, γ

(%)

P oy

杭頭P o

周面P f

先端P pγ

S oy/D =4.8%

0

20

40

60

80

100

0 5 10 15 20杭頭変位レベルS o/D (%)

Po/P

ou, P

f/Pou

, Pp/P

ou, γ

(%)

P oy

杭頭P o

周面P f

先端P p

γ

S oy/D =5.6%

0

20

40

60

80

100

0 5 10 15 20杭頭変位レベルS o/D (%)

Po/P

ou, P

f/Pou

, Pp/P

ou, γ

(%)

P oy

γ

S oy/D =6.6%

杭頭P o

周面P f

先端P p

が大きいと杭頭降伏は周面抵抗力の降伏よりも後に生ずる

傾向にある。

図-付 2.3 γu、So(fy) / Dの変化によるγ, Soy

図-付 2.4

/ Dの相違

は、表-付 2.1 に示した全ての組合せにおける極限状態の先端伝達率γuと杭頭変

位レベル 10%時の先端伝達率γ10、杭頭降伏時の先端伝達率γyとγ10の関係を示したもので

ある。γuとγ10とは、周面抵抗力が降伏に至る杭頭変位So(fy) / Dの値によらずほぼ一致する

ものの、γyとγ10とは多くの場合で一致しない。しかも、So(fy) / Dの値によってその程度が

異なり、So(fy) / Dが小さい場合には、γy /γ10の値が大きく変化することが分かる。

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- 138 -

したがって、提案式に必要なγyをγ10から推定するためには、So(fy)

図-付 2.5

/ Dの大きさ、すなわ

ち、周面抵抗力と先端抵抗力がどの時点で降伏に至るのかを正確に見積もる必要があること

になる。また、 は、試算結果における杭頭降伏変位レベルSoy / Dとγyとの関係を

示したものである。γyの大きさがSoy / Dに与える感度は、周面抵抗力が降伏に至る杭頭変位

レベルSo(fy) / Dが小さいほど高い。よって、So(fy) / Dの値が十分に大きいものあるいはγ10が

十分に大きいものでは、γy =γ10としておいてもSoy

0

20

40

60

80

100

0 20 40 60 80 100杭頭10%変位時の先端伝達率 γ10 (%)

極限

時の

先端

伝達

率 γ

u (%

)

▲ S o(f y ) / D = 9%△ S o(f y ) / D = 7%● S o(f y ) / D = 5%□ S o(f y ) / D = 3%■ S o(f y ) / D = 1%

/ Dの推定値にはあまり影響がないこと

になる。

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0 20 40 60 80 100杭頭10%変位時の先端伝達率 γ10 (%)

先端

伝達

率の

比 γ

y /

γ10

▲ S o(f y ) / D = 9%△ S o(f y ) / D = 7%● S o(f y ) / D = 5%□ S o(f y ) / D = 3%■ S o(f y ) / D = 1%

(a) γu - γ10関係 (b) γy /γ10 - γ10

図-付 2.4 γ

関係

u, γ10, γy

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 20 40 60 80 100杭頭降伏時の先端伝達率 γy (%)

杭頭

降伏

変位

レベ

ル S

oy /

D(%

)

▲ S o(f y ) / D = 9%△ S o(f y ) / D = 7%● S o(f y ) / D = 5%□ S o(f y ) / D = 3%■ S o(f y ) / D = 1%

の関係

図-付 2.5 Soy / D - γy関係

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- 139 -

参考までに、試算結果における先端伝達率γと杭頭変位レベルSo 図-付 2.6 / Dとの関係を

に示す。

γの値は、So / Dが小さい領域において大きく変化し、γuが大きくかつSo(fy) / Dが小さい

場合には、その傾向が顕著である。すなわち、常時およびレベル 1 地震時に想定される杭頭

変位レベルの範囲(So

0

20

40

60

80

100

0 4 8 12 16 20杭頭変位レベル So / D (%)

先端

伝達

率 γ

(%)

S o(f y ) / D = 1%

▲ γu = 90%△ γu = 70%● γu = 50%□ γu = 30%■ γu = 10%

/ D = 3.5%程度以下)における先端伝達率は、極限支持力推定式から

推定されるものとは異なる。これより、今後の信頼性向上の観点からは、極限支持力に対す

る安全係数の値は、周面抵抗力および先端抵抗力の各々に対し、荷重レベルに応じて設定す

ることが必要であると言えよう。

0

20

40

60

80

100

0 4 8 12 16 20杭頭変位レベル So / D (%)

先端

伝達

率 γ

(%)

S o(f y ) / D = 3%

▲ γu = 90%△ γu = 70%● γu = 50%□ γu = 30%■ γu = 10%

(a) So(fy) / D = 1% (b) So(fy)

0

20

40

60

80

100

0 4 8 12 16 20杭頭変位レベル So / D (%)

先端

伝達

率 γ

(%)

S o(f y ) / D = 5%

▲ γu = 90%△ γu = 70%● γu = 50%□ γu = 30%■ γu = 10%

/ D = 3%

0

20

40

60

80

100

0 4 8 12 16 20杭頭変位レベル So / D (%)

先端

伝達

率 γ

(%)

S o(f y ) / D = 7%

▲ γu = 90%△ γu = 70%● γu = 50%□ γu = 30%■ γu = 10%

(c) So(fy) / D = 5% (d) So(fy)

図-付 2.6 γ

/ D = 7%

u、So(fy) / Dの変化によるγ- So / D関係

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- 140 -

3. 周面抵抗力の降伏変位とすべり係数

周面抵抗力が降伏に至る変位の大きさをデータから調べてみた。図-付 3.1 は、杭 1 本の周

面抵抗力度と杭頭変位レベルSo / Dの関係を描いたものである。これからは、せいぜいSo

0

40

80

120

160

200

0% 5% 10% 15% 20%杭頭変位レベル S oy /D

周面

抵抗

力度

f (k

N/m

2 )

0

40

80

120

160

200

0% 5% 10% 15% 20%杭頭変位レベル S oy /D

周面

抵抗

力度

f (k

N/m

2 )

0

40

80

120

160

200

0% 5% 10% 15% 20%杭頭変位レベル S oy /D

周面

抵抗

力度

f (k

N/m

2 )

0

40

80

120

160

200

0% 5% 10% 15% 20%杭頭変位レベル S oy /D

周面

抵抗

力度

f (k

N/m

2 )

0

40

80

120

160

200

0% 5% 10% 15% 20%杭頭変位レベル S oy /D

周面

抵抗

力度

f (k

N/m

2 )

0

40

80

120

160

200

0% 5% 10% 15% 20%杭頭変位レベル S oy /D

周面

抵抗

力度

f (k

N/m

2 ) / D

= 5%もあれば周面抵抗力度はほぼ上限値に達しているようにも見える。

図-付 3.1 杭 1 本の周面抵抗力度f - 杭頭変位レベルSo

ここで、周面抵抗力が降伏に至る杭頭変位レベルS

/ D関係

o(fy) / Dの統計量を求めてみる。本来は、

荷重変位曲線における変位急増点を降伏点とすべきであるが、ここでは、周面抵抗力度fがそ

の最大値fmaxの 90%に達したときの杭頭変位レベルを周面抵抗力の降伏変位レベルSo(fy) / D

とみなすことにする。一般には、周面抵抗力・変位関係は弾完全塑性型にモデル化されるこ

とが多く、この場合には周面抵抗力はその最大値に達した時点で降伏することになる。しか

し、実際の周面抵抗力・変位関係は曲線であり、周面抵抗力がその最大値の 90%程度に達し

た時点で変位は急増を開始していると考えられることに加え、変位の増加に伴い周面抵抗力

が漸増する荷重変位曲線の場合には、周面抵抗力が最大値に達した時の変位を降伏変位とす

ると、非常に過大な値となる。なお、載荷荷重が十分でなく、周面抵抗力が上昇する途上で

試験を終了したデータは、整理の対象から除外する。除外の基準は、最大載荷荷重における

杭頭変位レベルの増分 1%あたりの周面抵抗力度の増分が 5.0(kN/m2)以上とする。ただし、

杭頭変位レベルSo / Dの最大値が 5%以上であるものは、常時、暴風時およびレベル 1 地震時

に想定される荷重(変位)以上の載荷がなされたものと考えてこれを採用する。これは、暴

風時およびレベル 1 地震時には杭頭降伏変位レベルSoy / Dに近い軸方向変位を許容しており、

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- 141 -

本文中で示したように杭頭降伏変位レベルSoy

図-付 3.2

/ Dの値はほとんどの場合で 5%未満であるこ

とによるものである。データ採否の判別例を に示す。

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0% 1% 2% 3% 4% 5% 6% 7% 8% 9%杭頭変位レベル S o/D

周面

摩擦

力度

f (k

N/m

2 )

◆不採用データの条件(条件1,2をともに満足する場合)

条件1:Δf e / Δ(S o / D ) ≧5 (kN/m2)条件2:S o / Dの最大値<5%◆採用データの条件上記以外の場合

ここに、

Δf e :最終荷重における摩擦力の増分

(kN/m2)ΔS o / D:最終荷重における変位の増分

条件1 = 26.4条件2 = 3.4%⇒不採用

条件1 = 1.9⇒採用

条件1 = 13.4条件2 = 7.0%⇒採用

条件1 = 4.3⇒採用

周面摩擦力の降伏変位レベルS o(f y ) / D⇒

周面摩擦力度f が最大値f maxの90%に達し

たときの杭頭変位レベル

図-付 3.2 データ採否の判別例

なお、周面抵抗力が降伏に至る杭頭変位So(fy)は土質毎に一定値で表され、杭径Dには依存

しないとする見解もある1)。そこで、周面抵抗力度f が降伏に至る杭頭変位レベルSo(fy) / Dの

度数分布および杭頭変位So(fy) 図-付 3.3の度数分布を (a) および図-付 3.3(b) に示す。図には、

分布の傾向が分かりやすいようにデータを平滑化した 5 区間移動平均線を併せて示している。

杭頭変位レベルSo(fy) / Dおよび杭頭変位So(fy)ともに、杭頭降伏変位レベルSoy / Dと同様に対数

正規分布に従うようである。So(fy) / Dの幾何平均GMは 3.1%であり、本文中で示した暴風時・

レベル 1 地震時の許容支持力における杭頭変位レベルの値に近い。So(fy) / Dの幾何標準偏差

GSDは0.91、So(fy)

2.

の幾何標準偏差GSDは0.83であり、いずれで整理しても有意な差はない。

幾何平均周りの標準偏差相当値の範囲すなわちGM±SD’(±) の範囲は、1%~8%である。付

属資料- における試算では、この範囲のSo(fy)

ただし、

/ Dの値を使用している。

図-付 3.3 は、杭 1 本分の周面抵抗力度fと杭頭変位So

図-付 3.4

との関係から求めたもので

あり、地盤と杭体との相対変位によって評価した結果ではない。さらに、杭 1 本を支持する

周面地盤は、一般に複数の層により構成される。そこで、各土層における地盤と杭体との相

対変位に着目してみる。 は、各土層における周面抵抗力度fと区間変位v(杭体変位)

との関係から降伏変位vyを求め、これを土質(砂質土、粘性土)および堆積年代(沖積、洪

積)別に集計した度数分布である。降伏変位を求める要領は上述した方法と同様である。幾

何平均GMは土質や堆積年代によってもあまり変わらず 11mm~17mm程度であり、ばらつき

は非常に大きい。

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- 142 -

0

5

10

15

20

25

30

0.2% 0.6% 2.0% 6.3% 20.0%周面抵抗力の降伏変位レベル S o(f y ) / D

度数

GM= 3.1%

GM + SD '(+)= 7.7%

GM - SD '(-)= 1.3%

5区間

移動平均

GSD = 0.91

0

5

10

15

20

25

30

35

2 6 20 63 200周面抵抗力の降伏変位 S o(f y ) (mm)

度数

GM= 24.0mm

GM + SD '(+)= 54.9mm

GM - SD '(-)= 10.5mm

5区間

移動平均

GSD = 0.83

(a) So(fy) / Dの度数分布(対数目盛) (b) So(fy)

図-付 3.3 杭 1 本の周面抵抗力が降伏に至る杭頭変位の度数分布(土質分類なし)

の度数分布(対数目盛)

0

1

2

3

4

5

6

7

1 3 12 43 148周面抵抗力の降伏変位 v y (mm)

度数 GM

= 13.2mm

GM + SD '(+)= 36.9mm

GM - SD '(-)= 4.7mm

5区間

移動平均

GSD = 1.03

0

5

10

15

20

25

1 3 12 43 148周面抵抗力の降伏変位 vy (mm)

度数

GM= 16.9mm

GM + SD '(+)= 47.5mm

GM - SD '(-)= 6.0mm

5区間

移動平均

GSD = 1.03

(a) 沖積砂質土(対数目盛) (b) 洪積砂質土(対数目盛)

0

2

4

6

8

10

12

14

1 3 12 43 148周面抵抗力の降伏変位 vy (mm)

度数

GM= 11.5mm

GM + SD '(+)= 32.1mm

GM - SD '(-)= 4.1mm

5区間

移動平均

GSD = 1.03

0

5

10

15

20

25

1 3 12 43 148周面摩擦力の降伏変位 v y (mm)

度数 GM

= 13.0mm

GM + SD '(+)= 38.3mmGM - SD '(-)

= 4.4mm

5区間

移動平均

GSD = 1.08

(c) 沖積粘性土(対数目盛) (d) 洪積粘性土(対数目盛)

図-付 3.4 周面抵抗力の降伏変位の度数分布(土質・堆積年代別)

Page 151: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 143 -

また、図-付 3.5 に示すように、周面抵抗力の降伏変位の大きさは N 値とも無関係のようで

ある。

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

0 10 20 30 40 50 60平均N値

周面

抵抗

力の

降伏

変位

vy(m

m)

0

50

100

150

200

250

300

350

0 20 40 60 80 100 120平均N値

周面

抵抗

力の

降伏

変位

vy(m

m)

(1) 沖積砂質土 (2) 洪積砂質土

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

0 2 4 6 8 10平均N値

周面

抵抗

力の

降伏

変位

vy(

mm

)

0

50

100

150

200

250

0 10 20 30 40 50 60平均N値

周面

抵抗

力の

降伏

変位

vy(

mm

)

(3) 沖積粘性土 (4) 洪積粘性土

図-付 3.5 周面抵抗力度の降伏変位と平均 N 値との関係

Page 152: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 144 -

参考までに、すべり係数Cs 図-付 3.6と平均N値との関係を および図-付 3.7に示しておく。

すべり係数Csは、本文中の 5.1.2 で述べたように、周面抵抗力度f・杭体と地盤との相対変位v

曲線上の降伏点における割線勾配である。ここでは、先に求めた周面抵抗力の降伏値(0.9

fmax)とこの時の変位(降伏変位)vyを用い、Cs = 0.9 fmax / vy

幾何標準偏差GSDの値は 0.9~1.8 であり、ばらつきは極めて大きい。さらに、説明係数R

により求めている。 2

の値はほぼ 0 であることから、すべり係数Cs

杭軸方向荷重・変位関係を推定する手法の一つに、杭を周面バネおよび先端バネに支持さ

れた弾性体にモデル化する方法(C

の値はN値とは無相関のように思われる。

s - kv

法)が提案されているが、これを実用可能なものと

するためには、周面バネを精度よくモデル化するための検討が必要である。

0

10

20

30

40

50

60

70

80

0 20 40 60 80 100 120平均N値

すべ

り係

数C

s (M

N/m

3 )

● 沖積○ 洪積

R 2 = 0.02GSD = 0.95

C s = 0.57 N(GM)

0

5

10

15

20

25

0 20 40 60 80 100 120平均N値

すべ

り係

数C

s (M

N/m

3 )

● 沖積○ 洪積

R 2 = 0.00GSD = 1.15

C s = 0.12 N(GM)

0

5

10

15

20

25

30

35

40

0 20 40 60 80 100 120平均N値

すべ

り係

数C

s (M

N/m

3 )

● 沖積○ 洪積 R 2 = 0.03

GSD = 0.87

C s = 0.24 N(GM)

(a) 打撃 (b) バイブロハンマ (c) 場所打ち杭

0

10

20

30

40

50

60

70

80

0 20 40 60 80 100 120平均N値

すべ

り係

数C

s (M

N/m

3 )

● 沖積○ 洪積

R 2 = 0.00GSD = 1.47

C s = 0.16 N(GM)

0

20

40

60

80

100

120

140

160

0 20 40 60 80 100 120平均N値

すべ

り係

数C

s (M

N/m

3 )

● 沖積○ 洪積

C s = 0.76 N(GM)

R 2 = 0.00GSD = 1.50

(d) 中掘り杭 (e) 鋼管ソイルセメント杭

図-付 3.6 すべり係数Csと平均N値との関係(砂質土)

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- 145 -

0

10

20

30

40

50

60

70

0 10 20 30 40 50 60平均N値

すべ

り係

数C

s (M

N/m

3 )

● 沖積○ 洪積

R 2 = 0.01GSD = 1.18

C s = 0.15 N(GM)

0

5

10

15

20

25

30

35

40

0 10 20 30 40 50 60平均N値

すべ

り係

数C

s (M

N/m

3 )

● 沖積○ 洪積

R 2 = 0.07GSD = 1.10

C s = 0.12 N(GM)

0

10

20

30

40

50

0 10 20 30 40 50 60平均N値

すべ

り係

数C

s (M

N/m

3 )

● 沖積○ 洪積 R 2 = 0.00

GSD = 1.12

C s = 0.14 N(GM)

(a) 打撃 (b) バイブロハンマ (c) 場所打ち杭

0

10

20

30

40

50

60

0 10 20 30 40 50 60平均N値

すべ

り係

数C

s (M

N/m

3 )

● 沖積○ 洪積

R 2 = 0.01GSD = 1.77

C s = 0.48 N(GM)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

0 10 20 30 40 50 60平均N値

すべ

り係

数C

s (M

N/m

3 )

● 沖積○ 洪積

C s = 0.14 N(GM)

R 2 = 0.11GSD = 0.98

(d) 中掘り杭 (e) 鋼管ソイルセメント杭

図-付 3.7 すべり係数Csと平均N値との関係(粘性土)

Page 154: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 146 -

4. 周面抵抗力の残存強度

一般に、杭の先端抵抗力や周面抵抗力は弾完全塑性型と仮定することが多く、付属資料- 2

における試算でも、弾完全塑性型と仮定した。しかし、個々の載荷試験結果の中には、多数

の区間に対して計測された周面抵抗力度・区間変位関係において、周面抵抗力度が最大値を

発揮した後、変位の増加とともにこれが減少するものが含まれることがある。

図-付 4.1 は、杭 1 本の周面抵抗力度の最大値fmaxに対する残存値fr (杭頭載荷荷重の最大

値における値)の比fr / fmax

0

20

40

60

80

100

120

140

160

>90% >70% >50% >30% >10%残存摩擦力比 f r / f max

度数

0%

20%

40%

60%

80%

100%

度数

累計

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

>90% >70% >50% >30% >10%残存摩擦力比 f r / f max

度数

0%

20%

40%

60%

80%

100%

度数

累計

(周面抵抗力の残存比)の度数分布を示したものである。対象と

したデータは、付属資料- 3 の検討において採用した全データである。

(a) プレボーリング杭工法を除く全種類 (b) 鋼管ソイルセメント杭

図-付 4.1 杭 1 本の周面抵抗力の残存比の度数分布

多くの場合(全データの 80%)で、周面抵抗力の残留比は 80%以上であることが分かる。

このことから、一般には短期的な周面抵抗力の低下を過度に心配する必要はないと言えよう。

なお、プレボーリング杭工法および鋼管ソイルセメント杭工法では、杭体もしくは鋼管と

地盤との間に杭周固化体部(掘削孔中の泥水もしくは地盤とセメントミルクとが混合し、こ

れが固化したもの)を有する。したがって、その周面抵抗力は、1) 地盤と杭周固化体との摩

擦抵抗力、2) 杭周固化体と杭体もしくは鋼管との摩擦抵抗力のうち、小さい方で決定される

はずである。図-付 4.1(b) に示すように、鋼管ソイルセメント杭工法では周面抵抗力の残存

比は全て 80%以上であり、一般的な杭工法と傾向は同じである。これは、鋼管ソイルセメン

ト杭工法の場合、周面抵抗力が上記 1) で決定されることが意図され、ソイルセメントの強度

および鋼管外面に設ける突起の仕様に制限が設けられている2)ことによるものと考えられる。

一方、プレボーリング杭工法のデータはここには含まれないが、最新の研究3), 4), 5)によると、

プレボーリング杭工法により設置された杭がレベル 2 地震動に想定される大変位を受けた後

には、周面抵抗力が低下することが確認されており、その原因として杭周固化体の杭体から

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- 147 -

の剥離の可能性が示唆されている。よって、プレボーリング杭工法により設置された杭の周

面抵抗力の残留強度比の分布は、その他の工法とは異なる傾向を示すかもしれない。

また、図-付 4.2 は、各土層における周面抵抗力度f と区間変位vとの関係から求めた周面

抵抗力の残存比fr / fmax

図-付 4.1

を求め、これを土質(砂質土、粘性土)および堆積年代(沖積、洪積)

別に集計した度数分布である。いずれの土質・堆積年代においても傾向は と同様で

ある。ただし、個々の土層に着目した場合、杭 1 本分に比べて残存比は小さめである。複数

の地層を合算した杭 1 本では相殺されているのであろう。

0

5

10

15

20

25

>90% >70% >50% >30% >10%残存周面抵抗力比 f r / fmax

度数

0%

20%

40%

60%

80%

100%

度数

累計

0

20

40

60

80

100

120

140

160

>90% >70% >50% >30% >10%残存周面抵抗力比 f r / f max

度数

0%

20%

40%

60%

80%

100%

度数

累計

(a) 沖積砂質土 (b) 洪積砂質土

0

10

20

30

40

50

60

>90% >70% >50% >30% >10%残存摩擦力比 fr / fmax

度数

0%

20%

40%

60%

80%

100%

度数

累計

0

20

40

60

80

100

120

>90% >70% >50% >30% >10%残存摩擦力比 fr / fmax

度数

0%

20%

40%

60%

80%

100%

度数

累計

(c) 沖積粘性土 (d) 洪積粘性土

図-付 4.2 周面抵抗力の残存比の度数分布(土質・堆積年代別)

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- 148 -

5. 支持力推定式の作成方法の標準化と支持力推定式の見直し

5.1 概要

道路橋示方書では、杭の鉛直支持に関する安定照査は、杭の有効重量等を無視すれば、

nRP ud≤ (P:杭頭での押込み荷重、Rud

杭の支持力推定式の整備における課題として、1) 推定式を作成する方法や推定式の妥当性

を検証する方法が統一されていない 2) 新技術の評価に必要なデータの質と量(どの地点での

載荷試験結果が必要か、どの程度のデータ数が必要か等)が必ずしも明確にされていない 3)

現在のように全国を対象とした推定式とするのはなく、各地域の地盤性状を反映した地域別

の推定式とした方が高い推定精度が得られるはずである等の指摘がある。

:極限支持力、n:安全率で、常時は 3、レベル 1

地震時は 2)を満足するように行われる。ここで、極限支持力の算定は、載荷試験結果から

一定の規則で判定された値または過去の載荷試験結果から導かれた支持力推定式によるもの

とされている。

現在、数多くのデータを用いて照査結果の確からしさを数値で示そうとする信頼性設計へ

の移行を基本方針として道路橋示方書の改定作業が進められている。信頼性設計を行うとい

う前提の下では、杭軸(鉛直)方向の安定照査に用いる許容支持力は、本文中(2.2 および

4.6)で示したように、最大強度(極限支持力)や弾性限界強度(降伏支持力)に対して社会

的合意の得られた一定の安全性余裕が確保されるように定められることになると考えられる。

ところで、よりよい道路橋を作るために、道路橋示方書の改定は今後も不断に行われると

考えられる。改定に当たって上記の手順で許容支持力を定めるためには、その時点での最新

情報が反映されたデータに対して支持力推定式の推定結果の偏りやばらつき具合を明らかに

する必要がある。また、支持力推定式の偏りやばらつきを小さくすることができれば、一定

の安全性余裕が確保されるための許容支持力はより合理的なものとすることができる。そこ

で、最新情報の含まれるデータに対し、推定結果の偏りやばらつきを低減するために支持力

推定式の見直しを行い、見直しの過程において、併せて支持力推定式の作成方法を極力標準

化することを試みる。

5.2 作成方法の標準化および推定式の見直し

(1) 推定式によって推定しようとするもの(荷重状態)

見直しの対象とする支持力推定式は、式(付 5.1)とし、道路橋示方書に定義される極限支

持力(杭頭変位が杭径の 10%に達する時の杭頭反力の実測値P10)を推定できるように、先

端抵抗力度qdおよび周面抵抗力度f i

( )∑ ⋅+⋅= iidud LfUAqR

を決定する。

···································································· (付 5.1)

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- 149 -

ここに、 Rud

q

:地盤から決まる極限支持力(kN)

d :杭先端の有効断面積あたりの先端抵抗力度(kN/m2

A :杭先端の有効断面積(= πD

p2 / 4)(m2

U :杭の有効周長(= πD)(m)

f i :周面抵抗力を期待する土層の周面抵抗力度(kN/m2

L

i

D

:周面抵抗力を期待する土層の層厚(m)

p 表-付 5.1 :杭先端の有効径(m)( 参照)

D :杭の有効径(m)(表-付 5.1 参照)

表-付 5.1 杭の有効径

施工方法 杭および杭先端の有効径

D、D打撃

p

D = Dpバイブロハンマ

= 杭体の直径

場所打ち杭 D = Dp

中掘り杭 =杭体の直径(設計径)

D = Dp

鋼管ソイルセメント杭

=杭体の直径 D = Dp

回転杭

=ソイルセメント

柱の直径(設計径) D = 杭体一般部の直径DD

n p = 杭先端部の直径D

p

なお、載荷試験は一般に荷重制御で行われるため、杭頭変位が杭径の 10%に達した時に載

荷荷重や変位が計測されたものは、偶然の場合を除けば基本的にはない。よって、杭頭変位

が杭径の 10%に達する時の杭頭反力の実測値P10

は、載荷試験で得られた軸方向荷重・変位

曲線を近似したWeibull分布曲線上の点とする。

(2) 対象データ・採用条件

ここでは、打撃工法、バイブロハンマ工法、場所打ち杭工法、中掘り杭工法および鋼管ソ

イルセメント杭工法を対象とする。なお、収集データの都合上、中掘り杭工法はセメントミ

ルク噴出撹拌方式のみを対象とする。また、場所打ち杭工法では杭径が深度方向に一定であ

るもの(いわゆるストレート杭)を対象とし、建築分野で使用される杭先端径が杭径に対し

て拡大されたもの(いわゆる拡底杭)を含まない。これらは、本文中で扱った杭軸方向荷重・

変位曲線の整理と同様である。

支持力推定式は、実測値に対する推定結果の偏りやばらつきが小さいほど優れたものであ

ると言える。また、推定結果の偏りやばらつきを評価する場合、実測値に対する検証数が多

いほど信頼性は高くなる。よって、できるだけ多くのデータに対して検証が行えるように配

慮した。

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- 150 -

ここでのデータの採用条件は、載荷荷重・変位、杭寸法および地盤条件等の基本情報が整

っているもののうち、Weibull分布曲線上のP10

表-付 5.2

(杭頭変位が杭径の 10%に達する時の杭頭反

力)を実測値とみなす観点において十分な載荷がなされたと考えることのできる条件として、

に示すいずれかの条件を満足するものとする。

条件-1 は、本文中(3.2)において杭軸方向荷重・変位曲線をWeibull分布曲線に近似する

場合に設けた条件である。降伏荷重Poy(= 杭頭荷重の特性値Pos)の 1.2 倍(極限荷重Pou

条件-2 は、稀にある杭頭変位の特性値S

の 76%)までの載荷荷重が付与された試験結果を近似したWeibull分布曲線は、その全領域を

信用できるものとして扱っている。

osが非常に大きな値となるデータが対象となる。例

えば、杭頭変位の特性値Sosが杭径の 10%以上となるデータは、杭径の 10%以上の変位まで

の実測値が得られている(すなわちP10の実測値が得られている)場合においても、条件-1 に

よって対象から除外されることになる。なお、P10の 0.76 倍以上としたのは、外挿の程度を

条件-1(Pomax≧0.76 Pou

結果として、条件-2 を満足するものは全て条件-1 を満足していた。条件-1 を満足せず、条

件-2 を満足するデータの数は 43 であり、全体の 10%程度である。

)と同等とするためである。

条件-3 は、載荷荷重が十分であるとは言えないが、推定値以上の実測値が確認されている

ものについては、これを尊重することを意図している。

表-付 5.2 データの採用条件(いずれかを満足するものを採用)

条件 内容

条件-1 杭頭における実測最大荷重Pomaxが、Weibull分布関数にあてはめた結果得られる降伏荷重

Poy≒0.63 Pouの 1.2 倍以上であるもの(Pomax≧1.2 Poy≒0.76 Pou

条件-2

)。 杭頭における実測最大荷重Pomaxが、杭頭変位が杭径の 10%に達した時の杭頭荷重P10の

76%以上であるもの(Pomax≧0.76 P10

条件-3

) 杭頭における実測最大荷重Pomaxが、見直し後の支持力推定式による極限支持力の推定値Poc

以上となるもの(Pomax≧Poc

採用データ数の一覧を表-付 5.3 に示す。

表-付 5.3 採用データ数一覧

施工方法 軸力分布 あり(A)

軸力分布 なし 合計(B) 比率

(A) / (B)

打撃工法 先端解放 33 95 128 26% 先端閉鎖 7 34 41 17%

バイブロハンマ工法 9 0 9 100% 場所打ち杭工法 50 39 89 56% 中掘り杭工法 101 28 129 78%

鋼管ソイルセメント杭工法 24 1 25 96% 合計 224 197 421 53%

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- 151 -

(3) 設計上の杭先端位置の見直し6

一般に、杭の支持力は、周面抵抗力と先端抵抗力との和で表され、前者は載荷試験で計測

された杭体の軸力(軸ひずみ×軸剛性

)

EA)の差分により、後者は杭頭反力と周面抵抗力との

差分により、それぞれ評価される。ここで、部材端部は局部応力を受けやすく杭体下端の軸

力を直接計測するのは困難であるため、何らかの方法によって外挿してこれを予測せざるを

得ない(図-付 5.1)。しかし、外挿の方法そのものや、杭体以外の根固め部等の軸剛性の評価

方法によって予測値は不確実なものとなる。

軸力 (実測)

軸力 (外挿)

鋼管

杭体

杭体 打撃

場所打ち杭 バイブロハンマ

中掘り杭 鋼管ソイル

セメント杭

根固め部 設計上の 杭先端

軸力 (実測)

軸力 (外挿)

軸力 (実測)

軸力 (外挿)

支持層 上端

図-付 5.1 杭体軸力の計測と外挿の例

よって、ここでは、支持層の上端位置を設計上の杭先端位置とみなすことにし(設計上の

杭先端位置より下方の周面抵抗力は先端抵抗力に含まれるものと考える)、これによって杭体

軸力の外挿の不確実性を極力排除することとした。このことは、昭和 39 年の基準に既に解説

されている7

また、最近の成果を含めた既往の研究成果

)が、その後顧みられなかった。 8), 9), 10), 11

N

)を参考に、先端抵抗力の推定に用いる

平均 値の評価範囲も杭体先端から杭径の 3 倍下方までの範囲に見直した(図-付 5.2)。

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- 152 -

周面抵抗力

先端抵抗力

現行 改定案

杭体 4D

1D

先端 N 値の 評価範囲

打撃

バイブロハンマ

右記以外

(直下)

周面抵抗力

先端抵抗力

杭体 支持層

上端

3D

杭工法

によらず

共通

杭工法

図-付 5.2 周面抵抗力の考慮範囲と先端 N 値の評価範囲

なお、表-付 5.4 に示すように、設計においては周面抵抗力を考慮する土層の範囲もこれに

合わせて変更する必要がある。

表-付 5.4 杭先端位置と周面抵抗力を考慮する土層の範囲

施工方法 設計上の杭先端位置* 周面抵抗力を考慮する土層の範囲 鋼管ソイルセメント杭工法以外 支持層上端 支持層上端より上方 鋼管ソイルセメント杭工法 根固め部の上端 根固め部の上端より上方

* 摩擦杭では、杭体下端から杭径分上方の位置を杭先端位置とした。

(4) 推定式の作成方法の標準化と見直し

先端抵抗力度q

6)

d

N

は、従来、杭先端の最大抵抗力度に着目して整理されていたが、(1) に示

した方針に基づき、杭頭反力が設計上の極限支持力に達した時の先端抵抗力度に着目し、こ

れと土質定数(N値の平均値 )との関係を評価する。なお、データ整理上、杭先端の支持

地盤の種別は、杭体先端から杭径の 3 倍下方までの範囲の支配的な(層厚で 3/4 以上を占め

る)地盤とする。

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- 153 -

3D

2D

0.5D

0.5D

砂質土

砂質土

粘性土

杭体

砂質土の割合 = 5/6 ≧ 3/4 ⇒ 先端地盤 = 砂質土

D

N 算定

範囲

図-付 5.3 支持地盤種別の決定例

評価に用いる N 値の平均値N は、図-付 5.4(a) に示すように、深度・N 値関係で囲まれる

部分の面積を区間長(3 D)で除した値とした。なお、図-付 5.4(b) に示す方法により着目区

間内の単純平均としても大差ない(図-付 5.5)。設計実務においては、単純平均としても十分

であろう。

-27

-26

-25

-24

-23

-22

-21

-2030 35 40 45 50

N値

深度

(m)

D = 1.0 m

L = 3D= 3.0 m

(42)

45

46

50

35

50

50

(50)

面積A

-27

-26

-25

-24

-23

-22

-21

-2030 35 40 45 50

N値

深度

(m)

D = 1.0 m

3D = 3.0 m

(42)

45

46

50

35

50

50

(50)

(a) 等価平均(面積から求める) (b) 単純平均

図-付 5.4 N 値の平均値N の計算方法

LA

N ∑= nN

N i∑=

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- 154 -

0

50

100

150

200

250

300

350

0 50 100 150 200 250 300 350N値の等価平均

N値

の単

純平

均(実

測値

のみ

)

R 2 = 0.99 M = 1.00SD = 0.09

0

50

100

150

200

250

300

350

0 50 100 150 200 250 300 350N値の等価平均

N値

の単

純平

均(線

形補

間値

を含

む)

R 2 = 0.99 M = 1.01SD = 0.08

図-付 5.5 N 値の平均値N の計算方法による結果の比較

また、周面抵抗力度f i

図-付 5.6

は、従来、最大周面抵抗力度に着目して整理されていたが、(1) に示

した方針に基づき、杭頭反力が設計上の極限支持力に達した時の周面抵抗力度に着目し、こ

れと土質定数との関係を評価する。着目する土層の周面抵抗力は、土層の上端および下端に

おいて計測された軸力の差分によって評価し、中間深度における軸力(ひずみ)の計測値は

無視する。また、着目区間において層厚で 70%以上が粘性土であるものを粘性土、層厚で 70%

以上が砂質土であるものは砂質土として扱い、層厚が 70%以上となるものがない区間は整理

の対象から除外する( 参照)。

sL

cL粘性土

砂質土

不採用

軸力分布

%70<LLc

%70/ ≥LLs

粘性土

L

L⇒不採用

⇒砂質土

: ひずみ(軸力)計測点

地盤種別の扱い

砂質土

図-付 5.6 周面抵抗力度を評価する際の地盤種別の扱い

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- 155 -

ここで、評価に用いる土質定数は、砂質土層においてはN値の平均値、粘性土層において

は粘着力C値の平均値とすることを基本とする。既往の研究12

さらに、抵抗力係数の作成方法には、従来、統一されたものがなかったが、ここでは、次

の要領で作成することとする。

)においても、粘性土に対しては、

標準貫入試験だけではなくより質の高い地盤調査を行うことによって基礎の建設コストが削

減できる可能性のあることが示されている。よって、支持力推定式においても、より質の高

い地盤調査の実施を促すことが望ましいと考えた。なお、やむを得ない場合に備え、粘性土

においてもN値からの推定式を求めることにした。ただし、道路橋示方書においても、N≦4

となるような軟弱な粘性土の場合、室内試験により粘着力を評価しなければならないことか

ら、粘性土におけるN値からの推定式は、洪積層を対象に求める。すなわち、沖積粘性土につ

いては安全側となるように意図したことになる。

1) 抵抗力度・土質定数関係は、2 次勾配を有しないバイリニアモデルとする。すなわち、

ある N 値を境界とし、N 値の増加に伴い強度が上昇する領域(領域 1)と N 値の増加

に関わらず強度が上昇しない領域(領域 2)があるとする。

2) 領域 1 における推定線の勾配は、領域 1 に含まれるデータの平均勾配とし、領域 2 に

おける推定線は、領域 2 に含まれるデータの平均強度線とする。

3) 「領域 1 における推定線」と「領域 2 における推定線」とが 2 つの境界線上で交わる

ように、境界線の位置を試行錯誤で決定する(境界線の位置が不適切であると、2 つの

領域における推定線が境界線上で交差しない。図-付 5.7 参照。)

ただし、杭体の軸力分布が測定されていないデータの杭頭反力を先端抵抗力と周面抵抗力

とに分離することはできないため、各々の抵抗力係数を算定することはできない。このため、

軸力分布の計測率(表-付 5.3 に示したとおりである)の低い施工方法の場合には、抵抗力度

と土質定数との関係を示す図中に未知の点が存在することになる。よって、この場合、推定

精度の検証において抵抗力係数を試行錯誤で変化させて最適な値を決定する必要がある。し

たがって、載荷試験においては軸力分布の計測を行った方が、載荷試験結果を支持力推定式

の作成に利用する場合の作業が楽になる。

また、以上の要領にしたがって抵抗力係数を適切に作成するためには、土質定数が幅広く

分布するだけの載荷試験数が付帯条件となる。

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- 156 -

N

f or

qd (

kN/m

2 )

領域2(強度一定)

平均強度

平均勾配

領域1(強度変化)

推定線は境界線上で交差

Nf

or q

d (kN

/m2 )

平均強度

平均勾配

推定線は境界線上で交差しない

領域2(強度一定)

領域1(強度変化)

N

f or

qd (

kN/m

2 )

平均強度

平均勾配

推定線は境界線上で交差しない

領域2(強度一定)

領域1(強度変化)

(a) 境界位置が適切 (b) 境界位置が右過ぎ (c) 境界位置が左過ぎ

図-付 5.7 バイリニア関係と仮定する場合の抵抗力係数決定法の例

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- 157 -

(5) 推定式の見直し結果

見直し後の先端抵抗力度q

6)

dおよび周面抵抗力度f i 表-付 5.5の推定式を、現行と対比して 、

表-付 5.6 および図-付 5.8~図-付 5.13 に示す。

表-付 5.5 先端抵抗力度qdの推定式 (kN/m2

施工法

先端地盤 現行 提案

打撃工法 (先端解放)

粘性土 60(Lb N/D)

( N ≦40, Lb

(20L

/D≦5)

b N/D+35) ( N ≦30, Lb/D≦5)*砂質土

1 (30Lb N/D+35) ( N ≦50, Lb/D≦5)*

砂礫・岩盤

1 (35Lb N/D+35) ( N ≦50, Lb/D≦5)*

打撃工法

1

(先端閉鎖)

粘性土 60(Lb N/D)

( N ≦40, Lb

200

/D≦5)

N ( N ≦30) 砂質土 300 N ( N ≦50)

砂礫・岩盤 300 N ( N ≦50)

バイブロハンマ 工法

粘性土 60(Lb N/D)

( N ≦40, Lb

/D≦5) 砂質土 (20Lb N/D+35) ( N ≦50, Lb/D≦5)*砂礫

2 (25Lb N/D+35) ( N ≦50, Lb/D≦5)*

場所打ち杭工法

2 粘性土 3q 115u N ( N ≦30) 砂質土 3,000* 1253 N ( N ≦30) 砂礫 5,000* 1354 N ( N ≦50)

中掘り杭工法 (セメントミルク 噴出撹拌方式)

粘性土 - 150 N ( N ≦40) 砂質土 150 N ( N ≦50) 200 N ( N ≦50) 砂礫 200 N ( N ≦50) 250 N ( N ≦50)

鋼管ソイル セメント杭工法

粘性土 - 150 N ( N ≦40) 砂質土 150 N ( N ≦50) 200 N ( N ≦50) 砂礫 200 N ( N ≦50) 250 N ( N ≦50)

N :先端抵抗力の算定に用いる平均 N 値 *1:改定案の適用範囲は、杭径 D≦1,500mm 程度とする。 Lb *2:改定案の適用範囲は、杭径 D≦800mm 程度とする。 :支持層への根入れ長さ D:杭径 *3:砂礫および砂層(30≦N ≦50) qu:一軸圧縮強度(kN/m2 *4:良質な砂礫層(N≧50 の層が 5m 以上) ) ( )内は、qd N算定上の またはLb

/Dの上限値

表-付 5.6 周面抵抗力度fiの推定式 (kN/m2

施工法

周面地盤 現行 提案

打撃工法 粘性土 C または 10N (≦150) C または 8N (≦75) 砂質土 2N (≦100) 10N (≦100)

バイブロハンマ工法 粘性土 C または 10N (≦150) C または 8N (≦50) 砂質土 2N (≦100) 2N (≦50)

場所打ち杭工法 粘性土 C または 10N (≦150) C または 8N (≦80) 砂質土 5N (≦200) 5N (≦80)

中掘り杭工法 粘性土 0.8C または 8N (≦100) C または 5N (≦50) 砂質土 2N (≦100) 4N (≦75)

鋼管ソイルセメント杭工法 粘性土 C または 10N (≦200) C または 10N (≦200) 砂質土 10N(≦200) 10N (≦350)

N:杭周面地盤の平均 N 値 C:粘性土の粘着力(kN/m2

Page 166: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 158 -

現行 提案

打撃工法(先端解放)

0

100

200

300

400

500

0 1 2 3 4 5 6 7

L b / D

qd

/ N (k

N/m

2 )

0

100

200

300

400

500

0 1 2 3 4 5 6 7

L b / D

qd

/ N (k

N/m

2 )

砂礫・岩盤

砂質土

粘性土

▲粘性土●砂質土

○砂礫・岩盤

軸力計測率26%

粘性土

60(Lb N/D) ( N ≦40, Lb

粘性土

/D≦5)

(20Lb N/D+35) ( N ≦30, Lb/D≦5)*砂質土

1 砂質土 (30Lb N/D+35) ( N ≦50, Lb/D≦5)*

砂礫・岩盤

1 砂礫・岩盤 (35Lb N/D+35) ( N ≦50, Lb/D≦5)*

打撃工法(先端閉鎖)

1

0

100

200

300

400

500

0 1 2 3 4 5 6 7

L b / D

qd

/ N (k

N/m

2 )

0

5

10

15

20

0 10 20 30 40 50 60 70

N

qd

(MN

/m2 )

砂質土砂礫岩盤

粘性土

▲粘性土●砂質土

○砂礫・岩盤

軸力計測率17%

粘性土

60(Lb N/D) ( N ≦40, Lb

粘性土

/D≦5)

200 N ( N ≦30) 砂質土 砂質土 300 N ( N ≦50)

砂礫・岩盤 砂礫・岩盤 300 N ( N ≦50)

N :先端抵抗力の算定に用いる平均 N 値 *1:改定案の適用範囲は、杭径 D≦1,500mm 程度とする。 Lb 提案欄の図中プロットは実測値 :支持層への根入れ長さ D:杭径

図-付 5.8 先端抵抗力度qdの推定式(kN/m2

) (打撃工法)

Page 167: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 159 -

現行 提案

バイブロハンマ工法

0

100

200

300

400

500

0 1 2 3 4 5 6 7

L b / D

qd

/ N (k

N/m

2 )

0

100

200

300

400

500

0 1 2 3 4 5 6 7

L b / D

qd

/ N (k

N/m

2 ) 砂礫

砂質土

▲粘性土●砂質土○砂礫

軸力計測率100%

粘性土

60(Lb N/D) ( N ≦40, Lb

粘性土

/D≦5)

砂質土 砂質土 (20Lb N/D+35) ( N ≦50, Lb/D≦5)*砂礫・岩盤

1 砂礫 (25Lb N/D+35) ( N ≦50, Lb/D≦5)*

場所打ち杭工法

1

0

3

6

9

12

15

0 10 20 30 40 50 60 70

N

qd

(MN

/m2 )

砂礫・岩盤

砂質土

粘性土

0

3

6

9

12

15

0 10 20 30 40 50 60 70

N

qd

(MN

/m2 )

砂礫

砂質土

粘性土

▲粘性土●砂質土○砂礫

軸力計測率56%

粘性土 3q 粘性土 u 115 N ( N ≦30) 砂質土 3,000* 砂質土 2 125 N ( N ≦30)

砂礫・岩盤 5,000* 砂礫 3 135 N ( N ≦50)

N :先端抵抗力の算定に用いる平均 N 値 *1:改定案の適用範囲は、杭径 D≦800mm 程度とする。 Lb *2:砂礫および砂層(30≦:支持層への根入れ長さ N ≦50) D:杭径 *3:良質な砂礫層(N≧50 の層が 5m 以上) qu:一軸圧縮強度(kN/m2 ) 提案欄の図中プロットは実測値(換算 N 値 70 以上のデータは、N = 70 上にプロット)

図-付 5.9 先端抵抗力度qdの推定式(kN/m2

) (バイブロハンマ工法、場所打ち杭工法)

Page 168: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 160 -

現行 提案

中掘り杭工法 0

5

10

15

20

25

0 10 20 30 40 50 60 70

N

qd

(MN

/m2 )

砂礫・岩盤

砂質土

粘性土

0

5

10

15

20

25

0 10 20 30 40 50 60 70

N

qd

(MN

/m2 )

砂礫

砂質土

粘性土

▲粘性土●砂質土○砂礫

軸力計測率78%

A 粘性土 -

A 粘性土 150 N ( N ≦40)

砂質土 150 N ( N ≦50) 砂質土 200 N ( N ≦50) 砂礫 200 N ( N ≦50) 砂礫 250 N ( N ≦50)

B 打撃工法(先端解放)の支持力度を適用 C 場所打ち杭工法の支持力度を適用

鋼管ソイルセメント杭工法

0

5

10

15

20

25

0 10 20 30 40 50 60 70

N

qd

(MN

/m2 )

砂礫・岩盤

砂質土

粘性土

0

5

10

15

20

25

0 10 20 30 40 50 60 70

N

qd

(MN

/m2 )

砂礫

砂質土

粘性土

▲粘性土●砂質土○砂礫

軸力計測率96%

粘性土 - 粘性土 150 N ( N ≦40) 砂質土 150 N ( N ≦50) 砂質土 200 N ( N ≦50) 砂礫 200 N ( N ≦50) 砂礫 250 N ( N ≦50)

N :先端抵抗力の算定に用いる平均 N 値 B:最終打撃方式 A:セメントミルク噴出撹拌方式 C:コンクリート打設方式 提案欄の図中プロットは実測値(換算 N 値 70 以上のデータは、N = 70 上にプロット)

図-付 5.10 先端抵抗力度qdの推定式(kN/m2) (中掘り杭工法、鋼管ソイルセメント杭工法)

Page 169: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 161 -

現行 提案

打撃工法

粘性土

0

50

100

150

200

250

300

0 10 20 30 40 50 60

N or 0.1C (C: kN/m2)

f (k

N/m

2 )

0

50

100

150

200

250

300

0 50 100 150 200 250 300

C (kN/m2)

f (k

N/m

2 )

▲沖積層△洪積層

軸力計測率24%

0

50

100

150

200

250

300

0 10 20 30 40 50 60

N

f (k

N/m

2 )

▲沖積層△洪積層

軸力計測率24%

C または 10N (≦150) C または 8N (≦75)

砂質土

0

50

100

150

200

250

300

0 10 20 30 40 50 60

N

f (k

N/m

2 )

0

50

100

150

200

250

300

0 10 20 30 40 50 60

N

f (k

N/m

2 )

●沖積層○洪積層

軸力計測率24%

2N (≦100) 10N (≦100)

バイブロハンマ工法

粘性土

0

50

100

150

200

250

300

0 10 20 30 40 50 60

N or 0.1C (C: kN/m2)

f (k

N/m

2 )

0

50

100

150

200

250

300

0 50 100 150 200 250 300

C (kN/m2)

f (k

N/m

2 )

▲沖積層△洪積層

軸力計測率100%

0

50

100

150

200

250

300

0 10 20 30 40 50 60

N

f (k

N/m

2 )

▲沖積層△洪積層

軸力計測率100%

C または 10N (≦150) C または 8N (≦50)

砂質土

0

50

100

150

200

250

300

0 10 20 30 40 50 60

N

f (k

N/m

2 )

0

50

100

150

200

250

300

0 10 20 30 40 50 60

N

f (k

N/m

2 )

●沖積層○洪積層

軸力計測率100%

2N (≦100) 2N (≦50)

*:提案欄の図中プロットは実測値(換算 N 値 60 以上のデータは、N = 60 にプロット)

図-付 5.11 周面抵抗力度f iの推定式(kN/m2) (打撃工法、バイブロハンマ工法)

Page 170: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 162 -

現行 提案

場所打ち杭工法

粘性土

0

50

100

150

200

250

300

0 10 20 30 40 50 60

N or 0.1C (C: kN/m2)

f (k

N/m

2 )

0

50

100

150

200

250

300

0 50 100 150 200 250 300

C (kN/m2)

f (k

N/m

2 )

▲沖積層△洪積層

軸力計測率56%

0

50

100

150

200

250

300

0 10 20 30 40 50 60

N

f (k

N/m

2 )

▲沖積層△洪積層

軸力計測率56%

C または 10N (≦150) C または 8N (≦80)

砂質土

0

50

100

150

200

250

300

0 10 20 30 40 50 60

N

f (k

N/m

2 )

0

50

100

150

200

250

300

0 10 20 30 40 50 60

N

f (k

N/m

2 )

●沖積層○洪積層

軸力計測率56%

5N (≦200) 5N (≦80)

中掘り杭工法

粘性土

0

50

100

150

200

250

300

0 10 20 30 40 50 60

N or 0.1C (C: kN/m2)

f (k

N/m

2 )

0

50

100

150

200

250

300

0 50 100 150 200 250 300

C (kN/m2)

f (k

N/m

2 )

▲沖積層△洪積層

軸力計測率78%

0

50

100

150

200

250

300

0 10 20 30 40 50 60

N

f (k

N/m

2 )

▲沖積層△洪積層

軸力計測率78%

0.8C または 8N (≦100) C または 5N (≦50)

砂質土

0

100

200

300

400

0 10 20 30 40 50 60

N

f (k

N/m

2 )

0

100

200

300

400

0 10 20 30 40 50 60

N

f (k

N/m

2 )

●沖積層○洪積層

軸力計測率78%

2N (≦100) 4N (≦75)

*:提案欄の図中プロットは実測値(換算 N 値 60 以上のデータは、N = 60 にプロット)

図-付 5.12 周面抵抗力度f iの推定式(kN/m2) (場所打ち杭工法、中掘り杭工法)

Page 171: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 163 -

現行 提案

鋼管ソイルセメント杭工法

粘性土

0

50

100

150

200

250

300

0 10 20 30 40 50 60

N or 0.1C (C: kN/m2)

f (k

N/m

2 )

0

50

100

150

200

250

300

0 50 100 150 200 250 300

C (kN/m2)

f (k

N/m

2 )

▲沖積層△洪積層

軸力計測率96%

0

50

100

150

200

250

300

0 10 20 30 40 50 60

N

f (k

N/m

2 )

▲沖積層△洪積層

軸力計測率96%

C または 10N (≦200) C または 10N (≦200)

砂質土

0

100

200

300

400

500

600

700

800

0 10 20 30 40 50 60

N

f (k

N/m

2 )

0

100

200

300

400

500

600

700

800

0 10 20 30 40 50 60

N

f (k

N/m

2 )

●沖積層○洪積層

軸力計測率96%

10N (≦200) 10N (≦350)

*:提案欄の図中プロットは実測値

図-付 5.13 周面抵抗力度f iの推定式(kN/m2) (鋼管ソイルセメント杭工法)

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- 164 -

5.3 推定精度の検証

支持力推定式の推定精度を検証する。検証は、表-付 5.7 に示す 3 通りのケースについて行

う。

表-付 5.7 支持力推定式の精度検証を行うケース

CASE-A 現行の支持力推定式により極限支持力を推定する。

CASE-B1 見直し後の支持力推定式により極限支持力を推定する(粘性土の周面抵抗力は、粘

着力 C 値から推定する)。

CASE-B2 見直し後の支持力推定式により極限支持力を推定する(粘性土の周面抵抗力は、N値から推定する)。

ここで、粘性土において粘着力C値が得られているデータは、層厚の比率で13%と少ない。

よって、粘着力 C 値が得られていないデータについては、式(付 5.2)および式(付 5.3)

を用いて N 値から C 値を推定する。

5≦Nの時 :C = qu

N < 5 の時 :C = 0.5 ( 40 + 5 N )

/ 2 = 12.5 N ··························································· (付 5.2) 1.15 ··························································································

ここに、C:粘着力(kN/m

(付 5.3) 2)、qu:一軸圧縮強度(kN/m2 図

-付 5.14

)である。これらの推定式は、

に示すように、既往の研究13)において文献14)を参考にして平均値を与えるように仮

定されたものである。

図-付 5.14 粘性土の一軸圧縮強度quとN値との関係(文献14

また、現行の支持力推定式には、先端地盤が粘性土である場合における中掘り杭工法およ

び鋼管ソイルセメント杭工法の先端抵抗力度q

)に加筆)

dの推定式は示されていない。ここでは、中掘

り杭工法および鋼管ソイルセメント杭工法ともに、場所打ち杭工法と同様にqd = 3 qu15)によ

り推定し、さらに一軸圧縮強度quは式(付 5.3)を用いてqu = 25 Nにより推定する。

平均値 : qu = 25 N

平均値 : qu = (40 + 5N)1.15

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- 165 -

qd = 3 quの関係は、過去の基準15)においてケーソン基礎の底面地盤の極限支持力推定式に

準じて規定されたものである。ケーソン基礎底面地盤の極限支持力度qd

qfcd NDNBNCq 2121 γγβα γ ++=

の推定式は、式(付

5.4)で与えられる。

······················································· (付 5.4)

ここに、 qd :基礎底面地盤の極限支持力度(kN/m2

C :基礎底面より下にある地盤の粘着力(kN/m

) 2

γ

1 :基礎底面より下にある地盤の単位重量(kN/m3

γ

2 :基礎底面より上にある地盤の単位重量(kN/m3

α :基礎底面の形状係数(円形の場合α = 1.3)

β :基礎底面の形状係数(円形の場合β = 0.6)

B :基礎幅(m)

Df

:基礎の有効根入れ深さ(m)

qc NNN ,, γ :支持力係数(せん断抵抗角φによって決定される)

支持力係数の値は、道路橋示方書に与えられた図から読み取ることができ、せん断抵抗角

φをφ= 0 と置くと、 cN = 5 程度である。また、この時、 γN = qN = 0 であるから、式(付 5.4)

における右辺の第 2 項および第 3 項は 0 となる。また、基礎底面の形状係数αの値は、円形

の場合にはα= 1.3 であるから、式(付 5.4)より、qd =1.3×C×5 = 6.5 C = 3.25 qu≒3 qu

次に、杭体表面にすべり材料等を施して周面抵抗力を意図的に低減させた区間の周面抵抗

力の推定値は、支持力推定式に関わらず実測値とする。

となることが導かれる。

また、摩擦杭(支持層に根入れされていない杭)においても、図-付 5.8~図-付 5.10 中に

破線で示した関係を用いて先端抵抗力を評価する。しかし、設計上は摩擦杭の先端抵抗力を

期待すべきではないと考えられる。この理由は次のとおりである。これまでの実績では、摩

擦杭は、杭先端抵抗力を設計上無視することによって、実質的に杭先端に荷重が伝達されな

い状態で使用されてきた。摩擦杭では、強度の低い地盤中に杭先端が設置されるため、杭先

端に荷重が伝達されれば、杭軸方向の沈下量が大きくなる恐れがあると考えられ、また長期

的な挙動も不明であるためである。

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- 166 -

図-付 5.15 は、極限支持力の推定比の平均 M、すなわち、極限支持力の実測値と支持力推

定式を用いて得られた極限支持力の推定値との比の平均 M の値を 3 通りのケースに対して施

工方法別に求めたものである。同様に、図-付 5.16 は、推定比の標準偏差 SD の値を 3 通り

のケースに対して施工方法別に求めたものである。また、実測値と推定値との関係、推定比

の度数分布、推定比と杭径との関係、推定比と先端地盤との関係、推定比と杭径杭長比との

関係を図-付 5.17~図-付 5.19 に示す。さらに、これらを施工方法別に求めたものを図-付

5.20~図-付 5.25 に示す。

偏りおよびばらつきの大きさの指標を平均Mおよび標準偏差SDで表したのは、図-付 5.17

に示した推定比の度数分布から、現行の支持力推定式を用いると推定比の分布形状は対数正

規分布のそれに近く、見直し後の支持力推定式を用いると正規分布の形状に近いように判断

されためである。

図-付 5.15 および図-付 5.16 を参照すると、以下のことが分かる。

・ 現行の支持力推定式を用いる(CASE-A)と、全般に推定結果はやや安全側に偏って

いる。

・ 見直し後の支持力推定式を用い、粘性土層における周面抵抗力を粘着力 C 値から推

定(CASE-B1)すれば、いずれの施工方法においても推定結果の偏りはほぼなくな

り、ばらつきも低減される。

・ 見直し後の支持力推定式を用い、粘性土層における周面抵抗力を N 値から推定する

(CASE-B2)と、推定結果はやや安全側に偏る。

・ 現行の支持力推定式を用いた場合(CASE-A)の推定結果の偏りおよびばらつきの程

度は、打撃工法において著しい。

・ 現行の支持力推定式を用いた場合(CASE-A)、バイブロハンマ工法および場所打ち

杭工法ではやや危険側に偏っている。

よって、ここで見直した支持力推定式を用いることにより、推定結果の偏りおよびばらつ

きが低減されるとともに、質の高い地盤調査の実施に対する動機付けも同時に得られること

になると考える。

参考までに、回転杭工法の精度検証結果を図-付 5.26 に示しておく。ただし、回転杭工法

においては、支持力推定式の見直しは行っていない。提案欄に示したのは、(3) に示した杭先

端条件の見直しを行った結果である。推定結果はやや安全側に偏ってはいるものの、ばらつ

きはあまり大きくない。

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- 167 -

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

打撃(開端)

打撃(閉端)

バイブロハンマ

場所打ち杭

中掘り杭

鋼管ソイルセメント杭

全種類

推定

比の

平均

値 M

CASE-A(現行) CASE-B2

(見直し後、N 値)

CASE-B1(見直し後、C 値)

図-付 5.15 推定比( = 実測値 / 推定値)の平均 M

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

打撃(開端)

打撃(閉端)

バイブロハンマ

場所打ち杭

中掘り杭

鋼管ソイルセメント杭

全種類

推定

比の

標準

偏差

SD

CASE-A(現行)

CASE-B2(見直し後、N 値)

CASE-B1(見直し後、C 値)

図-付 5.16 推定比( = 実測値 / 推定値)の標準偏差 SD

Page 176: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 168 -

現行 提案

実測値と推定値

0

10

20

30

40

50

60

0 10 20 30 40 50 60x : 計算値 (MN)

y : 実

測値

(MN

)

支持杭

摩擦杭

y=x

n = 421M = 1.17

MED = 1.04CV = 0.66

0

10

20

30

40

50

60

0 10 20 30 40 50 60x : 計算値 (MN)

y : 実

測値

(MN

)

支持杭

摩擦杭

y=x

n = 421M = 0.99

MED = 0.99SD = 0.34

C値より推定

0

10

20

30

40

50

60

0 10 20 30 40 50 60x : 計算値 (MN)

y : 実

測値

(MN

)

支持杭

摩擦杭

y=x

n = 421M = 1.11

MED = 1.05SD = 0.49

N値より推定

推定比の度数分布

0

10

20

30

40

50

60

70

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5推定比

度数

M = 1.17

0

10

20

30

40

50

60

70

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5推定比

度数

M = 0.99

C値より推定

0

10

20

30

40

50

60

70

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5推定比

度数

M = 1.11

N値より推定

図-付 5.17 推定精度確認結果 (全種類)

n :データの数

M :推定比の平均値

MED :推定比の中央値

CV :推定比の変動係数

Page 177: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 169 -

現行 提案

推定比の分布(杭径との関係)

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 500 1,000 1,500 2,000杭径 (mm)

推定

支持杭

摩擦杭

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 500 1,000 1,500 2,000杭径 (mm)

推定

支持杭

摩擦杭

C値より推定

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 500 1,000 1,500 2,000杭径 (mm)

推定

支持杭

摩擦杭

N値より推定

推定比の分布(先端地盤との関係)

0

1

2

3

4

5

6

7

8

先端地盤

推定

支持杭

摩擦杭

粘性土   砂質土   砂礫    岩盤

0

1

2

3

4

5

6

7

8

先端地盤

推定

支持杭

摩擦杭

粘性土   砂質土   砂礫    岩盤

C値より推定

0

1

2

3

4

5

6

7

8

先端地盤

推定

支持杭

摩擦杭

粘性土   砂質土   砂礫    岩盤

N値より推定

図-付 5.18 推定精度確認結果 (杭径、先端地盤との関係)

Page 178: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 170 -

現行 提案

推定比の分布(杭長杭径比との関係)

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 30 60 90 120 150杭長杭径比 L / D

推定

支持杭

摩擦杭

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 30 60 90 120 150杭長杭径比 L / D

推定

支持杭

摩擦杭

C値より推定

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 30 60 90 120 150杭長杭径比 L / D

推定

支持杭

摩擦杭

N値より推定

図-付 5.19 推定精度確認結果 (杭長杭径比との関係)

Page 179: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 171 -

現行 提案

C 値より推定 N 値より推定

実測値と推定値

0

10

20

30

40

50

0 10 20 30 40 50x : 計算値 (MN)

y : 実

測値

(MN

)

支持杭

摩擦杭

y=x

n = 128M = 1.19

MED = 0.94SD = 0.79

0

10

20

30

40

50

0 10 20 30 40 50x : 計算値 (MN)

y : 実

測値

(MN

)

支持杭

摩擦杭

y=x

n = 128M = 0.96

MED = 0.97SD = 0.37

0

10

20

30

40

50

0 10 20 30 40 50x : 計算値 (MN)

y : 実

測値

(MN

)

支持杭

摩擦杭

y=x

n = 128M = 1.14

MED = 0.97SD = 0.69

度数分布

0

5

10

15

20

25

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5推定比

度数

M = 1.19

0

5

10

15

20

25

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5推定比

度数

M = 0.96

0

5

10

15

20

25

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5推定比

度数

M = 1.14

杭径との関係

0

1

2

3

4

5

0 500 1,000 1,500 2,000杭径 (mm)

推定

支持杭

摩擦杭

0

1

2

3

4

5

0 500 1,000 1,500 2,000杭径 (mm)

推定

支持杭

摩擦杭

0

1

2

3

4

5

0 500 1,000 1,500 2,000杭径 (mm)

推定

支持杭

摩擦杭

先端地盤との関係

0

1

2

3

4

5

先端地盤

推定

支持杭

摩擦杭

粘性土   砂質土   砂礫    岩盤

砂岩

頁岩シルト岩

0

1

2

3

4

5

先端地盤

推定

支持杭

摩擦杭

粘性土   砂質土   砂礫    岩盤

砂岩頁岩

シルト岩

0

1

2

3

4

5

先端地盤

推定

支持杭

摩擦杭

粘性土   砂質土   砂礫    岩盤

砂岩

頁岩シルト岩

杭長杭径比との関係

0

1

2

3

4

5

0 30 60 90 120 150杭長杭径比 L / D

推定

支持杭

摩擦杭

0

1

2

3

4

5

0 30 60 90 120 150杭長杭径比 L / D

推定

支持杭

摩擦杭

0

1

2

3

4

5

0 30 60 90 120 150杭長杭径比 L / D

推定

支持杭

摩擦杭

図-付 5.20 施工法別の推定精度確認結果 打撃工法(先端解放)

Page 180: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 172 -

現行 提案

C 値より推定 N 値より推定

実測値と推定値

0

2

4

6

8

10

0 2 4 6 8 10x : 計算値 (MN)

y : 実

測値

(MN

)

支持杭

摩擦杭

y=x

n = 41M = 1.74

MED = 1.53SD = 1.11

0

2

4

6

8

10

0 2 4 6 8 10x : 計算値 (MN)

y : 実

測値

(MN

)

支持杭

摩擦杭

y=x

n = 41M = 1.02

MED = 1.09SD = 0.40

0

2

4

6

8

10

0 2 4 6 8 10x : 計算値 (MN)

y : 実

測値

(MN

)

支持杭

摩擦杭

y=x

n = 41M = 1.15

MED = 1.14SD = 0.49

度数分布

0

2

4

6

8

10

12

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3推定比

度数

M = 1.74

0

2

4

6

8

10

12

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3推定比

度数

M = 1.02

0

2

4

6

8

10

12

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3推定比

度数

M = 1.15

杭径との関係

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 200 400 600 800杭径 (mm)

推定

支持杭

摩擦杭

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 200 400 600 800杭径 (mm)

推定

支持杭

摩擦杭

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 200 400 600 800杭径 (mm)

推定

支持杭

摩擦杭

先端地盤との関係

0

1

2

3

4

5

6

7

8

先端地盤

推定

支持杭

摩擦杭

粘性土   砂質土   砂礫    岩盤

0

1

2

3

4

5

6

7

8

先端地盤

推定

支持杭

摩擦杭

粘性土   砂質土   砂礫    岩盤

0

1

2

3

4

5

6

7

8

先端地盤

推定

支持杭

摩擦杭

粘性土   砂質土   砂礫    岩盤

杭長杭径比との関係

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 30 60 90 120杭長杭径比 L / D

推定

支持杭

摩擦杭

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 30 60 90 120杭長杭径比 L / D

推定

支持杭

摩擦杭

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 30 60 90 120杭長杭径比 L / D

推定

支持杭

摩擦杭

図-付 5.21 施工法別の推定精度確認結果 打撃工法(先端閉鎖)

Page 181: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 173 -

現行 提案

C 値より推定 N 値より推定

実測値と推定値

0

3

6

9

12

15

0 3 6 9 12 15x : 計算値 (MN)

y : 実

測値

(MN

)

支持杭

摩擦杭

y=x

n = 9M = 0.82

MED = 0.75SD = 0.34

0

3

6

9

12

15

0 3 6 9 12 15x : 計算値 (MN)

y : 実

測値

(MN

)

支持杭

摩擦杭

y=x

n = 9M = 1.06

MED = 1.09SD = 0.37

0

3

6

9

12

15

0 3 6 9 12 15x : 計算値 (MN)

y : 実

測値

(MN

)

支持杭

摩擦杭

y=x

n = 9M = 1.23

MED = 1.23SD = 0.44

度数分布

0

1

2

3

0 0.5 1 1.5 2推定比

度数

M = 0.82

0

1

2

3

0 0.5 1 1.5 2推定比

度数

M = 1.06

0

1

2

3

0 0.5 1 1.5 2推定比

度数

M = 1.23

杭径との関係

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

0 500 1,000 1,500杭径 (mm)

推定

支持杭

摩擦杭

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

0 500 1,000 1,500杭径 (mm)

推定

支持杭

摩擦杭

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

0 500 1,000 1,500杭径 (mm)

推定

支持杭

摩擦杭

先端地盤との関係

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

先端地盤

推定

支持杭

摩擦杭

粘性土   砂質土   砂礫    岩盤

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

先端地盤

推定

支持杭

摩擦杭

粘性土   砂質土   砂礫    岩盤

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

先端地盤

推定

支持杭

摩擦杭

粘性土   砂質土   砂礫    岩盤

杭長杭径比との関係

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

0 20 40 60 80杭長杭径比 L / D

推定

支持杭

摩擦杭

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

0 20 40 60 80杭長杭径比 L / D

推定

支持杭

摩擦杭

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

0 20 40 60 80杭長杭径比 L / D

推定

支持杭

摩擦杭

図-付 5.22 施工法別の推定精度確認結果 バイブロハンマ工法

Page 182: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 174 -

現行 提案

C 値より推定 N 値より推定

実測値と推定値

0

10

20

30

40

0 10 20 30 40x : 計算値 (MN)

y : 実

測値

(MN

)

支持杭

摩擦杭

y=x

n = 89M = 0.93

MED = 0.91SD = 0.33

0

10

20

30

40

0 10 20 30 40x : 計算値 (MN)

y : 実

測値

(MN

)

支持杭

摩擦杭

y=x

n = 89M = 1.03

MED = 1.01SD = 0.29

0

10

20

30

40

0 10 20 30 40x : 計算値 (MN)

y : 実

測値

(MN

)

支持杭

摩擦杭

y=x

n = 89M = 1.13

MED = 1.07SD = 0.37

度数分布

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

0 0.5 1 1.5 2 2.5推定比

度数

M = 0.93

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

0 0.5 1 1.5 2 2.5推定比

度数

M = 1.03

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

0 0.5 1 1.5 2 2.5推定比

度数

M = 1.13

杭径との関係

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 500 1,000 1,500 2,000杭径 (mm)

推定

支持杭

摩擦杭

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 500 1,000 1,500 2,000杭径 (mm)

推定

支持杭

摩擦杭

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 500 1,000 1,500 2,000杭径 (mm)

推定

支持杭

摩擦杭

先端地盤との関係

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

先端地盤

推定

支持杭

摩擦杭

粘性土   砂質土   砂礫    岩盤

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

先端地盤

推定

支持杭

摩擦杭

粘性土   砂質土   砂礫    岩盤

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

先端地盤

推定

支持杭

摩擦杭

粘性土   砂質土   砂礫    岩盤

杭長杭径比との関係

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 20 40 60 80杭長杭径比 L / D

推定

支持杭

摩擦杭

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 20 40 60 80杭長杭径比 L / D

推定

支持杭

摩擦杭

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 20 40 60 80杭長杭径比 L / D

推定

支持杭

摩擦杭

図-付 5.23 施工法別の推定精度確認結果 場所打ち杭工法

Page 183: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 175 -

現行 提案

C 値より推定 N 値より推定

実測値と推定値

0

5

10

15

20

25

0 5 10 15 20 25x : 計算値 (MN)

y : 実

測値

(MN

)

支持杭

摩擦杭

y=x

n = 129M = 1.15

MED = 1.12SD = 0.41

0

5

10

15

20

25

0 5 10 15 20 25x : 計算値 (MN)

y : 実

測値

(MN

)

支持杭

摩擦杭

y=x

n = 129M = 0.97

MED = 0.96SD = 0.33

0

5

10

15

20

25

0 5 10 15 20 25x : 計算値 (MN)

y : 実

測値

(MN

)

支持杭

摩擦杭

y=x

n = 129M = 1.05

MED = 1.02SD = 0.33

度数分布

0

5

10

15

20

25

0 0.5 1 1.5 2 2.5推定比

度数

M = 1.15

0

5

10

15

20

25

0 0.5 1 1.5 2 2.5推定比

度数

M = 0.97

0

5

10

15

20

25

0 0.5 1 1.5 2 2.5推定比

度数

M = 1.05

杭径との関係

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 300 600 900 1,200杭径 (mm)

推定

支持杭

摩擦杭

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 300 600 900 1,200杭径 (mm)

推定

支持杭

摩擦杭

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 300 600 900 1,200杭径 (mm)

推定

支持杭

摩擦杭

先端地盤との関係

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

先端地盤

推定

支持杭

摩擦杭

粘性土   砂質土   砂礫    岩盤

凝灰角礫岩

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

先端地盤

推定

支持杭

摩擦杭

粘性土   砂質土   砂礫    岩盤

凝灰角礫岩

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

先端地盤

推定

支持杭

摩擦杭

粘性土   砂質土   砂礫    岩盤

凝灰角礫岩

杭長杭径比との関係

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 30 60 90 120杭長杭径比 L / D

推定

支持杭

摩擦杭

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 30 60 90 120杭長杭径比 L / D

推定

支持杭

摩擦杭

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 30 60 90 120杭長杭径比 L / D

推定

支持杭

摩擦杭

図-付 5.24 施工法別の推定精度確認結果 中掘り杭工法(セメントミルク噴出撹拌方式)

Page 184: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 176 -

現行 提案

C 値より推定 N 値より推定

実測値と推定値

0

10

20

30

40

0 10 20 30 40x : 計算値 (MN)

y : 実

測値

(MN

)

支持杭

摩擦杭

y=x

n = 25M = 1.17

MED = 1.14SD = 0.29

0

10

20

30

40

0 10 20 30 40x : 計算値 (MN)

y : 実

測値

(MN

)

支持杭

摩擦杭

y=x

n = 25M = 1.00

MED = 0.91SD = 0.30

0

10

20

30

40

0 10 20 30 40x : 計算値 (MN)

y : 実

測値

(MN

)

支持杭

摩擦杭

y=x

n = 25M = 1.05

MED = 0.99SD = 0.26

度数分布

0

2

4

6

8

10

12

0 0.5 1 1.5 2 2.5推定比

度数

M = 1.17

0

2

4

6

8

10

12

0 0.5 1 1.5 2 2.5推定比

度数

M =1.00

0

2

4

6

8

10

12

0 0.5 1 1.5 2 2.5推定比

度数

M =1.05

杭径との関係

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 300 600 900 1,200 1,500杭径 (mm)

推定

支持杭

摩擦杭

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 300 600 900 1,200 1,500杭径 (mm)

推定

支持杭

摩擦杭

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 300 600 900 1,200 1,500杭径 (mm)

推定

支持杭

摩擦杭

先端地盤との関係

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

先端地盤

推定

支持杭

摩擦杭

粘性土   砂質土   砂礫    岩盤

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

先端地盤

推定

支持杭

摩擦杭

粘性土   砂質土   砂礫    岩盤

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

先端地盤

推定

支持杭

摩擦杭

粘性土   砂質土   砂礫    岩盤

杭長杭径比との関係

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 20 40 60 80杭長杭径比 L / D

推定

支持杭

摩擦杭

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 20 40 60 80杭長杭径比 L / D

推定

支持杭

摩擦杭

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 20 40 60 80杭長杭径比 L / D

推定

支持杭

摩擦杭

図-付 5.25 施工法別の推定精度確認結果 鋼管ソイルセメント杭工法

Page 185: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 177 -

現行 提案

C 値より推定 N 値より推定

実測値と推定値

0

10

20

30

40

50

60

0 10 20 30 40 50 60x : 計算値 (MN)

y : 実

測値

(MN

)

支持杭

摩擦杭

y=x

n = 40M = 1.10

MED = 1.04SD = 0.30

0

10

20

30

40

50

60

0 10 20 30 40 50 60x : 計算値 (MN)

y : 実

測値

(MN

)

支持杭

摩擦杭

y=x

n = 40M = 1.08

MED = 1.02SD = 0.30

0

10

20

30

40

50

60

0 10 20 30 40 50 60x : 計算値 (MN)

y : 実

測値

(MN

)

支持杭

摩擦杭

y=x

n = 40M = 1.08

MED = 1.02SD = 0.28

度数分布

0

2

4

6

8

10

12

0 0.5 1 1.5 2 2.5推定比

度数

M = 1.10

0

2

4

6

8

10

12

0 0.5 1 1.5 2 2.5推定比

度数

M = 1.08

0

2

4

6

8

10

12

0 0.5 1 1.5 2 2.5推定比

度数

M = 1.08

杭径との関係

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 500 1,000 1,500 2,000杭径 (mm)

推定

支持杭

摩擦杭

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 500 1,000 1,500 2,000杭径 (mm)

推定

支持杭

摩擦杭

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 500 1,000 1,500 2,000杭径 (mm)

推定

支持杭

摩擦杭

先端地盤との関係

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

先端地盤

推定

支持杭

摩擦杭

粘性土   砂質土   砂礫    岩盤

風化花崗岩

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

先端地盤

推定

支持杭

摩擦杭

粘性土   砂質土   砂礫    岩盤

風化花崗岩

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

先端地盤

推定

支持杭

摩擦杭

粘性土   砂質土   砂礫    岩盤

杭長杭径比との関係

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 30 60 90 120 150杭長杭径比 L / D

推定

支持杭

摩擦杭

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 30 60 90 120 150杭長杭径比 L / D

推定

支持杭

摩擦杭

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0 30 60 90 120 150杭長杭径比 L / D

推定

支持杭

摩擦杭

図-付 5.26 施工法別の推定精度確認結果 回転杭工法(杭先端条件のみ見直し)

Page 186: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 178 -

5.4 先端抵抗力と周面抵抗力との分担割合と支持力推定式に関する考察

(1) 支持力推定式における現行と見直し後の抵抗力係数の相違に対する解釈

図-付 5.27 は、場所打ち杭工法において、杭頭変位レベルSo / D が 10%に達する時の先端

伝達率γ10の実測値と支持力推定式によって推定される杭頭変位レベルSo / D = 10%時の先

端伝達率γ10 図-付 5.27の推定値との関係を示したものである。 (a) は現行の支持力推定式を

用いた場合、図-付 5.27(b) は見直し後の支持力推定式を用いた場合である。

現行の支持力推定式を用いると、実測のγ10に対して小さめのγ10

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0推定γ10(現行)

実測

γ10

(推定γ10の平均 = 0.32実測γ10の平均 = 0.50)

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0推定γ10(見直し)

実測

γ10

(推定γ10の平均 = 0.48実測γ10の平均 = 0.50)

が予測され、見直し後の

支持力推定式を用いると、両者はほぼ等しくなることが分かる。

(a) 現行 (b) 見直し後

図-付 5.27 実測γ10・推定γ10

関係(場所打ち杭工法)

図-付 5.28 は、極限支持力における先端抵抗力もしくは周面抵抗力の実測値と現行の支持

力推定式による推定値との関係を示したものである。先端抵抗力の実測値に対して推定値は

過小評価、周面抵抗力の実測値に対しては過大評価となっている。

支持力推定式における見直し後の場所打ち杭の抵抗力係数が、先端抵抗力は現行よりも増

加する方向に、周面抵抗力については現行よりも減少する方向になっているのは、これらの

関係が反映されているのである。

Page 187: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 179 -

0

10

20

30

40

0 10 20 30 40x : 計算値 (MN)

y : 実

測値

(MN

)支持杭

摩擦杭

y=x

n = 50M = 1.52

MED = 1.35CV = 0.59

0

5

10

15

20

0 5 10 15 20x : 計算値 (MN)

y : 実

測値

(MN

)

支持杭

摩擦杭

y=x

n = 50M = 0.63

MED = 0.66CV = 0.90

(a) 先端抵抗力 (b) 周面抵抗力

図-付 5.28 支持力の実測値と現行の支持力推定式による推定値との関係(場所打ち杭工法)

同様の解釈を中掘り杭工法に対しても進める。図-付 5.29 は、中掘り杭工法において、杭

頭変位レベルSo / D が 10%に達する時の先端伝達率γ10の実測値と支持力推定式によって推

定される杭頭変位レベルSo / D = 10%時の先端伝達率γ10

図-付 5.29

の推定値との関係を示したもので

ある。 (a) は現行の支持力推定式を用いた場合、図-付 5.29(b) は見直し後の支持

力推定式を用いた場合である。

場所打ち杭工法の場合と同様に、現行の支持力推定式を用いると、実測のγ10に対してや

や小さめのγ10

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0推定γ10(現行)

実測

γ10

(推定γ10の平均 = 0.52実測γ10の平均 = 0.66)

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0推定γ10(見直し)

実測

γ10

(推定γ10の平均 = 0.61実測γ10の平均 = 0.66)

が予測され、見直し後の支持力推定式を用いると、両者はほぼ等しくなる。

(a) 現行 (b) 見直し後

図-付 5.29 実測γ10・推定γ10関係(中掘り杭工法)

Page 188: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 180 -

図-付 5.30 は、極限支持力における先端抵抗力もしくは周面抵抗力の実測値と現行の支持

力推定式による推定値との関係を示したものである。先端抵抗力の実測値に対して推定値は

過小評価、周面抵抗力の実測値に対してはやや過大評価となっている。

支持力推定式における見直し後の中掘り杭工法の抵抗力係数が、先端抵抗力は現行よりも

増加する方向に、周面抵抗力については現行よりもやや減少する方向になっているのは、こ

れらの関係が反映されているのである。

0

5

10

15

20

0 5 10 15 20x : 計算値 (MN)

y : 実

測値

(MN

)

支持杭

摩擦杭

y=x

n = 101M = 1.43

MED = 1.39CV = 0.36

0

2

4

6

8

10

0 2 4 6 8 10x : 計算値 (MN)

y : 実

測値

(MN

)

支持杭

摩擦杭

y=x

n = 101M = 0.94

MED = 0.84CV = 0.66

(a) 先端抵抗力 (b) 周面抵抗力

図-付 5.30 支持力の実測値と現行の支持力推定式による推定値との関係(中掘り杭工法)

(2) 杭頭荷重の大きさによる先端伝達率の変化と支持力推定式

図-付 5.31は、場所打ち杭工法および中掘り杭工法における、杭頭変位レベルSo / D が10%

に達する時の先端伝達率γ10と杭頭降伏時の先端伝達率γy

場所打ち杭工法の場合、杭頭降伏時の先端伝達率γ

(いずれも実測値である)との関

係を示したものである。

yの平均値は 0.32 であるが、杭頭変位

レベルSo / D が 10%に達するとγ10 の平均値は 0.50 まで増加している。一方、中掘り杭工

法の場合、杭頭降伏時の先端伝達率γyと杭頭変位レベルSo / D が 10%に達する時の先端伝

達率γ10

杭頭荷重の増加に伴い先端伝達率が増加する理由としては、杭頭荷重の増加に伴って先端

抵抗力が増加する、もしくは杭頭荷重の増加に伴って周面抵抗力が減少する、のいずれかが

考えられる。

はほぼ同等である。

Page 189: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

- 181 -

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0γy

γ10

(γyの平均 = 0.32γ10の平均 = 0.50)

(γ10 / γy ) の平均

= 2.19

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0γy

γ10

(γyの平均 = 0.58γ10の平均 = 0.66)

(γ10 / γy ) の平均

= 1.25

(a) 場所打ち杭工法 (b) 中掘り杭工法

図-付 5.31 杭頭荷重の大きさと先端伝達率(γ10 - γy

図-付 5.32

関係)

は、場所打ち杭工法において、杭頭変位レベルSo / D が 10%に達する時の先端

抵抗力Pp10もしくは周面抵抗力Pf10の値が、杭頭降伏時の先端抵抗力Ppyもしくは周面抵抗力

Pfyに対してどの程度増加または減少しているかを見るために、両者の比Pp10 / Ppyもしくは

Pf10 / Pfy 図-付 5.33と杭長杭径比L / Dとの関係を示したものである。 は、同様に中掘り杭工

法における整理結果である。

場所打ち杭工法および中掘り杭工法ともに、杭頭変位レベルSo / D が 10%に達する時の周

面抵抗力Pf10の杭頭降伏時の周面抵抗力Pfyに対する比Pf10 / Pfyの大きさは 1 に近く、周面抵

抗力の大きさは杭頭降伏時と杭頭変位レベルSo / D が 10%に達する時とであまり変化して

いない。一方、先端抵抗力の場合、比Pp10 / Ppyの大きさは、場所打ち杭工法 = 3.30、中掘り

杭工法 = 1.50 である。すなわち、先端抵抗力の大きさは、杭頭変位レベルSo

このことから、

/ D が 10%に

達する時には杭頭降伏時よりも増加する傾向にあり、特に場所打ち杭工法では、増加の割合

が著しい。

図-付 5.31 に示したような杭頭降伏時に対して杭頭変位レベルSo

図-付 2.1

/ D が

10%に達する時に先端伝達率が増加する現象は、主に先端抵抗力の増加によって生じている

ことが分かる。 にも実測γy と実測γ10との関係を、また本文中の図- 5.5.1 にも実

測γyと推定γ10との関係を示したが、杭頭変位レベルSo / D が 10%に達する時の先端伝達率

γ10が杭頭降伏時の先端伝達率γy

図-付 5.34

に対して顕著に増加するのは、場所打ち杭工法に特有の現

象であるように思われる。これは、場所打ち杭では、杭先端の沈殿物(スライム)の影響に

よって、 に概念的に示すような荷重・変位関係となっていることによるのではな

いかと考えられる。

なお、杭頭降伏時と杭頭変位レベルSo / D が 10%に達する時とで先端抵抗力や周面抵抗力

Page 190: 土木研究所資料4.2.2 Weibull分布曲線上の特性点を降伏点とみなすことにについて 31 4.3 杭頭降伏変位の大きさ 36 4.3.1 施工方法との 4.3.2 杭体変形量と杭先端変位の割合

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の大きさが変化する割合は、杭長杭径比L / Dとはあまり関係がなさそうである。

0

2

4

6

8

10

12

0 10 20 30 40 50 60L / D

Pp1

0 / P

py

平均 3.30

0

2

4

6

8

10

12

0 10 20 30 40 50 60L / D

Pf1

0 /

Pfy

平均 1.23

(a) 先端抵抗力 (b) 周面抵抗力

図-付 5.32 杭頭荷重の大きさと先端抵抗力、周面抵抗力の変化(場所打ち杭工法)

0

1

2

3

4

5

6

7

0 20 40 60 80 100 120L / D

Pp1

0 / P

py

平均 1.50

0

1

2

3

4

5

6

7

0 20 40 60 80 100 120L / D

Pf1

0 /

Pfy

平均 0.97

(a) 先端抵抗力 (b) 周面抵抗力

図-付 5.33 杭頭荷重の大きさと先端抵抗力、周面抵抗力の変化(中掘り杭工法)

杭先端変位 Sp

杭先端荷重 Pp

緩い地盤 (スライム)

硬い地盤

図-付 5.34 場所打ち杭の杭先端の荷重・変位関係(概念図)

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また、参考までに、杭頭降伏時の先端伝達率γyの実測値と支持力推定式によって推定され

る杭頭変位レベルSo / D が 10%に達する時の先端伝達率γ10 図-付 5.35の推定値との関係を

(場所打ち杭工法)および図-付 5.36(中掘り杭工法)に示しておく。図-付 5.35 (a) および

図-付 5.36(a) は現行の支持力推定式を用いた場合、図-付 5.35(b) および図-付 5.36(b) は見

直し後の支持力推定式を用いた場合の結果である。

場所打ち杭工法の場合、現行の支持力推定式を用いて得られる先端伝達率γ10の推定値は、

杭頭降伏時の先端伝達率γyの実測値に近い。一方、見直し後の支持力推定式を用いて得られ

る先端伝達率γ10の推定値は、杭頭降伏時の先端伝達率γy

常時、暴風時およびレベル 1 地震時には、一定の安全性余裕をもって杭頭荷重が降伏支持

力を超えないように許容支持力が設けられる。このため、先端抵抗力と周面抵抗力との和で

ある極限支持力全体に抵抗係数φを乗じて得られる許容支持力は、極限支持力に対する安全

性が一定に水準で担保されることにはなるが、許容支持力を用いて推定される支持力性状(先

端抵抗力と周面抵抗力の割合)は、頻繁に使用される状態(弾性範囲)における支持力性状

を表現できていないことになる。

の実測値よりも大きくなる。

なお、中掘り杭工法においては、杭頭降伏時の先端伝達率γyと杭頭変位レベルSo / D が

10%に達する時の先端伝達率γ10

以上のことは、支持力の推定値に乗じる抵抗係数φは、今後は先端抵抗力に対するものと

周面抵抗力に対するものとをそれぞれ個別に設けることが、杭頭荷重の大きさによって先端

伝達率が大きく変化するような杭工法に対しては特に合理的となることを示唆していると考

えられる。

の大きさはあまり変わらないため、このような問題の程度

は小さい。

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0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0推定γ10(現行)

実測

γy

(推定γ10の平均 = 0.32実測γyの平均 = 0.32)

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0推定γ10(見直し)

実測

γy

(推定γ10の平均 = 0.48実測γyの平均 = 0.32)

(a) 現行 (b) 見直し後

図-付 5.35 実測γy・推定γ10

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0推定γ10(現行)

実測

γy

(推定γ10の平均 = 0.52実測γyの平均 = 0.58)

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0推定γ10(見直し)

実測

γy

(推定γ10の平均 = 0.61実測γyの平均 = 0.58)

関係(場所打ち杭工法)

(a) 現行 (b) 見直し後

図-付 5.36 実測γy・推定γ10

関係(中掘り杭工法)

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参考文献

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2) (社) 日本道路協会:道路橋示方書・同解説 Ⅳ下部構造編, 2002.

3) 鳥畑 淳, 寺川洋平, 津田 和義, 村上 浩, 中谷 昌一, 竹口 昌弘, 昇 健次:杭基礎の大

変形挙動後における支持力特性に関する研究 (その 1), 第 63 回土木学会年次学術講演

会, III-116, 2008.

4) 本間 裕介, 木谷 好伸, 吉原 雅美, 岡田 亮太, 中谷 昌一, 野々村 佳哲, 平田 尚:杭基

礎の大変形挙動後における支持力特性に関する研究 (その 2), 第 63 回土木学会年次学

術講演会, III-117, 2008.

5) 長谷川 央, 西村 裕, 飯田 努, 中谷 昌一, 白戸 真大, 大久保 浩弥:杭基礎の大変形挙

動後における支持力特性に関する研究 (その 3), 第 63 回土木学会年次学術講演会,

III-118, 2008.

6) 横幕 清, 白戸 真大, 中谷 昌一:杭の鉛直支持力推定式の作成方法の標準化とそれに基

づく推定式の見直し, 土木技術資料, Vol. 51, No. 5, 2009.5.(投稿中)

7) (社) 日本道路協会:道路橋下部構造設計指針 くい基礎の設計篇, 1964. 3.

8) Vesic, A.S.:Design of Pile Foundations, Synthesis of Highway Practice, 42,

Transportation Reserch Board, 1977.

9) 高野 昭信, 岸田 英明:砂地盤中の Non-Displacement Pile 先端部地盤の破壊機構, 日本

建築学会論文報告集, No. 285, pp. 51-62, 1979.11.

10) 佐伯 英一郎, 岩松 浩一, 木下 雅敬:Non-Displacement Pile の先端支持力推定のため

の地盤の「平均 N 値」に関する解析的一考察, 日本建築学会構造系論文集, 第 535 号,

pp87-94, 2000.9.

11) 小椋 仁志:杭の先端支持力算定式に関する一考察(先端平均 N 値の平均範囲を中心と

して), 第 45 回地盤工学シンポジウム論文集, pp. 199-204, 2000.10.

12) 福井 次郎, 白戸 真大, 松井 謙二:道路橋基礎の部分安全係数設計法開発へ向けた基礎

研究, 土木研究所資料, 第 3936 号, 2004.4.

13) 中谷 昌一, 白戸 真大, 野村 朋之:レベル 2 地震時における杭基礎の設計に用いる部分

係数の検討, 土木研究所資料, 第 4102 号, 2008.3.

14) (社) 地盤工学会:地盤調査法, 1997.9.

15) (社) 日本道路協会:道路橋下部構造設計指針・同解説 くい基礎の設計篇, 1976. 8.