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2013.05 金属資源レポート(45)
最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(1)―銅―
連載
最新選鉱技術事情鉱種別代表的プロセス編(1)―銅―
中村 威一金属技術部生産技術課専門調査員
連載を始めるに当たり前回の連載時にも述べたが、世界的にみると鉱山開発を行う上で選鉱技術者の関与は早くなってきている。そのよ
うな状況において、選鉱技術者は、鉱床タイプや鉱物解析を見て、最も経済的に有利で操業上確実な選鉱法を選定する知識、経験が求められ、更にそのプロセス選定においては単に過去の事例に従うだけでなく、将来の展望を踏まえた上で選定する必要がある。例えば今回述べる銅の場合でも以前は銅価の約 25%が製錬の取り分であったのであるが、現在は約 5%の取り分し
かない。そのような低い取り分ではコスト的には見合わず、実際の収益を上げるには実際の実収率と契約実収率の差や評価外の貴金属の回収等による収益によるところが大きく、昔の製錬業におけるビジネスモデルは成立しなくなってきている。金属価格が高い場合は特にその影響が強くなるので、製錬業においても実収率優先の操業が行われるのであるが、一方で鉱山業、製錬業一環で最もコストの安いプロセスが模索されることになる。そのような状況でプロセスを選定する上ではやはり、各鉱種ごとに現状どのようなプロセスが行われているのかを
理解した上で、現地製錬の取り組み現状を踏まえ、今後の展開や新たなビジネスプランを想定して行く必要がある。したがって、本年度は以下の各鉱種について現在の代表的プロセスについて述べていきたいと考える。第 1回:銅第 2回:ニッケル第 3回:金第 4回:PGM、レアアース第 5回:鉛・亜鉛、モリブデン第 6回:タングステン、ニオブ、チタン
Ⅰ.はじめに銅はベースメタルの一つであり、その地金は市場で取引され、英国の LME(ロンドン金属取引所)での取引価格が
国際指標となっている。電気伝導性が非常に高く、また価格が安いことから、電線などのインフラ関連によく使用されるため、中国などの新興国の経済成長によるインフラ需要の増加によって価格に影響を与える。銅の生産方法は従来より広く採用されている露天掘・坑内掘による鉱石採掘から浮遊選鉱で得た精鉱を乾式製錬及
び電気精製により電気銅(銅地金)を生産する方法、そして鉱山で堆積された銅鉱石に希硫酸を掛けることにより銅を浸出させた後、電解採取により電気銅を生産する SxEw法(solvent extraction-electrowinning、溶媒抽出―電解採取)による電気銅生産方法とに分かれる。採掘される銅鉱石は大きく硫化鉱と酸化鉱とに分かれ、主に硫化鉱は乾式製錬、酸化鉱(実際は輝銅鉱の様な二次富化硫化鉱を含む)は SxEw法が適用される。SxEw法では、乾式製錬過程を経ず、低品位の酸化鉱などから効率良く電気銅生産まで行えることから SxEw法による生産が増加している。ただし、この SxEw法は米国南部やチリ、ペルーのような乾燥地帯で発展した技術であり、降水量の多い地帯で用いられるためには、浮選尾鉱から硫酸で銅を浸出する方法や、鉱石を積み立てた後に土やシートを被せ、余分な水量の増加を防ぐ方法等が行われている。また、現在では、黄銅鉱主体の硫化鉱であっても浮遊選鉱で得られた精鉱を微粉砕し、それを高温高圧で浸出させ、
その浸出液を溶媒抽出や、電解採取工程で処理する現地製錬と SxEw法を組み合わせた方法も行われてきている。ただし、現在も主体となっている生産方法は、浮遊選鉱による精鉱を日本をはじめとする乾式製錬所で処理する方
法である。鉱床から銅鉱石(品位 0.5~2%程度)を採掘し、鉱山で行われる浮遊選鉱により品位 20~40%程度に高めた銅精鉱が生産される。銅精鉱はその後製錬所で乾式製錬により品位 99%程度の粗銅となる。そして種板をカソード、粗銅をアノードとした電解精製でカソードに銅を付着させ析出することにより品位 99.99%の電気銅を生産する。銅精鉱はチリや豪州など主要銅生産国で生産され、銅製錬が盛んな日本や中国などへ出荷される。銅精鉱価格はLME価格から製錬費を差し引いて決定されるため、好景気の際の収益性は製錬企業と比較して鉱山企業が高くなるとともに需要の増加により銅精鉱の安定確保が困難になることなどから、日本などの主要製錬企業が鉱山権益取得による資源の安定確保を目指している。
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2013.05 金属資源レポート(46)
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もともと、資源は天然には主として鉱物(mineral)として存在し、この鉱物が集まった鉱石(ore)として産出される。岩石(rock)も鉱物が集まったものであるが、有用鉱物を含み、経済的に資源として回収可能なものが鉱石と呼ばれる。したがって資源抽出の第一歩は鉱石からの有用鉱物の分離操作である。有用鉱物を分離することなく、有用成分(元素)のみを抽出する方法もないわけではないが、一部の例外を除いて、まず有用鉱物のみを分離したほうがはるかにコストが低くてすむ。この目的で、もとの鉱石の物質的変化なしに、含有鉱物をそのままの状態で分離する方法が物理的分離であり、そのプロセスは選鉱(ore dressing、Benefication)と呼ばれる。基本的な選鉱の定義は鉱物の化合物形態を変化させず、物理的性状の差により選別する方法とされている。物理的
性状としては、色、硬さ、比重、磁性、帯電性、表面の濡れ易さ等がある。これらの性状差を利用して鉱物を分離する選鉱法としては浮遊選鉱法(flotation)比重選鉱法(gravity concentration)光学選鉱法(optical concentration)静電選鉱法(electrostatic concentration)磁力選鉱法(magnetic concentration)などが知られている。ここで、表面の濡れ易さとは聞きなれない言葉であるが、イメージ的にはワックスを塗った車の表面は水をはじ
き、表面に着いた水滴が丸くなるが、ワックスのとれた車の表面に着いた水滴は平べったく流れる様なもので、ワックスを塗った車が水に濡れ難く、ワックスのとれた車が水に濡れ易いと考えれば良い。用語的には水に濡れ易い表面を親水性、水に濡れ難い表面を疎水性と呼ぶ。この性状を利用した選鉱法が浮選(浮遊選鉱、Flotation)であり、一般に岩石の表面は親水性であり、金属は疎水性であることが多いことから、鉱石を水と共に粉砕し、水と攪拌させながら懸濁させた状態で、界面活性剤や油を添加し、下から空気を吹き込むと、疎水性の物質が泡に付着して浮遊してくることを利用した方法である。この方法は非常に優れており、従来は廃棄されていた低品位の鉱石からの回収率が画期的に上昇し、鉱山の採算性ひいては金属価格の下落を促し、工業の発展に貢献することとなったことから、代表的な選鉱方法となり、現在に至るまで選鉱方法と言うと、まず第一に浮選法があげられる。選鉱のプロセスは大きく二つに分けられる。破砕(crushing)、磨鉱(grinding)と呼ばれる単体分離の過程と、狭義
の選鉱(ore beneficiation、concentration)の過程である。単体分離とは、鉱石を細かい粒に粉砕して、一つの粒は原則として一種の鉱物からなるようにするプロセスである。鉱石を形成する鉱物の粒子は非常に細かいので、通常の磨鉱では、単体分離できない鉱石もあるが、その場合には、最初から化学的分離を行う。これらのうち、浮遊選鉱法については前段で詳述したが、これは化学、特に表面化学の原理を用いた物理的分離法である。すなわち、選鉱の過程で、鉱石や、鉱物はその内部に及ぶ化学的変化を受けない。他の四つの方法はその名から推測されるように有用鉱物と不用部分(通常脈石 gangue という)を、その比重、色、静電特性、磁性などの差を利用して分離する物理的な分離方法である。
Comminution単体分離
Separation分離
図 1. 選鉱概念
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2013.05 金属資源レポート(47)
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多少異なるフローシートを用いている例もあるが、本フローシートがあくまで基本と考えられる。本フローシートを基本として、粉砕系に SAGミルの代わりに通常のコーンクラッシャーとHPGR(ハイプレッシャー グラインディング ロール)を用いたり、精選系にカラム浮選機を用いたり、又はボールミル サイクロン アンダーフローを浮選するフラッシュフローテーションのプロセスを使用する等の変更を行うことはあるが、本フローシートを踏まえた上で、違いを理解していけばよい。
1.磨鉱系採鉱で発破された鉱石はダンプトラックで、露天掘りの場合はピット、坑内掘りの場合は坑内に設置された 1次クラッシャー(Primary Crusher)にてベルトコ
Ⅱ.硫化鉱上記に示したように、銅鉱石の処理は大きく分けて
酸化鉱と、硫化鉱に分類され、黄銅鉱を中心とする硫化鉱の処理方法は浮遊選鉱(浮選)が中心となる。銅硫化物鉱の浮選処理は長らく実施されてきており、その基本的な処理方法もほぼ確立しているとは考えられるが、実際に開発するに当たっては、最適粒度、最適捕収剤、副産物元素挙動等の確認を行っていく必要がある。特に現在の開発の中心である、斑岩銅鉱床(Porphyry Copper)の場合には、副産物として、金やモリブデンを随伴することが多く、その収益が損益に大きく影響する場合があるので注意を要する。硫化銅鉱を処理するにおいてほとんどの現役選鉱技
術者が想定するであろうフローシートを以下に示す。もちろん、実際の操業では考え方の違いなどもあり、
このようにして分離された有用鉱物を精鉱(concentrate)と呼ぶ。この精鉱がこれまで鉱山の最終産物とされてきており、精鉱が世界各地にある製錬所に運ばれ、製錬されメタル等にされてきた。しかしながら、浮選では実収率の低い酸化鉱や、これまで捨てられてきた低品位のズリを対象に、米国の南部や南
米では硫酸等の酸を散布し、溶出されたメタルを溶媒抽出で濃縮し、その濃縮液から電解採取する SxEwと言う方法が広く用いられるようになり、鉱山で直接メタルを回収するような現地製錬法が行われるようになってきており、精鉱が鉱山の最終製品であると言う様相は変化してきている。
また、SxEwと組み合わすことで、精鉱を直接、鉱山の山元で高圧、高温下で溶出させて、鉱山で全て製錬を行う方法も行われている。また、微生物を使用して低温で製錬する方法や、更に現在ウランで広く実施されている採掘せずに地下でそのまま溶出させる In-Situ Leaching 法等の検討なども行われており、現地製錬化は今後も発展していく可能性が高い。また、最近の傾向として例えば銅精鉱中にヒ素やアンチモン等を多く含むいわゆるダーティコンクが増加してきた
り、レアアースの場合などは精鉱に放射性物質が濃縮するなどしている。そのような精鉱を日本に輸入した場合、スラグや残渣に不純物が濃縮することになり、処理が非常に困難になることが多い。一方、鉱山元で乾式、湿式を問わず製錬を行うとそのような不純物を鉱山外に持ち出すことはなく、元々あった場所で処理を行うことが出来る。選鉱でも処理した鉱石の大部分は尾鉱として処理することになり、ズリを含め処理する場所は元々大量に保有しており、水処理設備等も保有しているので、不純物の環境面から考えると鉱山元で製錬する方が良いと言える。
◎溶脱帯:地表から地下水面上部で黄鉄鉱と黄銅鉱が酸化し硫酸、硫酸第1・2鉄、硫酸銅を生成
硫酸銅は方解石(CaCO3 )等と反応し酸化銅鉱を生成(孔雀石、藍銅鉱、珪孔雀石etc)
Escondidaの事例
Leached Capping
鉱化帯断面
Low Enrichment Supergene Covellite Dighite-Chalcocite Blanket
Hypogene Cu-Fe Surphides
Hypogene Fe (-Cu) Sulphides
Minaralisation
High Enrichment SupergeneChalcocite Blanket
◎二次富化帯:硫酸銅は更に下部に浸透し、各種硫化鉱と反応し二次富化帯を形成。 輝銅鉱(Cu2S)、銅藍(CuS)、斑銅鉱(Cu5FeOS4)
◎初生鉱床帯:二次富化帯の下部には元々の硫化鉱が存在(二次富化鉱の生成時の還元剤) 黄銅鉱(CuFeS2)、黄鉄鉱(FeS2)。
リーチングSxEw
浮選乾式製錬
図 2. 鉱床、鉱物による処理法の違い
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2013.05 金属資源レポート(48)
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PrimaryCrusher Coarse
OreStockpile
PebbleCrusher
PumpSump
SAG Mill
Cyclone
Ball MillScreen
RougherScavenger
Regrind
TailingThickener
Tailing Dam
ConcentrateThickener
CONCENTRATE STOCKPILE
Filter
1st Cleaner
2nd & 3rd Cleaner
図 3. 浮選基本フローシート
ンベアで運搬できる程度まで破砕され、ベルトコンベアを用いて選鉱場近くにある鉱石置き場(Coarse Ore Stockpile とか単にOre Stockpile と呼ばれる)に運搬される。ちなみに、本フローシートではFine Ore Stockpile(細粒鉱石置き場)が無いのに何故Coarse Ore Stockpile(粗粒鉱石置き場)と呼ばれるかと言う
と、SAGが一般化する以前は 2次、3次クラッシャーの給鉱をCoarse Ore、2 次、3次クラッシャーで砕いた後のミル給鉱をFine Ore と呼んでいた名残である。SAG ミル(SAG Mill)では 2次、3次クラッシャーの代わりとなるので、その給鉱はCoarse Ore であることから、Coarse Ore Stockpile と呼ばれていること
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2013.05 金属資源レポート(49)
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が多い。ただ、そのような事情を知らない人間には誤解を生むことが多いことから徐々に単にOre Stock-pile と呼ばれるようにはなってきている。Coarse Ore Stockpile の底からエプロンフィーダー
等で抜き出された鉱石は SAGミルで粉砕され、粉砕された鉱石はスクリーンで粗粒と細粒に分級される。粗粒は、マグネットで混入している細かくなったボールを除去した後、ぺブルクラッシャー(Pebble Crusher)で繰り返し産物粒度を細かくし、SAGミルに繰り返される。ぺブルクラッシャーを用いないフローシートも存在するが、SAGミルには粉砕されにくい鉱石粒度が存在すると言われており、その粒度域にぺブルクラッシャーを用いることで処理量増加を図る目的で設置されることが一般的である。スクリーン細粒部は、サイクロン(Cyclone)とボールミル(Ball Mill)を組み合わせた閉回路粉砕で浮選給鉱粒度まで粉砕される。消費動力のバランスからSAGミル 1台とボールミル 2台の組み合わせになることも多い。
2.浮選系浮選は幾つかのフローシートが存在するが、基本的
に粗選(Rougher)、清掃選(Scavenger)、精選(Clean-er)と再磨鉱で構成されている。浮選は経験的な要素が強いことから選鉱技術者もそ
の技術者が勤めたことのある選鉱場のフローシートに基づいて新しい選鉱場のフローシートを作成することも多いので未だ様々なフローシートが存在するが、基本的には上記フローシートをベースにすれば良い。最初に、磨鉱系で粉砕された浮選給鉱は条件槽
(Conditioning Tank)に入れられ、捕収剤や起泡剤等
PrimaryCrusher Coarse
OreStockpile
PebbleCrucher
PumpSump
SAG Mill
Cyclone
Ball MillScreen
PrimaryCrusher Coarse
OreStockpile
PebbleCrucher
PumpSump
SAG Mill
Cyclone
Ball MillScreen
図 4. 磨鉱系フローシート
Traction Wheels Carrying Rollers
BoltsChainBarings
Impact Rail
Drive SprocketsShaftsMain Frame
Return Rollers
Pans(flights)
図 5. エプロンフィーダー
Rougher 1
23
Scavenger
Regrind
1st Cleaner
2nd & 3rd Cleaner
図 6. 浮選系フローシート
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2013.05 金属資源レポート(50)
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選系でザンセート系を中心に使用、起泡剤とグリコールとグリセリン混合系(Oreprep社)を使用している例が多いように思われるが、浮選試験や現場試験でそれぞれ適切な試薬を求めていく必要がある。硫化銅鉱の浮選条件は研究も進んでいるし、実績も多いが、特に鉱山開発で操業開始時にはどうしても酸化銅鉱の混入割合が多く、その場合は、ザンセート添加量の増量、浮選粒度の低下、硫化剤の添加等で対処を図ることが多い。ただし、浮選粒度の低下は浮選を阻害するスライムの増加を招くことになり、通常はケイ酸ソーダのような分散剤を添加し対処を行うが、場合によってはわずかな凝集剤を添加することで実収率の増加を図る方法も採られることもある。ただし、これらはどちらかと言うとあくまで立ち上げ時の問題として処理することが出来、基本的なフローシートの選定には影響を与えない。また、浮選フローシートは繰り返しが多く、複雑に見えるが、大きく見ると原鉱①が精鉱②と尾鉱③に分かれているに過ぎず、①=②+③の関係が成り立つので通常、サンプラーは原鉱、精鉱、尾鉱に用いる。ただし、通常、浮選系の状況を日常で確認していきたいので流量計やサンプリングポイントを追加し、状況の把握を行う。硫化銅鉱の浮選で通常、問題となるのは金やモリブデンと言った副産物の挙動、実収率である。金は銅とほぼ同様の挙動を示し、銅精鉱中に回収された金はそのまま、製錬所に販売されるが、モリブデンは最初に銅精鉱中に回収した後、改めてモリブデン浮選を行って、銅精鉱とモリブデン精鉱に分離する。モリブデン精鉱を得るためにはこれまでは、フェロシアンやシアンを用いて銅を抑制し、モリブデンを浮かし、それを多段で精選する方法が用いられていたが、現在は有毒なシアンの使用を避け、硫化ソーダでORP(酸化還元電位)を制御しながら、パルプ温度を上昇させてモリブデンと銅を分離する方法が広く用いられている。ただし、これらの分離方法を用いても、モリブデン実収率は銅浮選でモリブデン実収率が悪ければ当然低くなるので、銅浮選でモリブデン実収率を上げることの出来る試薬等が用いられている。
3.乾式製錬(現地製錬)浮遊選鉱で得た精鉱は通常、乾式製錬及び電気精製により電気銅(銅地金)を生産する。かつては大型鉱山はそれぞれが製錬所を持ち、そこで電気銅を生産していた。しかしながら、銅価格の低迷と共に、鉱山経営の悪化と鉱害(煙害)問題のため、各鉱山で保有していた旧式乾式製錬所は閉鎖され、硫酸設備を保有する大型の新型乾式製錬所を建設し、各鉱山で製錬所を持つ代わりに周辺にある銅鉱山から製錬費をもらい、各鉱山に代わって製錬精製を行うカスタムスメルター方式が一般化するようになった。これが、現在でも続く銅精鉱の取引価格形態に反映されており、銅精鉱価格は
の浮選剤と共に攪拌される。場合によっては、油性の試薬は、ボールミルに投入されたり、反応性の早い試薬は直接粗選に添加され条件槽を持たない浮選系も多いが、操業時に使用試薬を変更することも多々あることからも汎用性を持たせる目的からも条件槽は設置した方が良いと考えられる。条件付けしたパルプ状の鉱石は粗選に送られ、最初
に浮遊しやすい品位の高い浮鉱(Froth、Rougher Concentrate)を得る。粗選で浮かなかった鉱石(Sink, Roughr Tailing)は清掃選に送られ、浮選速度の遅い粒子を清掃選浮鉱(Scavenger Concentrate)として浮かせる。浮選速度の遅い粒子は通常は、脈石との片刃粒子が多いが、非常に粒度が細かい輝銅鉱や表面が酸化されている銅鉱物が含まれている場合もある。通常、粗選系と清掃選系は同形の浮選セルが直列に並んでいる場合が多く、そのままでは区別がつかない。直列に並んでいるセルの最初の 1~2つのセルが粗選系として使用されている場合が多いが、浮鉱樋の行き先と、精選系からの繰り返しパイプの位置等で区別する必要がある。清掃選浮鉱は再磨鉱系(Regrinding)で単体分離さ
れ、粗選精鉱と共に 1段目の精選区(1st Cleaner)に送られる。再磨鉱系は通常、小型サイクロンと小型のボールミル、チューブミル、またはタワーミルのような縦型ミル等で構成され、小径の粉砕媒体を用いて、磨滅(Abration)作用で粉砕を行う方法がとられる。1段目の精選系では粗選、清掃選系と比較し、小型
の機械式セルが用いられる。その大きな目的は再磨鉱で単体分離された不要鉱物の除去と、粗選、清掃選で混入した不要鉱物の除去である。したがって、通常、多く混入する黄鉄鉱(Pyrite)を除去するために pHは12 近くまで上げられ、また、SO2 等の抑制剤を添加することも多い。通常、1段目の精選尾鉱には、銅鉱物も逃げていることが多いので、清掃選に繰り返され回収が図られる場合が多いが、添加される抑制剤の量などによって、清掃選に悪影響を及ぼす可能性がある場合では 1段目の精選区の強化を図った上で、その尾鉱を清掃選尾鉱と共に最終尾鉱とすることもある。1段目の精選精鉱(1st Cleaner Concentrate)は 2段
目、3段目の精選区(2nd & 3rd Cleaner)に送られ、更なる品位アップが図られる。もし、精鉱品位が十分に上がっていない場合はこの段数を増やすことになる。ここでは基本的に前の段の精鉱が次の段の給鉱となり、次の段の尾鉱が前の段に繰り返えされる方法で品位アップが図られている。モリブデン浮選の様な場合にはその段数が非常に多くなるが、銅浮選ではここに示すように 2段、3段程度で十分品位アップが図れる場合が多い。この多段系精選の最初の尾鉱は、片刃粒子が含まれていることが多いので通常は再磨鉱系に繰り返される。使用される捕収剤は粗選ではリン酸系を主捕収剤と
して、ザンセート系を副捕収剤として使用され、清掃
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LME価格から製錬費を差し引いて決定される形となっている。したがって、昔のように各鉱山で製錬を行う方法は、新たに建設する製錬所の建設費の減価償却費とその操業費、電気銅の輸送費の合計が、上に定めた製錬費と銅精鉱の輸送費よりも安くなる必要があり、各鉱山で乾式製錬を行うのはほとんど考えられていなかった。したがって、鉱山山元での製錬と言うとSxEwを含めた湿式精錬であるが、仮に小型で建設コストも安く、煙害問題のない乾式製錬法が開発されれば、特に内陸部や不純物濃度の高い鉱山を皮切りに乾式製錬の現地化が大きく進む可能性が高い。以下に乾式製錬の現状を示す。本項でも示されるように浮選の発展により銅精鉱粒
図 7. 主な乾式製錬法
図 8. オートクンプ自溶炉法
Cu2S・FeS+SiO2+O2 →Cu+2FeO・SiO2+SO2+ 反応熱 Cu2S・FeS+SiO2+O2→Cu+2FeO・SiO2+SO2+ 反応熱
CuFeS2+SiO2+O2→Cu2S・FeS+2FeO・SiO2+SO2+ 反応熱
乾燥鉱粉炭硅砂・C鍰
排ガス
排ガス
石灰&冷材(C鍰)
電極
鍰CL水砕鍰
C水砕鍰
鈹・鍰
粗銅
アノードスクラップ
スクラップS炉
CL炉
C炉
スクラップ
ランス空気(50~ 60%酸素) ランス空気
(30~ 40%酸素)
図 9. MI 法
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2013.05 金属資源レポート(52)
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Leach SxEw(Leaching, Solvent Extraction, Electrowinning)による生産は、世界銅生産量の約 20%を占める。銅の酸化鉱物、炭酸塩鉱物、輝銅鉱等一部の硫化鉱物に希硫酸を掛け、銅を溶かし出し、溶媒抽出により濃縮して、電解採取により、電気銅に仕上げる方法として定着した。ただし、現状で Leach SxEw法を用いるには以下の条件が必要とされる。鉱石のタイプ;酸化銅鉱物、輝銅鉱、コベリン。脈石の種類;酸消費量が少ない。酸生成。地形;峡谷や低地。帯水層が無い。気候条件;乾燥、温和。蒸発量>降水量。堆積場への運搬距離;短い。十分な土地天然の排水パターン;液損失が少。すなわち、このような条件に見合う、南米やチリ、ペルーで SxEwは酸化鉱の処理法として確立されているが、降水量の多い土地では酸化鉱と硫化鉱を一緒に浮選処理し、その浮選尾鉱を硫酸リーチングする方法や、鉱石をタンク内で攪拌抽出するタンクリーチングの方法が取られている。また、リーチングダンプの上にプラスチックシートを被せ余分な雨水の混入を防ぐ方法やリーチングダンプの表面に排水路を設け過剰な雨水を表土水として出来るだけ早く除去する方法などが試みられている。
1.リーチングリーチングはその抽出方法に従い、以下の 5つに分類される。タンクリーチング;高品位鉱石を粉砕しスラリーとし、タンク内で攪拌浸出する。
度が細かくなり、従来の反射炉に代わる、フラッシュタイプ(flash)・バスタイプ(Bath Smelting)などの新しい冶金炉の使用が中心となっている。以下に代表的なオートクンプ式自熔炉システムを示す。自熔炉の仕組みを簡単に述べると、乾燥させた銅精
鉱をシャフトの上部から銅精鉱、珪酸鉱、炭材を乾燥混合したものを噴霧して着火させると、銅精鉱中に含まれる硫黄分が燃えて自燃して発熱し、シャフト下部に落下するまでに熔体化する。熔体化した鉄分は珪酸鉱と結びついてフェアライトとなる。フェアライトは比重が軽いので、熔体で上部に比重で分離し、銅分(主としてCu2S)は重いので下部に分離される。比重分離されたフェアライト分をカラミとして排出し、下部の銅分はカワとして次工程の転炉に移送される。燃焼した硫黄分は亜硫酸ガス(SO2)となり、五酸化バナジウム等の触媒を用いて濃硫酸として回収する。現在はフラッシュタイプの図に示されるバッチ式の
Peirce-Smith 式の転炉(PS転炉)に代わり連続コンバーティングプロセスの開発も進んでいる。更に、自熔炉から直接アノードを生産するDirect Blister 方式も商業化されている。このような連続式製錬のメリットとしては、排ガス中の SO2 濃度をほぼ一定にでき、硫酸設備がコンパクトになること、転炉操業のための天井クレーンが必要ないことから建屋も小さくて済み、全体的に設備費を低く抑えることが出来ることである。1974 年より世界で初めて連続製錬を行っているMI炉(三菱炉)のフローを図に示す。また、先にあげたフラッシュタイプも豪州のオリン
ピックダム鉱山やザンビアのコンコラ鉱山(チンゴラ製錬所)で商用化されてきており、技術革新と共に鉱山付帯乾式製錬所の可能性も考慮すべき状況となってきている。
Ⅲ.酸化鉱銅鉱石をリーチングした記録は 15 世紀に遡り、
1752 年にはスペインRio Tinto 鉱山で、大規模なリーチングと沈殿銅採取の操業が行われた。元々、ポーフィリー銅鉱床は、一般的に黄銅鉱を中心とする初成硫化銅鉱床の上部に酸化鉱石帯を持っており、SxEw技術が開発されるまでは、鉱床開発初期に積み立てた酸化鉱石を硫酸で浸出し、浸出貴液を鉄置換して沈殿銅を採取し、製錬所に販売していたが、生産物の品位も低く、主要なプロセスではなかった。SxEwの経緯は1929 年ザイールの Shituru、チリの Exotica で酸化銅鉱石のリーチングと、電解採取が行われたが、低品質の金属銅しか得られなかった。1940 年代、有機溶媒による抽出濃縮(Solvent Extraction)法がウラン鉱山で開発され、発展し、1960 年代、銅に適した抽出溶媒(LIX)が開発され、銅の Leach SxEwが米国で開発、実用化された。1970 年代に抽出溶媒が更に改良され、高品質の金属銅が生産できるようになり、銅のLeach SxEw法は米国、次いでチリで広まった。銅の
Concentrate
ConcentrateDrying
AnodeCasting
FireRefining
SlagCleaning
Slag
Process
FlashSmelting
Acid Plant
Blister
Blister
図 10. オートクンプDirect Blister 法
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2013.05 金属資源レポート(53)
最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(1)―銅―
連載
収には良く用いられるが、銅鉱山では酸化鉱は硫化鉱を採鉱する目的でもともと採掘されることもあり、それほど実施例は多くない。現在、酸化鉱のリーチングにおいてはそのほとんどがヒープリーチングかダンプリーチングである。例えば、米国AZ州(アリゾナ州)にあるモレンシ鉱山ではリーチング SxEw法で年間約 31 万 t の電気銅を生産しているが、内 13 万 t がヒープリーチングから、18 万 t をダンプリーチングから生産している。ヒープリーチングとダンプリーチングの仕分けは基本的に鉱石品位であり、比較的鉱石品位の高い鉱石は実収率を上げるため、鉱石を砕いて積み上げるヒープリーチング、品位の低い鉱石は谷等にそのまま積み立てるダンプリーチングを用いている。積み立てる鉱石量はヒープリーチングが 1日 8.5 万 t に対し、ダンプリーチングではその 10 倍の 85 万 t を積み上げている。ヒープリーチングでは鉱石サイズは、細かく砕くほど浸出率が上がるがコストも上がる。またヒープで微粉や粘土が増え過ぎると浸出液がチャネリング(詰まって水道(みずみち)が生じること)を起こし、液が全体に行き渡らなくなり、浸出率が下がる。これを防ぎ、PLS の pHを保ちながら硫酸消費量を最少にするため、濃い目の硫酸などを添加して、鉱石粉をアグロメレーター(団鉱機、ゴムライニングされた回転する筒の中に鉱石と水を混練し団鉱を作製する機械)で造粒した後堆積する。アグロメレーターで造粒された鉱
バットリーチング;鉱石を破砕し、大型の容器の中に堆積し、液に漬けて浸出する。ヒープリーチング;鉱石を破砕し、不透水基盤(含シート)上に堆積し、液を掛けて浸出する。ダンプリーチング;低品位鉱石Run-of-Mine Ore、
廃石を堆積し、そのまま液を掛け浸出する。インプレースリーチング;鉱石を動かさず、元来の
場所で割れ目を作り、その場所で浸出する。上で示されるようにタンクリーチングが最もコスト
は高いが、確実な方法である。一方、インプレースリーチングは最もコストが低い方法であるが、ウラン回
図 11. 米国 AZ州 モレンシ鉱山 リーチング操業
図 12. アグロメレーター
図 13. スタッカー
図 14. ヒープリーチング積み立て状況
Oxide Copper:
Chalcocite:
CuO+H₂SO₄→Cu2++SO₄
2-+H₂O
Cu₂S+2.5O₂+H₂SO₄→2Cu2++2SO₄
2-+H₂O
2Cu2++10Fe
2++12SO₄
2-+4H₂SO₄
0.5O₂+2Fe2++2SO₄
2-+H₂SO₄→2Fe
3++3SO₄
2-+H₂O
Cu₂S+10Fe3++15SO₄
2-+4H₂O→
図 15. リーチング反応式
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2013.05 金属資源レポート(54)
最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(1)―銅―
連載
保温などが有効な場合もある。酸化銅鉱石は、浸出速度が速く、浸出率が高い。数週間、数か月でその実収率は 70~90%となると言われている。一方、輝銅鉱、コベリンのような硫化銅鉱は、バクテリアの働きで浸出速度は 50% /year と遅いが、浸出率は 90% /5years と高い。黄銅鉱、砒四面銅鉱は、浸出速度が 10~15%/year と遅く、最終浸出率は 50%以下(6~10 年間)と低い。ヒープでの浸出時間は、酸化鉱石で 2~3か月、硫化鉱石で 3~4か月(休止期間、1~3か月)となっている。銅鉱物の硫酸浸出反応式は以下の通り、バクテリアは鉄酸化細菌(Thiobacillus ferrooxi-
石はスタッカーを用いて高さ約 15 mのヒープパッドとして積み上げられる。また、ヒープリーチングでは輝銅鉱のような硫化銅
鉱でも行われる。硫化鉱石のリーチングにはバクテリアの機能を活用するために、空気の流通を良くする。ダンプを指状に堆積したり、ヒープパッドを 5~9 m程度に薄くし、できるだけ踏み固めないように堆積する。ドレインパイプからの空気吹き込みも行う。バクテリアには、28~37℃が最適な温度であり、40
℃を超えると急激に活動が低下する。逆に高地や冬季の低温によっても活動が低下するが、リーチング時の酸化熱が軽減する。液の加熱、地表下添加、ヒープの
散布量:200cc/min/m2
ヒープリーチング電解採取
溶媒抽出
有機相抽出工程
逆抽出工程
水相
有機相水相
Cuイオン
Cuイオン
抽出
逆抽出
SxEw法による電気銅生産のフロー
Cuイオン濃度:30g/lH₂SO₄濃度:150~200g/l
Cuイオン濃度:50g/l
2RH(org)+Cu2+(aq) R₂Cu(org)+2H+(aq)
Cuイオン濃度:2~5g/lH₂SO₄濃度:10g/l
図 16. SxEw概念図
Cu イオン濃度:50g/l H₂SO₄ 濃度:150~ 200g/l 電解採取
ストリッピング
溶媒抽出
鉱石
リーチング
電気銅
Cu イオン濃度:2~5g/l H₂SO₄ 濃度:10g/l
Cu イオン濃度: 0. n g/l
Cu イオン濃度:30g/l
図 17. SxEw概念図(銅品位)
dans)と呼ばれ、2価の鉄を 3価の鉄に酸化して増殖する細菌である。このバクテリアの働きが通常であれば硫酸に溶解しない硫化銅鉱物を溶出させる訳である。このバクテリアはもともと鉱山に生息しており、敢えてバクテリアをリーチングパッドにばらまくようなことはしないが、鉄酸化細菌は純粋培養に成功していない菌種が多い。そのために、鉄酸化細菌を単体培養し、最もリーチングに適する菌種を見つけて積極的にリーチングに利用しようとする試みもなされている。
2.リーチング SxEwの概念リーチング、SX(溶媒抽出)、EW(電解採取)の概念
図を以下に示す。この図を概念的に示すと以下のように 3つの輪で示
されることが多い。すなわち、2つの水系(リーチング及び電解)のサークルを 1つの有機系のサークルが結びつけ、銅イオンの受け渡しをする形となっている。リーチングで鉱石から銅が銅イオンとして溶出
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2013.05 金属資源レポート(55)
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沈降部
有機相
水相
混合部
溶媒
図 18. ミキサーセトラー
2RH(org) + Cu2+(aq) R₂Cu(org) + 2H+(aq)抽出
逆抽出
図 19. 溶媒抽出反応式
リーチング
Stripping
電解採取
Extraction
図 20. 2 段抽出、1段ストリッピング(2E1S)
し、銅濃度が 2~5g/l と高くなった液を PLS(Preag-nant Leach Solution)と呼び、その液は溶媒抽出工程に送液される。溶媒抽出工程では、PLS をケロシンベースの有機溶媒(Vol. 比 1:1)とミキサーで混合攪拌し、滞留時間約 15 分のセトラー内で比重差で分離させて、銅分を有機相に移す。残りの銅を含まない液をRaffinate と呼び、Leach プロセスに繰り返して使用する。溶媒抽出で銅分濃度が高くなった溶媒は次にストリ
ッピング工程に送られ、銅を含んだ有機相と電解工程からの電解廃液(150g/l 硫酸液、Cu30g/l)(Vol. 比10:1)とを混合攪拌し、比重分離すると、銅は電解廃液に移動し、強電解液(Cu 50g/l, H2SO4 150g/l)となる。有機相は、溶媒抽出工程に繰り返して使用する。強電解液は電解採取工程で陽極に不溶性の鉛合金、
陰極には薄い銅の種板やステンレス製の板を使い、陰極側に銅を析出させ、その電解液は電解廃液としてストリッピング工程に繰り返される。
3.溶媒抽出ーストリッピング工程通常、溶媒抽出やストリッピングはミキサーセトラ
ーと呼ばれる設備を用いる。ミキサーセトラーは有機溶媒(油)と銅を含む水溶液を攪拌機で混合する混合部と、混合された液を静置することにより比重差で水相と有機相(油相)に分離する沈降部を組み合わせたプールのような構造をしており、比較的単純な構造をしている。構造的には溶媒抽出もストリッピングも同一の構造
をしており、違いは水相の水素イオン濃度のみである。すなわち、水素イオンの低いリーチング液では水溶液中の銅イオンが溶媒と結びついて溶媒中の水素イオンが水溶液に移動(抽出)、逆に水溶液中の水素イオンが高い電解液では電解液中の水素イオンが溶媒と結びつき、逆に溶媒中の銅イオンが水溶液中に移動(逆抽出)する。以下に一般的な 2段抽出、1段ストリッピングのフ
ロー(2E1S)を示す。
4.銅抽出試薬抽出剤(有機溶媒)としてはヒドロオキシオキシム試薬等を使用する。通常はメーカで抽出剤名が一般化しており、LIX84 と言うふうに試薬名を使用する。なお、SXでの銅抽出率は 87~95%と言われている。銅抽出試薬 LIX 622, 84, 860, 984 (Henkel)銅抽出試薬Acorga M5774, M5850 (Cytec)銅抽出試薬をケロシン 92~93%と混合して使用なお、SXの Cu抽出作用は数でみられるように pH 1.5~2 程度で最も高くなり、それよりも強酸ではCuを放出する。また、pH3 以上ではNi、Ca、Znのような不純物元素も吸着する。したがって、リーチング液
は抽出作用の高い pH1.5~2.0 に調節し、銅の吸着量を高く、また、他の不純物元素が吸着しないようにする。
5.電解採取強電解液には油滴が混入するので、そのまま電解に
供すると、カソード表面にオーガニックバーンという変色を起こす。これを防ぐため、浮選機と、無煙炭/ガーネット/シリカサンドの層からなるフィルターを通した後電解する。また、油滴を除くために Jameson Cell と言った水に高圧圧縮を行い溶解した空気を一気に減圧することで非常に細かい気泡を発生させる浮選技術を用いて油滴を電解液から除去する技術も導入されている。陰極には薄い銅の種板やステンレス製の板を使う方
法がある。銅の種板の場合、陰極全体が製品となる。ステンレス板の場合、銅を剝ぎ取り、製品とする。7日間の電解で、ステンレスカソードの場合、130~140kg/sheet の銅を回収している。
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2013.05 金属資源レポート(56)
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図 23. Jameson Cell
Some pH Isothenns for LIX© 84
3
2
1
1 2 3 4 5 6 pH
Cu2+
Ni2+
Co2+
Fe2+
Zn2+
図 22. LIX pHによる吸着曲線
図 21. 銅抽出溶媒構造式
陽極には不溶性の鉛合金(Pb-Ca-Sn ; 98―0.1―2)を使用。また、少量の Sbを添加している。また、陰極に用いられている Pbの溶解、混入を防ぐため、硫酸コバルトを 100~200 ppm添加している。電流(240~350A/m2, 2V/Cell)により、電着速度が
異なり、製品の品質を保てる範囲で、最大にする努力が行われている。発生する酸素による硫酸ミストを防ぐためプラスチックボールや界面活性剤を使用している。製品の品質は LME登録 Grade A(99.99% Cu 以
上)。主要不純物 ppm;O2(40~70), Pb(1~3), S(2~5), Fe (1~2)が主である。
Ⅳ.その他の操業例現状では硫化鉱は浮選ー乾式製錬、酸化鉱はリーチ
ングー SxEwと言う処理法選択肢が中心となっているが、1970 年代に盛んに研究された湿式精錬法を利用し、他にも幾つかの操業例が示されている。未だ一般的とは言えないが、今後、開発フローを検討する上では参考になると考えられる。
1.Morenci 鉱山2007 年モレンシ鉱山でプラントを建設し、一旦停
止したものの、現在再度操業中。リーチングで浸出率の悪い黄銅鉱主体の鉱石を選鉱で浮選処理し、得られた銅精鉱を 5~10 μmに微粉砕してオートクレーブで高温、高圧で浸出させる。得られた浸出液は高濃度の物はそのまま電解採取、低濃度の物は現有する SxEw工程で処理を行う。温度により鉱石に含有される硫黄は硫酸か元素硫黄の形で回収する。通常、湿式精錬は残渣処理に大きな費用を計上することが多いが、鉱山
で製錬する場合は尾鉱を含む多量の残渣が存在することや、得られた硫酸は、もともと外部より購入している酸化鉱リーチング用の硫酸の代わりに使用できると言ったメリットも大きく、更に既存の SxEw設備を有効に使用できる。な お、次 図 に 示 さ れ るCCD(Counter Current Decantation)とは溶出した液と残渣を分離する方法として一般的に用いられている方法であり、シックナーを数台組み合わせた仕組みになっている。基本は溶出パルプと洗浄液を反対方向に流すことであり、洗浄工程と呼ばれる。当然ながら、シックナースピゴット濃
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2013.05 金属資源レポート(57)
最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(1)―銅―
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図 26. Counter Current Decantation(CCD)
度が高いほど、洗浄効率は高くなるので、Paste Thickener と呼ばれるシックナーが用いられることも多い。
2.CESL(Sossego鉱山、Salobo鉱山、Alemao 鉱山)1996 年以来カナダ Teck 社によりブラジルVale 社
の Sossego、Salobo、Alemao の 3 鉱山を対象に 1.5
図 24. モレンシ鉱山生産概念図
tpd の Pilot Plant を長期に操業。ブラジル カラジャス地方でVale により 10,000tpa プラントを建設。元素硫黄を回収、Hematite の残渣。貴金属、Ni も回収可能。エネルギー消費量は酸素プラントを含めて3,200kWh/t Cu。
図 25. モレンシ鉱山精鉱リーチングプラント
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2013.05 金属資源レポート(58)
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3.Sepon 鉱山ラオス Sepon 鉱床は、風化鉱床または粘土が混在する熱帯性のラテライト鉱床の一種である。埋蔵銅量は約 700,000t(銅品位約 5.1%)であり、プラントは80,000t 規模まで処理能力が拡張されている。銅の実収率は全体で約 90%、鉱石から電気銅生産までに要する湿式製錬処理コストは、銅 1lb 当たり 40¢と低廉である。鉱床が大量の粘土を含む輝銅鉱で形成されていたた
め、開発までにはいくつかの技術課題があった。当初計画していた浮遊選鉱による精鉱の生産・出荷計画
は、地理的問題と産出する鉱物組み合わせの複雑さや粘土の取り扱いから断念され、最終的にはヒープリーチングによる銅生産を行うことになった。一方で、この鉱石を処理するためには多量の硫酸が必要となり、それをラオスから調達するにはかなりの経済的負担となった。よって、本プロセスでは、銅をヒープリーチング+ SxEwで回収した後の残渣から硫黄と黄鉄鉱を浮遊選鉱し、高圧オートクレーブで酸化させ、硫酸と硫酸第二鉄を生成してリーチングに用いることとした。降雨量の多い地域で酸化鉱、硫化鉱共に処理できるプロセスであり、ヒ素等への不純物対応能力も高い。
CopperConcentrate
Solution ToNickel Plant(if required)
AtmosphericLeach
WashingCircuit
Gold / SilverLeaching
Gold / SilverRecovery
Solvent Extraction & Stripping
Gold / SilverFinal ResidueTo Tailings Pond
CopperCathodes Gypsum
Electrowinning
Neutralization
Pressure Oxidation
O₂
Filtrate
Limestone
Filtrate
Filtrate
Wash
Primary PLS
SecondaryPLS
PrimaryRaffinate
SecondaryRaffinate
RecycledAcid
Lime
NaCN
Residue
図 29. CESL フローシート
図 28. Vale CESL プラント外観
図 27. 鉱山、プラント位置
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6.PLATSOL法浮選精鉱(15μm)を塩素添加の硫酸性溶液により、Cu、Ni/Co 同時浸出、回収、Au/PGM残渣も回収するプロジェクト。NorthMet(ミネソタ)開発計画中。本方法はベースメタルと貴金属を単純な 1段階浸出で処理するものであり、カナダの Lakefield Research 社が開発した。その最大の特徴は、少量の塩化物(5 ~10g/l 程度)を添加して 220℃のオートクレーブで酸素と共に高温高圧浸出により貴金属とベースメタルの両方を浸出させるものであり、これまでのバッチ及び連続オートクレーブ試験から得られた結果では、95~99%のベースメタル及び 95%を超える貴金属が回収された。本プロセスのフローシートは、破砕・粉砕された鉱石を浮遊選鉱により精鉱として回収し、それをオートクレーブで処理した後、湿式製錬プロセスを用いて、銅、ニッケル、コバルト、貴金属を同時に析出・回収するものである。本プロセスは、従来法より優れた浸出率が得られている。
7.Mt. Gordon 鉱山豪州QLD州(クイーンズランド州)の都市Mt Isa(マ
ウント・アイザ)の北約120 kmの位置にある銅鉱山。1996 年から 7% Cuの高品位 chalcocite 鉱石を、粉砕、硫酸第二鉄溶液で常温浸出、加圧浸出、SxEwの組み合わせで電気銅 50,000t/ 年生産していたが、2006 年1 月に停止。現在は通常の浮選で精鉱を生産し外販している。
で年産 50,000tの銅ワイヤーロッド、アルメニアZangezur Copper Molybdenum Combine AG で年産27,000tのプラント建設が予定されている。特徴は塩素等の試薬が繰り返し使用でき、銅がCu(Ⅰ)が鋳造前にCuOとして沈殿する。また、貴金属が回収できるのもメリットである。本プロセスの優れた点は、黄銅鉱が塩化物中では不動態皮膜を形成せずによく浸出され、硫黄元素が歩留まりよく生産されることであるが、現在の技術課題は、入手が難しい高純度の塩水が必要であること、微量元素の挙動・銅の純度が把握しにくいこと等である。
Khanong Attributes
・High grade ・Near surface ・Leachable ・Hydro power ・Long life ・Upside
Oxygen Plant
Gold Plant
Cruch & Grind Cooper ROM Pad
Leach area
Electro-winning
Solvent ExtractionCCD Train
Khanong open pit
図 31. Sepon 鉱山プロセス外観
図 32. Galvanox 法概念図
図 30. Sepon プロセス概念図
図 33. Outotec 法概念図
4.Galvanox 法銅精鉱に黄鉄鉱を触媒として添加することにより浸
出速度を速めると言うフローである。黄鉄鉱による異なる鉱物表面で酸化還元反応に伴い電子の流れが生じるガルバニック電池作用が黄銅鉱に浸出を加速し、それが本法の名前の由来となっている。特に本法は硫砒銅鉱(Enargite, Cu3AsS4)がそのままではヒ素が高く外販できないのでその処理法として適用検討がなされている。使用されるオートクレーブは、90℃の低温下で操業費は低廉とされている。
5.Outotec 法本方法は塩素で常圧下でリーチングを行われる方法
で、モンゴルMongolian Erdenet Mining Corporation
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2013.05 金属資源レポート(60)
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図 38. Las Cruces フローシート
図 34. Platsol 法反応式
+ + + +
+ +2 +
+ + +
+
+3/4 + + + +
+ + +6 + +
+1/2 + +4 + +
図 35. Platsol 法概念図
670tpdconcentrate
OpenPitMine
Rail CrushingGrindingFlotation
Autoclave HydrometallurgicalProcessing
WasteStockpile
Tailings Basin Lined CellsSX/EW
27,500tpdwaste NICKEL/COBALT 7,875 tons/year metal in precipitate
PLATINUM, PALLADIUM, GOLD 120,900 oz/year metal in precipitateCOPPER CATHODE 33,000 tons/year high purity metal
図 36. Platsol 元素別溶出率
Element Conventional PLATSOL **
Cu
Ni
Co
Fe
S
Pt
Pd
Au
99.3
95.9
>92
11.5
91.5
~0
61.1
~0
99.6
98.9
96
11.5
91.5
96
94.6
89.4
** ACTUAL PILOT PLANT RESULTS FROM LAKEFIELD
8.LAS CRUCES鉱山スペインにある Las Cruces 鉱山でもMt. Gordon
と同様に鉱石を破砕、粉砕後、硫酸第二鉄と酸素によ
図 37. Mt.Gordon(Ferric Leaching)概念図
Ferric Leachin CircuitBasic CircuitBleed
RaffinateSX
PLS Solution35-45 /l Fe
Ground Ore orConcentrate
Leachin
Oxy enLiquid/SolidSeparation Clarification
WashinTailin s
る浸出が行われている。以下にそのフローシートを示す。
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2013.05 金属資源レポート(61)
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連載
図 39. Intec 法、日鉱塩化法概念図
図 41. BioCOPプラント外観
図 42. BioCOPタンク内部
バイオ・マイニング技術を用いた銅回収プロセス
廃棄低品位硫化銅鉱バクテリア培養・接種
硫酸添加ヒープ
バイオリーチング
冷媒抽出/電解採取(SX/EW)銅浸出液
電気銅
図 43. バイオマイニング概念図図 40. BioCOP概念図
Sulfide resources
Flotation
Smeltin /refinin
Bioleach
Heap leachable resources
Heap leach
SX/EW
Cathode
Concentratefeed
Two stageBioleach Liquid
Solid Residue
Oxy en Plant
“Bioleach”
ResidueArsenicRemoval
Advance Electrolyte
Spent Electrolyte
PLSSolventExtraction
RaffinateCathode
Electrowinnin
“SX/EW”Neutralise (no heap leach available) or to available heap leach
9.INTEC法、日鉱塩化法豪州の INTEC が開発した INTEC 法は、JX日鉱
日石金属㈱が日鉱塩化法(Nikko Chloride Process)として小規模に行っており、Pilot Plant test 実施。Br/Cl 混合浴。一価銅電解採取。銅粉回収。金、銀、PGMも浸出し、回収。Geothite 残渣。操業費 10.6¢/lb。INTEC法と日鉱塩化法は両方法共に塩素浸出であるが、電解で INTEC法が塩酸浴に対し日鉱塩化法では硫酸浴となっている。
10.BioCOP TM (Alliance Copper); 好熱性酸化細菌を利用した黄銅鉱のタンク
Bioleach。温度は 65~80℃で酸素をBioleach に使用する。チリのコデルコで試験が行われていたが現在はパイロットプラントテスト終了し商業化拡張計画中止。
11.バイオマイニングJX 日鉱日石金属㈱が 2002 年よりチリのコデルコ社
と共同でバイオシグマ社を設立、遺伝子工学分野における研究活動を通じ、微生物を利用する鉱業技術の確立を目指している。現在はパイロットヒープを通じて、「有用なバクテリアの採取」「バイオリーチング条
件の最適化」「リーチング微生物の活動の遺伝子工学的な解析」などの基礎的研究開発が中心であるが、最終的には採掘後のピット底に残る黄銅鉱を中心とした鉱体を対象に鉱石を採掘せずに銅を溶出させる In-Situ Leaching への適用を目指している。成功すればこれまで採掘できないほどの低品位鉱床からの銅の回収が可能になる等、鉱業界にとって非常に大きなメリットを生じるので、その成功が期待される。
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2013.05 金属資源レポート(62)
最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(1)―銅―
連載
したがって、やはり現地製錬化へのトレンドは今後も生じてくるものと考えられるが、上記のその他の操業例で示すようにそのほとんどは湿式での取り組みであった。これは、一般に湿式は初期費用が安く、一つの鉱山に設置するには適しているが、乾式では初期費用が高くなりすぎて更に鉱害の観点からも見合わないとされていたからである。しかし、実際にはオートクレーブ等の設備を含む湿式の初期費用はかなり高く、一方、乾式はDirect Blister などの新方式の採用により、排ガス中の SO2 濃度が一定に保持できることから、硫酸設備もコンパクトになったり、クレーン設備がいらないことから建屋のコストも非常に減少するなど、乾式の初期費用も安くなってきており、十分に検討に値すると筆者は考える。いずれにしても、PP(プライス パーティション、
銅価が所定の価格を上回った際に鉱山と製錬で利益を分配する取り決め)に示されるようなどちらかと言うと製錬側に有利な条件は今は無くなり、実際のコストが設定された製錬費よりも上回っているような状況では、過去のビジネスプランは変更を余儀なくされており、現地製錬を含むプロセスも考慮していくべきである。
Ⅴ.おわりに今回はかなり長くなったが、カスタムスメルターと
言うビジネスプランを大きく変更しなければならないと考えられる現状において、将来のプロセス選定を行うに際し、出来るだけ多くの選択肢を紹介したかったためであるので、どうかご容赦いただきたい。先にも述べたが、日本の製錬所では現在の製錬費だ
けで黒字化するのは困難であり、実収率差やプレミアによる収益が大きな要素を占めている。一方で地域別でみると、比較的収益性の高い中国や南アメリカでは人件費の安さもさることながら、銅価における製錬費の割合自体が日本と比較して高く維持されている。これは、日本のように銅精鉱を全て輸入するのでは無く、自山鉱を保有するが故に、製錬費を比較的高いままに維持しているためと推測される。ただし、このようなビジネスプランは日本のようにマイナーシェアーで鉱山経営に参加する場合には適用は難しく、更に大体鉱山で得る儲けを製錬に移行しただけとなる(もちろん現地子会社においてEquity 契約とし、現地子会社との間で独自の製錬費契約を結ぶことは可能ではあるのだが、銅鉱山の儲けを製錬に移動するだけである)。