「幸福度」は地域政策の検討に役立つのか...()...

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2010 12 13 「幸福度」は地域政策の検討に役立つのか Subjective Well-being に基づく地域分析の試み~ 「幸福度」を地域政策に活用しようとする動きが地方自治体に広がっている。 生活者目線で地域政策のあり方を見直す動きであるようだ。しかし、そもそも 「幸福度」は居住地域環境の影響を受けるのか。この点については十分に明ら かになっていない。Subjective Well-being に基づく地域分析を試みることで検 証する。 先進国に広がる「幸福度」の導入 幸福度を政策評価に活用しようとする動きが 各国政府に広がりつつある。幸福度といえば、 「国民総幸福量(GNH)」を政策判断の基準と して活用しているブータンが有名であるが、近 年では、フランス、英国、日本などの先進国で 幸福度を導入しようとする動きがみられる。 まず、フランスでは、サルコジ政権が幸福度 測定に関する委員会(CMEPSP1 を発足させ、 GDP に代わる新たな指標のあり方を検討した。 同委員会がまとめた報告書 2 2009 9 月に公 表されたが、サルコジ大統領は、これに従って GDP に幸福度を加味することを提唱している。 また最近では、英国のキャメロン首相が、 GDP だけでなく幸福度にも関心を払う時代」 であるとの認識を示した上で、幸福度調査を定 期的に実施する方針を固めている。国家統計局 ONS)が来年4月から着手する予定であり、 調査結果は、四半期ごとに発表する方向とのこ とである。 1 同委員会は、ノーベル経済学賞を受賞したコロンビア大学の ジョセフ・スティグリッツ教授やハーバード大学のアマルテ ィア・セン教授を始めとした世界各国の著名な研究者 25 名で 構成された。 2 Report of the commission on the measurement of economic performance et social progress www.stiglitz-sen-fitoussi.frわが国においても、昨年から幸福度を政策に 活用することを目指した取組みが進められてい る。まず、政府が昨年 12 月にまとめた新成長 戦略の基本方針で、国民の幸福度を表す新たな 経済指標を開発することを表明した。それに基 づき、内閣府が幸福度に関する調査 3 を実施し、 今年 4 月にその結果を公表している。また、同 5 月の経済協力開発機構(OECD)閣僚理事 会においては、「幸福度」に関する日本の取組み 内容を説明するとともに、世界共通の幸福度指 標の作成を各国に呼びかけた。その結果、2012 年をめどに、 OECD で計測方法を検討していく ことになっている。さらに、同年 6 月には「新 成長戦略~「元気な日本」復活のシナリオ~」 が閣議決定されたが、同戦略には、今後におい て幸福度指標に関する研究を進め、関連統計の 整備と充実を図ることが明記されている。 自治体にも広がる「幸福度」に関する取組み こうした動きは、政府レベルにとどまらない。 わが国では、数多くの地方自治体で幸福度に関 する取り組みが行われている。 国内の先進事例としては、荒川区の取組みが 3 内閣府「国民生活選好度調査(平成 21 年度)」 Working Papers

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2010 年 12 月 13 日

「幸福度」は地域政策の検討に役立つのか

~Subjective Well-being に基づく地域分析の試み~

「幸福度」を地域政策に活用しようとする動きが地方自治体に広がっている。

生活者目線で地域政策のあり方を見直す動きであるようだ。しかし、そもそも

「幸福度」は居住地域環境の影響を受けるのか。この点については十分に明ら

かになっていない。Subjective Well-being に基づく地域分析を試みることで検

証する。

先進国に広がる「幸福度」の導入

幸福度を政策評価に活用しようとする動きが

各国政府に広がりつつある。幸福度といえば、

「国民総幸福量(GNH)」を政策判断の基準と

して活用しているブータンが有名であるが、近

年では、フランス、英国、日本などの先進国で

幸福度を導入しようとする動きがみられる。

まず、フランスでは、サルコジ政権が幸福度

測定に関する委員会(CMEPSP)1を発足させ、

GDP に代わる新たな指標のあり方を検討した。

同委員会がまとめた報告書2は 2009年 9月に公

表されたが、サルコジ大統領は、これに従って

GDPに幸福度を加味することを提唱している。

また最近では、英国のキャメロン首相が、

「GDPだけでなく幸福度にも関心を払う時代」

であるとの認識を示した上で、幸福度調査を定

期的に実施する方針を固めている。国家統計局

(ONS)が来年4月から着手する予定であり、

調査結果は、四半期ごとに発表する方向とのこ

とである。

1同委員会は、ノーベル経済学賞を受賞したコロンビア大学の

ジョセフ・スティグリッツ教授やハーバード大学のアマルテ

ィア・セン教授を始めとした世界各国の著名な研究者 25名で構成された。 2 Report of the commission on the measurement of economic performance et social progress(www.stiglitz-sen-fitoussi.fr)

わが国においても、昨年から幸福度を政策に

活用することを目指した取組みが進められてい

る。まず、政府が昨年 12 月にまとめた新成長

戦略の基本方針で、国民の幸福度を表す新たな

経済指標を開発することを表明した。それに基

づき、内閣府が幸福度に関する調査3を実施し、

今年 4月にその結果を公表している。また、同

年 5月の経済協力開発機構(OECD)閣僚理事

会においては、「幸福度」に関する日本の取組み

内容を説明するとともに、世界共通の幸福度指

標の作成を各国に呼びかけた。その結果、2012

年をめどに、OECDで計測方法を検討していく

ことになっている。さらに、同年 6月には「新

成長戦略~「元気な日本」復活のシナリオ~」

が閣議決定されたが、同戦略には、今後におい

て幸福度指標に関する研究を進め、関連統計の

整備と充実を図ることが明記されている。

自治体にも広がる「幸福度」に関する取組み

こうした動きは、政府レベルにとどまらない。

わが国では、数多くの地方自治体で幸福度に関

する取り組みが行われている。

国内の先進事例としては、荒川区の取組みが

3内閣府「国民生活選好度調査(平成 21年度)」

Working Papers

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2

広く知られている4が、同様の動きは全国の都道

府県や政令指定都市、市区町村に広がりつつあ

る(図表 1参照)。

例えば、都道府県・政令指定都市の事例をみ

ると、熊本県では、県政運営の基本方針として

県民総幸福量の最大化を目指している。また、

さいたま市においても「しあわせ倍増プラン

2009」を打ち出し、市民の幸福感の向上を市政

運営の最優先事項に位置づけている。静岡県に

ついては、現在、次期総合計画案を作成中であ

るが、同計画案には県民幸福度の最大化に向け

た重点取組み施策が盛り込まれている。また、

福井県では、早くから「地域の幸福度(QOC)」

に関する研究を進めており、2009 年 3 月にま

とめられた報告書において、同指標の活用を提

言している。

他方で、市区町村をみると、荒川区に倣った

動きとして、大阪府柏原市が市民の総幸福度

(GKH(グロス・カシワラ・ハピネス))を高

めていくことをまちづくりの政策理念として掲

げている。また、千葉県柏市では、都市計画マ

スタープランを 2009 年にとりまとめたが、同

プランの総合的な成果指標として、「住みよさ市

民満足度(幸福度)」を採用している。

図表 1 で掲載した事例は、主要なもの 10 件

に限られるが、このほかにも多数の地方自治体

で同様の取り組みがみられる5。取り組み内容は

自治体により様々だが、生活者の目線に立つな

ど、これまでとは異なる視点で地域政策を見直

す動きが広がっているようだ。

地域政策の検討に活用できるのか

しかし、幸福度は、そもそも地域政策の検討

や評価に活用可能であろうか。すなわち、地域

住民の幸福度は、住環境(アメニティ)や商業

性、インフラ、治安、コミュニティ(ソーシャ

ルキャピタル)などの居住地域環境の影響を受

4 辻・眞鍋・大塚(2009)などを参照 5筆者が確認した事例だけでも 20件程度はみられた。

けるのか。この点については先行的な研究蓄積

が少なく、未だ十分な議論がなされていない。

図表 1 「幸福度」に関する地方自治体の取組み 【都道府県・政令指定都市】

静岡県 同県では、次期総合計画の『富国有徳の理想郷“ふじのくに”のグランドデザイン』(案)に関して、現在、パブリックコメントを募集中である。同総合計画の基本構想(案)の柱の一つとして、「Ⅳ 県民幸福度の最大化に向けた重点取組」を明確に掲げている。

京都府 京都府知事・山田啓二氏がマニュフェストとして、「しあわせ実感 希望の京都をつくる」を作成し公約。府民満足最大化プランに従い、府民ニーズを的確に踏まえた目標を設定し、それを「京都指標」として公開した上で、地域主権時代にふさわしい府政を推進するとしている。

福井県 福井県総合政策部政策推進課が、報告書『ふくい2030 年の姿Ⅱ―私たちの暮らし、つながる希望と幸福―』(2009 年 3 月)をとりまとめ、「地域の幸福度(QOC)」を福井人が共有する指標として位置付け、その活用・推進を提案。

熊本県 平成 20 年に「くまもとの夢4カ年戦略」を策定(平成23 年までの県政運営の基本方針)。同戦略では、県民総幸福量の最大化に向けて、稼げる県をめざす「経済上昇くまもと」、長寿を恐れない社会をめざす「長寿安心くまもと」、誇りと愛着の持てる「品格あるくまもと」、夢のある教育などの「人が輝くくまもと」の4つの分野で取り組むとしている

さいたま市 平成 21 年に市長が示した「さいたま市民しあわせ倍増計画」を市の計画として位置付け、日本一しあわせを実感できるまちを目指している。そのアクションプランとして「しあわせ倍増プラン2009」を策定し、同プランの実現を、市政運営の最優先事項として位置付け、最小の経費で最大の効果を上げることを基本としている。

【市区町村】

東京都 荒川区

荒川区では、2007 年 3 月に「荒川区基本構想」を策定。同構想の中で「幸福実感都市あらかわ」をビジョンとして掲げ、区民が幸福を実感できる街を目指している。住民の「幸福度」を指標化する研究会を昨年11 月に発足、2011 年度末の取りまとめを目指している。

大阪府 柏原市

西日本で初めて GNH(グロス・ナショナル・ハピネス)の考え方を取り入れ、GNH の「N」を柏原の「K」に置き換え、柏原市民の GKH(グロス・カシワラ・ハピネス)=総幸福度を高めていくことをまちづくりの理念として掲げている。市はこのほど、まちづくり戦略会議にワーキンググループを設置。

千葉県 柏市

柏市都市計画マスタープランを 2009 年 6月にとりまとめた。同プランの総合的な成果指標として、「トータル指標:住みよさ市民満足度(幸福度)」を採用している模様。

島根県 海土町

第四次海士町総合振興計画として、『島の幸福論』をとりまとめた。今後 10 年かけて島ならではの幸せを追求し、住民一人ひとりが幸福を実感できる社会(「幸せを実感できる島」)を目指すとのこと。同計画の中で、海士町が目指す幸福の指標を定義し、目標達成を目指す模様。

岡山県 瀬戸内市

瀬戸内市のまちづくりの指針となる第2次総合計画(2011〜21 年度)策定に向け、2010 年 7 月 26日に市総合計画審議会の初会合があり、武久顕也市長が「人と自然が織りなす『幸福実感都市』瀬戸内」を将来像とする素案を諮問

(出所) 各地方自治体の公表資料よりみずほ総合研究所作成

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地域に着目した貴重な先行研究としては、カ

ナダを対象とする実証研究として、Helliwell

and Barrington-Leigh(2010)がある。同研究

では、幸福度の地域間格差は大きく、所得水準

や人口密度の高い地域ほど、幸福度が低いこと

を明らかにしている。

日本を対象にした先駆的な研究としては、山

根ほか(2008)があり、幸福度の地域間格差に

ついて分析している。その結果、幸福度の都道

府県間格差は、所得格差よりも小さいこと、性

別、年代、所得、価値観などの個人属性をコン

トロールすると、幸福度の都道府県間格差はほ

とんどみられなくなることを明らかにしている。

他方で、最近の類似研究である森川(2010)

では、個人属性を調整したとしても幸福度の地

域間格差は少なからず存在すること6を示して

いる。また、幸福度の地域間格差に対する所得

水準の影響は極めて小さいことを明らかにし、

所得以外の要因(自然環境や居住環境、コミュ

ニティなど)の影響が大きいことを示唆してい

る。

以上のように、それぞれ興味深い結果が得ら

れているが、使用データや分析手法の違いから

か、必ずしも一致した結論が得られていない7。

幸福度を地域政策に活用するためには、こうし

たテーマに着目した研究をよりいっそう重ね、

信頼できる安定した結論を得る必要があろう。

アンケートに基づく東京都民の幸福度分布

そこで、本稿では、これまでの研究蓄積の補

6 「生活者の意識に関する調査(2005年 11月)」のマイクロデータを用いて、都道府県間格差の存在を統計的に有意に棄

却できないことを明らかにした。また、人口規模等に基づく

都市・地域別には郡部の幸福度が有意に低いことを示した。 7 ただし、山根ほか(2008)では、性、年代、所得、健康などの基本的な個人属性項目に加えて、利他性、危険回避度な

どの価値観項目や、ギャンブル、喫煙などの生活習慣項目を

加えているなど、多数の説明要因を用いて精緻に分析してい

るのに対して、森川(2010)では、データ制約のため、性、年代、所得、健康などの基本的な個人属性項目のみで分析を

行っている。こうした違いが結果の差に影響している可能性

がある。

強を行うために、独自のアンケート調査を実施

することで幸福度の地域間格差について分析を

試みた。

まず、みずほ総合研究所では、2010 年 8 月

に東京都在住の 20 歳以上の男女約 3 千人を対

象にインターネットアンケート調査を行った。

同調査では、個人の主観的幸福度(Subjective

Well-being)に加え、価値観、家族状況、健康

状態、経済状況、居住地域環境などの詳細な個

人属性情報を把握した。幸福度については、「全

体として、あなたは普段どの程度幸せだと感じ

ていますか」と質問し、「とても幸せ」を 10点、

「とても不幸」を 0点として回答を得た。

今回、調査対象地域を東京都に限定したが、

その理由は、次のとおりである。既述の国内先

行研究では、主に都道府県間格差の分析を行っ

ている8が、地域環境の違いを精緻に検証する上

では限界があったと考えられる。例えば、日本

一の穀倉地帯である新潟県のケースを想定する

と、田園地帯の農村部が広がっている一方で、

人口 80 万人を擁する大都市の新潟市がある。

ここに居住する人たちは地方でありながらある

程度都市機能を享受できるなど、県内でも居住

環境は一様ではない。最も都市化が進んでいる

東京都を想定しても、八王子市などの郊外地域

や奥多摩などの自然環境が豊かな地域に居住す

る人たちは、必ずしも都市住民であるとは限ら

ない。すなわち、同一都道府県内でも、エリア

によって居住環境が大きく異なると考えられ、

シンプルな都道府県間格差の検証では、こうし

た違いは考慮されない恐れがある。また、サン

プル数が十分に得られない場合は、同一都道府

県であってもサンプルが都市住民あるいは周辺

住民のいずれかに偏る恐れがあるなど、サンプ

リングバイアスが発生するリスクが高まる。こ

のため、都道府県の地域構造の違いが十分に分

析結果に反映されなかった可能性が指摘されよ

う。

8 主に都道府県ダミー変数を用いた分析を行っている。

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これらの問題を回避するための一つの方法と

しては、同一都道府県内のエリア間で分析する

方法が考えられる。分析対象地域を絞り込むほ

ど、域内の各エリアが、商業地、工業地、住宅

地、農地などに機能分化している可能性が高い

と考えられるが、この場合、地域の特性差が際

立ちやすい上にエリアごとに均質なサンプルが

得やすい。幸福度に対する居住地域環境の影響

差を検証する上では、日本全体を対象にするよ

りも、特定の都道府県を対象に分析する方が、

よりクリアな結果が得られる可能性が高い。

その点、東京都の地域構造は、他道府県に比

べるとバラエティに富んでいる上に、エリアご

との特徴が際立っている。高度に発達した都心

区部(23区)がある一方で、土地の高度利用が

あまり進んでいない郊外部(多摩東部・中央部)

が西方に広がっている。さらには、自然豊かな

山間部(多摩西部)や島しょ地区(大島、八丈

島等)も含まれている。また、東京都は、様々

な地方からの転入者が多く、特定の県民性に左

右されにくいため、回答者バイアスを回避する

効果も期待されよう。

以上の点から、東京都を分析対象にすること

にした。

アンケートのサンプリングについては、今回

は地域間分析に主眼を置いているため、中分類

エリアごとにほぼ均等に回収できるように割付

を行った。また、本源的な個人属性である性別、

年代ごとにもほぼ均等になるように回収を試み

た。その結果、人口の少ない多摩西部と島しょ

部の回収数が少なかったものの、その他のエリ

アについては概ね想定どおりに回収できた。有

効回答総数は、3,192件であった。

まず、都内地域別の平均幸福度をみてみよう

(図表 2参照)。これをみると明らかなように、

全体的には、東京特別区(23区)よりも多摩地

区の方が低い結果となっている。島しょ地区は、

7.00 と最も高いが、サンプル数が 11 件しかな

かったため、この結果は参考程度にとどめるべ

きであろう。

図表 2 東京都大分類地域別の平均幸福度

(全世代)

6.42

6.47

6.36

7.00

5.60 5.80 6.00 6.20 6.40 6.60 6.80 7.00 7.20

東京都全体(n=3192)

東京特別区(23区)(n=1712)

多摩地区(n=1469)

島しょ地区(n=11)

〈東京都エリア区分〉

大分類 中分類 小分類

区内中心部 千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、渋谷区

区内北部 豊島区、板橋区、北区、荒川区、足立区

区内東部 江東区、江戸川区、台東区、墨田区、葛飾区

区内南部 品川区、大田区、目黒区、世田谷区

区内西部 練馬区、中野区、杉並区

多摩東部武蔵野市、三鷹市、調布市、小金井市、小平市、東村山市、国分寺市、西東京市、狛江市、清瀬市、東久留米市

多摩中央部・北エリア立川市、昭島市、福生市、東大和市、武蔵村山市、羽村市、瑞穂町

多摩中央部・南エリア八王子市、府中市、町田市、日野市、国立市、多摩市、稲城市

多摩西部 青梅市、日の出町、あきる野市、檜原村、奥多摩町

島しょ地区大島町、新島村、三宅島三宅村、八丈島八丈町、小笠原村、利島村、神津島村、御蔵島村、青ヶ島村

東京特別区(23区)

多摩地区(市町村部)

(出所)みずほ総合研究所委託調査(調査実施会社:マイ

ボイスコム株式会社)「地域住民の幸福度調査」

(2010年 8月実施)

また、図表 3は、サンプル数の少ない島しょ

地区を除く、9 つの中分類エリア区分に沿って

集計したものである。まず、全世代の結果をみ

ると、千代田区、中央区、港区などの区内中心

部の平均幸福度が最も高く、次いで、区内北部、

区内西部、区内南部となっている。

世代別に分割した結果をみると、世代によっ

て平均幸福度の高いエリアが異なっていること

がわかる。20~30歳代及び 40~50歳代は、区

内中心部が最も幸福度が高くなっているが、60

歳以上の高齢者は、それほど高くなっていない。

代わりに、区内北部が最も高くなっており、多

摩東部や多摩中央部・南エリアが高くなってい

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る。また、20~30歳代と 40~50歳代の 2番目

以降に高いエリアを比較すると、区内西部はい

ずれも高いが、区内東部は 20~30 歳代のみ高

くなっている。他方で、区内南部は、40~50

歳代では高くなっているものの、20~30歳代で

は低い。詳細にみると幸福度が高いエリアに違

いがみられるようだ。

さらに、市区町村別に平均幸福度を集計した

図表 4をみると、地域別の状況がより鮮明にな

る。東京特別区(23 区)の中でも、千代田区、

中央区、港区などの都心中心エリアよりは、そ

の周辺に位置する渋谷区や目黒区などのいわゆ

る山の手エリアや、足立区、墨田区、江東区な

どの東部下町エリアが高くなっている。また、

多摩地区に目を向けると、多摩市や町田市など

の郊外南部エリアも比較的高い。他方で、清瀬

市、東村山市、小平市、小金井市、府中市など

の郊外近郊中部・北部エリアは幸福度が相対的

に低くなっている9。

9 ただし、市区町村別の集計結果は、一部の市区町村が欠損値になっていることと、サンプル数が少ない市区町村が含ま

れるため、解釈には注意されたい。なお、千代田区、国立市、

清瀬市と島しょ地区は、サンプル数は 20件以下であった。その他の市区町村のサンプル数はばらつきがあるものの、平均

すると 68件であった。

図表 3 東京都中分類地域別の平均幸福度(全世代・世代別)

(出所)みずほ総合研究所委託調査(調査実施会社:マイボイスコム株式会社)「地域住民の幸福度調査」(2010年 8月実施)

6.58

6.48

6.47

6.45

6.44

6.37

6.34

6.32

6.17

5.90 6.00 6.10 6.20 6.30 6.40 6.50 6.60 6.70

区内中心部(n=283)

区内北部(n=351)

区内西部(n=347)

区内南部(n=376)

多摩中央部・南エリア(n=504)

区内東部(n=355)

多摩中央部・北エリア(n=365)

多摩東部(n=499)

多摩西部(n=101)

〈全世代〉

6.54

6.45

6.44

6.39

6.34

6.32

6.17

6.17

6.15

5.90 6.00 6.10 6.20 6.30 6.40 6.50 6.60

区内中心部(n=103)

区内西部(n=132)

区内東部(n=144)

多摩中央部・北エリア(n=154)

多摩中央部・南エリア(n=203)

区内北部(n=153)

区内南部(n=144)

多摩東部(n=205)

多摩西部(n=40)

〈20~30歳代〉

6.46

6.44

6.31

6.23

6.22

6.18

6.15

6.13

6.09

5.90 6.00 6.10 6.20 6.30 6.40 6.50

区内中心部(n=122)

区内南部(n=138)

区内西部(n=137)

多摩中央部・南エリア(n=193)

区内北部(n=122)

区内東部(n=148)

多摩中央部・北エリア(n=167)

多摩西部(n=54)

多摩東部(n=195)

〈40~50歳代〉

7.21

7.10

6.99

6.91

6.91

6.90

6.78

6.65

6.57

6.20 6.40 6.60 6.80 7.00 7.20 7.40

区内北部(n=76)

多摩東部(n=99)

多摩中央部・南エリア(n=108)

区内南部(n=94)

多摩中央部・北エリア(n=44)

区内中心部(n=58)

区内西部(n=78)

区内東部(n=63)

多摩西部(n=7)

〈60歳以上〉

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6

居住地域環境の差が幸福度に影響するのか

ただし、上記の結果は、あくまでも平均値で

あり、地域別の実態を示すものの、その解釈に

は注意を要する。すなわち、幸福度の高いエリ

アは、たまたま幸福度の高い個人が数多く移り

住んできた結果かもしれない。平均値が高いか

らといって、幸福度が高まりやすい居住地域環

境であるとは限らない。このため、居住地域環

境が幸福度に影響するか否かを検証するために

は、まずは、東京都民の幸福度の決定要因を解

明した上で、性別、年代、所得などの個人属性

要因を調整する必要がある。

そこで、本稿では、主観的幸福度を個人属性

要因と居住地域環境要因(市区町村ダミー)で

説明するシンプルなモデルを想定し、幸福度関

数の推定を試みた10。被説明変数の主観的幸福

10 具体的な推定方法は、後掲の【補論 1】を参照されたい。

度は、既述の通り、10点から 0点の 11段階の

順序尺度データであるため、推定手法は、順序

プロビットモデル(Ordered Probit model)を

採用する11。ここで想定した個人属性要因には、

性別、年齢などの本源的属性に加え、価値観、

健康状態、経済状態、生活状態、人間関係、生

活習慣等の様々な要因を考慮した。先行研究等

で重要性が指摘されている要因を中心に説明変

数を採用している12。このモデルを用いて個人

属性要因をコントロールしてもなお、統計的に

有意な地域差がみられる場合は、居住地域環境

が幸福度に何らかの影響を及ぼしていると考え

られるだろう。

推定結果の詳細は、後掲参考図表 1の通りで

11被説明変数のデータが、連続データではなく順位が付けられ

た質的データで捉える場合、通常の最小二乗法(OLS)では、一致性が満たされなくなる可能性がある。このため、順序プ

ロビットモデルによる推定を行った。 12個人属性要因の変数選択は、山根ほか(2008)、白石・白石(2007)、松浦(2002)などを参考に検討した。

(出所)みずほ総合研究所委託調査(調査実施会社:マイボイスコム株式会社)「地域住民の幸福度調査」(2010年 8月実施)

図表 4 東京都市区町村別の平均幸福度(全世代)

千代田区

中央区

港区

新宿区

文京区

渋谷区

豊島区

板橋区 北区

荒川区

足立区

江東区

江戸川区台東区墨田区

葛飾区

品川区

大田区

目黒区世田谷区

練馬区

中野区杉並区

武蔵野市

三鷹市

調布市

小金井市

小平市

東村山市

国分寺市

西東京市

狛江市

清瀬市

東久留米市

立川市昭島市

福生市東大和市

武蔵村山市羽村市

瑞穂町

八王子市府中市

町田市

日野市

国立市

多摩市稲城市

青梅市

日の出町

あきる野市桧原村

奥多摩町

千代田区

中央区

港区

新宿区

文京区

渋谷区

豊島区

板橋区 北区

荒川区

足立区

江東区

江戸川区台東区墨田区

葛飾区

品川区

大田区

目黒区世田谷区

練馬区

中野区杉並区

武蔵野市

三鷹市

調布市

小金井市

小平市

東村山市

国分寺市

西東京市

狛江市

清瀬市

東久留米市

立川市昭島市

福生市東大和市

武蔵村山市羽村市

瑞穂町

八王子市府中市

町田市

日野市

国立市

多摩市稲城市

青梅市

日の出町

あきる野市桧原村

奥多摩町

千代田区

中央区

港区

新宿区

文京区

渋谷区

豊島区

板橋区 北区

荒川区

足立区

江東区

江戸川区台東区墨田区

葛飾区

品川区

大田区

目黒区世田谷区

練馬区

中野区杉並区

武蔵野市

三鷹市

調布市

小金井市

小平市

東村山市

国分寺市

西東京市

狛江市

清瀬市

東久留米市

立川市昭島市

福生市東大和市

武蔵村山市羽村市

瑞穂町

八王子市府中市

町田市

日野市

国立市

多摩市稲城市

青梅市

日の出町

あきる野市桧原村

奥多摩町

千代田区

中央区

港区

新宿区

文京区

渋谷区

豊島区

板橋区 北区

荒川区

足立区

江東区

江戸川区台東区墨田区

葛飾区

品川区

大田区

目黒区世田谷区

練馬区

中野区杉並区

武蔵野市

三鷹市

調布市

小金井市

小平市

東村山市

国分寺市

西東京市

狛江市

清瀬市

東久留米市

立川市昭島市

福生市東大和市

武蔵村山市羽村市

瑞穂町

八王子市府中市

町田市

日野市

国立市

多摩市稲城市

青梅市

日の出町

あきる野市桧原村

奥多摩町

郊外近郊の中・北部エリアは

幸福度が低くなっている

都心近郊東部の下町エリア

は幸福度が高くなっている

郊外南部エリアは幸福度

が高くなっている

都心近郊西部の山の手エリアは

幸福度が高くなっている

大島町

新島村

三宅村 八丈町

小笠原村

利島村

神津島村

御蔵島村 青ヶ島村

大島町

新島村

三宅村 八丈町

小笠原村

利島村

神津島村

御蔵島村 青ヶ島村

大島町

新島村

三宅村 八丈町

小笠原村

利島村

神津島村

御蔵島村 青ヶ島村

(pt)

6.616.496.345.96

幸福度

欠損値

欠損値

欠損値

欠損値

欠損値

欠損値

Page 7: 「幸福度」は地域政策の検討に役立つのか...() わが国においても、昨年から幸福度を政策に 活用することを目指した取組みが進められてい

7

ある。個人属性要因の推定結果は、おおむね期

待どおりであり、各説明変数に係る係数の符号

条件は、先行研究の分析結果と整合しているも

のが多かった。今回の試みで、ある程度、個人

属性要因を捉えることができたと考えられる。

ここでは、解釈の煩雑さを避けるために、個人

属性要因については詳しく触れず、居住地域環

境要因(市区町村ダミー)の結果に着目する13。

図表 5は、市区町村ダミーの推定結果を抜粋し

たものである。

参照基準は、いくつかのパターンを試す中で、

市区町村ダミー変数の係数が最も低い結果とな

った東村山市とした。したがって、ここでの各

市区町村の推定結果は、東村山市に居住する場

合に比べて、どの程度幸福度が高くなるかを示

している。

市区町村ダミー変数の推定結果をみれば明ら

かなように、統計的に有意な結果が多数みられ

る。有意水準 10%においては 29 市区町村が、

東村山市に対して有意にプラスとなっている。

有意水準 5%で確認しても 15市区町村が有意な

結果となっている。すなわち、この結果は、居

住地域環境の差が幸福度に何らかの影響を及ぼ

す可能性が高いことを示唆しているといえよう

14。

幸福度が高まりやすい居住地域とは

それでは、幸福度が高まりやすい居住地域と

はどの様な地域なのか。今回の推定結果をベー

スに個人属性調整後の市区町村別幸福度(個人

属性調整後加重平均幸福度)を試算した15。

13 個人属性要因の推定結果に対する解釈は、後掲【補論 2】の「推定結果にみる東京都民の幸福度構造」を参照されたい。 14 ただし、市区町村ダミーの参照基準地域を最も係数の低い東村山市にしているため、同市が特異な地域である場合は、

その特異性により有意な結果になる恐れがある。このため、

参照基準地域を入れ替えて、他の市区町村を参照基準地域と

したパターンもいくつか試した。その結果、係数が中位値に

近く十分にサンプルがある世田谷区の場合は、有意水準 10%点において、有意な結果が 2地域、比較的係数が高い足立区では、有意な結果が 10地域あった。 15具体的な試算方法は、後掲の【補論 1】を参照されたい。

図表 5 居住地域環境要因の推定結果(抜粋)

千代田区 0.7956 **

中央区 0.6308 **

港区 0.2760

新宿区 0.5309 **

文京区 0.1823

渋谷区 0.6307 **

豊島区 0.4563 *

板橋区 0.5253 **

北区 0.4531

荒川区 0.4211

足立区 0.6648 ***

江東区 0.4831 **

江戸川区 0.4596 *

台東区 0.3647

墨田区 0.6384 **

葛飾区 0.4384 *

品川区 0.5266 *

大田区 0.3273

目黒区 0.6500 **

世田谷区 0.4039 *

練馬区 0.3772

中野区 0.5473 **

杉並区 0.4755 **

武蔵野市 0.3998

三鷹市 0.4847 *

調布市 0.3439

小金井市 0.1979

小平市 0.2245

東村山市 参照基準

国分寺市 0.4884 *

西東京市 0.7558 ***

狛江市 0.2076

清瀬市 0.1736

東久留米市 0.5059 *

立川市 0.4656 **

昭島市 0.4647 *

福生市 0.0909

東大和市 0.5428 **

武蔵村山市 0.6342 **

羽村市 0.5326 *

八王子市 0.3077

府中市 0.3047

町田市 0.4631 **

日野市 0.6348 **

国立市 0.2797

多摩市 0.4447 *

稲城市 0.5801 *

青梅市 0.3445

あきる野市 0.4796

島しょ地区 0.2695

多摩地区(市町村部)

係数市区町村ダミー変数

特別区(23区)

(備考) 係数の右付け印(*)は、z値に基づく検定結果を示し、印(*)の数が多いほど有意性が高いことを意味する。すなわち、“***”が有意水準1%、“**”が有意水準5%、“*”が有意水準10%をそれぞ

れ示す

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8

試算結果の詳細は、後掲参考図表 2に記載し

ているが、最も高い市区町村は、千代田区であ

った。次いで、西東京市、足立区、目黒区、墨

田区、武蔵村山市の順であった。また、数値が

最も高い千代田区は、6.68である一方で、最も

低い東村山市は 5.37であった。すなわち、個人

属性を調整したとしても、都内だけで最大 1.31

ポイントもの地域差が存在することになる。

ここでは、直感的にわかりやすく表現するた

めに、各市区町村の個人属性調整後加重平均幸

福度を 4 分位で色分けして地図を作成した(図

表 6参照)。これをみると、大まかな傾向として

次のような特徴がみられる。

まず、千代田区、中央区の都心コアエリアは、

個人属性調整後の平均幸福度が高くなっている。

また、渋谷区、目黒区などの山手線沿線の南西

部エリアや、新宿区、中野区、杉並区などの中

央線沿線エリアも比較的高い。他方で、江東区、

墨田区、足立区などのいわゆる下町エリアも個

人属性調整後の平均幸福度が高い。さらに、郊

外に目を向けると、武蔵村山市、東大和市、立

川市、日野市、町田市などの郊外縁辺部が比較

的高くなっている。他方で、清瀬市、東村山市、

小平市、小金井市などの郊外近郊中部・北部エ

リアが相対的に低くなっている。

こうしてみると、様々な理由に基づき居住環

境が幸福度に影響しているように推察される。

すなわち、いわゆる山の手エリアや都心コアエ

リアなどでは、都心アクセスや商業性、アメニ

ティの発達が寄与しているようにみえる。また、

(備考)個人属性調整後の加重平均幸福度は、標準正規分布の確率密度関数を用いて、アンケート調査で捉えた主観的幸福度(とても幸福:10~とても不幸:0)の各ランク(11 段階)の選択確率を市区町村別に推計した上で加重平均値を算出。選択確率を算出する際の個人属性要因のうち連続変数については平均値を代入し、ダミー変数は原則参照基準で推計した。

(出所)みずほ総合研究所委託調査(調査実施会社:マイボイスコム株式会社)「地域住民の幸福度調査」(2010年 8月実施)を用いて分析

図表 6 東京都市区町村別の個人属性調整後加重平均幸福度(全世代)

6.2678

6.1553

5.9309

5.83350 20km

足立区***

葛飾区*

江戸川区*

北区 板橋区**

荒川区 練馬区 豊島区*

墨田区**

江東区**

千代田区**

中央区**

港区

新宿区**

文京区

渋谷区**

品川区*

目黒区**

大田区

世田谷区*

中野区**

杉並区**

台東区

三鷹市*

国分寺市*

西東京市***

東久留米市*

立川市**

昭島市*

東大和市** 武蔵村山市** 羽村市*

町田市**

日野市**

多摩市* 稲城市*

八王子市

桧原村

奥多摩町

青梅市

日の出町

あきる野市

瑞穂町

福生市

調布市*

狛江市*

国立市

府中市

小金井市 武蔵野市

小平市

清瀬市

東村山市

大島町

利島村

新島村

神津島村

小笠原村

三宅村 八丈町

御蔵島村 青ヶ島村

個人属性調整後

の平均幸福度

欠損値

欠損値

欠損値

欠損値

23区内北東部の下町エリアは幸福度が高まりやすい居住環境かもしれない

23区内都心コアエリアは、幸福度が高まりやすい居住環境かもしれない

※市区町村名の添付け印(*)は、印(*)の数が多いほど有意性が高いことを示す。すなわち、“***”が有意水準1%、“**”が有意水準5%、“*”が有意水準10%をそれぞれ示す

郊外縁辺エリアは幸福度が高まりやすい居住環境かもしれない

23区内の山手線沿線南西部エリアは、幸福度が高まりやすい居住環境かもしれない

都心近郊の中央線沿線エリアは、幸福度が高まりやすい居住環境かもしれない

郊外近郊中部・北部エリアは幸福度が高まりにくい居住環境である可能性がある

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墨田区、足立区などでは、下町ならではの地域

コミュニティの発達が貢献している可能性があ

ろう。また、郊外縁辺部においては、少し足を

伸ばせば豊かな自然環境を享受できるため、田

舎に近い暮らし方が可能である。こうした特性

が、幸福度を高めているかもしれない。

もっとも、これらの解釈は推察の域をでない

ため、引き続き詳細な検証が必要であろう。生

活環境(アメニティ)やコミュニティの違いに

よる影響なのか、あるいは治安や行政基盤の差

による影響なのか、あらゆる視点で明らかにす

る必要がある。また、Oshio, Kobayashi (2009)

では、所得格差の大きい地域に居住する人は、

幸福度が低くなることを明らかにしている。さ

らに、小林(2010)では、貧困が深刻な地域に

居住する人は、たとえ自身が高所得者であった

としても幸福度が低くなることを明らかにして

いる。すなわち、地域の格差感などの世相的な

要因も無視できないと考えられる。今回の分析

結果からは、郊外近郊の中部・北部エリアの幸

福度が相対的に低かったが、これらの原因を明

らかにするためにも、幅広い視点で幸福度の地

域因子を特定する必要があろう。

幸福度を地域政策に活用するために

以上のように、今回の推定結果を前提にする

と、幸福度は居住地域環境の影響を受ける可能

性が高く、少なくともその意味においては地域

政策の検討に活用可能であることが示唆された。

ただし、実際に活用する際は、各地域の特性に

応じたより詳細な分析を進める必要があるとと

もに、政策的にコントロール可能な因子を抽出

する必要がある。また、抽出した因子は、政府

が関与するべきなのか、地方自治体が関与する

べきなのか、あるいは、民間企業や地域住民の

自助努力で改善するべき因子なのか、適切に判

断する必要があろう。

もっとも、幸福度そのものが有する課題や限

界があることも忘れてはならない。今回の分析

では、幸福感を直接回答者に問う主観的幸福度

(Subjective Well-being)を用いたが、そもそ

も個人の主観的な感情を客観的に測ることがで

きるのかについては、研究者間でも未だ意見が

分かれている。

また、幸福度は、政策展開の結果として一時

的に高まったとしても、その状況に慣れてしま

うことで、元の水準に戻るかもしれないという

順応性(順応仮説)を持つことが知られている。

すなわち、政策内容によっては、こうしたリス

クがあることを、政策担当者としては予め考え

なければならない。

こうした課題の克服は、基礎研究の発展を待

たなければならないが、近年、世界各国の研究

者によって数多くの学術論文やエッセイが発表

されている。したがって、将来的には幸福度の

特性や決定メカニズムの詳細が徐々に解明され

ることが期待されよう16。それまでは、活用す

る上での課題や限界があることを十分に留意し

た上で政策検討の参考にするべきである。

幸福度は、今までにない視点を提供してくれ

るため、その活用は望ましいと考えられる。幸

福度を導入しようとする政策担当者はミスリー

ドしないように慎重なスタンスで活用すること

が望まれる。

≪参考文献≫

Oshio, Kobayashi (2009)“Regional income

inequality and happiness: Evidence from Japan”

No 460, PIE/CIS Discussion Paper from Center

for Intergenerational Studies, Institute of

Economic Research, Hitotsubashi University

Di Tella, Rafael and Robert MacCulloch (2006),

"Some Uses of Happiness Data in

Economics,"Journal of Economic Perspectives,

Vol. 20, No. 1, pp. 25-46.

16詳しくは、Frey and Stutzer(2002b)、Di Tella and MacCulloch(2006)、Helliwell (2006)、白石・白石(2006)、Fleurbaey (2009)などのサーベイ論文等を参照されたい。

Page 10: 「幸福度」は地域政策の検討に役立つのか...() わが国においても、昨年から幸福度を政策に 活用することを目指した取組みが進められてい

10

Easterlin, Richard A (1974) Does Economic

Growth Improve the Human lot? Some

Empirical Evidence. Nations and

Households in Economic Growth: Essays

in Honour of Moses Abramowitz. New York

and London: Academic Press, 89-125

Frey,B.S., and Stutzer, A.(2002a) Happiness

and Economics, Princeton University

Press (邦訳 佐和隆光監訳・沢崎冬日訳『幸

福の政治経済学-人々の幸せを促進するも

のは何か-』ダイヤモンド社、2005年)

Frey,B.S.,and Stutzer, A.(2002b) “What can

economists learn from happiness

research?”,Journal of Economic Literature

40,402-435.

Fleurbaey, Marc (2009), "Beyond GDP: The

Quest for a Measure of Social Welfare,"

Journal of Economic Literature, Vol. 47,

No. 4, pp. 1029–1075.

Helliwell, John F. (2006), "Well-Being, Social

Capital and Public Policy: What's

New?"Economic Journal, Vol. 116, March,

pp. C34-C45.

Veenhoven (2004) Happy Life Years : A

measure of Gross National Happiness

大竹文雄・白石小百合・筒井義郎編著(2010)

『日本の幸福度』日本評論社

小塩隆士(2010)『再分配の厚生分析~公平と

効率を問う~』日本評論社

小林美樹(2010)「地域の貧困と人々の幸福度」

『生活経済研究』31 巻,p1-11,

白石賢・白石小百合 (2006) 「幸福度研究の

現状と課題」内閣府経済社会総合研究所ディ

スカッション・ペーパー第 165 号

白石小百合・白石賢 (2007) 「少子化社会に

おけるワーク・ライフ・バランスと幸福感

-非線形パネルによる推計-」内閣府経済社

会総合研究所ディスカッション・ペーパー第

181号

袖川芳之・田邊健 (2007) 「幸福度に関する

研究」内閣府経済社会総合研究所ディスカッ

ション・ペーパー第 182 号

筒井義郎・大竹文雄・池田新介 (2005) 「な

ぜあなたは不幸なのか」大阪大学社会経済研

究所ディスカッション・ペーパー第 630 号

辻隆司・眞鍋尚行・大塚亮一(2009)「重要度

が増す「幸福度」研究~生活者の視点に立っ

た新たな行政評価指標の構築に向けて~」み

ずほ総合研究所株式会社 Working Papers

2009年 9月 17日発行

松浦克己(2002)「黄昏の幸せ-高齢者の幸せ感

を支えるもの」郵政研究所ディスカッション

ペーパーシリーズ No.2002-02

森川正之(2010)「地域間経済格差について:

実質賃金・幸福度」経済産業省経済産業研究

所 RIETI Discussion Paper Series 10-J-043

山根智沙子・山根承子・筒井義郎(2008)「幸

福度で測った地域間格差」 Discussion

Papers In Economics And Business Vol. :

08-29

みずほ総合研究所 研究開発部

主任研究員 辻 隆司

[email protected]

Page 11: 「幸福度」は地域政策の検討に役立つのか...() わが国においても、昨年から幸福度を政策に 活用することを目指した取組みが進められてい

11

被説明変数:主観的幸福度(Subjective Well-being)(とても幸福:10~とても不幸:0)

Method: ML - Ordered Probit (Quadratic hill climbing)

カテゴリー 説明変数の詳細 標準誤差 p値

女性 参照基準

男性 男性ダミー(該当:1、非該当:0) -0.154619 ** 0.061 0.011

20代 参照基準

30代 30代ダミー(該当:1、非該当:0) 0.104117 0.083 0.212

40代 40代ダミー(該当:1、非該当:0) 0.102034 0.096 0.286

50代 50代ダミー(該当:1、非該当:0) 0.096416 0.105 0.356

60代以上 60代以上ダミー(該当:1、非該当:0) 0.199982 * 0.116 0.086

傘をもって出かけるときの降水確率。数値が高いほど危険回避的 -0.001957 0.001 0.104

所得に対する寄付金割合。数値が高いほど利他的 0.067005 *** 0.025 0.006

子供のころの宿題をする時期。数値が高いほど時間割引率が高い 0.000115 0.016 0.994

数値が高いほど、他人の生活水準を意識している -0.09546 *** 0.023 0.000

良好:5~良好でない:1 0.284532 *** 0.028 0.000

良好:5~良好でない:1、家族:親・子、兄弟姉妹、祖父母 0.107051 *** 0.028 0.000

等価収入(万円) 世帯収入を同居人数で除したもの 0.000599 *** 0.000 0.008

等価収入の二乗項 -8.45E-08 0.000 0.536

2008年度と比べた2009年度の税込み年間総収入の変化率(実績) 0.025758 *** 0.005 0.000

2009年度と比べた2010年度(今年度)の税込み年間総収入の変化率(予想) 0.0139 ** 0.005 0.011

世帯が抱える負債(住宅ローン除く)を同居人数で除したもの -0.0000457 0.000 0.303

会社員・団体職員 参照基準

役員 役員ダミー(該当:1、非該当:0) 0.041184 0.139 0.768

自営業 自営業ダミー(該当:1、非該当:0) -0.027611 0.091 0.762

専門職 専門職ダミー(医師・弁護士・会計士等)(該当:1、非該当:0) 0.155408 0.185 0.401

公務員 公務員ダミー(教師・大学教員を除く)(該当:1、非該当:0) 0.139849 0.145 0.336

教師・大学教員 教師・大学教員ダミー(該当:1、非該当:0) -0.083485 0.136 0.539

学生 学生ダミー(該当:1、非該当:0) 0.229834 0.165 0.163

専業主婦・主夫 専業主婦・専業主夫ダミー(該当:1、非該当:0) -0.161834 0.109 0.138

その他の職業 その他の職業ダミー(該当:1、非該当:0) 0.024618 0.093 0.792

無職 無職ダミー(退職・求職中を含む) 該当:1、非該当:0 -0.002888 0.130 0.982

仕事時間 平日の1日(24時間)に占める割合 -0.122831 0.258 0.635

家族・友人等と過ごす時間 平日の1日(24時間)に占める割合。食事・団らん、レジャー等含む 1.165608 *** 0.327 0.000

一人で過ごす自由な時間 平日の1日(24時間)に占める割合 -0.048633 0.274 0.859

既婚 参照基準

独身 独身ダミー(該当:1、非該当:0) 0.070306 0.091 0.440

子供人数 子供人数(人) 0.080684 ** 0.033 0.015

就学前児童がいる 家族に就学前の子供(0~5歳)がいる(該当:1、非該当:0) 0.155857 * 0.092 0.090

思春期の子供がいる 家族に思春期の子供(10~19歳)がいる(該当:1、非該当:0) -0.017509 0.081 0.829

子育てが上手くいってない 子育て(18歳未満の子の教育・育児)がうまくいっていない(該当:1、非該当:0) -0.16752 0.189 0.375

同居人数(人) 0.007891 0.036 0.826

夫婦と子供のみ 参照基準(夫婦(または片親)と未婚の子供)

ひとり暮らし ひとり暮しダミー(該当:1、非該当:0) -0.10058 0.117 0.388

夫婦のみ 夫婦のみダミー(該当:1、非該当:0) 0.120831 0.081 0.134

2世代同居 2世代同居ダミー(該当:1、非該当:0) -0.15853 * 0.081 0.051

3世代同居 3世代同居ダミー(該当:1、非該当:0) -0.008987 0.118 0.939

その他 その他ダミー(該当:1、非該当:0) -0.231081 * 0.135 0.088

持ち家(一戸建) 参照基準

持ち家(集合住宅) 持ち家(集合住宅)ダミー(該当:1、非該当:0) -0.024971 0.060 0.677

借家(一戸建) 借家(一戸建)ダミー(該当:1、非該当:0) 0.0533 0.164 0.745

借家(集合住宅) 借家(集合住宅)ダミー(該当:1、非該当:0) -0.194436 *** 0.065 0.003

寮・社宅 寮・社宅ダミー(該当:1、非該当:0) 0.087518 0.134 0.514

その他 その他ダミー(該当:1、非該当:0) 0.272986 0.203 0.179

結婚生活 結婚生活が上手くいっていない(該当:1、非該当:0) -0.407721 *** 0.099 0.000

介護 家族・同居人の介護をしている(該当:1、非該当:0) 0.010999 0.123 0.929

仕事の状況 現在、仕事が上手くいっていない(該当:1、非該当:0) -0.447598 *** 0.080 0.000

ボランティア 積極的にボランティア活動をしている(町内の自治会活動等も含む)(該当:1、非該当:0) 0.014842 0.085 0.861

自己啓発 自己啓発をしている(該当:1、非該当:0) 0.160408 ** 0.063 0.011

憩いの場所 近くの公園など、憩いの場所でくつろぐことが多い(該当:1、非該当:0) 0.118583 0.099 0.231

生活リズム 規則正しい生活がおくれていない(該当:1、非該当:0) -0.16301 *** 0.063 0.010

仕事が多忙、休暇不足 仕事が忙しすぎて休暇が十分に取れない(該当:1、非該当:0) -0.044639 0.079 0.572

求職中 現在、失業しており求職中である(該当:1、非該当:0) -0.228637 0.156 0.143

友人は少ないほうだ(該当:1、非該当:0) -0.083439 0.059 0.159

知人は少ないほうだ(該当:1、非該当:0) -0.044978 0.071 0.529

困ったときは親身になって相談にのってくれる人がいる(該当:1、非該当:0) 0.32194 *** 0.055 0.000

家族との食事頻度 家族と一緒にとることが多い(夕食が週5日以上)(該当:1、非該当:0) 0.070549 *** 0.020 0.000

友人知人との食事頻度 友人・知人と一緒にとることが多い(夕食が週2日以上)(該当:1、非該当:0) 0.046333 ** 0.024 0.049

タバコを毎日吸っている(該当:1、非該当:0) -0.016186 0.016 0.300

ギャンブル(パチンコ、競馬、競輪、競艇など)にはまっている(該当:1、非該当:0) -0.050028 * 0.027 0.063

ほぼ毎日、多量のお酒を飲んでいる(該当:1、非該当:0) -0.007979 0.021 0.705

神、仏、天使、悪霊などのスピリチュアルなものが実在すると信じている(該当:1、非該当:0) 0.082705 *** 0.019 0.000

大学卒 参照基準

大学院卒 大学院卒ダミー(該当:1、非該当:0) 0.17189 * 0.093 0.065

短大・高専卒 短大・高専卒ダミー(該当:1、非該当:0) -0.016665 0.076 0.827

専門学校卒 専門学校卒ダミー(該当:1、非該当:0) -0.019391 0.077 0.801

高校卒 高校卒ダミー(該当:1、非該当:0) -0.046999 0.064 0.464

中学卒 中学卒ダミー(該当:1、非該当:0) 0.032892 0.337 0.922

その他 その他ダミー(該当:1、非該当:0) 0.32659 0.234 0.164

親との死別 過去5年以内に親を亡くした(該当:1、非該当:0) -0.025289 0.062 0.681

子供との死別 過去5年以内に子供を亡くした(該当:1、非該当:0) -0.59891 ** 0.269 0.026

犯罪被害経験 過去5年以内に犯罪の被害を受け、深く心を痛めたことがある(該当:1、非該当:0) -0.156294 0.145 0.281

失業経験 過去5年以内に失業したことがある(該当:1、非該当:0) -0.011964 0.077 0.877(備考)係数の右付け印(*)は、z値に基づく検定結果を示し、印(*)の数が多いほど有意性が高いことを意味する。すなわち、“***”が有意水準1%、“**”が有意水準5%、“*”が有意水準10%をそれぞれ示す

性別

本源的属性

結婚有無

家族の健康状態

他人の生活水準への関心度

利他性

危険回避度

時間割引率

自身の健康状態

年齢

価値観

食事

喫煙

友人が少ない

知人が少ない

信頼できる人がいる

その他

等価負債(万円)

係数

人生経歴

生活習慣

人間関係

生活状態

経済状態

健康状態

職業

子育て

学歴

不幸

ギャンブル

酒量

宗教・信仰

説明変数

生活時間

世帯形態

住宅形態

同居人数

世帯収入の変化率(予想)

世帯収入の変化率(実績)

等価収入^2(万円)

参考図表 1 順序プロビットモデルによる幸福度関数の推定結果

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12

(推定結果(つづき))カテゴリー 説明変数の詳細 標準誤差 p値

千代田区 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.7956 ** 0.353 0.024

中央区 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.6308 ** 0.302 0.037

港区 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.2760 0.252 0.274

新宿区 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.5309 ** 0.241 0.028

文京区 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.1823 0.265 0.491

渋谷区 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.6307 ** 0.261 0.016

豊島区 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.4563 * 0.247 0.065

板橋区 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.5253 ** 0.244 0.032

北区 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.4531 0.277 0.101

荒川区 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.4211 0.288 0.144

足立区 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.6648 *** 0.257 0.010

江東区 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.4831 ** 0.243 0.047

江戸川区 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.4596 * 0.237 0.052

台東区 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.3647 0.282 0.196

墨田区 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.6384 ** 0.303 0.035

葛飾区 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.4384 * 0.260 0.092

品川区 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.5266 * 0.272 0.053

大田区 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.3273 0.243 0.179

目黒区 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.6500 ** 0.287 0.024

世田谷区 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.4039 * 0.232 0.082

練馬区 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.3772 0.231 0.103

中野区 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.5473 ** 0.248 0.027

杉並区 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.4755 ** 0.242 0.050

武蔵野市 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.3998 0.268 0.135

三鷹市 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.4847 * 0.258 0.060

調布市 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.3439 0.265 0.195

小金井市 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.1979 0.283 0.484

小平市 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.2245 0.268 0.402

東村山市 参照基準

国分寺市 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.4884 * 0.278 0.079

西東京市 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.7558 *** 0.261 0.004

狛江市 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.2076 0.283 0.463

清瀬市 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.1736 0.402 0.666

東久留米市 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.5059 * 0.300 0.092

立川市 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.4656 ** 0.236 0.049

昭島市 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.4647 * 0.247 0.060

福生市 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.0909 0.297 0.760

東大和市 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.5428 ** 0.268 0.043

武蔵村山市 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.6342 ** 0.306 0.039

羽村市 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.5326 * 0.272 0.050

八王子市 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.3077 0.235 0.190

府中市 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.3047 0.269 0.257

町田市 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.4631 ** 0.235 0.049

日野市 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.6348 ** 0.267 0.017

国立市 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.2797 0.303 0.356

多摩市 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.4447 * 0.259 0.087

稲城市 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.5801 * 0.314 0.065

青梅市 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.3445 0.282 0.222

あきる野市 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.4796 0.308 0.120

島しょ地区 市区町村ダミー(該当:1、非該当:0) 0.2695 0.451 0.550

(備考)係数の右付け印(*)は、z値に基づく検定結果を示し、印(*)の数が多いほど有意性が高いことを意味する。すなわち、“***”が有意水準1%、“**”が有意水準5%、“*”が有意水準10%をそれぞれ示す

[Limit Points]

LIMIT_1:C(122) -0.7433 0.367967 0.043

LIMIT_2:C(123) -0.4586 0.361368 0.205

LIMIT_3:C(124) 0.0064 0.362971 0.986

LIMIT_4:C(125) 0.5183 0.360798 0.151

LIMIT_5:C(126) 0.8456 0.361004 0.019

LIMIT_6:C(127) 1.5166 0.361607 0.000

LIMIT_7:C(128) 2.0231 0.362885 0.000

LIMIT_8:C(129) 2.7157 0.364412 0.000

LIMIT_9:C(130) 3.6747 0.366507 0.000

LIMIT_10:C(131) 4.2720 0.370351 0.000

Pseudo R-squared 0.106355

Observations 2,359 after adjustments

居住地域

説明変数

特別区(23区)

係数

多摩地区(市町村部)

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13

参考図表 2 推定結果に基づく幸福度(各ランク)の選択確率と個人属性調整後加重平均幸福度

← 幸福度 →

0点 1点 2点 3点 4点 5点 6点 7点 8点 9点 10点

千代田区 0.13% 0.19% 0.85% 2.77% 3.69% 14.74% 17.63% 26.98% 24.93% 5.81% 2.30% 6.68

中央区 0.21% 0.29% 1.25% 3.79% 4.72% 17.31% 18.88% 26.24% 21.39% 4.37% 1.54% 6.42

港区 0.62% 0.72% 2.66% 6.77% 7.33% 22.39% 19.99% 22.63% 14.13% 2.16% 0.60% 5.84

新宿区 0.29% 0.38% 1.57% 4.52% 5.41% 18.84% 19.43% 25.48% 19.26% 3.63% 1.19% 6.27

文京区 0.80% 0.89% 3.18% 7.73% 8.06% 23.49% 19.88% 21.32% 12.42% 1.76% 0.45% 5.68

渋谷区 0.22% 0.29% 1.25% 3.79% 4.72% 17.31% 18.88% 26.24% 21.39% 4.37% 1.54% 6.42

豊島区 0.37% 0.46% 1.84% 5.12% 5.95% 19.95% 19.72% 24.77% 17.71% 3.14% 0.98% 6.14

板橋区 0.30% 0.39% 1.59% 4.56% 5.45% 18.92% 19.45% 25.43% 19.15% 3.59% 1.17% 6.26

北区 0.37% 0.47% 1.86% 5.15% 5.98% 19.99% 19.73% 24.73% 17.64% 3.12% 0.97% 6.14

荒川区 0.41% 0.50% 1.99% 5.42% 6.21% 20.45% 19.82% 24.40% 16.98% 2.93% 0.89% 6.09

足立区 0.19% 0.27% 1.16% 3.56% 4.49% 16.78% 18.66% 26.45% 22.13% 4.64% 1.68% 6.48

江東区 0.34% 0.43% 1.74% 4.90% 5.75% 19.55% 19.63% 25.04% 18.26% 3.31% 1.05% 6.19

江戸川区 0.36% 0.46% 1.83% 5.09% 5.93% 19.90% 19.71% 24.80% 17.77% 3.16% 0.99% 6.15

台東区 0.48% 0.58% 2.23% 5.92% 6.64% 21.24% 19.94% 23.75% 15.85% 2.61% 0.76% 5.99

墨田区 0.21% 0.29% 1.23% 3.74% 4.67% 17.19% 18.83% 26.29% 21.56% 4.43% 1.57% 6.44

葛飾区 0.39% 0.48% 1.92% 5.27% 6.08% 20.20% 19.78% 24.58% 17.34% 3.03% 0.93% 6.11

品川区 0.30% 0.39% 1.58% 4.55% 5.44% 18.90% 19.45% 25.44% 19.17% 3.60% 1.18% 6.26

大田区 0.54% 0.63% 2.41% 6.27% 6.93% 21.74% 19.98% 23.29% 15.11% 2.41% 0.69% 5.93

目黒区 0.20% 0.28% 1.20% 3.66% 4.59% 17.01% 18.76% 26.36% 21.81% 4.52% 1.61% 6.45

世田谷区 0.43% 0.53% 2.06% 5.57% 6.34% 20.70% 19.86% 24.20% 16.63% 2.83% 0.85% 6.06

練馬区 0.46% 0.56% 2.18% 5.81% 6.55% 21.07% 19.92% 23.90% 16.10% 2.68% 0.79% 6.01

中野区 0.28% 0.37% 1.51% 4.39% 5.29% 18.59% 19.35% 25.62% 19.61% 3.74% 1.24% 6.29

杉並区 0.35% 0.44% 1.77% 4.96% 5.81% 19.67% 19.65% 24.96% 18.10% 3.26% 1.03% 6.18

武蔵野市 0.43% 0.53% 2.08% 5.61% 6.37% 20.75% 19.87% 24.16% 16.55% 2.80% 0.84% 6.05

三鷹市 0.34% 0.43% 1.74% 4.88% 5.74% 19.53% 19.62% 25.05% 18.29% 3.32% 1.06% 6.19

調布市 0.51% 0.61% 2.33% 6.12% 6.80% 21.52% 19.96% 23.50% 15.44% 2.50% 0.72% 5.96

小金井市 0.77% 0.86% 3.09% 7.57% 7.94% 23.32% 19.91% 21.55% 12.70% 1.82% 0.48% 5.71

小平市 0.72% 0.81% 2.94% 7.29% 7.73% 23.01% 19.95% 21.92% 13.18% 1.93% 0.51% 5.76

東村山市 1.31% 1.31% 4.39% 9.77% 9.47% 25.16% 19.19% 18.55% 9.44% 1.15% 0.26% 5.37

国分寺市 0.33% 0.43% 1.72% 4.85% 5.71% 19.47% 19.61% 25.09% 18.37% 3.34% 1.07% 6.20

西東京市 0.14% 0.21% 0.93% 3.00% 3.92% 15.36% 17.97% 26.86% 24.08% 5.43% 2.09% 6.62

狛江市 0.75% 0.84% 3.04% 7.46% 7.86% 23.21% 19.93% 21.69% 12.87% 1.86% 0.49% 5.73

清瀬市 0.82% 0.90% 3.23% 7.82% 8.13% 23.58% 19.86% 21.20% 12.27% 1.73% 0.44% 5.67

東久留米市 0.32% 0.41% 1.66% 4.71% 5.59% 19.21% 19.54% 25.25% 18.74% 3.46% 1.12% 6.22

立川市 0.36% 0.45% 1.81% 5.04% 5.88% 19.81% 19.69% 24.86% 17.90% 3.20% 1.00% 6.16

昭島市 0.36% 0.45% 1.81% 5.05% 5.89% 19.82% 19.69% 24.85% 17.88% 3.19% 1.00% 6.16

福生市 1.03% 1.08% 3.76% 8.73% 8.78% 24.41% 19.61% 19.96% 10.87% 1.43% 0.35% 5.53

東大和市 0.28% 0.37% 1.53% 4.43% 5.32% 18.66% 19.37% 25.58% 19.52% 3.71% 1.23% 6.28

武蔵村山市 0.21% 0.29% 1.24% 3.76% 4.70% 17.26% 18.86% 26.26% 21.47% 4.40% 1.55% 6.43

羽村市 0.29% 0.38% 1.56% 4.50% 5.40% 18.82% 19.42% 25.49% 19.30% 3.64% 1.20% 6.27

八王子市 0.57% 0.66% 2.50% 6.46% 7.08% 21.99% 19.99% 23.04% 14.74% 2.32% 0.65% 5.90

府中市 0.57% 0.67% 2.52% 6.49% 7.11% 22.03% 19.99% 23.00% 14.68% 2.30% 0.65% 5.89

町田市 0.36% 0.45% 1.82% 5.06% 5.90% 19.85% 19.70% 24.84% 17.84% 3.18% 1.00% 6.16

日野市 0.21% 0.29% 1.24% 3.76% 4.69% 17.25% 18.85% 26.27% 21.48% 4.40% 1.55% 6.43

国立市 0.61% 0.71% 2.64% 6.73% 7.30% 22.35% 19.99% 22.68% 14.20% 2.18% 0.60% 5.85

多摩市 0.38% 0.48% 1.89% 5.22% 6.04% 20.11% 19.76% 24.65% 17.46% 3.07% 0.95% 6.13

稲城市 0.25% 0.34% 1.41% 4.15% 5.06% 18.09% 19.18% 25.88% 20.31% 3.98% 1.35% 6.34

青梅市 0.51% 0.61% 2.33% 6.11% 6.80% 21.51% 19.96% 23.50% 15.45% 2.50% 0.72% 5.96

あきる野市 0.34% 0.43% 1.76% 4.93% 5.78% 19.61% 19.64% 25.00% 18.19% 3.29% 1.04% 6.18

島しょ地区 0.63% 0.73% 2.70% 6.83% 7.38% 22.47% 19.99% 22.54% 14.01% 2.13% 0.58% 5.83

選択確率に基づく加重平均幸福度

説明変数

居住地域

特別区(23区)

多摩地区(市町村部)

とても不幸 とても幸福カテゴリー

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被説明変数が順序尺度データの離散値の場合、

順序プロビットモデルが適当となる。主観的幸

福度が H、誤差項がε、個人属性要因に関する

説明変数ベクトルが X、居住地域環境要因に関

する説明変数ベクトルが Z、それぞれの推定パ

ラメータがα、β、であるとき、今回想定した

幸福度関数は、下式のように記述できる。

ε++= ZβαXH (1)

順序プロビットモデルを用いて上式を推定し、

α̂、βˆと、境界値(しきい値)であるμを求め

る。

なお、11 個の選択肢があり、0~10 の値をと

る主観的幸福度 Hは、次のように記述出来る。

00 ≤= HifH

101 µ≤<= Hif

212 µµ ≤<= Hif

… (2)

Hif <=10

01 µ

また、個人属性調整後の加重平均幸福度(期

待値)の算定方法は、次のとおりである。まず、

下式に従い、幸福度の理論値 Hˆ を計算する。

Zˆˆˆ βα += XH (3)

ここで、Xは、説明変数が連続変数である場

合は、推定に用いた全サンプルの平均値を示す。

ダミー変数である場合は、参照基準であること

を示す。また、Zは、市区町村別に設定したダ

ミー変数を示す。

εが標準正規分布に従うと仮定すると、(2)

式に準じて、それぞれの値を選択する確率を以

下のように記述出来る。Φ(・)は、標準正規

分布の確率密度関数を示す。

)Zˆ-ˆ-()0( αXHprob βΦ==

)Zˆ-ˆ-(-Zˆ-ˆ-()1(1

α)α  XXHprob ββμ ΦΦ==

)Zˆ-ˆ-(-Zˆ-ˆ-()2(12

αμ)α  XXHprob ββμ ΦΦ==

… (4)

)α  Zˆ-ˆ-(-1)10(10

XHprob βμΦ==

上記で得られた幸福度の各ランクの選択確率

prob(H)を用いて、個人属性調整後の加重平

均幸福度(期待値)H~

を下式に基づき算出する。

( ) ∑=

=≡

10

0

)(~

H

HHprobHEH (5)

【補論 1】順序プロビットモデルによる推定方法と個人属性調整後加重平均幸福度の計算方法

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参考図表 1の幸福度関数における個人属性要

因の推定結果をみると、東京都民の幸福度の決

定要因がわかる。そのうち、統計的に有意な結

果が得られた要因をまとめたものが下図表であ

る。

まず、幸福度に対する性別の違いの影響は、

女性よりも男性の方が幸福度が低い。年齢では、

60 歳以上の高齢者のみ係数が有意にプラスと

なっており、他の年代に比べて幸福度が高い傾

向がみられる。価値観に関しては、困っている

人に寄付をするような利他的な人ほど幸福度が

高く、また、他人の生活水準が気になる人ほど、

幸福度が低い。健康状態の影響については、自

身の健康状態が良好な人ほど、幸福度が高くな

る。家族の健康状態についても同様の結果であ

る。

経済状態については、所得水準(等価収入)

が高いほど、幸福度が高くなる。ただし、所得

水準(等価収入)の二乗項の係数がマイナスで

あるため、その傾向は所得水準が高くなるにつ

れて逓減する。また、過去 1年間の世帯収入が

増えた人と今後 1年間の世帯収入が増えると思

う人は幸福度が高くなる。やはり、所得要因は

幸福度に対して強い影響を与えるようだ。

職業に関しては、いずれも有意な結果が得ら

れなかったため、下図表には記載していないが、

参考図表 1の係数を確認すると、学生が最も高

く、次いで、専門職、公務員の順であった。

生活時間の影響については、平日 24 時間に

占める仕事時間の割合と一人で過ごす時間の割

合が増えるほど、幸福度に対してマイナスの影

響を与える。しかし、これらは有意な結果が得

られていないため、必ずしも強い影響を及ぼさ

ないようだ。これに対して、家族や友人等と過

ごす時間の割合は、有意な結果が得られており、

この割合が高い人ほど、幸福度が高くなる。内

閣府「国民生活白書」(平成 19年版)によると、

近年、家族と一緒に過ごす時間が減少している

ようだが、家族と過ごす時間の減少が幸福度を

押し下げている可能性がある。

次に、子育てに関する項目をみると、子供の

数が増えるほど、幸福度が高くなり、家族に就

学前児童(0~5歳)がいる人は、幸福度が高い

という傾向がみられる。他方で、有意な結果で

図表 統計的に有意な結果が得られた幸福度の決定要因

(備考)有意水準 10%において、有意な結果が得られた項目をもとにまとめている。

プラス要因 マイナス要因性別 女性 男性年齢 60歳以上の高齢者

利他性の高い人 他人の生活水準を気にする人健康な人 不健康な人

家族が健康な人 家族が不健康な人所得が多い人(世帯収入を家族人数で除した金額) 所得が少ない人(世帯収入を家族人数で除した金額)過去一年間の収入が増えた人 過去一年間の収入が減った人

今後一年間の収入が増えると思う人 今後一年間の収入が減ると思う人生活時間 平日に家族・友人等と過ごす時間が多い人 平日に家族・友人等と過ごす時間が少ない人結婚有無 既婚 独身

子供の数が多い人 子供の数が少ない人就学前の子供(0~5歳)がいる人

世帯形態 2世代同居(夫婦と親(その他親族含む)から成る世帯)住宅形態 借家のアパート・マンション(集合住宅)

自己啓発をしている人 結婚生活が上手くいっていないと感じている人現在仕事が上手くいっていないと感じている人規則正しい生活をおくれていない人

信頼できる人が一人でもいる人家族との食事の頻度の多い人 ギャンブルにはまっている人友人・知人との食事の頻度が多い人宗教などの信仰心が強い人

学歴 大学院卒の人不幸 過去5年以内に子供と死別している人

本源的属性

カテゴリー幸福度に対する影響

人生経歴

価値観

健康状態

経済状態

人間関係

生活習慣

生活状態

子育て

その他

【補論 2】推定結果にみる東京都民の幸福度構造

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はないが、家族に思春期の子供(10~19歳)が

いる人は幸福度が低い。内閣府「青少年白書」

(平成 21 年度版)によると、近年、思春期の

子供の不登校や家庭内暴力が増加傾向にあるが、

問題が顕在化しないまでも思春期の子供を持つ

親の多くはいろいろ悩みを抱えているのかもし

れない。

世帯形態をみると、有意な結果は得られてい

ないが、係数をみると、夫婦のみ世帯が最も高

い。次いで、夫婦と子供のみ世帯、3 世代同居

世帯、ひとり暮し世帯の順となっている。2 世

代同居のみ有意な結果であるが、最も低い結果

となっている。

その他の生活状態をみると、結婚生活や仕事

が上手くいっていないと感じている人は、統計

的に有意に幸福度が低くなっている。また、生

活リズムを崩し、規則正しい生活がおくれてい

ない人も幸福度に対して有意にマイナスになっ

ている。このほか、有意な結果ではないが、仕

事が多忙で十分な休暇が得られていない人や求

職中の人もマイナスとなっている。他方で、自

己啓発を行っている人は、物事を前向きに考え

る人が多いのか、有意にプラスとなっており、

幸福度が高い。

人間関係については、友人や知人が少ない人

ほど幸福度が低いが、有意な結果ではない。他

方で、困ったときに何でも相談にのってくれる

人(信頼できる人)が一人でもいる人は有意に

幸福度が高い。幸福度に寄与する人間関係は、

関係の深さが重要であり、友人・知人の多さは

必ずしも問題ではないのかもしれない。

生活習慣については、家族と一緒に食事をと

る頻度が多い人ほど、顕著に幸福度が高くなっ

ている。また、友人・知人と一緒に食事をとる

頻度が多い人ほど、幸福度が高くなっている。

国民生活白書(平成 19 年版)によると、家族

がそろう時間は年々減少しており、家族が一緒

に食事をとる頻度も減少しているようだ。こう

した面も幸福度の低下要因になっているかもし

れない。

以上のように、様々な個人属性要因が幸福度

に影響を与えることがわかる。とりわけ、健康

状態、経済状態、生活習慣、家族関係は、強い

影響を与えている可能性が高い。

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