消化器疾患消化器疾患の 消化器がんのがん薬物療...
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加古泰一兵庫医科大学 放射線医学講座 助教放射線医学講座 助教
兵庫医科大学 放射線医学講座加古泰一助教 放射線医学講座 助教
加古泰一助教 放射線医学講座 助教
加古泰一助教 放射線医学講座 助教
加古泰一助教 放射線医学講座 助教
加古泰一助教 放射線医学講座 助教
加古泰一助教 放射線医学講座 助教
タイトルと縦並びの時は上だけに飾りケイ
タイトルと横並びの時は上下に飾りケイ
アキは配置状況で適宜決定
大路小千代 名古屋第一赤十字病院 化学療法センター 係長/がん化学療法看護認定看護師
看護師は,患者の抱える身体的・心理的・社会的問題を理解し,患者自身がセルフマネジメントできるように,個 の々ニーズに沿った教育・指導を行う。
患者や家族が自分らしく生活し,心身共に安心して治療を継続できるよう支援することが重要である。
消化器がんのがん薬物療法を受ける患者消化器がんのがん薬物療法を受ける患者
消化器疾患消化器疾患の消化器疾患消化器疾患の
検査・治療法検査・治療法検査・治療法検査・治療法
消化器疾患消化器疾患の消化器疾患消化器疾患の
検査・治療法検査・治療法検査・治療法検査・治療法
特集1 治療別に分かるる! 消! 消化器疾患患者の看護問の看護問題・看護計画・看護介護介入護介入護介
消化器がんのがん薬物療法を受ける患者の状態と看護
適応となる患者
消化器がんのがん薬物療法の種類には,
主に術前・術後補助化学療法,切除不能進
行再発がんに対する化学療法,化学放射線
療法などがあります。がん薬物療法適応の
原則は,次の4点です1)。
①当該がん種に対して,標準治療,もしく
はそれに準じる治療として確立している
こと
②パフォーマンスステータス(Performance
Status:PS)(表1),全身状態が良好な
こと
③適切な臓器機能(骨髄,腎,肝,心,肺
など)を有すること
④インフォームド・コンセントが得られて
いること
消化器がんのがん薬物療法は,PS0~
適応となる患者適応となる患者
2が適応でPS3以上は推奨されておらず,
多量の腹水や胸水,高度の腹膜播種や腸管
狭窄を来している場合は,がん薬物療法の
適応となりにくいと言われています。しか
し,PS3以上であっても疾患によっては,
人工肛門の造設や中心静脈栄養法の導入,
胃瘻造設により栄養状態や疼痛がコント
ロールできることでPSが改善し,がん薬物
療法の適応となることがあります。多職種
と連携を図り,多方面からアセスメントし
介入する必要があります。
看護のポイント
●ケアの概要
消化器がんのがん薬物療法は,治療内容
や患者背景により,入院または外来通院で
行われます。入院治療はクリティカルパス
に基づいた短期入院が多く,がん薬物療法
に携わる看護師は患者とかかわる時間が短
いことから,速やかな観察とアセスメント
能力が求められます。そのため,症状緩和
看護のポイント
5757消化器看護 Vol.24 No.2
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とレジメンごとに出現する副作用を把握
し,治療開始前から副作用の予防,早期対
応,CVポートや携帯用持続注入ポンプの
管理,内服コンプライアンスなど,患者が
セルフマネジメントできるように支援する
ことが必要です。
患者の中には,疾患から生じる消化管の
通過障害や術後の合併症,がん薬物療法に
よる消化管毒性によって栄養状態が低下す
るため,経口栄養や静脈栄養などを組み合
わせながら,がん薬物療法を継続する必要
があります。
また,がんにかかわる治療では,妊孕性
の温存や就労支援,高額療養費制度や社会
資源について情報を提供し,多職種と連携
することが重要です。
●治療・有害事象に対する理解の確認と
オリエンテーション
看護師は,医師とインフォームド・コン
セントを行った後の患者・家族に,治療に
対する受け止め方を確認します。そして,
がん薬物療法の治療計画や治療内容別に予
測される副作用について,患者や家族がイ
メージできる言葉を用いて,そのつど患者
や家族の表情や言葉を確認しながら,治療
中の過ごし方についてパンフレットなどを
活用し,オリエンテーションを行います。
●身体状況の観察・ケア
病態や転移場所などを理解して,予測さ
れる副作用の観察とコントロール,症状緩
和を行う必要があります。PS,経口摂取
状況,排便状況,口腔内の状態,検査結果
(血液,心機能),合併症の有無(出血,穿
孔,狭窄,腸閉塞,腹水貯留,胸水貯留な
ど),胃管やイレウスチューブ・CVポート
の造設の有無,長期化する場合は経皮経食
道胃管挿入術(PTEG)の留置の有無など
を確認しておきます。
●不安などの精神面への支援
がん薬物療法は心身の苦痛を伴うことが
多く,治療に対する不安や期待など複雑な
思いを抱える患者も少なくありません。看
護師は,入院時より患者の思いを傾聴し,
患者や家族が安心してがん薬物療法を受け
ることができるようサポートし,心身の症
状緩和を図ることが重要です。臨床心理士
やリエゾン精神看護専門看護師,精神科医
の介入なども必要に応じて考慮します。
●起こりやすい副作用に対する
セルフケア支援
がん治療の進歩により,消化器がんのが
ん薬物療法は多種多様となり,経口抗がん
薬や注射薬の組み合わせなど,治療内容も
定義
全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限なく行える。
肉体的に激しい活動は制限されるが,歩行可能で,軽作業や座っての作業は行うことができる。例:軽い家事、事務作業
歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす。
限られた自分の身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす。
全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす。
Score
0
1
2
3
4
表1 ECOGのPerformance Status(PS)
Common Toxicity Criteria, Version2.0 Publish Date April 30, 1999.http://ctep.cancer.gov/protocolDevelopment/electronic_applications/docs/ctcv20_4-30-992.pdfJCOG ホームページ http://www.jcog.jp/
58 消化器看護 Vol.24 No.2
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複雑化しています。したがって,それぞれ
のレジメンの特徴を踏まえ,副作用につい
てコントロールすることが必要です。患者
の内服コンプライアンスや副作用の観察,
セルフケア支援が,治療を継続する上で重
要となります。
病態・心理状態などから導き出される看護問題と看護計画
●治療開始前
【情報収集・アセスメント】
情報収集した内容(表2)を理解するた
めの方法として,ヘンダーソンやゴードン
などの情報収集の枠組みを用いて整理しま
す。患者が抱える問題や強みは何かを明確
化し,患者のニーズはどこに何があるのか
をとらえて情報を整理し,アセスメントす
る必要があります。
#身体損傷のリスク
・末梢神経障害
タキサン系薬剤や白金製剤を使用するこ
とにより,末梢神経障害が出現します。こ
の看護問題が挙がるのは,高齢,糖尿病,
脳血管障害,脳腫瘍,脊柱管狭窄症などの
既往のある患者です。使用する薬剤によっ
て症状や出現頻度,出現時期が異なるた
め,使用する薬剤の種類,年齢や既往歴な
どを確認します。また,セルフケア能力や
セルフケアへの関心の高さを評価し,患者
の治療に対する理解力などについても確認
します。
#ボディイメージの混乱
・皮膚障害,手足症候群
フッ化ピリミジン系薬剤や分子標的薬に
より,皮膚障害や手足症候群が出現しま
す。この看護問題が挙がるのは,高齢,独
居,セルフケア能力や日常生活自立度が低
い,サポート態勢が得られない,既往に皮
膚疾患や関節リウマチ,麻痺がある,PS
が悪い患者です。患者背景を確認し,自己
管理能力やサポート態勢,使用する薬剤の
特徴を確認します。そして,患者のセルフ
ケア能力をアセスメントし,介入する必要
があります。皮膚障害による外見の変化が
いかに患者の負担や精神的苦痛になるかを
理解し,患者の生活の質(QOL)の向上を
図ることが必要です。
病態・心理状態などから導き出される
●確定診断,病理組織診断の結果
●患者の全身状態•PS0~2を維持している•検査データ:主要臓器の状態(骨髄,肝臓,腎臓,心機能,肺など)
•栄養状態•身長,体重,BMI•既往歴,家族歴,アレルギーの有無,重篤な合併症・間質性肺炎の有無
●インフォームド・コンセントに基づく患者本人からの同意の有無•説明の内容の確認(治療目的,患者・家族の反応など)•同意書の確認•患者や家族の訴え,表情など•治療計画の確認(レジメンの内容,手術・放射線療法の確認)
●患者の基本情報(生活習慣,家族関係など)•診断,入院に至るまでの経過,治療経過・内容•日常生活(食事,排泄,睡眠など)•出現している症状の有無,部位,程度,対処方法など
•自己管理能力:服薬状況など•趣味,嗜好,ストレス発散方法など•患者・家族の心理状態(疾患に対する受容段階など)•家族背景(健康状態,患者との関係性,キーパーソンの有無など)
•社会的背景(仕事内容,役割など)•患者の背景(身体的,社会的,精神的,スピリチュアルな側面)
表2 情報収集の例
5959消化器看護 Vol.24 No.2
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・脱毛
消化器がんのがん薬物療法では,脱毛が
出現する場合もあります。脱毛の程度は,
高度~軽度に分類され,使用する薬剤や量
により個人差があります。
#感染リスク状態
・骨髄抑制
がん薬物療法を受ける患者に起こる副作
用で,致命的な状態に発展する可能性があ
ります。そのため,骨髄抑制が出現するリ
スクファクターを把握することが必要で
す。また,患者の病状により,肝機能障害
や凝固系に異常を認め,貧血や出血傾向な
どの症状が出現します。
#悪心・嘔吐
消化器がんのキードラッグはフッ化ピリ
ミジン系薬剤であり,単剤や併用療法が標
準治療となります。シスプラチンを含む治
療は高度リスク,トポイソメラーゼ阻害
薬,白金製剤を併用したレジメンは中等度
リスク,そのほかは軽度・最小度リスクと
なります。薬物の種類,投与量,患者の基
本情報(リスクファクターの有無)と共に,
治療の受け止め方やセルフケア能力を確認
します。
#便秘,下痢
便秘は,腫瘍による通過障害,入院によ
る活動量の低下,心理面,麻薬などの使用,
がん薬物療法の種類により自律神経の働き
を抑制したり,制吐剤を使用することで腸
管の蠕動を抑制したりするなど,さまざま
な原因が複合して起こります。
下痢は,薬物の使用によって,副交感神
経が活性化することにより,早発性・遅発
性の下痢が出現する可能性があります。脱
水やPSの低下,骨髄抑制の時期と重なる
と,重症な感染症のリスクとなります。
#口腔粘膜障害
消化器がんで使用される代謝拮抗薬,ト
ポイソメラーゼ阻害薬,白金製剤,タキサ
ン系薬剤,分子標的薬により出現する可能
性があります。症状が出現することによ
り,経口摂取量やQOLを低下させるため,
予防が必要です。
#不安
消化器がんのがん薬物療法の目的は,延
命と症状緩和です。目的により患者の考え
や生き方が変わることもあり,患者は治療
に対する不安や期待,予後に対する不安な
どを抱えることも少なくありません。患者
の思いに寄り添ったケアが必要です。
【看護問題・看護計画の立案】
治療内容の特徴を踏まえ,副作用が出現
するリスクが高い薬剤と患者の情報から出
現する副作用を予測し,看護上の問題を明
確化します。また,患者自身が何を一番優
先しているのか,すぐに解決可能な問題は
何か,治療計画,リハビリテーションの予
定,患者の希望やADL・QOLを考慮した看
護計画を立案し,患者や家族に提示します
(表3)。
【目標設定】
患者が,自身の強みを生かし,主体的に
症状コントロールができるよう取り組むた
めには,なぜ,今,この知識や行動が必要
であるかを,患者が理解しやすい言葉を用
いて丁寧に説明し,患者と看護師の目標を
共有し設定することが必要です。
60 消化器看護 Vol.24 No.2
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看護問題 副作用 看護目標 看護計画•体験している症状をありのまま報告し,転倒や外傷を起こさないように対処することができる
•白血球減少・好中球減少の時期を理解し,感染予防行動ができる
•貧血症状や出現時期について理解して対処することができる
•全身の観察を行い,出血を予防することができる
•脱毛について理解し,対処方法を実施することができる
•スキンケアの重要性を理解し,スキンケア方法を実施することができる
•便秘の対処方法や必要性を理解して,自分で排便状態をモニタリングし,日常生活の中で排便調整や便秘の予防,対策を行うことができる
•下痢の出現形態や止痢剤,整腸剤の使用について理解し,脱水症状などへ移行しないように,日常生活の中で予防,対処することができる
•口内炎の予防とケアについて理解し,実施することができる
•制吐剤の使用方法について理解し,指示どおり内服し症状緩和ができる
•自身の思いを表出することができる
•症状緩和を図る(例:マッサージ,温罨法,手指の運動など)•二次障害の予防:転倒,外傷を予防する(靴の選択など)•薬物療法(ビタミン薬,漢方薬,NSAIDs,オピオイド,抗てんかん薬,末梢神経障害性疼痛治療薬などが使用されているか確認する)
•オキサリプラチン投与時:急性神経症状は寒冷刺激を避け,水や金属を使用する時は,手袋を着用する,冷たい飲食物を避ける,エアコンの冷気を避ける,冬の外出時は外気に触れないよう,マフラー,帽子,手袋でカバーするなど日常生活について説明する•感染予防行為(例:うがい,手洗い,マスク,歯磨きなど)を励行する•新鮮な食材を使い,病状に合わせた食事形態を工夫するよう説明する
•身体を清潔にするよう説明する•排便コントロールを図る•血液検査のデータの把握と自覚症状の観察を行う•安静と保温に努める•転倒・転落を予防する•出血しやすい部位を中心に全身の観察を行う•打撲や外傷を予防するよう説明する•ウィッグ,帽子などの着用,治療開始前に髪を短く切っておくことを提案する
•頭皮ケア,抜け毛の処理方法を説明する•ボディイメージの変調に伴う精神的支援を行う•患者の思いを受け止め,共感し,言語化できるように支援する。受容段階に合わせ,その時の患者の受け入れ状況を確認しながら,情報を提供する
•スキンケアの重要性とその方法(保湿,保清),外的刺激から保護する(直射日光を避ける,長袖,日傘,帽子の着用など)について説明する
•日焼け止めを塗布するよう説明する。日焼け止めはSPF30以上,PA++以上を目安に選ぶ(皮膚への刺激が弱いノンケミカルや紫外線吸収剤不使用の表示のものを選択する)
•締め付けのきつい衣類・靴を避けるよう説明する•ひげ剃りは,電気カミソリを使用するよう説明する•治療前に,患者とスキンケアを実践・体験して習得させる•家事で水を扱う場合は,ゴム手袋などを使用するよう説明する•便の状態をモニタリングする•食事の工夫を行い,水分摂取を促す•緩下剤や大腸刺激剤を組み合わせて,排便習慣を整える•腹部マッサージ,温罨法の方法について説明する
•水分・電解質の補給と脱水を予防する•止痢剤や整腸剤を使用して,排便コントロールを行う•肛門周囲の保清を図るよう説明する•痛みがある時は安楽な体位を工夫し,軽減を図るよう説明する
•口腔内を清潔に保つよう説明する(例:ブラッシング,含嗽,口腔ケアの継続など)
•乾燥を予防するよう説明する(例:保湿剤の使用など)•食事を工夫するよう説明する•疼痛緩和を図る(例:鎮痛剤の使用など)•制吐剤の使用方法,食事の工夫について説明する•嘔吐が持続する場合は,脱水に注意する•環境整備を行う•安静臥床,胃部冷罨法を行う•安心させて,安楽を提供する•患者が取っている現在のコーピング機制をサポートする•傾聴する•患者のそばに付き添う•ゆっくり静かに話す•共感的な態度で接する
身体的損傷のリスク
感染リスク
ボディイメージの混乱
排便障害
口腔粘膜障害
悪心・嘔吐
不安
末梢神経障害
骨髄抑制
脱毛
皮膚障害手足症候群
便秘
下痢
口腔粘膜障害
悪心・嘔吐
不安
表3 看護問題・看護計画の例
6161消化器看護 Vol.24 No.2
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●治療中・治療後
体験した副作用を患者や家族と共に振り
返り,フィードバックする必要がありま
す。そして,次の治療に向け対処方法を一
緒に考え,心身共に準備し,その内容を看
護計画に追加・修正します。
外来治療へ移行する場合は,看護サマ
リーなどを活用して外来看護師との連携を
図ります。
【看護問題・計画の実施・評価】
患者の言動や行動変容から,目標達成に近
づいているかを確認します。期限を設け,必
要に応じて計画を追加・修正します。患者・
家族の心理状態の変化にも注目し,一方的
な教育・指導にならないように心がけます。
がん薬物療法を受ける患者は,治療を継
続することでADLや気力の低下につながる
ことがあります。また,症状の悪化により
治療の変更や緩和医療へのギアチェンジを
余儀なくされることもあります。さまざま
な場面での患者の意思決定支援にかかわ
り,患者や家族が自分らしく生活できるよ
うに支援するために評価・修正することが
重要です。
事例紹介―大腸がんの化学療法を受ける患者
A氏,40代,男性,頑なな性格,キーパーソンは父親で,2人暮らし
診断名:直腸がんStageⅣ既往歴:高血圧症,糖尿病,直腸がん(直腸・S状結腸切除術,ストーマ造設)現病歴
200X年より下痢と便秘を繰り返すよう
になり,近医を受診。精密検査の結果,直腸がんstageⅣと診断され,肛門・S状結腸がんを切除,ストーマを造設した。術後化学療法としてFOLFIRI療法を複数回施行後,PD(進行)のためFOLFOX+BV療法を複数回施行。皮膚の色素沈着,末梢神経障害CTCAEv4.0 Grade1が出現したが,日常生活に支障はなかった。 その後,画像診断にて多発肝転移・肺転移を認めPD(進行)と判断,CPT-11+BV療法を複数回施行しEGFR陽性であるため,CPT-11+セツキシマブ療法が開始された。
アセスメント・関連図(図)
A氏は,現在までの治療で出現した副作
用については,支持療法により症状コント
ロールが図れていましたが,セツキシマブ
の投与により皮膚障害が出現し,外見が変
化するのではないかという苦痛を感じてい
ました。しかし,現在に至るまですべて自
己決定しており,父親に頼りたくないとい
う思いがあり,サポートを依頼することを
拒んでいました。
皮膚障害は,スキンケアを正しく行い保
清することで,症状の悪化を予防すること
ができます。A氏は40代と若く,セルフ
ケア能力は高いと考え,A氏の思いを尊重
し,スキンケアを自分で実施・継続できる
支援が必要であると考えました。患者の1
番の気がかりから,ボディイメージの混乱
を看護問題の優先順位の1番に挙げ,看護
計画を立案し,看護介入を行いました。
事例
アセスメント・関連図
62 消化器看護 Vol.24 No.2
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A氏,40代,男性
直腸がん
Stage Ⅳ
頑なな性格
父親と2人暮らし
直腸・S状結腸切
除,肛門切除術
KRASWild EGFR(+)
セツキシマブ+CPT-11
化学療法
FOLFIRI 数コース
FOLFOX+BV 数コース
FOLFIRI+BV 数コース
ストーマ造設
末梢神経障害
血圧上昇
骨髄抑制
悪心・嘔吐
便秘
下痢
脱毛
#4体液量不足リスク状態
#1ボディイメージの混乱
#5非効果的役割遂行
#2不安,悲嘆
#6身体損傷のリスク状態
#3感染リスク状態
爪障害
爪がもろい
免疫力低下
血糖コント
ロール不良
ストーマ装具交換頻回
脱水
感染
疼痛
消耗性疲労
ADLの低下
QOLの低下
体力消耗
低栄養状態
筋力低下
皮膚障害
ざ創様皮疹
背中に薬が塗れない
清潔保持困難
不潔になる
皮膚症状の悪化
治療継続が困難
治療ができなくなる不安
父親に依頼しない
爪周囲炎
食欲不振
実在する状態
可能性のある状態
看護診断(#)
関連(実在)
関連(可能性)
既往歴
高血圧,糖尿病
①フルイトラン®2mg
0.5錠/1×1
②ニューロタン®50mg
1錠/1×1
③カルデナリン®2mg
1錠/1×1
④アマリール®1mg
1錠/1×1
⑤ミノマイシン®50mg
1カプセル/1×1
食事摂取困難
役割遂行の破綻
図 A氏のアセスメント関連図
6363消化器看護 Vol.24 No.2
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看護問題・計画
#1 セツキシマブによる皮膚障害に関連
したボディイメージの混乱
看護目標:スキンケアの方法について理解
し,セルフケアができる
看護計画
〈O-PLAN〉
①皮膚の状況と範囲・発疹の有無
②自覚症状の有無(かゆみ,痛みなど)
③日常生活の影響
④検査データ
⑤皮疹による外見の変化がもたらす心理・
社会的影響
⑥ポートの周囲やストーマ周囲の皮膚の状
態
⑦スキンケアを実施できるセルフケア能力
の有無,患者をサポートする環境(人
的・物理的リソース)の有無
〈T-PLAN〉
①清潔ケア
・洗顔は1日2回実施する
・ひげ剃りは電気カミソリを使用する
・倦怠感などがなければ毎日入浴する。
入浴が困難な場合は清拭を行う
・熱い湯や長時間の入浴を避ける
・低刺激性の石けんやボディソープを使
用し,手のひらで泡立て,強くこすら
ない
・ナイロンタオルを使用しない
・石けん成分をしっかり洗い流す
・体を拭く時は,押さえ拭きする
・入浴後10分以内に保湿剤を塗布する
・軟膏は1日2回を目安に,皮膚を清潔
にしてから塗布する
・背中など手が届かない部分への塗布は,
塗布専用の補助器具を使用する
②外出時は日焼け止めを塗布し,帽子・長袖
の服を着用して肌の露出を最小限にする
③患者の精神的サポート
・患者の思いを傾聴し,必要時,専門職
へつなげる
・患者の意思決定を尊重する
〈E-PLAN〉
①スキンケアの基本は,保湿・保清・保護
であることを理解してもらい,手技につ
いて説明する
②皮疹が広範囲に広がり,痛みや膿疱疹に
変化した場合は,早めに医師または看護
師に報告するように説明する
③気持ちのつらさを感じたら,早めに医師
または看護師に相談するように説明する
実施・評価
次の治療前に,A氏と共に皮膚の状態を
確認し,情報のすり合わせを行いました。
A氏は,「保湿剤は1日5回以上,軟膏は
1日2回塗っている。背中はうまく塗れな
いね。自分のことは自分でやれるから,父
には頼んでいない。家事は絆創膏を貼って自
分でやっている」と話しました。Grade1
(CTCAEv4.0,以下同じ) のざ創様皮疹が
顔面と前胸部・背部に出現しており,背中
を観察したところ,手が届かない範囲に皮
疹が集中していました。また,両母指と左
第3指にGrade1の爪周囲炎を認めました。
A氏の皮疹は悪化傾向で,もともと5-FU
による爪障害があり,爪周囲炎が早期に出
看護問題・計画
実施・評価
64 消化器看護 Vol.24 No.2
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現した可能性がありました。今後,症状が
悪化し日常生活に支障を来す恐れがあるた
め,水仕事は手袋を使用すること,家人の
協力を受けながらスキンケアを継続する必
要があることを伝えました。
しかし,自分で行いたいというA氏の意
思は変わらなかったため,背部の軟膏塗布
専用の補助器具の値段を提示し説明したと
ころ,購入は可能であると話しました。
その後の受診で,A氏は「補助器具を使
用したら自分で簡単に塗れたし,赤みが
減ったよ」とうれしそうに話してくれまし
た。A氏ができたことを承認したことが自
己効力感を高めるきっかけとなり,セルフ
ケアの獲得につながりました。
引用・参考文献1)国立がん研究センター内科レジデント編:がん診療レジデントマニュアル 第7版,P.23,医学書院,2016.2)JCOG ホームページ http://www.jcog.jp/(2019年5月閲覧) 3)山口瑞穂子,関口恵子監修:疾患別看護過程の展開 第5版,学研,2018.4)小松嘉人編:消化器がん化学療法副作用マネジメント―プロのコツ,メジカルビュー社,2015.5)渡邊五朗,宗村美江子編:消化器看護ケアマニュアル,中山書店,2018.6)田村和夫,荒尾晴惠,菅野かおり編著:がん患者の症状まるわかりBOOK,照林社,2018.7)日本がんサポーティブケア学会編:がん薬物療法に伴う皮膚障害アトラス&マネジメント,金原出版,2018.
PROFILEおおじ・こちよ●2010年にがん化学療法看護認定看護師資格を取得し,現在,名古屋第一赤十字病院化学療法センターにて勤務。病棟
と外来のスタッフが連携し,患者が安全,安楽な化学療法を受けることができるように努めている。
動画を交えながら大腸・胃・膵臓に絞って基礎から!
プログラム
消化器外科手術の基礎と術後管理のポイント
解剖生理と結び付けて理解できる!
東京19年 6/8(土)LMJ東京研修センター
大阪19年 9/7(土)田村駒ビル
福岡19年 7/27(土)福岡商工会議所
名古屋19年 10/19(土)日総研ビル
[時間]10:00~17:00
本誌購読者 15,500円 一般 18,500円参加料/税込
1997年名古屋市立大学卒業、同第一外科入局、2004年名古屋市立大学消化器外科助手、2009年名古屋市立大学病院緩和ケア部病院講師、2013年4月名古屋徳洲会総合病院外科医長、2014年4月から現職。緩和医療専門医、外科指導医、消化器外科指導医、内視鏡外科技術認定医、消化器内視鏡専門医、日本サイコオンコロジー学会認定ファシリテーター。
坂本雅樹氏 名古屋徳洲会総合病院外科・緩和ケア外科 部長
1.「導入・基礎」編 まずは概論! 基礎を押さえよう 1)がんの手術 2)術後管理 ●ドレーン管理 ●疼痛コントロール ほか 3)術後合併症 ●術後出血 ●呼吸器合併症 ●縫合不全 ●術後感染症 ●術後せん妄 ●術後イレウス 4)腹腔鏡手術
2.「大腸」編 1)解剖生理をきっちり理解 2)手術を必要とする疾患 3)代表的な術式 ●結腸切除術 ●直腸切除術 ●直腸切断術 4)術後にどんな影響が出るかを理解しよう 5)注意が必要な合併症と看護師に求められる役割 ●縫合不全 ●創感染 ●骨盤死腔炎 ●排便障害 ●排尿障害 ●性機能障害
3.「胃」編 1)解剖生理をきっちり理解 2)手術を必要とする疾患 3)代表的な術式 ●胃全摘術 ●幽門側胃切除術 ●幽門保存胃切除術 ●噴門側胃切除術 4)術後にどんな影響が出るかを理解しよう 5)注意が必要な合併症と看護師に求められる役割 ●膵液瘻 ●急性胃拡張 ●縫合不全 ●ダンピング症候群
4.「膵臓」編 1)解剖生理をきっちり理解 2)手術を必要とする疾患 3)代表的な術式 ●膵頭十二指腸切除術 ●膵体尾部切除術 ●膵全摘術 4)術後にどんな影響が出るかを理解しよう 5)注意が必要な合併症と看護師に求められる役割 ●膵液瘻 ●胆汁瘻
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6565消化器看護 Vol.24 No.2