第 29 章 地域編⑤：北部

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地域編⑤：北部

地域概要

概要

①北部地方のタイにおける経済的地位

17 県で構成される北部は、人口 1,140 万人、名目 GDP は 349 億ドルである（いずれも 2017 年）。

経済の中心はチェンマイ県であるが、工業団地はチェンマイ県は 1 ヵ所のみであり、すぐ南に位

置するランプーン県に集中している。

図表 29-1 タイ北部地方の位置

1 チェンマイ Chiang Mai

2 チェンラーイ Chiang Rai

3 ナーン Nan

4 プレー Phrae

5 メーホーンソーン Mae Hong Son

6 ランパーン Lampang

7 ランプーン Lamphun

8 パヤオ Phayao

9 ターク Tak

10 スコータイ Sukhothai

11 ウッタラディット Uttaradit

12 ピサヌローク Phitsanulok

13 カンペンペット Kam Phaeng Phet

14 ピチット Phichit

15 ペッチャブーン Phetchabun

16 ナコンサワン Nakhon Sawan

17 ウタイターニー Uthai Thani

北部地方

17

タイの投資環境

222

図表 29-2 北部地方概要

（注）為替レートは 2017 年平均を採用 （出所）National Economic and Social Development Board、Department of Provincial Administration より作成

図表 29-3 北部地方の産業構成

（出所）National Economic and Social Development Board より作成

②工業団地・日系企業進出動向

北部地方の工業団地は、ランプーン県に 3 ヵ所、チェンマイ県に 1 ヵ所、ピチット県に 1 ヵ所

ある。日本企業は、このうちのランプーン県の工業団地に多く進出している。2016 年 11 月の現

No 県名 （英語名） 人口 1人あたり 名目GDP

[2017年] GDP [2017年] [2017年]

（1,000人） （ドル） （100万ドル）

北部地方 Northern 11,400 3,057 34,852

1 チェンマイ Chiang Mai 1,704 4,007 6,828

13 カンペンペット Kam Phaeng Phet 773 4,203 3,248

16 ナコンサワン Nakhon Sawan 975 3,240 3,158

2 チェンラーイ Chiang Rai 1,144 2,690 3,077

12 ピサヌローク Phitsanulok 893 3,069 2,741

7 ランプーン Lamphun 406 5,644 2,294

15 ペッチャブーン Phetchabun 914 2,477 2,263

6 ランパーン Lampang 735 2,733 2,009

9 ターク Tak 504 2,796 1,408

10 スコータイ Sukhothai 616 2,158 1,330

14 ピチット Phichit 539 2,460 1,327

11 ウッタラディット Uttaradit 433 2,592 1,123

8 パヤオ Phayao 410 2,589 1,061

3 ナーン Nan 440 2,096 922

17 ウタイターニー Uthai Thani 292 2,886 842

4 プレー Phrae 423 1,976 836

5 メーホーンソーン Mae Hong Son 199 1,928 383

No 県名 産業構成比

第1次 第2次 第3次

鉱業 製造業 公益業 卸売/ 運輸/ 宿泊/ 通信 金融 不動産 教育/ 防衛/ その他

小売 倉庫 飲食 科学技術 公的部門

北部地方 24.8% 24.5% 3.3% 14.7% 6.4% 50.7% 13.7% 2.5% 2.4% 0.7% 6.9% 3.9% 9.4% 6.2% 5.1%

1 チェンマイ 17.6% 17.4% 0.6% 8.8% 8.0% 65.0% 13.8% 5.7% 8.4% 1.3% 8.0% 4.0% 8.8% 7.5% 7.5%

13 カンペンペット 21.2% 48.5% 16.1% 28.9% 3.5% 30.3% 12.5% 0.8% 0.3% 0.2% 3.8% 3.0% 6.1% 1.9% 1.7%

16 ナコンサワン 27.8% 24.6% 2.3% 18.7% 3.6% 47.5% 14.6% 2.2% 0.8% 0.6% 7.0% 3.7% 8.1% 5.9% 4.7%

2 チェンラーイ 29.9% 12.8% 0.8% 5.7% 6.3% 57.3% 16.6% 3.4% 3.3% 0.7% 7.8% 3.8% 11.6% 5.1% 5.2%

12 ピサヌローク 26.2% 16.3% 0.2% 9.2% 6.9% 57.5% 13.3% 1.6% 1.0% 0.6% 7.2% 4.3% 13.6% 10.8% 5.1%

7 ランプーン 21.4% 50.0% 0.3% 44.5% 5.2% 28.6% 13.0% 0.6% 0.3% 0.5% 3.6% 2.1% 3.4% 2.1% 3.1%

15 ペッチャブーン 33.3% 20.2% 1.8% 13.6% 4.8% 46.5% 12.9% 1.0% 0.5% 0.5% 6.5% 4.7% 10.2% 6.7% 3.6%

6 ランパーン 10.8% 40.8% 17.4% 12.5% 10.9% 48.5% 11.8% 2.1% 0.8% 0.5% 6.8% 4.2% 10.0% 6.4% 5.8%

9 ターク 23.0% 27.6% 1.5% 19.3% 6.8% 49.4% 16.4% 2.4% 0.6% 0.7% 5.5% 2.9% 7.6% 8.8% 4.4%

10 スコータイ 33.7% 14.1% 1.4% 6.6% 6.0% 52.3% 14.7% 1.3% 0.8% 0.5% 8.0% 5.5% 11.6% 4.3% 5.5%

14 ピチット 40.1% 15.3% 0.6% 7.9% 6.8% 44.6% 15.5% 1.0% 0.4% 0.6% 7.1% 3.5% 7.8% 3.6% 5.2%

11 ウッタラディット 27.7% 24.1% 1.6% 15.2% 7.4% 48.2% 12.7% 1.6% 0.2% 0.7% 8.3% 4.5% 9.1% 6.7% 4.4%

8 パヤオ 34.1% 11.9% 0.3% 5.0% 6.6% 54.1% 12.3% 1.7% 0.4% 0.6% 8.2% 3.9% 13.2% 7.3% 6.4%

3 ナーン 27.4% 14.7% 0.9% 6.6% 7.2% 57.9% 12.0% 1.9% 0.6% 0.8% 9.4% 5.1% 12.7% 9.2% 6.2%

17 ウタイターニー 35.1% 23.3% 0.3% 17.7% 5.3% 41.6% 12.9% 1.6% 0.4% 0.4% 6.6% 3.4% 8.4% 4.1% 3.9%

4 プレー 17.4% 19.3% 2.2% 10.0% 7.2% 63.3% 10.5% 3.3% 1.0% 0.8% 10.0% 5.2% 15.7% 9.6% 7.2%

5 メーホーンソーン 25.6% 14.6% 0.4% 4.7% 9.5% 59.8% 10.4% 2.0% 1.8% 1.1% 6.9% 4.2% 17.2% 8.8% 7.4%

第 29 章 地域編⑤：北部

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地ヒアリングの時点ではランプーン県の工業団地には空き物件はないとのことであったが、IEAT

のウェブサイトの情報によると、2019 年 7 月時点では一部空きが出ている模様である。

進出日系企業から見た事業・生活環境やコスト

図表 29-4 北部地方に進出した場合のメリットと留意点

（出所）現地調査・各種報道より作成

①インフラ・物流

【道路】

チェンマイ中心部からランプーン県の工業団地までの道路は複数車線であり、基本的に道路イ

ンフラ上の不都合はない。渋滞についても次第に進行していると言われているが、ビジネスを行

うにあたって特段の問題が生じるレベルではない。バンコクまでは約 700km の距離があるが、コ

ンテナ貨物をバンコク港から出荷（入荷）する企業も少なくない。但し、道中のランパーン県、

ランプーン県とピサヌローク県の間が険しい山道であり、事故が発生しやすいようである。

【空港・港湾】

チェンマイ中心部から南西方向約 4km の地点にチェンマイ国際空港がある。空港運営会社であ

る Airport of Thailand はチェンマイ空港を含む主要 6 空港のデータを公表しているが、それによる

と、チェンマイ空港は発着回数・乗降客数で 6 空港全体の 1 割弱、取扱い貨物量は 1.5 万トンで、

全体の 1％程度である。北部では軽量な電子部品等の集積が進んでおり、空路での輸送が使われ

ることも多い。

メリット 留意点

バンコク等に比べワーカーを雇用しやすく、転職も

少ない

人件費が上昇し、あえて北部に進出するメリットが

薄れた

チェンマイ空港が近く、関税局の出先機関があり、

手続きが比較的容易工業団地が少なく、空きも少ない

交通渋滞が少ない。但し、徐々に進行している バンコク向け輸送では時間がかかる

（チェンマイ）日本の総領事館があり、相談、情報

収集を行いやすい

バンコクとの間の道路には一部険しい山道があり事

故が発生することがある

（チェンマイ）駐在員用サービスアパートが整い、

日本食品調達、治安面など、住環境が良い

タイの投資環境

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【電力】

日本企業が進出しているランプーン県の工業団地では停電はほとんどない。但し、電圧は不安

定で変動幅が大きいとの指摘もある。

【通信】

通信では大きな問題はない。インターネットでの TV 会議では遅延やブロックノイズが発生す

ることがある。

②労働事情

【人材】

近年、新規の進出はあまりないことから、ワーカーの採用で逼迫はない。スタッフやマネージ

ャーの場合、優秀な人材はバンコクへ流出する傾向が強く、採用が難しい。チェンマイには国立

大学のチェンマイ大学があり人材が輩出しているが、卒業生はバンコクへ向かうことが多いよう

である。

【賃金】

日本企業が多く操業しているランプーン県は、以前はバンコクと比較して 低賃金が低く、2011

年時点の 低賃金の日額はバンコクが 215 バーツ、ランプーン県が 169 バーツで、ランプーン県

はバンコクの 8 割の水準であった。しかし、2013 年に全国一律 300 バーツとなり、 低賃金で見

た人件費の強みは薄くなった。2018 年 4 月の 低賃金改定では、北部地方ではチェンマイ県が 320

バーツで も高く、ナコンサワン県、ピサヌローク県等 6 県が 315 バーツ、残りの 10 県が 310 バ

ーツである。

図表 29-5 北部地方の県別 低賃金

（出所）Ministry of Labor “New Minimum Wage Rate Table Under the National Wage

Committee’s Nofication on Minimum Wage Rate (No.9)”より作成

県名最低賃金

（日額、バーツ）県名

最低賃金（日額、バーツ）

チェンマイ 320 ランプーン 310ナコンサワン 315 ランパーン 310ピサヌローク 315 ターク 310ペッチャブーン 315 スコータイ 310ウッタラディット 315 ピチット 310パヤオ 315 ウタイターニー 310ナーン 315 プレー 310カンペンペット 310 メーホンソーン 310チェンラーイ 310

第 29 章 地域編⑤：北部

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③生活環境

【気候】

チェンマイの月平均気温（平年値）はバンコク同様、4 月が も暑く、12 月が も涼しい。4

月の平年値は 29.3 度、12 月は 21.7 度である。降水量もバンコクと同様で、5 月から 10 月が多い。

【教育】

チェンマイには日本人学校はないが、国語と算数の補習機会を提供する補習授業校がある。

【医療】

在チェンマイ日本国総領事館のウェブサイトに、「チェンマイ情報」として医療機関の情報が掲

載されている（https://www.chiangmai.th.emb-japan.go.jp/itpr_ja/byouin.html）。

私立病院のバンコク病院、チェンマイラム病院やチェンマイ大学医学部付属病院等がある。チ

ェンマイ在住の日本人駐在員はバンコク病院を利用することが多い模様である。バンコク病院、

チェンマイラム病院、ラジャヴェー・チェンマイ病院、シーパット病院、ランナー総合病院はい

ずれも 24 時間体制で、日本人医師はいないが、日本語通訳を配置しており（時間は各病院で異な

る）、日本語での受診が可能である。重篤な病気等の場合はバンコクの病院に移送される。

【治安】

チェンマイは観光都市であり、街中の治安は良いと言われている。

【住居】

工業団地で操業する日本企業の駐在員はチェンマイに居住するケースがほとんどである。また、

リタイア後のロングステイで滞在する日本人も多く、在留邦人数（長期滞在・永住）は、バンコ

ク、チョンブリー県に次いで 3 番目に多い 2,489 名（2017 年 10 月 1 日時点）である。そのため、

サービスアパートやロングステイ者用の住居も多く提供されている。

【日本食】

大型ショッピングセンターには寿司やラーメン、牛丼など和食レストランが営業しており、ス

ーパーでは日本食材の調達が可能である。また、チェンマイを拠点とする地場のリンピン・スー

パーマーケット（Rimping Supermarket）では、海外から輸入した加工食品が多い。また、自社規

準に基づく「有機野菜」「水耕野菜」等に分け、それぞれのパッケージに緑色、水色、白色、黄色、

赤色のマークを付けたり、店内に説明用のポップを配置するなどして、消費者が識別できるよう

工夫している店舗もある。

タイの投資環境

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リンピン・スーパーマーケット 店内には日本語の説明も

主要工業団地

No. 工業団地名 所在地 総開発面積

1 Phichit Industrial Estate79 Moo 1, Phitsanulok-Nakhon Sawan RoadKm. 97-99 Nong Lum, Wachirabarami, Phichit66220

197.6ha

2 Lumphun 2 Industrial Estate 70km Chiang Mai Lampang Muang, Chiang Mai51000 59ha

3 Lumphun Industrial Estate 60 Moo 4, Banklang, Muang, Lamphun 51000 125ha

4 Northern Region Industrial Estate 60 Moo 4, Banklang, Muang, Lamphun 51000 286ha

5 Saha Group Industrial Park Pasak Sub-district, Muang District, LamphunProvince 51000 176ha