最近の遅延聴覚フィードバックに関する研究 北海道教育大学...

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Hokkaido University of Education Title Author(s) �, Citation �. �. C, �, 28(2): 61-75 Issue Date 1978-02 URL http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/4745 Rights

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Hokkaido University of Education

Title 最近の遅延聴覚フィードバックに関する研究

Author(s) 青木, 剛士

Citation 北海道教育大学紀要. 第一部. C, 教育科学編, 28(2): 61-75

Issue Date 1978-02

URL http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/4745

Rights

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青木剛土:最近の遅延聴覚フィードバックに関する研究

最近の遅延聴覚フィードバックに関する研究

  

  

剛 土

Lee(39)が初めて遅延聴覚フィー ドバック(DelayedAuditoryFeedback,以下DAF と略記)の効果

を記述してから4半世紀が過ぎた。DAFの効果は聴覚, 音声言語の臨床家, 心理言語学者, 神経生

理学者など,広範な人々の関心を呼んだ(Yates(78);青木(3)).YatesはDAF に関する研究について

総括的な概観をして,その結びに, 今後の研究課題になるべきものとして,DAFと話し手個人の問

題, DAF とことばの産生 (speechproduction) の問題, DAF 研究のための機器使用の問題をあげ

ている,Yatesの問題提起以後15年近くなる今日, 彼の提出した課題はどのように解決されてきた

のであろうか。また,新たに問題になったのは何であるか。本稿では「Yates以後」を中心に概観を

進めていきたい.

DAFというのは話し手の発声を,話し手自身にわずかに遅らせて聞かせる手続きで,遅延の時間

は0,lsec~0.2secが多く用いられる. この手続きによって話し手のことばは混乱する。 この混乱

は, 人工吃とも呼ばれているように, 単語や単語の部分の反復, 引き伸ばしなどとして現われ, は

なしことば, つまり発声活動を制御する中枢の機構の一過性の擾乱によって生じるものと考えられ

ている.Fairbanks{23}はこの制御機構には発声活動をフィ ー ドバックによって監視するような調節

のしくみが含まれていると考えている.

 

DAFの混乱的な効果は, 元来, 自然状態では観察されることのない現象なので, かなり高度の実

験装置を使用しないと実現しない。Lee以来今日まで最も多く使用されている装置は,録音,再生両

ヘッドを同時に動作させることができ, 遅延時間を変えるためにヘッド間の間隔を任意に変えるこ

とのできる型のテープレコーダーである. もちろん, 他に必要な装置もあるし, 実際に装置の工夫

もいろいろなされている. また DAF 装置についての研究報告もかなりある, しかし, これら装置自

体の研究開発には本稿では立ち入らないので, 必要があればHanley& Peters(29)や, 本稿 で引用し

た個々の論文を参照されたい。また,DAFは吃音の治療や, 聴力検査法としても使われてきたが,

これらの領域についても本稿では扱わない. 青木(3), 大和田(49), Yates(78)を参照されたい。

 

本概観の観点の第1は,発声を促すために用いられる言語材料(被験者に与える課題)とDAF効

果との関係である.第2は,物理的操作,つまり,遅延時間,フィードバック強度,提示の様式(DAF

をどちらの耳に提示するか)とDAF効果との関係である。 第3は測定技法 隔り度)その他を, 第4

は被験者の問題, つまり個人差, 男女差,DAFへの感受性, 発達, および病理的状態とDAFの効

果との関係である.そして最後にDAFを,記憶研究における作業負荷の手段として用いた研究につ

いて述べる.

DAF研究で用いられる材料 (被験者に与える課題)

DAFの事態で用いられる材料をことば(speech)に限定すると, 事態は通信工学における音声伝

送系の明瞭度試験に擬せられるかも知れない.事実,B1ack(7)はこのような発想から音節明瞭度, 文

                                     

           

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青木剛土:最近の遅延聴覚フィードバックに関する研究

章了解度(いずれも明瞭度試験に使われる指数)の試験に使われるようなDAF用の言語材料を考案

している.種々の材料の使用が可能であろうが,Yatesがいうように材料の型が異なるとDAFによ

ることばの混乱は異なるのである. このことは, どんな言語材料を選定するかによって, 被験者の

言語活動の, 内的言語過程が変ってくることを意味する.

 

語音,音節

 

材料として語の部分音/b/を単独で使用したのは Chase

 

et

 

al(18)であ る.Saxman

(55)は/da/の音を反復発声させている. 一方, B1ackおよび彼の共同研究者たちは, 明瞭度試験の標

準材料を参考として様々な音節の組み合わせを考案し」DAFがそれらの材料の音読に及ぼす効果を

研究している.例えば,Singh&B1ack(59)は, 3個の母音と5個の子音を夫々組み合わせて, 子音-

母音-子音(CVC) 型の音節の対を65組作っ た. (彼らは この材料をlogatom と呼ん でいる.logatomとは電話伝送系の通話品質の試験に使われる特別な音読材料である.)彼らはこの音節を,英語を母国語とする群とHindi語を母国語とする群とにDAFのもとで読ませて比較している. そ

の結果, 両群間に有意なDAF効果の差はなかった.

 

Shearer&Simon(58)は無意味音節を発音のしやすさによって, 易, 中, 難の3段階に分けてDAF

材料としている.相沢{2)は勘音を含む3音節の無意味語50個と,勘音を含まないそれを別々に与え

て,DAFの効果を比較している。鋤音を含まない音節の方がDAFから受けた影響が大きかったが,両方の材料ともDAFのもとでの反応はDAFを与えない場合(平常の聴覚フィー ドバック,NormaI

Auditory Feedback,NAFと略記) の反応の変動の範囲内にあったの で, DAFの効果の差はわず

かであったといえよう.

 

梶田{33), 原野・田上(30)は, 清音をラン ダムに2音節または3音節ずつにまとめたり, 行に配列し

たりして読ませた.ランダムな音節と普通の文章とではDAFの効果が異なっていて,ランダム音節

の場合は朗読を最も妨害する遅延時間は0.3sec, 普通文の場合は0,2secであった.

 

Sussman&Smith(69)は前舌母音/i/,/ ,/先/を/p/の間にはさんでCVC音節を作り,これを地と

なる句(搬送句carrierphrase)に埋めこんで読ませた.彼らはアゴの運動が発声活動の閉ループ制

御に関係していることを示すためにこの材料を用いたのであるが, その結果として, アゴの開きの

最大値, その他の指標から,DAFのもとでのアゴの運動は, 遅延の大きさ, 母音が埋めこまれた文

脈などに影響されることが示された.

 

単語,数

 

Yates{78)は,Butler& Galloway(12)(13)が用いた数字の電光表示は, 単語や句を使った場

合に生じる構造, 意味内容および音読速度の条件統制上の困難を避けることを可能にするという理

由で数字材料を推奨している.相沢{2),Robinson(53)も数字材料を使用している. 相沢は1から50ま

での暗唱による順唱, 逆唱, 51から100までの暗順唱, および乱数表の朗読を課題とした. このう

ち1から50までの逆唱がDAF効果としての混乱を最も大きく呈した.Robinsonは電光表示に

よって数字を提示し,音読速度を変えて差を見た.その結果,彼はDAF効果は音読速度の関数であ

ると主張している.Fillenbaum(25)は Stroop Color Word工nterference Testを用いている.これは,①着色した点の色

名を言う, ②黒地に白文字で書かれた色名を読む, ③当の色とは違う着色文字で書かれた色名を読

む,という課題で, ①が最も容易な課題,以下順次困難度が増すとされている.それまでのDAF研

究では課題の困難度を統制しようとした研究はないので注目してよい.なお彼は,150から249まで

の100個の数を素速く正確に言う課題や, この100個の数字をランダムに提示して読ませるという

課題も考案している.

 

年令の低い被験者では材料の選択にさらに制限が加わる. そこでYeni‐K0mshianetal(81)は子供

にとって非常に熟知度の高い, 犬, 家などの色刷りの絵を使って, これを命名させる課題で, 子ど

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青木剛土:最近の遅延聴覚フィー ドバックに関する研究

もにおけるDAFの効果を検討している。

 

文, 句

 

大部分の研究者はかなり任意な規準に従って, 童話, 小説, 聖書などから文を選択して

材料として用いている。 わずかではあるが, 文法構造, 有意味度, 熟知度を配慮して言語材料を選

択したり, 新たに構成したりしているものもいる。Singhetal(60)は Miller&lsard(46)にもとづいた

8音節の核文 (kernelsentence) を9個と, これを文法的に変形させた, 疑問形, 否定形, 受動態

の文7個の合計16個の文に対するDAF効果の差を見た。結果は,DAFの効果が文のタイプで有意

に異なり, 核文は殆ど影響を受けず, 反対に, 否定文と疑問文が大きな影響を受けることが示され

た.

 

言語以外の材料

 

Yates(79)は打鍵課題においては, 熟練した電信技士ほどDAFから受ける妨害

の影響が大きいことから, 長短の点の組み合わせに過ぎないモールス符号が彼らにとっては言語課

題になっているのだと示唆している.

 

Bradshawetal(9〉(10},Roberts&Gregory(52)は大脳半球機能の言語に関する片側優位性を明らかに

するために,DAF下で言語課題の他にピアノ演奏, 打鍵, 口笛を吹くことなどの課題を左右夫々の

耳に交替して与えた。半球優位説には関係ないが,相沢(2}もピアノ,ヴァイオリンを演奏する課題を

使っている.彼らの結果を見ると, 言語以外のネ才料においても,DAFの妨害効果が現われることが

わかる.

 

以上見てきたようにDAF研究においては,非常に多様な課題が,多様な選択規準のもとで使われ

ている.言語を材料として使う場合には主観的規準だけで選択することは避けなければならないが,

同時に自然文への近似度, 熟知度, 有意味度, 発音しやすさといった尺度の採用にあたっても, そ

れらの心理言語学的意味を十分おさえる必要があろう。

 

単語や音節を材料とした場合, それが極めて短かいものであると, 遅延時間の設定のし方によっ

ては,DAFが, それに先行する発声に重ならないようなタイミングが当然ある. したがって, そう

いう場合にはDAF下で観察する材料の前に搬送語や文を加える必要が生じよう.

 

材料が文字で提示されてそれを音読する場合 (大部分の研究) と, そうでない場合, つまり, 聴

覚的に提示された材料を反復したり(Mackay(42}), 絵の内容を口述したり, 実験者の口頭質問に答

えるなど,発声をうながす材料が他の手段で与えられる場合とでは,DAFの効果が異なるようであ

る.

物理的操作とDAF効果

Yatesの概観では, 遅延時間, フィー ドバックの強度, DAF の提示様式 (単耳, 両耳, マスキン

グ),DAFの提示の連続,断続が独立変数として扱われていた。最近の論文では,フィードバックさ

れた信号(音声) の周波数, 信号対雑音の比(signal‐to‐noiseratio,SN 比と略), 音読の速度が新た

に独立変数として扱われている.DAFの提示様式は最近,言語の大脳半球機能の非対称性の研究手

段として注目されている。

 

遅延時間

 

DAFが最大の妨害的効果を被験者の発声活動に与えるのは遅延が約0,2secの時 で

ある(Smith&Smith(62)). 現在では, 多くの研究がこれに近似した遅延時間のみを使っていて, 遅

延時間とDAF効果との関数関係についての研究の関心は既に失われたかのようである。 また, な

ぜ, 約0.2secの遅延が最大の効果をもたらすのかの検討はない。 しかし, 必ずしも常に0.2sec の

遅延が最大の混乱を起こすわけではない. たとえば, かつて, B1ack(7)は材料に子音-母音 (CV),

母音-子音(VC)の音節の組み合わせなどからなる句を用い, 遅延時間を,0,03secから0,03sec

き ざみで0.3secまで10段階設定して,ほぼ0.21secまでは遅延時間が長くなるにつれて音読の混

                                                  

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乱が大きくなることを見つけているが, その時彼は,VC音節の方が混乱が大きく, この差は遅延時

間の長い時の方が大きいことも見出している.相沢(2)はDAF下で言語材料の音読以外に器楽(ピア

ノとヴァイオリン)を演奏させ,1音符の平均の長さによってDAFの最大妨害効果を起こす遅延時

間は異なること,つまり,1音符の平均の長さが長い場合は遅延時間が0.2secよりも長くても(0.48secの遅延)DAF効果が見られたと述べている. アメリカでは既に古くからDAF のための遅延

装置が商品化されているし(Hanley& Peters{29)), 新しい装置の開発も進んでいる(Smithetal{63)

;Horii(31)). 日本においても相沢をはじめとして何種類かの遅延時間を得る様々の工夫がなされて

いるし, また商品化もされている. したがってこれらの装置によれば, 何種類もの遅延時間は容易

に得られるのだから,従来の結果に囚われることなく,遅延時間の関数としてのDAF効果の検討を

様々な面から行うべきであろう,

 

フィー ドバック強度

 

通常, フィー ドバック強度は, 被験者が話していることばの骨導フィー ド

バックを十分に遮蔽できる程度に増幅して与える(Lee{40)).聴力の個人差を考慮すると, ことばの

検知閥 (Butler& Galloway(13})または受容閥を基準にして, さらに何dB か強度を上積みするのが

巧妙な方法である.Abbs&Smith(1}はイヤホンをつけた場合とつけない場合の強度の主観的等価点

を被験者に報告させ, この等価強度にさらに30dBを加えてDAFを与えている.Cullenetal(19),

相沢(2),B1ack(8)らは, 口での発声強度とイヤホンでの音圧とが等しくなるように増幅度を設定して

いるが, 相沢はさらに, この強度比をodB として, -50dB, -30dB, -1odB, 1odB の各強度

比でフィードバックを与え,強度比の関数としてのDAF効果を検討している.その結果,強度の増

大につれて音読の速度が低下し,発声強度が増すと報告している.Bradshawetal(9}は両耳にヘッ ド

フォンをつけさせ, 片方の耳へは DAFを与え,他の耳へは何の信号も与えないことによって,無信

号の耳への気導フィードバックを減衰させる条件を設定している.

 

増幅器の増幅度を一定にしておくと, 発声強度が低い場合はフィードバック強度も低くなる.フィー ドバック強度はDAF の効果を規定するのだから, このような操作ではフィー ドバックの強

度は統制されていないことになる.つまり,Sの発声強度の強弱に無関係に,耳に常に一定の音圧しベルでフィー ドバックが与えられる時,フィー ドバック強度のコントロールができたことになろう.Yates(79)(80)は自動音量調節器を用いているが, これはフィー ドバック強度を独立変数として統制す

るため である.

 

なお, B1ackが初めに唱えた, 「骨導フィー ドバックを遮るのに十分な音圧レベル」 は, 従来, 経

験的にかなり任意の規準で設定されてきた.DAF条件下での発声活動への骨導フィードバックの役

割りを検討する意味でも, フィードバック強度の実験的な統制に関する検討が必要であろう.

 

フィードバック信号 (音声) の周波数

 

通信系の周波数特性は, その系の通話品質を規定し, 明

瞭度に影響する.DAF実験は種々の電気音響変換器を用いるので,夫々の機器は周波数特性が良く

なければならないし, また過大信号による波形歪みがあってはならない. 相沢は遅延させたフィー

ドバック音声を, ハイパス, ローパス, バン ドパス, バン ドリジェクトの各フィルターを用いて歪

ませてみて,信号の周波数帯域が広くなるとDAF効果は大となり,狭い場合には逆になることを見

つけた. 彼は特に会話音域の周波数帯の存否がDAF効果を大きく左右すると述べている.Brad‐

shaw etal(10}は音声波形を, 音声とは認識できないくらいに歪ませてDAF として与えている.

 

フィー ドバック信号と雑音の比

 

Singhら(59)(60)は, SN 比を, 雑音を与えない場合を規準として

6dB, または-6dB, および一12dB となるよう設定して, 白色雑音をDAFに重畳させて与えた.その結果と.して,SN比が大になると,音読の速度はNAF条件下では遅くなり,DAF条件下では逆

に速くなること,発声強度はSN比が大きくなり,遅延時間が長くなるに従って増大することを報告

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青木剛土:最近の遅延聴覚フィー ドバックに関する研究

している。 DAF効果の性質を,雑音による遮蔽との関係で検討している点で興味深い, Robinson

(53}は骨導からの NAFを妨害するために60dBSPLのピンクノイ ズを与えている.

 

音読速度

 

音読や発声の速度はDAFの事態では独立,従属の両面をもつ変数である。この変数を

操作する場合多くの文献では,「普通の速さで」,「普通の速さを維持して」読むように被験者に指示

している。Mackay(42){43)は,「普通の速さ」 は被験者の主観的規準で左右されると考え, 普通の速度

の他に最高速度でも音読させている。Singh‐&B1ack(59)も高速で読むか普通速度で読むかを文字で

指示しているのだが, これらの指示は結局のところ, Sの構えを操作することと解される. 一方,

Shearer&Simon(58)は, メトロノームを使って1秒に1拍の割合いで音読する練習をさせたあとで

DAF実験を行っており, Saxman& Hanley(56)は2つのランプを交互に点灯し, 点灯のタイミング

に合わせて発声させている.Robinson(53)もやはりラン プの点灯によって発声の速度を統制してい

る。 発声速度の統制は発声すべき文字や数字などの材料の提示時間を調節することによっても可能

である(青木(4))。 これは材料の提示時間を速めることで発声速度を上昇させる操作で, Millerのい

うEyevoicespanの問題に注意しながら, 瞬間露出器や,電子装置を使って時間を設定することに

よってうまくいくと思われる。

 

DAFの提示様式

 

DAF実験においては通常,両耳にDAFが与えられる.片耳にはDAFを与え

他方には別の信号という提示の様式は他覚的聴力検査に利用されてきた.Gibbons

 

 

W‐inchester

{26)は,DAF とマスキングとを組み合わせて提示し, 片耳にだけDAFを与え, もう一方の耳にはマ

スキングしない条件とマスキングをする条件を比べると, 前者の条件の方がDAFからうける妨害

が少なかったと報告している. さらに彼ら(77)は, 閥値の差が最低40dBはある片耳器質性聴力損失

者の両耳に DAF とマスキングを交互に与え,良い耳へ DAFを与えられた場合の方がその逆の場合

よりも大きなDAF効果が見られたと述べている.他覚的聴力検査の-技法としてのDAFについて

は Yates(79), 大和田{49)を参照されたい.

 

Yates(80)はシャ ドウイン グ発声をしているとDAFの妨害を受けないの ではないかと考えた.

シャドウイングとは, 他人の発声を直後に復唱することで, 吃音治療の-手段として用いられてい

る。 彼は, 一方の耳に実験者がシャドウすべきことばを与え, もう一方の耳には白色雑音, 無関係

なことば, シャ ドウしたことばのDAF, の3条件, さらに両耳にシャ ドウすべきことばを与えると

いう条件の4条件を設定した。 その結果, 無関係なことば, シャドウしたことばのDAF, の2条件

でのパフォーマンスは他の2条件よりも悪化した.Yatesは左右各耳に与えられたことばが競合す

るとパフォーマンスが悪化すると考えている。

 

両耳ともにDAFを与えるのではなく, 片耳にはDAF, 他方に様々な音刺激(無刺激も含めて)

を与えるという提示様式を考えると,上述のように様々な事態を設定できる.上記の諸研究はDAF

の下での両耳間のパフォーマンスの差を大脳の機能と結びつけていないが, 最近, 大脳半球機能の

非対称性に関する研究の手段としてDAFを用いた報告が現われてきている, この点に関しては項

目を改めて概観する.

DArFを用いた言語の大脳両半球機能の非対称性に関する研究

言語に関わる機能には大脳のどちらかの半球に優位性があるといわれている. 島田{82によると,

このことは次のような研究から明らかにされてきた. それは, 失語症の臨床統計的研究, 失語発作

の研究, 麻酔薬(sodiumamytal)による言語機能の研究,そして言語と半球優位に関する実験的研

究で, 最後の実験的研究は視知覚, 聴覚, 知能, 記憶などの側面から研究されている, と島田は述

べている。DAFに関係あるのは上記のうち聴覚的な研究で, Kimura(34)はDAF でなく両耳聴取法

                                                  

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(dichoticlistening法) を用いて多くの事実を明らかにしている. 聴覚的研究においては, 左右そ

れぞれの耳に与えた刺激への反応の優位性を, 耳とは反対側の半球が優位に機能しているからであ

ると解釈する.Kimuraの方法は両耳に別々の刺激を同時に与え,再生させる方法であるが,この方

法は 「自覚的な」 方法と呼ばれ, 記憶の変容など, 半球の優位以外の要因の影響が成績に及ぶとい

われている. そこで, 角田(71}はこの種の混乱要因を除くためにDAFを用いた「他覚的な」非対称性

研究の手法を開発した.彼は,Chaseetal(18)と同じように, 打叩課題において,打叩のフィー ドバッ

クとして音声(定常母音, 子音)や純音などを与え,DAF事態ではこのフィードバックを遅延させ

た.DAFの効果を打叩のリズム, パタンの混乱, 打叩圧力の増大を指標として測定し,DAF の強度

を増大させた時に初めてDAFの効果が現われるレベルを左右の耳について比較することによって

優位な半球を決定している.この方法を用いて角田は,母音は右耳(したがって左半球)が優位で,純音,白色雑音,ブザーなどの機械音は左耳(右半球)が優位であること,西欧人は母音/a/と1kHz

純音とに対して同じ側が優位であること, 日本人は母音と純音との優位側が異なることなどを見出

している (角田{72}(73)).

 

角田とは違って, 被験者自身の声をDAFとして与える方法で言語機能の非対称性を研究した報

告がいくつかある.Chase(16)は側頭葉の切除手術をうけた被験者に, 一方の耳にはDAFを与え,他

方には遮蔽のために白色雑音を与えた. 左側頭葉を切除されたSは左耳にDAFが与えられた場合

に,一方,右側頭葉切除の被験者は右耳にDAFを与えられた場合に夫々話す時間が延長し,発声の

強度が増すというDAFの混乱効果が見られた.この事実は,手術によって損なわれた言語に優位の

半球の機能が, 反対側で補償的に営まれるようになったことを示すものと解釈されている.

 

両耳聴取法の事態には刺激の聴取と中枢での処理が含まれ,DAFを使った事態には言語反応とそ

れから聴取されたものの中枢での処理とが含まれる.2つの事態で違うのは発声の過程だけである.それ以外の過程は同じものとみなされている.

Abbs&Smith(1)はこの仮定の検証も兼ねて, DAF

による大脳の言語機能の非対称性の実験的検討を行った. 彼らは一方の耳へはDAF(0.0,0.1,0.2secの遅延) を, 他方の耳へは白色雑音を与えた. 左右の耳でDAFの効果に有意な差があり, 右

耳に DAFを与えた場合の方が構音の誤りが多かった. 遅延時間の効果にも差があって,0.3sec遅

延の時に誤りが最も多かった.誤りは主として子音に関して見られたことから,彼らはShankweiler

& Studdert‐Kennedy(57}の考えを拡張して, 話しことばのコントロールは話し手が自分の発した音

声の, 主として子音をモニターすることによってなされ, 母音の役割りは二次的であると述べてい

る.

 

Bradshaw etal(9)(10)は Kimuraらの一連の研究を詳細に検討し,Abbs&Smith(1)においては統制

されていない利き手の要因をも顧慮して, 各種の材料を種々な提示様式で用いることによって,DAF事態での両耳聴取を検討している.彼らは初めに(9}, 左右の耳のパフォーマンスの非対称性を

検討するためにDAFは有効な手段かどうか, 耳の非対称性を引き出すためにはKimuraと同じよ

うに両耳に競合する入力を与えることが必要条件かどうか, またどのようなタイプの材料が競合的

なのかを検討した. それによると, 一方の耳には0.2sec, 他方には1.lsecと, 遅延時間を左右耳

で異ならせて,散文と単語リストを読ませたところ,右耳に0.2secのDAFを与えられた条件の方

が音読時間が延長した.DAFとNAFを別々の耳に与える条件では右耳にDAF を,左耳に NAF を

与えた方がその逆よりもDAF効果は大きかった.DAFと白色雑音を夫々の耳に与える条件では,Abbs&Smithのような左右の耳の差は見られなかった.最後に彼らは,ピアノ演奏と音読の2種の

課題を比較して, ピアノ演奏は左耳のDAFによって,音読課題は右耳のDAFによって大きく混乱

することを見出した.結局,左右の耳のパフォーマンスの差を明らかにする技法として DAF は十分

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青木剛土;最近の遅延聴覚フィー ドバックに関する研究

有効であり,また競合入力は,たとえそれがNAFを単に減衰させただけというやり方だとしても,

必要である, と彼らは考えた。 翌年(10), 彼らはさらに技法を巧妙にして同種の実験を行った. すな

わち, ①DAFを与えるのとは反対側の耳へDAFと時間的に完全に一致した別の信号を競合入力と

して与え,②楽器演奏の際にヘッ ドフォンからNAFが漏れ入るのをなくすために電子楽器を使い,

③各種の課題の型とDAFのもとでの反応の左右耳差を検討したのである.その結果,①については

右耳へ時間的に一致した歪DAF,左耳は通常のDAFを与えた場合の方がDAF効果は大きいこと,

②については,左耳への単耳DAFは,他方へNAFを提示したり,単耳のNAFよりも大きなDAF

効果をもたらすこと, ③については, 打鍵, 口笛,da‐da‐da‐dum という発声, 文の音読の順にDAF

効果が特に右耳において強くなっていくこと, が示された.

Robert&Gregory(52)は言語課題なら右耳,非言語課題(… … というパタンの打叩反復,lkHz

純音をフィードバックとする)なら左耳へDAFを与えるとDAFの妨害効果が大きいことを,一反

復ごとにDAF のフィー ドバック強度を2.5dB ずつ高めて行き, DAFによって課題の遂行ができ

なくなった時のフィー ドバック強度を指標とすることによって確かめた。

 

Kimuraの用いた両耳聴取法は, 両方の耳に異なる数系列や語音系列を与えた後にただちに再生

させ, どちらの再生率が高いかによって, 語音認知に関しては, 高い方の耳とは反対側の半球優位

性を推定する方法である。Robinson&Solomon(54}がリズムは左半球で処理される,と従来とは逆の

主張をしているが,彼らの実験では,リズムが記銘再生されているので,前述のように,「言語的な」

記憶変容がなされていることも考えられ,議論の余地のない結果とはいいがたい.これらの混乱は,

DAFによる両耳聴取法を用いると排除されるであろう.一般的にはKimuraの方法による結果を追

認する事実しかまだ報告されていないが,DAFを使うことによって言語の大脳両半球機能の非対称

性の研究に何らかの実りが期待できそうである。

   

DAFの事態では,被験者の発声は勿論反応であるがそれがフィードバックループの中で循環して

刺激となりまたそれによって発声が変化する,という刺激-反応の循環に注意しなければならない.

既述の音読速度はその意味で, 実験的統制の対象でもありまた測度でもある. 以下, いままでどの

ような測度がDAFの効果の指標として用いられてきたか見てみよう。

 

音読(発声)所要時間-音読や発声の速度

 

DAFの下では音節が引き伸ばされたり, 語などが反

復されたりする.材料の音読時間はこれらにより増加するので,音読時間の延長はDAFの効果とみ

なされる.材料の読み始めから終了までにかかった総所要時間を実際に発声された音節数で割ると,

1音節あたりの所要時間が得られる。 これはDAFによって混乱したために反復されたり挿入され

たりした音節をも含めた, 1音節を発声するのに要した時間である. 総所要時間を正しく発声され

た音節数で割ると正音節所要時間が得られる(MacKay{42)).1音節当りの所要時間および正音節所

要時間の逆数は, それぞれ, 単位時間あたりに発声される音節の数, すなわち音読の速度をあらわ

す.NAFの下での所要時間と比較して,DAF下での1音節当りの所要時間の値や正音節所要時間の

値が大きくて, その逆数, つまり音読速度の値が小さければ,DAFによって音読時間が延長され,

速度が低下したわけであるから, いちおう音節を規準とした場合のDAFの効果がみられたことに

なる。 しかし,DAF下ではその影響から逃れるために, 各自にあった適当な発声単位ごとに十分な

間合いをとって発声することがあるので, このような場合には音節を単位とした音読所要時間ない

しは速度という測度にあいまいさが残ることになる。同一材料のNAFとDAFの音読所要時間(間

合いも含めた)の比をとった時間延長率という測度が考案されている(相沢{2))。 言語単位の規準と

                                                  

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青木剛土:最近の遅延聴覚フィードバックに関する研究

いう束縛から逃れ, 発声活動にとって間合いは本来必須であるとする立場から考えるならば良い方

法である.Dalrymple‐A1ford(20)も同様な方法を採用している. 音読の所要時間や速度に関しては,

単位とする語や音節と被験者の発声活動とが十分に一致するような定義をすべきであろう.

 

音節を単位とした, 音節所要時間という測度は音読材料が一定の場合には, 正しく読まれるべき

音節数 (すなわち正音所要時間) を規準として求めるのが良いのではないだろうか.

 

音読所要時間から間合いを差し引くためには, 例えば音声を高速度レベルレコーダーで記録し,グラフの長さで調べるとか, 発声によって い接″

, 断″

 

のできるスイッチと累積計時できる時計と

を組み合わせるなどの方法をとることになろう (Breskinetal(u)).

 

発声の強度

 

DAFの効果として発声強度が増大することが以前から記述されている.しかし,常

に増大するとは限らず,逆に減少することもある.増大の場合にはDAFに影響されまいとして声を

張り上げ, 骨導フィー ドバックやヘッ ドフォンの隙間から漏れ入る NAF を頼りにして発声を遂行

しようとする被験者の意図が働くのであろう. 逆に減少の場合は, 発声にとって妨害的に作用する

DAFをできるだけ小さくすることによって乗り切ろうとする被験者の方略と考えられる.いずれに

しろ,DAFの効果の測度としての発声強度は重要である.発声強度は音圧計によって音圧レベルと

して測定できる.音声は速い振動なので,記録には高速度レベルレコーダーが使われることが多い.そして, 記録紙上にペン書きさせて実験終了後に計測される. 前述のB1ackらの一連の研究(8){59)

(60)では, このような手順によって記録された波形の ピーク値の平均をとり, 平均音節音圧レベル

(averagesyllabicsoundpressurelevel) として定義している. また, 彼らによって NAF とDAF

とでは後者の事態で有意に.SPLが増大することが確認されており, さらにDAFに雑音を加えて,信号対雑音の比(SN比) が低くなった場合にもSPLが増大することや, 文の構造(疑問文など)

や有意味度によってもSPLに違いがあることなども示されている.

 

Ratneretal(51)は同一遅延時間で同一材料を反復音読させると, 回を重ねるに従ってSPLは増大

すると報告している.相沢(2)はNAF時のフィードバック音圧を規準としてDAF時の音圧を4通り

に変化させ,DAF時の音圧が増大するにつれて発声強度が増すと述べている.Ratnereta目まDAF

下で発声強度が増すことを音響的妨害(例えば騒音)に対する共通の反応と考えているが, 遅延時

間の変化によってSPL の増減が見られる(6)(65)(5}(24)ことを考えると,DAFに特有な反応と考えた方

がよいの ではないだろうか. いずれにしろ, 発声強度の測度は様々 であって(越川(38)), どの測度を

もって発声強度とするかによっても変わってくる.

 

調音の誤り

 

DAFの下では被験者の発音は様々に変化する.しかし,この変化には明確に弁別し

定義することが困難なものもある. 最もはっきりした変化である音節の反復のみに注目したのは

MacKay(43)であるが, 多くの研究が実際に引き伸ばし, 省略, つけ加え, 置き換え, 音の歪みなど,

多くの変化を記述している. これらの調音上の種々の変化(逸脱) の評定には, ことばの非流暢さ

の判定に熟練している言語臨床経験の深い人とか, 音声学的に各種の語音をききわける修練を積ん

だ人の援助を求め(Sing&B1ack{59)), 評定の信頼性チェックを(Webstar&Dorman(76), Abbs&

Smith{1})するなどの手続きがとられることもあるが,多くの研究においては実験者自身が評定する

ことで済ませられている. 音の引き伸ばしなど, 判定に主観が混りやすい測度については, 慎重を

期して,生理学的,音響学的手段を使うことが良いであろう.この測度はDAFに固有な効果を測定

しているので, ききわけ以外の手段によって構音の誤りを確認する方法が開発されることが望まれ

る.

 

生理学的指標

 

Doehring&Harbord(22)およびHanleyetal(28}は,DAF の下でのGSRを指標とし

て用いている.King& Wolf(84}は心臓数の変化と GSR とを測定して, DAF の情緒的影響を見てい

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青木剛土:最近の遅延聴覚フィー ドバックに関する研究

る.DAFが情緒性又はarousalの水準に何らかの変化を与え, この変化が学習材料の保持に影響す

る, と考えたからである。 その結果, DAF下 でのGSR は上昇することがわかった。 ただ, 統制群

に電気ショックを与えたところ,この群もGSRに顕著な変化があらわれたことをつけ加えておく.

 

ところで,Sussman & Smith(69)はDAF の下でのア ゴの運動がDAF 条件に特有な動き方をする

ことを, 巧妙なしかけを用いて確かめている. アゴを含む調音器官が発声活動のフィードバックに

よる制御のループの中に含まれている(MacNeilageetal{44))のは確かなことであるし,調音器官の

運動へのDAFの影響はさらに研究されるべきである。

 

その他

 

いうまでもなく,上述の測度のみがDAFの効果を示すものではなく,今後の研究ととも

に, より弁別度の高い指標が見出されるにちがいない。 例えばサウンドスペクトログラフによる分

析は,Yates(78)によって既に奨められているにもかかわらず,現在でもまだ本格的な研究の報告はな

い. 音の歪み, 引き伸ばしなど, 調音の誤りとして分類される反応は, 今まで聴き取りによる評定

で捉えられていて, それ故主観性の排除ができなかったのであるが, サウン ドスペクトロ グラフの

使用によって客観的, 定量的に把握できる可能性がある.また電子計算機によって,DAFのもとで

の音声波形を高速, 多量に分析処理できれば, 研究は新しい展開を見せるであろう。

 

 

Walter(75)は, 非常にぞんざいに話す傾向があり, また誰が何を言っているか決して聞こうとしな

い初老の人は比較的DAFの影響をうけないのに対し,若い人はDAFから受ける影響が大きい,と

自分の観察を報告している。DAF効果の年令的推移は, 従来, ことばのモニタリング習慣の獲得

(Yates{78), VanRiper&lrwin(74)) の観点から研究されてきたし, 将来もまたそうであろうが, 年

令的変化を獲得の面からのみでなく,Walterのように衰退の面からとらえることも必要であろう。Walterの観察はま・た, 年令的特性のみでなく,DAFに対する個人的な感受性の差も暗示してい

る. 以下では種々の個人差とDAF 効果との関係について見る。

 

男女差

 

吃音の男女の割合は, 小学校では男子が女子の3倍, 中学校では男子が5倍であるとい

う (神山〈32}). 村田(47は多くの文献を調査した結果, 幼児, 児童の調音技能については女子優位で

あるという報告が大部分であり, また大学生においてもこの差が維持されている, という結論を得

た. 直接DAFに関係はないが興味深い.King& Dodge(37)は, 大学生女子被験者と比べて男子はNAF 下でもDAF 下でもよりゆっくり話

すと記している.Mahaffey&Stromsta(45)は, フィー ドバックされる音声の周波数のフィ ルター条

件, 男女差, 遅延時間およびフィードバック強度などをいろいろ変化させた結果, 次のことを見出

した.①女子の平均音読時間は,ラウドネスのバランスをとらなかった条件よりも,バランスをとっ

た方が有意に長いこと,②男子はフィードバック強度の影響を受けないこと,③最大DAF効果は,女子では0,2sec遅延の時に, 男子では0.18sec遅延の時に生じたこと, ④ラウ ドネスバランスを

とってフィー ドバックを強めると, すべての遅延条件に渉って音読の速度が低下すること, ⑤ラウ

ドネスバランスをとった場合,2.4kHz以上の周波数を減衰させた場合に男子は最大のDAF効果を

示し, 女子は600HZ以上の周波数の減衰によって最大DAF効果を示すこと, を報告している。 そ

して, 聴覚と言語には男子, 女子で生来的な差があるのではないかと考えて, この違いが発吃の性

差に関係するのではないかと推論している.Timmons(70〉も男女学生のDAF効果の差を検討している。 それによると, 遅延条件をランダムに

した場合には男女の反応の差は見られなかったが,条件を順序づけて,DAFにさらされたことの累

積効果を分析すると,女子ではDAFへの反応が減少するが,男子では減少しないことがわかった.

                                                   

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青木剛土:最近の遅延聴覚フィードバックに関する研究

彼はこの結果をDAF への順応の男女差と考え,さらにStromsta(68)の吃音の原因は骨導聴覚の位相

ズレにあるという仮説と関係させている.

 

Ratneretal(51)は, 8-9才の男女にDAF効果の差がなかったと報告している.

 

DAF効果の男女差の研究は,先に述べた女子に発吃が少ないという臨床的事実を,何らかの調音

技能上の男女差の観点から説明できるのではないか, という研究方向を示している点で興味深い.勿論, 調音技能が話し手の発声の聴覚的フィードバックによって支えられていることを前提にして

の方向ではあるが。

 

失語症, 精神薄弱, 精神分裂病など

 

Gold‐farbe& Braunstein(27)は, 精神分裂病児が正常児より

も外部に注意を向けることが少なく,それ故DAFに妨害されることは少ないだろうと考えた.これ

はSpilka(66)と同じ考えである. そこで, 彼らは年令8才-9才の精神分裂病児16名と正常児25名

のDAF下とNAF下の行動と発声を比較してみた.その結果正常な条件下では精神分裂病児の発声

と行動が貧弱であるが,DAF条件下では正常児は全員が発声に全体的な混乱を示すのに対して,精

神分裂病児は非常に多様な反応をすることを見出した.つまり彼らの場合,DAFを与えられても発

声が全く混乱しないものから, ひどい混乱に陥るものまでいたのである. 全体的には, 正常児群と

比べると発声の混乱が少なく,何人かはDAF下で聞かされた自分の声を他人の声だと受け取った.

 

Stanton(67}は失語症者の発声の音響的特性(持続時間と振幅)におよぼすDAFの効果は様々で,患者の反応を次のように分類できると述べている. それは, ①正常者と同じに反応する群, ②DAF

によって発声に多少の改善が見られる群,③影響を受けない群,④DAFへの反応が不定型で分類で

きない群, である.

 

Singh&Schlanger{61)は失語症 (主として表出性, 軽, 中度), 中枢性調音障害 (dysarthric), 精

神薄弱(IQ50一74)に文構造と有意味度の異なるいく’つかの文を与えた.音読時間,調音の誤りは,精神薄弱,調音障害者,失語症者の順で多くなり,失語症がDAFから最も大きな影響を受けること

が示された.

 

言語の心理過程に様々な障害を持つ者を対象とするDAFの研究はその障害内容を病理的に解明

することによって, 発声活動と, 聴覚フィー ドバックとの関係を一層明らかにするであろう.

 

年令

 

児童に初めてDAF を与えたのは Goldfarbe& Braunstein(27)であった.Chaseetal(18)は,

①DAF下の発声に現われる変化の程度と種類は年令に関係があるかどうか,②DAF下で話す際の

態度は年令と関係があるかどうかを調べた. 被験者は4-6才, 7-9才の2群で, 絵について自

由に話させる課題,、遅延時間は0.2sec一定とした. その結果, 年長児は年少児よりも DAF から受

ける混乱が大きく, また遅れて聞こえてくる声を自分のものと認めたと述べている.

 

Ratneretal(51)は, 6-13才ま での被験者を4つの年令群に分け,0.63secのDAFを与え,簡単

な文を反復音読させた.その結果,NAF下での音読速度は最年長群が最も速かった.DAF開始時に

は群間に差はなかったが, 音読を反復するにつれて, 年少群は速度が減少し, 調音の誤りが増加し

て行った.それ故彼らは Chaseeta1とは反対に,年少群の方がDAFの影響を受けやすいと考えた.

 

この矛盾を解決するために, MacKay(42)は次のような仮説の検証を試みた. それは, 被験者の年

令によって最大のDAF効果を示す遅延時間は異なるという仮説(クリティカルインタバル仮説),および発声速度が遅いとDAFからの影響が少ないという仮説であった. 第2の仮説は一般にこど

もは発声速度が遅いし,大人が故意に遅くした場合,DAF効果のピークをもたらす遅延時間は長い

方へずれることを意味し, 発声速度仮説, ピーク移行仮説と名づけた. 対象者は4-6才群, 7-

9才群,20一26才群であった.こどもは大人に比べてどの遅延時間でも大きなDAF効果を示した.最大効果を示す遅延時間は年令ごとに違い, 年少児0.524sec, 年長 児0.375sec, 大人0.2secで

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青木剛土:最近の遅延聴覚フィー ドバックに関する研究

あった. 成人が速度を下げて発話してもピークはやはり0.2sec であった。MacKayの結果はクリ

ティカルインタバル仮説を支持しており, 上記矛盾は解決されたと思われる。 ピーク移行仮説は支

持されなかったが, 彼は最大速度を決定する機制と, 語音の引き伸しを支配する機制とはかなり異

なると考えている.

 

Smith&Tierney{64}は10一18才,22一38才,42一68才の3群に0.2secのDAFを与えた。高年

令群の音読速度が最も遅くなり,構音の誤りも多かった。22一38才群のDAF効果が最小であった。Buxton{14)は60-81才の被験者は0.4secのDAFの時に最大DAF 効果を示したと報告している.

幼・児童期, 壮年期の値と比べて興味深い.

 

Cullenetal(19)は聴覚フィー ドバックによる音声の調節は何才頃から始まるのか調べた。生後24-

168時間の乳児に自分の泣き声のNAFとDAFを交互に反復して与えたところ, NAF時には泣き

声は長くなり,DAF時には短縮した。 泣き声のSPLはDAFの1回目が最も強く,DAFの2回目

には弱くなり,NAF の2回目ではさらに弱まった。この結果から彼らは泣き声は聴覚フィー ドバッ

クの調節を受けていると結論した。

 

Yeni‐K0mshian etalは3才以下の幼児に聴覚フィードバックの調節機能が作用しているか調べ

た。2才4ヶ月-2才11ヶ月児の群と1才9ヶ月-2才2ヶ月児の群を比較したところ,DAF 下で

の発声時間の延長は年長群で大, 年少群で小であり, 年少群の変動は大きかった.

 

以上概括すると年令に対して臨界的な遅延時間があるらしく, 乳幼児期から老年期までその値は

夫々異なるようである. 年令がどのような言語機能の指標なのかを明らかにすることが望まれる.

DAFと記憶研究

Kingとその共同研究者たちは, 言語材料の再生に及ぼすDAFの効果を研究している. 彼らは

DAFの事態を材料の記銘作業に対する負荷要因として扱っている. このような扱いの根拠は,Doehring(

21),

Doehring & Harbord(22),Hanley etal(28)らのDAFの生理学的変化の研究,Rankin(50)

の, DAF 下での不安はストレッサーとしての効果を持つという報告にある。

 

King(35)は221語からなる文を被験者に音読させながら, その中間でDAFを与え, 後に除去して

音読を終了させ,直後に文の内容を再生させるという手続きを用いた。DAF下で読んだ部分の再生

は悪かった.

 

King& Walker(83)は,DAF 下で読んだ材料の再生を援助するために文の内容についての助言を与

える (prompting手続き) と, DAF効果はどう変化するか見ているが, DAF十助言群はDAF なし

で助言を与えられた群よりもパーフォーマンスが悪かった。この結果は,DAF は直後再生を抑制す

ることを示唆する.

 

King(36)はDAF群とDAFなし群の音読の速度と時間を組み合わせたいくつかの条件を設定し

た.DAF群の直後再生が貧弱なのは,DAFに長時間さらされたからではないという結果を得た.

 

King& Wolf(84)は,DAF 群,中度の電気ショックを与える群,統制群の3群の直後再生及び24時

間後の遅延再生を比較している.DAF群は他の2群よりも直後再生は有意に悪かったが,遅延再生

では3群間の差がなかった.この結果を,DAF下で読まれた材料は実は刺激提示中に学習されてい

るのだが, ただ, その学習内容は遅延再生の場合にのみ現われてくるようだ, と解釈した。 これら

の研究では, 筆記による再生を命じたが, 口頭で再生させると (King& Dodge(37))DAF 群の直後

再生はひどく悪い. 遅延再生ではこの群の再生量は著しく増加するが, 統制群との差をなくすまで

には至らなかった.

 

Timmons(85は Kingらの一連の研究を追試して同じ結果を確認し,DAFは保特にではなく獲得

                                                

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青木剛土:最近の遅延聴覚フィードバックに関する研究

に影響すると考えた.

 

Murdock(48}は, DAFの妨害効果を言語材料の処理の前になさ れる前知覚的感覚保持 (preper‐

ceptualsensorystore)と,それより後でなされる知覚後の保持とを区別するのに役立つと考えて,

短期記憶の検索 (retrieval) の研究に, DAF を導入した. この考えはまだ確認されてはいない.

 

DAFが言語材料の記憶の過程の記銘に影響するのか,保持にかを解明することは,ことばのサー

ボ機構仮説のとくむこ中枢部分の機制の解明に役立つことになろう.

 

 

 

以上,種々のDAFに関する研究を概観してきた.既に確認されているDAF効果を様々な研究の

特異な技法として使う試みもある.これらの研究の成果や,本稿の各所で指摘した問題点を解明し,

その結果をまとめることとを通して, 発声活動の調節過程をより精細に明らかにすることが今後の

課題である.

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(本学講師・函館分校)

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