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すっかりアフリック JICA セネガル事務所メールマガジン
◆『巻頭言』 セネガル事務所次長 柴田 和直
「自らを省みる」
JICA 事務所の柴田です。あっという間に 2013 年もあとわずか
ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。私自身は先日セネガル東
部のタンバクンダ州を家族と訪れ、協力隊員の皆さんの活動現場な
どを訪問して素晴らしい経験をさせてもらったところです。が、往
復 1000km 超のドライブと暑さで車も自分も体調を崩し、車はガ
レージで修理中、自分は風邪をこじらせて、師走の激務に勤しむ今
日この頃です。皆様くれぐれもご自愛の上、忘年会など楽しまれて
下さい。
さて、この号が皆様に届く頃、セネガルでは「DAC 対日援助審
査」が行われています。経済協力開発機構(OECD)が日本の
ODA に対し行う審査の具体事例としてセネガルでの協力の実施状
況を、調査団が調べています。「審査」されるのを機に自らを振り
返ろうということで、2012 年度の JICA 事業の統計を簡単に整理
してみました。そこから見えてくるセネガルでの JICA 事業の様相
を紹介してみたいと思います。
①お金:セネガルへの JICA 技術協力は約 22.57 億円。世界 17
位、アフリカ 4 位
ちなみに世界 1 位はベトナムの 85.15 億円。アフガン、インドネ
シア、フィリピン、ミャンマーと、なるほどというアジアの国が続
きます。アフリカではケニア(34.35 億円)が世界 8 位でアフリ
目次
◆巻頭言
「自らを省みる」
・セネガル事務所次長
柴田和直
◆活動紹介
「国産米 100万トン生産を目指
して」
・所員 砂崎浩二
◆われらが協力隊!
「地域の稲作発展を願って」
・23年度 4次隊
村落開発普及員 古根川浩之
◆コラム・人紹介
「事務所の看板受付嬢!」
・ナショナルスタッフ
シラ・マム・ハディ・ンジョング
さん
◆ひといき
「教育分野 JOCV在外研修 ~
よりよい学級を目指して~ 」
24年度 1次隊
青少年活動 岡村匠
◆事務所より
・お知らせ
・人の動き 等
「すっかりアフリック」
JICAセネガル事務所メールマガジン 第88号 2013 年 12 月 10日配信
すっかりアフリック JICA セネガル事務所メールマガジン
カ最大。エチオピア、タンザニア、セネガルの後、僅差でスーダン、モザンビーク、ガーナが続き、上位
20 位中 7 カ国をアフリカが占めていました。一方、無償資金協力の集計はまだ公式に出ていませんが、
外務省サイトの数字を合算すると 21.64 億円。従って、セネガルへの 2012 年度の ODA 総額は 44.21
億円(暫定値)となります。なお、セネガル事務所が担当する他の 6 カ国の技術協力は合計で 4.98 億円。
マリとギニアビサウへの協力停止の影響で、例年に比べ半減しました。
②人の行き来:研修員 213 人、専門家 115 人、ボランティア 110 人(継続派遣を含む)
ざっと「200 人、100 人、100 人」という規模で協力関係者の往来があります。なお、研修員の内 99
人が日本で研修を受け、114 人がセネガルで研修を受けています(セネガル人 58 人、第三国研修員 56
人)。この他に調査団員 83 人、無償資金協力の施工業者の方などがセネガルを訪れ、滞在しています。
③分野:人的資源 37%、農林水産 36%。技術協力のみでは農林水産 34%、公益事業 21%。
総額 44.21 億円の内、人的資源(教育、職業訓練)と農林水産がそれぞれ1/3以上を占め、中学校建
設と肥料供与の無償資金協力の金額が大きいことが影響しています。技術協力だけを見ると、農林水産は
1/3(うち水産 9%)、インフラなど公益事業が約2割、保健 16%、人的資源 15%と続いています。
(ただし、JICA の統計区分上、職業訓練が人的資源、一村一品プロジェクトが農林水産に含まれたりす
るので、「産業人材育成プログラム」などプログラム別の投入とは一対一に対応していません。)
とてもざっくりした数字ですが、どんな印象を持たれたでしょうか。成果はつぎ込んだお金と人の数で
は計れないので、今度は挙げた成果を整理して比較したいところですが、それは別の機会に譲ります。既
に 2013 年も暮れ、2014 年度の事業の進め方を考える今日この頃ですが、セネガルを含む西アフリカ、
そして日本のために、税金の使い道にふさわしい仕事をして参りたいと思います。
今年も大変お世話になりました。よいお年をお迎えください。
◆活動紹介
セネガル人もお米が大好きですが、セネガルの米自給率はとても低いです。セネガル政府は今、
米の自給、そしてゆくゆくは輸出を目指しているところで、そのための基礎を築くためのプロジェク
トの紹介です。
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~国産米 100 万トン生産を目指して~ 所員 砂崎 浩二
このたび、セネガル川流域灌漑生産性向上プロジ
ェクト(通称:PAPRIZ)の終了時評価調査を行い、
農業省と終了時評価のミニッツ署名を終えました。
セネガル側もプロジェクトの達成度を高く評価し、
プロジェクトは 2014 年 3 月で 4 年 3 ヶ月の協力を
終えることになりました。
PAPRIZ って何?という方もいると思いますので、
PAPRIZ(お米の協力)を始めた経緯を簡単に紹介した
いと思います。
まず皆さんご存知のことですが、セネガルはチェブジェンを始め美味しい食文化の発展の甲斐あっ
てお米が多く食べられています。一人当たりの年間消費量は 74 キロ(2003 年)。日本人(60 キロ)
よりも多くの米を消費しています。
しかし、セネガルで食べられている米はタイ、ベトナムから輸入した砕米(精米の過程で出た砕けた
米)。砕米の輸入は年々増加し、世界最大の砕米輸入国(2001 年、63 万トン/年)の地位を築きまし
た(セネガルで数少ない、世界一の事項です)。国産米は?というとセネガル国内の認知度は低く、
主にセネガル川流域の灌漑地でひっそりと生産しているという状況です(2001 年、17万トン/年)。
2000 年当時までは米の輸入量は堅調に伸びていましたが、2004 年の米の国際価格高騰がこの国の
台所事情に大きな衝撃を与えました。輸入量は減少、国内の米価格は高騰し、食料安全保障の問題と
なり、それ以降セネガル政府は米の自給率向上に本気で取り組む姿勢みせるようになりました。
セネガル政府は日本に対して、米自給率の低い原因究明、生産、精米加工、流通マーケティングの
各分野における問題分析と開発シナリオの策定の支援を要請し、我が国は 2004 年から開発調査「セ
ネガル国稲作再編計画」で、米セクターのマスタープランを、セネガル政府に提案しました。このマ
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スタープランが土台となり、2009 年より国産米の生産、精米加工、流通マーケティングの一体的な改
善を目的とした 4 年間の技術協力「セネガル川流域灌漑地区生産性向上計画プロジェクト」をサンル
イ州で開始しました。
約 4 年が経過し、プロジェクトが対象とする灌漑地区の組合崩壊、セネガル川国境付近の治安悪化
による活動制限などさまざまの影響がありましたが、専門家皆様の満身創痍な活動のおかげで、稲の
生産性向上、精米品質改善、流通マーケティングの改善すべてにおいてプロジェクトは大きな成果を
残し、マスタープランを具現化しました(以下、参照)。
プロジェクト目標 達成度
籾の生産性の 15%向上 ・籾の生産性は 15%以上増加(2010 年乾季作 4.8t/ha、雨季作
4.4t/ha→2012 年乾季作 5.8t/ha、雨季作 5.0t/ha)
・稲作農家の所得 20%以上増加(2010 年平均純収 216,000FCFA/ha
→2013 年 421,000FCFA/ha)
・籾生産量は 2010 年と比べて 30%以上増加(2010 年籾生産量 252t
→2012 年 330t)。
稲作農家の収入 20%増加
稲の生産量の 15%増加
精米流通業者への精米流通量増加 精米業者における流通量は 2011 年と比べて約 23%増加(2011 年籾処
理量 72,200t→2013 年 88,650t)し、国産米販売店における販売量も
2010 年と比べて約 2 倍(2010 年 704t→2013 年 1,441t)。 販売店での精米販売量の増加
2012 年には国産米の生産量は 60 万トンに達し、セネガル政府は 2018 年までに米の自給率達成を
(160 万トン生産)、その先には米の輸出を大目標に掲げています。
そんな礎を築いたのが PAPRIZ であり、これまで米セクターに携わってきた日本人専門家皆様の努
力であることは間違いのない事実です。近い将来、セネガル国民の皆さんが砕米を食べていた昔話を
する日が来ることを願って、米の協力を続けていきたいと思います。
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◆われらが協力隊!
セネガルの米自給率向上を応援しているのは、灌漑稲作を主とした大きなプロジェクトだけではあ
りません。協力隊も地域の天水稲作の普及を目指して頑張っています!
~地域の稲作発展をねがって~
古根川浩之
隊次:23 年度 4 次隊
職種:村落開発普及員
任地:ソコン市 (ファティック州フンジュン県)
セネガル南西部ファティック州フンジュン県ソコン
市よりお届けします。セネガルの人々は「俺達の輪に飛び込んで来い!」と言わんばかりの寛容さに
溢れています。町に独りの日本人を放っておけない優しい人々なのです。「ずっと居たら良い、ここで
嫁をもらえ」と言ってもらいながらの生活は充実しています。美人の多いセネガル、良い出会いに少
し期待していましたが任期も終盤を迎え、実現は困難そうです。
さて、私は稲作普及の活動をしています。お米が主食のセネガルですがその約 7 割を輸入しており、
農産物輸入額の一位となっています。また、近年の世界食料価格危機の際には米価格が高騰しました。
その価格は常時の 6 倍にもなったとか。そのような中で稲作をやってみませんかと提案するのが主な
活動です。
セネガルは水が豊富ではありません。一部地域を除
き灌漑稲作を行うのは困難です。幸い私の任地は比較
的水に恵まれた地ですが、それでも降雨頼りである事
は避けられません。そのため、畑での陸稲栽培や湛水
し易い環境での栽培が行われます。
活動は村で稲作講習会を開催、参加者に種子を配布し
ます。その後は参加者の栽培や収穫の状況確認に巡回。
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乾季には通常雨期に行う稲栽培を乾季に出来ないものかと湿地を開墾し試験栽培を行っています。
トレンドとも言える地域の稲作ですがまだまだ始まったばかり。今後、どのような形に落ち着くのか
は分かりませんが、地域の稲作発展を願います。
◆コラム
今回はJICAの受付で働く、ハディさんの紹介です。明
るくテキパキと仕事をこなす、セネガル事務所の看板受付
嬢です。
セネガル事務所ナショナルスタッフ
シラ・マム・ハディ・ンジョング さん
私の名前はシラ・マム・ハディ・ンジョングです。ダカール産まれのダカール育ちです。JICA セネ
ガル事務所の受付で働いています。私の国のために様々な協力しているJICAで働くことを誇りに
思っています。私は文化活動への参加、新しいテクノロジーに触れること、また、いろいろな国の人
に出会うことが大好きです。最近、もっとも興味をもって取り組んでいるのは社会奉仕活動です。
今、ASCOTAL という団体に所属して、タリベ注)の子供達のための教育活動を支援しています。仕
事が終わってから、私は ASCOTAL の広報担当として活動しています。
また、今住んでいる地区には貧しくて学校に通うことができなかった多くの未就労の若者がいます。
私は未就労の若者に対する支援活動も行っています。彼らのためにイベント活動の開催をしたり、裁
縫店を立ち上げたりしました。最近、若者の就業機会を提供するためにレストランの開業も試みまし
たが、これは失敗しました。なかなか上手くいかなくて問題に直面していますが、私は諦めず、子供
や若者のために頑張っていきたいと思います。
注)イスラム教のコーラン学校の生徒。親元を離れ、恵まれない環境におかれている子供が多くいる。
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◆ひといき
先日、セネガルの教育分野で活躍する隊員が中心となり近隣国から隊員とそのカウンターパートを
集め、JOCV 在外研修が開催されました。「理想の学級」について、熱い議論が交わされたようです。
教育分野 JOCV 在外研修 ~よりよい学級を目指して~
岡村匠
隊次:24 年度 1 次隊
職種:青少年活動
任地:フィムラ村(ファティック州ファティック県フィムラ郡)
2013 年 11 月 25 日~28 日の 4 日間「仏語圏サブサハラアフリカ諸国 教育分野 JOCV 在外研修
~よりよい学級を目指して~」を開催しました。ベナン・カメルーン・ガボン・ブルキナファソ・セ
ネガルの 5 か国から計 55 名、オブザーバーを含めると総勢 60 名以上の参加者で行いました。
隊員それぞれが日々学校を巡回し活動を進める中で、「技術的なことを教えるだけではなく、それを
超えた、安心して通える、通いたくなるような学校づくり、かつ社会の縮図を学べるような学校づく
りが必要なのではないか。そして、それを一番身近に作り上げることができるのは学校の中でも『学
級』なのではないか」と考え、今回の在外研修のテーマを「よりよい学級を目指して」と掲げました。
研修の間『学級』を体感してもらうために参
加者を 3 つのクラスに分けたり、授業の中で
の関わり方を体感してもらうために役を設定
しその場で劇をしてもらうなど、参加者にで
きるだけ子ども達の視点に立ってもらえるよ
うに工夫しました。
3 日目はダカールから離れ、ファティックへ
幼稚園と小学校の視察に行きました。朝早く
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移動も大変だったにもかかわらず現場を見ることで得るものが多かったように思います。
最終日はそれぞれのクラスにまとまりができ、ボランティアとカウンターパートの絆も深まったよ
うに感じました。
この研修を通して自分たちにとってセネガルの教育について改めて考えるいい機会となりました。
この研修が子ども達のためになるようにこれからも先生達と共に活動をがんばっていきたいです。
◆事務所より
■■ お知らせ ■■
◆事務所休日等
・祝日(クリスマス)(12/25)
・年末年始休暇(12/30~1/3)
◆研修・調査団
・PREMST2 中間レビュー調査団(-12/10)
・ソムニード(NGO)来セ(-12/11)
・SABER 調査団(12/8-12/11)
・保健分野円借款基礎情報収集調査(-12/13)
・ダカール郊外中学校/ファティック CRFPE 概要説明調査(12/9-12/13)
・DAC 対日審査(12/9-12/13)
・大ダカール都市圏開発セクター情報収集・確認調査(-12/22)
・協力隊家族視察の旅(12/27-1/5)
◆人の動き
・長期 JV23-2 次隊(延長)1 名;帰国(12/23)
・長期 JV23-3 次隊 3 名;帰国(1/7)
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・長期 JV25-3 次隊 7 名 / 短期 JV2 名 / 短期 SV1 名;赴任(1/9)
・松本専門家;離任(12/20)
◆配信希望募集
セネガル発『すっかりアフリック』(月刊)の配信希望を承ります。 ご希望の方はその旨「JICA セネガ
ル事務所広報タスク宛」に下記お問合せ先メールアドレスまでお知らせください。
※セネガル滞在中の JICA 関係者の皆様…離任後はメールが配信されません。配信ご希望の方は、下記
問い合わせ先までお知らせください!
◆「すっかりアフリック」がセネガル事務所ホームページ内でもご覧いただけます!
http://www.jica.go.jp/senegal/office/index.html
◆記事投稿歓迎
記事の投稿を広く歓迎いたします(ただし掲載可否判断、校正等を編集部にてさせて頂くことがあ
りますのでご了承ください)。皆さまからの興味深い記事をお待ちいたしております。
『すっかりアフリック(Suxali Afrique)』はウォロフ語で『アフリカの発展』を意味します。
発行元:独立行政法人 国際協力機構(JICA) セネガル事務所
お問合せ: [email protected]
JICAセネガル事務所 URL http://www.jica.go.jp/senegal/