応用数学Ⅱ 1 - 北海道大学 · 2014-08-25 · 1 応用数学Ⅱ (1) 1....

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1 応用数学Ⅱ 11. 微小変化量の表現 2. Taylor展開 3. 微分方程式の導出法(線形タンク問題) etc. 現象の微分方程式による表現 1. 斉次形の解法 2. 非斉次形の解法 etc. 線形1階定係数常微分方程式の解法

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1

応用数学Ⅱ (1)

1. 微小変化量の表現

2. Taylor展開

3. 微分方程式の導出法(線形タンク問題) etc.

現象の微分方程式による表現

1. 斉次形の解法

2. 非斉次形の解法 etc.

線形1階定係数常微分方程式の解法

2

港湾、治水利水施設

ダム、道路

橋梁、トンネル、

快適化

利便化

安全化

合理的

経済的

利用者 提供者

提供者・利用者のニーズを同時に満たすためには

最適化

運動量則

エネルギー則

質量保存則

の解明

環境影響も含む)周辺への機能・影響(・ 諸施設・構造物の

・流通ち、マスとしての移動・ 社会的諸現象のう

る応答)性質・作用(外力によ  構造物の自然的な

材によって作られた・ 自然および人口素

数量的法則化 モデル化

土木工学の対象

法則の解とその性質 解のあてはめと吟味

提供者・利用者の満足

Goal

微分方程式を利用 数学的理論

(応用数学)

3

例題 §1 線形流出タンクを例にとった現象記述(質量保存則)

I:流入量(単位時間内に入り込む水の体積)

で時間的に一定

Q:流出量(単位時間内に出て行く水の体

積)でQ=ay の関係にあるものとする

a: 係数で一定

y: 水深

S: タンクの平面面積

目標 I、S、aが既知の時に、yとQの時間変化を知りたい。

→ 現象を微分方程式として記述する。

D

4

手順(1)

変数の表記方法の分類

現象に関係する変数の明確化

① 差量: 必ずしも座標軸を設けなくてもよい

基準量: 座標軸を決定して明確に定義

② 独立変数: 他から一切の影響を受けない変数 → 説明変数

従属変数: 独立変数の関数として表される変数 → 目的変数

問題に用いる時空間に関する変数

・時間(刻) t を変数として導入

tは、他から一切の影響を受けない変数である = 独立変数

流入開始の時間を原点としてtを定義する = 基準量

・変化を見たい変数は、水深yと流出量Q

これらは時間(刻)の関数となるような変数である =従属変数

時間(刻)tにおける水深をy(t)、流出量をQ(t)と表す。

水深はタンク底面高と水面高の差 =差量

5

手順(2)

タンクへの水の流入出の関係

現象の成り立ちの明確化(モデル化)

(ある時間中に入ってくる水の量)-(その時間中に出て行く水の量)

=タンク内の水の増加量(または減尐量) ・・・(1)

手順(3) 微尐変化量の表現

Qはtとともに変化する

δtが微小時間で

あるという前提に基づき流出量Qを台形近似

6

手順(3) 微尐変化量の表現

微小時間δt を考え、この時間内で式(1)の関係を表現。

・時間内に入ってくる水の量=

・時間内に出て行く水の量 =

tI ・

tttQtQ ・2

1

tttyty aa ・2

1

tttyty a

・2

微小時間におけるタンク水量の変化

・タンクの水量 = S・y

・タンクの水量増加分 =

以上の式より

I・ tttytyt a

・2

=S・ tytty

・・・(2)

I・ tttytyt a

・2

=S・ tytty ( ) ( )S y t t S y t

7

手順(4) 微分方程式の導出

Taylor展開を利用して微分方程式を導く

Taylor 展開

xf が x 軸上で定義された滑らかな関数(何回でも微分できる)で、a を変数、n を

整数としたとき、

10,

0lim

!

1

!1

1

''!2

1'

!1

1

11

2

  

                          

                        

        +

・・・

axa

RR

axfn

axafn

axafaxafafxf

nn

nnnn

剰余項

ここで、 xaxxx  , の置き換えを行うと、

nnnn xf

nxxf

n

xxfxxfxfxxf

!

1

!1

1

''!2

1'

!1

1

11

2

          

・・・・

8

手順(4) 微分方程式の導出

Taylor展開式を使って式(2)中のy(t+δt) を表すと、

2

1 1

1 1' ''

1! 2!

1 1

1 ! !

n n n n

y t t y t y t t y t t

y t t y tn n

・・・・

          

ここで、 t は微尐量なので

  ・・・・           32 '''!3

1''

!2

1' ttyttytty である。

そこで、 2t 以上の項(高次項)が t の項と比較して微小のため無視できるものと考えると、

tdt

tdytytty である。

これを式(2)に代入すると、

I・

ttdt

tdytytyt

a

2S・

tytdt

tdyty

両辺に t がかかっているので、両辺をδt で割ると、

I-

tdt

tdyty

a2

2S

dt

tdy

9

I-

tdt

tdyty

a2

2S

dt

tdy

この中で、

tdt

tdy の項は、 t の一次の項であるが、 t の 0 次に相当する他の項に比較

すると1オーダー小さい項であり、 0t のもとで無視することができる。

こうすると、最終的な式は、 I ya S・

dt

tdy これを整理すると、

【水深変化を表す微分方程式】

S

Iy

Sdt

dy

a

《式の意味》

概念的な式(1)をより正確な定量的表現にしたのが式(3)である。

・左辺 ySdt

dy

Sdt

dy

aa

は外部信号に対する応答

・右辺はこの系に働く外部信号(外力)

未知数 y の微係数を含むこのような式を、微分方程式という。

式(3)は、1 階の常微分から成り、微分係数にかかる係数 A が定数なので、

定係数 1 階常微分方程式 という。

手順(4) 微分方程式の導出

・・・(3)

(定数係数1階常微分方程式)という。

10

微分方程式をたてる上で必ず用いる方法として、

tdt

dytytty の近似法がある。これは t が小さい場合には、問題なく成立する。

今の問題のように、時刻 t から tt の間の y の変化を表すには、

手順(4) 微分方程式の導出

重 要

微分係数 はtにおけるyの傾き

(この場合は接線の傾き)

dt

tdy

11

手順(5) 初期条件

ty がどう変化するかは、最初の状態( 0t )で、どれくらいの水深があったかによって

違ってくる。 0t における水深 0y が分からなければ、その後の水深の変化を知ることが

できない。

時間変化問題における初めの状態を表す条件を、 初期条件 という。

今回の線形タンクの問題では、

00 0t y y の時,水深

注)初期条件は、必ずしも 0y についてだけでなく、 0'y について与える場合もあり、

問題ごとに十分考慮する必要がある。

・・・(4)

手順(6) 成立条件の検討

式(3)は、どんな場合にでも成立するわけではない。

水深 y がタンク深さ D を越えては成り立たない。

すなわち、式(3)の成立条件は、 Dy 0

(水深 y がタンク深さD を越えない)

これを越えると別な現象が生じる。

微分方程式が成り立つ範囲(適用限界)を明確化することが重要

・・・(5)

12 12

結論 線形流出タンクの水深と流出量の時間変化問題

以上、整理すると、上記問題は次のように現象記述される。 微分方程式 初期条件 成立条件

S

Iy

Sdt

dy

a

00 0t y y の時,水深

Dy 0 ・・・(5)

・・・(4)

・・・(3)

線形1階定(数)係数常微分方程式

13

§2 線形1階定係数常微分方程式の解法

)(tBAydt

dy ・・・・・・・・・・・(1) 、 )(tB :任意の連続関数、 A:定数

初期条件

0t にて 0yy ・・・・・・・・・・・(2) 、 0y :定数

線形流出タンクの時間変化問題に出てきた微分方程式は、上式のような形をしている。

微分方程式の解法

右辺の値で場合分けを行う。

〔1〕 0)( tB の場合: 斉次(同次)形の微分方程式という。

式(1)は、 Aydt

dy の形で表現され、変数分離による積分を実行できる。

〔2〕 ( ) 0B t の場合: 非斉次(非同次)形の微分方程式という。

式(1)を、単純に変数分離することはできない。

14

この場合、式(1)は

Aydt

dy

とすることができ、変数分離による積分を実行できる。

式の意味

これは y の時間変化率(速度)が y に比例していることを意味する。

y が大きいと dtdy も大きくなる。

dtAdyy 1

CAty ln ・・・・・・・・・・・(3)

CAtey

AtC ee

AteC ・・・・・・・・・・・(3)'

C は積分定数。未知の定数 C を含む解を式(1)の 一般解 という。

手順(1) の場合: 斉次(同次)形の微分方程式 0)( tB

n階の常微分方程式はn個の積

分定数をもつが、このように任意の定数や任意関数を含む

形で書かれる解を指す

15

ここで、初期条件(2)を入れると、以下のように C が決まる。

Cy 0ln

したがって、式(3)は

0lnln yAty

Aty

y

0

ln

Atey

y 0

Ateyy 0 ・・・・・・・・・・・(4)

未知の定数 C に既知の特定値を与えた解を 特解 という。

手順(1) の場合: 斉次(同次)形の微分方程式 0)( tB

一般解に含まれる任意の定数や任意の関数に特定の値や関数を与えることによって得られる解。

すなわち一般解に含まれる個々の解のことを指す。

0A のとき、

y は単調減尐(指数減尐)

0A のとき、

y は単調増加(指数増加)

t

16

手順(2) の場合: 非斉次(非同次)形の微分方程式 0)( tB

この場合には、単純に変数分離することができない。

)(tBAydt

dy ・・・・・・・・・・・(1)

どうするか?

解の形を推定(仮定)し、解きやすい形(変数分離型etc.)の解を得られないか試行してみる。

仮定①:

式(1)の解が斉次方程式の一般解(斉次解)に を加えたもの

仮定②:

式(1)の解が斉次方程式の一般解(斉次解)に を乗じたもの

)(t

)(t

17

手順(2) の場合: 非斉次(非同次)形の微分方程式 0)( tB

解法の試行(その1)

仮定① 式(1)の解が斉次方程式の一般解(斉次解)に )(t を加えたものと仮定。

0)( tB のときの解(斉次解)は、

AtCey ・・・・・・・・・・・(a)

であった。そこで、

)(tCey At ・・・・・・・・・・・(b)

このとき、 )(t がうまく見つかればよい。

式(b)を式(1)に代入すると、

)()( tBtCeAdt

dACe AtAt

)()( tBtAdt

d

・・・・・・・・・・・(c)

この式は、式(1)と同じ形をしていて、やはり変数分離ができない。

( ) (1)dy

Ay B tdt

  

18

手順(2) の場合: 非斉次(非同次)形の微分方程式 0)( tB

解法の試行(その2)

仮定② 式(1)の解が斉次方程式の一般解(斉次解)に )(t を乗じたものと仮定。

( )Aty Ce t ・・・・・・・・・・(d)

ここで、 ( )C t を ( )t に置換して

Atety )( ・・・・・・・・・・・(d’)

これを式(1)に代入すると、

)()()( tBetAAetedt

d AtAtAt

)(tBedt

d At

・・・・・・・・・・・(e)

この式は積分することができる。

( ) ( )Att e B t • dt ・・・・・・・・・・・(f)

よって解は、(d’)に(f)を代入して

( )At Aty e B t dt e ・・・・・・・・・・・(g)

以上より、式(d)が式(1)の解であることが証明された。

( ) (1)dy

Ay B tdt

  

19

定数変化法 ポイント①

一般に、非斉次形方程式の解を求めるには、

①斉次形方程式の一般解を求める。

AtCey

②その中の未知定数 C が )(t のように時間的に

変化するものと考え、

Atety )(

とおいて原式に代入する。

③ )(t の方程式ができるので、これを解く。

)()()( tBetAAetedt

d AtAtAt

)(tBedt

d At

)(tBedt

d At

10

)()( CtdtBett

tA

ただし、 1C は定数。

( ) ( )Att e B t dt or

20

一方、 Att

tA etdtBe 0 )( は、外部からの入力 )(tB に斉次解の逆数をかけて

積分し、さらに斉次解を乗じた形をしている。この項のみでも式(1)を満足する。

これを 特解 という。

④仮定した式形②にもどすと解が得られる。

AtAtt

tA eCetdtBey 1

0)(

At

tttA eCtdtBe 1

0

)( )(

以上を定数変化法という。

上式中、 AteC

1 は斉次解そのものであるが、非斉次形方程式の解の一部にも

なっている。これを 余関数 ということがある。

つまり、非斉次形方程式の解に含まれる斉次形方程式の解の部分を余関数という。

非斉次形方程式の一般解 = 特解 + 余関数(斉次形方程式の一般解)

定数変化法 ポイント①

非斉次方程式の特解

( )At Ate B t dt e

1 1

( ) ( )

( ) ( )

At At At

At At At

y t e e B t dt e

F t C e F t e C e

原始関数

21

例題1 §1 線形流出タンクを例にとった現象記述(質量保存則)

I: 流入量(単位時間内に入り込む水の体積)で時間的に一定

Q: 流出量(単位時間内に出て行く水の体積)で、

の関係にあるものとする。

α: 係数で一定、y: 水深、

S: タンクの平面面積

yQ a

D

S

Iy

Sdt

dy

a

00 0t y y の時,水深

Dy 0 ・・・(5)

・・・(4)

・・・(3)

微分方程式 初期条件 成立条件

22

解 法

①斉次解を求める。

0 ySdt

dy a

dtSy

dy a

CtS

y a

ln

1Ct

Sey

a

t

SCee

a

1

t

SeC

a

②定数変化法により、 )(t を導入。

t

Sety

a

)( とおく。

23

解 法

③原式に代入して

'( ) ( )t t

S Sdy

t e t edt S

a aa

'( ) ( )dy

y t tdt S S

a a ( )t

S

a

tSea

S

Ie

dt

d tS

a

DtdeS

Id

t tS

0

a

DeI

DeS

S

It

tS

tt

S

1)(

0

aa

aa

I

S

tS

Id e dt D

S

a

( ) 1t

SI

t e Da

a

0

t ′

24

解 法

④これを②にもどして、

t

St

S eDeI

y

aa

a

1

t

St

St

St

S eDI

eI

DI

DeeI

aaaa

aaaa

11

⑤初期条件から

aa

IyDD

Iy 0110   

ゆえに、

t

SeI

yI

y

a

aa

0

25

解 法

⑥図示すると、

④これを②にもどして、

t

St

S eDeI

y

aa

a

1

t

St

St

St

S eDI

eI

DI

DeeI

aaaa

aaaa

11

⑤初期条件から

aa

IyDD

Iy 0110   

ゆえに、

t

SeI

yI

y

a

aa

0

26

微分方程式

KAydt

dy

において、A、K が定数の場合には、

A

Ky

が 特解 となる。

したがって、このような場合については、ポイント①によって

非斉次解をすぐに求めることができる。

非斉次形方程式の一般解 = 特解 + 余関数(斉次形方程式の一般解)

AtCe

A

Ky

この性質は、高階微分方程式においても成り立つ。

線形1階定係数常微分方程式の解 ポイント②

y = 特解 + 余関数(斉次方程式の一般解)

非斉次方程式の特解

S

Iy

Sdt

dy

a

④これを②にもどして、

t

St

S eDeI

y

aa

a

1

t

St

St

St

S eDI

eI

DI

DeeI

aaaa

aaaa

11

⑤初期条件から

aa

IyDD

Iy 0110   

ゆえに、

t

SeI

yI

y

a

aa

0

27

例題2 平成19年度期末試験問題

次の微分方程式を括弧内の初期条件のもとで解きなさい。

2 1 ( (0) 0)dy

y ydx

  

解法1

①斉次解を求める。

斉次方程式:

2 0

2

ln 2

dyy

dx

dydx

y

y x C

2

2

2

x C

C x

x

y e

e e

Ce

斉次解は

2xy Ce

②定数変化法により

を導入。

とおく。

2( ) xy x e

( )x

28

解法1

③原式に代入すると

2 2 2

2

2

( )2 ( ) 2 ( ) 1

( )1

( )

x x x

x

x

d xe x e x e

dx

d xe

dx

d xe

dx

2

2

1

( )

1( )

2

x

x

d x e dx

x e C

両辺積分して

④これを②にもどして

2 2

1

2

1

1{ }

2

1

2

x x

x

y e C e

C e

⑤初期条件

から

0, 0x y

1

10

2C 1

1

2C

以上より

21 1

2 2

xy e

29

解法2

b)より,特解: 余関数:

①斉次解を求める。

斉次解は

2xy Ce

②問題の非斉次方程式の一般解・特解が以下のように表されることを考慮して

a) 非斉次方程式の一般解=特解+余関数(斉次方程式の一般解)

b) 微分方程式 においてA,Kが定数の場合,

は特解となる。

KAydt

dy

A

Ky

1

2y

例題2 平成19年度期末試験問題

2 1 ( (0) 0)dy

y ydx

  

2xy Ce

30

解法2

②a)より非斉次方程式の一般解は

非斉次方程式の一般解=特解+余関数(斉次方程式の一般解)

③初期条件から

例題2 平成19年度期末試験問題

2 1 ( (0) 0)dy

y ydx

  

21

2

xy Ce

21 1

2 2

xy e

31

例題3 平成20年度大学院入試問題

次の微分方程式を解きなさい。

22 0xdyy e

dx

 

解法1

①斉次解を求める。

斉次方程式:

2 0

2

ln 2

dyy

dx

dydx

y

y x C

2

2

2

x C

C x

x

y e

e e

Ce

斉次解は

2xy Ce

②定数変化法により

を導入。

とおく。

2( ) xy x e

( )x

22 xdyy e

dx

32

解法1

③原式に代入すると

2 2 2 2

2 2

( )2 ( ) 2 ( )

( )

( )1

x x x x

x x

d xe x e x e e

dx

d xe e

dx

d x

dx

1

( ) 1

( )

d x dx

x x C

両辺積分して

④これを②にもどして

2

1

2 2

1

{ } x

x x

y x C e

xe C e

33

問題

次の微分方程式を括弧内の初期条件のもとで解きなさい。

22 ( (0) 2)xdyy e y

dx