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「好きなことを仕事にする」ことの変遷―『好きを仕事にする本』を事例に―
久木元真吾 (公益財団法人家計経済研究所)
第88回日本社会学会大会2015年9月19日早稲田大学
1.「「好き」を仕事にする」への着眼
�自分自身の関心や好みを、仕事の選択の基準ないし参照軸とすること→肯定・否定・推奨・批判などさまざまな形
をとりながら、現在に至るまで日本社会において繰り返し語られてきた
� →どのように語られ、位置づけられてきた
のか、その位置づけがどのような変遷をみせたのかを、ある雑誌を事例に検討
2.対象:『好きを仕事にする本』
�分析対象:『好きを仕事にする本』(ケイコと
マナブ臨時増刊,1998~2008)および後
継誌(『ケイコとマナブ』の特集企画など)
�その雑誌における、「自分の好きなことを
仕事選びに際して重視すること」をめぐる
記述について分析を行う
3.雑誌の変遷
� 1990:リクルート『ケイコとマナブ』創刊
� 1998~2008:『好きを仕事にする本』を『ケイコと
マナブ』臨時増刊として刊行(年数回ペース)
� 2008~9:『好きを仕事にする本~ワタシにずっと
心地いいお仕事』にリニューアルし年2回刊行
� 2010~現在:『ケイコとマナブ』で年2回「好きを
仕事にする」をテーマとする特集号を刊行
4.雑誌の(共通の)特徴
� 自分の好きなことを仕事にしたい女性向けの、そ
のために通うスクールの情報を提供する雑誌
� 「2割~3分の1の記事部分、3分の2~8割のス
クール情報」という構成。資料請求のはがきつき。
� 読者層は女性、20代後半~30代前半が中心。
現在は首都圏版・関西版・東海版の3種が刊行。
5.1998~2001年
� 1998.9~2000.6副題:「やりたい仕事につくためのスキルの身につけ方・なり方完全ガイド」
� 以降長く続くキーワード「転身」(「好き」を仕事にする形に移行すること)は、最初から登場
� Cf. 「好き」(なこと)を仕事にする、というフレー
ズ:近いものはあるが先駆的、ただし同様の事例はどれも女性について用いられる
6.2001~2008年
� 「私らしい」という観点の登場
� 「ピッタリ」「めぐり逢う」「ハッピー」�
�他方で、2003年から顕著に、「転職成功例のカタログ化」が進展
�続く時期への予兆も:「結婚・出産・介護�
好きな仕事をずっと続ける方法」(2007.6)、
「サイドワーク」「会社でもうちょっと頑張りたいあなたに最強資格45」(2007.9)
7.画期:2008~2009年
� 2008年8月にリニューアル:『好きを仕事にする本 ワタシにずっと心地いいお仕事』
� 「ずっと」という表現の登場:
結婚・出産・育児などとの両立を志向する「好きな仕事をずっと続ける方法」や、「サイドワークの始め方」「10年後も使える資格」など、【働き続けること】が全面化
� しかし、リニューアル版は2号で刊行停止
8.2010年~
� 2010.3以降、『ケイコとマナブ』本誌で、年2回に定期的に「好きを仕事にする」が特集化:コンセプトを継承
�ただし同時に、 「転身」の達成だけに注目
するのではなく、『好きを仕事にする本 ワタシにずっと心地いいお仕事』にみられた【働き続けること】を重視する姿勢も継続
9.2010年以降の諸特徴(1)
� 「好き」以外の諸要素への注目・重視の明示化「やりがい・お金・時間�全部手に入れたい!」(2010.3)
� 「働き続けること」の重視:「転身」後の持続への関心「好きを仕事にして長く働く!」(2010.3)「一生モノ仕事に就く方法、教えます」(2010.3)
「将来の保険になる「好き」を仕事にする働き方:結婚・出産を見すえた選択」「10年後、今の仕事、していられますか?」(2013.9)
10.2010年以降の諸特徴(2)
� 一定の収入確保を重視:「稼ぐ」という表現「「好き」を「仕事」にする方法稼ぐための黄金
ルール」「「稼げるプロ」への近道、教えます!」(2011.9)「「好き」を仕事にして年収350万円以上稼げる5つの方法:20代女子の平均年収より稼げる」(2015.9)
� 「転身」しきらない、中間的な可能性の検討(1)「副業・週末開業でプチ稼ぎ 目指せ月3万円!」(2013.9)
11.2010年以降の諸特徴(3)
� 「転身」しきらない、中間的な可能性の検討(2)「「今の会社に居続ける!!」事務OLの最強★資格・スキル」(2014.3)→転職せず今の仕事を続けることを前提とした提案
� 非婚・離別の可能性の検討
「もし“一人”で生きていくことになったら何にいくらかかる?」(2015.9)
12.議論/考察(1)
� 「好き」を仕事にすること」は、無限定に主張されず、様々な付加条件とセットで語られるように
例: 「長く」「自分らしく」「堅実に」(2014.9)
13.議論/考察(2)
� ただし、「好き」を仕事にすることが軽視されるようになったわけではない:「心地よい」(2008)「一生ときめく仕事」(2015.3)「ワタシらしく、HAPPYに」(2012.10)「ストレスフリー」(2014.3)
� 「好きを仕事にする」ことは、単独で十分に説得的たりえないとしても、“ある程度は当然満たされるべき条件”の地位は保持?
14.議論/考察(3)
� 「働き続けること」の必要性・重要性の認識の広まり(義務的な意味・自らの可能性を広げるという意味の両方)
� 他方で、女性にとって、「働き続けている」肯定的なモデルが今なお不足? (転身したモデル/転身しないモデルの双方)
� さまざまな条件(やりがい・長く・自分らしく・堅実に稼ぐ�)を同時に(ある程度)求められることに
15.議論/考察(4)
� 「長く続く、リスク含みの未決定な状況の中で、事態を「打開」したいのに簡単にはそうもいかないような毎日をどう生き延びるか��好むと好まざ
ると完璧とはいえない現状が継続するという事態を生きることを、どのようにして有意味な経験にしていくか」という課題(久木元 2010: 139)
� → 働き続けること、「好き」という意味を持たせる
ことの両方がともに必要、そこではじめてsustainableな働き方として像を結んでいる
文献� 久木元真吾,2003,「「やりたいこと」という論理――フリーターの語りとその意図せざる帰結」『ソシオロジ』48(2): 73-89.
� ――――,2010,「「やりたいこと」の現在」小谷敏・土井隆義・芳賀学・浅野智彦編『若者の現在労働』日本図書センター,117-148.
� ――――,2011,「不安の中の若者と仕事」『日本労働研究雑誌』612: 16-28.
� ケイコとマナブ編集部,2011,『ハッピー★女子ワーク図鑑:自分の「好き」を仕事にしよう!』メディアファクトリー.
� ヒューマンアカデミー,2011a,「Learning for best life vol.23 アノヒトに聞きました 『ケイコとマナブ』編集長根岸菜穂子」ヒューマンアカデミーウェブサイト(http://haa.athuman.com/mailmag/ anohito/vol23.asp?code=041039).
� ――――,2011b,「Learning for best life vol.24 アノヒトに聞きました 『ケイコとマナブ』編集長根岸菜穂子」ヒューマンアカデミーウェブサイト(http://haa.athuman.com/mailmag/anohito/ vol24.asp?code=041039).
� 1999,『「好き」を仕事にした女たち120』学習研究社.
� 資料入手にあたり、ご協力いただいた横山幸代氏(リクルート マーケティングパートナーズ)
に感謝いたします。本研究において示されている見解は、著者個人のものであり、所属する機関のものではありません。