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「コミュニティ・スペース」の機能と可能性 バートン及び別府のコミュニティ・カフェにおける インタビューからの考察 平成22年3月 オックスフォード大学大学院 社会政策学部比較社会政策修士課程 藤原 裕子

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「コミュニティ・スペース」の機能と可能性

バートン及び別府のコミュニティ・カフェにおける

インタビューからの考察

平成22年3月

オックスフォード大学大学院

社会政策学部比較社会政策修士課程

藤原 裕子

1

「コミュニティ・スペース」の機能と可能性

―バートン及び別府のコミュニティ・カフェにおけるインタビューからの考察

オックスフォード大学大学院社会政策学部比較社会政策修士課程 藤原 裕子

1.はじめに

本報告は、平成22年2月5日及び6日に開催された「大分大学福祉科学研究セン

ター福祉のまちおこし研究会」の場における標記報告を、その後の研究の進展等を加

えて書き下ろしたものである。本報告は、筆者の修士課程論文(平成22年6月提出

予定)のための研究の中間報告という位置付けである。当該報告の内容及び結論は、

現時点までの研究の進展に基づいて導かれた一時的なものであり、今後の加筆・修正

が予定されている。

1-1.研究の背景及び目的

近年わが国では、社会の変化に伴い、地域における多様な問題・課題が顕在化して

きている。「地域福祉」の言論の隆盛ともあいまって、これらの諸問題・諸課題に対応

できる地域を基盤にした柔軟なネットワークの力に期待が寄せられている。親族、友

人、お隣さんといった人々によって構成される地域におけるインフォーマルなつなが

り(インフォーマル・サポート・ネットワーク)は、公的な支援制度が整ってきた現

在においても依然として重要である。他方、近代化や都市化、人々の移動の活発化等

により、地域のインフォーマルな「福祉力」の衰退、つまり、地域におけるつながり

の弱体化が問題となっている。社会や家族における個人の重視も、地域における連帯

という価値観の優位性に変化をもたらしている。

このような背景のもと、どのように地域におけるインフォーマル・サポート・ネッ

トワークを構築し、維持し、拡大し、強化していくかは喫緊の課題である。様々な取

り組みが実践されている中、コミュニティ・カフェに注目が集まっている。コミュニ

ティ・カフェは、地域の人々にとって、思い思いに訪れ憩うことができる場であると

ともに、他の人との交流の場や様々な活動の場にもなり得る。言い換えるとコミュニ

ティ・カフェは、「憩う」というカフェの本来的な機能を超えた役割を持ち、地域に利

益をもたらす可能性を秘めている。「カフェ」という形態に限らず、人々に憩いと集い

の場を提供することを目的とする地域の空間、すなわち「コミュニティ・スペース」

は、地域に根ざしたネットワーク形成を含む、地域の向上の強力なツールになり得る

と考えられる。

上記の理解に立ち、本研究は、「コミュニティ・スペース」の機能とその地域におけ

る可能性について考察するものである。具体的には、本研究では「コミュニティ・ス

ペース」の代表格であるコミュニティ・カフェを題材に、別府市中心市街地とオック

スフォード市バートンの比較研究により、「コミュニティ・スペース」が地域の中で果

2

たしうる機能と可能性について考察する。

1-2.研究課題

本研究では、大きな問いを1つ設けた上で、それを3つの下位の問いに分割して研

究を進めた。なお、質問を設けるに当たり、わが国における高齢化の進展状況及び別

府における地域の課題が高齢化社会への対応であること等を踏まえ、本研究では特に

高齢者の福祉に特に焦点を当てることとした。その上で、若い世代との比較研究を行っ

た。

問:地域で独立して暮らす高齢者は、どのように地域におけるインフォーマル・サ

ポート・ネットワークを構築し、拡大しているか。

1.高齢者は、自らの暮らす「地域」をどのように認識しているか。

2.高齢者は地域において、どのようなインフォーマル・サポート・ネットワー

クを有しているか。

3.高齢者は、「コミュニティ・スペース」における経験やそのインフォーマ

ル・サポート・ネットワークにもたらす影響及び地域の変化について、どの

ように認識しているか。

1-3.研究方法

本研究は、バートン及び別府のコミュニティ・カフェの訪問者及びマネージャーへ

の半構造的質的インタビューによるデータ収集を中心とした 1

。カフェ訪問者につい

ては、本研究が高齢者の福祉への影響を主眼としていることから、高齢者に優先的に

アプローチする方針で回答者のリクルートを行った。なお、高齢者の定義については、

当初65歳以上とすることを予定していたが、年齢に関する質問に対し、「○歳代」と

いった回答や「退職している」「高齢である」といった回答が見られたため、高齢者の

定義を「60歳以上。退職者等も含む。」に変更した。インタビューの詳細は表1のと

おりである。

バートン 別府

実施期間 平成21年11月下旬から

平成22年1月中旬 2

平成21年11月

カフェ訪問者 18名。うち12名が60 21名。うち11名が60

1 別府のコミュニティ・カフェにおけるインタビューについては、大分大学社会福祉研究センター

の研究者の方々に実施していただいた。ここに、改めてお礼を申し上げる。 2 クリスマス期間によるカフェの休業に加え、平成22年1月初旬、大雪のためにカフェが2週間

ほど休業となったため、インタビューに比較的長い期間が必要となったものである。

3

歳以上。 歳以上。

カフェのマネージャー 6名。(カフェのマネー

ジャーの他、カフェの立ち

上げに参加したコミュニ

ティ・ワーカー、カフェス

タッフの指導訓練担当者等

を含む。)

2名。(カフェのマネー

ジャー及びコミュニティ・

カフェの社会実験担当の研

究者。)

表1:バートン及び別府におけるインタビューについて

注1:回答者の年齢、性別、居住期間等詳細については、「インタビュイー一覧」を参照のこと。

注2:以後、本報告においては、インタビュー回答者を以下のとおり表記する。数字は「インタ

ビュイー一覧」中の回答者番号に対応している。

Vb1, Vb2…バートンカフェ訪問者

Vj1, Vj2…別府カフェ訪問者

Mb1, Mb2…バートンカフェマネージャー

Mj1, Mj2…別府カフェマネージャー

データ分析については、主に、グランデッド・セオリーに基づくグラウンデッド・

コーディング(Strauss and Corbin 1998)によった。

また、補助的に、既存の統計、市役所等により作成された行政文書及び地元の新聞

等をデータとして利用した。具体的には、既存の統計(国勢調査等)によりバートン

と別府の比較、英国で実施されている団地単位での地域診断(Super Output Area

Analysis)結果やローカル誌(Oxford Mail 及び合同新聞)の記事等を用いた文献分析

を行った。

2.研究対象地域について

本セクションでは、バートン及び別府の地理について記すとともに、人口、その他

特徴等について、既存統計等による比較結果を記述する。

既存統計等の利用による研究対象地域の比較については、統計調査の地区の単位及

び調査年に不一致がある。調査地区の単位については、バートンの場合には、英国国

家統計局(Office of National Statistics)が公表している「ネイバーフッド・スタティス

ティックス」(Neighbourhood Statistics)により、団地レベルで採られた各種統計デー

タを利用することができるが、別府のコミュニティ・カフェが存在する地域(「南地区」)

単位でのデータは、別府市による人口統計のみが入手可能であった。そのため人口以

外のデータについては、別府市単位で処理されたものを使うこととした。また、調査

年については、ネイバーフッド・スタティスティックスが平成13年の英国国勢調査

のデータに基づいているのに対し、別府のデータは、別府市による地区別人口データ

4

は毎月更新、その他のデータは平成17年の国勢調査に基づくものであった。このよ

うな不一致を考慮しても、統計データを含む既存の調査研究に基づいて両地域の全体

像を理解するのは十分意義のあることと思われるため、以下にバートンと別府(南地

区)に係る本研究の前提となる情報について、比較の視点から記載する。

2-1.地理について

バートンは、英国(図1)中東部オックスフォード市(図2の赤い部分)の北東の

境界部に位置する団地である。図3においては、薄い黄色で塗られた部分及びその右

側の青い線に囲まれた部分も併せた部分がバートンである。バートンの入り口には交

通量の多いラウンド・アバウトが位置しており、バートン住民にとって、各種サービ

ス等へのアクセスの「障壁」となっている(Barton Community Association 2007)。

図1 英国地図 図2 オックスフォードシャー及びオックスフォード市地図

図3 バートン地図

他方別府は「九州の北東部、瀬戸内海に接する大分県の東海岸のほぼ中央」にあり、

山々と海に囲まれた扇状地に立地している(別府市役所企画部政策推進課 2009)。

5

研究対象コミュニティ・カフェが存在する地域は、別府市の中心市街地(南地区)で

ある。

図4 別府市地図

2-2.人口等について

バートンの人口 3

は、平成13年の国勢調査によれば、総人口5881人、うち6

5歳以上高齢者が807人で、高齢化率は14%となっている。14歳以下人口の割

合は20%であり、バートンの人口構成はそれが若い団地であることを示している。

他方、別府の南地区は、平成21年12月現在のデータによれば、人口4966名、

65歳以上人口38%、14歳以下人口10%となっており、高齢化がかなり進んだ

地域であると言える。同地域の高齢化の状況は、別府市全体(28%)と比較しても

高くなっている。

年代 バートン オックスフォード市 南地区 別府市

14歳以下 1,194 (20) 20,112 (15) 441 (10) 14,453 (12)

15歳から64歳 3,880 (66) 96,672 (72) 2,665 (54) 72,844 (60)

65歳以上 807 (14) 17,464 (13) 1,860 (38) 33,923 (28)

合計 5,881 134,248 4,966 121,220

表2:バートン及び南地区の年代別人口構成 注1:バートン及びオックスフォード市のデータは平成13年国勢調査に、別府市及び同市南地区

のデータは別府市による平成21年12月現在のデータによっている。

2-3.その他の特徴について

3 バートン及び隣接する団地であるサンド・ヒル(Sandhills)を含めた数値。なお、表2の総人口

中6割強がバートンの人口である。

6

バートンは、団地の半分強の住宅がカウンシル・ハウジング(市の斡旋により入居

する住宅)となっている 。団地そのものがカウンシル・ハウジングの供給地として

発展してきたという経緯がある。近年は持ち家も増えつつあるが、依然としてカウン

シル・ハウジングが半数以上(平成13年国勢調査の結果によれば、56%)を占め

ている(Oxford City Council 2009)。

また、住民1500人規模を単位とする地域診断(Super Output Area (SOA))によれ

ば、バートンはオックスフォード内で「剥奪指標」(Index of Multiple Deprivation)の

スコアが高い地域である。SOAの7つの調査分野中6分野において「高度に剥奪さ

れた地域」(highly deprived)と診断されている(Oxford City Council 2007)4

最後に、バートンは治安の問題が心配されていた地域である。1980年代にはナ

イフ犯罪や麻薬の使用が摘発され、「悪夢の団地」(a nightmare estate)などと形容さ

れることもあった(Oxford Mail 2001)。

。とりわ

け、教育や技能訓練の状況に問題があるとされている。

別府について資料から浮かび上がってくるものは、バートンとは対照的なイメージ

である。例えば別府は温泉保養地や観光地として発展しており(別府市役所企画部政

策推進課 2009)、知名度も高く、全国各地から人々を集めている。

3.研究結果

3-1.「居場所のある地域」

(1)はじめに

質的調査により研究を行った研究課題の1点目は、一般の人々の「コミュニティ」

の認識についてである。「コミュニティ」はあいまいな言葉であり、過去の研究は、そ

の定義が非常に困難であることを示唆している(Mayo 1994 等)。学問の世界のみなら

ず政策の分野でも「コミュニティ」しばしば使われているが、やはりその具体的な意

味は明らかでないことが多く、「暖かなあいまいさ」(warm fuzziness)(Smith 2008)に

包まれている。一般の人にとって「コミュニティ」とは何かというのは、同様に、あ

いまいであることが多い(Hampton 1970)。

過去の研究によれば、「コミュニティ」へのアプローチでしばしば使われるものは、

行政単位である市区町村や隣近所「地理的なコミュニティ」という定義と、職場の人

間関係や趣味の仲間といった「興味関心に基づくコミュニティ」である。現代の社会

では、地縁を中心に育まれる「地理的なコミュニティ」は減少・弱体化しており、興

4 SOAの指標は「所得」、「雇用」、「健康と障害」、「教育・技能及び訓練」、「住宅やサービ

スを受ける上での障壁」、「犯罪」、「生活環境」 の7項目である。平成19年の分析によれば、

「生活環境」のみ「剥奪」のない状況であり、「教育・技能及び訓練」はイングランド内で上位1

0%、その他については上位3分の1に計上される「剥奪」状況となっている。

7

味関心に基づくコミュニティの拡張が顕著であるといわれている(Smith 2008)。しか

しながら、高齢者の福祉の観点、とりわけ、日常的なサポート体制について考えると

きには、実際に顔を合わせ、心理的及び物理的支援を必要に応じて提供できる地理的

な意味合いのコミュニティは、依然として不可欠の存在であると言える。

以上の問題意識から、本研究では、バートン及び別府のコミュニティ・カフェ利用

者の主観的なコミュニティを探ることを最初の課題とした。具体的な研究は英国にお

ける先行研究(Hampton 1970)にならい、次の二つの質問から、個々人の「居場所の

ある地域」(Home Area)を把握することを試みた。なお当該先行研究は、コミュニ

ティに関連する各種施策に住民自身の視点が含まれていないことを問題視して取り組

まれたものであり、「コミュニティ」の語は「技術的」(technical)であるとして退

けた上で、代わりに「Home Area」の語をその同義語として援用している。

質問1. ご自身の愛着があって「居心地がいい」と感じられる居場所のある地域

はどこですか。その場所についてご説明ください。ご自宅を含め、どんな

大きさや形の地域でもかまいません。

Question1. Is there an area (which would include your home address in Oxford but which

could be of any size or any shape) which you would say you belong to and where

you feel ‘at home’?

質問2. もし、何らかの理由で、あなたが「居場所のある地域」を出て行かなけ

ればならない場合、どのくらい残念、あるいはうれしいとお感じになるで

しょうか。

Question2. Supposing, for some reason, you had to move away from your ‘home area’,

how sorry or pleased would you be to leave?

さらに本研究のインタビューでは、上記の質問に加え、「居場所のある地域」に関

する自由なコメントも求めた。

インタビューの結果、まず、当該研究手法の問題点が明らかになった。「居場所のあ

る地域」に関する上記の質問は、数人の回答者にとって理解しにくいものであったこ

とが判明し、「わからない」という回答や、「地域」についてではなく「点」(自宅、カ

フェ等)の回答が目立った。また、「点」ではなく広がりのある「地域」に関する回答

を求めようとする質問者の試みが、回答者(特に高齢者の場合)をさらに混乱させた

ようにも見受けられた。従って、過去の研究手法に則って個々人の主観的なコミュニ

ティを探る取り組みは、データ収集における困難のために難しくなった。しかしなが

ら、得られたデータからある程度の考察は可能であると判断されたため、インタビュー

8

結果を予定どおり分析することとした 5

。質問1と質問2への回答をクロス集計した

結果は表3-1及び3-2の通り。なお、当該表は量的分析に係る目的ではなく、二

つの質問への回答のパターンを示す目的で掲載するものである。

17名の回答者(うち12

名が高齢者)

残念に

思う

残念に

思わない

わ か ら

ない

回答なし

計 17 (12) 9 (4) 4 (4) 2 (2) 3 (2)

自宅周辺の地域 9 (5) 7 (3) 1 (1) 0 1 (1)

自宅 3 (2) 2 (1) 1 (1) 0 0

「居場所のある場所」なし 3 (3) 0 2 (2) 0 1 (1)

わからない 3 (2) 0 0 2 (2) 1 (0)

表3-1: 「居場所のある地域」に関するインタビュー結果(バートン)

21名の回答者(うち11

名が高齢者)

残念に思う 残念に

思わない

回答なし

21 (11) 14 (6) 5 (3) 2 (2)

自宅周辺の地域 2 (1) 2 (1) 0 0

自宅 13 (7.5) 8 (3) 3 (2.5) 2 (2)

その他 6 (2.5) 4 (2) 2 (0.5) 0

表3-2: 「居場所のある地域」に関するインタビュー結果(別府)

注1:括弧内は「60歳以上」又は「退職」している回答者数。

注2:別府の回答者のうち3名が2箇所以上を回答として挙げた。全ての回答が「点」に係るもの

であった場合には、1を回答数で当分して得られた数値(例えば、回答数が2であれば0.5)

を計上した。一つの回答が他の回答で示された地域(又は「点」)を包含する場合には、当該広

範囲の回答を唯一の回答と見なして取り扱った。

注3:別府における「その他」の内訳は、カフェ、レストラン、テニスコート、職場、海岸線等。

(2)分析:バートン

バートンにおいては、約7割の回答者が「居場所のある地域」を認識しており(17

名中12名)、彼らはまた、バートンを離れることについても残念であると思う傾向が

見られた。「居場所のある地域」を認識している回答者は、バートンに対してポジティ

ブなイメージを持っている傾向が見られた。具体的には、公共サービスの利便性、環

5 なお、「居場所のある地域」に係る質問において「地域」の回答が得られなかった場合には、以降

のインタビューにおける「居場所のある地域」に関する質問は、回答者の「自宅周辺の地域」に係

るものと整理した。

9

境のよさ(田舎であること、森林や牧草地があること等)が挙げられる。

‘I love Wick Farm [a little village adjourning to Barton]. I love Wick Farm. The living

environment is great with excellent bus services!’

「僕はウィック・ファームが大好きだ。愛しているくらいだ。生活環境は最高

だよ、すばらしいバスサービスがあって。」

V b11

また、バートンは過去に犯罪等の問題が深刻であったことから、それらが改善され

地域が向上したことが好感につながっている回答も複数見られた。これらの回答は、

居住期間の知長短を問わず見られた。

‘It [Barton]’s now never used to be. There uses to be gangsters.’

「バートンはこんなによくなかったのよ 。昔は悪ガキがいたのよ。」

V b2(居住期間58年)

‘It’s not bad today but there used to be kids there, drinking and laughing and chatting

around. But touch wood, since they made the shop bigger, things are all in there. You

can’t see anybody. Things became much better, yeah.’

「今のバートンはそんなに悪くないけど、昔は子供がそこかしこにいて、飲酒

をしたり笑ったりおしゃべりをしていたものよ。でも、ありがたいことに、お

店が拡大してからは、みなお店に行くようになった。今は誰も外にいないでしょ

う。バートンはずいぶんよくなったものよ。」

V b1(居住期間5年)

また、コミュニティ・センターがあるためにバートンが好きであるという回答者が

複数見られた。

‘I belong here. In this centre... I hope it (leaving Barton) never comes... I want to die in

the Barton centre. My life is here.’

「私はこのセンターに愛着を感じています。バートンを離れなきゃならないな

んていうことが決してないといいけれど…。バートン・センターで死にたいく

らいよ。私の人生はここにあるから。」

V b2

10

‘I feel Barton is it [Home Area] because of the community centre. Because of the

community centre I got involved in the community. ... you know, a community centre

can do a lot.’

「『居場所のある地域』はバートンです。なぜならコミュニティ・センターが

あるから。コミュニティ・センターがあったから私はコミュニティに参加する

ことができました。コミュニティ・センターはいろいろ役に立つのです。」

V b12

回答者の年代による特別な違いは見られなかった。

少数の「居場所のある地域」を持たない回答者は、バートンを離れることについて

も何とも思わない傾向が見られた。その原因としては、バートンの過去及び現在の問

題(犯罪、貧しさ、不十分な教育等)が挙げられた。回答者の年齢や居住期間による

特徴は見られなかった。

‘No, not really [have Home Area]. Because it’s a poor estate, too many badly behave

people, too many criminals. I will move one day.’

「『居場所のある地域』は思いつかないなぁ。なぜならここは貧しい団地で、悪

い行いをする人や犯罪者がたくさんいるから。僕はいつか出て行くつもりだ。」

V b5

‘Descriptions of Barton as ‘a nightmare estate’ and of a section of young people as

‘seething, feckles, dangerous no-hopers.’ ‘Thugs fear on council estate’, stories of bus

drivers.

「バートンは 『悪夢の団地』と表現され、その若者たちは『イライラしてい

て、無気力で、危険で、希望がない』と称される。『悪党だって市の団地が怖い

よ』とバスの運転手は語る。」

Oxford Mail 2001. Feb 21

(3)分析:別府

別府においては、全ての回答者が「居場所のある地域」を持っていた。大半(21

名中13名)の回答が自宅(自宅の一部(自室等)を含む。)であり、その他、別府

そのもの、コミュニティ・カフェ、テニスコート等の回答があった。

「居場所がある」と感じる理由については、生活上の(地理的な)利便性や景観の

よさ、家の設備(庭、自宅の温泉等)といった物理的環境に係るもののほか、居住期

間の長さや、それが人に対する愛着に発展した場合が見られた。

11

「(『居場所のある地域』は)自宅。50年も住んでいると愛着があり、自宅

に温泉があるところも気に入っているから。」

V j2

「楠町で生まれ育ったので楠町に愛着があり、現在も鶴見町から事務所に通っ

てきている。『居場所のある地域』はその事務所。自分が生まれたところだし、

知り合いもたくさんいる。」

V j19

「居場所のある地域」を持っている回答者のうち、76%が別府を離れることにつ

いて残念に思うと回答した。その理由としては、「居場所がある」と感じる理由と同

様のものが多く挙げられたほか、現在住んでいる土地への愛着に基づく回答が見られ

た。具体的には、「先祖伝来の土地」であるため、「生まれ育った土地であるため」

等である。

「(別府を離れることになったら)寂しい。出て行かない。自分が生まれたと

ころだから嫌だ。それに、先祖伝来の土地を放っておくことはできない。」

V j19

「人と話をしたり電話をしたりすることが嫌いなので、一人になりたいときに

一人になれる場所、自分の部屋にいると居心地がいい。今の住まいを離れたら

生まれ育った場所を捨てることになるので悲しい。」

V j14

別府においても、「居場所のある地域」を認識しつつ、離れることに問題はないと

答えた回答者が数名見られた。その理由としては、別府に対する否定的な意見に基づ

くものはごくわずかであり、別の土地での新しい友人関係への期待に基づくもののほ

か、別府と何らかの接点を残しておくだろうから寂しくはない、といった趣旨のもの

が見られた 6

。友人関係に係るコメントは、インフォーマル・サポート・ネットワー

クにおける友人関係の重要性を示すものであると解釈できる。回答中、年代の差によ

る特徴は見られなかった。

6 その他、「長期滞在型旅行者」である回答者が、別府を離れることについて何の未練もないと回答

した。

12

「自分は足が悪いが、友達がたくさん遊びに来てくれる。趣味の手芸を一緒に

して、教えたり教えてもらったりしながら過ごしている。忙しくてテレビを見

る暇もないほど。ご近所さんも多く知っている。マルショクに行く途中に通る

商店街のおじさん、電気屋さんの奥さん、美容室の奥さんなど知り合いが多く、

みなさん良くしてくれる。…どこにいっても友達がすぐにできるので寂しくは

ない。」

V j10

「引越しならそれはそれで受け入れる。現在の住まいを出ることになった場合

は、土地に愛着があるので、駐車場にするなどして残しておく。」

V j17

「もし離れることになったら仕方がない。ちょくちょく遊びに来ると思うので

寂しくはない。」

V j20

(4)比較と議論

バートン及び別府のいずれも、回答者のうち多数が「居場所のある地域」(又は場

所)を持っていたが、「居心地がよい」と感じる理由に違いが見られた。バートンに

おいては、物理的環境のよさや公共サービス等の利便性に基づくものや、バートンの

過去の状況に比較してよくなったという認識に基づくものが主であるのに対し、別府

では、物理的環境や利便性に加え、居住期間や土地との特別な関係性(生まれ育った

土地、先祖伝来の土地等)に基づくものが見受けられた。「居場所のある地域」を有

している回答者のほとんどが、バートン又は別府を離れることについて残念に思う傾

向が見られた。これらの回答者は、先行研究の枠組みに従えば、主観的な「コミュニ

ティ」を認識している人々であると理解できる。また、バートンの回答者中にのみ、

「居場所のある地域」を有していない回答者が見られた。

バートンと別府における「居場所がある」と感じる理由及び離れることについて「残

念である」又は「残念でない」と感じる理由の差異については、両地域の成り立ちや

歴史的背景の違いが挙げられる。バートンはカウンシル・ハウジングとして出発し発

展した地域である。カウンシル・ハウジングの入居者は、基本的に、自らバートンを

選んで移転してきた訳ではなく、市役所やハウジング・カウンシルから家を割り振ら

れて移転してきたにすぎない。従って、自ら住む土地を選び、さらには家を購入して

住む場合に比べて、土地や家に対する愛着が沸きにくいことが想像される。また、団

13

地居住者は出入りが比較的頻繁であることや、将来の滞在見通しが明らかでない 7

バートンの状況と比較すると、別府は、回答者中に「別府生まれの別府育ち」や先

祖代々別府に居住している者がいることや、居住期間の長さに起因して土地や人との

結びつきが強いことなどが特徴として挙げられ、より愛着を感じやすい状況にあると

言える。また、海と山を持ち温泉資源にも恵まれた土地柄であり、元来別府と関係の

ない人が居住地として別府を選択し引っ越してくることも、バートンとは対象的であ

る。最後に、調査対象カフェは別府市中心市街地の商店街に位置しており、商店主同

士での協力や住民と商店との間の顧客関係などが発達しており、これらのネットワー

クも、別府が「居場所のある地域」と認識されることに影響していると考えられる。

とも、地域への愛着が薄くなる原因と考えられる。またバートンは、犯罪等が多い地

域としてオックスフォード内で悪名高く、危険な印象が広く普及していることや、近

年の地域診断では「剥奪された」地域として認定され対策が検討されていることなど

も、バートンに対する地域住民の意識に影響を与えていると考えられる。

3-2.インフォーマル・サポート・ネットワーク

(1)はじめに

本セクションは、コミュニティ・カフェ訪問者が有している「居場所のある地域」

におけるインフォーマル・サポート・ネットワークの状況について考察する。地域に

暮らす個々人が有するインフォーマルなつながりのあり方は、その個人が必要とする

サービス(公的・私的)の量や質に関係してくることが知られている(Wenger 1994)。

このことは、個々人の「コミュニティ・スペース」に対する期待や使い方にも関連す

ると予想できる。従って、「コミュニティ・スペース」がインフォーマル・サポート・

ネットワークの構築において果たしうる役割を考察する前提として、研究対象のコ

ミュニティ・カフェ訪問者が、「居場所のある地域」内においてどのようなインフォー

マル・サポート・ネットワークを有しているかを把握することとした。具体的には、

個々人の認識に基づき、「居場所のある地域」における他者との接点について、数、

その内容(頻度、活動等)についてデータを収集し、分析した。

インタビューは以下の3つの部分から構成された。

1.「居場所のある地域」内における、回答者の日常的な他者との接点に係る質問

「ご近所さん」、親戚 8

2.何かあったときのサポートに関する仮説に係る質問

及び友人の数及び活動内容、定期的な訪問者の有無、

地域の活動(老人会等)への参加の有無等

7 回答者中、家族構成と住宅の不適合を理由に、バートンを出るよう市から求められた者や、期限

付きで入居している者が見られた。 8 本研究では、同居の親族を「家族」とし、それ以外の親族を「親戚」とした。

14

ちょっとしたお願い事があるとき、病気で寝込んでしまい手助けが必要なとき、

手元のお金を切らして少しだけすぐ必要なとき、深刻な個人的な問題が起きた

ときに、誰か相談する相手はいるか。いる場合、それは誰か。

3.過去6ヶ月間における実際のサポート関係に係る質問

誰かを助けたか、又は誰かに助けてもらったか。どのようなサポート内容か。

(2)分析

当該箇所は未だ分析途中であるが、3-3.にて行う「コミュニティ・スペース」

に係る分析との関連で重要と思われる項目について、簡単に記述する。1点目として、

別府の回答者は、バートンの回答者に比べて日常的な他者との接点が多く、他者との

関わり方の内容も様々であることが浮かび上がった。その理由については、まず、同

居者の存在が関係していると推測できる。バートンの回答者、とりわけ高齢者におい

ては、一人暮らしの者が多数(12名中10名)であるのに対し、別府では、高齢の

一人暮らしは11名中4名で、その他は夫婦で一緒に生活している場合や家族(子供

や孫)と生活している場合が多数であった。次に、居住期間の長さの違いが挙げられ

る。前のセクションでも述べたとおり、バートンに比して別府は、居住期間の長さに

起因して、ご近所との関係が多様に発展しており、地域における人間関係は密である

ことが示唆された(例えば、「隣の家の夕食のおかずまで知っている。」や「干渉する

ときはものすごく干渉する」等)。さらに、別府では先祖代々別府(及びその付近)に

居住していたという回答者が見られ、そのようなケースでは、別府付近に親戚が居住

している場合が散見された。最後に、別府は商店街であることから、日常的に買い物

や商店主の会合等で顔を合わせる機会が多いことが、回答者の地域における他者との

接点が豊富である理由として挙げられる。

2点目に、緊急時のサポート関係については、両地域において、おおむね5つのリ

ソースが確認できた。それらは、①親戚(家族含む。)、②ご近所、③友達、④公的

サービス、及び⑤自力、である。これらのリソースの関係は、成人の家族がいる場合

や成人の親戚が比較的近隣に居住している場合には、それら親族に頼ることが多く、

血縁は依然として重要なインフォーマル・サポート・ネットワークの要素であること

が示された。また、ご近所にちょっとしたお願いをするという回答者はバートンに多

く、別府において同様の回答は、自営業を営んでいる回答者に多かった(逆に、一般

の居住者である回答者からは、近隣住民に対してお願いごとをすることに遠慮がある

様子が見受けられた。)。バートンの回答者から、英国には「隣交」(Neighbourliness)

の伝統があるとのコメントがあったが、分析はそれを裏付ける形となった。

3点目に、別府では「友達」が「会社の同僚」を指す場合が多かった。これについ

ては、日本における職場の人間関係の特徴とその重要性を示すものとも考えられる一

方、サンプルの影響も無視できないと考えられる(別府のサンプルは高齢者世代とそ

15

れ以外の世代の割合がほぼ半数であり、労働力世代にとっては、職場は人間関係を考

える上で重要な位置を占めると考えられるため。)。

最後に、お金を借りることについては、高齢で他者との接触が比較的少ない回答者

にとっては、とりわけ否定的かつ規範的な意味合いがあることが見て取れた。

3-3.「コミュニティ・スペース」の活用について

(1)はじめに

本セクションは、「コミュニティ・スペース」は地域の住民間におけるインフォーマ

ル・サポート・ネットワークの構築・拡張及び地域の向上に役立つか、という問題意

識に沿っている。当該問題を扱うため、まず、研究対象のコミュニティ・カフェの訪

問者に対し、彼らのカフェの使い方(頻度や目的)、新たな関係性の構築について(新

しい友達の有無等)、及びカフェが地域にもたらしたと考えられる変化等についてイン

タビューを行った。また、平行して、カフェのマネージャーに対し、カフェの目的、

カフェがどのように使われているか、及びカフェ運営上の困難等についてのインタ

ビューを行った。

インタビューの分析に入る前に、研究対象のコミュニティ・カフェの設立経緯及び

概要と、カフェの使われ方の全体像について簡単に記述する。

(2)研究対象コミュニティ・カフェについて

本研究が対象とするコミュニティ・カフェは、Eatwells(バートン)及びまちなかカ

フェ(別府市南地区)である。Eatwells は、バートン・ネイバーフッド・センター9(Barton

Neighbourhood Centre)内の一画を利用して、平成20年6月にオープンした。運営主

体はバートン・コミュニティ・アソシエーション 10

9 バートン・ネイバーフッド・センターは、平成4年に多機能コミュニティ・センターとしてバー

トン団地の中心部に建設された。GP(外科外来)、情報センター、若者のためのジム、会議室等の設

備が入っている。また、当該コミュニティ・センターにおいては、高齢者対象のランチクラブ及び

ディナークラブ、年齢不問のエバーグリーンクラブ、子供の託児保育等の活動が定期的に行われて

いる。

(Barton Community Association)

であり、少数の有給スタッフとボランティアが従事している。他方のまちなかカフェ

は、大分大学福祉科学研究センターが、別府市中心市街地活性化協議会との協力のも

と、別府市中心市街地にある空き店舗を利用したplatformの敷地に設置したコミュニ

ティ・カフェであり(大分大学福祉科学研究センターホームページより。)、平成20

年12月にオープンした。コミュニティ・カフェの事業は同大学の社会実験の一環で

あるとともに、知的障害者の就労支援の場としても活用されている。

10 バートン地区の地域に関する活動を行っているチャリティ団体。

16

図5-1:Eatwells(外観)

図5-2:Eatwells(内部)

図6-1:まちなかカフェ(外観)

17

図6-2:まちなかカフェ(内部)

(3)カフェの目的及び概要

両カフェの目的及び概要は、以下の表4に対比的に示している。両者の目的につい

ては、Eatwellsで食事の提供が目的の一つとして挙げられていること、及びまちなかカ

フェが地域の変化の参与観察の目的を有していること以外は、ほぼ同様と言ってよ

い 11

。サービス内容については、Eatwellsでは飲み物や菓子のみならずカフェにおいて

調理された食事が提供されていることや、コンピューター及びインターネットを利用

できるという特色がある。まちなかカフェで企画されている各種イベントの内容は、

Eatwells そのものとしては提供していないが、バートン・ネイバーフッド・センター

内においては同様のサービスが日常的に提供されている。後に触れるとおり、これら

のカフェ外のサービスを利用するついでにカフェを訪れる者も見られる。

Eatwells (バートン) まちなかカフェ(別府)

カフェの

目的

1)様々な人々が集まる空間を

提供すること

2)健康的で安価な食事を提供

すること

3)職業訓練の機会を提供する

こと

1)人々が気軽に立ち寄れる場所を

提供すること

2)知的障害のある人々に職業訓練

の機会を提供すること

3)(コミュニティ・カフェが周辺

地域に与える影響に係る参与観察)

サービス

内容

・食事

・飲み物

・コンピューター及びインター

・無料のお茶

・飲み物(有料のコーヒー等)

・クッキー

11 Eatwells における職業訓練は知的障害者のみに限っていないが、職業訓練担当者は主に知的障害

のある者を対象して訓練の機会を提供している。

18

ネットへの無料アクセス

・各種クラブ活動(BNC*内)

・情報センター(BNC 内)

・医師外来(BNC 内)

・相談センター(BNC 内)

・ボックス・ショップ

・各種イベント(コンサート、健康

相談、展示等)

表4:研究対象コミュニティ・カフェの目的及び概要

* バートン・ネイバーフッド・センター

(4)カフェの利用状況概観

本セクションでは、回答者から得られたカフェの利用状況について、概説的に示し

ている。なお、これらは量的分析に係るものではなく、あくまで参考としての掲載で

ある。

カフェを使い始めたきっかけについては、バートンではそもそもコミュニティ・セ

ンターが古くから存在していた経緯を反映して、昔からセンターを利用しておりその

利用ついでにカフェを使い始めた回答者が過半を占めた 12

。その他、通りすがりに偶

然発見した者や人づてに聞いた者が少数見られた。これに対して別府のコミュニ

ティ・カフェについては、運営者である大学によるカフェ開店前の説明会(対住民及

び商店会)やチラシがきっかけであることが約半数を占めた。

バートン 17 (12)

もともと BNC を使っていた、又は BNC に来たつい

でに見つけた

15 (11)

偶然見つけた 1 (0)

人づてに聞いた 1 (1)

表5-1:カフェを使い始めたきっかけ(バートン)

別府 21 (11)

チラシ 3 (2)

大学を通じて 8 (3)

近所に住んでいる 3 (2)

偶然見つけた 7 (3)

表5-2:カフェを使い始めたきっかけ(別府)

12 そのため、インタビューにおいては、「カフェ」における経験と「センター」における経験を峻別

することが難しい回答者が多数見られた。

19

カフェの訪問手段については、両者とも徒歩による場合が多く、カフェが地域に密

着した形で利用されていることが示された。

バートン 18 (12) 別府 23 (12)****

徒歩* 10 (6) 16 (10)

公共交通機関** 4 (3) 1 (1)

自家用車*** 4 (3) 6 (1)

表6:カフェの訪問手段について

*シルバーカー利用者は「徒歩」に計上。

**ランチクラブ利用者を対象とした市による送り迎えは「公共交通機関」に計上。

***シニアカーは「自家用車」に計上。

****2名の回答者が2つ回答した。

カフェの訪問頻度については、バートンの回答者に頻度の高い者が多く見られた。

バートン 18 (12) 別府 21 (11)

初めての利用 0 2 (1)

ほぼ毎日 6 (4) 4 (3)

週に数回 9 (5) 3 (2)

2週間に1回程度 1 (1) 4 (3)

月に1回かそれ以下 2 (2) 7 (2)

表7:カフェの訪問頻度

カフェを訪れる目的については、バートンではお茶を飲む、食事をする、休憩をと

る、友人と会うといった、カフェの本来の用途に即したものが多いのに対し、別府で

は、一般的なカフェの利用以外にも、イベントを目的として訪問する者も多く見られ

た。これについては、バートンにおいてはクラブ活動や情報センター等がカフェ外

(バートン・ネイバーフッド・センター内)において展開されているためであると推

測できる(表8-2において、インタビュー回答者がバートン・ネイバーフッド・セ

ンターを訪問する目的の集計を掲載している。)。また、バートンにおいては、コン

ピューター及びインターネットへのアクセスが重要な訪問目的になっていることがわ

かる。

バートン 別府

コーヒー、食事、休憩 15 (10) 7 (3)

誰かに会う 7 (5) 8 (6)

20

コンピューターの使用 4 (2) ―

イベント 0 9 (6)

仕事関係の会合 0 5 (2)

展示会 0 2 (1)

表8-1:カフェを訪問する目的

バートン

クラブ活動、クラス等* 14 (12)

医師外来 5 (4)

情報センター 6 (4)

BCA**の活動 2 (2)

表8-2:(参考)バートン・ネイバーフッド・センターを訪れる目的

*ランチクラブ、ディナークラブ、ビンゴ、エバーグリーンクラブ、アートクラブ、料理教室、各種

生涯学習

**バートン・コミュニティ・アソシエーション

3-4.コミュニティ・カフェの機能

本セクションでは、インタビューの質的な分析から得られたコミュニティ・カフェ

の機能について記述する。前のセクションでも見られたとおり、バートン、別府いず

れのコミュニティ・カフェにおいても、食事や休憩をするといった一般的なカフェの

用途にとどまらず、コミュニティ・カフェが様々に利用されていることが見て取れた。

コミュニティ・カフェの特徴的な点としては、カフェの本来的な機能とは直接関係の

ないイベントへの参加や、より広く、(特定の誰かではない)誰かに会いに来る者、何

もせず時間を過ごす者、特段の目的なく訪問する者(「ふらりと立ち寄る」、「顔を見せ

に来る」、「世間話をする」等)が多数見られることがあげられる。つまり、コミュニ

ティ・カフェの特徴は、一定の枠組み、つまり、「カフェ」という形態から推測される

サービスや使われ方にはとどまらない柔軟な使用形態が許容されていることであると

言える。

この特徴は、コミュニティ・カフェの開店前からコミュニティ・センターが存在し

ていたバートンの例において、よく確認できる。例えば、あるマネージャーは、コミュ

ニティ・カフェの機能に関し、次のようにコメントしている。

‘Before the cafe opened people only came into the centre for specific reasons such as

visiting the doctors, attending the lunch clubs, coming along to Bingo. So now with the

café they are free to visit whenever they like without a specific purpose in mind. It

21

encourages people to come out of their homes and mix with others rather than staying

indoors and not having contact with others.’

「カフェが開く前は、医者に診てもらうとか、ランチクラブに来るとか、ビン

ゴゲームをしに来るとか、そういった特別な用事があるときだけ、人々はセン

ターにやって来たのです。それが今、カフェができてからは、特にこれといっ

た理由がなくても人々は自由にやってきます。カフェは、家に閉じこもって他

の人々と接触するよりも、家から出てきて他の人と交流するよう、人々に働き

かけているのです。」

Mb3

また、カフェのこのような性質は、カフェ利用者からは次のように語られている。

‘I just come across here [the café], sit there, then I go home. I don’t go anywhere.’

「カフェに来て、そこに座って、それで家に帰ります。他にはどこにも行くと

ころはないです。」

Vb1

‘[The café is] Peaceful. Umm...you can relax and be yourself, ... and calming. If

something happens and winds you up, you can come down here. Not so many places do

that.’

「カフェはのどかだね。ええと…カフェにやってきて、リラックスして、自分

らしくなることができる。そして、落ち着くことができる。もし何か起こって

イライラしても、ここに来ることができる。こういう場所はそんなにないよ。」

Vb8

別府でも、カフェについて同様の機能が挙げられている。

「ちょっと立ち寄るところがあり、親戚のような感じ。寄っちょくれ、という

場所がまちなかにあるのは、何か話をするのには良いと思う。待ち合わせをす

る際にも利用できる。みんなが知ってくれればいいと思う。だから知り合いに

宣伝している。」

Vj9

「地域の人たち、地域の商店街の人たちが(カフェを)利用している。価格も

手ごろでよいと思う。カフェでは追い立てられず何でもできるので、書きもの

をしたり勉強をすることができる。気持ちの切り替えができるのでこういう場

22

所は必要だと思う。」

Vj8

次に、このようなカフェの特徴・機能が、地域におけるインフォーマル・サポート・

ネットワークの形成や拡張、そして地域の向上にどのように役立っているのかを見て

いく。具体的には、カフェの利用方法に着目してカフェ訪問者のタイポロジーを作成

し、その比較により、カフェの機能について考察していく。

カフェ訪問者のタイポロジー構築の試みにより抽出された類型は、以下の7種類で

ある。

バートンのカフェ利用者から導き出された類型

(1) 熱心な訪問者(Ardent visitors)

(2)実利的な利用者 (Pragmatic users)

(3)普通の顧客 (Ordinary customers)

別府のカフェ利用者から導き出された類型

(4)友達を探す人(Friend seekers)

(5)イベント参加者(Event attendees)

(6)ビジネス・ユーザー(Business users)

(7)世話人(Care takers)

{(8)普通の顧客*(Ordinary customers)}

*バートンと同様の類型

以下、各類型の特徴を述べていく。

(1) 熱心な訪問者

このカテゴリーに当てはまる訪問者の特徴は、頻繁な訪問(ほぼ毎日)、長時間かつ

これといった目的のない(少なくとも、そのように見受けられる)滞在である。イン

フォーマル・サポート・ネットワークのコンタクトが少ないことが多く、一人暮らし

で親戚は遠方にあり、ご近所にもほとんど知り合いがいないといった状況にある者が

多い。具体的には一人暮らしの高齢者の場合が多いが、それに限らず、地域に新しく

移転してきた方、病気のある若い世代にも見受けられる。例えば、離婚後に幼い娘と

二人暮らしとなり、バートンにカウンシル・ハウジングを得た回答者や、病気のため

に失業中である回答者等が当てはまる。これらの、若い世代で本類型に分類される者

に共通する特徴は、バートンないしオックスフォードにおけるインフォーマルなネッ

トワークの弱さに加え、職業を通じたネットワークも弱い、又は(一時的に)機能し

なくなっていることである。

23

「熱心な訪問者」がカフェを訪れる主な目的は、誰か自分のことを知っている人に

会うためである。すなわちカフェは、彼らにとって、アイデンティティの確立のため

の場になっていると言える。

‘I don’t know anybody there [her house (old people’s house)] and there’s nobody

knows me there... Anybody, any friends are all from here [the centre or café]. I don’t

see anybody else.’

‘同じ建物に住んでいる人は誰も知らないし、誰も私のことを知らない。... み

んな、どの友達もここ(センター又はカフェ)の人たち。他には誰にも会わな

い。’

Vb1

‘Attraction? It’s friends! Yeah. I mean you can be alone and very lonely. But if you come

down here [the centre or café] you could see people, they all know you and get to know

you, anyway.’

「(カフェの)魅力? それは友達よ!一人ぼっちになることだってあるし寂し

いことだってあるけど、でもここ(センター又はカフェ)に来れば誰かに会え

る。みな私のことを知っているし、いずれ知り合いになるもの。」

Vb6

上の引用が示すとおり、「熱心な訪問者」にとって、地域におけるネットワークは

ほぼすべて、センターが提供する諸活動を通じて、又はカフェを通じて知り合った人

によって構成されている。例えば、高齢者の場合には、ランチクラブやディナークラ

ブ(65歳以上を対象としている。)、若い世代の場合には様々な講座(IT講座等)

への参加が、ネットワーク作りのきっかけになっている。逆に、年齢制限や体調の不

良等によりこれらの活動に参加できない人(病気を持っている若い世代の回答者)は、

ネットワークの形成に大きな困難があり、比較的頻繁かつ定期的にカフェを訪問して

いても、友達として認識されているのはカフェのスタッフのみである。いずれにして

も、カフェ又はセンター外には自分のことを知っている人がおらず、孤独感やアイデ

ンティティの喪失の危険を回避するということが、カフェを頻繁に訪問する一つの重

要な理由となっていると推測される。

なお、クラブや講座への参加の有無を問わず、「熱心な訪問者」がカフェ又はセン

ターにおいて新しく構築したネットワークは、「友達」というよりは単なる「知り合

い」に近いように見受けられる。彼らの交流は、偶然カフェ又はセンターにおいて出

会った時に限られており、カフェにおいて待ち合わせをすることもなければカフェ外

24

において会うということもない。カフェ又はセンターにおいて知り合った人について、

「近しくはない」と名言した者も複数見られた。

‘Well, what say ‘fun’. But it’s just somewhere go away and you can sit and talk with

each other with someone just coming here. Some just come here and some just gone

away. But still it’s not talking something.’

「ええと、何を「楽しみ」と呼ぶかによるけれど、(カフェは)ただ外出する場

所で、ここにやって来て腰掛けて、誰かカフェにやってきた人とおしゃべりす

るだけ。誰かやってきて、そして帰っていく。でもそれ、何かについてお話を

する、というものではないのです。」

Vb1

「熱心な訪問者」にとって、カフェはしばしば、唯一の外出先でもある。バートン

には Eatwells の他にカフェやレストランはなく、スーパーマーケットと持ち帰り専門

のファースト・フード店があるのみである。身近に親族がおらず近隣住民との関係も

希薄な「熱心な訪問者」たち、とりわけ、高齢や病気のために移動に不自由がある者

にとっては、カフェは唯一の外出先となっている。このことは、「熱心な訪問者」の

存在は、個々人の状況のみならずバートンの物理的環境により生み出されたものであ

ると言える。

最後に、センターは、この類型の人々に生きがいを与えている。カフェ又はセンター

に来れば、誰かに会うことができるだけでなく、何かに従事することができるのであ

る。「熱心な訪問者」のうち、少数ではあるが、カフェ又はセンターが、単に「何か

する場所」から自ら活動を企画したり運営したりするようになった者が見られた。つ

まり、コミュニティ・カフェは、彼らのアイデンティティを保証するところからさら

に拡大・発展し、自己実現の場となっていると言える。

(2) 実利的な利用者

このカテゴリーの回答者に見られる特徴は、カフェとはほとんど関係のない目的、

具体的には、コンピューターを使用する目的で、毎日又は週に2,3日といった高い

頻度でカフェを訪問することである。Eatwells にはコンピューターが6台設置されて

おり、各々がインターネットにつながっている。これらのコンピューターは、誰もが

無料で(何も注文しなくても)、何時間でも使用することができる。「実利的な利用

者」たちは、頻繁又は定期的にカフェを訪問し、数時間にわたりコンピューターと向

かい合っている。彼らは常にコンピューターの席(カフェ内で、テーブル席部分を背

に、壁に面している。)にいるためほとんどテーブル席に着くことはなく、カフェに

おいてお茶を飲んだり誰かと話をするということはまれである。

25

「実利的な利用者」も、地域におけるインフォーマルなつながりが比較的少ない傾

向が見られる。カフェにおける新しい友達は他のコンピューター・ユーザー達である

場合が多いが、その付き合いは浅く、カフェでたまたま出会った場合には挨拶をする

といった具合に、社会的に必要最低限の交流にとどまっている。カフェやセンターの

スタッフとの交流もほとんど見られない。

これらの人々が「熱心な訪問者」と大きく異なる点は、単にカフェの利用形態にと

どまらない。「熱心な訪問者」が人とのつながり(それによるアイデンティティの確

保)を求めてカフェを訪れるのとは対照的に、「実利的な利用者」には「積極的な孤

立」(Voluntary isolation)の姿勢が見られる。彼らは、バートンやオックスフォード

といった地域とは関係ないところに独自の世界を持っており、そこに深く関与し、か

つそれに満足している。言い換えれば、興味関心に基づくコミュニティのみが彼らに

とっての「コミュニティ」なのである。そのため、コミュニティ・カフェにおいて地

域の人と交流するということには、ほとんど必要性も魅力も見出しておらず、地域の

話題や人々には無関心な傾向が見られる。

‘We have a phrase in England. ‘You keep your head down’ which means to whom I

don’t talk to people to avoid problems.’

「イギリスには「頭を下げる」[You keep your head down]ということわざがあて

ね。「問題を起こさないために、人とは話さないでおく」という意味なんだ。」 .

Vb5

‘I have networks in the internet... I socialise on the internet.’

「僕にはインターネット上にネットワークがある。インターネット上で社交し

ているんだ。」

Vb9(なぜカフェ内で他の人と交流しないのか、という質問への回答)

‘I’m a famous player and people come from all over the world to play with me. [I am]

Not the best, but near the best.’

「僕は有名なプレーヤーで世界中から人々が僕と対戦したいとやってくるんだ。

一番強い訳でないけど、かなりトップに近いよ。」

Vb9

「自発的な孤独」の態度が醸成される背景にも、バートンという地域そのものが関

連していることがうかがえる。具体的には、バートンの住民の多様化の進展と、人々

の意識のギャップが関連していると思われる。バートンは主に貧しい労働者階級を対

象とするカウンシル・ハウジング・エリアとして誕生し発展したが、近年では持ち家

26

率が増加してきている。また、人種的にも多様化が進んでいることが報告されている

(Folkes 2009)13

。住民の構成が多様化した一方、インタビューからは、依然として

クラス間や人種・民族間の壁が歴然としていることが浮かびあがった。これらの垣根

を越えて交流することは容易ではないと考えられる。

‘As you see, I am different. I came from a relatively privileged background so I went to

before a public school which means here private school, and umm... So it’s different. My

flat is a little island of books . ... I don’t have social life here [Barton]. I have a life in

London with many friends. I have about 70 friends on the network.’

「見ての通り、私は(他の人とは)違うんだ。私は比較的恵まれたバックグラ

ンドの出身で、パブリックスクール、ここで言う私立の学校に行っていたし。

そう、だから違うんだ。私の部屋は本だらけの小さな島みたいなものだよ。...

ここには私の社会的な生活はない。私の生活はロンドンにあって、たくさん友

達がいる。70人くらいは知っているよ。」

Vb5

この類型に当てはまる回答者は高齢者に多かった。しかしながら、サンプリングに

あたり高齢者から優先的にアプローチしていることや、筆者のカフェにおける観察に

よれば、若者層や子供たちのほとんどはコンピューターを使用する目的でカフェを訪

れていることが見受けられたため、本類型が高齢者に特徴的であるとの結論は導くこ

とができない。

最後に、当該カテゴリーは、研究対象カフェにおいてはコンピューターの利用とい

う形態で顕在化しているが、それに限定されるものではなく、他の形態のサービス・

設備であっても、個人主義的な(individualistic)活動を可能にするものであれば、そ

れに対応した形態で現れるものと思われる。

(3)普通の顧客

「普通の顧客」は、コミュニティ・カフェを通常・一般のカフェと同様の目的で利

用している人々を指す。彼らの訪問は、定期的な場合もあるが(毎週決まった曜日に

カフェにて息子に会うケース、定期的な買い物のついでにカフェに寄るケース等)、

頻繁な訪問ではない場合がほとんどである。滞在時間は、上記の二類型に比して短い。

13 平成13年の国勢調査のデータによれば、当時の人口は85%程度がホワイト・ブリティッシュ

で構成されていたところ、地域の小学校生徒の人種構成に係る平成21年のデータによれば、その

率は60%を下回った(Folkes 2009)。

27

個々人の背景(インフォーマル・サポート・ネットワークの強度や内容、年齢等)

やカフェを訪れる目的は様々である。カフェにおいて新しい友達を作ったという回答

はまれであり、カフェでの他者との交流は、カフェのスタッフと一言二言話をする、

といった程度である。

‘I come here [the café] once a week for lunch. … It’s a nice café. The staffs are friendly, good quality of food, umm, pretty fast....’

「カフェには週に1度お昼ご飯を食べに来るんだ。ここは素敵な場所だと思うよ。

スタッフは気さくだし、食事は質がいいし、とても早く出てくる。」

Vb11

以上がバートンにおけるインタビューから導かれたタイポロジーである。「熱心な訪

問者」、「実利的な利用者」及び「普通の顧客」の3類型が見られ、それぞれのカフェ

の利用やその背景にある理由等には大きな差異が見られた。カフェにおけるイン

フォーマル・サポート・ネットワークの構築は類型によっては見られるものの、その

程度及び内容のいずれにおいても限定的で、カフェにおいて偶然出会うというレベル

のネットワークの域を超えた関係にまで発展したものは確認できなかった。続いて、

別府の回答の分析から得られたタイポロジーについて考察する。

(4)友達を探す人

当該カテゴリーの人々は、誰かに会い会話をすることがカフェを訪れる主要な目的

である。さらに、「友達を探す人」の特徴は、その多くが、知人であるかないかを問

わず誰かに会って会話をしたいと思っていることである。彼らのカフェの訪問は頻

繁・定期的である。インフォーマル・サポート・ネットワークの状況は様々であり、

広く密度の濃いネットワークを有する者もあれば、非常に弱いネットワークの者も見

られた。高齢の回答者がこの類型に当てはまることが多かった。

「友達を探す人」の最も特徴的な点は、カフェにおける新しい友達の数と関係性の

発展である。バートンも含め、他の類型に比較して多くの新しい友達を作っている。

また、その関係性もカフェ内で偶然会うといったものはむしろ少なく、一緒に遊びに

行ったりお互いの家を訪問し合う関係が見られる。実際に会うことができなくても、

電話や電子メールのやりとりにより頻繁に連絡し合っている例も見られた。

「カフェがオープンしたての頃に(新しい友達に)会った。手芸を通じて意気

投合し、自宅に遊びに行ったり来たりした。今では遊ぶことはなくなったが電

話をする関係は続いている。(別の一人とは)一緒に手芸をしている時は週に

28

何度も会うときもあるが、最近彼女は手芸教室を始めたようで忙しくなり、月

に1度しか会えないこともある。」

Vj9

この類型の回答者の存在は、コミュニティ・カフェという場が、「知らない人に対

して話しかけ友達を作る」という今日の社会では一般に行われなくなっていることを

許容する場であることがわかる。まちなかカフェにおいては、知らない人と交流する

ことが期待されており、利用客はそれを普通のこととして認知していて、実際に行動

する。

「誰かに会うため。ここに来ると、『誰かと話したい』という同じ気持ちの人

がいるので、知らない人同士でも話しやすい。」

Vj4

「初めての利用なので新しい友達はいないが、先ほどカフェで会った人に『マ

ルショクでよく会うなあ』と言われたので、相手は知っていたかもしれない。」

Vj2

しかしながら、バートンとの比較により、このような知らない人との交流は自然発

生的なものではないと推測される。まちなかカフェにおいては、カフェのスタッフが

利用者同士をつなぐ重要な働きをしていることが、カフェ訪問者間の交流を促してい

ると考えられる。また、スタッフの役割の他にも、様々なテーマで行われるイベント

(手芸教室等)や展示などは、共通の趣味や関心を持っている利用者らにとって、集

い、関係性を発展させる支援をする役割があると考えられる。

「特に一人で利用している高齢者の話し相手になっている。また、場合によっ

ては共通の趣味を持つ人を紹介するなど、利用者同士が知り合いになれるよう

心がけている。」

Mj2

(5)イベント出席者

「イベント出席者」は、カフェが企画する各種のイベントに参加するためにカフェ

を訪れる人たちである。カフェでお茶を飲んだり誰かと話をするのは、彼らにとって

は二次的な活動になっている。「友達を探す人」に比べて、このカテゴリーの回答者

の訪問は頻繁でない。「週に1回」や「2週間に1回」程度の回答が多く、カフェで

29

のイベントの日程 14

とほぼ対応していることが推測できる。インフォーマル・サポー

ト・ネットワークは、比較的コンタクト数が少なく、内容も挨拶程度である場合が多

い。とりわけ、近隣住民とのつながりが弱い(地域外で仕事を持っており自宅周辺に

ついてほとんど知らない、同居していた母が入院して以降地域とのつながりが希薄に

なった等)傾向がある。高齢の回答者にこの類型が多く見られるほか、退職して日が

浅い回答者や別府に移入してきたばかりの者など、インフォーマル・サポート・ネッ

トワークが希薄化・弱体化するような変化を経験した者等も含まれる。重要な点は、

彼らにとってはカフェのイベントへの参加が地域参加への第一歩になっているように

見受けられることである。さらに、カフェにおける新しいネットワークの形成は、依

然として少ないものの、イベントを通じてのネットワークの形成、拡張が起こってい

ることが見受けられる。

「まちなかカフェ通信に、『趣味や特技がある人ご協力ください』と書かれて

いたので、何か役に立ちたいと立ち寄った。」

Vj21(趣味の写真の展示会を訪れたのがきっかけ。その場で共通の趣味を持つ

知人に出会った。)

「もともと地元のことを良く知らずにいた。地域デビューしていなかった。8

月以降時間ができたことをきっかけにカフェに来店した。カフェでは新聞を読

んだり、資料を整理したり、休憩をしたり、情報収集したり、イベントに参加

したりする。カフェができたことで足を運ぶようになった。人との交流の拠点

ができ、それまで出歩かなかったが外に出るようになった。」

Vj11

(6)ビジネス・ユーザー

この類型の人々は別府で自営業を営んでいる者に多く見られ、カフェを主に商店会

等の会合の場として利用していることが特徴である。訪問頻度は会合の開催頻度にあ

わせ、月1回ないし2ヶ月に1回程度である。カフェにおいて新しい知り合いを作っ

たケースはまれである。これについては、商店会等の会合は通常のカフェの営業時間

後に開催されることが多く、そもそも、一般の利用客に出会うことがないことが影響

していると推測できる。特徴は商店主であることであり、年齢による差異は見られな

い。

14 介護予防相談は月1回、健康介護相談は月2回、その他音楽イベントや教室等が月に1~3回程

度開催されている。

30

(7)世話人

「世話人」は、別府の商店経営者であるカフェ訪問者の中に見られた類型である。

当該カテゴリーに該当する回答者は、カフェ付近に住居又は商店を持っており、カフェ

には毎日顔を出して、スタッフや常連客に挨拶をするとともに、スタッフの安否確認

をする。彼らのこのような行動は自主的なものである。また、時折、彼らの店の客を

カフェに連れてきてお茶を出す、ということも行われている。

「カフェに来るのは、スタッフの安否確認のため、常連さんへの顔見せのため、

挨拶をするため、自分のお店に来たお客さんを連れてくるため。」

Vj20

「世話人」の例は、まず、カフェと地域の人々の間に互恵関係が成立している例で

あると言える。コミュニティ・カフェが地域の理解、地域に利益をもたらすのはもち

ろんのこと、このような互恵関係の存在は、カフェ自身が地域のニーズに即した形で

発展していく鍵になると考えられる。次に、「世話人」の存在は、まちなかカフェが

障害者の就労の場となっているために現れたカテゴリーであるとも推測できる。コ

ミュニティ・カフェはしばしば、高齢者や子供たちにとっても自由に訪問できる場で

あり、彼らの安全の確保や見守りのためには、カフェスタッフではない人々からサポー

トを得られることは心強い。バートンにおいては、カフェの専属スタッフが障害者に

対し職業訓練を提供しているが、1名の非常勤スタッフがカバーできる範囲には限度

があり、地域住民によるサポートは理想的であると考えられる。バートンのコミュニ

ティ・カフェ設立の意図として「地域住民によるオーナーシップ」という理念がうた

われていたようである(以下の引用を参照。)が、筆者によるインタビュー及び観察

からは、別府において見られるような地域住民とカフェの連携・協力関係は、現時点

では見られなかった。

‘The wording of “Community Cafe” came about through the idea of the community

owning the cafe in the broadest sense, in a moral sort of way rather than owning the

building or the equipment. So, ultimately we hope that the residents of the estate will take

“ownership” of the cafe thereby making it a Community Cafe.’

「『コミュニティ・カフェ』という言葉は、コミュニティがカフェのオーナーで

ある、というアイディアに基づいています。これは、最も広義の所有、つまり、

建物や設備を所有するというのではなくて、規範的な意味で所有するというこ

とです。だから、究極的な私たちの願いは、団地の住民がカフェの『所有権』

を持つということで、そのためにコミュニティ・カフェを造ったのです。」

Mb3

31

別府においても「普通の顧客」に該当する回答者が見られた。当該類型の特徴はバー

トン回答者から抽出された同カテゴリーと同様であるため、本報告では割愛する。

3-5.比較と議論

本セクションでは、コミュニティ・カフェの機能に関し、バートンと別府の比較及

び議論を行う。まず第一に、どちらのカフェも、一般的なカフェが提供するサービス

内容にとどまらず、利用者は自由・柔軟に利用できることが明らかとなった。この特

徴は、両カフェが目的として掲げている「誰でも自由に訪れることができる場所」と

いうカフェの機能を体現しているものと言える。

そして、第二に、そのような柔軟な空間について、バートンと別府では異なった利

用方法が見られた。具体的には、バートンにおいて、(1)熱心な訪問者、(2)実

利的な利用者、(3)普通の顧客の3類型が抽出され、別府においては、(4)友達

を探す人、(5)イベント出席者、(6)ビジネス・ユーザー、(7)世話人、そし

てバートンにも見られた(8)普通の顧客の5類型(うち1類型はバートンと共通)

が抽出された。

両カフェにおいて、上記のような異なった利用のパターンが見受けられたことにつ

いては、訪問者個々人の状況や特徴、カフェのサービス内容、そしてバートンと別府

の地域性の違いが強く影響していると考えられる。まず、個人の状況の違いについて

は、インフォーマル・サポート・ネットワークの強さや密度と、それを個々人がどの

ように認識しているかが関係している。「熱心な訪問者」にとって、インフォーマル・

サポート・ネットワークが弱いことはアイデンティティを揺るがしかねない重大な状

況であったが、同じバートンにおいても、全く知り合いがいない状況を好んでおり孤

独感はないという回答者も見られた。また、年齢や健康状態も重要な要素であり、例

えば高齢で足腰が弱くなってきており、地域に知り合いが少ないことを非常に不安に

思っているケース等が見られた。

カフェが提供するサービス内容の違いも重要である。バートンではコンピューター

を無料で使用することが可能であり、年齢を問わず、多くの訪問者がコンピューター

を使いにやってくる。この活動は他人の関与を必要としないものであり、コンピュー

ター使用者は独自の世界で時間を過ごしている。他方、別府のイベントのような取り

組みは、知らない人同士であっても交流するきっかけを提供している。また、バート

ンでは一般のカフェと同様、調理された食事が提供されるため、一般のカフェと同様

の目的でカフェを訪問し、食事を採り、去っていく人が多く見られる。

最後に、地域の状況が、カフェの使われ方や機能に大きな影響を与えている。バー

トンにはカフェやレストランがなく、高齢者や病気を持っている人にとっては、カフェ

は唯一の外出先となっている。また、元来階級社会であることに加え、近年顕著となっ

32

てきた人種や階級の多様化は、カフェにおける人間関係の発展の妨げになっており、

別府で見られたような人間関係の発展がバートンではほとんど見られない原因である

と考えられる。

‘When I first worked here, there was a ‘stigma’ about the centre; whether you use it or

don’t. Some people...like, ‘cliquey‘... you know, like a ‘club’. Whether you belong or you

don’t belong. Some people just don’t like. So we have to break down the barriers. Say,

‘Now café is here, everyone is welcome. It’s not just for people who going there or

someone...’ you know? Also I think there’s a ... that side of Barton [the east side] and

this side of Barton [the west side] divided there [around the community centre].’

「ここ(カフェ)で働き始めたとき、センターを使うことに対する『スティグ

マ』があったの。ある人々は、…そうね、『党派』とか『クラブ』みたいなもの

で、そこに属しているか属していないかが問題のようだった。ある人々は単に

センターが嫌いだったの。だから、私たちはそのバリアを取り払う必要があっ

た。例えば、『カフェが開店しました。誰でも利用できます。カフェはセンター

を使う人のためだけにあるのではないのです。』という風に。わかるかしら。そ

れに、私は、バートンのあちら側(東側)とこちら側(西側)はここ(センター

付近:団地の中央部)で分かれているように感じたわ。」

Mb2

上記の違いに加え、両カフェの比較は、インフォーマル・サポート・ネットワーク

の形成における「橋渡し」の存在の重要性を示唆する。別府においては、バートンに

比べて新しい知り合いの数において上回ると同時に、その関係性の多様さが見られた。

その背後には、別府のカフェにおいて、スタッフとイベントが「橋渡し」の役割を演

じていることがあると考えられる。今日の社会において、知らない人に話しかけ友達

になるということはまれである。そのため、外的なサポートなしでは、話しかけるこ

とができたとしてもその場限りの関係で終わってしまいがちであり、以後もネット

ワークとして存続するような結果になることは難しいと見当がつく。別府のカフェに

おいては、スタッフが利用客同士が知り合いになるように働きかけたり、イベントが

共通の趣味や関心をもつ人々を自然に集うような仕組みを作っているが、これらは、

関係性の発展の鍵であると考えられる。バートンのカフェにおいてはそのような橋渡

し的存在は見られず、関係性の構築は、たとえ生じたとしても、階級ごと、年齢ごと、

活動ごとに明確に分かれたグループ内にとどまっている。

3-6.「コミュニティ・スペース」の機能と可能性

33

バートンと別府のコミュニティ・カフェの機能に係る分析から、ここでは、より一

般的な「コミュニティ・スペース」が、地域におけるネットワークの構築・拡張と地

域そのものの発展において果たし得る機能と可能性に係る考察について記述する。

「コミュニティ・スペース」の機能と可能性については、1点目として、「柔軟な

社会化」(flexible socialisation)を実現する場であることが指摘できる。「コミュニティ・

スペース」はまず、「地域社会」という最も身近な社会に参加することができず孤立

的な状況にあるような人々にとって、社会参加の機会を提供する空間である。これら

の孤立の状況にある人々にとっては、「コミュニティ・スペース」が許容する柔軟な

利用形態は、家から外に出て、自分をとりまく地域社会に触れてみる動機付けになる

と考えられる。また、「コミュニティ・スペース」に一度足を踏み入れたならば、そ

こには彼らを地域に包含する仕掛け、例えば、同じ思いを持った人々や、自由に参加

できる活動や、地域の各種情報等がある。つまり、「コミュニティ・スペース」は、

地域のすべての人々にとって、地域社会への統合の場である。

さらに、知り合いや友達のネットワークを構築し拡張していく段階は、地域社会へ

の統合の次の社会化の過程と位置付けられる。現代の社会では、隣近所といえども顔

を知らないという関係が見られることもままあり、地域における関係の構築は自然発

生的には実現しにくい。そのような中、「コミュニティ・スペース」は、誰でも訪れ

やすい空間であるだけでなく、知らない人同士が交流し関係性を構築することが期待

されている空間であり、スタッフやイベントといったサポートを得ながら、地域にお

けるインフォーマル・サポート・ネットワークの構築・発展を促すことができると考

えられる。

2点目として、「コミュニティ・スペース」は、地域住民の「生活の向上」の場で

もある。イベントをはじめとする各種サービスの提供は、地域に住む個々人にとって

は貴重な文化的・教育的な活動への参加の機会となっており、彼らの生活の質の向上

につながり得る。このことは、そもそも地域において、文化的・教育的な活動を提供

することが困難である地域(例えば、設備や資源が不足している場合)に限らず、機

会はあるものの各種障壁によりアクセスしにくい場合や一部の住民のみが利用可能で

ある場合(例えば、金銭的問題や交通の便等)にもあてはまるメリットである。さら

に、イベントに限らず、コンピューターやインターネットへのアクセスといったサー

ビスについても、今日の社会においては必要な資源であり、生活の質の向上のための

サービスと捉えられる。

最後に、「コミュニティ・スペース」は、例えばコミュニティ・カフェが「カフェ」

としての機能を有しているように、ある特化した機能を有し、その形態に即したサー

ビスも提供している。

以下の図は、上に記述した「コミュニティ・スペース」の機能と可能性について、

コミュニティ・カフェのケースを例にして図により示したものである。

34

図7:「コミュニティ・スペース」のイメージ(コミュニティ・カフェを例に)

外側の青い部分は、「柔軟な社会化」を実現する空間である。地域において孤立し

がちな人や、地域に参加したいという思いはあるが実践できていない人等にとって、

この空間は、家から出てみる、誰かに話しかけてみる、知り合いを作ってみる、何ら

かの活動に参加してみるといった機会を提供することができる。いわば、地域におい

て「社会」に参加できていない人や軽度の参加にとどまっている人が、「柔軟」な形

態により社会化していくことを支援する空間である。中間層である黄色の部分は、各

種サービスにより地域住民の生活を向上する空間である。この空間では、個々人は自

らの意思に従って、サービスを選び、使い、利益を享受する。この空間においても、

「柔軟な社会化」の機能は存続しており、知り合いを作ったり地域の活動に参加した

りする機会も提供される。中央のピンク色部分は、「コミュニティ・スペース」が特

化している機能(図の場合には「カフェ」)が直接的に表現される空間である。

人々は、それぞれの状態や希望にあわせて、柔軟に、どのスペースにでも入って行

くことができ、また、異なるスペース間の移動も自由である。

このような機能を持つ「コミュニティ・スペース」は、どういう可能性を持ってい

るか。本報告では、「インターセクション」(intersection)、「モチベーター」(motivator)、

そして「橋渡し」となり得る可能性について指摘したい。

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まずインターセクションは、人々、情報、活動等の交差点という意味である 15

以上をまとめると、「コミュニティ・スペース」は、地域の住民にとって、「柔軟な

社会化」を実現する場であるとともに、彼らの「生活を向上」する場でもある。これ

らの「コミュニティ・スペース」の機能は、「インターセクション」、「モチベーター」

及び「橋渡し」という「コミュニティ・スペース」が地域において果たし得る可能性

によって裏打ちされ、強化・促進されている。

。「コ

ミュニティ・スペース」は誰でも訪れることができ、いろいろな情報が集約されてお

り、さらにいろいろな活動が提供されうる。「コミュニティ・スペース」は、こういっ

た各種資源が豊富に集積される交差点になることができる空間である。モチベーター

としての可能性は、「コミュニティ・スペース」が人々に地域参加やネットワーク形成

の動機付けとして働くことを指している。地域の人々に対し、家から出て地域社会に

触れるきっかけや他の人々と交流するきっかけを持つよう働きかけることができる。

上掲の図においては、破線によってこの可能性を示している。3つ目の「橋渡し」と

しての可能性は、個々人間並びに個人と情報及び活動をつなぐ橋を意味している。「コ

ミュニティ・スペース」の存在やその柔軟性そのものが、地域の人々にとって「動機

付け」になりうるが、さらに、「コミュニティ・スペース」に足を運んだ個人に対して

は、この「橋渡し」が、友達作りや活動の拡張をさらにサポートをし得る。この有無

が、例えば別府とバートンにおける新しいネットワークの構築及び拡張に見られた差

異になっていると考えられる。

4.おわりに

以上が、バートン及び別府におけるコミュニティ・カフェの機能と可能性に関する

研究の中間報告である。以下には、今後本研究が取り組むべき課題と、本テーマが堀

り下げるべき課題について、簡単に記述する。

まず、本研究については、「コミュニティ・スペース」に係る大きな問を3つに分割

して考察を進めたわけであるが、それぞれの下位の問いとの間の関係性が考察できて

いないため、この点を深める必要がある。また、バートンと別府のコミュニティ・カ

フェが開かれた背景について、状況や問題意識を補足する必要がある。さらに、より

大きな問題として、本報告書で扱った考察を、英国及び日本の政策の文脈において論

じるという重要な課題が未着手である。両国の地域政策の違いに加え、地域性の違い、

カフェの性格の違い等、複雑に絡み合った複雑な文脈の中で本課題と捉えなおす必要

がある。

本テーマに関連した今後の課題としては、まず、地域の多様性と「コミュニティ・

15 この点について、社団法人長寿社会文化協会が同様の指摘を行っている(長寿社会文化協会ホー

ムページ)。

36

スペース」についての研究が望まれる。本研究では別府とバートンという、二つの地

域のみを対象に考察しているが、地域は多種多様であり、本研究が導いた「コミュニ

ティ・スペース」とは違った在り方があり得るためである。次に、「コミュニティ・ス

ペース」において適用される「規範」(norms)について、その性質、一般の社会にお

ける場合との違い等についての考察が必要である。「コミュニティ・スペース」の柔軟

性を前提に、どのような行為が期待又は許容されているのかということである。この

問題の考察は、「コミュニティ・スペース」の機能の考察に多くの示唆を与えることが

出来るものと考えられる。最後に、誰が「コミュニティ・スペース」を利用し、誰が

利用しないのか、また、それはなぜか、という問題について、検討されることが望ま

しい。本研究は「コミュニティ・スペース」の訪問者のみを対象としていたため、当

該空間を訪れないグループの特徴や理由については何の考察もなされていない。「コ

ミュニティ・スペース」を利用しない人々について研究することは、「コミュニティ・

スペース」の役割をさらに充実させる上で欠かすことはできないと思われる。

<参照文献>

社団法人長寿社会文化協会

http://www.hwrc.oita-u.ac.jp/research_activities/machinaka_cafe/file/shiryo01.pdf

別府市役所企画部政策推進課、2009、別府市の概要

Barton Community Association, 2007. Barton Community Association Strategy 2008-2010

FOLKES, A., 2009. Barton Residents’ Research Survey Report

HAMPTON, W., 1970. Democracy and Community: a Study of Politics in Sheffield. Oxford: Oxford

University Press.

MAYO, M., 1994. Communities and Caring : the Mixed Economy of Welfare. Basingstoke: Macmillan.

OITA UNIVERSITY HUMAN WELFARE RESEARCH CENTRE

http://www.hwrc.oita-u.ac.jp/research_activities/machinaka_cafe/index.html

OXFORD CITY COUNCIL, 2009. Economic and Health Trends in Areas of Multiple Deprivation

OXFORD CITY COUNCIL, 2007. Super Output Area Profile Report for North East Area Committee

OXFORD MAIL 2001.2.21

SMITH, T., 2008. From Educational Priority Areas to Area-based Interventions: Community, Neighbourhood,

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Change. London: Routledge, pp. 181-203.

STRAUSS, A. AND CORBIN, J., 1998. Basics of qualitative research: techniques and procedures for

developing grounded theory. London: Thousand Oaks.

WENGER, C., 1994. Understanding support networks and community care : network assessment for elderly

people, Avebury: Aldershot