外来化学療法の看護...外来化学療法...

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外来化学療法の看護 CEPTX療法の患者の事例を通して学ぶ~ 平成28418外来看護師

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外来化学療法の看護 ~CE+PTX療法の患者の事例を通して学ぶ~

平成28年4月18日

外来看護師

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外来化学療法

• 入院管理でなくても投与できる薬剤が開発された事

• 支持療法が進歩した事

以上の理由で外来通院での化学療法が

可能となった。

患者は入院治療と異なり自分のライフスタイルに合わせて日常生活を送りながら治療ができる。

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化学療法とは

ある種の化学物質の選択毒性を利用して疾患の原因となっている微生物やがん細胞の増殖を阻害し体内から駆逐する目的の治療法。

抗がん剤は悪性腫瘍の増殖を抑えることを

目的とした薬剤。

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化学療法の目的

• 術前化学療法 →腫瘍縮小目的

• 術後補助療法 →再発予防目的

• 緩和的化学療法 →延命目的

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術後補助療法

• 腫瘍が原発巣のみにとどまっていれば外科的手術のみで完治できるが、手術を行った時点で浸潤を起こしていたり微小転移が存在していることも多い。

それを抑制し、増殖を阻止するのが術後補助

化学療法の大きな役割である。

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• 初回は入院で行う

• 事前に歯科受診や感染症の有無などをチェックします

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外来での化学療法の流れ

①バイタルサインの測定

チェックポイント

投与前の体調は良いか

有害事象の出現はどうか

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グレード評価

グレード 1 2 3 4 5

食欲不振 食生活の変化を伴わない食欲低下

顕著な体重減少や栄養失調を伴わない摂取量の変化

顕著な体重減少または栄養失調を伴う

生命を脅かす;緊急処置を要する

死亡

口内炎 症状がない

または軽度の症状がある

中等度の疼痛;経口摂取に支障がない

高度の疼痛;経口摂取に支障がある

生命を脅かす

緊急処置を要する

死亡

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グレード 1 2 3 4 5

嘔吐 24時間に 1-2エピソードの嘔吐

24時間に 3-5エピソードの嘔吐

24時間に 6エピソード以上の嘔吐

生命を脅かす緊急処置が必要

死亡

下痢 ベースラインより4回以下/

日の排便回数の増加

ベースラインより4-6回/日

の排便回数の増加

ベースラインより7回以上/日の排便回数の増加

生命を脅かす緊急処置が必要

死亡

便秘 不定期・間欠的なしょうじょう

緩下剤・浣腸を定期的に使用を要する持続症状

敵便を要する頑固な便秘で日常生活動作を制限

生命を脅かす緊急処置が必要

死亡

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発熱 38.0~39.0℃ 39.0~40.0℃ 40.0℃以上が24時間以下

40.0℃以上が24時間以上

死亡

高圧血 収縮期 120-139 拡張期 80-90

ステージⅠ 収縮期 140-159 拡張期 90-99

ステージⅡ収縮期 160以上 拡張期 100以上

生命を脅かす

緊急処置が必要

死亡

呼吸困難 中等度の労作に伴う息切れ

きわめて軽度労作にともなる息切れ

身の回り以外の日常生活動作の制限

安静時の息切れ

身の回りの日常生活の制限

生命を脅かす

緊急処置が必要

死亡

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末梢神経障害 症状がない

中等度の症状

身の回り以外の日常生活の制限

高度の症状

身の回りの日常生活動作の制限

生命を脅かす

緊急処置を要する

死亡

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味覚異常 味覚の変化はあるが食生活は変わらない

食生活の変化を伴う 味覚変化 不快な味 味覚の消失

倦怠感 だるさ 元気がない

身の回り以外の日常生活動作の制限

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②採血 肝機能・腎機能は正常か 骨髄抑制はないか (白血球減少・貧血・血小板減少) 好中球 白血球の45~60%を占める 細菌の貪食作用 寿命は血中で7~12時間 組織内で2・3日

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グレード 1 2 3 4 5

白血球減少

3000以上 3000~2000 2000~1000 1000以下

好中球減少

1500以上 1500~1000 1000~500 500以下

血小板減少

75000以上 50000 ~75000

25000 ~50000

25000以下

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投与前の準備として…

・患者さんの案内

・輸液ラインの確保

末梢

ポート

・急変時に対応できるように

救急カート

モニター

酸素

吸引

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投与中

・指示された投与速度の厳守

・血管外漏出の有無

・過敏症への対応

投与終了

抗がん剤のフラッシュ

抜針

確実な圧迫止血

皮膚トラブルがないか観察

バイタルサイン測定

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乳癌の種類

女性ホルモンに対する反応性

HER2タンパクの量

がんの増える速さ

治療法

ルミナルAタイプ 陽性 陰性 遅い ホルモン剤のみ

ルミナルBタイプ(HER2陰性)

陽性 陰性 速い 抗がん剤+ ホルモン剤

ルミナルBタイプ(HER2陽性)

陽性 陽性 ― 抗がん剤+ ハーセプチン+ ホルモン剤

HER2タイプ 陰性 陽性 ― 抗がん剤+ ハーセプチン

トリプルネガティブタイプ

陰性 陰性 ― 抗がん剤

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事例

A氏 58歳 女性

左乳房全摘術+センチネルリンパ生検(陰性)

病理結果

T1 N1 M0 stageⅡA

ER:- PgR:- HER2:1+ Ki67:>50%

Ly:+ v:+

母親の介護をしている

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T1 N1 M0 stageⅡA

Ki67:>50% ➟がんの増殖速度は速い

Ly:+ v:+ ➟リンパや血管への浸潤がある

再発のリスクが高い

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ER:- PgR:- ➟ホルモン感受性がない

つまりホルモン剤は効果がない

⇒術後補助療法として抗癌剤治療が望ましい

ただし…

HER2:1+ ➟HRE2タンパク受容体がない

分子標的剤は効果ない

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乳癌術後の補助療法

主な抗がん剤治療 ・CMF療法 ・AC療法 ・FEC療法 ・TC療法 ・CE+PTX療法 ・ ・ ・

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12/26 初回CE開始 1/9 投与14日後 KT:37.0℃ 採血 WBC:1100 NEU:8.3% (91) →入院 抗生剤、フィルグラスチム投与 1/16 2コース目からファルモルビシンを減量し 外来にて施行 2回目以降も同様に白血球、好中球の減少あったが入院はせず外来通院にてG‐CSFを使用しながら経過。

重篤な感染症にも至らず、また延期等はすることなく 4回目まで終了する。

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3/27 weekly PTX 投与開始

手先足先の痺れ・食欲低下あるが、日常生活に支障はなく経過。

化学療法中は食欲低下・味覚異常はあったが、体重減少はなく完遂する。

1人暮らしのため化学療法後は1人で帰宅していた。

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問題点

① CE療法による骨髄抑制

② 吐き気による食欲低下

③ PTX療法による手先足先の痺れ

④ 脱毛

⑤ 送り迎えをする人がいない

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セルフケア支援

骨髄抑制時

初回は1週間ごとに来院し採血のチェックし

白血球の下がり方をみる。

…自覚症状がないこと多い

白血球減少:易感染

貧血:息切れ・動悸・疲労感

血小板の減少:出血のリスク

⇒予防としてG-CSF投与を行い白血球減少を防ぐ、清潔保持の対策の指導を行う

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入院ができない状況でのケア

・手洗いうがい等の指導

・他者との接触の方法

・食事の方法

など

A氏の場合、来院は可能なため翌日のバイタルサインや採血チェックを行った。

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• 吐き気・嘔吐 どんな状況で起こる? ・投与前?投与中?投与後? 化学療法中は支持療法として制吐剤の投与 予測嘔吐への対応として頓用としての制吐剤処方 食欲の低下 ★無理をしない 体重減少がないかチェック 食事の工夫をパンフレットを用いて 説明

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PTX時の手先指先の痺れ

グレード評価をしていく必要がある。

・場合によっては減量・休薬も…

・後遺症として数年症状が続く人も…

・牛車腎気丸や芍薬甘草湯などの漢方薬や

ロキソニンなどの鎮痛薬の使用もすることがある

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• 脱毛

通常は1~2週間で抜け始め治療が終わると

1~2か月で再生が始まる。

・抗がん剤治療が始まる前に

ウイッグやケア帽子の説明を行っておく

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• PTX時は通院方法もチェック

アルコールで薬剤を溶解するため

注意が必要

ビール160ml/抗がん剤100㎎あたり

⇒帰宅はどうするか?

A氏の場合、一人で帰宅することも…

アルコール禁忌の患者へは

使用できない

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帰宅後に困ったことがあったら…

• まずは当院に連絡を

・当院で抗がん剤治療中であること

・いつからどのような状態か

我慢はせずに相談を

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まとめ

・外来での化学療法のメリット

治療前とほとんど変わらない日常生活が送れる

・デメリット

・通院時間、待ち時間がかかる

・有害事象に対する不安

・治療時間中しか病院内にいないため、その間し

か看護の指導・介入ができない

・サポートが得られない場合は継続が困難なことも

ある

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長期にわたる化学療法を継続できるよう有害事象への対応と共に患者個々の背景を理解しながら支援していくことが大切。

患者さんが、安心して治療生活が送れるようにする。