「中央農業総合研究センター」 ( 独) 農業・ 食品産業技術...

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「有機農業 実践の手引き」 目的と特徴 ・現在有機栽培を行っている生産者、またはこれから有機栽培に取り組む生産者にとって参考と なる具体的な技術データと生産コストについて紹介しています。 ・取り上げている事例は、「寒冷地の水稲有機栽培技術」、「関東地域のャイモ有機栽 培」、「近畿・東海地域のトウラシ類の有機栽培技術」、「バイオフューミゲーションを取り 入れたホウレンソウ、ナス等の有機栽培技術」、「暖地における有機二毛作技術」す。 連絡先:農研機構 中央農業総合研究センター情報広報課 tel 029-838-8481(代表) 成果 ・除草や病害虫防除、施肥管理を中心に、寒冷地の水稲有機栽培技術を体系化しました。 ・関東地域のャイモ栽培有機JASに適合する病害防除技術を体系化しました。 ・有機質資材と天敵を活用したとうらし類の有機栽培技術を体系化しました。 ・バイオフューミゲーション(生物的くん蒸)と土壌還元消毒中心にホウレンソウ、ナスの 有機栽培技術を体系化しました。 ・除草や病害虫防除、施肥管理を中心に、暖地の有機二毛作栽培技術を体系化しました。 技術の完成状況 ★★★★★ 140201 「中央農業総合研究センター」 ホームページに掲載 「有機農業」「実践の手引き」で検索可能 以下のURLからダウンロードできます http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/public ation/laboratory/narc/manual/index.html HPを通じてのお問い合わせも可能です> 目次 はじめに 1 寒冷地での水稲有機栽培技術 2 関東地域でのジャガイモ有機栽培技術 3 東海・近畿地域のとうがらし類の有機栽培技術 4 バイオフューミゲーションを取り入れたホウレンソ ウ、ナス等の有機栽培技術 5 暖地における有機二毛作栽培技術 平成2 5 年5 月 農林水産省農林水産技術会議事務局研究統括官室 ( 独) 農業・ 食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究セン タ ー 農林水産省委託プ ロ ジ ェ ク ト 研究 気候変動に対応し た循環型食料生産等の確立のための技術開発 有機農業の生産技術体系の確立 研究成果 有機農業 実践の手引き 有機農業に関する最新技術情報をインターネット上で公開 指導者、生産者等に速やかに伝達 全国各地で有機農業に取り組む際の参考になる 有機農業の普及拡大に貢献

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「有機農業 実践の手引き」

目的と特徴 ・現在有機栽培を行っている生産者、またはこれから有機栽培に取り組む生産者にとって参考となる具体的な技術データと生産コストについて紹介しています。 ・取り上げている事例は、「寒冷地ての水稲有機栽培技術」、「関東地域のシャカイモ有機栽培」、「近畿・東海地域のトウカラシ類の有機栽培技術」、「バイオフューミゲーションを取り入れたホウレンソウ、ナス等の有機栽培技術」、「暖地における有機二毛作技術」てす。

連絡先:農研機構 中央農業総合研究センター情報広報課 tel 029-838-8481(代表)

成果 ・除草や病害虫防除、施肥管理を中心に、寒冷地の水稲有機栽培技術を体系化しました。 ・関東地域のシャカイモ栽培て有機JASに適合する病害防除技術を体系化しました。 ・有機質資材と天敵を活用したとうからし類の有機栽培技術を体系化しました。 ・バイオフューミゲーション(生物的くん蒸)と土壌還元消毒中心にホウレンソウ、ナスの有機栽培技術を体系化しました。 ・除草や病害虫防除、施肥管理を中心に、暖地の有機二毛作栽培技術を体系化しました。

技術の完成状況

★★★★★

140201

「中央農業総合研究センター」 ホームページに掲載

「有機農業」「実践の手引き」で検索可能

以下のURLからダウンロードできます

http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/public

ation/laboratory/narc/manual/index.html

<HPを通じてのお問い合わせも可能です>

目次

はじめに

1 寒冷地での水稲有機栽培技術

2 関東地域でのジャガイモ有機栽培技術

3 東海・近畿地域のとうがらし類の有機栽培技術

4 バイオフューミゲーションを取り入れたホウレンソウ、ナス等の有機栽培技術

5 暖地における有機二毛作栽培技術

平成2 5 年5 月

農林水産省農林水産技術会議事務局研究統括官室

( 独) 農業・ 食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター

農林水産省委託プロジェ クト 研究 気候変動に対応した循環型食料生産等の確立のための技術開発

有機農業の生産技術体系の確立 研究成果

有機農業 実践の手引き

有機農業に関する最新技術情報をインターネット上で公開 指導者、生産者等に速やかに伝達

全国各地で有機農業に取り組む際の参考になる 有機農業の普及拡大に貢献

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委託プロシェクト研究(気候変動プロ) 平成25年12月 農林水産省農林水産技術会議事務局研究統括官室

対象作物、普及対象 ・水稲、シャカイモ、トウカラシ、ホウレンソウ、ナス、小麦、タマネギ、レタスなど、全国 対象農家 ・有機栽培農家、またはこれから有機栽培に取り組む農家 必要な道具 ・詳細は「手引き」の内容をご覧下さい。 関連HP http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/laboratory/narc/manual/index.html

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耕起深は 15cm 程度とします。複数年実施すると効果が高まります。

(b)2 回代かき

荒代かきから植代かきの間を 2~4 週間

あけて空けて雑草を発生させ、発生した雑

草を植代かきですき込みます。この間の水

管理は、水温を上昇させるため浅水管理と

しますが、田面が露出しないよう注意しま

す。なお、荒代かきから植代かきの間を長

くあけた方が、移植後の高い抑草効果が期

待できます。

(c)枕地ならし機構付き田植機(第 1-6

図)

移植時に田植機の枕地ならし機構を圃

場全面に使用して、植代かきから移植まで

の間に発生した雑草を除草します。

(d)機械除草(第 1-7 図)

機械除草には、株間の除草も可能な除草

機を使用します。苗が活着した移植 7~10

日後に 1 回目の機械除草を行い、その後は

1 週間間隔で 3~4 回行います。連続欠株を

防ぐために除草機の条数は、田植機の条数

に合わせます(6 条用の田植機なら 6 連の

除草機など)。

クログワ

第 1-5図 多年生雑草の発生本数(左)、クログワイ(右)

第 1-6 図 枕地ならし機構付き田植機

(5月下旬)

枕地ならし機構

第 1-7図 固定式タイン型除草機による

機械除草(6月上旬~7月上旬)

※無除草区での発生本数の変化を 7月上旬に調査

固定式タイン型除草機による機械除草(寒冷地水稲作)

20

第 2章 関東地域でのジャガイモ有機栽培技術

1.背景

大都市圏近郊の関東地域では、消費者の要望に応じた減農薬・特別栽培農産物を生産し、

生協等へ契約販売する生産組織が増加しています。このような生産体系では、使用できる

農薬が限られるため、発生する病害虫の対策に苦慮しています。とりわけジャガイモ栽培

では、そうか病や疫病等の発生に対し効果的で、かつ有機 JAS に適合した防除技術は皆無

に近く、農家は無防除での生産を余儀なくされており、ジャガイモの品質や収益性は低下

しています。このため、本研究では大都市圏近郊の関東地域のジャガイモ栽培で発生する

そうか病や疫病等を対象に、拮抗微生物や有機物のすき込み、輪作などの有効防除技術を

組み合わせ、有機 JAS に適合する総合防除システムを開発し、その有効性を実証しました。

2.ジャガイモ栽培暦と栽培の要点

茨城県は全国第 4 位のジャガイモ生産県です。ジャガイモの一般栽培では、そうか病対

策を目的にくん蒸剤(クロルピクリン剤等)による土壌消毒や種いも消毒が行われ、疫病

対策を目的にマンゼブ水和剤等が合計 3~4 回散布されます(第 2-1 図左)。しかし、現地

の有機栽培ではそうか病および疫病の対策はとられず、疫病により地上部が枯死した時点

で栽培が終了となります。塊茎が十分に肥大する前に早掘りされるため、塊茎は小さく、

収量も上がりません。今回の開発技術では、そうか病の発生を軽減させるため米ぬかをす

第 2-1図 茨城県におけるジャガイモ一般栽培と慣行有機栽培の管理作業の流れ(左)

と開発した有機 JAS適合技術によるジャガイモ有機栽培体系(右)

2月

3月

4月

5月

6月

7月

茨城県におけるジャガイモの一般栽培と慣行有機栽培における管理作業

慣行有機栽培慣行一般栽培

土壌消毒(そうか病が発生している場合)クロルピクリンくん蒸剤* 等

種いも消毒ストレプトマイシン・チオファネートメチル水和剤* 等

除草剤散布植付け後出芽前全面土壌散布

ペンディメタリン乳剤* 等

雑草茎葉散布ジクワット・パラコート液剤* 等

殺菌剤散布疫病等対象4回程度マンゼブ水和剤*

フルアジナム水和剤*

ベンチアバリカルブイソプロピル

・ TPN水和剤*

シアゾファミド水和剤* 等

圃場の準備

種いもの準備

植付け

雑草防除

生育期

収 穫

ジャガイモの春作において、有機栽培でない慣行一般栽培では、土壌消毒(そうか病等の土壌病害が発生している場合)、種いも消毒、除草剤散布、殺菌剤散布(疫病等を対象)による防除(農薬成分回数8回以上)を行っています。一方、慣行有機栽培では、雑草防除のために畦間中耕を2回程度行うのみで、

病害虫の防除は行っていません。そのため、疫病等の発生によって早期に株が枯死してしまうために、収量が低くなってしまいます。また、種いも消毒を行っていないため、種いもからの病原菌の持ち込みやジャガイモの連作によってそうか病が問題となっているケースも見られます。

畦間中耕2回程度

圃場の土壌消毒や種いも消毒は行わない

茎葉が疫病により枯死したら収穫(早堀り)6月中・下旬

2 月

3

4

5

6

7

圃場の準備

2~3月種いもの準備

3月施肥植付け

5月除草

6月疫病防除

7月収穫

開発した有機JAS適合技術によるジャガイモ有機栽培体系

輪作体系ヘアリーベッチ、レタス、トウモロコシを取り入れた輪作を行い、同一圃場へのジャガイモの植え付けは3年に1作とします。

種いも消毒 銅水和剤(コサイドボルドー*:50~100倍希釈液20分間種いも浸漬)による種いも消毒を行います。

有機物の施用

そうか病の発生しにくい土壌に改良するために、植付け当日に米ぬかを10a当たり600㎏の割合で土壌に全面混和します。

除草機械除草(畦間の中耕)2回手取り除草 1回

銅水和剤(Zボルドー*:400倍希釈液)を開花期ごろから1週間間隔で3回散布します。

疫病の防除

前作 1年目 2年目 3年目

技術実証区 ジャガイモヘアリーベッチ

レタスヘアリーベッチ

トウモロコシ

ジャガイモ

慣行有機区 ジャガイモジャガイモ

ホウレンソウ

ジャガイモ

ジャガイモ

第4図 開発したジャガイモ有機栽培技術における管理作業の流れ

施肥土壌の性質に由来する農地の生産力の維持増進を図る肥培管理を行います。(有機農産物の日本農林規格より)

59

(c)肥料成分の変化

ダイコン残渣を用いたバイオフューミゲーションの前後における土壌中無機態窒素量

の変化の例を第 4-16 図に示します。ダイコン残渣を 1.5~2t/a 投入した場合、処理前の

窒素量にかかわらず、処理後にはホウレンソウ 1 作分の窒素分(1.5kg/a)が残ります。

(d)現行との比較

現行の土壌消毒剤(クロルピクリン剤)およびふすまを用いた土壌還元消毒との効果の

比較の例を第 4-17 図に示します。

①選果場からのダイコン残渣 ②ハンマーナイフモアで細断

③耕耘→灌水→直ちにフィルムを被覆 ④ハウスを密閉する

第 4-15図 ダイコン残渣を使ったバイオフューミゲーションの手順

ダイコン残渣 1.5~2t/a で、約

1.5kg/a の窒素が投入される。

土壌 pH 全炭素(%) 全窒素(%)A農家(2011年) 埴壌土 5.5 6.99 0.55A農家(2012年) 埴壌土 6.0 5.36 0.42B農家(2012年) 軽埴土 5.2 2.68 0.23C農家(2012年) 埴壌土 5.8 4.14 0.35

BF直後には、ホウレンソウ1作分の窒素分(1.5kg/a)が残る

試験を行ったハウス土壌

第 4-16図 バイオフューミゲーション(BF)前後における土壌中無機態窒素量

31

1)ブースター法とは(第 3-5図)

(i)花さえあれば定着できるアカメガ

シワクダアザミウマをヒメハナカ

メムシ類に先行して放飼すること

で栽培初期のアザミウマ類を低い

密度に保ちます。

(ii)アザミウマ増加期に本種単独で

は防除しきれなくなった場合、ヒ

メハナカメムシ類を放飼することで、その後のアザミウマ類の増殖を抑制します。

(iii)アザミウマ密度が低くなっても、アカメガシワクダアザミウマがヒメハナカメムシ

類の餌となるので、これらヒメハナカメムシの定着が維持され、安定して被害を軽減

することができる、

という天敵利用法です。

2)ブースター法による具体的な放飼法

(i)開花初期の甘長ピーマン株に、アカメガシワクダアザミウマ成虫を 7〜14 日間隔で 2

回放飼します。株当たり 8 頭以上放飼すると定着が良く、被害軽減に効果的です。

(ii)粘着トラップ等にアザミウマ類の発生量が増加してきたら、10a 当たり 1,000~3,000

頭のタイリクヒメハナカメムシを数回に分けて放飼します。周辺環境によりヒメハナ

カメムシ類の施設内への飛込みが多い場合は、タイリクヒメハナカメムシの放飼は省

略可能です。

3)アカメガシワクダアザミウマの増殖技術

アカメガシワクダアザミウマ(第 3-7 図)は現時点で生物農薬として登録されていま

せんが、地方自治体の指導の下、採取場所と同一都道府県内に限って利用する場合は、増

殖し配布しても良いという通達が出されています(20 消安 第 11885 号 環水大土発第

090302001 号)。アカメガシワクダアザミウマの具体的な増殖法は以下のとおりです。

第 3-5図 ブースター法

第 3-6図 天敵放飼による施設甘長ピーマンのアザミウマ類防除効果

アザミウマ密度(ピーク時):対照区を 100としたときの相対値

天敵放飼による施設甘長ピーマンのアザミウマ防除効果

ダイコン残渣を使ったバイオヒューミゲーション(生物的くん蒸)の手順 83

5.タマネギの有機栽培

(1)栽培暦と要点(第 5-16図、第 5-17図)

慣行栽培では、育苗床でのダゾメット剤等による雑草防除が行われています。また、極

早生品種の本圃では、化学肥料および除草剤を用いた透明マルチ栽培が行われ、病害虫防

除は化学農薬を 5~6 回散布して行います。

有機栽培の事例では、苗床で雑草が発生し苗質が慣行栽培より劣っています。また、本

圃では雑草抑制のための黒マルチを被覆していますが、植え穴から雑草が発生しているこ

と、肥料の主体が鶏糞であるが冬作のため肥効が不十分であること、防除をほとんど行わ

ないため病害が発生していること等により商品収量が慣行栽培の7割以下となっています。

これに対し、開発技術では、地床での陽熱消毒による雑草防除を行います。また、苗床

や本圃では市販の有機質肥料を使用し、マルチ被覆時期を早めることによる雑草防除や年

内から銅剤による防除を行うことで、慣行の約 8 割の商品収量を得ることができました。

上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下

苗床施肥

播種

本圃施肥

定植

収穫

マルチ

手取り

苗床 ○

本圃 ○

苗床 ○

本圃 ○ ○ ○ ○ ○

施肥

病害虫防除

1月 2月 3月 4月

作業

雑草対策

8月 9月 10月 11月 12月

陽熱消毒

育 苗

第 5-16図 タマネギ有機栽培の管理作業

第 5-17図 タマネギ有機栽培の要点 冬作タマネギ有機栽培の要点

(暖地二毛作)

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越冬後の

ロータリー耕

枕地ならし機構付き田植機

枕地ならし機構

水田プラウによる秋の反転耕

水稲有機栽培における 多年生雑草も除草可能な機械除草体系

目的と特徴 ・雑草が多発する水田でも除草効果が高く、乗用作業が可能な除草体系を開発しました。 ・栽培前年秋に水田プラウによる反転耕を行い、越冬後ロータリー耕を実施した後に、2~4週間程度間隔をあけた2回代かきを行います。移植には枕地ならし機構付き田植機を使用し、機械除草には株間除草も可能な除草機を使用します。

連絡先:岩手県農業研究センター プロジェクト推進室 tel 0197-68-4412

成果 ・この体系は一年生雑草、多年生雑草の両方を同時に除草可能で、雑草害による減収を防ぐことができます。 ・歩行型除草機を使用した除草体系に比べ、除草コストは約5,000円/10a低下します。

株間除草機

乗用作業!

発生する雑草の約80~90%を除草 多年生雑草※1にも効果が高い

有機慣行体系※2に比べ 労働時間 約25% 除草コスト 約70% ※1 実証体系における対象雑草は「クログワイ」、「シズイ」 ※2 有機慣行体系は「歩行型中耕除草機」+「手取り除草」

クログワイ

(多年生雑草)

多年生雑草に

効果が高い!

2~4週間隔の2回代かき

雑草発生量減少

初期除草の

安定化

技術の完成状況

★★★☆☆

140202

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委託プロジェクト研究(気候変動プロ) 平成25年3月 農林水産省農林水産技術会議事務局研究統括官室

対象作物、普及対象 ・水稲、東北太平洋側地域 対象農家 ・有機栽培米の生産を行う経営体 必要な道具 ・浅耕可能なプラウ(水田プラウ等)、枕地ならし機構付き田植機(メーカーにより呼称が異なります)、株間除草が可能な除草機(固定式タイン型等) 関連HP(岩手県農業研究センター) http://www2.pref.iwate.jp/~hp2088/seika/h24/fukyu_02.pdf

その他 ・有機JAS認証を取得する場合は、導入する技術の適用の可否を認証団体に確認すること。

図3 プラウによる秋耕起の多年生雑草への効果 注1)プラウの耕起深は約15cm 注2)プラウ耕、ロータリー耕は前年秋に実施 注3)根雪期間:2か月程度

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

2009 2010 2011 2012

ロータ

リー耕

プラウ耕

個体数(本

/㎡)

シズイ

0

50

100

150

200

250

300

2009 2010 2011 2012

ロータ

リー耕

プラウ耕

個体数

(本/㎡

)

クログワイ

図2 除草効果と収量(2010~2012年の3ヵ年平均) 注1)実証区は図1の除草体系を実施

対照区は、プラウ耕、2回代かき、慣行田植えを実施し、機械除草を行わなかった試験区

注2)水稲品種は「ひとめぼれ」、施肥量は6Nkg/10a

表1 10a当たり除草コスト(円)〔経営規模5ha〕

注1)労働費の単価は、平成24年度I市農作業標準賃金より1,250円/時間 注2)機械償却費は実耐用年数法(法定耐用年数の1.5倍)で試算 注3)実証除草体系の機械除草は4回 注4)有機慣行体系の除草体系は、歩行型除草機2回、手取り除草2回

変化した主な費目 実証除草体系 有機慣行体系 増減 備考

燃料費 1,504 1,673 -169 増加分:機械除草 減少分:秋耕起効率向上

機 械 費

田植機 676 0 676 多目的田植機(枕地ならし付き)を使用

除草機 3,227 1,699 1,528 実証:除草アタッチメント 作業能率:0.25h/10a 慣行:歩行型4条 作業能率:0.5h/10a

水田プラウ 3,521 0 3,521 12インチ3連リバーシブル(14~22kW(20~30PS)対応) 作業能率:0.16h/10a

小計 7,424 1,699 5,725

労働費 3,612 14,400 -10,788 労働時間 実証:2.89h/10a 慣行:11.52h/10a

合計 12,540 17,772 -5,232

プラウによる

秋耕起 2回代かき 枕地ならし機構付き

田植機 株間除草機

10月~12月 4月下旬~5月中旬 5月下旬(植代3~5日後) 6月上旬~7月上旬

4月上~中旬

ロータリー耕

多年生雑草の塊茎を 土壌表面に出し、寒気にさらす。

荒代から植代までの間隔をあけ、雑草を発生させ、植代で発生した雑草をすき込む。

田植機の枕地ならし機構を圃場全面に使用し、植代から田植えまでに発生した雑草をすき込む。

田植え7~10日後に1回目、以降1週間間隔で3~4回機械除草を行う。

図1 新たな機械除草体系

374

153

442

332

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0

実証区

対照区

実証区

対照区

A圃場

B圃場

雑草乾物重(g/㎡)

一年生雑草 多年生雑草

収量(kg/10a)

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水稲有機栽培の低コスト初期導入技術としての チェーン除草

目的と特徴 ・小規模の試行的栽培から有機栽培に取り組む農家にとっては、市販の動力除草機の導入は負担の大きい投資となります。そこで、安価に小面積を手軽に処理できる雑草低減技術として独自機構をもつ軽量なチェーン除草機(総重量 7kg)を開発しました。

・チェーン除草は植条に対して直交方向や斜方向に作業してもほとんど欠株を発生させないため、 不整形水田や枕地も作業できます。また、市販除草機が不得意な初期除草で特に有効です。

連絡先:新潟県農業総合研究所 tel 0258-35-0823

成果 ・1葉展開程度の1年生雑草を主な対象として、5月下旬から6月上旬の成苗(葉齢4.5-5.5)移植後2-4日目(植代から1週間以内)にチェーン除草機を牽引します。 ・その後も新たに発芽してくる雑草が活着する前に5-7日間隔で最高分げつ期頃まで4-5回作業すると、出穂期の雑草が半減し、減収を抑制できます。

初期投資 (制作費)

2万円/機

作業時間※

30分/10a X 5回

雑草量 (出穂期)

半減

※ 他の除草方法を組み合わせる

場合は時間数要加算

移植後3日目の 作業でも欠株は ほとんどなし

引抜かれて

田面水に浮遊した

コナギやホタルイの

幼芽

水稲移植 1ヶ月後 チェーン

除草区

手取り 除草区

無 除草区

技術の完成状況

★★★★☆

140203

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委託プロジェクト研究(気候変動プロ) 平成25年3月 農林水産省農林水産技術会議事務局研究統括官室

対象作物、普及対象 ・水稲、全国 対象農家 ・小規模栽培の試行から有機農業に取組もうと考えている農家 必要な道具 ・チェーン除草機 関連HP(新潟県成果情報) http://www.ari.pref.niigata.jp/nourinsui/seikatop_index.html

農家水田における実証例 移植後 3、7、14、21、28日目にチェーン除草を実施しました。 30-40分/10a X 5回の作業により、雑草は半減し、周辺慣行化学水田の9割程度の収量が得られました。 雑草調査: 7/31 坪刈り調査:9/26

チェーン除草機(6条用)の構造 ・角棒とチェーンをヒル釘を用いて接続することでチェーンの接地位置が固定されるため、除草ムラが少なくなります。またチェーンの浮き上がりが防止されて接地圧が高まるため、軽量化しても除草効果を維持できます。 ・ヒル釘をジグザグに配置するのは刈株などの夾雑物の絡み防止のためです。 ・ヒル釘頭部の凹みを万力などで挟んで平滑に伸ばしておくと夾雑物が絡みにくくなります。

作業上の留意点 ・除草作業は稲に泥が被らないように 湛水深5-10cmで行います。田面に 浮遊した雑草の再活着を防ぐために 移植後40-50日間は湛水深を維持し ます。 ・チェーン除草は雑草根絶技術ではないため、水稲の生育が雑草よりも優勢になるような 栽培条件を整える必要があります。 ・活着して葉齢の進んだ雑草や塊茎雑草に対する除草効果は期待できません。 ・土壌表面が容易に攪拌できる程度に柔らかい状態でないと除草効果は劣ります。

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成果 ・発酵肥料は、米ぬか、おから、籾殻を混ぜて発酵させた肥料です。秋~春に200kg/10a程度施用します。

・深水管理は、10cm以上を7月中旬まで維持します。 ・アミミドロは、硝酸態窒素濃度の高い用水で発生しやすいと考えられます。

アミミドロの遮光により雑草の生育が抑えられます湛水の長期化により水稲収量が増加します

目的と特徴 ・先進有機水稲栽培農家の雑草抑制要因の一つとして、アミミドロ等の藻類が発生し植代後すぐ に田面を覆い尽くすことによる遮光効果が明らかになりました。 ・水稲生育向上要因の一つとして、移植前湛水期間の長期化による湛水土壌中アンモニウム態窒 素の蓄積効果が明らかとなりました。

連絡先:栃木県農業試験場 tel 028-665-7072

9月8月7月6月5月4月11月・・・・・

発酵肥料施用

米ぬかくず大豆ペレット施用

移植(成苗ポット疎植)

2回目代かき

収穫

深水管理中干し移植前30~40日湛水

間断灌水

または

掛け流し

リン酸グアノ施用

移植前湛水期間の長期化により土壌中アンモニウム態窒素が蓄積し、水稲の生育・収量が向上します。

硝酸態窒素含濃度の高い用水を用いた水田では、アミミドロが発生しやすく田面を遮光します。

1年生雑草を抑制 有機転換~4年目まで安定的に収量確保

水稲生育向上 雑草生育抑制

技術の完成状況

★★★☆☆

140204

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委託プロジェクト研究(気候変動プロ) 平成25年3月 農林水産省農林水産技術会議事務局研究統括官室

対象作物、普及対象 ・水稲、硝酸態窒素濃度の高い(2mg/L以上)の用水を用いる水田地帯 対象農家 ・水稲有機栽培農家 必要な道具 ・ポット育苗専用田植え機 関連HP http://inasaku.or.tv/kenkyujo/ その他

0

10

20

30

40

50

5/15 6/4 6/24 7/14

(月日)

代かき

アミミドロ等の乾物重(g/

m2)

0

1

2

3

4

5

6

7

8

6/1 6/21 7/11 7/31 8/20 9/9

5日湛水 肥料なし

5日湛水 肥料あり

40日湛水 肥料なし

40日湛水 肥料あり

月日

アンモニウム態窒素濃度(m

g/L)

0

100

200

300

400

500

600

700

2009 2010 2011 2012

有機転換

慣行収量

(kg/

10a)

0

5

10

15

20

25

30

0

50

100

150

200

2009 2010 2011 2012

発生量乾物

(8月上旬)

発生本数

発生量乾物(g/㎡

発生本数(本

/㎡)

図1 有機転換水田におけるアミミドロ等の発生状況 (2011年 転換3年目 エラーバーは標準偏差) 注 調査した2010年~2012年の3年間は毎年同じ ように発生し増殖する傾向があった。

図3 移植前長期湛水および発酵肥料の施用が土 壌溶液中アンモニウム態窒素濃度に及ぼす影 響(ポット試験)

図4 調査水田の水稲収量の経年変化

図2 有機転換水田のコナギの発生量 注1 2009年は6/15の発生本数(乾物重は未掲載) 注2 いずれの年も水稲の生育に影響を及ぼすほ どの発生はなかった。

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畦畔板によるイネミズゾウムシの防除法

目的と特徴 ・イネミズゾウムシの越冬後の成虫は、おもに移植直後の水田に畦畔から歩いて侵入します。 ・この技術は有機栽培など、農薬を用いた化学的防除ができない場合に、田面に畦畔板を用いた 「壁」を作って成虫の侵入からイネを守るものです。 ・畦畔板(波板)と支柱(篠竹など)があれば実施することができます。

連絡先:福島県農業総合センター 生産環境部作物保護科 tel 024-958-1716

成果 ・田植え後、速やかに水田の全周に畦畔板を設置すると、イネミズゾウムシ成虫の侵入を 抑えることができます。 ・設置にかかるコストは、100m×30m(30a)のほ場1枚で労働費を含めて約2万円でした。

技術の完成状況

★★★★★

140205

作業員2人で設置が可能です。→

畦畔板で、田んぼをぐるり

←田植機に取り付けて、畦畔板を 設置する専用機械もあります。

田んぼを畦畔板でぐるりと囲んで、歩いて水田に入ろうとする イネミズゾウムシの侵入を防ぎます。

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委託プロジェクト研究(気候変動プロ) 平成25年12月 農林水産省農林水産技術会議事務局研究統括官室

対象作物、普及対象 ・水稲、全国 対象農家 ・有機栽培米生産者 必要な道具 ・畦畔板(波板)、支柱(篠竹を利用するとよいでしょう) 関連HP(成果情報) http://www4.pref.fukushima.jp/nougyou-centre/kenkyuseika/kenkyu_seika_H23.html

その他 ・田面全体をすき間なく囲むことが必要ですが、水口と水尻部分は、必要な時に一部分だけ 波板を開けられるようにしておきましょう。(前ページの写真は一部を開けています)

イネミズゾウムシの成虫が水田内に侵入してからでは効果がありません。

田植え後は速やかに畦畔板を設置し、成虫を侵入させないようにしてください。

畦畔板を設置したら、倒れないよう支柱で固定してください。

図1のように、試験の結果からは、水面からの高さが5cmあればイネミズゾウムシの侵入を抑制できることが分かりましたが、田面の水位は変動することがありますの

で、設置時には畦畔板の上端を 水面から高さ10cm程度出しておいてください。

田植機に装着して、畦畔板の設置が できる専用機械もあります。(図2) 100m×30mの30aほ場に設置した場合の 作業時間と費用の試算結果は右の表1 のとおりです。

図2 畦畔シート埋設機FS((株)コンマ製作所製)

0

50

100

15cm 10cm 5cm 1cm

水面から畦畔上縁部までの高さ

割合(%)

畦畔板の内側にいた(畦畔板を乗り越えなかった)虫の割合(%)

図1 水面から畦畔板上縁部までの高さがイネミズゾウムシの移動に及ぼす影響   (畦畔板の内側に成虫を放虫し、1日後の調査で成虫がいた場所の割合)

表1 畦畔板設置に要する時間および費用(100m×30mのほ場あたり。単位:時間、円)

専用機械 手作業

時間 作業時間 0.6 1.0

労 働 費 891 1,620

資 材 費 18,200 18,200

燃 料 費 149 0

専用機械の減価償却費 857 0

費用計 20,097 19,820

注:専用機械による設置費用は、以下の条件で試算した。 ・作業員2人で設置する。(手作業の場合も作業員2人で設置) ・1台の機械で設置する面積は年間360a。 ・労賃の単価は832円/時間。 ・田植機本体の減価償却費は含まない。

項   目

費用

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土壌のケイ酸供給力に基づいた斑点米被害抑制技術

目的と特徴 ・水稲への土壌のケイ酸供給力(可給態ケイ酸含量)が低い水田が増えています。ケイ酸供給力が低いと割れ籾が増加し、カメムシの玄米吸汁による斑点米被害が助長されます。 ・ケイ酸供給力が低い地域の圃場に対しては、ケイ酸資材を施肥することで籾殻のケイ酸濃度を高め、割れ籾の発生を抑制します。 ・ケイ酸資材としては、有機栽培の場合、鉱さいケイ酸質肥料(ケイカル)、熔成りん肥(熔リン)、籾殻低温焼却灰などのJAS有機対応資材を使用します。

連絡先:農研機構 東北農業研究センター tel 019-643-3466

成果 ・ケイ酸資材を追肥に用いる事で籾殻のケイ酸濃度を高めることができます。 ・各地域の普及指導機関が定めた基準にしたがって、ケイ酸供給力の低い地域では基肥も含めてケイ酸資材を用いた土作りが効果的です。

技術の完成状況

★★★☆☆

140206

斑点米が増加!

割れ籾が多い!

ケイ酸資材の施肥

で割れ籾抑制

割れ籾半減

10aあたり

基肥120〜200kg

追肥40kg (ケイカル施肥の場合)

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委託プロジェクト研究(気候変動プロ) 平成25年12月 農林水産省農林水産技術会議事務局研究統括官室

対象作物、普及対象 ・水稲、東北地域 対象農家 ・有機栽培米の生産を行う経営体等 必要な道具 ・背負い式動力散布機、ブロードキャストなどのケイ酸資材散布機 関連HP(東北農業研究センター) http://www.naro.affrc.go.jp/tarc/index.html

その他 ・籾殻を400〜600℃で焼却した灰は高いケイ酸肥効を持つことが確かめられており、今後期待できるケイ酸資材として開発が進められています。

0

5

10

15

20

25

0 100 200 300 400 500

籾殻中のケイ酸含量(g

/100

g)

土壌中の可給態ケイ酸含量(mg/ 風乾土kg)

40

50

60

70

80

90

5 10 15 20 25

割れ籾率

籾殻中のケイ酸含量(g/100g)

15

20

25

30

35

50 60 70 80 90

斑点米率

割れ籾率

0

5

10

15

20

25

30

0

20

40

60

80

慣行 有機 有機 慣行 有機 慣行 有機 有機 慣行 有機 有機

秋田1 秋田2 岩手1 宮城2

可給態ケイ酸

籾殻ケイ酸含量

y

ヤPC_

iSiO2mg/100g

」yj

kPC_ワハ

iSiO2

j

籾殻ケイ酸含量(SiO2%)

土壌可給態ケイ酸含量(SiO

2m

g/100g乾土)

図2 土壌のケイ酸供給力が籾殻中のケイ酸含量、割れ籾および斑点米発生量に及ぼす影響 図中の各点は異なる水田土壌で栽培された水稲の計測値、割れ籾率および斑点米率は逆正弦変換値

図3 土壌のケイ酸供給力と斑点米被害度の関係 図中の各点は異なる水田土壌で栽培された水稲の計測値

斑点米被害度は斑点米率の逆正弦変換値

図4 籾殻低温焼却灰 (高田エンジニアリング提供)

図1 東北各地の有機栽培土壌の可給態ケイ酸および籾殻ケイ酸含量

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北部九州における水稲の有機栽培技術体系

目的と特徴 ・水稲の有機栽培における育苗技術を開発しました。 ・トビイロウンカの被害を回避する栽培法を明らかにしました。 ・水稲の有機栽培技術の体系を組み立て、経営試算を行いました。

連絡先:佐賀県農業試験研究センター tel 0952-45-8808

成果 ・各有機質資材の窒素施用量がカニ殻で1.5g/箱以上,魚かす由来液肥で1.0g/箱の2回施用(1葉期と2葉期)で化学肥料での中苗育苗と同等の苗質が得られます。 ・作期の遅延または7月下旬の窒素含有率を減らすことで、トビイロウンカの被害を回避し、安定した収量が得られます。 ・組み立てた技術を現地で実証した結果、収量は慣行と同程度、粗収益は県慣行の2.3倍、農業所得は県慣行の4.3倍となりました。

・塩水選開始から温湯消毒開始までの時間は1時間以内。 ・魚かす由来液肥やカニ殻を施用

・中苗移植 ・6月25日以降移植 ←トビイロウンカ回避

・菜種油かす

(地力や品種に応じて施用)

・無施用 ←紋枯病回避

基肥

穂肥

雑草

対策

移植日

育苗

・代かきの間隔を10日間あける ・深水管理 ・米ぬか150㎏/10a ・除草機 移植10,20,30日後に実施

組み立てた技術を現地で実証

収量は450㎏/10aで 農家慣行と同等

粗収益は 県慣行の2.3倍

農業所得は 県慣行の4.3倍

中苗移植 魚かす由来液肥の施用

トビイロウンカ

紋枯病

株間も除草できる除草機

技術の完成状況

★★★★☆

140207

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委託プロジェクト研究(気候変動プロ) 平成25年3月 農林水産省農林水産技術会議事務局研究統括官室

対象作物、普及対象 ・水稲、北部九州地域の普通期栽培 対象農家 ・水稲の有機栽培を新たに栽培する農家 必要な道具 ・温湯消毒機、除草機 関連HP http://www.naro.affrc.go.jp/karc/prefectural_results/suiden/028866.html

その他 ・育苗でなたね油かすを施用する場合は、カビの発生を防ぐために①播種3日前の施用、②床土は乾燥したものを用いる、③苗底への施用のいずれかの方法を実施する。

図2 移植時期とトビイロウンカの発生量 図3 稲体窒素含有率と トビイロウンカの発生量 注1)品種:夢しずく 中苗機械移植 栽植密度20株/㎡ 防除:なし

施肥:牛糞堆肥1t、発酵鶏糞100㎏/10a、菜種油粕30㎏ 穂肥なし 2)トビイロウンカ成幼虫数は成熟期前の第3世代の最多頭数。

注1)異なる施肥区を設けて行った。

2)トビイロウンカは9月中旬に調査

表1 中苗育苗における有機質肥料の施用量と苗の形質

項目 有機実証ほ慣行栽培

反収(㎏/10a) 467 471

販売単価(円/㎏) 500 219

副産物価格(円/10a) 0 6,084

売り上げ(円/10a) 233,609 103,076

変動費小計(円/10a) 40,445 38,694

固定費小計(円/10a) 57,519 45,613

支出合計(円/10a) 97,964 84,308

146,845 34,051

6,119 1,645

粗収益

生産費

所得(円/10a)

労働時間当たりの純利益(円/時)

表3 実証圃における有機水稲の経営試算

カニガラ

N-1.5g/箱

菜種油かす

N-1.5g/箱

有機液肥 1.0g/箱

×2回

化学肥料 N-0.8g/箱

無肥料

図1 中苗育苗における有機質肥料の 施用量と苗の形質

実証圃の収益性は、県慣行栽培と 比較して単価は2.3倍で、収量は ほぼ同等であったため、粗収益は 2.3倍、農業所得は4.3倍と試算さ れた。

全窒素 現物

(g/箱) (g/箱) (㎝) (g/100本)(乾物重/草丈)

(mg/箱)

無肥料 - - 12.5 2.0 0.16 556なたね油かす 1.0 16.7 15.2 2.3 0.15 865なたね油かす 1.5 25.0 17.9 2.5 0.14 1308なたね油かす 2) 2.0 33.3 21.5 2.4 0.11 1349カニがら 1.0 33.3 14.9 2.2 0.15 730カニがら 1.5 50.0 16.9 2.4 0.14 892魚かす液肥2回散布 2.0 33.3 17.5 2.8 0.16 -化学肥料 0.5 12.5 15.6 2.7 0.18 926化学肥料 0.8 20.0 17.4 2.7 0.15 1080

注1)播種は2008年5月29日、2009年5月26日。調査は2008年29日齢、2009年34日齢。 2)なたね油かす窒素2.0gは2008年のデータのみ。  床土は山土と籾殻くん炭を容量比2:1で混合。  品種「夢しずく」、播種量は乾籾100g/箱。施肥は播種当日に床土に混合。

茎葉の窒素吸収量

肥 料

施用量草丈 充実度

茎葉の乾物重

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有機栽培イネに特徴的な内生細菌及び 有機栽培育苗土の病害抑制機能の評価

目的と特徴 ・有機農業の病害抑制効果の科学的根拠を得るため、イネの細胞間隙に生息する微生物(内生 菌)や育苗土中の微生物に有機栽培と慣行栽培で違いがあるのか解析しました。 ・有機栽培イネに特徴的な微生物が、いもち病やイネもみ枯細菌病などの病害を抑制する効果があるか調べました。 ・イネの有機栽培育苗土とそこに含まれる微生物が病害抑制効果をもつか調べました。

連絡先:東北大学 農学部 tel 022-717-8659

成果 ・有機栽培イネと慣行栽培イネの内生細菌を比較した結果、有機栽培イネに特徴的な菌が存 在することを示しました。 ・有機栽培育苗土に含まれる微生物は慣行栽培に比べて多様性が高いことが分かりました。 ・単離した有機栽培に特徴的な内生細菌の中には、いもち病やイネもみ枯細菌病に抑制的な 効果を持つものが存在することを示しました。 ・有機栽培の育苗土にはイネもみ枯細菌病やイネ苗立枯細菌病の抑制効果があることを明ら かにし、有機栽培育苗土から同様の効果をもつ細菌を分離しました。

有機農業 慣行栽培水田 有機栽培水田

イネの細胞間隙に生息する菌(内生菌)を比較

有機栽培イネに特徴的な菌を分離(35菌株)

有機栽培の育苗土

土壌に生息する菌の分離

いもち病

有機農業における病害抑制機能に内生細菌等の生物的要因が 関与していること示す科学的知見を得た

イネもみ枯細菌病 による苗腐敗症

病害抑制機能 の評価

比較

技術の完成状況

★☆☆☆☆

140208

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委託プロジェクト研究(気候変動プロ) 平成27年1月 農林水産省農林水産技術会議事務局研究統括官室

対象作物、普及対象 ・水稲、全国 その他(留意点) ・いもち病に対する効果は弱く、発病を完全には抑えることはできません。 ・単離した菌の安全性については今後の評価が必要です。

図2. 有機栽培育苗土のイネもみ枯細菌病抑制効果 有機栽培育苗土にイネもみ枯細菌病菌を接種した種子を播種して栽培したところ、苗腐敗症の発病抑制効果が認められ、その効果は熱処理滅菌によって失われた。 同様の効果は福島県の有機農家の自家製育苗土(写真)の他、秋田県、宮城県、岩手県、栃木県、静岡県の有機農家の自家製育苗土や市販の自然育苗用土(㈲花巻酵素)でも認められた。

慣行栽培育苗土

有機栽培育苗土

イネもみ枯 細菌病菌接種

育苗土の 滅菌処理 - -

- -

+ +

+ +

図3. 有機栽培育苗土から分離した細菌(W6株)処理 によるイネもみ枯細菌病抑制効果 W6株(Pseudomonas sp.と推定される)を施用した 慣行栽培育苗土にイネもみ枯細菌病菌を接種した 種子を播種し、9日後の苗腐敗症の発病度を調査 した。

イネもみ 枯細菌病菌

接種 - - + +

発病度

0

20

40

60

80

100

水処理 W6

0

20

40

60

80

100

Control AZ2

pg

fu

ng

al

DN

A/n

g r

ice

DN

A

いもち病菌バイオマス

水処理 図1. 有機栽培に特徴的な内生細菌(AZ2株)を施用したイネにおけるイネいもち病菌の増殖抑制効果 AZ2株(Pseudomonas sp.と推定される)を種子と培養土に施用して栽培したイネの葉鞘を用い、葉鞘裏面接種法によっていもち病菌を接種し、48時間後の感染・増殖をいもち病菌のバイオマス量を利用して評価した。

水処理

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麦有機栽培の雑草発生の特徴と雑草量低減技術

目的と特徴 ・麦を有機栽培した時の雑草発生の特徴と除草剤を使わずに雑草を減らす技術を検討しました。 ・麦を有機栽培すると一般的な圃場に比べて多様な雑草が発生、残草します。 ・水稲収穫後に耕起を2~3回行う、麦の播種時期を少し遅らせる、麦播種後に米ぬかを400kg/10a以上で土壌表面に散布するなどを行うと雑草量を減らすことができます。

連絡先:農研機構 九州沖縄農業研究センター tel 0942-52-3101

成果 ・麦の有機栽培圃場では、8~9種類の多様な雑草が繁茂します。 ・水稲収穫後、麦播種までに2~3回耕起し、麦播種を遅らせると雑草害が出ない程度に雑草

量を減らすことができます。 ・麦播種後に米ぬかを400kg/10a以上散布すると30%以上雑草を減らすことができます。

技術の完成状況

★☆☆☆☆

140209

有機栽培では多様な雑草が繁茂

雑草害が出ない程度に雑草量を減らすことが可能

米ぬかを散布した圃場

・水稲収穫後に耕起 ・播種時期を遅らせる ・麦播種後に米ぬか散布

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委託プロジェクト研究(気候変動プロ) 平成25年12月 農林水産省農林水産技術会議事務局研究統括官室

対象作物、普及対象 ・麦類、暖地・温暖地 対象農家 ・麦類を有機栽培したい農家 必要な道具 ・米ぬかを散布する機械 関連HP(成果情報) http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/laboratory/narc/manual/046975.html

その他 ・播種時期を遅らせる晩播は播種量の増量が必要であったり、収穫時期がやや遅れることがあります。

米ぬかの散布による雑草量低減効果(雑草乾物重は無処理に対する割合)

圃場A 圃場Bヤエムグラ スギナタデ類 ミチヤナギスズメノテッポウ タデ類カズノコグサ アメリカフウロスズメノカタビラ スズメノテッポウハナイバナ ヤエムグラミチヤナギ ノミノフスマママコノシリヌグイ スズメノカタビラ

ハナイバナ

有機栽培している麦栽培圃場に繁茂していた雑草の種類の事例

水稲収穫後の耕起と晩播による 雑草量低減効果

(横軸の回数は水稲収穫後の 耕起回数)

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有機JAS適合技術によるジャガイモ有機栽培体系

目的と特徴 ・ジャガイモ栽培で問題となる病害(そうか病、疫病等)に対して、有機JASに適合した防除技 術を体系化し、可販品収量が大幅に増加することを明らかにできました。 ・環境への影響を評価すると、ジャガイモの可販品収量あたりの環境負荷は現地慣行有機栽培と 比較して小さくなりました。

連絡先:農研機構 中央農業総合研究センター tel 029-838-8836

成果 ・銅水和剤による種いも消毒により、そうか病菌のほ場への持ち込み防止を図ります。 ・銅水和剤の散布により疫病の発生を軽減させ、ジャガイモの収量の安定化を図ります。

圃場の準備

2~3月種いもの準備

3月施肥植付け

5月除草

6月疫病防除

7月収穫

開発した有機JAS適合技術によるジャガイモ有機栽培体系

輪作体系ヘアリーベッチ、レタス、トウモロコシを取り入れた輪作を行い、同一圃場へのジャガイモの植え付けは3年に1作とします。

種いも消毒 銅水和剤(コサイドボルドー*:50~100倍希釈液20分間種いも浸漬)による種いも消毒を行います。

有機物の施用

そうか病の発生しにくい土壌に改良するために、植付け当日に米ぬかを10a当たり600㎏の割合で土壌に全面混和します。

除草機械除草(畦間の中耕)2回手取り除草 1回

銅水和剤(Zボルドー*:400倍希釈液)を開花期ごろから1週間間隔で3回散布します。

疫病の防除

前作 1年目 2年目 3年目

技術実証区 ジャガイモヘアリーベッチ

レタスヘアリーベッチ

トウモロコシ

ジャガイモ

慣行有機区 ジャガイモジャガイモ

ホウレンソウ

ジャガイモ

ジャガイモ

施肥土壌の性質に由来する農地の生産力の維持増進を図る肥培管理を行います。(有機農産物の日本農林規格より)

*:平成24年12月1日現在ジャガイモに農薬登録があり,有機栽培への利用が可能です。

技術の完成状況

★★★★☆

140210

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委託プロジェクト研究(気候変動プロ) 平成25年12月 農林水産省農林水産技術会議事務局研究統括官室

対象作物、普及対象 ・ジャガイモ、関東以西 対象農家 ・慣行有機栽培農家、新規有機栽培参入者 必要な道具 ・特になし 関連HP(成果情報) http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/laboratory/narc/manual/046975.html

その他 ・農薬情報は平成24年12月1日現在のものです。最新の登録情報をご利用願います。

図1 米ぬか等の鋤き込みによるジャガイモそうか病防 除効果 注.クロピク : クロルピクリンくん蒸剤(有機栽培には使え ません)。数値は,中央農研ほ場での試験結果です。 米ぬかの代りにふすまや脱脂ぬかでも同様な効果が 得られます。

図2 技術実証圃の収穫いも重と可販品収量

0

20

40

60

80

100

米ぬか 脱脂ぬか ふすま クロピク 無処理

防除価

そうか病の発生状況 可販品収量

0

10

20

30

40

50

60

70

発病度

銅水和剤(細粒) 銅水和剤 マンゼブ水和剤 無処理

疫病の発生状況

図3 銅水和剤散布区のジャガイモ疫病発病推移 注.マンゼブ水和剤は,有機栽培には使えません。 数値は,中央農研ほ場での試験結果です。

B図4 ジャガイモ疫病防除の有無による地上部の生育状況の差異

A:無防除,B:疫病防除(銅水和剤処理)

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ダイコン残渣によるバイオフューミゲーションを 取り入れたホウレンソウのハウス栽培

目的と特徴 ・ダイコン残渣等、少量多品目産地における廃棄未利用資源をバイオフューミゲーション(生物 的燻蒸による土壌消毒法:BF※1)に活用する、新たな土壌消毒法を提案します。 ・ホウレンソウ萎凋病に対するダイコン残渣20t/10aのBF処理は、化学農薬(クロルピクリン 油剤)処理に比較すると防除効果はやや劣りますが、無処理に比較して、50%以上の発病抑制 効果があります。 ・残渣の分解による窒素の肥効は処理後1作分程度あります。

連絡先:山口県農林総合技術センター tel 083-927-0211

成果 ・ダイコン残渣20t/10aの処理は、化学農薬(クロルピクリン油剤)処理に比較すると防除 効果はやや劣りますが、無処理に比較して、50%以上の発病抑制効果があります。 ・ダイコン残渣の分解による窒素肥効は処理後1作分程度なので、施肥労力が軽減されます。 ・経費は、10a当たり約40,000円です。

50%以上の発病抑制効果

1作分程度の窒素施肥効果※2

防除費40%減(現地慣行比) ※3

ホウレンソウ萎凋病の被害(枯死) ダイコン選果場で処分される残渣

ダイコン残渣を活用したBF

化学農薬による土壌処理

※1 バイオフューミゲーション(Bio = 生物, Fumigation = くん蒸→ 生物的(土壌)くん蒸) アブラナ科の緑肥植物や輪作作物に含まれるグルコシノレートが加水分解するときに土壌中に放出され る殺生物性の化合物により,土壌害虫や土壌病原菌が抑制される現象 ※2 ホウレンソウ1作分 窒素15kg/10a ※3 ダイコン残渣が無償提供された場合

技術の完成状況

★★★☆☆

140211

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委託プロジェクト研究(気候変動プロ) 平成25年3月 農林水産省農林水産技術会議事務局研究統括官室

対象作物、普及対象 ・ハウスホウレンソウ、全国 対象農家 ・減農薬栽培を取り入れる経営、地域の未利用資源の活用を導入したい経営 必要な道具 ・植物残渣を破砕するためのロータリーモア、暑熱対策を行う場合には循環扇 その他 ・ダイコンの鋤き込み量については、さらに検討する余地があります。

表1 ダイコン残渣BFにかかる経費試算○経営(10a 土壌消毒)   区名 慣行区 備考 実証区 備考

農薬費 52,239円 クロルピクリン

労働費 9,440円 @800円 34,480円 @800円合計① 61,679円 34,480円

減価償却費 - -動力光熱費 2,320円 3,590円 +ダイコン運搬

合計② 2,320円 3,590円

合計①+② 63,999円 38,070円 59.5%

○労働時間(10a 土壌消毒)   h区名 慣行区 備考 実証区 備考

ダイコン搬送 - 3.3ダイコン施用 - 26.6 2名延べ鋤き込み - 6.6

注水・被覆 6.6 2名延べ土壌消毒 5.9 -ガス抜き 5.9 -

労働時間 計 11.8 43.1

被覆

ダイコン残渣の持ち込み 破砕・耕耘 残渣の混和整地

散水

図 実際のダイコン残渣によるBFの作業

注:BFの実施時期は、地温確保が容易な6~7月が適当

ダイコン残渣によるBF(実証区)と化学農薬による土壌消毒(慣行区)にかかる経費を試算しています。 ダイコン残渣によるBFでは、薬剤費が不要な代わりに、残渣の持ち込みなどの労力が増えますが、労賃を経費に算入しても防除費が約40%程度削減されています。 ※ダイコン残渣を無償譲提供された場合、労働費の単価を800円とした場合。

50.3

20.1 18.9

0.5 0

20

40

60

80

100

無処理 フスマ ダイコン クロルピクリン

発病

株率

% 436

887

1,038

767

0

200

400

600

800

1000

1200

無処理 フスマ ダイコン クロルピクリン

収量

(g/m

2)

図3 各処理後の防除効果と収量の比較 (図中フスマは、フスマを用いた土壌還元消毒)

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ホウレンソウ萎凋(いちょう)病に対するカラ シナすき込みによる環境に優しい土壌消毒技術

目的と特徴 ・殺菌成分(アリルイソチオシアネート)を発生するカラシナ茎葉を土壌にすき込んで、散水・被覆することで、土壌中の病原菌を殺菌する環境に優しい消毒方法を開発しました。 ・高冷地での夏季ホウレンソウで被害の大きい萎凋(いちょう)病の防除に有効です。多発圃場でも、この技術により発病を無処理に比較して90%の抑制効果があり、約3倍の収量が望めます。

連絡先:兵庫県立農林水産技術総合センター tel:0790-47-1222

成果 ・ホウレンソウの萎凋病に対して、土壌中の病原菌を高い割合で殺菌し、枯死株を大幅に減少 させます。 ・カラシナ消毒後のホウレンソウ収量は、無処理の発病株率50%程度の多発圃場において、そ の後1作目で無処理の3倍、2作目1.5倍に増加します。 ・経費は10a当たり4.2万円、所得は10a・4作合計(1年)で無処理と比べ、47万円増加します。

技術の完成状況

★★★★★

140212

開花したカラシナ 茎葉を刈払機で細断

散水チューブで散水し、3週間被覆 トラクターですき込み

図1 カラシナすき込み消毒の手順

無処理(病気で枯れ、雑草が生える) カラシナ処理(健全株がそろう)

図3 カラシナすき込みのホウレンソウ萎凋(いちょう)病抑制効果(高い効果があります)

図2 カラシナすき込み技術を組み込んだホウレンソウ栽培体系

4月 5月 6月 9月 10月 11月

 ホウレンソウ   ホウレンソウ   ホウレンソウ 

8月7月

 カラシナ栽培 すき込み 

0

500

1000

1500

カラシナ 無処理

収量(g/㎡)

図4 カラシナすき込み後のホ

ウレンソウ収量(1作目)

・5~6月にカラシナを播種し、7月にすき込みます。 ・傾斜圃場では、すき込み時に水圧補正チューブで散水することで、高い土壌水分を保ち、消毒効果が安定します。

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0

200,000

400,000

600,000

800,000

1,000,000

1,200,000

1,400,000

ホウレンソウ4作 カラシナ+ホウレンソウ3作

所得(一〇a

・一年当たり)

委託プロジェクト研究(気候変動プロ) 平成25年12月 農林水産省農林水産技術会議事務局研究統括官室

対象作物、普及対象 ・ハウスホウレンソウ、全国 対象農家 ・有機栽培、減農薬栽培農家 必要な道具 ・透明フィルム(被覆用)、散水チューブ類、鉄パイプ等 関連HP(成果情報) http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/pdf/12052502.pdf その他 ・副次的に雑草抑制効果もあります。

図5 カラシナすき込みの具体的方法

0 28 461

0

2000

4000

6000

8000

10000菌密度(

個/g乾土)

図6 カラシナすき込み後の土壌中の

病原菌密度

消毒直後(7月29日)

1作後(9月15日)

2作後(10月29日)

図7 カラシナすき込みの所得比較(10a,1年当たり) ホウレンソウの作付けは1作減りますが、高価格の初夏穫りで増収します

図8 傾斜圃場で散水する場合に適する水圧補正チューブ

注意点

・カラシナの品種は「黄からし菜」を用い、播種量は0.5g/㎡程度です。

・ハウスではホウレンソウ用の肥料が残っているのでカラシナのための施肥は不要です。

・被覆したフィルムの周縁は鉄パイプ等でしっかり押さえます。

・散水は土壌が飽和するまで十分行って下さい。

・圃場に硬盤がある場合、カラシナ播種前にサブソイラを施工します。

被覆を除いて約1週間後、土壌が乾いたらホウレ

ンソウを播種(播種前の整地は浅くする)

5月末~6月初旬、消毒するハウスでカラシナを播

開花がそろうまで栽培(約 45 日)

刈り払い機などで茎葉を細断、トラクター等で土壌

にすき込み (同時にホウレンソウの施肥)

散水チューブを敷設し、上から透明フィルムで被

覆、縁を押さえてから飽和するまで散水。

ハウスを閉め切り、3週間放置

(土壌中の病原菌を殺菌)

開花が揃うまで栽培(約45日)

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東海地域における甘長ピーマンの有機栽培法

目的と特徴 ・地域特産野菜である甘長ピーマンの高付加価値化を狙い、ハウス半促成作型の有機栽培体系を 検討しました。 ・肥培管理は鶏糞や菜種粕などの有機質肥料を使います。 ・病害虫には防虫ネットの被覆、天敵昆虫の放飼、有機JASで使用の認められている農薬散布を 組み合わせて防除します。

連絡先:岐阜県農業技術センター tel 058-239-3131

成果 ・上記の施肥設計に基づいた鶏糞堆肥の利用により慣行栽培と同等の収量が得られます。 ・0.4mm目合いの防虫ネットでハウスの開口部を被覆したうえで、天敵昆虫、気門封鎖剤や BT剤を利用することで主要害虫を防除できます。 ・土壌伝染性ウイルス病害には弱毒ウイルスの接種や非宿主植物を輪作することで被害を抑 制できます。

肥培管理 病害防除

害虫防除

● 基肥には鶏糞堆肥、追肥には菜種かすや魚 かすを使います

(窒素含有率<現物>%) 2/ (1-含水率%/100)

● 鶏糞堆肥の有効窒素成分量を計算します

例 鶏糞堆肥1t当りの窒素含有率3.5%、含水率20%の場合

(3.5)2 / (1-20/100) ≒ 15 (kg/t)

● 基肥の窒素成分量は10kg/10a程度としま す。上記の鶏糞堆肥の場合は約700kg/10a

となります ●慣行の窒素成分量より不足する分は、追肥(菜種かすや魚かす)で補います

●うどんこ病には水和 硫黄剤で防除します

● ピーマンモザイク病 には弱毒ウイルスの 接種やナバナなどの 非宿主植物の輪作に より発生を抑制でき ます

● 目合い0.4mm程度の防虫ネットでハウスを被覆します

● アブラムシ類やタバココナジラミには気門封鎖剤で防除します また、アブラムシ類の防除にはコレマンアブラバチやナミテントウ など天敵を利用した防除も有効です

● アザミウマ類には、地場で採集したアカメガシワクダアザミウマと タイリクヒメハナカメムシを交互放飼するブースター法が有効です

甘長ピーマンの有機栽培体系

アカメガシワクダアザミウマ

タイリクヒメハナカメムシ

ピーマンモザイク病

うどんこ病

弱毒ウイルス

技術の完成状況

★★★☆☆

140213

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委託プロジェクト研究(気候変動プロ) 平成25年3月 農林水産省農林水産技術会議事務局研究統括官室

対象作物、普及対象 ・甘長ピーマン、岐阜県を中心とした東海地域 対象農家 ・甘長ピーマン生産者 必要な道具 ・防虫ネット(目合0.4mm程度) ・天敵昆虫:アカメガシワクダアザミウマ、タイリクヒメハナカメムシなど 関連HP http://www.g-agri.rd.pref.gifu.lg.jp/

東海地域における甘長ピーマンの有機栽培体系

有機体系で慣行と同等の農業所得を得るには、 販売単価10%アップ が必要となります

経営収支の比較 有機栽培体系での収量

2009年~2012年における可販収量は、いずれの年も有機体系の収量は慣行と同等でした

有機体系 慣行体系 備      考

1,050,000 1,050,000 可販収量1,500kg、単価700円/kg

種苗費 176,000 176,000 購入苗1000株/10a

肥料費 22,856 42,036 有機体系:鶏ふん堆肥、硫酸加里、種粕

農薬費 122,018 21,102有機体系:アカメガシワクダアザミウマ2回、タイリクヒメハナカメムシ2回、コレマン1回放飼、気門封鎖剤、水和硫黄剤等

動力光熱費 4,300 4,300

諸材料費 74,980 56,164 有機体系には防虫ネットを含む

労働費 1,095,081 1,120,236 労働費:1,677円/時間、慣行体系668時間、有機体系653時間

賃借料 5,329 5,329

出荷経費 187,350 187,350

変動費計 1,687,914 1,612,517

建物費 18,393 18,393

農機具費 77,481 77,481

固定費計 95,874 95,874

1,783,788 1,708,391 慣行体系を100とした場合、有機体系は104

-733,788 -658,391

361,293 461,845 慣行体系を100とした場合、有機体系は79

553 691

 慣行体系は「岐阜県農業経営体育成指針(岐阜県農業経営課作成)」より引用(一部改変)。

費用合計

営業利益

項     目

売上高

生産費

変動費

固定費

農業所得

1時間当り農業所得

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近畿地域における伏見とうがらし有機栽培法

目的と特徴 ・京の伝統野菜である「伏見とうがらし」の有機栽培体系を確立しました。 ・トウガラシの期間別窒素要求量、施用有機物の窒素分解率をもとに、土壌中に残存する窒素量に応じた有機物施用マニュアルを作成しました。

・有機JAS基準に適合した既存の生物防除剤を計画的に用いることにより、主要な病害虫の発生 を抑制する防除体系を確立しました。

連絡先:京都府農林水産技術センター 生物資源研究センター tel 0774-93-3527

成果 ・堆肥や有機質資材の特性を把握し、残存無機態窒素量に応じた堆肥・有機質資材の施肥 方法をマニュアル化しました。 ・病害虫の早期発見と天敵製剤の特性に応じた天敵放飼技術をマニュアル化しました。

●予防 ・夏期の太陽熱消毒による病害虫防除 ・0.4mm目合いの防虫ネットで被覆 ・発生源となるハウス周辺の雑草防除 ・硫黄粒剤くん煙によるうどんこ病予防 ・暦に基づく定期の天敵放飼 ●早期発見 観察ポイントを参考に、病害虫の早期 発見 例)トウガラシ葉裏面で 増殖したワタアブラムシ

●天敵放飼 気門封鎖剤と組み合わせ、効果的な タイミングで天敵放飼

病害虫防除マニュアル

伏見とうがらしの有機栽培体系

基肥には牛糞バーク堆肥、追肥には有機 液肥または綿実油粕を用います。 ●基肥及び追肥施用(1回/1ヶ月)時に 土壌中の無機態窒素量を測定。 ●・土壌中の無機態窒素量 ・トウガラシの期間別窒素要求量 ・施用有機物の窒素分解率 を元に、算定シートを用いて施用量を 自動計算 ●基肥及び追肥の施用

牛糞バーク堆肥 有機液肥 綿実油粕

有機物施用マニュアル

例)ナミテントウムシ剤

技術の完成状況

★★★☆☆

140214

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委託プロジェクト研究(気候変動プロ) 平成25年3月 農林水産省農林水産技術会議事務局研究統括官室

対象作物、普及対象 ・トウガラシ、近畿地域 対象農家 ・トウガラシ栽培農家 必要な道具 ・牛糞バーク堆肥、綿実油粕や有機液肥等の有機質資材、既存の生物防除剤・防除資材 その他 ・栽培地域の気候や作型等の条件により有機物施用マニュアルの修正が必要です。 ・天敵農薬の効果的な使用には、病害虫の早期発見が重要です。

伏見とうがらしの有機栽培暦

経営評価(生産費(変動費)のみ)

肥料費や農薬費が増加しました。効果的な天敵放飼が出来れば、農薬費や農薬散布に係る労働経費が削減できます。

注)有機物施用量は、24年度現地実証試験圃場における実際の施用量であり、圃場が異なれば 施用量を計算し直す必要があります。

慣行農業実証有機農業(油粕追肥)

実証有機農業(有機液肥追肥)

種苗費(円) 120,000 120,000 120,000肥料費(円) 37,025 62,000 75,000農薬費(円) 22,100 104,000 104,000光熱動力費(円) 44,700 44,700 44,700諸材料費(円)

家族労働時間(時) 1,542 1,528 1,528労働単価(円/時) 820 820 820

労働経費(円) 1,264,440 1,252,960 1,252,960変動費小計(円) 1,488,265 1,583,660 1,596,660

生産費

変動費

項 目

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有機栽培タマネギの地床育苗における 陽熱消毒による雑草防除

目的と特徴 ・有機栽培タマネギの育苗床の雑草対策について、陽熱消毒期間を見直しました。 ・従来の約2ヶ月間の陽熱消毒期間を30~50日間に短縮できます。 ・慣行除草技術と同程度の高い抑草効果が得られます。

連絡先:佐賀県農業試験研究センター 有機農業研究担当 tel 0952-45-8808

成果 ・透明ポリエチレンフィルムを播種前に30~50日間被覆することで、慣行の農薬による 雑草防除と同程度に高い抑草効果が得られます。 ・陽熱消毒の処理期間は、50日間と30日間で雑草防除に大きな差はありません。 ・陽熱消毒を実施した苗床での苗の生育は良好で、苗立数も多いです。

陽熱消毒期間 30~50日

慣行と同等の除草効果・苗質

陽熱消毒

これまでは・・・

梅雨明け後から

約2ヶ月間の陽熱消毒

陽熱消毒50日間 陽熱消毒なし

どれくらいの期間なら

雑草防除に効果があるの?

技術の完成状況

★★★★★

140215

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委託プロジェクト研究(気候変動プロ) 平成25年12月 農林水産省農林水産技術会議事務局研究統括官室

対象作物、普及対象 ・タマネギ、九州 対象農家 ・タマネギの有機栽培農家または、これからタマネギの有機栽培に取り組む農家 必要な道具 ・透明ポリエチレンフィルム、マルチャー 関連HP http://www.pref.saga.lg.jp/web/var/rev0/0100/5068/h22seika_15.pdf その他 ・極早生品種以降のタマネギ苗床に適用可能です。透明ポリエチレンフィルム被覆直前に5mm程度のかん水が必要です。陽熱消毒期間中に曇雨天が続けば、雑草防除効果が落ちる可能性があります。

図1 陽熱消毒期間と雑草防除効果

注1)慣行区は除草剤のダゾメットを3kg/a表層施用後、9月3日~21日にかけて透明ビニルで被覆。 注2)被覆下7.5cmの積算地温は2009年では陽熱50日間区で50℃以上が14時間、40℃以上が355時間、 陽熱30日間区で50℃以上が9時間、40℃以上が201時間。2010年では陽熱30日間区で50℃以上 が57時間、40℃以上が272時間、陽熱20日間区で0℃以上が15時間、40℃以上が129時間。

図2 陽熱消毒期間とタマネギの草丈

注1)供試験品種は「貴錦」

図3 陽熱消毒期間とタマネギの苗立率

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品質は高いが

収量は少ない

収量は多い

品質は普通

硝酸塩低下

糖分増加

大きさも十分

有機栽培コマツナの品質を高める栽培法

目的と特徴 ・有機栽培コマツナにおいて、慣行栽培並の収量を確保しながら品質を高める(硝酸塩の低下と 糖分の増加)栽培法を確立しました。 ・コマツナの品質成分は、栽培様式(有機栽培や慣行栽培)に関係なく、大きさや生育日数(速 度)で変化します。 ・肥効の緩やかな有機質資材を少量施用して、コマツナをゆっくりと育てます。ゆっくりと育て たコマツナは硝酸塩が少なく、糖分が高くなります。 ・育てる期間を長くすることで株が大きく育ち、十分な収量が得られます。

連絡先:(地独)北海道立総合研究機構 中央農業試験場 栽培環境グループ tel 0123-89-2580

成果 ・露地栽培で収量を確保しながら高品質な有機コマツナを生産するには、生育前半(播種後 15日程度)の土壌硝酸態窒素を3~6mg/100gと低く推移させ、生育日数を長く(慣行 栽培プラス6~8日が目安)確保します。ただし、具体的数値は北海道の目安です。 ・有機質資材として、発酵鶏ふんまたは魚かすを窒素分で6kg/10a施用します。 ・北海道農業試験会議において指導参考に採択され、普及段階にあります。

窒素を控えめに与えて

ゆっくり育てる

有機質資材を

適量施用 ゆっくり生育 生育日数を長く

速効性肥料

全量基肥

有機質資材を

多量施用

ふつうに生育

大きいコマツナ 小さいコマツナ

品質と収量を

両立したい!

有機栽培でも

窒素の多量施用は

NG

技術の完成状況

★★★★★

140216

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0

2

4

6

8

10

12

14

1 8 15 22 29 36

土壌

硝酸

態窒

素(m

g/100g)

播種後日数

慣行畑+硫安12 有機畑+鶏ふん6

慣行畑+鶏ふん6 慣行畑+米ぬか6

3

4

5

6

7

0 10 20 30

Bri

x糖

度(%

)

1株重(g)

有機畑+有機質資材

慣行畑+有機質資材

慣行畑+化学肥料

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

1.1

0

50

100

150

200

250

26日 +6日 +6日

硫安12 鶏ふん6 鶏ふん6

慣行畑 有機畑 慣行畑

全糖

含量

(mg

/10

0g

FW)

硝酸

塩含

量(m

g/1

00

g FW

)

0

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

8000

26日 +6日 +6日

硫安12 鶏ふん6 鶏ふん6

慣行畑 有機畑 慣行畑

収量

(kg

/10

a)

委託プロジェクト研究(気候変動プロ) 平成25年12月 農林水産省農林水産技術会議事務局研究統括官室

対象作物、普及対象 ・コマツナ、全国 対象農家 ・有機コマツナ、無化学肥料栽培コマツナ生産者 必要な道具 ・一般的なコマツナ栽培に用いるもの 関連HP http://www.agri.hro.or.jp/center/kenkyuseika/gaiyosho/25/f2/17.pdf その他 ・土壌硝酸態窒素、延長日数等の数値は北海道の目安であり、各地域で再検討が望ましい。

図1 1株重や栽培様式がコマツナのBrix糖度に 及ぼす影響(生育日数が同一の場合) 図2 施用資材別の土壌硝酸態窒素の推移

※凡例は畑-施用資材-窒素施用量(kg/10a)を示す。 米ぬか6は窒素欠乏症状を起こした。

図3 生育日数を延長(慣行栽培+6日間)した有機栽培コマツナの 収量(左棒グラフ)、硝酸塩含量(右棒グラフ)、全糖含量(右ひし形マーカー) ※有機栽培の生育日数は慣行栽培に対し延長した日数で示した。

有機・慣行に関係なく、

小さい株で糖度が高い

生育日数

生育前半の土壌窒素が

網掛け部分に収まると高品質

のコマツナができる。

土壌窒素が低すぎると

窒素欠乏症状を起こす。

生育日数の延長で

慣行栽培を上回る収量

しかも低硝酸塩・高糖含量

資材-窒素施用量

(kg/10a)

※ 有機畑:有機JAS規格の基準に合致した畑 慣行畑:化学肥料や農薬を使用して管理している畑 図2、3も同様。

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糖・有機酸・アミノ酸の網羅的解析により窒素肥料や堆肥の施用がコマツナの成分に与える影響を解明

目的と特徴 ・コマツナに含まれる成分について、糖・有機酸・アミノ酸など50~100種類の化合物を網羅的に分析する方法を適用し、成分に対する栽培法の影響を明らかにしました。 ・これまでに調べられていなかった微量な成分についても、窒素や堆肥施用の影響を受けることがわかりました。

連絡先:農研機構 北海道農業研究センター 生産環境研究領域 tel 011-857-9241

成果 ・窒素肥料と堆肥の施用量の影響が認められる成分をそれぞれ明らかにしました。 ・得られた知見は、栽培法の違いが作物の品質に与える影響の解明やより高品質な作物を生産するための栽培技術の開発に役立てられます。

窒素施肥量を増やすと…

・フルクトース、グルコース、マルトースなどの糖類が減少

・L-トレオニン、L-アスパラギン酸、L-イソロイシンなどの アミノ酸やスペルミジン、プトレシンなどのポリアミンが 増加

堆肥を施用すると…

・グリシン、フルクトース、プトレシン、コハク酸などが減少

・イノシトール、L-トリプトファン、L-チロシンなどが増加

・食味や加工適正等の品質評価において有用な知見となる

・高品質を目指した栽培技術開発に役立てられる

技術の完成状況

★☆☆☆☆

140217

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委託プロジェクト研究(気候変動プロ) 平成25年3月 農林水産省農林水産技術会議事務局研究統括官室

対象作物、普及対象 ・コマツナ等の葉菜類、全国 対象農家 ・葉菜類を栽培する農家 必要な道具 ・なし 関連HP(成果情報) ・公開予定 その他 ・北海道の多腐植質黒ボク土において硫安、牛糞麦稈堆肥を施用して得られた成果です。

堆肥を与えると増加

堆肥を与えると減少

窒素施肥により増加

窒素施肥により減少

図1 窒素施肥による各成分への影響の強さ(上)と代表的な成分における変動(下)

図2 堆肥による各成分への影響の強さ(上)と代表的な成分における変動(下)

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有機栽培圃場における植物共生微生物の特性

目的と特徴 ・微生物が有機農産物の健全な生育や病害耐性等に及ぼす影響を評価するため、有機農業環境の微生物特性を明らかにしました。

・作物の生育や抵抗性誘導などと高い関連性があると考えられる作物体内の「共生微生物相」に見つかった特性です。

・特徴的だった微生物を詳しく研究することで、有機農産物の機能や特徴理解に繋がる可能性があります。また、有用な微生物を利用しやすくなる可能性があります。

・このような微生物を指標として有機栽培圃場を微生物学的に評価できる可能性があります。

連絡先:農研機構 北海道農業研究センター tel 0155-62-2721

成果 ・有機栽培作物に共生する細菌群には、「Rhizobium属細菌の割合が多い」特徴があります。 ・Rhizobium属細菌は、堆肥施用の有無に大きく影響を受け、多くなる傾向があります。堆肥を活用することにより、有用菌の共生を増やせる可能性があります。

バレイショ根

有機栽培作物にはRhizobium属細菌が より多く共生している!

Rhizobium属

多くの根粒菌が属する菌群。マメ科に根粒を形成して空中窒素固定を行い宿主に窒素を供給する。マメ科以外の多様な植物にも広く共生し、生育促進効果を示すことも多いことから、指標微生物として活用可能。

堆肥 - - + +

+ - - -

ハルコムギ茎

Rhizobium

農薬

化成肥料

Rhizobium属細菌は堆肥施用の有無に鋭敏に反応!

堆肥の施用によりRhizobium属細菌の共生が増加する!

ハルコムギの茎に共生する細菌相の特徴

有機および慣行栽培したバレイショ根内の共生細菌群集比較

全多様性中の出現頻度(%)

技術の完成状況

★☆☆☆☆

140218

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委託プロジェクト研究(気候変動プロ) 平成25年3月 農林水産省農林水産技術会議事務局研究統括官室

対象作物、普及対象 ・畑作物、全国 対象農家 ・有機農家または有機農業を志す農家 関連HP

ジュース

ミキサー

青汁 遠心分離 超遠心分離

共生細菌を植物組織から抽出

微生物細胞

分離培養

顕微鏡観察

DNA抽出 PCR

(16S)

塩基配列の決定

微生物種を推定

◆作物体内に共生する微生物群集に着目! 作物の生育や病害耐性と関連する可能性 ◆共生微生物を取り出し、解析するためのキーテクを開発!

施肥条件にかかわらず、堆肥の施用によってRhizobium属細菌の共生が増加!

コマツナ葉

堆肥を有効活用することによって有用菌の共生を増やせる可能性 コマツナ葉内の共生細菌に占めるRhizobium属

細菌の割合

研究のキーポイント!

増加

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カンキツ有機栽培実践園において問題となる 病害虫の種類と抑制技術

目的と特徴 ・カンキツ有機農業実践園において問題となる病害虫を明らかにしました。 ・有機農業で使用可能な農薬や資材の病害虫に対する抑制効果を検証し、有望な抑制技術を明ら かにしました。 ・温州みかんにおける銅水和剤と石灰硫黄合剤の防除体系の有効性を明らかにしました。

連絡先:愛媛県農林水産研究所果樹研究センター tel 089-977-2100

成果 ・有機農業実践園(温州みかん)では、そうか病、黒点病、カイガラムシ類、すす病果(コナ ジラミ類)が問題となりますが、特に外観品質への影響は病害の方が大きいです。 ・病害では黒点病が恒常的に広く発生し、そうか病は発生程度に地域差があるが、常発地帯では発生が激しいです。 ・虫害では、冬季の機械油乳剤未散布園でカイガラムシ類、コナジラミ類の被害が問題になりますが、散布園ではその程度は低いです。 ・銅水和剤と石灰硫黄合剤の体系散布により生果で出荷可能な果実の割合が増加します。

問題となる病害虫

そうか病

黒点病

冬季の機械油乳剤散布に

より被害は低減される 外観品質への影響が著しい

毎年実施すれば被害少ない

○冬季に機械油乳剤を散布しカイガラムシ類等の発生を抑える

○銅水和剤(発芽前~)と石灰硫黄合剤(5~7月)の防除体系により

そうか病、黒点病やミカンサビダニの被害を抑えることができる

イセリアカイガラムシ ナシマルカイガラムシ

すす病果(コナジラミ類) ヤノネカイガラムシ

銅水和剤はそうか病・黒点病に

有効であるが、ミカンサビダニの

被害を助長する

ミカンサビダニ被害果

技術の完成状況

★★★★☆

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委託プロジェクト研究(気象変動プロ) 平成25年3月 農林水産省農林水産技術会議事務局研究統括官室

対象作物、普及対象 ・カンキツ(温州みかん)、全国 対象農家 ・温州みかん有機栽培実践農家 (体系散布はそうか病多発地域の有機栽培実践農家) 必要な道具 ・特になし

そうか病の発生は地域差があり常発地では果実被害が激しいが、黒点病はすべての園地で多発生する。外観品質への影響は黒点病による影響が大きい。

表1 病害別の選果基準に基づく規格外果実の割合

今治市大西1

今治市大西2

松山市伊台

西予市明浜

今治市大西1

今治市大西2

松山市伊台

西予市明浜

今治市大西1

今治市大西2

松山市伊台

西予市明浜

2009 0.0 - 59.0 6.0 62.6 - 14.6 36.7 78.7 - 17.3 63.72010 0.0 0.0 71.5 3.0 72.0 1.5 9.5 52.0 72.5 7.0 61.5 60.02011 0.0 0.0 76.5 8.0 96.0 13.0 45.0 83.0 97.0 50.0 90.0 85.02012 7.4 0.6 86.5 19.6 69.8 39.8 49.0 52.9 85.5 92.7 72.9 95.7平均 1.9 0.2 73.4 9.2 75.1 18.1 29.5 56.2 83.4 49.9 60.4 76.11)選果基準:地元JAの定めた出荷時の庭先選別基準(1級、2級、規格外の3つに区別)

そうか病による規格外果実割合(%) 黒点病による規格外果実割合(%) 総合判定(%)

冬季マシン油を散布していない園地では、ヤノネカイガラムシの発生やすす病の被害が激しい。

ヤノネカイガラムシ寄生果 18.0 5.2 4.6 0.2 7.0

マルカイガラムシ類寄生果 4.9 17.0 3.5 0.7 6.5

すす病(コナジラミ類)被害果 14.2 0.1 4.6 0.1 4.7

ミカンサビダニ被害果 0.0 0.3 0.6 5.7 1.7

注)今治市大西1園のみ3年間(2009~2011年)冬季マシン油乳剤未散布

表2 主要害虫の被害・寄生果率(2009~2012年の平均)

調査項目今治市大西1

今治市大西2

松山市伊台

西予市明浜

4地点平均

表3 ICボルドー66D及び石灰硫黄合剤の体系散布による効果(2012:宮川早生)

果実薬害 ミカンサビダニ

3/22 4/19 5/16 6/6 7/5 8/23 9/6 そうか病 黒点病 発生度3)

被害果率4) 1.2級6)加工用7) 廃棄

8)

1 IC IC IC IC IC IC イオウ 37.8 47.5 10.2 37.7 2.0 40.5 57.52 IC IC IC ○ ○ IC イオウ 40.4 55.4 1.9 8.9 3.7 68.5 27.83 IC IC ○ IC ○ IC イオウ 39.1 49.6 4.6 8.3 4.7 64.0 31.34 - - - - - - イオウ 79.9 72.7 0.0 4.5 0.0 7.2 92.8

6)生果として出荷 7)加工用として出荷可能(有機実践農家では生果出荷) 8)加工用でも出荷できない

果実発病度2) 総合評価(%)

5)薬剤及び散布時期

1)

試験区

3)黒点病の調査基準(農水省)に準ずる(調査月日:7/25)  4)収穫果実での調査(調査月日:12/11) 

5)地元JAの定めた出荷時の庭先選果基準に基づく評価(1級、2級、規格外(加工用)の3つに区別)

1)IC:40倍(3/22),80倍(4/19,5/16,7/5),200倍(8/23) ○:石灰硫黄合剤(100倍) イオウ:イオウフロアブル(400倍)

2)病害虫発生予察調査基準(農水省)に基づく(調査月日:そうか病 8/23、黒点病 9/6)

試験区2及び3では、加工用(有機栽培では生果出荷)の果実割合が増加し、品質が向上した。 体系散布による効果 ①ミカンサビダニによる被害果(これらは廃棄果実となる)が少なくなる。 ②銅剤による果実薬害も少なくなる。

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リンゴ有機栽培のための病害虫防除体系

目的と特徴 ・リンゴ有機栽培実践園において問題となる病害虫を明らかにしました。 ・有機農業で使用できる農薬や耕種的防除を組み合わせた防除体系の有効性を明らかにしました。

連絡先:(地独)青森県産業技術センターりんご研究所 tel 0172-52-2331

成果 ・有機栽培実践園では、主に黒星病、褐斑病、すす斑病、モモシンクイガの発生が問題となります。 ・モモシンクイガの被害は6月上旬までに袋をかけることにより、抑制することが可能です。 ・水和硫黄剤、銅水和剤などの散布と耕種的防除を組み合わせることによって、黒星病、褐斑病の発生を抑制でき、褐斑病の早期落葉を低減できます。

技術の完成状況

★★★☆☆

140220

有機JAS規格で使用できる農薬と果実袋を用いることで、 外観品質は劣るが食味の良い果実を生産することができる

有機JAS規格で 使用できる農薬

(マシン油乳剤、水和硫黄剤、石灰硫黄合剤、銅水和剤、パ

ラフィン展着剤)

耕種的防除 (前年の被害落葉の処分、 モニリア病、うどんこ病の

摘み取り)

6月上旬までの 早期袋かけ

リンゴの有機栽培で問題となる主な病害虫

褐斑病(葉) 黒星病(葉) モモシンクイガ

すす斑病

黒星病(果実)

褐斑病(落葉状況)

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委託プロジェクト研究(気象変動プロ) 平成27年1月 農林水産省農林水産技術会議事務局研究統括官室

対象作物、普及対象 ・リンゴ、北東北のリンゴ栽培地域 対象農家 ・リンゴ有機栽培実践農家 必要な道具 ・特になし 関連HP(成果情報) http://www.applenet.jp/~nouken/promote/sakumoku/kaju/H26K7.pdf

その他 ・すす斑病、すす点病の発生により、外観的品質が低下します。

表1 有機JAS規格で使用できる農薬と耕種的防除を

組み合わせた防除事例(2013年) 黒星病および褐斑病の発病が抑制され、

褐斑病による落葉も減少

モモシンクイガの産卵前に袋をかけることで、

果実被害を低減できる

表2 被袋時期とモモシンクイガの被害果率

注:産卵初発日はりんご研究所圃場(青森県黒石市)における調査

図1 黒星病および褐斑病の発生状況(2013)

黒星病は7月10日、褐斑病は10月15日に調査した。なお、褐斑病は落葉も発病葉とみなした。

慣行区:慣行防除を行った区。

有機区:表1の通りに防除を行った区。

無散布区:薬剤散布を行わなかった区。

全区とも品種は「ふじ」を供試した。

有機区の果実の食味は

慣行区と同等

表3 果実品質

1)異符号間にはチューキーの多重比較検定により、*が5%水準、**が1%水準で有意差あり。

2)ヨード反応:0(染色なし)~5(完全染色) 3)蜜入りの程度:0(無)~4(大)

4)食味評価:1(劣る)~5(優れる)

0

20

40

60

80

100

発病葉率 発病葉率 落葉率

黒星病 褐斑病

発病葉率(%)

慣行区

有機区

無散布区