「知足」の人は聖なり · 2012. 7. 20. · ここで、「知足」...

2
“人の一生は重き荷物を背負いて、遠き道を行く が如きものなり。不自由を常と思えば心に不足なし” この文章は、私の先祖、徳川家康が自らの子供、 家臣に教え諭したものとして、今に伝わっている。 が、この教訓の本質は「知足」を無知蒙昧な私たち にも分かるように卑近な荷物を運ぶ人夫の作業を例 えとして解説したものにすぎない。ここで、「知足」 は仏教用語であって京都にある龍安寺の石庭の一角 にある手水鉢に刻印されている「吾唯足知」が豊臣 秀吉をして感嘆せしめた歴史の一齣は、人口に膾炙 している。 ここでは、知足の人から “聖” がいかにして生ま れるかについて考えてみよう。知足は、天然、素朴、 無私、簡素、共生など南方熊楠が唱えたエコロジー 思想の淵源であって、その中に自らの生存に必要な 最小限を超えるもの、すなわち贅沢を嫌う心が本質 として宿っている。したがって、知足の人の心は、 余分な知や富を他者に譲りたいという望みがいつも 満溢れている。この結果、知足の人は幸田露伴の言 う、惜福、分福、そして植福のプロセスを何の抵抗 もなく、ごく自然に進めることのできる人でもある。 私たちは、こうした人を仮に聖と呼んでいるにすぎ ないのではないだろうか。 まして、今日のように「不知足の人」で溢れかえ る汚濁の世にあっては、 「知足の人」と「不知足の人」 との間のコントラストの強さはまばゆいばかりで、 両者の判別すら付きかねるのが実情であろう。 私は、最近になってようやく、聖となる志を立て、 この目標に向かって日夜ひたすら努力を重ねてい る。その甲斐があったか、ほんのわずかながら私の 身の周りにも聖の蜃気楼が漂い始めているようであ る。が、望むらくは、私が余り目立たないで済む、 より良い社会となることを切望している。なかんず く、高位・高官に上り詰め、高録を食む人の中から 聖を目指す人が一人でも現れ出ることを神仏に願っ て、本稿を偶然目にすることであろう有縁の人に捧 げる。 なお、中江藤樹は聖となる志をわずかに 10 歳を 超えた年に立てたと伝えられている。が、立志の時 期の早遅を問うことは無用である。大切なことは、 この志を立てるか立てないかであることは論を待た ない。急げ!休むな!聖となれ! 同志の奮起を心 より願いつつ、一期一会の筆を折る。 「知足」の人は聖なり 2012年7月20日 発行 通巻15号 The Monthly News Letter 「人づくり、家庭づくり、国づくり」国民運動 8つの約束「ファミリー・プロミス(家族の約束)」を掲げながら、家庭を基礎とした 新しい国づくりを目指し、全国各地で様々な草の根運動を展開しています。愛と性の 倫理を高め、家族への責任を果たす決意としての「ファミリー・プロミス」にご賛同頂き、 ともに新しい日本の国づくりの輪を広げていきましょう。 みなかたくまくす ちそく ちょうずばち じんこう かいしゃ せきふく しょくふく ぶんふく なかえとうじゅ そうち 中川 武夫 北陸先端科学技術大学院大学 シニアプロフェッサー 1945 年、愛知県生まれ。徳川 家縁戚の三河酒井家の子孫(母 方)。1981年、豪・モナシュ大 学より Ph.D 取得。専門は流体 力学、情報科学。 ちそく

Transcript of 「知足」の人は聖なり · 2012. 7. 20. · ここで、「知足」...

Page 1: 「知足」の人は聖なり · 2012. 7. 20. · ここで、「知足」 は仏教用語であって京都にある龍安寺の石庭の一角 にある手水鉢に刻印されている「吾唯足知」が豊臣

 “人の一生は重き荷物を背負いて、遠き道を行く

が如きものなり。不自由を常と思えば心に不足なし”

 この文章は、私の先祖、徳川家康が自らの子供、

家臣に教え諭したものとして、今に伝わっている。

が、この教訓の本質は「知足」を無知蒙昧な私たち

にも分かるように卑近な荷物を運ぶ人夫の作業を例

えとして解説したものにすぎない。ここで、「知足」

は仏教用語であって京都にある龍安寺の石庭の一角

にある手水鉢に刻印されている「吾唯足知」が豊臣

秀吉をして感嘆せしめた歴史の一齣は、人口に膾炙

している。

 ここでは、知足の人から “聖” がいかにして生ま

れるかについて考えてみよう。知足は、天然、素朴、

無私、簡素、共生など南方熊楠が唱えたエコロジー

思想の淵源であって、その中に自らの生存に必要な

最小限を超えるもの、すなわち贅沢を嫌う心が本質

として宿っている。したがって、知足の人の心は、

余分な知や富を他者に譲りたいという望みがいつも

満溢れている。この結果、知足の人は幸田露伴の言

う、惜福、分福、そして植福のプロセスを何の抵抗

もなく、ごく自然に進めることのできる人でもある。

私たちは、こうした人を仮に聖と呼んでいるにすぎ

ないのではないだろうか。

 まして、今日のように「不知足の人」で溢れかえ

る汚濁の世にあっては、「知足の人」と「不知足の人」

との間のコントラストの強さはまばゆいばかりで、

両者の判別すら付きかねるのが実情であろう。

 私は、最近になってようやく、聖となる志を立て、

この目標に向かって日夜ひたすら努力を重ねてい

る。その甲斐があったか、ほんのわずかながら私の

身の周りにも聖の蜃気楼が漂い始めているようであ

る。が、望むらくは、私が余り目立たないで済む、

より良い社会となることを切望している。なかんず

く、高位・高官に上り詰め、高録を食む人の中から

聖を目指す人が一人でも現れ出ることを神仏に願っ

て、本稿を偶然目にすることであろう有縁の人に捧

げる。

 なお、中江藤樹は聖となる志をわずかに 10 歳を

超えた年に立てたと伝えられている。が、立志の時

期の早遅を問うことは無用である。大切なことは、

この志を立てるか立てないかであることは論を待た

ない。急げ!休むな!聖となれ! 同志の奮起を心

より願いつつ、一期一会の筆を折る。

「知足」の人は聖なり

2012年7月20日 発行 通巻15号The Monthly News Letter

「人づくり、家庭づくり、国づくり」国民運動8つの約束「ファミリー・プロミス(家族の約束)」を掲げながら、家庭を基礎とした新しい国づくりを目指し、全国各地で様々な草の根運動を展開しています。愛と性の倫理を高め、家族への責任を果たす決意としての「ファミリー・プロミス」にご賛同頂き、ともに新しい日本の国づくりの輪を広げていきましょう。

みなかたくまくす

ちそく

ちょうずばち

じんこう かいしゃ

せきふく しょくふくぶんふく

なかえとうじゅ

そうち

中川 武夫北陸先端科学技術大学院大学シニアプロフェッサー

1945 年、愛知県生まれ。徳川家縁戚の三河酒井家の子孫(母方)。1981 年、豪・モナシュ大学より Ph.D 取得。専門は流体力学、情報科学。

ちそく

Page 2: 「知足」の人は聖なり · 2012. 7. 20. · ここで、「知足」 は仏教用語であって京都にある龍安寺の石庭の一角 にある手水鉢に刻印されている「吾唯足知」が豊臣

  

発行日 2012年7月20日 通巻15号

 

発行:平和大使協議会   「人づくり、家庭づくり、国づくり」国民運動推進委員会住所:〒160-0022 東京都新宿区新宿 5-13-2 成約ビル 5FTel : 03-3351-4311 Fax : 050-3488-7913 E-mail : [email protected] URL:http://www.kokuminundo.jp

あなたの身の周りの家族や地域の情景を川柳にしてみませんか。詳しくは公式サイトをご覧ください。

月間家族川柳大賞!月間家族川柳大賞!6月度大賞

ラリー&マーチ(広島協議会)

 6月 17日、青空の広がった広島市中心街に、幼児から大人まで総勢 754 名が集いラリー&マーチを開催しました。平和公園前をファミリー・プロミスの内容も交えたたくさんののぼり旗、プラカードを掲げて行進しました。特に、今回はお父さん方が力を合わせ全面的に企画運営をしました。 ラリーでは、平和大使協議会中央会理事でもある元衆議院議員の桧田仁先生ご夫妻

が来賓として参加、医学的見地から見た純潔の大切さと夫婦仲を良くする秘訣などを分かりやすく、ユーモラスに話して下さいました。

海の日は、「海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う日」として 1996 年に施行されました。 日本は、四方を海に囲まれた海洋国家で、はるか昔から外国からの文化の伝来をはじめ、人や物の往来など海に深くかかわってきました。これから海水浴のシーズンを迎えますが、家族で海の恩恵に感謝するひと時の時間をつくってみてはいかがでしょうか。

海の日(7月の第3月曜日)

ラリー&マーチ(南愛知協議会)

 この夏も電力不足が懸念される事から、さまざまな節電キャンペーンが展開されています。 日本の電力消費は工場、オフィス、家庭がそれぞれ3分の1ずつとなっていますが、工場やオフィスでは効率化が進んでいる一方、エアコン、情報機器、大型冷蔵庫の普及など、私たちの生活が便利になるにしたがい、一世帯あたりの電力消費は増え続けています。 そんな暑い夏、家族との「節電コミュニケーション」を図ってみるのも一案です。 節電を意識することは大切ですが、「もったいないから電気を消して!」と頭ごなしに言われるのは嬉しいことではありません。「子供部

屋でクーラーを使うとすごく電気代が増えちゃうんだって。○○ちゃんはどうすればいいと思う?」「じゃあウチでは暑いときは、リビングのテーブルで勉強することにしよう」というように、お互い納得した “わが家の節電ルール”が理想的ではないでしょうか。 部屋の電気を消したり、使っていない機器のコンセントを抜いたりする「節電部長」に任命され、はりきってお子さんが節電のムードメーカーになっているという声も聞きます。 この夏、家庭でどんな工夫ができるのか。家族みんなで話し合う場を設け、節電に積極的にチャレンジしてみませんか。

家族で節電コミュニケーションを!

 6月 24日、晴天に恵まれた日曜日の午後、総勢 300 名が集いラリー&マーチを盛大に開催しました。中高生と青年の代表 3名の力強い「純潔」アピールに続き、名古屋で一番にぎわう栄交差点に向かってマーチを出発。シュプレヒコールにあわせて一緒に手を振り上げる若者や「純潔って何だ?」と声をかけてくる人など、街の大きな注目を集めた行進となりました。 全体をリードした青年たちも、すがすがしい表情で「声はかれたが、心はスッキリした!」「ラリー&マーチで社会に希望と勇気を与えられる!」と感想を述べていました。

活動レポート