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「手術室における手術部位マーキングの導入」...現状把握4 事例について...
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社会医療法人 敬愛会 中頭病院 看護部 手術室
清水 美幸(しみず みゆき)
1.サークル紹介
手術部位に目印をつけることを「マーキングする」と表現する
ことと、地元プロバスケットボールチームの琉球ゴールデンキ
ングスの名をお借りして、サークル名を「マーカーキングス」
としました。
2.テーマ選定
手術部位マーキングの必要性を日々感じながらも、医師と見解
の違いがあることから、導入への大きな障害となっている現状
があります。手術部位マーキングの実施には、医師や他部署と
の連携が不可欠であり手術部単独では導入が困難な為、TQM
活動で「手術室におけるマーキングの導入」をテーマとして選
定しました。
3活動計画
タイムスケジュールをたて、役割分担を明確にしました。
4.現状把握1 マーキングに対する意識:医師の声
2009 年当手術室で手術安全確認が導入された当時、医師より
「サインインで部位確認が実施されているので必要ない」「マー
キングをやるならNrがやってほしい」などの様々な声が聞か
れ、マーキングの導入がスムーズに出来ず、やむなく断念した
経緯がありました。
「手術室における手術部位マーキングの導入」
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現状把握2 医師・他部署へのアンケート調査
アンケート結果から、マーキングについて殆どの医師は必要と感じていることが分かりました。またマーキン
グをすべき症例については、医師・看護師とも左右の臓器がある症例と答えた意見が多数を占めました。マー
キングのタイミングとしては、医師・看護師の半数以上が手術室へ案内する前がよいと答えました。他部署へ
のアンケート結果では、殆どの看護師がマーキングの施行者は医師が適切と答えています。
現状把握3 手術部位の現状
現在手術部位確認は、手術入室前に手術室看護師が患者さんへ質問し、手術部位を答えてもらっています。そ
の際、担当医師、麻酔科医、手術室看護師、病棟看護師で確認を行なっていますが、紙面での確認は徹底され
ていないのが現状です。
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現状把握4 事例について
事例 1,
2009年 5月当手術室にて、(左)鼠径ヘルニア手術予定の男児に、全身麻酔導入後誤って反対側に神経ブロ
ックを施行してしまうことがありました。発生時の要因として、男児の母親にも確認し手術部位は左側と認識
していましたが勘違いしてしまったことと、ブロック時の手術部位の確認作業が欠けていたことが挙げられま
した。
事例 2,
2014年 10月左股関節人工骨頭挿入術予定をされている 80代認知症のある女性の入室時サインインで、書
類上の手術部位記載ミスがありました。手術申込書には(左)側と記載されていましたが、サインインで患者
さんへ確認をしたところ(右)側という返答がありました。手術同意書にも(右)側という記載となっており、
主治医に再確認と骨折部位のレントゲンを確認後、(左)側という確証を得て入室となりました。
5.要因解析
要因解析は、「ドクター」「他部門」「システム」の視点
から魚の骨の手法を用いて分析しました。
6.対策の検討
①マーキングの統一化②マーキングのシステム構築③他部
門への周知を一次対策として対策立案しました。
7.目標設定
「平成 26年 11月 1日から乳腺外科より手術部位マーキング
を実施する。」としました。
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8.対策
対策 1、
マーキングの統一化にむけて、まずアンケート結果を基にマーキングの方法について看護部と話し合いを持ち
ました。アンケート結果では実際にマーキングをするタイミングや誰がどのようにマーキングをするのかも医
師や看護師によって見解が異なっている現状が明らかとなりました。マーキングの方法が診療科によって変わ
ることや、身体の露出部・露出部以外で分けるとなると、病棟やスタッフ間で混乱を招くことが懸念されたの
で手術部位マーキングを統一する事で合意しました。また当院での状況も考慮し、システムに馴染むような方
法でマーキングを統一するには手術同意書と同様な扱いとし、シェーマを用いた紙面でのマーキングが現実的、
かつ合理的であるとのことでシェーマを用いたマーキングの導入を目指すことになりました。
その後師長会議にて、手術部位マーキングの実際について詳細な説明を行いました。
対策 2、
マーキング導入について手術部・麻酔部長から許可をもらい進めていきました。アンケート結果を基に、紙面
上で人のシェーマが描かれている「手術部位確認表」を作成しました。その際、ひだり・みぎという漢字が似
ており手術申込み時に記載違いが起きないよう、漢字を平仮名で表記するようにしました。
「手術部位確認表」のパソコン上のパスへの取り込みや、入院支援室の看護師が手術部位確認表を受け取った
患者さんを把握するパスへの新たな項目の追加作業は、情報システム部と乳腺外科外来看護師と連携して行い
ました。
対策 3,
他部門への周知では、乳腺外科医師と乳腺外科外来看護師への協力依頼を行いました。マーキングを先に乳腺
外科から導入した理由としては、乳房は左右有り、診療科の所帯がコンパクトな為 QCメンバーとの情報伝達
と評価がダイレクトに行えるということが挙げられました。
具体的には、医師からの患者さん・御家族へのインフォームドコンセント(以下 IC)時に「手術部位確認表」
を用い、シェーマの手術部位を紙面上にペンでマーキングしてもらうよう依頼をしました。また、手術部位マ
ーキングについての実際を書面上にて術前病棟へ配布し、周知・連携を図りました。
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9.効果の確認
平成 26年 11月 1日から乳腺外科よりマーキングを実施して
いるので目標達成となりました。
10.無形効果
病棟看護師よりマーキングをすると病変部位がわかるので助かるという言葉が聞かれました。また今後の効果
として、IC 時に皮膚切開線なども追加して説明すれば、患者さんの持つイメージと実際の認識のズレに一定
の効果を与えると考えます。
11.標準化と管理の定着
マーキング確認が確実に実施される為にマニュアルを作成
する。ラウンドを行う。改善点がないか術前病棟スタッフ
に聞き取りを行う事としました。
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12.今後の課題
乳腺外科医師よりシェーマが抽象的で患者さんがイメージしにくいと思うので、より具体的かつ明瞭にしたほ
うが良いのではないかという改善を求める声が聞かれました。
今後全診療科で行っていくにあたって、以上の改善点も踏まえ各科の特徴にあった手術部位確認表のシェーマ
作成やマニュアルなどのシステム構築をしていく必要があると考えます。