「高度交通信号システム(自律分散制御)」 実証事 …1...

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1 「高度交通信号システム(自律分散制御)」 実証事業 (ロシア国:モスクワ市) プロジェクト実施者: プロジェクト実施期間: 株式会社京三製作所 株式会社野村総合研究所 2015年12月~2017年11月 エネルギー消費の効率化等に資する 我が国技術の国際実証事業

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「高度交通信号システム(自律分散制御)」実証事業

(ロシア国:モスクワ市)

プロジェクト実施者:

プロジェクト実施期間:

株式会社京三製作所株式会社野村総合研究所

2015年12月~2017年11月

エネルギー消費の効率化等に資する我が国技術の国際実証事業

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実証事業の背景①

モスクワ市は欧州最大都市として成長を続ける一方、市内の慢性的な交通渋滞が極めて深刻な問題であり、ロシアの経済活動を阻害している大きな原因の一つ。モスクワの交通渋滞

モスクワの朝夕のラッシュ時の平均走行速度は10km/hと非常に遅い。

モスクワの朝夕のラッシュ時の平均時速

0 5 10 15 20 25 30 35 40

ヘルシンキ市

アテネ

マドリッド

ベニス

ワルシャワ

ロンドン市

モスクワ市

朝夕ラッシュ時の平均走行速度 (km/h)

出所)「IMPROVING TRANSPORT INFRASTRUCTURE IN RUSSIA

ECONOMICS DEPARTMENT WORKING PAPERS No. 1193」Alexander Kolik,

Artur Radziwill and Natalia Turdyeva(25-Mar-2015)

出所)『IBM Global Commuter Pain Study Reveals Traffic Crisis in Key International

Cities(30 Jun 2010)』

The average speed in cities around

the world (in brackets - the number

of cars per 1000 inhabitants)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

Satisfaction of residents driving conditions

(IBM 2010 survey)

0

5

10

15

20

25

30

35

40

モスクワは、車の利用満足度が世界でも低い状況。

モスクワの車の利用満足度

1-1.事業背景

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実証事業の背景②

2011年4月1日、ロシア交通省、モスクワ市、 モスクワ州が『2020年までのモスクワ交通整備構想』を策定、『モスクワ交通の優先的整備』を打ち出している。

深刻な交通渋滞

• 活動時間の損失• 交通利便性、生活環境の悪化• ガソリン代の増大

• ガソリン使用量増大• 温室効果ガスの排出増大

日本の技術力でモスクワの渋滞問題を解決

経済損失

エネルギー問題

• 燃費向上による省エネルギー効果

• CO2排出削減効果

• 経済活動の活性化への貢献

日本企業の海外展開支援

実証事業の目的

1-1.事業背景

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• 我が国が強みを有するエネルギー技術・システムを対象に、 相手国政府・公的機関等との協力の下、海外の環境下において技術・システムの有効性を実証し、民間企業による普及につなげる。

• これにより、海外のエネルギー消費の抑制を通じた我が国のエネルギー安全保障の確保に資するとともに、温室効果ガスの排出削減を通じた地球温暖化問題の解決に寄与する。

国際エネルギー実証の目的(基本計画から抜粋)

信号機方式 機能 渋滞削減効果 コスト

定周期信号システム

あらかじめ設定したパラメータで制御

効果はない機能が限定されるため低コスト

通信機能付定周期信号システム

制御は定周期だが、センターから遠隔で設定が変更できる

効果はない機能が限定されるため低コスト

交通管制システム

センターシステムと組み合わせ制御理論に基づき制御

状況に応じ柔軟に制御するが、交通流の変化が大きいと、制御遅れが発生

センサー、センターシステム、通信費が高い

スマート信号システム

ローカルのリアルタイムな予測制御技術により遅れなく交通を隣接信号と連携し制御

リアルタイムに制御できるため、渋滞が起きにくい

制御は高度だが、センターシステムが必要ない

モスクワの信号

欧州の競合技術

既存・競合のシステムと日本のシステム

1-2.事業目的

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2.事業内容

スマート信号制御の特徴

モスクワ市交通管制センター(TsODD)

IP Network

中央制御装置が不要

リアルタイムで交通量を予測

イニシャルコスト削減

予測制御(タイムラグなし)

スマート信号制御

情報交換

到着交通流予測

信号制御交通量計測

青信号時間算出

感知器

制御機

凡例

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2.事業内容

実証体制

モスクワ市交通管制センター(TsODD)

NEDO

(株)京三製作所(株)野村総合研究所

現地工事会社

MOU

ID

MOU:NEDOと相手国政府又は公的機関が締結する実証内容、事業スケジュール、業務分担等を定める実施協定書

ID:委託先である日本企業と現地サイトが締結する実証事業の細則を定める協定付属書。

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2.事業内容

実証体制

モスクワ市交通管制センター(TsODD)

• ロシア国内輸送

• 許認可取得支援

• 現地工事(建柱、ケーブル敷設、機器設置)

• 交通量調査支援

• 実証結果評価

• 運用・保守

NEDO

• モスクワ市交通局との調整

• モスクワ市交通管制センターとの調整

• 日露関係における種々の調整(経済産業省、ロシア連邦政府エネルギー省等)

(株)京三製作所

•機器の設計・製造•日本からロシアまでの輸送•許認可取得(EAC認証・GOST規格)

•運用設計•試運転、トレーニング•交通量調査(事前/事後)•運用・保守の技術支援

MOU

ID

(株)野村総合研究所

•モスクワ市交通管制センターとの窓口(NRIモスクワ事務所活用)

•現地情報収集•交通量調査(事前/事後)•データ分析、事業性評価

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2.事業内容

実証サイト

• 日本側からの条件に合う5サイトをTsODDが選定

• 現地調査を実施し、“サイトNo.4“に決定

サイト候補(5サイト) 対象交差点(サイトNo.4の5交差点)

No.4

No.5

No.3

No.2

No.1

サイト4の特徴

• 朝ピークは南進、夕ピークは北進が渋滞

• 北側からの流入交通量が多いため、南進が恒常的に渋滞

• モスクワの中心部に入るための抜け道

2257

2258

343

2135

2136

地図上の数字は交差点の番号

9

3.事業成果

実証成果(移動時間:スマート信号制御により短縮)

317

221231

474

280

200189

286

夕北進

-42(-18%)

-188(-40%)

-21(-10%)

朝南進 朝北進 夕南進

-37(-12%)

事前平均

事後平均

単位:秒

2257 2258 343 2135 2136

数字は交差点の番号

南進

北進

10

3.事業成果

実証成果(信号待ち台数:スマート信号制御により短縮)

63

814

4044

8

1620

2257

0(-5%)

+2(+11%)

-20(-50%)

3交差点計2136

-19(-30%)

343

事後平均

事前平均

単位:台朝 夕

53

11

28

15

50

8

30

12

2257

-3(-25%)

+2(+7%)

-3(-19%)

3交差点計2136

-3(-6%)

343

2257 2258 343 2135 2136

単位:台

数字は交差点の番号

事後平均

事前平均

11

3.事業成果

実証成果(信号待ち時間:スマート信号制御により短縮)

事後平均

事前平均

単位:秒朝 夕

-3(-12%)

単位:秒

事後平均

事前平均

40

2021

79

2416

22

35

-4(-22%)

+1(+5%)

-44(-56%)

-16(-40%)

27

21

33

2724

16

34

21

+1(+4%)

-6(-23%)

2257 3交差点平均2136343 2257 3交差点平均2136343

2257 2258 343 2135 2136

数字は交差点の番号

-5(-23%)

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3.事業成果

実証成果(実証前後の朝の混雑時間帯における道路の様子)

実証前 実証後

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3.事業成果

実証成果一覧① ◎:大幅達成、○:達成、△:達成見込み、×:未達

目標 成果 達成度 補足

移動時間

朝夕の渋滞ピーク時において、実証サイトの2

㎞の移動時間の短縮を図る。

朝夕の南進及び北進の全ての項目で削減効果があった。最大で朝南進で40%短縮。

◎ID上では、15%削減することを目標値として設定している。

信号待ち台数

朝夕の渋滞ピーク時において、5交差点の信号待ち台数(各交差点、全4方向の全ての合計)の削減を図る。

朝ピーク時30%削減夕ピーク時6%削減

ID上では、20%削減することを目標値として設定している。

信号待ち時間

朝夕の渋滞ピーク時において、5交差点の信号待ち時間(各交差点、全4方向の全ての平均)の削減を図る。

朝ピーク時40%削減夕ピーク時12%削減

実証開始当初、測定項目として設定していなかったが、モスクワ市交通管制センター側の意向により追加。

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3.事業成果

実証成果一覧② ◎:大幅達成、○:達成、△:達成見込み、×:未達

目標 成果 達成度 補足

省エネ効果

実証サイトにおいて、・省エネルギー効果

835GJ/年・温室効果ガス削減

56t-CO2/年を達成する。

実証サイトにおいて、・省エネルギー効果

約918GJ/年・温室効果ガス削減約62t-CO2/年

となることが分かった。

○ -

経済効果燃費改善及び移動時間短縮による経済効果に貢献する。

実証サイトにおいて、燃費改善により年間200万円、移動時間短縮により年間2,800万円、合計3,000万円の経済効果が得られることが分かった。

○ -

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3.事業成果

省エネ効果• 上述の実証サイトにおいて、平日朝夕の時間帯(各2時間)に渋滞する状況が1年間継続したことを想定した場合の、平均速度の向上に伴う、省エネ効果を試算した。

• 試算においては、渋滞緩和による燃費向上による燃料消費の削減を省エネ効果とした。燃費向上については、スマート信号制御導入前後の平均走行速度の変化による燃費の変化を推計した。

• ガソリン消費量が年間約27kL削減できる(熱量換算で918GJに相当)。

• これにより二酸化炭素排出量も年間約62t-CO2削減できる(918GJ×ガソリンのCO2排出係数0.0183tC/GJ×44(二酸化炭素の分子量)÷12(炭素の分子量))。

朝 夕 合計

南進 北進 南進 北進

区間距離(km) 2

燃費削減 事前(km/L) 8.0 10.8 11.0 9.5

効果 事後(km/L) 10.0 11.7 11.5 10.1

削減量(L/台) A* 0.049 0.015 0.007 0.011

走行台数(台/日) B 1,824 794 1,564 1,741

燃料消費  日(L/日) C=A×B 89.9 11.5 11.3 20.0 132.7

削減効果  年(kL/年)D=C×200** 18.0 2.3 2.3 4.0 26.5

ガソリンの熱量(GJ/kL) E 34.6

省エネ効果(GJ/年) D×E 918.3

*)削減量=区間距離÷事前燃費-区間距離÷事後燃費**)渋滞効果は平日のみに現れることとし、年間の平日日数を200日として計算 注:四捨五入の関係で合計が一致しない場合がある

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3.事業成果

経済効果

燃料消費削減効果 時間短縮効果

燃料消費削減量(kL/年)A 26.5 朝 夕 合計

ガソリン価格(円/L)B 75.7 南進 北進 南進 北進

経済効果(万円) C=A×B 201 旅行時間削減(秒/台)D 188 42 21 37 -

交通量(台/日)E 1,824 794 1,564 1,741 5,923

のべ旅行時間削減(時間/日) F=D×E 95.3 9.3 9.1 17.9 131.5

削減効果(時間/年) G=F×200日 26,307

経済効果計 C+I 時間価値(円/時) H 1,056

(万円/年) 経済効果(万円/年) I=G×H 2,777

注:ガソリン価格、時間価値は1RUB=2.0円で換算

2,978

注:四捨五入の関係で合計が一致しない場合がある

• 経済効果は、渋滞緩和による燃料消費削減(ガソリン代)と旅行時間短縮の二つの効果を想定して算出されたものである。

• 燃料消費削減は、レギュラーガソリンの価格(37.85RUB/L=約76円)を乗じて算出した。

• 旅行時間短縮は、走行速度の向上により短縮された時間に渋滞が発生していると想定する2時間の交通量を乗じてのべの削減時間を算出、それに時間価値を乗じて算出した。時間価値は、生産年齢人口1人あたりのGDP(528RUB/h=約1,000円)と仮定した。

• 推計した結果、燃料消費の削減により年間約200万円、時間短縮により年間約2,800万円、合計約3,000万円の効果が得られたと推計された。

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4.今後の展望

ロシア国内の他都市への普及活動を開始• フォローアップ事業にて24都市への普及活動を実施中。普及活動を通じ、ロシア連邦政府、地方行政府とのチャネル構築、詳細調査を実施し、各都市のニーズの具体化を図る。

• 日露経済協力による都市環境改善のモデル都市。

• 本実証事業の成果を基に、国交省の都市環境分野における日露協力の枠組みの中で、2018年1月に市内10交差点に本システムを導入済み。

• 更に市内40交差点に導入する計画が進捗中。

カザフスタン

ウクライナ

ベラルーシ

リトアニア

ラトビアエストニア

モスクワ

ヴォロネジ

ウラジオストク

ヴォロネジ

• 毎年、日露首脳会談が開催されてきた都市。

• 2018年夏に、本システム導入し稼働中。

ウラジオストク

モスクワ

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4.今後の展望

需要を見極めながらではあるが、

• メンテナンスサービス拠点信号機は24時間、365日休むことなく安定可動が必要であるため、故障や障害発生時の迅速な対応を実現。

• 技術者の養成現地で活躍できるロシア人技術スタッフを養成し、運用面のサポートの実施。

• 現地生産化の推進機器の現地生産化比率を上げ、コスト低減、納期短縮を実現。

ロシアへも裨益するビジネスモデルの構築