「メサイア」歌詞対訳「メサイア」歌詞対訳 第 Ⅰ 部 1. SYMPHONY...

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「メサイア」 歌詞対訳 1. SYMPHONY (オーケストラ) 1. 序曲 (シンフォニア) 王の入場に際して演奏された 「フランス風序曲」 によって全曲が開始される。 この作品において、 王はもちろん 「メシア」 イエス ・ キリスト。 2. ACCOMPAGNATO (テノール独唱 ・ 亀高浩) 2. 伴奏付レチタティーヴォ Comfort ye, comfort ye My people, なぐさ めよ慰めよわが民をsaith your God. あなたたちの神は言われるSpeak ye comfortably to Jerusalem, 語りかけよなぐさ め深くエルサレムに And cry unto her, そして呼びかけよ彼女にthat her warfare is accomplish'd, 彼女の苦 えき は終わりthat her iniquity is pardon'd. 彼女の罪はつぐなわれたe voice of him that crieth in the wilderness: 荒野に呼ばわるものの声がするPrepare ye the way of the Lord, make straight ととの えよ主の道をまっすぐにせよ in the desert a highway for our God. 荒野にわれらの神のための大 おお 」。 作品の冒頭に置かれた曲は、 全作品を方向付けるほどの慰 なぐさ めに満ちたアリオーソ。 紀元前 6 世紀に、 50 年以上も長い間バビロンに捕 ほしゅう 囚となって苦しんでいたイスラエルの民に、 解放 (紀元前 538 年に実現) の預 げん として語られた 「イザヤ書」 の有名な言葉。 ここでは、 イエスの福音の到 とう らい を預 げん することばとして歌われている。 3. AIR (テノール独唱 ・ 亀高浩) 3. アリア Ev'ry valley shall be exalted, すべての谷は高められand ev'ry mountain and hill made low, そしてすべての山と丘は低くされるthe crooked straight, 曲がった道はまっすぐにand the rough places plain. でこぼこの所は平 へい たん にされるであろうイタリア風アリア。 歌詞の内容と音楽とが、 ぴったりと寄り添 っている。 「高める」 (exalt) ではメリスマで上昇し、 「曲がった」 (crooked) ではくねくねと、 「平 へい たん に」 (plain) では、 文字どおり平 へい たん に歌われる。

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「メサイア」 歌詞対訳

第 Ⅰ 部

1. SYMPHONY (オーケストラ) 1. 序曲 (シンフォニア)

王の入場に際して演奏された 「フランス風序曲」 によって全曲が開始される。

この作品において、 王はもちろん 「メシア」 イエス ・ キリスト。

2. ACCOMPAGNATO (テノール独唱 ・亀高浩) 2. 伴奏付レチタティーヴォ

Comfort ye, comfort ye My people, 「慰なぐさ

めよ、慰めよ、わが民を」

saith your God. と、あなたたちの神は言われる。

Speak ye comfortably to Jerusalem, 「語りかけよ、慰なぐさ

め深く、エルサレムに

And cry unto her, そして、呼びかけよ、彼女に、

that her warfare is accomplish'd, 彼女の苦く

役えき

は終わり、

that her iniquity is pardon'd. 彼女の罪はつぐなわれた」と。

�e voice of him that crieth in the wilderness: 荒野に呼ばわるものの声がする、

Prepare ye the way of the Lord, make straight 「整ととの

えよ、主の道を、まっすぐにせよ

in the desert a highway for our God. 荒野にわれらの神のための大おお

路じ

を」。

作品の冒頭に置かれた曲は、 全作品を方向付けるほどの慰なぐさ

めに満ちたアリオーソ。

紀元前 6 世紀に、 50 年以上も長い間バビロンに捕ほ し ゅ う

囚となって苦しんでいたイスラエルの民に、

解放 (紀元前 538 年に実現) の預よ

言げん

として語られた 「イザヤ書」 の有名な言葉。

ここでは、 イエスの福音の到と う

来らい

を預よ

言げん

することばとして歌われている。

3. AIR (テノール独唱 ・亀高浩) 3. アリア

Ev'ry valley shall be exalted, すべての谷は高められ、

and ev'ry mountain and hill made low, そして、すべての山と丘は低くされる、

the crooked straight, 曲がった道はまっすぐに、

and the rough places plain. でこぼこの所は平へい

坦たん

にされるであろう。

イタリア風アリア。 歌詞の内容と音楽とが、 ぴったりと寄り添そ

っている。

「高める」 (exalt) ではメリスマで上昇し、 「曲がった」 (crooked) ではくねくねと、

「平へい

坦たん

に」 (plain) では、 文字どおり平へい

坦たん

に歌われる。

Page 2: 「メサイア」歌詞対訳「メサイア」歌詞対訳 第 Ⅰ 部 1. SYMPHONY (オーケストラ) 1. 序曲(シンフォニア) 王の入場に際して演奏された「フランス風序曲」によって全曲が開始される。この作品において、王はもちろん「メシア」イエス・キリスト。2.

4. CHORUS 4. 合 唱

And the glory of the Lord shall be revealed, こうして主の栄光が現わされ、

And all �esh shall see it together: すべての肉なる者が共とも

にそれを見る : For the mouth of the Lord hath spoken it. 主の口が語られたとおりに。

はじめて現れる合唱曲。 歌詞の各行にそれぞれ別の旋せん

律り つ

がつけられている。

「神の栄光」 が主題ゆえ、 3 拍子で作曲されている。 (「3」 は三位一体の神を象しょう

徴ちょう

する)

―――古い時代には、 3 拍子を神に関わる 「完全拍子」 として 「○」 で表し、

3 拍子以外を不完全拍子として、 「C」 (○が欠けている) で表した。

4 分の 4 拍子が今もCで表示されるのはそのなごり。

5. ACCOMPAGNATO (バス独唱 ・松尾寿人) 5. 伴奏付レチタティーヴォ

�us saith the Lord of Hosts; こう万ばん

軍ぐん

の主が言われる ;Yet once, a little while, 「もう一度、まもなく、

And I will shake the heavens, and the earth, 私は天と地を揺ゆ

り動かす、

�e sea and the dry land; 陸地と海をも ;And I will shake all nations, 私が諸国民すべてを揺

り動かすので、

And the desire of all nations shall come. すべての諸国民の望みのものが来る。

�e Lord, whom ye seek, あなたの求めている主が、

Shall suddenly come to His temple, 不意に彼の聖せい

所じょ

に来る、

Even the messenger of the Covenant, 事実、聖せい

約やく

の使者が来る、

whom ye delight in: あなたの楽しみにしている使者が :Behold, He shall come, 見よ、彼は来る」

saith the Lord of Hosts. と、万ばん

軍ぐん

の主は言われる。

6. AIR (バス独唱 ・松尾寿人) 6. アリア

But who may abide the day of His coming? しかし彼が来る日に誰が耐た

えられよう、

And who shall stand when He appeareth? 彼が現れる時、誰が彼の前に立ちえよう。

For He is like a re�ner's �re. 彼は精せい

錬れん

する火のようであるから。

始めのレチタティーヴォでは、 「メシア」 来らい

臨り ん

の預よ

言げん

が語られる。

つづくアリアでは、 これを受けて、 「メシア」 による裁さば

きの恐ろしさに対する畏い

怖ふ

が歌われる。

アリアの中間部 (「彼は精せい

錬れん

する火のよう」) では、 「焼き尽つ

くす火」 のイメージが

プレスティッシモで激しく表現される。

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7. CHORUS 7. 合 唱

And He shall purify the sons of Levi, そして彼は、レビの子らを清める、

�at they may o�er unto the Lord 彼らが主に正しく捧ささ

げものを

An o�ering in righteousness. 捧ささ

げるようになるために。

「レビの子ら」 とは、 エルサレムの神殿に仕える祭さい

司し

階級を指す。

ここでは、 メシア (=救世主) に救われた 「信徒」 を指し、 その 「聖化」 が歌われている。

――― 「メサイア」 の各曲に、 "And" で始まる曲が多い。 (「ミサ曲」 の "Et" に相当)。

原始キリスト教時代以来の 「信仰告白」 (ケーリュグマと呼ばれる) に、

「キリストは我らの罪のために十字架にかけられて死なれた、 そして葬ほうむ

られ、

そして三日目に復活された、 聖書に記されている通りに」 というのがあり、

「そして、 そして」 というのは、 「聖書」 の、 また、 キリスト教徒の口く ち

癖ぐせ

である。

8a. RECITATIVE (アルト独唱 ・藤井美雪) 8a. レチタティーヴォ

Behold, a virgin shall conceive, 見よ、乙女が身ごもり、

and bear a son, 男の子を産む、

and shall call his name Emmanuel, そしてその名をエマヌエルと名づける、

"God with us". 「神がわれらと共に」(の意)。

「イザヤ書」 に記されている、 有名な 「メシア預よ

言げん

」。

なお、 「イエス」 という名は、 ヘブライ語で、 「神は救いたもう」 の意。

8. AIR AND CHORUS (アルト独唱 ・藤井美雪) 8. アリアと合唱

O thou that tellest good tidings to Zion, シオンに良い知らせを伝える者よ、

Get thee up into the high mountain; 高い山へと上がれ、

O thou that tellest good tidings to Jerusalem, エルサレムに良い知らせを伝える者よ

Li� up thy voice with strength; 力を振ふ

るって声を上げよ ; Li� it up, be not afraid; 声を上げて、恐れるな ;Say unto the cities of Judah, 語りかけよ、ユダの町々に、

Behold your God! 「見よ、あなたたちの神だ!」と。

Arise, shine; for thy light is come, 起きよ、輝け、あなたの光が来る、

And the glory of the Lord is risen upon thee. 主の栄光が、あなたの上に輝く。

アルト独唱につづいて、 合唱がアルトと同じメロディーをオクターヴ高く歌い上げる。

イエスキリストの来らい

臨り ん

の歓よろこ

びが、 いやが上にも盛も

り上がる。

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9. ACCOMPAGNATO (バス独唱 ・松尾寿人) 9. 伴奏付レチタティーヴォ

For, behold, darkness shall cover the earth, 見よ、闇やみ

が地をおおう、

And gross darkness the people; そして大いなる暗黒が人々をおおう ;But the Lord shall arise upon thee, しかし、主があなたの上に輝き、

And His glory shall be seen upon thee. その栄光があなたの上に現れる。

And the gentiles shall come to thy light. こうして異い

邦ほう

人じん

らは光へと来る、

And kings to the brightness of thy rising. そして王たちはあなたに射さ

し出た

輝きへと来るであろう。

10. AIR (バス独唱 ・松尾寿人) 10. アリア

�e people that walked in darkness 闇の中を歩いていた民が

have seen a great light: 大きな光を見た。

And they that dwell in the land of the shadow of death, 死の蔭かげ

にすむものたち、

Upon them hath the light shined. 彼らの上に光が輝いた。

つづけて演奏されるバスのレチタティーヴォとアリアでは、 暗黒と光との大きい対照が

印象深く歌われる。 暗黒をうたう箇か

所し ょ

では、 「歌いにくい減げん

4 度の音程をまじえて、

上下絶え間ない気味悪いメロディーは、 世界苦を象徴する」 と、 津川主一は言う。

次にくる強大な合唱曲を引き出す、 素晴らしいアリア。

11. CHORUS 11. 合 唱

For unto us a Child is born, 我らのために一人の嬰みどりご

児が生まれた、

Unto us a Son is given: 一人の男の子が我らに与えられた :And the government shall be upon his shoulder: 主権はその肩にある :And His name shall be called そして彼の名はこう呼ばれる、

Wonderful, Counsellor, �e Mighty God, 「不思議! 弁護者! 強大な神!

�e Everlasting Father, �e Prince of Peace. 永遠の父! 平和の君!」。

「全編を通じて、 もっとも異色であり、 変化もあり、 センセーショナルなコーラス」 (津川主一)。

第 1 部の中心に位置し、 第 1 部を代表する合唱曲。

神の子の誕生を、 こんなにも喜ばしく、 こんなにも興奮して歌った合唱曲は、 他に例を見ない。

ヘンデル会かい

心しん

の作。

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12. PIFA (オーケストラ) 12. 牧歌 (田園曲)

古いイタリアの牧ぼっ

歌か

によるとみられる、 美しい間奏曲。

バッハの 「クリスマスオラトリオ第 2 部」 の曲頭を飾かざ

る 「シンフォニア」 とともに、

その美しさにおいて、 クリスマス音楽の双そ う

璧へき

をなす。

ここからは、 文字通りクリスマスの情景に移る。

13a. RECITATIVE (ソプラノ独唱 ・昆野智佳子) 13a. レチタティーヴォ

�ere were shepherds abiding in the �eld, そこらには羊ひつじか

飼いらが野宿していた、

keeping watch over their �ock by night. 一晩中、彼らの群む

れを見張りながら。

13. ACCOMPAGNATO (ソプラノ独唱 ・昆野智佳子) 13. 伴奏付レチタティーヴォ

And lo, the angel of the Lord すると、見よ、主の天使が

came upon them, and the glory of the Lord 彼らの上に立ち現れ、主の栄光が

shone round about them, 彼らを取り巻ま

いて輝いたので、

and they were sore afraid. 彼らは大変恐れた。

14a. RECITATIVE (ソプラノ独唱 ・昆野智佳子) 14a. レチタティーヴォ

And the angel said unto them, Fear not: すると天使は言った、「恐れるな :for behold, I bring you good tidings of great joy, なぜなら見よ、私は大いなる歓

よろこ

びの

which shall be to all people. 福ふく

音いん

をすべての民にもたらしたのだ。

For unto you is born this day あなたたちのために今日

in the city of David a Saviour, ダヴィデの町に救い主が生まれた、

which Christ the Lord. 主なるキリストが」。

「ルカ福音書」 による、 イエス降こ う

誕たん

の夜の描写。 大変生き生きとしている。

―――描写されている情景から、 イエスの誕生は春だったろうとされる (冬には羊を放牧しない)。

クリスマスが 12 月 25 日とされたのは、 ローマ時代の祝日が転用されたもの。

冬と う

至じ

で、夜が長く、光が最も求められる時点に、キリストの福ふ く

音いん

の光が重ねられたためといわれる。

なお、 「キリスト」 とは、 「救世主」 を意味するギリシャ語。 ヘブライ語 「メシア (油注がれた者)」 の訳。

「メサイア」 (The Messiah) は、 「メシア」 の英語読み。

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14. ACCOMPAGNATO (ソプラノ独唱 ・昆野智佳子) 14. 伴奏付レチタティーヴォ

And suddenly there was with the angel すると突とつ

如じょ

として、天使とともに

a multitude of the heavenly host praising God, 天の大軍勢が神をほめたたえて

and saying. 言う、

15. CHORUS 15. 合 唱

Glory to God in the highest, 栄光がいと高きところでは神に、

And peace on earth, そして地には平安が、

good will towards men. (神の)意にかなった人々に対して。

ここで、 神への讃さん

美び

のため、 はじめて 2 本のトランペットが鳴り渡る。

最後のところで音楽が徐々に消えていくのは、 天使たちが遠ざかる様を描写している。

16. AIR (ソプラノ独唱 ・川村晃世) 16. アリア

Rejoice greatly, O daughter of Zion; 大いに喜べ、シオンの娘よ ;Shout, O daughter of Jerusalem: 叫

さけ

べ、エルサレムの娘よ :Behold, thy King cometh unto thee; 見よ、あなたの王が来る ;

He is the righteous Saviour, 彼こそ正義の救い主、

And He shall speak peace unto the heathen. そして彼は異教徒に平和を告げる。

喜びに溢あふ

れたアリア。 ソプラノ独唱の技巧を駆く

使し

した難曲。 A-B-Aの 3 部形式。

17a. RECITATIVE (アルト独唱 ・藤井美雪) 17a. レチタティーヴォ

�en shall the eyes of the blind be opened, その時、盲もう

者じゃ

たちの目は開かれ、

And the ears of the deaf unstopped. 耳の聞こえない者は障害を除のぞ

かれる。

�en shall the lame man leap as an hart, その時、足なえは鹿のように飛び跳は

ね、

And the tongue of the dumb shall sing. 口のきけない者の舌が歌うであろう。

「イザヤ書」 第 35 章に記されている預よ

言げん

。 キリスト降こ う

誕たん

の数世紀前に記された言葉。

それが、 イエスの来らい

臨り ん

により文字通り実現した、 と各福ふ く

音いん

書し ょ

著者は、 口をそろえて語っている。

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17. DUET (アルト ・ 藤井美雪&ソプラノ ・ 昆野智佳子) 17. 二重唱

He shall feed His �ock like a shepherd; 彼は羊ひつじか

飼いのように彼の群む

れを飼か

い ;And He shall gather the lambs with His arm, 彼の腕に小羊たちを集め、

And carry them in His bosom, 彼のふところに抱いて持ち歩く、

And gently lead those that are with young, そして子を連れた羊たちを優しく導く。

Come unto Him, all ye that labour 彼のもとに来なさい、重荷を負お

って

and are heavy laden, 苦しんでいるものは皆みな

and He will give you rest. そうすれば、彼が休ませてくださる。

Take His yoke upon you, and learn of Him, 彼の軛くびき

を負お

って、彼に学びなさい、

For He is meek and lowly of heart: 彼は柔にゅうわ

和で心が低いから :And ye shall �nd rest unto your souls. そうすれば、あなたは魂の休息を

見いだすであろう。

なんとも慰なぐさ

めに満ちた美しいアリア。

アルトの歌う歌詞は 「イザヤ書」 から、 ソプラノの歌う歌詞は 「マタイ福音書」 から採と

られている。

18. CHORUS 18. 合 唱

His yoke is easy, and His burthen is light. 彼の軛くびき

は担にな

いやすく、彼の荷は軽い。

第 1 部をしめくくる合唱曲。 イエスの福音の、 受け入れやすさを表現している。

――― 「軛くびき

」 は 2 頭の牛を 1 本の横木でくくりつける棒。 「酷こ く

使し

」 されることの表象。

イエスの時代には、 庶し ょ

民みん

は、 ユダヤ教支配者層から厳しい律り っ

法ぽ う

をもって

はなはだしく抑圧されていた。  

イエスの福ふ く

音いん

は、 律り っ

法ぽ う

を守れない者に対する罪の赦ゆる

しの福ふ く

音いん

のゆえに、

貧しい人々や 「罪びと」 と呼ばれた下層階級の人々に受け入れられた。

  休  憩 (15 分) 

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第 Ⅱ 部

19. CHORUS 19. 合 唱

Behold the Lamb of God, 見よ、神の小羊、

that taketh away the sin of the world. 世の罪を除のぞ

く方。

第 1 部は、 「メシア」 来らい

臨り ん

の預よ

言げん

とその実現を歌ったもので、 喜びに満ちていたが、

ここ第 2 部は、 イエスの受難の物語となり、 音楽も悲痛なおもむきを呈てい

してくる。

この曲は、 「第 2 部の偉大なる悲劇の序章として、 まことに比ひ

類るい

ない合唱悲曲である」 (津川主一)。

付点のリズムが全曲を支配している。 ヘンデルは、「十字架」 (イエスの苦難と死) を象徴するものとして、

しばしば付点のリズム (鞭むち

打う

ちを表象) を用いる。 バッハが、 シャープ (♯=ドイツ語で Kreuz= 十字

架を指す) や、 X (キリスト) の音形を用いたことが思い起こされる。

この曲の歌詞の出典は 「ヨハネ福音書」。 洗せん

礼れい

者し ゃ

ヨハネが、 イエスを初めて見たとき弟子たちに語った

言葉。

「ミサ曲」 で歌われるラテン語 " (Ecce,) Agnus Dei, qui tollis peccata mundi" に相当。

「小羊」 は、 「十字架にかけられたイエス ・ キリスト」 を表象している。

20. AIR (アルト独唱 ・藤井美雪) 20. アリア

He was despised and rejected of men; 彼は蔑さげす

まれ、そして人に棄す

てられた ;A man of sorrows, and acquainted with grief: 苦しみの人で、悲嘆を熟

じゅくち

知していた :

He gave His back to the smiters, 彼をひどく打つ者に背中を任まか

せ、

And His cheeks to them that plucked o� the hair: ひげを抜く者にその頬ほお

を任まか

せた。

He hid not His face from shame and spitting. 彼は恥ちじょく

辱と唾つば

から顔を背そむ

けなかった。

「全曲を通じて、 最も悲痛で感動的なアリア、 アルトのための古今の絶唱」 (津川主一)、

と評ひょう

される。  「メサイア」 全曲の 「中心点」 とも言うべき名曲。

中間部でオーケストラが奏する付点のリズムは、 「鞭むち

打う

ち」 を表象している。

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21. CHORUS 21. 合 唱

Surely He hath borne our griefs, まことに彼は我らの悲嘆をにない、

and carried our sorrows: 我らの苦難を運び去った。

He was wounded for our transgressions, 彼は我らの罪のゆえに傷つけられ

He was bruised for our iniquities; 彼は我らの背そむ

きのゆえに打たれた ;�e chastisement of our peace was upon Him. 我らの平安のための懲

ちょう

罰ばつ

は彼の上に。

イエスの苦難の意味に対する考察が、 この曲から 3 曲つづく合唱曲によって展開される。

「メサイア」 の大きな山やま

場ば

を形成している。

これら 3 曲の歌詞の出典は、 有名な 「イザヤ書第 53 章」 である。

紀元前 6 世紀、 イスラエルのバビロン捕ほ し ゅ う

囚時代末期に、 実際に起きた一人の預よ

言げん

者し ゃ

苦難の生しょう

涯がい

が、 「メシア預よ

言げん

」 として語り継つ

がれたもの。

恐ろしいほどに、 イエスの生しょう

涯がい

の事実に合致している。

オーケストラは執しつ

拗よ う

に 「鞭むち

打う

ち」 のリズムを刻きざ

みつづける。

22. CHORUS 22. 合 唱

And with His stripes we are healed. こうして彼の打ち傷によって、

我らは癒いや

されたのだ。

曲全体がフーガとして作曲されている。 主題の 4 つの音は、 十字架の音形を示している。

主題の歌いにくい減げん

7 度の下降が、 イエスの打ち傷の深しん

刻こ く

さを表す。

23. CHORUS 23. 合 唱

All we like sheep have gone astray; 我らは皆みな

羊のように迷い出た ;We have turned every one to his own way; 我らは各

おの

々おの

の道に曲がっていった ;

And the Lord hath laid on Him そして主は彼の上に置かれた

the iniquity of us all. 我らすべての罪ざい

責せき

を。

曲の大部分は、 迷い出た羊の収しゅう

拾しゅう

つかない混乱を表象する。

最後のアダージオの部分に入って、 俄が

然ぜん

、 厳げん

粛しゅく

な贖しょく

罪ざい

の事実が、 深しん

刻こ く

無む

比ひ

に歌われる。

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24. ACCOMPAGNATO (テノール独唱・有馬雄二郎) 24. 伴奏付レチタティーヴォ

All they that see Him laugh Him to scorn: すべて彼を見るものは彼をあざ笑う。

�ey shoot out there lips, 彼らは 唇くちびる

を突き出し、

And shake their heads, saying, 頭を振ふ

って、言う、

激しい 「鞭むち

打う

ち」 のリズムが刻きざ

まれる。

25. CHORUS 25. 合 唱

He trusted in God 「彼は神に頼っている、

that He would deliver Him: 神が彼を救い出すと :Let Him deliver Him, 神に救われればよかろうよ、

if He delight in Him. 彼が神のお気に入りならば」。

厳げん

格か く

なフーガで作曲されているが、 内容は、 十字架上のイエスを、

バカにし、 あざ笑い、 侮ぶ じ ょ く

辱している群集の叫さけ

び。

26. ACCOMPAGNATO (テノール独唱 ・有馬雄二郎) 26. 伴奏付レチタティーヴォ

�y rebuke hath broken His heart; あなたの非難が彼の心を破った ;He is full of heaviness; 彼は重苦に満たされる ;He looked for some to have pity on Him, 彼は同情を求めて見まわした、

But there was no man; しかし、誰もいなかった ;Neither found He any to comfort Him. 彼を慰

なぐさ

める者を見つけることは

できなかった。

この短いレチタティーヴォで音楽は 7 つの調性を彷ほ う

徨こ う

する。

よじれるばかりの悲嘆を表現している。

27. ARIOSO (テノール独唱 ・有馬雄二郎) 27. アリオーソ

Behold, and see if there be any sorrow 見よ、そして思いみよ、

like unto His sorrow. 彼の悲嘆以上の悲嘆があったかどうか。

第 2 部の始めからつづいてきた、 イエスの受難物語の最後に位置するアリオーソ。

深い悲しみをたたえている。

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28. ACCOMPAGNATO (ソプラノ独唱・昆野智佳子) 28. 伴奏付レチタティーヴォ

He was cut o� out of the land of the living: 彼は生きている者の地から断た

たれた。

For the transgression of �y people あなた(神)の民の罪ゆえに

was He stricken. 彼は打たれたのだ。

イエスの受難をしめくくる曲。 受難の理由の再確認。

29. AIR (ソプラノ独唱 ・昆野智佳子) 29. アリア

But �ou didst not leave His soul in hell; しかしあなた(神)は彼の魂を地獄に棄す

て置かず、

Nor didst �ou su�er �y Holy One あなたの聖者に墓穴を見させて

to see corruption. 苦しめることはされなかった。

このアリアは、 イエスの十字架の苦難から、 復活 ・ 昇天への転換点になっている。

短調ばかり続いてきた音楽が、 ここで長調に転換している。

30. CHORUS 30. 合 唱

Li� up your heads, O ye gates ; 頭を上げよ、おまえ城門よ ;And be ye li� up, ye everlasting doors; 持ち上げられよ、おまえ永遠の扉よ ;And the King of Glory shall come in. 栄光の王が入場されるのだ。

   Who is this King of Glory?    (城門の中から)栄光の王とは誰?

�e Lord strong and mighty. 強大な権けん

能のう

を持った主。

�e Lord mighty in battle. 戦いに強い主。

   �e Lord of Hosts,    (呼応して)万ばん

軍ぐん

の主、

   He is the King of Glory.         彼こそ栄光の王。

天上の門における情景。 外にイエス一行、 城門の中には天使の軍勢。

互いに交こ う

唱しょう

している。 城門は、 (両開きの扉でなく) 上下可動の堅けん

固こ

な門。

門に向かって、 「開け (頭を上げよ)」 と呼びかけている。

31a. RECITATIVE (テノール独唱 ・有馬雄二郎) 31a. レチタティーヴォ

Unto which of the angels said He at any time, 神はかつて天使の誰に言われたか、

�ou art my Son, 「おまえはわが子

this day have I begotten thee? 今日私はおまえを生んだ」と。

イエス ・ キリストの地位が、 天使たちを越えていることを示す。

「生んだ」 は、 「メシアとして信しん

任にん

した」 という意味。 古代イスラエルの王に対する表象。

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31. CHORUS 31. 合 唱

Let all the angels of God worship Him. すべての神の天使に彼(イエス)を讃美させよ。

キリスト讃美の合唱。 主題とその短縮形とが、 重なり合ってでてくる二重フーガ。

32. AIR (アルト独唱 ・藤井美雪) 32. アリア

�ou art gone up on high, あなたは高みに上り、

�ou hast led captivity captive: 捕ほ

虜りょ

を連れ去り :And received gi�s for men; 人から諸

もろ

々もろ

の贈り物を得た ;Yea, even for �ine enemies, そうだ、あなたの敵のために、

�at the Lord God might dwell among them. 主なる神が彼らの 間あいだ

に住まわれる。

王の凱がい

旋せん

を歌った古い 「詩し

篇へん

」 を引用して、 イエスの天上への凱がい

旋せん

を讃たた

えたアリア。

33. CHORUS 33. 合 唱

�e Lord gave the word: 主はみことばを与えられる :Great was the company of the preachers. 「宣

べ伝えるものの仲間はたくさんいる」。

神の命めい

により福ふ く

音いん

伝道者たちが続々と現れ、 盛んに活動することになる様子が、

ざわめくがごとくに広がっている。

34. AIR (ソプラノ独唱 ・川村晃世) 34. アリア

How beautiful are the feet of them なんと美しいことか彼らの足は

that preach the gospel of peace 平和の福ふく

音いん

を宣の

べ伝え

and bring glad tidings of good things! 良いものの嬉うれ

しい知らせを持ち来る人は。

福ふ く

音いん

伝道者の活動を讃たた

えた美しいアリア。 「イザヤ書」 に記されたこの言葉は、

現代に至るまで、 善よ

き伝道者を讃たた

える信徒の感嘆の声として語り継つ

がれている。

35. CHORUS 35. 合 唱

�eir sound is gone out into all lands, 彼らの声は全ぜん

地ち

に広まり、

And their words unto the ends of the world. 彼らのことばは世界の果てにまで。

イエスの福ふ く

音いん

が、 伝道者たちにより全世界に広められることを歌った合唱曲。

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36. AIR (バス独唱 ・今田陽次) 36. アリア

Why do the nations so furiously rage together: 何ゆえ諸国民はそんなに激げき

怒ど

し :And why do the people imagine a vain thing? 民らは空

むな

しいことを想い描くのか?

�e kings of the earth rise up, 地の王らは起た

ち上がり

And the rulers take counsel together: 支配者らはともに謀はか

る、

Against the Lord, and against His Anointed. 主とそのメシアに逆らって。

メシアの支配に反逆する諸国民を、 なぎ倒すがごとくに圧倒するバス ・ アリア。

37. CHORUS 37. 合 唱

Let us break their bonds asunder: 彼らの枷かせ

をぶちこわし、

And cast away their yokes from us. 彼らの軛くびき

を投げ飛ばそう。

メシアに反逆する諸国民の叫び声。

38a. RECITATIVE (テノール独唱 ・有馬雄二郎) 38a. レチタティーヴォ

He that dwellth in heaven, 天に住んでいる方(神)は

shall laugh them to scorn: 彼らを嘲ちょう

笑しょう

する。

�e Lord shall have them in derision. 主は彼らをあざ笑う。

38. AIR (テノール独唱 ・有馬雄二郎) 38. アリア

�ou shalt break them with a rod of iron; あなた(神)は鉄の棒で彼らを砕くだ

き ;�ou shalt dash them in pieces like a potter's vessel. 陶器の破片のように打ち砕

くだ

く。

神に反逆する者たちの打ち砕く だ

かれる様が、 小こ

気ぎ

味み

良いほどに描写されている。

これにより、 全世界が神に服ふ く

することとなり、 次の 「ハレルヤコーラス」 引き継つ

がれる。

39. CHORUS 39. 合 唱

HALLELUJAH ! : ハレルヤ!

For the Lord God Omnipotent reigneth. 全能の神が統治される。

�e kingdom of this world is become この世の王国はなった

the kingdom of our Lord and of His Christ; われらの主とそのキリストの王国に。

And He shall reign for ever and ever. そして彼が永遠の永遠まで統治する。

King of Kings, and Lord of Lords. 王の王、主の主よ。

「古こ

今こん

無む

比ひ

のコーラス」。 世界中の合唱曲で、 これ以上に有名な曲はない。

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第 Ⅲ 部

40. AIR (ソプラノ独唱 ・川村晃世) 40. アリア

I know that my Redeemer liveth, 私は知っている、私のあがない主ぬし

And that He shall stand 生きておられるのを。彼は立つであろう、

at the latter day upon the earth; 後の日に、この地上に。

And though worms destroy this body, うじ虫がこの体を朽く

ち果てさせても

Yet in my �esh shall I see God. 私の肉にあって神を見るであろう。

For now is Christ risen from the dead, 今やキリストが死から復活され、

�e �rst fruits of them that sleep. 眠ったものの初はつ

穂ほ

となられたから。

前半は 「ヨブ記」 の有名なことばから、 後半は 「コリント人への手紙Ⅰ」 から引用。

復活されたイエスの再さい

臨り ん

に思いを馳は

せたアリア。 しみじみとした美しい曲。

ヴァイオリンだけが伴奏する。

41. CHORUS 41. 合 唱

Since by man came death 一人の人(アダム)によって死が来た、

By man came also the resurrection of the dead. 同じように一人のお方(イエス・キリスト)によって

死からの復活が来た。

For us in Adam all die, アダムによって死が来たくらいなら、

Even so in Christ shall all be made alive. キリストによってすべての人が生かされるのは

当然である。

全曲中唯一のアカペラ (無伴奏合唱) と、 全奏とが交互に組み合わされ、

「死」 と 「生」 との対比があざやかに描かれている。

42. ACCOMPAGNIATO (バス独唱 ・今田陽次) 42. 伴奏付レチタティーヴォ

Behold I tell you a mystery; 見よ、私はあなた方に秘密を告げる ;We shall not all sleep, 我らは皆

みな

眠るのではない、

but we shall all be changed, 我らは皆みな

変えられるのである、

in a moment, in the twinkling of an eye 瞬時に、まばたきの間に、

at the last trumpet. 終わりのトランペットが鳴り渡る時に。

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43. AIR (バス独唱 ・今田陽次) 43. アリア

�e trumpet shall sound, and the dead ラッパが鳴り渡ると、死んだ者が

shall be raised incorruptible, 不ふきゅう

朽なるものによみがえる、

and we shall be changed. そして我らは変えられるであろう。

For this corruptible must put on incorruption. この朽く

ちるものは朽く

ちぬものを着き

And this mortal must put on immortality. この死すべき者は不死なるものを

着なければならないのだから。

パウロの 「コリント人への手紙Ⅰ」 に記されている、 復活の希望の詞。

勇ゆ う

壮そ う

なトランペット ・ ソロが伴奏する、 ダカーポ形式による長大なアリア。

「メサイア」 全曲の中で、 代表的なアリアの名曲。

44a. RECITATIVE (アルト独唱 ・藤井美雪) 44a. レチタティーヴォ

�en shall be brought to pass その時、出来事として起きるであろう

the saying that is written 書かれている言葉が、

Death is swallow'd up in victory. 「死が勝利に呑の

まれてしまった」、と。

44. DUET (アルト ・ 藤井美雪&テノール ・亀高浩) 44. 二重唱

O death, where is thy sting? おお死よ、お前の刺とげ

はどこにあるのか。

O grave, where is thy victory? おお墓よ、お前の勝利はどこにあるのか。

�e sting of death is sin; 死の刺とげ

は罪であり ;And the strength of sin is the law. そして罪の力は律

りっ

法ぽう

である。

復活の希望を歌い上げた前曲 (第 43 曲アリア) を受けて、 イエス ・ キリストによって

克服された 「死」 にむかって、 「お前の勝利はどこ?」 と追い討う

ちをかけている。

45. CHORUS 45. 合 唱 

But thanks be to God, まことに感謝すべきかな

who giveth us the victory 私たちに勝利を与えてくださった神に、

through our Lord Jesus Christ. 主イエス・キリストをとおして。

前曲 「二重唱」 と同じメロディーを使って、 合唱が神への感謝を歌う。

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46. AIR (ソプラノ ・ 昆野智佳子) 46. アリア

If God be for us, もし神が私たちの味方なら、

who can be against us? 誰が私たちに敵対できようか?

Who shall lay anything 誰が訴うった

えることができよう

to the charge of God's elect? 神に選ばれたものを?

It is God that justi�eth. 神こそが義ぎ

としておられるのに。

Who is he that condemneth? 誰が断罪できるか?

It is Christ that died, 死なれたキリストが、

yea rather, that is risen again, 否いな

むしろ、復活された(キリストが)

who is at the right hand of God, 神の右にあって、

who makes intercession for us. 私たちのために執と

り成な

していて下さるというのに。

「ローマ人への手紙」 の中で、 パウロが記した凱がい

歌か

の詞を、 美しく歌い上げたソプラノ ・ アリア。  

ヴァイオリンだけが伴奏。 しみじみとした中にも、 強い確信がうかがわれる。

47. FINA. CHORUS 47. 終曲合唱

Worthy is the Lamb that was slain 殺害された小羊にこそふさわしい、

And hath redeemed us to God by His blood, その血をもって神に我らを 贖あがな

った方、

To receive power, and riches and wisdom, 力、富、智恵、強さ、誉ほま

れ、栄光

and strength, and honour, and glory, and blessing. そして讃美を受けることが。

Blessing, and honour, glory and power, 讃美と栄誉と栄光と権力とが、

Be unto Him that sitteth upon the throne, 玉座に座しておられる神にあれ、

And unto the Lamb for ever and ever. そして小羊に、永遠より永遠に。

AMEN. AMEN. アーメン、アーメン。

「あらゆる点から言って最も感動的なコーラス、 規模も巨大で、 ミケランジェロの大壁画に、

生命を吹き込んだような芸術作品」、 と、 津川主一は言う。

「アーメンコーラス」 と呼ばれる最後の部分は、 大規模なフーガ。

ヘンデルの対たい

位い

法ほ う

技術の粋すい

を示している。

【対訳 ・ 解説 飯田 曉】