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1 基地局フィルタ用平面型 小型低損失ローパスフィルタ 龍谷大学 理工学部 電子情報学科 教授 石崎 俊雄

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基地局フィルタ用平面型小型低損失ローパスフィルタ

龍谷大学 理工学部 電子情報学科

教授 石崎 俊雄

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従来技術とその問題点(1)

携帯電話基地局用フィルタやデュプレクサにおいて、

高域減衰量を確保するため、高調波レスポンスを

抑制するローパスフィルタが通常用いられている。

中心導体

外導体

テフロン筒

基地局用デュプレクサの一例

ローパスフィルタ

送信バンドパスフィルタ、受信バンドパスフィルタの小型化が進展する中、ローパスフィルタの大きさが問題になってきた。さらに、今後の第4世代、第5世代基地局では装置の小型化やフィルタの表面実装化が求められてくる。

現状で用いられている同軸型ローパスフィルタ

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従来技術とその問題点(2)

既に実用化されている同軸型ローパスフィルタは、

・フィルタサイズが大きい

・直線型立体構造でレイアウトの自由度が低い

等の問題があり、デュプレクサの小型化が出来ない。

また、マイクロストリップ線路を用いた平面型ローパス

フィルタはあるものの、損失が大きく基地局用途には不適

マイクロストリップ線路を用いた平面型ローパスフィルタの例

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新技術の特徴(1)

本願発明の構造では、

• 小型化に適した平面構造

• 低損失と高減衰量の両立が可能な楕円関数特性

の実現を目標とし、

サスペンデッドラインを主線路として用いるとともに、

インダクタンスと平行平板コンデンサ電極を誘電体

基板の両面に形成する構造とする。

また、リードフレームに誘電体基板を実装した構造で、

確実なグランド接続と量産性向上を図り低コスト化を

可能にする。

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新技術の特徴(2)

-100

-90

-80

-70

-60

-50

-40

-30

-20

-10

0

0 1 2 3 4 5

S2

1 &

S11

[d

B]

Normalized frequency

楕円関数フィルタは、図に示すような

伝達特性、反射特性を有するフィルタ。

減衰帯域に減衰極を有することから、

最も急峻な減衰特性・選択特性を実現

でき、チェビシェフ特性よりも優れている。

楕円関数フィルタ

))()()((

))()()(()(

2

4

22

3

22

2

22

1

2

2

4

22

3

22

2

22

1

2

pspspsps

zszszszss

)(1

1)(

22

0

2

sst

)(

)(1)(

0 sQ

sPst

楕円関数特性は、上式を解くことによって

回路定数を求めることができる。

e0はリップル係数で通過帯域の反射損失と

帯域外の減衰量を決める係数

t(s)は複素有理関数であり、s=jwと考える

ことで実周波数と対応付けられる。

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新技術の特徴(3)7段楕円関数と9段チェビシェフ・フィルタ回路

Element L1 L2 C2 L3 L4 C4 L5 L6 C6 L7

Nominal value

0.46907 0.0876 1.0914 1.19381 0.38494 1.03247 1.12348 0.34041 0.81668 0.27727

Actual value

0.982nH 0.183nH 0.914pF 2.50nH 0.806nH 0.865pF 2.35nH 0.713nH 0.684pF 0.581nH

Element C1 L2 C3 L4 C5 L6 C7 L8 C9

Nominal value

0.8114 1.427 1.8043 1.7125 1.9057 1.7125 1.8043 1.427 0.8144

Actual value

0.682pF 2.99nH 1.51pF 3.59nH 1.60pF 3.59nH 1.51pF 2.99nH 0.628pF

7段楕円関数フィルタの素子値

9段チェビシェフ・フィルタ特性の素子値

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新技術の特徴(4)

7段楕円関数と9段チェビシェフ・フィルタの特性比較

少ない素子数でほぼ同等のフィルタ特性が得られる

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新技術の特徴(5)ローパスフィルタの設計例

周波数範囲 規格化周波数範囲 規格

挿入損失 3400MHz – 3600MHz 0.895 – 0.947 0.1dB以下

反射損失 3200MHz – 3600MHz 0.895 – 0.947 25dB以上

減衰量 6.5GHz – 18GHz 1.711 – 4.737 50dB以上

LPFの目標特性

ただし、fc=3800MHzとして規格化している。

今回の設計では、カットオフ周波数を5.3GHzに設定し、リップル係数4%、減衰量40dBを基本とした楕円関数フィルタの設計を行った。基本設計の素子値を表に示す。

Element L1 L2 C2 L3 L4 C4 L5 L6 C6 L7Nominal value 0.63395 0.1591 1.19375 1.19217 0.79595 0.81938 1.05812 0.64812 0.76033 0.32189Actual value 9.52E-10 2.39E-10 7.17E-13 1.79E-09 1.20E-09 4.92E-13 1.59E-09 9.73E-10 4.57E-13 4.83E-10

LPFの基本設計値

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新技術の特徴(6)

プリント基板

導体パターン

金属ケース

サスペンデッド・ライン構造

フィルタを小型化して体積を減少させると共に、取り扱いやレイアウトのし易さを考えると平面構造フィルタは非常に魅力的。通常、プリント基板上に形成する平面型フィルタは損失が大きく、基地局ではあまり使われていない。今回、平面型でありながら損失を減らす構造としてサスペンデッド・ライン構造の採用を考える。

この構造は、プリント基板の裏面グランド層がなくリターン電流は金属ケース面を流れ、導体損が少ない。また、空間の大部分が空気のため実質的な誘電体損も小さくなる。さらに、導体パターンはフォトエッチングにより微細なパターンを形成できる。

平面型フィルタ構造

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新技術の特徴(7)本願発明のローパスフィルタの構造

上面図 下面図断面図

ローパスフィルタの構造CAD図

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新技術の特徴(8)分布定数回路に置き換えた回路

容量電極のサイズに伴うインダクタンス成分も同時に考慮する

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新技術の特徴(9)寄生成分に対する考え方

LL

CL

LR CL

LL CR

PLH

(Ideal metamaterial)

CRLH

(Realizable)

LR

CLLLCR

右手系左手系複合線路の例

複合共振器の例

いずれの場合も、・インダクタ・パターンとグランド・パターンとの間の寄生容量・キャパシタ・パターンの有限なサイズによる寄生インダクタンス

が存在する。

寄生成分を積極的に利用することで小型化を実現

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新技術の特徴(10)

試作ローパスフィルタの内部写真

シミュレーション特性 実測特性

シミュレーションと実測特性はよく一致した。目標特性は一部達成できていないものの、良好な特性が得られている。

誘電体基板のサイズ:15.3mm×7.6mm

中空部のサイズ:15.3mm×7.6mm×6.25mm

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新技術の特徴(11)

さらなる量産性の向上に向けて

リードフレームへの実装図

①グランド接続を確実にする②多連リードフレームで一括生産

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新技術の特徴(12)

リードフレームを用いた場合の接地構造

リードフレーム

フィルタが形成されたプリント基板

シールドケース

リードフレームをシールドケースで挟み込むことにより確実に接地できる

多連リードフレームにフィルタ基板を実装した一括製造

個片に切り出すことにより量産性の向上並びに低コスト化が可能

切断線リードフレーム

プリント基板プリント基板

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新技術の特徴(13)

平面型バンドパスフィルタとの接続構造例

人工誘電体2段有極型フィルタ

30mm

12mm

45mm

バンドパスフィルタ基板

ローパスフィルタ基板

バンドパスフィルタとローパスフィルタを一体化した構造。平面型のためプリント基板上に実装可能。

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従来技術との比較

• 低損失ローパスフィルタ(LPF)を、平面構造フィルタにて実現した。

• 楕円関数フィルタにより、少ない段数で高減衰を

実現し、帯域内挿入損失が低減できた。

• 小さい素子値により高域スプリアス特性を改善し、

高い周波数まで高減衰を実現した。

• 体積は、従来同軸のおよそ58%に小型化できた。

• 平面型のバンドパスフィルタとの親和性がよく、

コネクタレスで直結することができる。

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想定される用途

• 従来型基地局フィルタに適用できるだけでなく、

ピコセル等超小型基地局フィルタに最適

• 第5世代用アクティブ集積アンテナに適用し、

PAの高調波を抑圧する用途にも好適

• 多連型のリードフレームで生産することにより、

大量生産、低コスト化が可能になる

• その他、マイクロ波帯のローパスフィルタとして

広い応用範囲が考えられる

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実用化に向けた課題

• 現在、試作フィルタで良好な特性を確認済み

• 本来、3つある減衰極が1つしか現れておらず、

原因は検討中

• 対策を施して、目標性能を完全に満足するフィルタを

開発していく予定

• 減衰帯域をさらに高域まで広げる方法も検討中

• リードフレームを用いた構造の試作実験も行いたい

• この構造で、グランドがしっかり取れるか、また、

性能のばらつきがどうなるかを検証したい

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企業への期待

• 未解決の課題として、必要な減衰極数が現れて

いない点については、パターン間の不要な電磁界

結合を抑制することにより克服できると考えている。

• フィルタ・デバイスや素材関連の企業と共同研究を希望。

• 量産技術の確立について一緒に検討を行いたい。

• また、無線機器を開発中の企業や、IoT分野への

展開を考えている企業には、本技術が貢献できる。

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本技術に関する知的財産権

• 発明の名称 :低域通過フィルタ

• 出願番号 :特願2016-72949• 出願人 :学校法人 龍谷大学

• 発明者 :石崎俊雄

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産学連携の経歴

2010年9月までパナソニック(株)本社研究部門において、携帯電話等向けの

マイクロ波デバイスの開発に従事。

2010年10月以降、龍谷大学理工学部教授として、引き続き、マイクロ波デバイス並びに無線電力伝送システムの研究開発に従事。

主な外部資金獲得:

• 2011年度第1回A-STEP探索タイプ

「第4世代携帯電話に用いる左手系マイクロ波フィルタの研究開発」

• 2012年度第2回A-STEP探索タイプ

「携帯電話基地局用小型キャビティ型マルチモードフィルタ」

• 2012年度第2回A-STEPシーズ顕在化タイプ

「3次元フリーアクセス無線電力伝送技術の確立」

• 2014年NEDOクリーンデバイス社会実装推進事業委託研究

「省エネルギー社会を実現する高効率高出力マイクロ波GaN増幅器」

その他、国内外の企業からの受託研究、共同研究多数あり。

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お問い合わせ先

龍谷大学

知的財産アドバイザー 櫻井 雄三

TEL 077-543-7832

FAX 077-544-7263

e-mail [email protected]

龍谷大学石崎研究室ホームページもご覧下さいhttp://www.elec.ryukoku.ac.jp/ishizaki/index.html

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