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OECD CRET · 2012-06-22 ·...
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*1 Social Outcomes of Learning
2008年11月28日(金)にSOL*1セミナーを開催しました。
本セミナーは、OECD教育研究革新センター(CERI)の研究成果『Understanding the Social Outcomes of Learning』をCRETが監訳し、2008年5月に明石書店より『学習の社会的成果―健康、市民・社会的関与と社会関係資本』として
出版したことを記念したものです。参加者は、教育関係者・
学生・出版社取締役・CRET研究員など17名でした。 セミナーでは、〈健康〉領域を翻訳いただいた坂巻弘之先
生(名城大学薬学部臨床経済学教授)、北澤健文先生(東邦
大学医学部社会医学講座公衆衛生学分野助教)にご講演い
ただき、質疑応答などを通して意見交換をしました。
坂巻先生には、「最近の健康政策と本書出版の意義―学
習の社会的成果―」というテーマで、なぜSOL研究が必要なのか、課題や健康成果の計測(医療費・健康度・医療の効
率性評価)などについてお話しいただきました。
北澤先生には、「ヘルスリテラシーの概要とその動向」と
いうテーマで、 疾病構造の変化と疾病予防、健康政策における教育の位置づけやヘルスリテラシーの今後など幅広
い観点からお話しいただきました。
社会の成熟を鑑みた時、健康教育・ヘルスリテラシーは
多くの人に求められる力になっていくことと思います。
CRETでは引き続き、これからの子どもたちに求められる力についての研究を進めてまいります。
(CRET研究員:鈴木 美樹)
http://www.cret.or.jp/j/report/index.html 学習の社会的成果
(ダウンロード可)
*2 Computer-Based Testing 問題の提示・解答の入力をコンピュータ上で行う試験。*3 Nicola Asuni 氏が開発したウェブベースのCBTシステム。*4 表示・出力メッセージ等の日本語への翻訳。*5 GNU General Public Licence フリーソフトウェアのライセンスの一種。プログラムの再頒布や改変を許容している点が一般的な商用ソフトウェア と異なる。ただし再頒布や改変プログラムの公開もGPLを適用することを要求する。*6 Paper-Based Testing 従来型の紙と鉛筆を利用した筆記試験。*7 ローカライズ時のバージョンでは日本語が一部表示されない問題あり。
※上記のTCExamの原文および日本語翻訳版はTCExam およびGNU General Public Licenseの規程( http://www.tecnick.com/pagefiles/tcexam/LICENSE.TXT)に準拠すれば、著作権フリーでご使用いただけます。
さまざまな試験や検定でCBT*2を採用することが多くな
っていますが、CBTの開発・運用には多額の費用が必要で、個人や小規模な組織で利用するのは難しいのが現状です。
基盤設計研究部門では既存のCBTシステムを検討する活動の一環としてTCExam*3のローカライズ*4を行いました。
TCExamはオープンソースでGPL*5に基づいて頒布され
ているため、誰でも自由に無料で利用することができます。
主な機能として、試験問題の作成と表示(テキスト、数式、画像、
動画)・解答入力(選択式・自由記述式)・選択式問題の採点・成
績管理等があり、解答者はパソコンからインターネットや
イントラネット経由でアクセスして試験に解答します。ネ
ットワーク環境が利用できない場合でも、試験問題をPDF形式で出力して従来型のPBT*6として実施することもできま
す*7。詳しくはTCExamのウェブサイトをご覧ください。http://www.tecnick.com/public/code/cp_dpage.php?aiocp_dp=tcexam
TCExamは当初より多言語対応を想定して開発されており、すでに多くの言語に対応していましたので、ローカ
ライズ作業は言語ファイルの該当部分を翻訳するだけで、
プログラミングの知識はあまり必要としませんでした。
私たちの成果は現在のバージョンに反映されていますが、
翻訳の完成度は決して高くありません。作者のNicola Asuni氏はボランティアは大歓迎とのことですので、興味のある方は私たちの翻訳を修正して作者に送ってみては
いかがでしょうか。
TCExamは日本ではほとんど知られていないCBTシステムですが、低コストで運用できますので学校等でCBTを検討する際の選択肢の一つになると思います。利用にはネ
ットワークサーバーが必要になりますので、ご利用はご自
身の責任のもとにお願いします。(CRET研究員:中島 功滋)
今年度の評価・解析研究部門の活動として、昨年度に実
施した調査についての発表を、2008年11月1日(土)と2日(日)、第41回数学教育論文発表会にて行いました。 昨年度の調査は、「児童生徒の教科学習におけるつまず
きは、語句の理解不足が原因ではないか」との仮説のもと、
語彙理解度を測定するテストの作成方法や、指導への示唆
を得ることを目的として行われたものです。調査・分析は
4教科(国語、算数・数学、理科、社会)についてそれぞれ行われており、学会では算数・数学語彙に関する調査・分析に
ついての発表を行いました。(国語語彙に関する調査の詳
細については、ニューズレター第5号参照 http://www.cret.or.jp/j/news/cretnews5_20080326.pdf 算数・数学語句の理解は、算数・数学を利用して思考を表
現するためには不可欠であり、語句の理解度に応じた指導
によって、児童生徒がもつ思考の表現を促し、ひいては数
学的リテラシーの育成にも通じるものであると考えられ
ます。ところが、本調査以前には算数・数学語彙に対する理
解度調査が行われていませんでしたので、本調査では問題
開発における留意点や分析観点を明らかにすることを目
的としています。
当日の学会発表では、問題開発フローの紹介や結果分析
の例、特に層別選択率に基づいた分析について発表しまし
た。詳細は論文集(「第41回数学教育論文発表会 論文集」pp.723-728)をご参照ください。質疑応答からは、「今後の算数・数学教育における指導のための基礎資料として注
目したい」「海外から留学してきた児童・生徒に対する指導
にも役立つのでは」などのご意見をいただきました。
今後は、対象となる学年層を広げるとともに、指導への
利用についても並行して研究を進めていきたいと思います。
(CRET研究員:阿部 大輔)
2008年11月21日(金)、全国高等学校国語教育研究連合会第41回研究大会(於:東京都立晴海総合高等学校)において、「都国研学力テストと高校生の国語力について」と
いうタイトルで講演を行いました(発表者:渡部 洋理事)。 発表タイトルにある都国研学力テストとは、東京都高等
学校国語教育研究会(都国研)が作成、全国の高校1年生・2年生およそ5000~7000人が毎年受験している国語テストです。2008年春に都国研より共同研究のご依頼をいただき、
2006~2008年度の3年間分についてCRETにて分析を行いました。 参加者には現役の高等学校の先生が多く、
発表後には「高校生の国語力について新た
な視点を得ることができた」「テストを実施
するだけでなく、そのデータを活用するこ
とが重要だと再認識した」などのご意見を
いただくことができました。
当日の発表資料については、教育テスト研究センターの
ウェブサイトにアップロードしています。ぜひご覧ください。
http://www.cret.or.jp/j/report/081121_tokokuken_test.pdf
)
今年度開発を進めておりました高等学校・大学版の語彙テスト(約200問)および、社会人として必要な用語テスト(約100問)について、2008年12月に650人を対象に実査を行いました。さらに2009年1月にはおよそ1100人の追加実査を行いました。今後はデータをもとに分析を進めていきます。(CRET研究員:島田 研児)
社会人対象のチームワーク力の測定に関する研究では、日米におけるチームワーク概念調査をもとに日本人に適合したチームワークの因子
を想定し、引き続き2008年12月~2009年1月に、日本人とアメリカ人を対象にチームワーク力尺度項目の表面的妥当性調査を行いました。調査票の設計時には、日本語と英語の言語の違いによる影響を考慮して、バックトランスレーションを行うことで、言語を異にする調査の精度を
高めました。今後は、概念調査・表面的妥当性調査の2つの調査結果を比較分析し、妥当性と信頼性の高いチームワーク力尺度の開発を進めていきます。(CRET研究員:横井 理絵)
CBT化する際に、コンピュータに単純に従来のテストを表示するだけだと、紙ベースのテストで受験者がよく行っている、試験問題文中へのアンダーラインやメモなどの注意書き(=アノテーション)ができなくなります。アノテーションに関する先行研究を調べると、この有無が成
績に影響を与えるといういくつかの結果が見られました。紙からCBTへの移行時に起こるそのデメリットをなくすには、アノテーションを許可する機能を、どのようなタイプの問題に対してどの程度まで実装する必要があるのか。これらを明らかにするための実験計画が現在進行中
です。(CRET研究員:吉本 真代)
http://www.cret.or.jp [email protected]
・山下仁司(2008). 「英語脳」の持つ能力の特徴とその原因について(GTECデータ分析による考察)日本言語テスト学会(JLTA) 第12回全国研究大会・Sugimori, S.(2008). Global Bully Watch(Keynote speech) "The International Conference on Violence Prevention:School and Family Contexts"Organized by National Institute for Child and Family Development(NICFD), Mahidol University, Thailand,16 September 2008.・杉森伸吉・倉持清美(2008). 体験活動・体験学習のプログラム作りと効果測定をめぐって 日本教育心理学会第50回総会準備委員会企画シンポジウム・杉森伸吉(2008). 文化社会心理学の観点からいじめを読み解く 日本健康相談活動学会誌第3巻第1号 pp.15-20・杉森伸吉(2008). 自己をとらえる実験法-ロジックと国内外での位置づけ 榎本博明・岡田努・下斗米淳(監修) 榎本博明・岡田努(編) 自己心理学①-自己 心理学研究の歴史と方法 金子書房 pp.72-87・杉森伸吉(2008). 体験活動の評価と問題への対応 河野義章(編著) 教育フィールド開発-豊かな教育体験活動のために 学芸図書株式会社 pp.46-67・杉森伸吉(2008). 集団サイズと成員誘意性分布との共変認知における文化差 日本社会心理学会第49回大会 日本社会心理学会第49回大会発表論文集 pp.144-145・谷井淳一・大谷尚・無藤隆・杉森伸吉(2008). 演劇ワークショップの劇創作指導のプロセス 日本カウンセリング学会第41回大会 日本カウンセリング学会第 41回大会発表論文集 p.110
本書は、「自己」に関する心理学の諸領域の
研究をまとめたシリーズの第1巻であり、自己研究の歴史と方法を紹介したものである。「自己というキーワー
ドによる研究の体系化」という本シリーズの試みは、領域間の交
流の分断という現代の心理学が抱える問題に対する一つの答え
といえよう。
第1部では、「自己心理学の歴史と展望」について自己心理学の誕生から最新の学会活動まで幅広く紹介されている。第2部と第
3部では、「自己心理学の研究方法」が量的研究と質的研究とに分けて紹介されている。特に、最近注目を集めている質的研究を扱
った第3部は、半数のページが使われ、立場の異なる研究者によって詳細に検討されている。
自己に関心のある人はもちろんのこと、関心のない人にとって
も、心理学の歴史や研究手法の理解に役立つ良書である。本シリ
ーズの他の書も合わせて読むことをお勧めしたい。
(東京学芸大学特任講師 立脇洋介)
本書は、世界銀行とOECDが進めてきた共同プロジェクトの成果として、現在「高等教育が国境を越える時代」が急速に進みつつある背景を解説し
ている。「高等教育が国境を越える」とは「学生、教職員、プログラム、提供者、
カリキュラム、プロジェクト、研究、サービスなどが、国の行政区域を越え
て国際移動する」ことであり、「教育はすでに国家の専有物ではなく、自由
貿易の対象となるサービスとして、グローバル商品になっている」ことを
指摘している。
その理由が4つの社会的背景から詳細に分析されているが、読み進むうちに、社会環境の変化と共に、「教育の概念」もまた変容していくことを実感した。
今後、インターネットの普及によるオンライン教育の拡充は、同時に「悪
質な教育の商品化」を引き起こしていく可能性を高めるであろう。そのよ
うな背景において、「高等教育の質保証を国際的ネットワークで実施する
必要がある」という本書の指摘は特に示唆深い。一読の価値ある一冊である。
(CRET事務局長 矢野 徹)