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地質リスク低減のための調査・設計マニュアル(案) 平成 30 年 2 月

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地質リスク低減のための調査・設計マニュアル(案)

平成 30 年 2 月

国 土 交 通 省 近 畿 地 方 整 備 局

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目 次 1.はじめに ·························································································· 1-1 2.「地質リスク低減のための調査・設計マニュアル(案)」の概要 ····················· 2-1

2.1 本マニュアルの目的 ······································································ 2-1 2.2 本マニュアルの適用範囲および活用 ················································· 2-1 2.3 地質リスクに関する情報の共有 ······················································· 2-1 2.4 地質リスクの定義 ········································································· 2-1 2.5 発現する可能性が高い地質リスク ···················································· 2-2 2.6 地質リスク低減の考え方 ································································ 2-3

3.公共事業における地質調査と設計の流れ ················································ 3-1 3.1 地質調査と設計の流れ ··································································· 3-1 (1)概要 ······················································································· 3-1 (2)地質リスク調査検討 ·································································· 3-3(3)公共事業における地質調査目的と地質リスクの絞込みの概念 ··········· 3-4 (4)共事事業における地質調査内容 ·················································· 3-5 (5)情報共有 ················································································· 3-7 (6)設計便覧道路設計フロー対応 ····················································· 3-7

3.2 各段階の地質調査内容 ··································································· 3-12 (1)道路概略設計段階の地質リスク調査検討 ······································ 3-12 (2)道路予備設計(A)段階と予備地質調査 ······································ 3-15(3)道路予備設計(B)段階と詳細地質調査(1) ····························· 3-16 (4)道路詳細設計(B)段階と詳細地質調査(2) ····························· 3-16 (5)各地質調査の目的と調査手法 ····················································· 3-17

4.発注形式 ·························································································· 4-1 5.各道路構造物における地形・地質調査の流れと内容 ································· 5-1

5.1 道路構造物の種別毎の調査・試験手法 ·············································· 5-1 5.2 道路土工・切土部の地形・地質調査の流れと内容 ······························· 5-3 5.3 道路土工・盛土部の地形・地質調査の流れと内容 ······························· 5-5 5.4 構造物基礎の地形・地質調査の流れと内容 ········································ 5-7 5.5 トンネルの地形・地質調査の流れと内容 ··········································· 5-9 5.6 施工段階・維持管理段階での地形・地質調査 ····································· 5-11

6.地質リスク評価に関する参考資料 ························································· 6-1 6.1 地質リスク調査検討の成果イメージ ················································· 6-1

6.2 地質リスク評価の成果イメージ ······················································· 6-2 6.3 地質リスクマネジメント結果引継ぎのイメージ ·································· 6-4

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1-1

1.はじめに 公共事業は、国民生活にとって重要な基盤整備であり、最も身近な社会資本整備の一

つです。一方、多くの事業費を必要とするため、整備にあたってはその効果を十分見極

めるとともに、経済性や維持管理に優れたものでなければなりません。 とりわけ経済性については、従前より、構想段階から計画、調査、設計、施工、維持

管理の各段階で地形・地質等様々な事業リスク(事業コストや工期の変動要因)に配慮

しつつ、経済性を追求して事業を進めてきました。今後は、更に各段階における検討の

連続性の確保や、近年の施工時の地形・地質リスクの低減を図り事業を推進する必要が

あります。また、地質リスクにどのように対処するかが、一般に広く注目されています。 このため、今後の近畿地方整備局の公共事業を対象に、近畿地方整備局、(一社)建

設コンサルタンツ協会近畿支部、(一社)関西地質調査業協会の三者が協働して、地質

リスクを中心にして計画・調査・設計・施工・維持管理の各段階で、さらなる事業リス

クの低減のため、「地質リスク低減のための調査・設計マニュアル(案)」(以下、「本マ

ニュアル」という。)を作成しました。 本マニュアルは、近畿地方整備局の所掌する公共事業の計画、調査、設計、施工、維

持管理の各段階で地形・地質等を要因とする事業リスクを、事業管理者、地質技術者、

設計技術者で共有して、さらなる地質リスク低減を図るために、三者共通の調査・設計

システムを念頭に構築しました。本マニュアルにより公共事業の各段階を進めることに

より、地質リスクによる大幅な事業への影響が低減されることを期待します。 また、本マニュアルは道路事業を中心にとりまとめていますが、河川事業等の他の公

共事業においても活用することができると考えております。広く参考にしていただけま

すようお願いいたします。 なお、本マニュアルの作成にあたっては下記の図書を参考にしました。

参考図書 ①設計便覧:近畿地方整備局(平成 24 年 4 月)

②道路土工要綱:(公社)日本道路協会(平成 21 年 6 月) ③道路事業における地質・土質調査計画の立て方(第 1 回改訂版)

:(一社)建設コンサルタンツ協会技術部会 http://www.jcca.or.jp/

④地質リスク調査検討業務発注ガイド(2016 改訂版) :(一社)全国地質調査業協会連合会

https://www.zenchiren.or.jp/

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2-1

2.「地質リスク低減のための調査・設計マニュアル(案)」の概要 2.1 本マニュアルの目的

本マニュアルは、公共事業の遂行にあたって計画・調査・設計・施工・維持管理の

各段階における、地質調査内容との関連を示し、地質調査の成果(地質リスクに関す

る検討結果等)を設計に効果的かつ適切に活かすとともに、主に施工期間中における、

地質に起因する事業リスクを低減すること(地質リスクマネジメントの実施)を目的

とする。 2.2 本マニュアルの適用範囲および活用

本マニュアルは、主に計画、調査、設計の各段階を適用範囲としている。各段階に

おいて、設計業務に並行して実施される地質調査内容との関連を示し、地質調査の成

果(地質リスクの検討内容等)が設計等に効果的に活かされ、施工時における地質リ

スクを低減するように示したものである。この成果は、維持管理に引き継がれ有効活

用されることを念頭に置いている。 また、事業管理者、地質技術者、設計技術者が、本マニュアルに示すところの三者

会議等でコミュニケーションを図り情報共有することにより効果的な公共事業の遂

行に努めるものとする。 なお、本マニュアルは山岳道路事業を中心にとりまとめており、都市内道路・河川・

ダム事業などに関する調査・設計マニュアルについては、今後の検討にゆだねるもの

とし、当面は現在ある各協会等の設計基準などによるものとする。 2.3 地質リスクに関する情報の共有

事業管理者、地質技術者、設計技術者は、ともに本マニュアルの示すところの三者

会議等でコミュニケーションを図り、地質リスクに関する情報を共有することが重要

である。それにより、地質リスク評価結果に基づく適切な対応策を検討することが可

能になり、効率的かつ安全な公共事業の遂行(特に、効率的かつ安全な建設工事の実

施)に寄与することが可能になる。 また、地質調査、設計時に実施した地質リスク検討結果は、施工段階時及び維持管

理段階に有効活用できるように引き継ぐものとする。 2.4 地質リスクの定義

わが国は、急峻な山岳地や、軟弱な地層が厚く堆積する沖積平野などで形成されて

いるとともに、多くの活断層が分布しており、地質は極めて複雑である。このため、

公共事業を進めるうえで、対象地域の地質特性を適切に評価して、事業リスクを低減

することが非常に重要である。地質情報が十分に把握されていなかったことにより、

施工時における手戻りや、構造物等の設計変更等が発生し、当初予定していた事業コ

ストや工期が増大した事例がある。 本マニュアルでは、「事業のコスト増大や工期の延長等に結びつく地質や地下水に

起因するリスク」を「地質リスク」と定義する。また、広義では「地質リスクの存在

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2-2

を認識していないこと」もリスクの一部であると考えている。従来は、事業における

地質リスクを低減するマネジメントは行われていなかったが、今後は地質リスクの抽

出・評価結果に基づくリスクマネジメントを行う必要がある。

2.5 発現する可能性が高い地質リスク 工事履歴等によると、公共事業において発現する地質リスクは多種多様である。ま

た、構造物の特性及び地質・土質状況等によっても地質リスクの発現形態は大きく異

なる。ここでは、発現する可能性が高い地質リスクを、道路構造物毎及び施工地域の

地形毎にまとめた(表 2-1)。

表 2-1 発現する可能性が高い地質リスク

発現する可能性が高い地質リスク

土砂(平地部~丘陵部)☆豪雨時や地震時における斜面の崩壊☆軟弱地盤掘削時における地盤の変状(すべり破壊等)

岩(山岳部~丘陵部)

☆豪雨時や地震時における斜面の崩壊  (深層崩壊、表層崩壊等)☆流れ盤構造の地山を掘削する場合における崩壊☆地すべり地帯における掘削時の地盤変状☆掘削土砂に含まれる自然由来の重金属の環境問題☆落石の発生

平地部

☆軟弱地盤上に施工される盛土の荷重による圧密沈下☆地耐力不足(支持力不足、地盤変状)☆軟弱地盤上に施工される盛土の荷重による側方流動☆地震時の揺れによる被害☆豪雨時の浸水☆津波発生時の浸水

山岳部~丘陵部 ☆傾斜地における盛土の変状

平地部

☆支持層の不陸☆掘削時等における地盤変状(盤膨れ等)☆地震時における揺れと液状化による被害☆津波発生時の浸水

山岳部~丘陵部☆支持層の傾斜☆傾斜地における斜面崩壊の影響☆地震時の揺れによる被害

平地部

☆軟弱層の施工中における切羽の崩壊☆施工周辺部の地盤変状☆地下水の流動阻害☆地中ガスの発生(可燃性ガス、有毒ガス)

山岳部~丘陵部☆不安定な地山における切羽の崩壊☆湧水の大量発生(地下水位の低下)☆掘削土砂に含まれる自然由来の重金属の環境問題

☆豪雨時における洪水被害、土石流被害☆地震時における津波被害

その他

構造物

切土部

盛土部

構造物基礎(橋梁基礎等)

トンネル

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2-3

2.6 地質リスク低減の考え方 道路事業において、その事業リスクを低減するためには、「道路概略設計」⇒「道

路予備設計(A)」⇒「道路予備設計(B)」⇒「道路及び擁壁等付帯構造物詳細設計」・

「橋梁・トンネル等重要構造物詳細設計」の順に実施される各設計業務に並行して「地

質リスク調査検討」を伴う地質調査を適切に実施することが重要である。特に、構想

段階とりわけルート選定の過程において、潜在的な地質リスクを評価し、相対的に地

質リスクが少ないルートを選定することが重要である。ルート選定後は、計画段階に

おいて道路概略設計に先行または並行して、事業実施地域における地質リスクを網羅

的に抽出し、リスクの評価・ランク付けを行い、リスクの回避・低減・保有等を基本

方針とする対応策を検討すること(地質リスク調査検討の実施)が非常に効果的であ

る。これにより、予備地質調査及び詳細地質調査(1)・(2)を的確に行うことが可

能になる。 さらに道路予備設計(A)・道路予備設計(B)、道路及び擁壁等付帯構造物詳細設

計、橋梁・トンネル等重要構造物詳細設計及び施工の各段階における地質リスクを順

次低減し、事業費を適切に設定することにより費用の無駄も省き、しかも安全かつ確

実な施工が期待できる。(地質リスクの多くは施工時に発現する可能性が高い)。 なお、地質リスク低減の要点は下記のとおりである。

① ルート選定の段階で、潜在的な地質リスクを回避または低減する。 ② 予備地質調査に基づく地質リスク調査検討結果を「道路予備設計(A)」に反映

し、地質リスクを低減する。 ③ 詳細地質調査(1)に基づく地質リスク調査検討結果を「道路予備設計(B)に

反映し、地質リスクを低減する。 ④ 詳細地質調査(2)に基づく地質リスク調査検討結果を「道路及び擁壁等付帯構

造物詳細」と「橋梁・トンネル等重要構造物詳細設計」に反映し、地質リスクを

低減する。 ⑤ 地質リスクに対する適切な対策を行う地質リスクマネジメントを実施し、施工中

のリスク発現確率を低減するとともに、リスク発現による事業損失を最小化する。 ⑥ 地質リスクマネジメントの記録を引き継ぐことにより、維持管理段階における地

質リスクの低減効果を期待する。また、構造物の劣化に伴うリスクの低減にも寄

与すると考えられる。

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2-4

これらの一連業務を実施する場合においては、地質リスク調査検討の結果を、事業

管理者と地質技術者・設計技術者が共有することが非常に重要であり、これを確実に

実施すれば、より適切な設計や施工を行うことが可能になる。 また、道路供用後の維持管理へ、地質リスクマネジメントの結果を引き継ぐことに

より、その事業リスクを低減することに繋がる。 道路事業における地質リスクを低減する地質調査の考え方を、図 2-1 に示す。

出展:「地質リスク調査検討業務発注ガイド」2016 年 一般財団法人全国地質調査業協会

(一部加筆修正)

図 2-1 地質リスク(事業リスク)低減の考え方

地質リスクマネジメント

あり

地質リスクマネジメント

なし

凡例 ①地質リスク調査検討 ②予備地質調査 ⑤施工段階地質調査 ⑥維持管理段階地質調査

③詳細地質調査(1)

④詳細地質調査(2)

地質リスクの大きさ

事業リスクの大きさ

当初の潜在 地質リスクの大きさ

調査・設計段階 施工段階 維持管理段階 構想・計画段階

工事進捗に伴う

リスクの低減

劣化に伴う

リスクの増大

残存する地質リスクの大きさ

(リスクの留保分)

地質リスクマネジメントを実施

した場合の地質リスク低減量

地質リスクマネジメントを実施し

ない場合の地質リスク低減量

⑤ ⑥

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3-1

3.公共事業における地質調査と設計の流れ 代表的な公共事業である道路事業を取り上げ、事業における調査と設計の流れを以下

に示す。 3.1 地質調査と設計の流れ (1)概要

従来の道路事業は、概略設計区間が決定されると「道路概略設計」⇒「道路予備設計

(A)」⇒「道路予備設計(B)」⇒「道路及び擁壁等付帯構造物詳細設計」・「橋梁・ト

ンネル等重要構造物詳細設計」の順に設計が進められ、工事発注に至っていた。本格的

な地質調査は、道路概略設計の段階から実施されていた。本マニュアルでは、地質リス

クを低減するためには、地質リスク等に関する情報を概略設計段階から設計業務に的確

に反映することが重要であると考え、道路事業における各種調査業務と設計業務の関係

及び実施順序等をフロー図にまとめた(図 3-1)。また、同フロー図には、事業管理者、

地質技術者、設計技術者による「三者会議」を実施することを組み込み、密接な意思疎

通を図ることを提案している。表 3-1 に道路事業における各地質調査の段階と設計業務

の関係を示す。

表 3-1 道路事業における各地質調査の段階と設計業務の関係

調査目的 対応する設計業務 備考

① 地質リスク調査検討 地質リスクの内容を幅広く想定 道路概略設計 ルート帯確認

② 予備地質調査詳細に地質リスクの内容を抽出重要な地質リスクに関する現地調査

道路予備設計(A)ルート確認⇒都市計画決定

③ 詳細地質調査(1) 設計に必要な詳細な地質情報確認 道路予備設計(B) 幅杭決定

④ 詳細地質調査(2) 設計・施工に必要な詳細な地質情報の確認

道路及び擁壁等付帯構造物詳細設計橋梁・トンネル等重要構造物詳細設計

工事発注準備

⑤ 施工段階地質調査 施工に係る追加(補足)調査、動態観測 追加または修正詳細設計 工事施工

⑥ 維持管理段階地質調査 構造物の点検調査 補修・補強・対策工の設計 工事完成後の維持管理

各段階の地質調査

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3-2

図 3-1 地質リスク低減のための対応フロー図

③詳細地質調査(1) ・調査計画書作成 ・既往調査結果の見直し ・文献調査、現地踏査 ・ボーリング調査、探査、

現位置試験、室内試験等 ・調査結果取りまとめ

第 3 回三者会議 ・詳細地質調査(1)結果の

確認(情報が不足する

場合は追加調査実施)

第 4 回三者会議 ・詳細地質調査(2)結果の

確認(必要に応じて追

加地質調査の要否を検

討)

幅杭決定

第 4 回三者会議 ・詳細地質調査(2)結果の

確認(必要に応じて追

加地質調査の要否を検

討)

道路予備設計(A) ・業務計画書作成 ・設計条件等 ・計画協議 ・成果取りまとめ ・道路予備設計(B)に必要

な地質調査を検討

道路及び擁壁等付属構造

物詳細設計 ・業務計画書作成 ・設計条件等 ・設計成果取りまとめ

②予備地質調査 ・調査計画書作成 ・既往調査結果の見直し ・文献調査、現地踏査 ・ボーリング調査、現位置

試験等の実施 ・調査結果取りまとめ

道路概略設計 ・業務計画書作成 ・設計条件等 ・3 ルート比較⇒本案抽出 ・成果取りまとめ ・道路予備設計(A)に必要

な地質調査計画を検討

④詳細地質調査(2) ・計画書作成 ・既往調査結果の見直し ・文献調査、現地踏査 ・ボーリング調査、探査、

現位置試験、室内試験等 ・調査結果取りまとめ

ルート帯確認

橋梁・トンネル等重要構

造物詳細設計 ・業務計画書作成 ・設計条件等 橋梁・トンネル等重要構

造物詳細設計 ・設計成果取りまとめ

①地質リスク調査検討 ・調査計画書作成 ・関係書類収集 ・文献調査、現地踏査実施 ・調査結果の取りまとめ

第 2 回三者会議 ・予備地質調査結果の確

認(情報が不足する場

合は追加調査実施)

④詳細地質調査(2) ・計画書作成 ・既往調査結果の見直し ・文献調査、現地踏査 ・ボーリング調査、探査、

現位置試験、室内試験 ・調査結果取りまとめ

第 1 回三者会議 ・地質リスク調査検討結

果(情報が不足する場

合は追加調査を実施)

工事発注準備 ・工事発注用図書作成 ・積算他

工 事 発 注 施 工

⑤施工段階地質調査 ・追加ボーリング調査、

現位置試験、室内試験 ・動態観測等 ・調査結果取りまとめ

工事完成、供用

⑥施設維持管理段階地質調査 ・構造物の点検調査 ・点検結果の取りまとめ

ルート確認 ⇒都市計画決定

1

2

3

4

道路予備設計(B) ・業務計画書作成 ・設計条件等 ・幅杭設計 ・成果取りまとめ ・道路詳細設計・構造物詳

細設計(変更等)に必要

な地質調査計画を検討

[三者会議の方針] ① 三者会議のメンバーは、事業管理者、地質技術者、

設計技術者とする。 ② 会議資料の作成は、地質リスク調査検討をはじめ

とする各地質調査関係を地質技術者が担当し、道

路設計関係を設計技術者が担当する。 ③ 各業務を実施するにあたり、各々の業務の方針・

計画・業務内容等を共有する。既往の地質調査結

果の精査を行い、設計業務に反映すべき調査内容

に関して議論する。設計技術者から地質技術者へ

の要望を明確にする。 ④ 調査結果に基づいて、内容の評価等に関する協議

を行い、設計業務へ確実に反映する。地質技術者

は、設計技術者に地質リスク等に関する情報を伝

達し共有する。 ⑤ 後続地質調査の方針を三者会議で決定し、計画の

立案は地質技術者が行う。 ⑥ 後続の地質調査業務及び設計業務へ、業務内容の

引継ぎを行う。 ⑦ 必要に応じて、現地で立会及び追加協議を行

う。 ⑧ 道路事業の規模に応じて、三者会議の開催頻度

を設定する。

道 路 概 略 設 計 区 間 の 決 定

・地質リスク検討、結果取 りまとめ

・後続予備調査計画立案

・地質リスク検討、結果取 りまとめ

・後続詳細調査計画立案

・地質リスク検討、結果取 りまとめ

・後続詳細調査計画立案

・地質リスク検討、結果取

りまとめ ・後続追加(補足)調査計

画立案

注) は新規工種を示す。

4

・地質リスク検討、結果取 りまとめ

・後続追加(補足)調査計 画立案

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3-3

地質リスク対応方針

「地質リスク評価」を基に各リスクへの対応を行う。以下の 4 つのリスク対応がある。

・リスク保有:特に対策をとらず、その状態のままリスクを受け入れる対応。

・リスク低減:リスクの発生可能性や顕在した際の影響の大きさを小さくする対応。

・リスク回避:リスクを生じさせる要因そのものを取り除く。原因の完全除去。

・リスク移転:リスク要因に対して保険等を掛けてリスク自体を「移転」する対応。

(2)地質リスク調査検討 地質リスク調査検討は、道路事業の構想・計画段階から、予備・詳細設計の各段階に

おいてリスクの抽出と評価(影響度と発生確率等に基づくリスクのランク付け)を行い、

リスクの対応策(回避・低減・保有)を検討し、設計に反映するものとする(図 3-2)。 また、この評価は、道路事業の各段階で、地質調査が実施され新たな地質情報を反映

し精度を高めるものとする。なお、施工への影響が大きいと想定される地質リスクは、

施工段階に引き継ぐものとする。 地質リスクの発現は、大半が施工時である。地質リスクが発現する確率を低減し、仮

にリスクが発現した場合においても、適切な処置をとりその影響を最小限に抑えるため

には、地質リスクマネジメントが必要である。また、この過程は記録し維持管理に引き

継ぐものとする。

地質リスク調査検討の流れ

地質リスクの特定 地質リスクを発見、認識及び記述するプロセスである。

地質リスクの発生確率や影響度に関係なく想定されるリスク要因を洗

い出し地質リスク要因一覧表を作成する。

地質リスク分析 地質リスクの特質を理解し、リスクをランク付けするプロセスである。

「地質リスクの特定」にて洗い出された地質リスクの発生確率と、リ

スクが顕在化した場合の影響度を分析する。

地質リスク評価 「地質リスク分析」の結果をもとに、地質リスクへの対応策と、対策

の実施する優先順位を検討する。

図 3-2 地質リスク評価の概念

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3-4

(3)公共事業における地質調査目的と地質リスクの絞込みの概念 公共事業の初期段階において、地質リスクが発現する可能性があると考えられる項目

を網羅的に抽出する。その後地質調査等を実施して、取得された地質情報に基づき地質

リスク評価を行い、リスクの低減を進めて行く。この過程の概念を図 3-3 に示す。

図 3-3 道路事業における地質調査目的と地質リスクの絞込みの概念

地質

土質

地質

構造地形

地下水

水文

災害

履歴気象 活断層

土壌

汚染

土地

利用火山 その他 調査目的

注) ① 道路事業の計画段階では、地質リスクの項目を抽出し、設計業務の進行とともに、必要な調査を実施して地質情報を確認する。

② グラフの長さは、地質情報の多少を示す。長いと詳細な情報を多く確認していることを示す。

③ 調査が進むに従い調査対象が絞込まれ、より詳細が調査が実施される。

   水色の部分      は既往の地質調査で得られた情報を示し、黄色の部分       は当該地質調査で得られる情報を示す。

②予備地質調査

(道路予備設計A)

詳細に地質リスクを抽出

概略的に地質情報を確認

文献調査・現地踏査

    地質リスクの項目

地質調査段階

①地質リスク調査検討

(道路概略設計)

地質リスクの内容を想定・抽出文献調査・現地踏査

③詳細地質調査(1)

(道路予備設計B)

設計内容に適応した内容の調査

ボーリング調査、現位置試験

室内試験詳細な地質情報の確認

   詳細地質調査(2)

(道路及び擁壁等付帯構

造物詳細設計)

(橋梁・トンネル等重要構造物詳細設計)

設計・施工に必要な地質情報を詳細に

調査

ボーリング調査、現位置試験

室内試験詳細な地質情報の確認

⑤施工段階地質調査

追加(補足)地質調査

動態観測

施工上必要な詳細地質調査修正設計に必要な詳細地質調査

施工に伴う動態観測

⑥維持管理段階地質調査

(構造物点検調査と点検結果の取りまとめ等)

構造物の維持管理上必要な地質調査

構造物の点検点検結果の取りまとめ

構造物の変状等の動態観測

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3-5

(4)公共事業における地質調査内容 道路事業における各段階で実施する可能性がある基本的な調査項目と調査に用いる

参考資料を表 3-2 に示す。地質調査内容を設定する場合においては、これらの項目を実

施することの是非を検討する必要がある。

表 3-2 道路事業における地質調査内容

調査項目等 調査に用いる参考資料 備考

①地質リスク調査検討

第1回三者会議

① 地形地質文献資料の収集整理

② 災害履歴、被害想定資料の収集整理

③ 既往地盤調査資料の収集整理

④ 地表地質踏査

⑤ 水理地質踏査

地形図、地質図、土地分類図、航空

写真、地質文献、既往地質調査結果、

既往水文調査結果、災害履歴、気象

データ

道路概略設計

②予備地質調査

第2回三者会議

① 資料調査:地形・地質、災害資料

② 地形判読:地形図・空中写真判読

③ 現地踏査:地形・地質概査

④ ボーリング調査

⑤ 原位置試験(標準貫入試験、各種孔内試験など)

⑥ 乱さない試料採取

⑦ 物理試験、力学試験

⑧ 弾性波探査、電気探査

地形図、地質図、土地分類図、航空

写真、地質文献、既往地質調査結果、

既往水文調査結果、災害履歴、気象

データ

地質リスク調査結果

ルート帯の情報

道路予備設計(A)

③詳細地質調査(1)

第3回団者会議

① 資料調査:地形・地質、災害資料

② 地形判読:地形図・空中写真判読

③ 現地踏査:地形・地質概査

④ ボーリング調査

⑤ 原位置試験(標準貫入試験、各種孔内試験など)

⑥ 乱さない試料採取

⑦ 物理試験、力学試験

⑧ 弾性波探査、電気探査

地形図、地質図、土地分類図、航空

写真、地質文献、既往地質調査結果、

既往水文調査結果、災害履歴、気象

データ

地質リスク調査結果

予備調査(1)結果

ルート情報

道路予備設計(B)

④詳細地質調査(2)

第4回三者会議

① 資料調査:地形・地質、災害資料

② 地形判読:地形図・空中写真判読

③ 現地踏査:地形・地質概査

④ ボーリング調査(鉛直ボーリング、水平ボーリング)

⑤ 原位置試験(標準貫入試験、孔内水平載荷試験、透水試験、湧水圧試験、PS検

層、速度検層、流行流速測定、電気検層など)

⑥ 乱さない試料採取

⑦ 物理試験、力学試験、岩石試験、水質分析

⑧ 弾性波探査、電気探査

⑨ 土壌関係化学分析

地形図、地質図、土地分類図、航空

写真、地質文献、既往地質調査結果、

既往水文調査結果、災害履歴、気象

データ

地質リスク調査結果

予備調査(1)結果

予備調査(2)結果

ルート情報

道路、擁壁等道路付

属施設詳細設計

橋梁、トンネル等重

要構造物詳細設計

⑤施工段階地質調査

・設計時の補足調査

・施工時の追加調査、動態観

① ボーリング調査(鉛直ボーリング、水平ボーリング)

② 載荷試験(杭、地盤)

③ 水文調査、地下水位・湧水量測定、水質分析

④ 現場計測(沈下、水平変位、地中変位、ひずみ)

⑤ 土質試験、岩石試験、土壌湧出量調査

⑥ 土壌関係化学分析

施工計画

施工履歴

既往地質調査結果

施工段階調査

⑥維持管理段階地質調査

構造物の長寿命化のための

点検・調査

① 各種点検

② 地表踏査

③ ボーリング調査

④ リフトオフ試験

⑤ 現場計測(沈下、水平変位、地中変位、ひずみ)

⑥ 土質試験、岩石試験

⑦ 現場計測

構造物に関する情報

維持管理記録

現場計測記録

維持管理調査

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3-6

各地質調査の内容は、道路事業の進捗に伴い順次実施される。調査内容は、広域な範

囲を網羅的かつ概略的に実施する「地質リスク調査検討」に基づき、設計業務の必要な

地質情報及び地質リスクに応じて設定し、必要な地質情報を適切に得る。各調査段階に

おける調査内容のイメージを表 3-3 に示す。

表 3-3 各調査段階の調査内容のイメージ

①地質リスク調査検討

②予備地質調査

③詳細地質調査

④詳細地質調査

ル ー ト帯を含む広域な範囲の資料調査、地質踏査により地質リスクを抽出する。

ル ー ト帯に沿った地質状況を確認する。影響度が高い地質リスクを調査する。

予 備 設計に必要な地質調査を行う。地質リスクが高いものを優先する。

詳 細 設計に必要な地質調査を行う。個別の地質リスクに対応する調査を実施する。

(1)

(2)

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3-7

(5)情報共有 道路事業における地質リスクを回避または低減して、確実に遂行するためには、関係

者間の情報共有が重要である。事業管理者、地質技術者、設計技術者が連携してお互い

の情報を共有し、各々の業務内容を確認しながら適切な成果を、次の事業段階へ引き継

がなくてはならない。 情報共有において最も重要なものは、各事業段階で行う事業管理者、地質技術者、設

計技術者による「三者会議」である(図 3-1 参照)。三者会議の方針を以下にまとめる。

【三者会議の方針】

① 三者会議のメンバーは、事業管理者、地質技術者、設計技術者とする。 ② 会義資料の作成は、地質リスク調査検討をはじめとする各地質調査関係を地質技術

者が担当し、道路設計関係を設計技術者が担当する。 ③ 各業務を実施するにあたり、各々の方針・計画・業務内容等を共有する。既往の地

質調査結果の精査を行い、業務及び会議の成果に反映する。特に、設計に反映すべ

き調査内容に関して議論する。設計技術者から地質技術者への要望を明確にする。 ④ 調査結果に基づいて、内容の評価等に関する協議を行い、設計業務に確実に反映す

る。地質技術者は、設計技術者に地質リスク等に関する情報を伝達する。 ⑤ 後続地質調査の方針を三者会議で決定し、計画立案は地質技術者が行う。 ⑥ 後続の設計業務及び地質調査業務へ、業務内容の引継ぎを行う。 ⑦ 必要に応じて、現地で立会・追加協議を行う。 ⑧ 事業の規模に応じて、三者会議の頻度を設定する。

【三者会議での協議事項】

① 事業の全容の確認 ② 設計業務と地質調査業務の内容確認と各業務の実施方針 ③ 地質リスクの評価・検討等に必要な収集資料の確認 ④ 地質リスク及び地質情報に関する確認及び協議 ⑤ 地質リスクに関する対応策の協議 ⑥ 設計において必要な地質情報の確認 ⑦ 後続地質調査方針の協議 ⑧ 後続業務(地質調査・設計)に引き継ぐべき内容の協議

(6)設計便覧道路設計フロー対応

道路事業リスクを低減するための各地質リスク調査は、各道路設計段階と平行して行

う必要がある。地質調査と設計便覧(第3編 道路編)に示されている道路事業の流れ

に段階的に実施される各地質調査業務の発注時期を示す(図 3-4)。地質リスク調査検

討は、「現況調査」の一環として実施する。予備地質調査は「路線比較選定」の過程で

実施する。詳細地質調査(1)は「都市計画決定」後に路線測量と並行して実施する。

詳細地質調査(2)は、「詳細設計」の開始前に実施する。

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3-8

将来

交通量

(試行)

PI 着手

確認

*構造規格の決定

*交通処理体系

の決定

*ローカルルール

の導入

交通

特性

ネットワーク

特性

住民意見聴取

S=1/5,000~1/1,000

地域高規格道路

(計画路線の指定)

*整備効果の評価

路線比較選定

基本図の作成

撮影図化

図化範囲の決定

調査費の要求

路線検討

道路概略設計

のSTART

上位計画

都市・地域計画

方針の検討

本局調査費配分

道路計画STA

RT

S=1/50,000~1/10,000

パーソントリップ調査

物資流動調査

交通情勢調査

*路線の性格決定

(サービスレベルの設定)

*概略路線選定

1.道路状況調査

*路面の種類別,幅員別道路

延長

*幅員(車道,歩道,路肩

中央分離帯,路上施設等)

*曲線半径,曲線長,縦断勾配

*路面の種類,建築限界,視距

*通行止の有無

*震災・防災点検箇所

2.橋梁現況調査

*橋長,幅員,橋種,形式,架

設年次

*耐荷荷重

3.トンネル現況調査

*延長,幅員,高さ,完成年次

4.交通量等調査

*車種別交通量,方向別交通

*交通量の時間的変動

*旅行時間

5.交通事故調査

6.経済現況調査

*人口,土地利用,所得

*生産物資

*工業分布,未開発資源

*自動車保有台数

*観光地娯楽施設

7.環境基礎調査

*大気,騒音,鳥類,植物等

8.文化財調査

9.①地質リスク調査検討

注)図中*印はチェック事項を示す

道路概略

設計区間の決定

地域高規格道路

(計画路線の指定)

<了解> 本局の説明

②予備地質調査

現況調査

設計協議(他官庁及び内部調整)

*調査資料の整理

*現地調査

情報収集

* * *

1 2 3

第1回三者会議

港湾計画

工業団地計画

宅地開発計画

流動団地計画

農業改善計画

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3-9

概略ルート(ルート帯)の選定

1 2 3

地質概略調査

環境影響基礎調査

他官庁意見調整計画協議

注)図中*印チェック事項を示す

第 2 回三者会議

本局説明(了解)

調査成果本局ヒアリング

調査結果本省ヒアリング

ルート帯確認

本局改築費配分

説明通知

*通学路通知

*迂回路通知

*工事用道路調整

*土取り場調整

概略設計 END

改築費要求

道路予備設計(A)

計画協議

計画説明

都市計画決定

路線測量・③詳細地質調査(1)

道路予備設計(B)

予備設計 END

地元,現地説明

予備修正設計(B)

予備修正設計(B)END

環境アセスメント

スクリーニング

*ライフサイクルコスト

*アセットマネージメント

*設計の妥当性

ルート確認

方法書

環境現状調査

準備書作成

評価書作成

地域高規格道路

(整備区間の指定)

測量立入依頼

第 3 回三者会議

本局計画説明

形式決定【経済性・走行性・

景観・維持管理等】

ローカルスペック・ローカルテクノロジー

本局に修正計画説明

[協議内容]

1.公園・緑地

2.自然保護

3.環境保全・景観

4.保安林

5.風致

6.港湾

7.河川

8.運河

9.鉄道・軌道

10.道路

11.国有林

12.池湖沼

13.交通・警察

14.パイプライン

15.農業改善

16.埋め立て計画

17.観光施設

18.水利権

19.文化財

[協議先]

1.国・県

2.市町村

3.鉄道事業者

4.高速道路

管理者

5.警察

6.公安委員会

7.漁業組合

8.財産区

9.その他

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3-10

Ⅱ 事業再評価

・事業採択後3年間未着工の事業

・事業採択後5年間を経過した時点

での継続中の事業

・再評価実績後3年間が経過してい

る事業

・社会的経済情勢の急激な変化,

技術革新等により再評価の実施

の必要性が生じた事業

*設計の性能規定化

*構造物の形式形状の妥当性

*標準設計採用の可否

*維持管理への配慮

*仮設構造物の妥当性

*新技術・新工法の採用

詳細設計 START

④詳細地質調査(2)

第 4 回三者会議

注)図中*印チェック事項を示す

道路構造及び

各詳細設計

区域決定(又は変更)

巾杭打設

詳細設計 END

民々立ち会い

丈量測量

用地買収

文化財等事前調査

各協議完了

本局説明(了解)

立ち会い通知

1.事業認定

2.登記簿調査

3.権利調査 立ち会い通知

数量計算

施工計画概要書

特記仕様書

移設依頼(占用物件等)

占用許可申請

BP 新設道路

現道拡幅

許 可

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3-11

図 3-4 道路事業の流れ(設計便覧に加筆)

注)図中*印チェック事項を示す

工事費精算

工事発注・契約

工事説明

工事施工

工事完了

供用開始告示

竣工・供用開始

管 理

移設工事

工事完了

占用物件打合せ会議

本局審査完了

標識設置協議

(公安委員会)

*入札契約方式の検討

*共通仕様の性能規定化

完了検査(合格)

[施工協議]

1.河 川 6.交通警察

2.道 路 7.地下埋設物

3.鉄 道 8.パイプライン

4.港湾,運河 9.消 防

5.池,沼,湖 10.陸運事務所

11.その他

付帯工事引継

兼用工作物管理協定

*リサイクル,リユース

*アセットマネジメント

*IT の活用

*既存ストックの有効活用

*地域の実情に応じた

管理水準

*住民参加

*事後計画

(事業完了後,5年が経過し

た事業)

信号機・規制標識設置

(公安委員会)

工事中の協議

回答

(保管書類)

1.設計図書,巾杭表,マイクロ化

2.道路帳,付図

3.舗装台帳

4.官民境界杭検証

5.丈量図

6.巾杭表

7.その他

回答

管理へ引き継ぎ

工事に伴う

地質リスクマネジメント

地質リスクマネジメント

結果の引き継ぎ

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3-12

3.2 各段階の地質調査内容 (1)道路概略設計段階と地質リスク調査検討

概略設計は、「自然、社会的条件ならびにコントロール要因を考慮し、設計条件に適

合したと思われる比較 3 案の路線を選定し、最適路線を選定する」ものである。ここ

で、主なコントロール要因としては下記が挙げられるが、一般的に表 3-4 の「防災関連」

の中に位置付けられる地形・地質は、その他の要因に比べて優先度が高いことが多い。

そのため、多くの路線で地質リスクを内在した形で予備設計に引き継がれることになる。

表 3-4 主なコントロール要因

項 目 内 容

社会環境 学校・病院・住宅密集地(DID)

自然環境 保全地域・特別保護区・天然由来土壌汚染(特に重金属)

文化財など 天然記念物・遺跡・文化財・社寺・仏閣・墓地・景勝地

公共施設 空港・鉄道駅・浄水場・清掃センター・廃棄物処分場

防災関連 地形・地質(土質)・気象・活断層・火山・地下水・被災履歴

関連公共事業 主要道路・都市計画・地域開発

このように、道路概略設計段階で実施される地質リスク調査検討では、地質リスク項

目を抽出して各項目に対して地質リスクの対応基本方針を検討し、地質リスク回避項目

を洗い出すことにある。本検討の内容は、道路事業リスクを低減する上で必要となる地

質リスクを余すことなく抽出し、その内容と危険性を検討することが、道路設計と施工

の効率的かつ安全な実施に寄与する。

表 3-5 地質リスク調査検討の内容

調査段階 道路概略設計段階

地質リスク調査検討

調査目的 路線選定のための広範囲で大局的な調査

主な手法

[机上調査] ①資料収集 ②資料整理 ③地形判読

[現地調査] ①現地踏査

共通事項

・地形・地質・土質概要の把握と問題点の抽出(地質解析)

①地形・地質調査(文献,地形図・地質図,空中写真他) ②災害履歴調査 ③被害想定資料調査 ④既往地盤調査資料の調査

・地質リスクの評価、地質リスクのランク付け、対応優先順位の検討、地質リスク存在箇所の選定、対応策の検討

・掘削土砂の流用等を考慮した自然由来の土壌汚染(特に重金属)の調査 ・予備地質調査計画の立案 ・三者会議

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3-13

また、地質リスク調査検討において、地質リスクが抽出される可能性が高いものは、

下記に示す A~D の4項目である(表 3-6 を参照)。 A:斜面災害に関するリスク B:沈下(地盤変状)に関するリスク C:洪水・地震・津波被害に関するリスク D:周辺環境に関するリスク

道路事業を推進する上で、概略的に想定される地質リスクにこれらが含まれていると

想定される場合は、具体的に想定される地質リスクを検討するため、表 3-6 に示す調査

項目を実施する。調査項目は、「既往の文献収集・とりまとめ」及び「地質解析」に大

別される。 【既往文献収集・とりまとめ】 周辺の既往地質調査結果、災害履歴、地盤環境調査結果、地域防災計画

【地質解析】 地形判読、航空写真判読、地表地質踏査、表層地質図作成、地質断面図作成、水文調

査 表 3-6 想定される地質リスクと調査項目

周辺の既往調査結果

災害履歴調査(地震、斜面、土石流)

地盤環境調査(地下水、沈下、水文、汚染)

地域防災計画、浸水図

地形判読航空写真判読

地表地質踏査

表層地質図作成

地質断面図作成

水文調査

A-1 地すべり地形が存在する ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

A-2 以前、大規模な土砂災害があった箇所がある ○ ○ ○ ○ ○ ○

A-3 基礎地盤が軟弱ですべり破壊が発生する可能性がある ○ ○ ○ ○ ○ ○

A-4 深層崩壊が発生する可能性がある ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

A-5 浅層崩壊が発生する可能性がある ○ ○ ○ ○ ○ ○

A-6 落石が発生する可能性がある ○

B-1 沈下が生じる可能性がある ○ ○ ○

B-2 構造物の支持力不足が生じる可能性がある ○ ○

B-3 周辺家屋に沈下や側方移動が生じる可能性がある ○ ○

B-4 大規模地震で液状化する可能性がある ○ ○ ○ ○ ○

B-5 盤ぶくれが発生する可能性がある ○ ○

B-6 基盤深度の不陸が大きく不同沈下が発生する可能性がある ○ ○

C-1 洪水時に浸水する可能性がある ○ ○

C-2 地震の揺れによる構造物被害がある ○ ○ ○ ○

C-3 地震による津波発生時に浸水する可能性がある ○

D-1 自然由来の環境被害の可能性がある地質が存在する ○ ○

D-2 地下水障害が発生する可能性がある ○ ○ ○ ○

D-3 地中ガスが発生する可能性がある ○ ○

調査項目

リスク区分 想定される地質リスク

D:周辺環境に関する

既往文献収集、とりまとめ

A:斜面災害に関する

B:沈下に関する

C:洪水・地震・津波被害に関する

地質解析

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3-14

地 質 図 : 産業技術総合研究所 20 万分の 1日本シームレス地質図(配色は一部変更)

標 高 : 国土地理院 10m 数値標高モデル(DEM)

河 川 : 国土交通省 国土数値情報(流路(線))

地すべり地形 : 防災科学研究所 地すべり地形分布図データベース

図 3-5 地質リスク抽出のイメージ

(「想定外」豪雨による地盤災害への対応を考える調査検討委員会 報告書より抜粋、一部加筆)

(公社)地盤工学会関西支部、(一社)応用地質学会関西支部、(一社)関西地質調査業協会、中部地質調査業協会編

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3-15

また、地質リスク調査検討の踏査範囲は、想定されるルート(通常は3ルート)を包

括する地域とする。目安としては、想定されるルートから 400m 程度であるが、広域

的な地形・地質及び土石流等の広い範囲に影響を与える災害等を考慮して設定する。

(2)道路予備設計(A)段階と予備地質調査 道路予備設計(A)では、概略設計において選定された路線に対して平面線形、縦横

断線形の比較案を策定し、施工性、経済性、維持管理、走行性、安全性及び環境等の総

合的な検討と橋梁、トンネル等の主要構造物の位置、概略形式、基本寸法を計画し、技

術的、経済的判定によりルートの中心線を決定することを目的としている。 そのため、予備地質調査では、橋梁、トンネル等の主要構造物の検討に際して必要な

地質リスク(坑口付け、断層破砕帯、自然由来重金属汚染、支持層、軟弱地盤など)へ

の対応方針が検討できるようにすることである。また、土構造の中でも大規模な切土・

盛土計画に当っては地すべり、のり面崩壊の発生確率について検討し、対応方針が検討

できるようにすることも重要である。

表 3-7 予備地質調査の内容

調査段階 道路予備設計(A)段階

予備地質調査

調査目的 構造形式,施工法検討のための全般的な調査

主な手法

[机上調査] ①資料収集 ②資料整理 ③地形判読

[現地調査] ①現地踏査 ②原位置調査

(ボーリング,検層等) ③室内試験

共通事項

・地質(地層)構成の概略把握(地質解析) ・各地質(地層)の物性値概略把握 ・地質リスクの評価、地質リスクのランク付け、対応優先順位の検討、地質リスク存在箇所の選定、対応策の検討

・未対応の地質リスクの抽出(要注意箇所の抽出) ・詳細地質調査計画の立案 ・三者会議

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3-16

(3)道路予備設計(B)と詳細地質調査(1) 道路予備設計(B)では、決定された中心線に基づいて行われた実測路線測量による

実測図を用いて、図上での用地幅杭位置を決定することを目的としている。 そのため、詳細地質調査(1)では、用地幅の変更に繋がるようなことがないように

地質リスクに対応できる対策工等が検討できるようにすることが重要である。すなわち、

地盤に関する詳細な情報を網羅しておく必要がある。 (4)道路詳細設計と詳細地質調査(2)

詳細設計では、工事に必要な詳細構造を経済的かつ合理的に設計し、工事発注に必要

な図面・報告書を作成することを目的とする。特に、詳細地質調査(2)では、橋梁に

おける支持層深度の確認、地山の土軟硬区分など施工法決定に関わる検討ができるよう

にすることが重要である。

表 3-8 詳細地質調査(1)(2)の内容

調査段階

道路予備設計(B)・

道路及び擁壁等付帯構造物詳細設計

橋梁・トンネル等重要構造物詳細の各段階

詳細地質調査(1)(2)

調査目的 細部構造検討および施工法決定のための密度の濃い調査

主な手法

①現地踏査 ②探査・原位置調査(ボーリング,検層) ③室内試験 ④地下水関連調査

共通事項

・地質(地層)構成の詳細把握(地質解析) ・各地質(地層)の設計用定数値の設定 ・地下水位等,施工法決定に係わる条件の設定 ・地質リスクの評価、地質リスクのランク付け、対応優先順位の検討、地質リスク存在箇所の選定、対応策の検討

・未対応の地質リスクの抽出(要注意箇所の抽出) ・追加(補足)調査計画の立案 ・三者会議

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3-17

(5) 各地質調査の目的と調査手法 各地質調査の目的・着眼点・検討内容・調査検討手法を表 3-9 にまとめる。

表 3-9 地質調査の目的・着眼点・検討内容・調査検討手法

項目 目的・成果 着眼点 検討内容 調査検討手法

①地質リスク

調査検討

地質リスクの

評価と対策

リスク保有と

回避の判断

①地すべりの有無と規模②土石流

③断層(特に活断層)・破砕帯

④軟弱地盤の規模と性状⑤液状化の可能性

⑥鉱山・温泉⑦自然由来土壌汚染

①計画地域の地形地質の特徴と危険区域の抽出②過去の災害履歴と被害想定のとりまとめ

③地盤環境の特徴とリスク保有地区の抽出

④地下水環境の特徴とリスク保有地区の抽出⑤地質リスクの発生確率と被害規模の予測

⑥リスクのランク付け(保有か、回避か)⑦リスク保有に際しての対応策の検討

⑧予備地質調査計画の立案

①地形地質文献資料の収集整理②災害履歴、被害想定資料の収集整理

③既往地盤調査資料の収集整理

④地表地質踏査⑤水理地質踏査

②予備地質調査

構造形式、

施工法検討のための

全般的な調査

①長大トンネル

②長大橋梁③多段盛土

④多段切土

①地質(地層)構成の把握

②各地質(地層)の物性値の概略把握③地質リスクの特徴とランク付け

④地質リスクの評価と対応策の検討

⑤詳細地質調査(1)計画の立案

①資料調査:地形・地質・災害資料

②地形判読:地形図・空中写真判読③現地踏査:地形・地質概査

④ボーリング調査(主に鉛直ボーリング)

⑤原位置試験⑥乱さない試料採取

⑦物理試験、力学試験⑧弾性波探査、電気探査

③詳細地質調査(1)

細部構造検討のための

詳細な調査

①崩壊性要因(地すべり、 崩壊地形、断層破砕帯、

 未固結層、湧水)等の把握

②地層の不連続箇所、支持 層の不確実な部分の把握

③軟弱層の分布・規模④突発湧水箇所

⑤地山の土軟硬区分の判定⑥土壌汚染物質溶出の予測

①地質(地層)構成の設定②各地質(地層)の設計用定数値の設定

③地下水位等の施工法決定に係わる条件の設定

④地質リスクの評価と対応策の検討⑤詳細地質調査(2)計画の立案

①資料調査:地形・地質・災害資料②地形判読:地形図・空中写真判読

③現地踏査:地質概査

④ボーリング調査(鉛直ボーリング、水平ボーリング)⑤原位置試験

 (SPT、水平載荷試験、現場透水試験、 JFT、PS検層、速度検層、流向流速測定、

 電気検層など)⑥乱さない試料採取

⑦物理試験、力学試験、岩石試験、

 水質分析⑧弾性波探査、電気探査など

⑨土壌溶出量調査

④詳細地質

調査(2)

施工法検討

のための詳細な調査

①掘削に伴う地山の風化と

 劣化の進行状況の予測

②支持層の変化状況の把握③軟弱層の層厚変化

④湧水量の把握⑤地山の土軟硬の確認

⑥土壌汚染対策

①地質(地層)構成の確認

②各地質(地層)の設計用定数値の確認

③地下水位等の施工法決定に係わる条件の設定④地質リスクの評価と対応策の検討

⑤追加(補足)地質調査、施工段階地質調査計画の立案

①資料調査:地形・地質・災害資料

②地形判読:地形図・空中写真判読

③現地踏査:地形・地質概査④ボーリング調査

 (鉛直ボーリング、水平ボーリング)⑤原位置試験

 (標準貫入試験、孔内水平載荷試験、

 現場透水試験、湧水圧試験、PS検層、 速度検層、流向流速測定、電気検層など)

⑥乱さない試料採取⑦物理試験、力学試験、岩石試験、水質分析

⑧弾性波探査、電気探査など⑨土壌溶出量調査

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4-1

4.発注形式

地質リスクを低減するための地質調査関連業務の発注形式は、以下のとおりとする。 地質リスク調査検討:

非常に専門的な知識と構想力・応用力が求められることから、道路概略設計時に、

原則としてプロポーザル方式で発注する(事業内容及び規模等によっては総合評価落

札方式(価格評価点:技術評価点=1:3)で発注する)(図 4-1 参照)。資格要件は、

技術士(建設部門:土質及び基礎)、技術士(応用理学部門:地質)、地質調査技士、

RCCM(地質)とする。 予備地質調査・詳細地質調査(1)・詳細地質調査(2):

従来の道路事業における地質調査業の発注形式と同様に、その難易度・業務規模等

に基づき、総合評価落札方式または価格競争方式を選択する。資格要件は、技術士(建

設部門:土質及び基礎)、技術士(応用理学部門:地質)、地質調査技士、RCCM(地

質)とする。

図 4-1 地質調査業務の知識と構想力・応用力と業務項目の関係

地質リスク調査検討

※国土交通省「建設コンサルタンント業務等におけるプロポーザル方式及び総合評価落札方式の運用ガイドライン」より

Page 26: 地質リスク低減のための調査・設計マニュアル(案)...2-1 2.「地質リスク低減のための調査・設計マニュアル(案)」の概要 2.1 本マニュアルの目的

5-1

5.各道路構造物における地形・地質調査の流れと内容 5.1 道路構造物の種別毎の調査・試験手法

各道路構造物を設計するためには,その種別に応じて適切な地形・地質調査を行う

必要がある。具体的な調査・試験手法を表 5-1 に、道路構造物の各調査段階における

調査目的,方法及び内容を表 5-2 に示す(道路事業における地質・土質調査計画の

立て方(第 1 回改訂版):(一社)建設コンサルタンツ協会技術部会編に加筆)

表5-1 道路構造物の種類毎の調査・試験手法

◎:

是非

必要

  

○:

必要

三 軸 圧 縮 試 験

UU

CU

CU

CD

UU

○○

◎○

◎○

◎◎

○○

○◎

◎○

○○

○○

◎○

○○

◎◎

◎○

◎○

◎◎

◎○

◎◎

◎◎

◎○

○○

◎○

○○

◎○

◎◎

◎○

◎◎

○○

○○

◎◎

○○

○○

○○

◎○

○○

◎◎

○◎

○○

○◎

○○

◎○

◎◎

◎◎

○○

○◎

◎◎

◎○

○○

○○

◎○

◎◎

○○

◎◎

◎◎

◎◎

◎◎

○◎

○○

○○

◎○

◎◎

○○

◎○

◎◎

◎○

○○

○○

◎◎

○○

○◎

◎○

◎○

◎○

○◎

◎○

○◎

◎◎

◎◎

◎○

○○

○○

山岳

・丘

陵部

◎◎

◎○

○◎

○○

◎○

○◎

○○

○○

◎◎

○◎

○○

◎◎

○○

○○

◎◎

○◎

○○

◎○

◎○

○○

◎○

◎○

◎○

○◎

◎○

○○

◎○

◎◎

◎◎

○○

◎○

◎◎

◎○

◎○

◎◎

◎◎

○○

◎○

◎◎

◎○

◎○

◎○

◎○

○◎

○◎

○○

◎◎

◎○

○○

◎◎

◎◎

○○

○○

○○

○○

◎○

○◎

◎◎

○○

○○

◎○

○◎

◎○

○○

◎○

◎○

○○

○○

○○

○○

○○

◎◎

◎○

○○

○◎

◎◎

○○

○○

○○

○○

◎○

◎○

○○

○○

◎◎

◎◎

○○

○○

○◎

◎○

○○

○○

◎○

○○

◎○

◎○

砂質

土◎

○◎

○◎

○◎

◎○

○○

◎◎

○◎

○○

粘性

土◎

○◎

○◎

○◎

◎◎

◎○

◎○

○○

◎○

○○

◎○

◎○

○○

○○

砂質

土◎

○◎

○◎

◎◎

○○

○◎

○○

○◎

◎○

◎○

○○

粘性

土◎

○◎

○◎

◎◎

○○

○◎

◎◎

◎◎

○○

○◎

◎◎

◎◎

◎○

○○

◎○

○◎

◎◎

◎○

◎◎

◎◎

◎○

○○

◎○

◎◎

◎◎

◎○

○○

○○

○○

◎○

◎◎

○◎

◎◎

◎◎

○◎

◎◎

◎◎

○○

○○

◎○

◎○

◎◎

◎◎

○◎

◎◎

◎◎

◎◎

◎◎

◎○

◎◎

○○

◎◎

◎◎

○◎

◎◎

◎◎

◎◎

○○

◎◎

○◎

◎○

◎◎

◎○

○◎

○◎

◎○

◎○

◎◎

◎○

◎◎

○◎

◎◎

◎◎

○◎

◎◎

◎◎

○○

○○

◎○

◎○

◎◎

◎◎

○◎

◎◎

ト ン ネ ル構 造 物 基 礎

山岳

・丘

陵部

(山

岳工

法)

平地

(シールド工

法)

山岳

・丘

陵部

(山

岳工

法)

平地

(シールド工

法)

短~

長大

地質

(断

層・

膨張

性)

地下

水(湧

水量

・水

圧)

地盤

(土

質・

安定

性)

地下

水(地

下工

法・

地下

水障

害)

岩質

(強

度等

)

地質

(断

層・

膨張

性)

地下

水(湧

水量

・水

圧)

地盤

(土

質・

安定

性)

地下

水(地

下工

法・

地下

水障

害)

岩質

(強

度等

)

基礎

工検

(設

計・

施工

)

平地

(普

通地

盤)

平地

(軟

弱地

盤)

支持

層の

検討

基礎

工検

(設

計・

施工

)

重要

構造

盛 土 部

平地

部(普

通地

盤)

平地

部(軟

弱地

盤)

中小

造物

(中

小橋

高架

)

基礎

工検

討(設

計・

施工

)

支持

層の

検討

山岳

・丘

陵部

(岩

~砂

礫)

支持

層の

検討

岩(山

岳部

~丘

陵部

)

長大

法面

切 土 部

平地

(普

通地

盤)

平地

(軟

弱地

盤)

山岳

・丘

陵部

(岩

~砂

礫)

盛土

液状

化(砂

質土

)

すべ

沈下

(粘

性土

)

液状

化(砂

質土

)

土軟

硬区

安定

性の

検討

路床

部の

調査

すべ

すべ

沈下

(粘

性土

)

崩壊

性要

因の

調査

土軟

硬区

安定

性の

検討

路床

部の

調査

崩壊

性要

因の

調査

土砂

(平

地部

~丘

陵部

)

サウ

ンデ

ィン

グ地

下水

調査

現 地 踏 査

空 中 写 真 判 読

チ ュ ー ブ サ ン プ リ ン グ

オ ー ガ ー ボ ー リ ン グ

機 械 ボ ー リ ン グ

ボ ア ホ ー ル テ レ ビ 観 察

密 度 検 層

電 気 検 層

ス ウ ェ ー デ ン

サ ウ ン デ ィ ン グ

コ ー ン 混 入 試 験

オ ー ト マ テ ィ ッ ク

サ ウ ン デ ィ ン グ

標 準 貫 入 試 験

岩 盤 の コ ア ボ ー リ ン グ

ブ ロ ッ ク サ ン プ リ ン グ

湧 水 圧 試 験

載荷

試験

土砂

(平

地部

~丘

陵部

)

岩(山

岳部

~丘

陵部

)

中小

法面

岩石

試験

力学

試験

一 軸 圧 縮 試 験

圧 裂 引 張 試 験

室内

試験

資 料 調 査力

学試

験動

的力

試験

圧 密 試 験

変 形 特 性 試 験

液 状 化 強 度 試 験

土質

試験

物理

探査

孔内

検層

ボーリンク

゙および

サンプリン

グ

P S ( 速 度 ) 検 層

磁 気 探 査

電 気 探 査

弾 性 波 探 査

計測

・管

変 状 調 査

( 沈 下 ・ 側 方 流 動 )

地 下 水 影 響

ト ン ネ ル 計 画

そ の 他X 線 分 析 ・ C E C 試 験

ス レ ー キ ン グ ・

膨 潤 性 試 験

超 音 波 伝 播 速 度 試 験

重 金 属 含 有 量 試 験

物 理 試 験

水 質 分 析

透 水 試 験

流 向 ・ 流 速 測 定

地 下 水 位 測 定

物 理 試 験

一 軸 圧 縮 試 験

三 軸 圧 縮 試 験

孔 内 水 平 載 荷 試 験

平 板 載 荷 試 験

揚 水 試 験

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5-2

③詳

細地

質調

査(1)

④詳

細地

質調

査(2),

⑤施

工段

階地

質調

細部

構造

検討

およ

び施

工法

決定

のた

めの

密度

の濃

い調

査構

造細

部検

討で

まだ

不足

する

もの

や,

工費

縮減

を図

るた

めの

調査

[机

上調

査]

①資

料収

②資

料整

③地

形判

[現

地調

査]

①現

地踏

[机

上調

査]

①資

料収

②資

料整

③地

形判

[現

地調

査]

①現

地踏

②原

位置

調査

(ボーリング,

検層

等)

③室

内試

①現

地踏

②探

査・

原位

置調

査(ボーリング,

検層

)

③室

内試

④地

下水

関連

調査

同左

に加

え,

特殊

調査

・試

・地

質(地

層)構

成の

詳細

把握

・各

地質

(地

層)の

設計

用定

数値

の設

・地

下水

位等

,施

工法

決定

に係

わる

条件

の設

・補

足調

査計

画立

・地

質(地

層)構

成の

不明

事項

の確

・各

地質

(地

層)の

設計

用定

数値

の追

加・

補足

設定

・地

下水

位等

の施

工法

決定

に係

わる

条件

の追

加・

補足

定 ・施

工時

およ

び維

持管

理段

階調

査計

画立

切 土 部

・切

土区

間の

細部

検討

のた

めの

調査

①現

地踏

査:

地形

・地

質精

②物

理探

査:

弾性

波探

査,

高密

度電

気探

③ボーリング調

査:

機械

ボーリング

④原

位置

試験

:標

準貫

入,

現場

透水

試験

⑤室

内試

験:

各種

物理

・力

学試

⑥地

下水

関連

調査

:地

下水

位観

測,

水質

分析

⑦変

状影

響調

査:

変位

観測

・オプション:

施工

前期

間(約

5年

間)に

おけ

る地

下水

モニタリング

・新

たな

問題

点に

関す

る補

足調

[詳

細調

査]

に加

え,

①原

位置

試験

:地

下水

観測

,P

S検

層,

ボアホールカメラ

・[

原地

盤]

盛土

区間

の地

盤詳

細調

①現

地踏

査:

地形

・地

質精

②ボーリング調

査:

機械

ボーリング,

サンプリング

③室

内試

験:

各種

物理

・力

学試

④地

下水

関連

調査

:孔

内水

位測

定,

間隙

水圧

測定

,透

水試

験,

流向

・流

速測

⑤そ

の他

:沈

下観

測等

・オプション:

補強

盛土

,軽

量盛

土等

の比

較検

・[

盛土

材料

]盛

土材

料の

詳細

調査

①試

料採

取:

オーガーボーリング,

露頭

採取

②材

料試

験:

各種

物理

・力

学試

③そ

の他

:テストピット,

化学

試験

・基

本構

造,

形式

決定

のた

めの

調査

①現

地踏

査:

地形

・地

質精

②ボーリング調

査:

機械

ボーリング

③原

位置

・室

内試

験:

低地

部,

斜面

部,

近接

施工

によ

って

それ

ぞれ

異な

る調

査が

必要

④そ

の他

:河

相調

査,

施工

条件

の調

査,

地下

水関

連調

査,

物理

探査

(課

題が

ある

場合

)

・オプション:

環境

アセス準

備書

の作

・新

たな

問題

点に

対す

る補

足調

①補

足的

調査

(ボーリング等

):

機械

ボーリング,

標準

貫入

験,

乱さ

ない

試料

採取

~室

内試

験,

孔内

水平

載荷

試験

PS

検層

②詳

細の

調査

(原

位置

試験

):

杭の

載荷

試験

,平

板載

荷試

験,

ブロックせ

ん断

試験

③施

工時

確認

試験

:簡

易貫

入試

験等

・トンネル区

間細

部検

討の

ため

の調

①現

地踏

査:

地質

精査

②物

理探

査:

弾性

波探

査,

電気

探査

③ボーリング調

査:

水平

ボーリング,

鉛直

ボーリング

④孔

内検

層:

速度

検層

,湧

水圧

試験

⑤室

内試

験:

岩石

試験

⑥水

文調

査:

現地

測定

,水

質分

析等

・オプション:

環境

アセス手

続き

に関

わる

方法

・新

たな

問題

点に

対す

る補

足調

①現

地踏

査:

地質

精査

②物

理探

査:

弾性

波探

③ボーリング調

査:

斜め

ボーリグ,

鉛直

ボーリング

④そ

の他

:孔

内検

層,

岩石

試験

,X

線分

析,

水質

分析

事業

計画

段階

(予

備設

計~

詳細

設計

段階

~施

工段

階)

主な

手法

・新

たな

問題

点に

関す

る補

足調

[詳

細調

査]

に加

え,

適宜

試験

盛土

や現

場計

測を

行う

大規

模な

軟弱

地盤

等の

場合

,別

途詳

細計

画を

追加

盛   土

道 路 土 工

・切

土検

討の

ため

の調

①資

料調

査:

地形

・地

質資

料調

査,

災害

資料

調査

②地

形判

読:

地形

図・

空中

写真

判読

③現

地踏

査:

地形

・地

質概

④ボーリング調

査:

機械

ボーリング

⑤物

理探

査:

弾性

波探

査,

高密

度電

気探

⑥原

位置

試験

:標

準貫

入,

現場

透水

試験

⑦室

内試

験:

各種

物理

・力

学試

・オプション:

環境

・景

観調

査,

地下

水モニタリング計

共 通 事 項

・地

形・

地質

・土

質概

要の

把握

と問

題点

の抽

①地

形・

地質

調査

(文

献,

地形

図・

地質

図,

空中

写真

他)

②災

害履

歴調

③被

害想

定資

料調

④既

往地

盤調

査資

料の

調査

・予

備調

査計

画立

・地

質(地

層)構

成の

概略

把握

・各

地質

(地

層)の

物性

値概

略把

・詳

細調

査計

画立

調査

段階

調査

目的

基礎

計画

段階

(概

略設

計段

階)

①地

質リ

スク

調査

検討

路線

選定

のた

めの

広範

囲で

大局

的な

調査

②予

備地

質調

構造

形式

,施

工法

検討

のた

めの

全般

的な

調査

・計

画路

線の

構造

形式

等検

討の

ため

の調

(土

質・

地質

の成

層状

態,

圧密

・沈

下,

支持

層,

地下

水,

液状

化,

地盤

強度

,側

方流

動の

把握

)

①資

料調

査:

地形

・地

質資

料調

②ボーリング調

査:

機械

ボーリング

③原

位置

試験

:標

準貫

入試

験等

④室

内試

験:

各種

物理

・力

学試

⑤現

地踏

査:

地形

・地

質踏

⑥そ

の他

:河

相調

査,

地下

水関

連調

査,

物理

探査

(地

すべ

りや

埋積

谷の

抽出

)

・構

造物

計画

のた

めの

問題

点の

抽出

①断

層,

土石

流,

軟弱

地盤

,落

石等

の問

題箇

②地

下水

・地

下水

利用

状況

の概

③既

設構

造物

の把

④史

跡・

文化

財等

の把

・オプション:

各種

ハザードマップ,

三次

元地

形デ

ータ

の有

効利

用 ・コントロールポイントの

把握

のた

めの

調査

①軟

弱地

盤,

液状

化,

地す

べり

等の

地形

・地

質・

土質

問題

②被

害履

歴調

査に

よる

問題

③史

跡:

文化

財等

の把

・オプション:

環境

アクセス手

続き

方法

書の

作成

,三

次元

地形

デー

タの

利用

構 造 物 基 礎 ト ン ネ ル

・路

線選

定の

ため

の広

域的

・大

局的

な調

①周

辺の

地形

地質

の大

局的

②把

握断

層破

砕帯

,地

すべ

り地

域,

温泉

,変

質地

域な

問題

地質

の抽

③地

表水

,地

下水

利用

の概

・オプション:

Google earthな

ど衛

星写

真に

よる

地形

把握

・構

造形

式等

検討

のた

めの

概査

①資

料調

査:

地形

・地

質資

料調

査,

災害

資料

調査

②地

形調

査:

空中

写真

判読

③現

場踏

査:

地質

概査

④物

理探

査:

弾性

波探

⑤ボーリング:

機械

ボーリング

・オプション:

土木

研究

所等

指定

マニ

ュア

ルに

準じ

て自

然由

来重

金属

調査

・構

造物

計画

のた

めの

問題

点の

抽出

①軟

弱地

盤の

規模

や程

度の

把握

②地

下水

・地

下水

利用

状況

の概

③近

接す

る既

設構

造物

の把

④史

跡・

文化

財等

の把

・オプション:

各種

ハザードマップ,

三次

元地

形デ

ータ

の有

効利

・対

策工

検討

にお

ける

情報

提供

のた

めの

調査

①資

料調

査:

地形

・地

質資

料調

査,

災害

資料

調査

②地

形判

読:

地形

図・

空中

写真

判読

③現

地踏

査:

地形

・地

質概

④ボーリング調

査:

機械

ボーリング

⑤原

位置

試験

:標

準貫

入,

現場

透水

試験

⑥室

内試

験:

各種

物理

・力

学試

⑦そ

の他

:地

震被

害記

録調

・オプション:

環境

・景

観調

査,

地下

水モニタリング計

表5-2 道路構造物の各調査段階における調査目的,方法および内容

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5-3

5.2 道路土工・切土部の地形・地質調査の流れと内容

図 5-1 道路土工・切土部の地形・地質調査の流れ

第1回三者会議

〈基 本 計 画〉

〈道 路 概 略 設 計〉 ・路線比較検討 ・計画路線概略選定

〈道 路 予 備 設 計〉 ・計画路線線形検討

・構造形式概略検討

〈道 路 詳 細 設 計〉

・切土区間細部検討

〈工 事 施 工〉

〈供 用〉

〈維 持 管 理〉

第2回三者会議

第3回三者会議

第4回三者会議

①地質リスク調査検討

・資料調査

・地形判読 ・現地踏査(概査)

②予備地質調査

・資料調査、地形判読 ・現地踏査(概査)

・ボーリング 等 ・物理探査

③詳細地質調査(1)

・現地踏査(精査)

・ボーリング、室内試験 ・原位置試験 ・地下水・変位観測

・弾性波探査 ・高密度電気探査

〈路線選定のための広域的な調査〉 ・計画地域周辺の地形・地質概要の大局的な把握

・火山、温泉、変質帯、断層・破砕帯、地すべり・土石流、落石・斜面崩壊、崖錐軟弱地盤等の問題箇所と問題点を抽出

・地表水・地下水利用状況の概略 ・予備調査に対する計画立案

〈計画路線の構造形式等の検討のための調査〉

・計画路線沿いの地形・地質概要の把握 ・断層破砕帯、地すべり、斜面崩壊、土石流等のコントロールポイントにおける切土施工可能性の評

価 ・予備設計に対する地盤情報の提供 ・詳細調査についての計画立案

(道路調査として共通)

(道路構造物区分ごとに実施)

〈切土区間の細部検討のための調査〉 ・切土部の縦横断方向の地質の詳細把握

・地山の土軟硬等工学的性状の具体的把握 ・法面勾配、施工性、法面保護工・対策工の検討、資料の抽出

・地下水状況の把握、問題点の検討等 ・傾斜計、ひずみ計による変位観測

〈新たに抽出した問題点に関する追加(補足)調査〉

・必要に応じて各種調査・試験を追加実施する ・問題点の追加検討 等

〈施工時に必要とされる調査〉

・事前調査で把握されない脆弱地質や路床土CBR値・法面土壌硬度確認などの施工管理調査

・法面変状や想定外の地質状況に対する追加(補足)

調査

〈供用後に必要とされる調査〉 ・落石や法面点検等の災害予知・管理調査 ・法面変状や地すべり等の災害対策調査

④詳細地質調査(2)

・現地踏査(精査) ・ボーリング、室内試験

・原位置試験

⑤施工段階地質調査

・現地踏査(切土部精査) ・ボーリング

・原位置試験 ・室内試験 ・変状観測調査 等

⑥維持管理段階地質調査

・法面点検調査

・地すべり調査 ・変状観測調査 ・ボーリング

・原位置試験 等

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5-4

※ (一社)建設コンサルタンツ協会編:道路事業における地質・土質調査計画の立て方(第 1回改訂版)より転載

表5-3 道路土工・切土における地形・地質調査の内容とその目的

① 地 質 リ ス ク 調 査 検 討 ② 予 備 地 質 調 査 ④

調

(2)

調

(1)

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5-5

5.3 道路土工・盛土部の地形・地質調査の流れと内容

図 5-2 道路土工・盛土部の地形・地質調査の流れ

〈路線選定のための広範囲で大局的な調査〉 ・計画地域周辺の地形地質の大局的な把握

・軟弱地盤の規模、程度による問題箇所と問題点の抽出

・路線周辺の既設構造物の把握

・地表水・地下水利用状況の概略把握

〈計画路線の選定および概略の対策工検討のための調査〉 ・計画路線沿いの地形地質概要、安定、沈下変状が

問題となる箇所の把握 ・湿地、おぼれ谷、埋没谷、液状化履歴箇所の抽出 ・盛土材の発生箇所

・周辺重要構造物の把握 ・詳細調査計画の立案

(道路調査として共通)

(道路構造物区分ごとに実施) 〈盛土区間の地盤の詳細調査〉

・盛土部の縦横断方向の地質の詳細把握と問題点の検討等

・地下水状況の把握、問題点の検討等

〈盛土材料の詳細調査〉 ・予備調査段階で選定された予定地の詳細

調査 ・盛土材料の特性・適切性を十分に検討・

把握するための調査

〈新たに抽出した問題点に関する補足調査〉

・必要に応じて各種調査・試験を追加実施する ・問題点の追加検討 ・大規模な軟弱地盤等の場合には、別途詳細計画を

検討

〈施工時に必要とされる調査〉

・事前調査で把握できなかった地盤の性状や基礎・仮設の挙動を早期に捉え、工事を能率的に進行させるための観測・調査

〈供用後に必要とされる調査〉 ・施工段階での問題点の引継

・盛土の変状等による被害に対して、その問題点の解明と対策を検討するための調査

第1回三者会議

〈基 本 計 画〉

〈道 路 概 略 設 計〉 ・路線比較検討 ・計画路線概略選定

〈道 路 予 備 設 計〉

・計画路線線形検討 ・構造形式概略検討

〈道 路 詳 細 設 計〉

・盛土区間細部検討

〈工 事 施 工〉

〈供 用〉

〈維 持 管 理〉

第2回三者会議 第3回三者会議

第4回三者会議

①地質リスク調査検討

・資料調査

・地形判読 ・現地踏査(概査)

②予備地質調査

・現地踏査(概査)

・地形判読 ・ボーリング 等 ・地震被害調査 等

地盤詳細調査

・現地踏査(精査) ・ボーリング

・弾性波探査 ・原位置試験 ・室内試験

・地下水調査 等

④詳細地質調査(2)

・ボーリング ・原位置試験 ・室内試験 等

⑤施工段階地質調査

・ボーリング及びサンプリング

・動態観測(現場計測) ・沈下・安定管理 ・室内土質試験

・その他

⑥維持管理段階地質調査

調査目的に応じて検討

盛土材料詳細調査

・現地踏査(精査) ・資料採取、露頭採取

・オーガーボーリング ・テストピット ・材料試験、化学試験

③詳細地質調査(1)

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5-6

※ (一社)建設コンサルタンツ協会編:道路事業における地質・土質調査計画の立て方(第 1回改訂版)より転載

表5-4 道路土工・盛土における地形・地質調査の内容とその目的

① 地 質 リ ス ク 調 査 検 討 ② 予 備 地 質 調 査 ④

調

(2)

調

(1)

調

(1)

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5-7

5.4 構造物基礎の地形・地質調査の流れと内容

図 5-3 構造物基礎の地形・地質調査の流れ

第1回三者会議

〈基 本 計 画〉

〈道 路 概 略 設 計〉 ・路線比較検討~

計画路線概略設定 ・橋梁一般図作成

〈橋梁概略(予備)設計〉 ・計画路線線形検討

・構造形式比較検討

〈橋 梁 詳 細 設 計〉 ・基礎細部構造検討

〈工 事 施 工〉

〈供 用〉

〈維 持 管 理〉

第4回三者会議

①地質リスク調査検討

・資料調査

・地形判読 ・地盤概査 等

②予備地質調査

・地形判読・現地踏査 ・ボーリング~サウンディング ・サンプリング

・室内試験(物理・力学) ・地下水位調査 等

③詳細地質調査(1)

・ボーリング~サウンディング

・サンプリング ・原位置調査(孔内水平、PS

検層)

・室内試験(物理・力学) ・地下水位調査 等

④詳細地質調査(2)

(1)追加ボーリング調査 (2)原位置試験

・杭の載荷試験 ・平板載荷試験 ・ブロックせん断試験 等

⑤施工段階地質調査

施工時確認試験

・支持層確認 (ボーリング 等)

・簡易貫入試験 等

⑥維持管理段階地質調査

調査目的に応じて検討

第2回三者会議

第3回三者会議

〈橋 梁 基 本 設 計〉

・基礎形式・諸元検討

〈路線選定のための広範囲で大局的な調査〉 ・被害履歴調査による構造物(橋梁)計画の問題点把

握 ・被害想定資料収集整理により構造物(橋梁)計画上の留意点把握

・既往ボーリング資料収集により構造物(橋梁)計画の精度向上

〈計画路線の構造形式等の検討のための調査〉 ・地質(土質)縦断図(支持層)の設定

・各地層の概略物性値(N値)の設定 ・地下水位の把握 ・設定・施工上の問題点、詳細調査の計画

(道路調査として共通)

(道路構造物区分ごとに実施)

〈基本構造・形式決定のための調査〉 ・地層構成と地盤物性値の設定(物理特性、強度・変

形特性、動的特性)など

・施工法の設定(土性、地下水、透水性等) ・補足調査項目・内容の提案

〈基礎細部検討のための調査〉

・細部構造、施工法決定のために必要な補足的もしくは詳細な調査

〈施工時に必要とされる調査〉 ・①~④調査で十分把握できなかった地盤情報で、設計上クリティカル(支持力等)な情報を施工時に確認す

るための調査

〈供用後に必要とされる調査〉 ・基礎変状発生の可能性がある場合に対してその挙

動解明と対策検討を行うための調査

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5-8

※ (一社)建設コンサルタンツ協会編:道路事業における地質・土質調査計画の立て方(第 1回改訂版)より転載

表5-5 構造物基礎の地形・地質調査

の内容とその目的

① 地 質 リ ス ク 調 査 検 討 ② 予 備 地 質 調 査 ④

調

(2)

調

(1)

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5-9

5.5 トンネルの地形・地質調査の流れと内容

図 5-4 トンネルの地形・地質調査の流れ

〈路線選定のための広範囲で大局的な調査〉 ・計画地域周辺の地形地質の大局的把握

・大規模な断層破砕帯、温泉、変質地帯、地すべり地帯等の問題地域の抽出等

〈計画路線の構造形式等検討のための概査〉 ・計画路線沿いの地形地質概要の把握

・断層破砕帯、地すべり・崩壊地形等問題区間の抽出

・今後の詳細調査計画の立案等

(道路調査として共通)

(道路構造物区分ごとに実施)

〈トンネル区間の細部検討のための調査〉 ・トンネルの地質分布の把握 ・弾性波速度による地山区分を行う

・低土被り部、坑口部の地質状況把握 ・岩石試験結果より地山強度、施工法の検討 ・破砕帯の分布や湧水の推定

〈施工時に必要とされる調査〉

・破砕帯や湧水を事前に把握する ・渇水の影響の有無を知るための観測 ・内空断面の変位により施工法を修正する

〈新たに発生した問題点に対する追加(補足)調査〉・必要に応じ各種調査試験を追加する

〈供用後に必要とされる調査〉

・トンネルの崩壊等の災害予知、管理調査 ・地すべり、なだれ等の災害対策調査等 ・渇水影響の経時観測

第1回三者会議

〈基 本 計 画〉

〈道 路 概 略 設 計〉 ・路線比較検討

・計画路線概略選定

〈ト ン ネ ル 予 備 設 計〉

・計画路線線形検討 ・構造形式概略検討

〈ト ン ネ ル 詳 細 設 計〉 ・トンネル細部検討

〈工 事 施 工〉

〈供 用〉

〈維 持 管 理〉

第2回三者会議 第3回三者会議

第4回三者会議

①地質リスク調査検討

・資料調査 ・地形判読 ・現地踏査 等

②予備地質調査

・資料調査

・地形判読 ・現地踏査 ・ボーリング 等

③詳細地質調査(1)

・現地踏査 ・物理探査(弾性波探査/電

気探査 等) ・ボーリング ・原位置試験

・室内試験 ・地下水調査 等

④詳細地質調査(2)

・水平/斜ボーリング

・原位置試験 ・室内試験 等

⑤施工段階地質調査

・切羽前方探査 ・坑内水平ボーリング

・地下水観測 ・内空断面計測

⑥維持管理段階地質調査

・トンネル内点検調査 ・坑口地表部踏査 ・地下水観測

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5-10

※ (一社)建設コンサルタンツ協会編:道路事業における地質・土質調査計画の立て方(第 1回改訂版)より転載

表5-6 トンネルにおける調査の内容とその目的

① 地 質 リ ス ク 調 査 検 討 ② 予 備 地 質 調 査 ④

調

(2)

調

(1)

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5-11

5.6 施工段階・維持管理段階での地形・地質調査

道路土工の切土部・盛土部、構造物基礎、トンネルにおいて、施工段階及び維持管

理のための調査が必要である。 (1) 地盤や構造物に変状が発生した場合や、事前調査結果と異なる地盤条件が施工

時等に確認された場合は、追加(補足)地質調査を実施する。 (2) 構造物が完成した後は、点検調査(現地踏査)、動態観測、追加(補足)地質調

査、地下水関連調査、室内試験等を実施し、構造物の維持管理に活用する。 (3) 道路事業の計画段階から施工段階において得られた地質リスクを評価検討した

結果および地質リスクマネジメント結果を取りまとめ、維持管理段階に引き継ぐ。

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6-1

6.地質リスク評価に関する参考資料

6.1 地質リスク調査検討の成果イメージ 地質リスク調査検討業

務は、事業の構想・計画 段階において、概略設計 と並行して実施される。 特に、「路線検討」中にお いては、道路の起点と終 点を含む広域的な範囲を メッシュ状に区分し、地 形判読及び現地踏査結果 等に基づき、メッシュ毎 に広域的な地質リスクを 評価する。特に、地すべ り地形・崩壊地形・断層 破砕帯・軟弱地盤・流れ 盤構造の切土等が重要な 着目である。広域的な地 質リスク評価結果は、そ れを一葉の図に重ね合わ せることにより、地質リ スク要因が多く存在する メッシュは、地質リスク が存在する可能性が高い 地域として抽出し、「路線 検討」に活用する。広域 的な地質リスク調査検討 の過程となる図と、調査 検討の最終成果図のイメ ージを図 6-1 に示す。

図 6-1 広域的な地質リスク評価結果の成果イメージ

地質図 地形判読図

軟弱層分布図 地すべり地形分布図

広域的地質リスク評価結果図

凡例

地質リスク 大

地質リスク 小

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6-2

6.2 地質リスク評価の成果イメージ 公共事業を行うに当たっては、各事業段階において入手できる地質情報(既往の地

質調査結果および地質リスク評価結果等)に基づいて、より危険度の高いリスクから

対策を考えていく必要があるため、リスクランク(重要度と影響度)の評価が必要と

なる。既往文献等によるリスクランク評価手法を参考として、リスクの対応策(回避、

低減、保有)を検討する。 地質リスクランクは、下式による重みづけがなされている。

地質リスクランク = 「影響度」 × 「発生確率」 地質リスクランク設定の事例を表 6-1 に示す。 また、地質リスクランクに基づく対応方針は、概ね以下のとおりである。

AA:リスク回避 A :リスク低減(地質調査を実施し、完全なリスク低減策を実施) B :リスク低減(地質調査を実施し、その結果に応じたリスク低減策を実施) C :リスク保有(リスク対策を必要とせず、施工と維持管理にリスクを保有)

表 6-1 リスクランク設定の事例

地質リスク調査検討業務発注ガイド;(一社)全国地質調査業協会連合会編 より抜粋(一部加筆)

路線決定した後に、予備設計と並行して実施された地質リスク調査検討業の成果イ

メージを表 6-2 に示す。同表には、上り線と下り線の計画構造物毎に、地質リスク要

因、発生事象、発生確率、影響度、リスクランク、対応方針、地質状況等を連続的に

一覧表に取りまとめる。

AA : リスクを回避することが望ましいリスク事象 A : 詳細な地質調査を実施して、完全なリスク低減対策を講じるべきリスク事象 B : 地質調査を行い、調査結果に応じた適切なリスク低減対策を講じるべきリスク事象 C : リスク回避や低減対策を必要とせず、施工段階へリスクを留保することが可能な事象

※ 発生確率のランクは当該事業ごとに、事業や工事の特性を考慮して定義します。

非常に低い(Very Low)

低い(Very Low)

中程度(Medium)

高い(High)

非常に高い(Very High)

非常に高い(Very High)

事業の継続不能となる影響 A A A AA AA

高い(High)

事業が中断または大幅な遅延となる影響 B A A A AA

中程度(Medium)

大きな損失を受けるが事業は継続可能で、遅延がある

B B A A A

低い(Very Low)

軽微な修復で事業継続可能となる影響 C B B B B

非常に低い(Very Low)

事業の継続に影響を与えない C C C C C

可能性の高さ(発生確率)

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6-3

表 6-2 計画路線決定後の地質リスク調査検討業務の成果イメージ

区間 №□ 区間 №〇

№100+00~№110+00 №110+00~№200+00

構 造 物 〇〇トンネル 起点側抗口 △△トンネル 終点側抗口 構 造 物

地質リスク要  因

①崩壊地形②風化帯③浮石、転石④支持層分布

①崩壊地形・崖錐堆積物②風化帯③集水地形④支持層分布

地質リスク要  因

発生事象

①②坑口斜面の不安定化③自然斜面からの落石(径20cm)④坑門工の定着不足

①②坑口斜面の不安定化③坑口斜面の不安定化、土砂水の流入④坑門工の定着不足 発生事象

発生確率

①小②小③小④中

①小②小③中④中

発生確率

影 響 度

①中②中③小④大

①中②中③中④大

影 響 度

リスク評価 ①B ②B ③C ④B ①B ②B ③B ④B リスク評価

対応方針①②④坑口斜面の不安定化と坑門工の定着不足については、ボーリング調査による被覆層および地山確認。③リスク保有 維持管理に引き継ぐ。

①②坑口斜面の不安定化と④坑門工の定着不足については被覆層および地山をボーリング調査にて確認。③集水地形による土砂水や斜面不安定化には排水等を考慮。

対応方針

構 造 物 下り線と同様 下り線と同様 構 造 物

地質リスク要  因

①風化帯地質リスク要  因

発生事象 〃

①坑口斜面の不安定化

発生事象

発生確率 〃 ①中 発生確率

影 響 度 〃 ①中 影 響 度

リスク評価 〃 ①B リスク評価

対応方針 〃①坑口斜面の不安定化については被覆層および地山をボーリング調査にて確認。

対応方針

〇〇層群(泥岩主体) 〇〇層群(泥岩主体)、被覆層(崖錐堆積物)

平面型斜面である。地山には〇〇層群の泥岩(D~CL級)が分布する。露頭では風化により細片状となっている。斜面には小規模な表層崩壊跡が点在し、表層がやや不安定な状態であると推定される。表層崩壊面にはφ10~20cmの残留礫を含む風化土が分布する。斜面上には最大φ20cmの転石が点在する。

凸型斜面である。地山には〇〇層群の泥岩(D~CL級)が分布する。坑門工の下り線側端部は小規模な谷地形にかかっており、崖錐堆積物が分布している。坑口上方斜面には不安定な転石は見られず、岩盤露頭も風化により細片化するため落石源とはなりにくいと推定される。下り線側の谷地形上方には谷底の浸食跡があり、さらに上方には最大φ20cmの転石が点在する。

泥岩は風化により細片化する。上部斜面の安定に注意。坑口上部に浮石と転石が認められる。対策工の要否の検討が必要。

尾根部に平行な坑口となる。奥まで風化岩が分布する可能性あり。

区  間

測  点(No.)

下り線

上り線(南 側)

地   質

現地状況および検討項目

既往地質調査

道路計画や設計に対してのコメント

調査計画案

弾性波探査、坑口部でのボーリング調査(水平・鉛直)。掘削土を盛土材に転用する場合はスレーキング試験を実施。

既往地質調査

道路計画や設計に対してのコメント

調査計画案

弾性波探査、坑口部でのボーリング調査(水平・鉛直)。掘削土を盛土材に転用する場合はスレーキング試験を実施。

下り線

上り線(南 側)

区  間

測  点(No.)

地   質

現地状況および検討項目

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6-4

6-3 地質リスクマネジメント結果引継ぎのイメージ 地質リスクマネジメントにおいては、ランクが高いリスクを、管理表(表 6-3)に

整理するとともに、施工時等に発現した場合にはリスクの処置過程(表 6-4)を記録

しておく必要がある。また、これらの地質リスクマネジメント結果は、道路供用後の

維持管理に引き継ぐことにより有効的に活用することが可能になる。 表 6-3 地質リスク管理表の例

(地質リスクが高く、リスクマネジメントが必要な項目を抽出する)

表 6-4 地質リスク処置表の例

(地質リスクの低減を行ったリスクマネジメントの過程と記録する)

登録表

詳述 評価点 詳述 評価点

1 №*+**~№*+**

流れ盤地質構造の地域で、切土工事を実施している時に小規模な斜面崩壊が発生した。

E T

掘削作業を慎重に実施。斜面に変状が発生した場合は中止し、詳細調査(踏査等)をおこなう。

地質が不均質である。発生場所の特定が困難であり影響度は大きい。

地質が不均質であり、場所によって発生確率が高い。

中 A

変状の規模を確認し、影響範囲を想定する。移動土塊を排除し場合の影響は大きくないが、その後の斜面の安定性は低いと推定される。

移動土塊を排除し、ロックボルトを打設する。

1

2 №*+**~№*+**

軟弱層の上位に盛土を施工中に想定以上の圧密沈下が発生した。

E T

地質調査結果と圧密沈下っ解析結果を見直す。

地盤物性地のバラツキを把握し切れていないな可能性がある。

近接地域の類似地盤状況である地域は同様のリスクが発現する可能性が高い

大 A

圧密沈下量をモニタリングし、解析値と比較した結果、解析モデルの修正で対応が可能と判断した。

モニタリングを実施しながら注意深く施工する

1

3

対応計画概要 優先度番号 場所または地名 詳 述 状況危機

あるいは好機

既存の手法

影響度(重大さ) 発生確率リスクランク

先進的アプローチによる分析結果の記述

分析者氏名

審査者氏名

情 報 源

〇〇〇〇(△△△△㈱)

〇〇〇〇(△△△△㈱)

地質調査成果、設計成果、関連資料

活動内容

登録番号

日  付

〇〇〇〇道路事業

〇〇〇〇

平成**年**月**日

◆ 地質リスク評価の結果、リスクのランクが高いものを選択して登録する。

◆ リスクランクが高いものは、リスクが発現する可能性が高いため、本表で情報を共有し、重要な地質リスクマネジメント対象として管理する。

措置計画・管理表

番号 状 況危険

あるいは好機

措置の種類

措置の進捗状況

措置対策 責任者 時期 資源観察

(モニタリング)および報告

措置のコスト(NZD)

リスクランク(低減過程)

1 地質リスクの特定 危険リスク評価

地質リスクの評価の実施

〇〇〇〇 〇〇〇〇地質調査成果、設計成果、関連資料

報告書 B

2概略設計で対応方針を決定

危険斜面対策

無対策で施工 〇〇〇〇 〇〇〇〇地質調査成果、設計成果、関連資料

報告書 B

3詳細設計で施工法を決定

危険斜面対策

無対策で施工 〇〇〇〇 〇〇〇〇地質調査成果、設計成果、関連資料

報告書B

(慎重な施工でリスクのランクダウンを図る)

4切土工事中に掘削斜面の一部が崩壊

危険斜面対策

工事中止

崩壊部の踏査影響範囲の想定

〇〇〇〇 〇〇〇〇地質調査成果、設計成果、関連資料

踏査結果リスク再評価

〇〇A

(リスクのランクアップ)リスク発現

5 対策工に実施 危険斜面対策

対策工実施

移動土塊の排除ロックボルト打設

〇〇〇〇 〇〇〇〇地質調査成果、設計成果、関連資料

斜面のモニタリング

〇〇C(保有)

(リスクのランクダウン)

6

分析者氏名

審査者氏名

情 報 源

〇〇〇〇(△△△△㈱)

〇〇〇〇(△△△△㈱)

地質調査成果、設計成果、関連資料

地 点

登録番号

日  付

〇〇〇〇道路事業

№*+**~№*+**(〇〇地区)

平成**年**月**日

◆ 本事例は、リスクランクが比較的低いことから、リスクに対して無対策で施工を開始たが、小規模なリスクの発現があった場合を想定している。

◆ リスクの発現から緊急対応した過程を記録している。