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神戸市立医療センター中央市民病院薬剤部
抗がん剤投与患者に対する投薬マネジメント
がん診療オープンカンファレンス
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本日の内容
はじめに
薬剤部の活動紹介
マネジメントの実際
3
本日の内容
はじめに
薬剤部の活動紹介
マネジメントの実際
4
調剤
的確な診断
最適な処方
調剤
投薬支援
正確な使用
効果や副作用 の評価
次回の処方への フィードバック
医薬品を適正に使用するために
「21世紀の医薬品のあり方に関する懇談会 報告」(1994年)
「医薬品の適正使用」 サイクル
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診断 治療 方針の 決定
薬剤 選択
用法 用量 選択
処方 鑑査
調剤 患者さん
への 説明
処方
従来の薬剤師業務
治療方針の決定から患者への投薬まで
診断 治療 方針の 決定
抗がん剤の 投与計画
処方 鑑査
抗がん剤の 調剤
ミキシング
患者さん への 説明
処方
一方、がん医療チームの薬剤師は
より上流へと仕事の範囲を広げる
6
副作用がみられる時期の目安
(週)
急性悪心・嘔吐
急性のアレルギー
遅延性悪心・嘔吐
食欲低下 全身倦怠感
口内炎 下痢
全身倦怠感
肝・腎障害 白血球・ 血小板減少
貧血
頻度(高)
頻度(高)
手や足のしびれ 耳鳴など
脱毛
1 2 3 4
自分でわかる 副作用
検査でわかる 副作用
7
患者さんからみた 化学療法による苦痛度の変遷
1983
嘔吐
悪心
脱毛
治療への不安
治療期間の長さ
1993
悪心
全身倦怠感
脱毛
家族への影響
嘔吐
1995
悪心
脱毛
嘔吐
全身倦怠感
注射への不快感
1999
悪心
脱毛
全身倦怠感
嘔吐
味覚の変化
1位
2位
3位
4位
5位
Aapro MS, Therapeutics and Clinical Risk Management 3: 1–2(2007).
副作用対策の進歩、専門スタッフの養成などにより、時代とともに、患者さんの苦痛は変化してきた
8
本日の内容
はじめに
薬剤部の活動紹介
マネジメントの実際
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各病棟および手術部、ICU、救急部などに薬剤師を配置し、薬品管理の充実、医薬品適正使用を推進
入院前検査センター、デイサージャリーでの常用薬 チェック、予約制薬剤師外来の開設
薬物療法の個別化(テーラーメイド医療)の推進
治験(医師主導治験)、臨床研究の推進
新しい薬剤業務の展開 -シームレスな薬物療法の提供を目指して-
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外来部門への薬剤師配置
内服薬確認外来
入院前検査センター
デイサージャリーセンター
がん化学療法副作用説明外来
サリドマイド・レナリドミド指導
外来診察室(ソラフェニブ)
11 11
副作用説明外来
•対象:初めて化学療法を受けられる患者、
レジメンが変更になった患者
•医師からの依頼
•1日3枠、1枠30分の予約制
•平均 1.5人/日
12 12 副作用モニタリング スタッフとの患者情報交換
外来化学療法センターでの 薬剤師ラウンド・副作用モニタリング
・ほぼ全ての患者に投薬中に面談
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がん関連薬剤業務の一場面
処方鑑査
抗がん剤の調製
患者への説明
麻薬性鎮痛薬の管理
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本日の内容
はじめに
薬剤部の活動紹介
マネジメントの実際
15
0
200
400
600
800
1000
1200 2009/7/1-2010/6/30
2010/7/1-2011/6/30
2011/7/1-2012/6/30
2012/7/1-2012/12/31
2009年7月1日~2012年12月31日
神戸市立医療センター中央市民病院における 経口抗がん薬・院外処方箋枚数
処方箋枚数(枚)
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● ソラフェニブ(ネクサバール )は、腫瘍の細胞増殖と血管新生を
阻害する分子標的薬であり、腎細胞癌に対する適応を持つが、
2009年5月、切除不能な肝細胞癌に対して適応が追加された。
● 本剤は経口剤ながら、他の分子標的薬同様、副作用として手足症
候群を有しており、しばしばこの副作用が服用中止の原因となって
いる。そのため、患者に対して十分な副作用説明を実施するのみで
なく、多職種による継続的なモニタリングが重要と考えられる。
● ソラフェニブ服用患者における治療の継続性を図ることを目的と
して、かかりつけ薬局も含めた患者支援体制を整備し、多職種関与
による副作用モニタリングを行った。
薬薬連携を含めた多職種関与による効果・副作用モニタリング-ソラフェニブを例に-
事例①
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がん患者さんに対する服薬支援 -肝細胞がんに対する分子標的治療薬を例に-
近年の研究によって、がん細胞が大きくなったり、転移する過程が分かってきた
特定の箇所だけに作用する抗がん剤を投与すればよい
“分子標的治療薬”
ソラフェニブ
ソラフェニブ
作用メカニズムの一部
18
肝細胞がん治療の進め方
肝癌診療マニュアル第2版
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好発部位は、手、足、爪の四肢末端部であり、軽度のものでは、紅斑、色素沈着に終わり、高度のものでは、疼痛を伴って発赤・腫脹し、水疱、びらんを形成することもある。
また、角化、落屑、亀裂を生じるようになり、知覚過敏、歩行困難、物がつかめないなどの機能障害を伴った症状がみられる。
手足症候群
作用機序不明
5-FUでは、手足の皮膚が薄くなり、ソラフェニブでは手足の皮膚が肥厚する傾向にある。
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モニタリングシート(薬剤部作成) 患者服薬記録(メーカー作成)
副作用モニタリングツール
発熱
咳
手 痛み
腫れ
発疹
かゆみ
水疱
足 痛み
腫れ
発疹
かゆみ
水疱
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病 院
かかりつけ薬局
薬薬連携を含めた多職種関与によるモニタリング体制
患 者
診察情報 モニタリング上の注意点
患者情報の フィードバック
処方箋持ち込み
電話
モニタリング、投薬
外来診察室にて モニタリング
薬
剤 師 ・モニタリング結果報告
・処方提案
診察情報 医
師
看
護
師
診察
薬薬連携
薬
剤
師
医
師
看
護
師
診察 効果・副作用モニタリング 処方提案
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診察室では
診察室呼び込み前にスタッフで事前協議
医師 薬剤師
看護師
当日の所見を踏まえて、治療方針を決定
医師
薬剤師 看護師
23
22日目
右母趾付け根が わずかに黒色を呈す
50日目
ほぼ改善
71日目
2度目の疼痛
106日目
ほぼ完治
800, 400 mg/day 隔日
ソラフェニブ 800 mg/day 400 mg/day
400 mg/day 隔日
29日目
水庖化部位の 皮がめくれる
WBC (/μL)
AST (IU/L)
ALT (IU/L)
BUN (mg/dL)
Cr (mg/dL)
BP (mmHg)
5400
32
34
18
0.79
140/80
4900
25
27
16
0.73
145/80
5400
31
28
16
0.80
148/90
5100
29
26
18
0.83
135/90
85日目
再び皮がめくれ 3度目の疼痛
皮膚 所見
ジフルプレドナート 軟膏
ロキソプロフェンNa
60 mg屯用
106 85 71 0 22
アムロジピン 5 mg/day
134 (日)
尿素含有 軟膏
5100
25
19
17
0.86
190/90
4900
28
24
18
0.80
136/70
4500
21
14
17
0.82
128/75
170
投与開始後日数
最長投与症例の臨床経過
24
75 M
80 M
66 F
63 M
58 M
65 F
51 M
60 M
78 M
70 M
72 M
70 F
75 M
54 F
32 M
48 M
72 F
83 M
57 M
69 M
73 M
30 投与期間(日) 300 200 100
1065
ソラフェニブの投与期間
病勢進行
手足症候群
下痢
倦怠感
肝性脳症
投与継続中
25
副作用の発現頻度
国内第Ⅰ・Ⅱ相試験と比較して手足症候群、下痢、食思低下の発現が 低率であった。
(名)
1 2 3 4
手足症候群 6 1 1 0 38.1 44.4 4.8
下痢 3 3 2 0 38.1 55.6 9.5
倦怠感 3 1 - - 19.0 11.1 4.8
発疹 6 0 0 0 28.6 - -
脱毛 4 0 - - 19.0 18.5 -
肝性脳症 - - 3 0 14.3 - 14.3
鼻出血 3 0 0 0 14.3 3.7 -
高血圧 2 3 0 0 23.8 18.5 -
食思低下 2 0 0 0 9.5 22.2 -
Grade 全Grade 発生頻度(%)
国内第Ⅰ・Ⅱ相試験 発生頻度(%)
投与中止 発生頻度(%)
北田ら, 癌と化学療法, 40, 479 (2013)
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慢性骨髄性白血病治療における服薬アドヒアランスに関する調査・介入研究
● 近年、Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害薬の登場により
慢性骨髄性白血病 (CML)の治療アルゴリズムに大きな
パラダイムシフトがもたらされた。
● 経口抗がん薬の使用は、患者のQOL改善に寄与して
いるが、内服アドヒアランスの低下により予後に影響
を与えるとする報告がある。
● CML治療薬内服中の患者における薬物療法への支援を
目的として、CML治療の現状を調査した。
事例②
27
D.Martim et al J Clin Oncol 28: 2381-2388 (2010)
分子
遺伝
学的
寛解
(%)
イマチニブ治療開始からの経過時間(月)
アドヒアランスの低下が 治療効果の低下を招く!
多職種連携による介入により、
患者の予後を改善することが
できるのではないか?
28
イマチニブ ニロチニブ
患者数(名) 7 8
年齢(歳) 58.4 ± 4.4 54.9 ± 3.4
男 / 女(名) 5 / 2 5 / 3
アドヒアランス 不良
4 4
薬剤師外来における前向き調査 (患者からの直接聞き取り)
半数以上の患者において、飲み忘れが判明
理由:うっかり忘れ、 用法が生活スタイルに合っていない など
2013年2月~5月
アドヒアランスの向上が課題!!! 患者の生活スタイルと自己管理力に合わせた用法設定が重要
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診察(医 師)
薬剤師外来
患 者
採血
●治療継続状況の報告
●問題点の報告
経口抗がん薬治療 継続フォローの流れ
目的:外来経口抗がん剤治療における、患者個々に合わせた薬物選択 およびアドヒアランスの把握を含めた外来診療支援
●常用薬確認
●生活習慣の聞き取り
●薬物治療への意思確認と理解度把握
●各薬剤の特徴と副作用説明
●最適薬剤の選択
かかりつけ薬局
30
がん医療における薬剤師の役割 -がん医療チームの一員として-
がん薬物療法における医薬品の適正使用への 貢献
がん薬物療法における副作用軽減への貢献
スタッフとの連携による安心・安全な医療の 提供