東京圏におけるペデストリアンデッキを中心とした駅前空間 …奥山研究室...

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東京圏におけるペデストリアンデッキを中心とした駅前空間の領域的複合性 Complexity of Places linked by Pedestrian Deck around Railway Station in Tokyo Metropolitan Area 奥山研究室 10M30282 裕二 (HAYASHI, Yuji) Keywords:ペデストリアンデッキ、駅、複合性、都市空間 pedestrian deck, railway station, complexity, urban space 1. 序 1.1 研究の目的 現代の都市において様々な交通機関が集中する駅前空間で は、歩車分離や建物間の連絡などを目的としてペデストリアン デッキを敷設する事例が多くみられる。こうしたペデストリア ンデッキには、駅前の広場やロータリー、建物などを接続する ことで駅近辺に独自のネットワークを形成するだけでなく、周 辺の都市空間まで伸張することで、都市を構成する様々な領域 が交錯する現代都市のダイナミズムが表れていると考えられ る。このような領域の複合のメカニズムを明らかにすることは、 高密な都市環境と接続する建築を構想する上で重要な知見にな りうると考えられる。そこで本研究では、交通網の発達が顕著 な東京圏 1) におけるペデストリアンデッキをもつ駅前空間を対 象に、ペデストリアンデッキの構成と都市空間との関係を分析 することで、現代の都市における領域の複合性の一端を明らか にすることを目的とする。 1.2 研究の概要 本研究では、交通の集中が顕著にみられる東京圏の駅に接続 するペデストリアンデッキ(以下、デッキ)のうち、駅の他に 2つ以上の建物に接続することで都市空間への広がりをもつ 66 資料 2) (56駅)を対象とする(図2)。こうしたデッキは、様々 なかたちや大きさの領域が配列されることによって、全体をか たちづくっている。ここではかたちの差異によって分節された 領域を構成面と定義し、分析単位とする。構成面の種類 3) は面 状と線状に整理した(図3)。また、図1の田町駅西口のように、 デッキは駅(駅舎及びホーム)に近接したロータリーや広場な どを中心に建物によって囲まれた領域(以下、駅前領域)を基 点として周辺の都市空間に領域的な広がりを形成している。駅 No.02 田町駅西口 田町駅 領域的枠組みの定義 ペデストリアンデッキが形成する 駅前領域の複合性 ペデストリアンデッキによる 周辺領域への領域的拡張性 ペデストリアンデッキを中心とした 駅前空間の領域的複合性 駅に近接して形成されるロー タリーや広場などを中心とし た面的に広がりをもった領域 駅前領域 図 1. 具体例と研究の概要 図 4. 駅前領域と駅の関係 図 5. 駅前領域の用途 図 3. 構成面の種類 面状 面1 面2 面3 線状 駅に隣接する 駅に隣接しない ロータリー R 広場 O 駐車場 P 42 10 3 8 3 56 66 資料 片側 両側 102 46 10 58 8 48 13 163 297 図 2. 駅とペデストリアンデッキの対応関係 構成面 ペデストリアンデッキを平面 的な形状の差異によって分 節した単位 :面状 :線状 模式図 構成面 No. 面1 駅前 駅前 周辺 周辺 駅前 面1 面1 面2 種類 領域 《凡例》 :線状構成面 構成面の種類 周辺との関係 :面状構成面 :駅との接続 :道路と交差 :駅前領域 駅前領域 分岐あり 配列 位置 3面以上 周辺領域 多方向 方向 深度 深度中 1. 2. 3. 4. R×O R×P

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  • 東京圏におけるペデストリアンデッキを中心とした駅前空間の領域的複合性

    Complexity of Places linked by Pedestrian Deckaround Railway Station in Tokyo Metropolitan Area

    奥山研究室 10M30282 林 裕二 (HAYASHI, Yuji)

    Keywords:ペデストリアンデッキ、駅、複合性、都市空間pedestrian deck, railway station, complexity, urban space

    1. 序1.1 研究の目的

     現代の都市において様々な交通機関が集中する駅前空間で

    は、歩車分離や建物間の連絡などを目的としてペデストリアン

    デッキを敷設する事例が多くみられる。こうしたペデストリア

    ンデッキには、駅前の広場やロータリー、建物などを接続する

    ことで駅近辺に独自のネットワークを形成するだけでなく、周

    辺の都市空間まで伸張することで、都市を構成する様々な領域

    が交錯する現代都市のダイナミズムが表れていると考えられ

    る。このような領域の複合のメカニズムを明らかにすることは、

    高密な都市環境と接続する建築を構想する上で重要な知見にな

    りうると考えられる。そこで本研究では、交通網の発達が顕著

    な東京圏 1) におけるペデストリアンデッキをもつ駅前空間を対

    象に、ペデストリアンデッキの構成と都市空間との関係を分析

    することで、現代の都市における領域の複合性の一端を明らか

    にすることを目的とする。

    1.2 研究の概要

     本研究では、交通の集中が顕著にみられる東京圏の駅に接続

    するペデストリアンデッキ(以下、デッキ)のうち、駅の他に

    2つ以上の建物に接続することで都市空間への広がりをもつ

    66資料 2)(56 駅 ) を対象とする(図2)。こうしたデッキは、様々

    なかたちや大きさの領域が配列されることによって、全体をか

    たちづくっている。ここではかたちの差異によって分節された

    領域を構成面と定義し、分析単位とする。構成面の種類 3) は面

    状と線状に整理した(図3)。また、図1の田町駅西口のように、

    デッキは駅(駅舎及びホーム)に近接したロータリーや広場な

    どを中心に建物によって囲まれた領域(以下、駅前領域)を基

    点として周辺の都市空間に領域的な広がりを形成している。駅

    No.02 田町駅西口

    ①⑥

    ②③

    ④⑤

    田町駅

    領域的枠組みの定義 ヘ テ゚゙ストリアンテ ッ゙キが形成する駅前領域の複合性

    ヘ テ゚゙ストリアンテ ッ゙キによる周辺領域への領域的拡張性

    ヘ テ゚゙ストリアンテ ッ゙キを中心とした駅前空間の領域的複合性

    駅に近接して形成されるロータリーや広場などを中心とした面的に広がりをもった領域

    駅前領域

    図 1. 具体例と研究の概要

    図 4. 駅前領域と駅の関係

    図 5. 駅前領域の用途

    図 3. 構成面の種類

    面状面 1 面 2 面 3

    線状

    駅に隣接する 駅に隣接しない

    ロータリー R広場 O駐車場 P

    42103

    8

    3

    56 駅

    66 資料片側 両側

    102

    46 10

    58 8

    4813

    163 297

    図 2. 駅とペデストリアンデッキの対応関係

    構成面ペデストリアンデッキを平面的な形状の差異によって分節した単位:面状 :線状

    模式図

    構成面No. ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨

    面1

    駅前 駅前 周辺辺周 周辺駅前

    線 線 面1 線 線 面1 面2 線種類

    領域

    《凡例》

    :線状構成面構成面の種類

    周辺との関係

    :面状構成面

    :駅との接続:道路と交差:駅前領域

    駅前領域

    分岐あり配列

    位置 3面以上

    周辺領域

    多方向方向

    深度 深度中

    1. 2. 3. 4.

    R×O

    R×P

  • 前領域の性格は、駅との位置関係と用途から整理した(図4,

    5)。本研究では、この構成面と駅前領域という2つの領域的

    枠組みを指標に、2章では駅前領域における構成面の配列およ

    び駅前領域の境界とデッキの位置関係からデッキが形成する駅

    前領域の複合性を、3章では周辺領域 4) におけるデッキの交通

    網の横断数とその広がりの方向からデッキが形成する周辺領域

    への拡張性をそれぞれ捉え、4章でこれらの関係をみることか

    らデッキを中心とした駅前空間の記述を試みる。

    2. ペデストリアンデッキが形成する駅前領域の複合性2.1 駅前領域における構成面の配列と境界との位置関係  

     駅前領域においてデッキは複数の構成面を組み合わせること

    で地上の領域とともに複合的な領域を形成している。そこで、

    駅前領域においてデッキが形成する領域の性格を駅前領域にお

    ける構成面の配列の形式と、駅前領域の境界とデッキの位置関

    係から検討した。駅前領域における構成面の配列の形式は、駅

    前領域における構成面の数と分岐の有無から大きく3つによっ

    て捉えた(図 6)。その結果、複数の構成面が分岐しながら配

    列されるものが多く、その中でも始点となる構成面 5) において

    分岐するものが大半を占めた。さらに構成面の配列で分岐をも

    つ場合、複数の構成面によって環状の構造を形成することで駅

    前領域の中で領域的な中心となることがあり、その有無に関し

    ても検討した。その結果、分岐ありのうち半数程度が環状構造

    をもつことがわかった。次に駅前領域の境界とデッキの位置関

    係は、駅前領域の境界に対する構成面の付帯する位置から、4

    つに大別した(図 7)。その結果、駅前領域の境界のうち、2

    面に位置するデッキが最も多くみられた。また駅前領域を構成

    する建物とデッキの接続関係に関して、建物の接続がみられる

    辺の数から大きく4つに分けて検討した結果、1辺と2辺にお

    ける接続が多くみられた(図 8)。

    2.2 ペデストリアンデッキが形成する駅前領域の複合性

     前節で捉えた駅前領域における構成面の配列の形式と、駅前

    領域の境界とデッキの位置関係から、駅前領域における構成面

    の配列パタンを検討したものが、図 9である。その結果、構成

    面が単数の場合、数に偏りがみられなかった一方で、構成面が

    複数の場合、分岐なしにおいては駅前領域の境界のうち2面お

    よび3面以上に位置するものが、分岐ありにおいては1面およ

    び2面に位置するものがそれぞれ多くみられた。ここで図中に

    示した面状構成面の数を検討すると、分岐ありにおいて複数の

    面状構成面をもつものが多くみられた。このことから駅前領域

    における構成面が単数の場合、状況に応じてその位置関係は変

    化することがわかった。また駅前領域における構成面が、複数

    で分岐がない場合は駅前領域の境界に沿うように構成面が配列

    され、分岐がある場合は複数ある面状構成面を結ぶように配列

    される傾向がある。

    3. ペデストリアンデッキによる周辺領域への領域的拡張性3.1 周辺領域への拡張の方向と深度

     本章ではデッキによる周辺領域への領域的拡張性を、周辺領

    域への拡張の深度および、その方向から検討する(図 10)。周

    辺領域への拡張の深度は、周辺領域における道路や線路などの

    交通要素の横断数(以下、深度)によって、深度2以上のもの

    と深度1のもの、深度0のものの3つに大別した。さらに資料

    によって周辺領域への拡張を複数もつことがあるため、1資料

    分岐なしS L C

    図 9. 駅前領域における構成面の配列パタン

    単数

    なし

    1面

    2面

    3面以上

    分岐あり複数

    駅前領域における構成面の数と配列

    駅前領域の境界とペデストリアンデッキの位置関係

    台場上野津田沼上尾e東神奈川e戸塚e

    03072640a49a51a

    232223

    ❖❖❖❖◆◆

    国際展示場府中n立川n天王洲アイル日暮里川崎さいたま新都心e川越町田

    0620a15a11144537a4218

    ***

    ❖◆◆◆◆◆◆◆-

    312331223

    三鷹多摩センター大宮志木品川大泉学園ユーカリが丘戸塚w

    1621384108133251b

    **

    ❖❖❖❖◆◆◆◆

    11322112

    船橋さいたま新都心w田町溝の口川口

    2537b024735

    **

    ❖❖❖❖◆

    13223

    府中s東松山東神奈川w

    20b4349b

    ◆--

    112

    新宿大崎福生市役所前

    01102324

    ❖❖◆-

    2111

    保谷北小金新浦安s武蔵浦和藤沢n八千代緑が丘n鹿島田

    173031b3655a34a48

    ❖◆◆◆◆--

    2222321

    立川s柏e柏w竹芝大井町八千代緑が丘s新百合ヶ丘海老名

    15b27a27b050934b4656

    ❖❖❖◆◆◆◆◆

    33222123

    新橋河辺横須賀中央東戸塚

    市川中山上尾w

    04225450

    335240b

    ◆◆◆-

    0111

    ◆◆-

    020

    北千住八王子新浦安n所沢

    121931a44

    ◆◆--

    1211

    南柏松戸橋本藤沢s久喜

    28295355b39

    ◆◆◆◆-

    21231

    13

    15

    20

    18

    4

    16 22 2850

    3

    4

    5

    3

    4

    7

    8

    6

    8

    9

    5

    始点分岐 始点・途中分岐 途中分岐

    16 22

    単数 S 複数分岐なし L 分岐ありC

    19 4 5

    2850

    環状構造* あり

    なし図7との

    対応関係

    1面2面3面

    1200

    0433

    5331

    3353

    2245

    2147

    1

    なし 4

    3

    2

    7

    1211

    18なし 1面 2 面 3 面以上13 15 20

    なし 1辺 2 辺 3辺

    図 6. 駅前領域における構成面の配列の形式

    図 7. 駅前領域の境界とペデストリアンデッキの位置関係

    図 8. 駅前領域におけるペデストリアンデッキと建物の接続

    3 10 12

    22

    13 13

    26

    14

    No.09 大井町駅

    《凡例》面状の有無(◆単数❖複数)

    建物の接続辺環状構造の有無

    No. 資料名

    No.04 新橋駅

    No.16 三鷹駅

    No.15a 立川駅 北口

  • あたりの拡張の組合わせを最大深度2以上の《深度大》と最大

    深度1の《深度中》、最大深度0の《深度小》の3つに整理した。

    また拡張の方向は、深度1以上の拡張の方向によって一方向と

    多方向の 2つに分類した。また一方向のとき、深度1以上の拡

    張の数から単数と複数に分けて捉える。

    3.2 ペデストリアンデッキの周辺領域への拡張パタン

     前節で捉えた1資料あたりの周辺領域への拡張の深度の組合

    わせとその拡張の方向との関係からデッキによる周辺領域への

    拡張性を検討した(図 10)。その結果、周辺領域への拡張の深

    度の組合せが《深度大》のとき一方向で単数のものと多方向の

    ものがともに多くみられた。一方で、《深度中》のとき一方向

    で単数のもののみが顕著にみられた。またこのとき、拡張の組

    合せの内訳をみると、《深度大》で多方向のとき、深度0の拡

    張を併せもつことが多くみられた。以上のことから、周辺領域

    に対して一方向に単一で拡張するものと多方向に様々な深度を

    もって拡張するものというデッキによる周辺領域への拡張性に

    関する2つの側面がわかった。

    4. ペデストリアンデッキによる駅前空間の領域的複合性4.1 駅前領域と周辺領域の領域的連続性

     本章では、ここまで検討してきたデッキが形成する駅前

    領域の複合性と周辺領域への拡張性の関係から、デッキを

    中心とした駅から周辺の領域へと広がる駅前空間の領域的

    複合性を検討する。このような検討にあたり、まず駅前領

    域の境界と構成面の関係を検討した。その結果、資料の半

    数で駅前領域の境界を跨ぐものがみられた。さらに、駅前

    領域と周辺領域における建物への接続数の比較を行った結

    果、半数以上のものが周辺領域においてより多くの建物と

    の接続をもつことがわかった。(図 12)。

    4.2 ペデストリアンデッキによる駅前空間の領域的複合性

     2章で捉えた駅前領域における構成面の配列の形式と、

    3章で捉えた周辺領域への拡張の深度組合せとの関係か

    ら、デッキを中心とした駅前空間の領域的複合性を検討し

    たものが図 13 である。これを周辺領域への拡張の深度ご

    とに比較する。まず周辺領域への拡張が少ない《深度小》

    と《拡張なし》について比較した。駅前領域における配列

    の形式が【複数・分岐あり】においては、《深度小》と《拡

    張なし》の双方がみられた。この《深度小》は田町駅西口

    のように、駅前領域において分岐した領域を形成し、近接

    した周辺領域への拡張がみられるものであり、このとき 3

    つ以上拡張をもつものが多くみられた。一方で、駅前領域

    における配列の形式が単数の構成面で構成される【単数】

    においては《拡張なし》に、【複数・分岐なし】においては、《深

    度小》に偏る傾向がみられた。前者は、河辺駅北口のよう

    に単一の構成面によって完結した領域を形成するものであ

    る。後者は大井町駅東口のように、複数の構成面が直列に

    並び、近接した周辺領域へと拡張するものであり、このと

    き駅領域の境界とデッキの位置関係が 3面以上のものが多

    くみられた。次に周辺領域への拡張の深度が中以上のもの

    について比較すると、《深度中》では【複数・分岐なし】が、《深

    度大》では【複数・分岐あり】が多くみられた。特に前者

    は新宿駅西口のように周辺領域において一方向へ拡張する

    ものが大半であるのに対して、後者は多方向に拡張するも

    図 10. ペデストリアンデッキの周辺領域への拡張性 図 12. 駅前領域と周辺領域における建物接続数の比較

    図 11. 駅前領域の境界と構成面の関係

    拡張要素の種類

    拡張要素①

    駅前領域 拡張要素②

    深度2 以上

    A

    a

    b

    深度

    深度

    深度

    深度1

    深度0

    道路線路

    周辺領域への拡張数1以上の方向周辺領域への拡張の深度

    周辺領域への拡張の深度

    数は該当する資料数を表す

    数は該当する拡張数を表す

    駅前領域>周辺領域 駅前領域≦周辺領域

    No.10 大井町駅一方向

    単数 複数多方向

    35

    32 34

    31

    20

    22

    13

    拡張なし

    11

    領域を跨ぐ構成面をもつ

    領域を跨ぐ構成面をもたない

    8

    25

    26

    39

    50

    530

    12

    42

    17

    4 8

    1

    13 11

    4

    AA(1)AAA(1)

    AAb(1)

    aab(2)

    Aab(1)Aabb(1)Aaab(1)Aabbb(1)

    Aa(2)

    AA(1)

    aaa(2)

    Aa(2)

    a(12)

    A(5)

    ab(4)abbb(1)

    b(4)bb(4)bbb(2)bbbb(3)

    Ab(3)

    aa(1)

    駅前領域

    周辺領域

    構成面が駅前領域と周辺領域を跨ぐことによる領域の連続

    N

  • のもみられた。このとき前者は駅前領域の境界を跨ぐ構成

    面をもたないものが多いのに対し、後者は多くのものが境

    界を跨ぐ構成面をもっていた。

    5. 結 以上、ペデストリアンデッキが形成する駅前領域の複合

    性と周辺領域への拡張性から、ペデストリアンデッキを中

    心とした駅前空間の領域的複合性を検討した。その結果、

    周辺の都市空間への広がりをもたないデッキに関しては、

    駅前領域内での多様な領域形成のあり方がみられた。それ

    に対して、周辺への広がりをもつデッキに関しては、駅前

    領域内に単純な領域の連続をつくると同時に、周辺の都市

    空間に一方向の広がりをもつものと、駅前領域内に高密な

    ネットワークを形成し、さらに周辺の都市空間へと拡散的

    な広がりを形成するものという2つの特徴的なあり方を見

    出した。このことは、一見複雑にみえる駅前空間の領域の

    複合のメカニズムを明らかにすると同時に、高密な都市環

    境に接続する建築の都市に対する領域形成の枠組みを考え

    る上での一つの方法となりうると考えられる。東京圏とは、東京、千葉、埼玉、神奈川の1都3県を指す。

    56 駅のうち、ひとつの駅に対して2つのペデストリアンデッキが接続するものが

    みられたため、ここではそれぞれをひとつの資料とし、66資料を分析の対象とする。

    構成面は、平面的な形状が変化した所で、分節したものである。その種類は、幅

    員および、短手と長手の長さの比から分類している。面1は、幅員6m以上で長

    さの比が1:2以内のものである。面2は、幅員6m以下だが長さの比が1:2

    以内の環状の平面をもつものである。面3は幅員6m以上で、長さの比が1:2

    以上のものである。以上の3つをここでは、面状の構成面とし、それ以外のもの

    を線状の構成面とする。

    ここでは駅前領域外の領域を、周辺領域として定義する。

    駅前領域において駅に近接した構成面をここでは始点となる構成面として考える。

    註1)

    2)

    3)

    4)

    5)

    図 13. ペデストリアンデッキを中心とした駅前空間の領域的複合性

    駅前領域 周辺領域

    《模式図》

    配列:単数位置:なし

    拡張なし

    《模式図》 《模式図》具体例

    駅前領域 周辺領域配列:分岐あり位置:1面

    深度 大一方向

    複合

    No.22 河辺駅 北口 No.01 新宿駅 西口 No.38 大宮駅 西口

    駅前領域 周辺領域深度 中一方向

    配列:分岐なし位置:1面

    《模式図》

    No.02 田町駅 西口

    複合駅前領域 周辺領域

    深度 小配列:分岐あり位置:3面

    駅前領域配列:単数位置:2面

    周辺領域深度 小

    《模式図》

    No.09 大井町駅 東口

    拡張の深度 大なし 小

    周辺領域への拡張の深度

    駅前領域における構成面の配列の形式16 22 28

    0 3 53 2 7

    12

    0 2 26 8 4

    2 5 65 2 4

    S 単数 L 複数・分岐なし C 複数・分岐あり

    深度

    深度

    深度 小

    拡張なし

    多方向

    一方向

    多方向

    一方向

    駅前領域資料名No.

    周辺領域位置面状環状 A a b

    建物接続

    駅前領域資料名No.

    周辺領域位置面状環状 A a b

    建物接続

    駅前領域資料名No.

    周辺領域位置面状環状 A a b

    建物接続

    10 66

    3 5

    1077

    8

    1220

    4

    1822

    13

    11

    周周周周周

    台場戸塚w天王洲アイル川崎さいたま新都心w

    ●◯●●◯●◯◯

    ●◯●

    0351b114537b

    01223

    ❖◆◆◆❖

    ●●◯●

    周周駅

    大崎武蔵浦和柏e

    ●●◯

    ◯◯◯◯

    103627a

    123

    ❖◆❖

    ◯●◯

    駅駅駅駅駅

    河辺横須賀中央所沢南柏久喜

    2254442839

    00233

    ◆◆

    駅駅

    保谷北小金

    1730

    22❖◆

    駅駅駅駅

    津田沼上尾e戸塚e志木

    2640a51a41

    0001

    ◆◆◆❖

    周周

    市役所前立川s

    ◯◯◯

    2415b

    13 ❖

    周周周

    新橋東戸塚松戸

    ●◯◯ ◯

    045029

    003

    周周周周周駅駅

    多摩センター大宮品川大泉学園立川n川越川口

    ◯◯●●◯◯◯◯◯

    2138081315a4235

    1111223

    ❖❖◆◆◆◆◆

    **

    ●◯

    ★★

    周周

    鹿島田海老名

    ◯◯●◯◯

    4856

    23 ◆

    ● 駅周

    上野国際展示場

    ●●◯●◯

    0706

    02❖❖ * ●

    周駅周駅駅駅

    上尾w中山北千住八王子新浦安n橋本

    ●◯◯◯◯◯

    40b52121931a53

    112223

    ◆◆◆

    ◯◯◯

    周周周周駅周駅駅

    府中s東神奈川w新宿福生新浦安s八千代緑が丘n藤沢n柏w

    ●●●◯◯◯◯◯◯

    20b49b012331b34a55a27b

    00112223

    ❖◆◆

    ◆❖

    駅周周駅

    三鷹ユーカリが丘さいたま新都心e船橋

    ●●●◯

    163237a25

    1123

    ❖◆◆❖**

    周駅駅周駅

    東松山竹芝大井町八千代緑が丘s新百合ヶ丘

    43050934b46

    03333

    ◆◆◆◆

    ●●●◯◯◯●◯●◯

    周駅

    市川藤沢s

    3355b

    13◆◆

    ●◯◯◯◯◯

    駅駅周駅駅周

    東神奈川e日暮里府中n田町町田溝の口

    49a1420a021847

    022333

    ◆◆◆❖

    ❖*

    ●●●◯◯●●●◯●◯◯◯●

    《凡例》No. 資料名 周辺領域への深度

    建物接続数の比較駅前領域

    ●跨ぐ構成面あり◯跨ぐ構成面なし