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鼠径ヘルニア術後にメッシュが腸管内および膀胱内に迷入した1例淺野 博1、大原 泰宏1、篠塚 望1、小山 勇2
1埼玉医科大学 消化器一般外科、2埼玉医科大学国際医療センター
症例は63歳男性。幼少期に右鼠径ヘルニアに対する手術歴があり、56歳時に右鼠径部の膨隆を自覚したため再発性右鼠径ヘルニアの診断でクーゲル法を施行している。その約6年後より下腹部痛を自覚するようになったため近医を受診した。CTで膀胱壁と盲腸壁の肥厚を指摘され、鼠径ヘルニア手術の際のメッシュとの関連が疑われ当科に紹介受診となった。下部消化管内視鏡で盲腸内に迷入するメッシュを認めた。また精巣上体炎を発症しその原因がメッシュ感染にともなう尿路感染であると考えられたためメッシュ除去の目的で手術を施行した。手術所見では内鼡径輪付近には盲腸が強固に癒着していた。メッシュの除去とともに回盲部切除術を施行した。またメッシュは膀胱壁とも強固に癒着していたため膀胱部分切除術および膀胱瘻造設術も施行している。術後は局所に膿瘍を形成したがドレナージで改善、膀胱瘻も抜去し退院となった。再発性鼠径ヘルニアの手術の際に腹膜の欠損が生じメッシュと臓器の直接的な接触がおこり、腸管と膀胱内にメッシュが迷入したものと考えられた。
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鼠径ヘルニア術後のメッシュ異物反応により膀胱に瘻孔形成した一例萩原 謙1,2、宋 圭男1、宮国 泰己1
1日本大学医学部 消化器外科、2取手北相馬保健医療センター医師会病院外科
【症例】73歳男性。主訴)右鼠径部痛、排尿時痛、血尿。【既往歴】深部静脈血栓症にてエドキサバン内服【経過】両側鼠径ヘルニアの診断で2014年9月に腹腔鏡下ヘルニア修復術(surgmeshXD13×10cm)施行。術後診断はJHS:右II-I、左II-IでPOD4日で軽快退院された。同年10月に右鼠径部の硬結と疼痛を自覚し骨盤CT検査、超音波検査で右鼠径部メッシュ周囲に混濁した液体貯留を認めた。WBC5900/μl、CRP0.32mg/dlと炎症反応はなし。症状増悪あり同年12月に穿刺施行し約20mlの膿性排液を認めたが細菌培養は陰性であった。症状は一旦軽快したが2015年8月に再度同症状出現し穿刺施行。鼠径部硬結、疼痛は改善したが同年9月から排尿時痛、血尿を認めたため泌尿器科受診し、膀胱内に肉芽を指摘。2016年4月に経尿道的膀胱腫瘍切除術を施行すると頂部右側壁より膿性の排液(細菌培養陰性)を認めた。メッシュ周囲の液体貯留と膀胱との間に瘻孔が形成され、膀胱内への排液と瘻孔部の肉芽からの出血と診断し焼却した。メッシュの膀胱内への逸脱はなく病理では悪性所見はなかった。その後症状はなく膀胱鏡でも肉芽は改善傾向で経過観察中である。【考察】メッシュ周囲の液体貯留はいずれの培養も陰性であり炎症反応も乏しいことから異物反応と考えられた。メッシュの膀胱内逸脱の報告は散見されるが、異物反応による液体貯留が膀胱との瘻孔を形成した報告はなく非常に稀な症例と考えられた。
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メッシュプラグ法による鼡径ヘルニア術後の難治性疼痛に対して皮下切離が著効した一例酒井 昌博慈仁会 酒井病院 外科
61才男性 右外鼡径ヘルニア(1ー2日本ヘルニア学会分類)に対してメッシュプラグ法による修復術を施行した。術後2週間頃より、右鼡径部 手術創尾側から精索前面に至る部位に疼痛出現し、その後 徐々に疼痛は増強し、鎮痛剤、トリガーブロック施行したが効果は一時的であり不眠等もみられ日常生活に支障が見られるようになった。術後 約3か月の時点で、オンレイパッチ及びメッシュプラグ除去手術目的にて入院となった。局所麻酔下手術を予定、メッシュ除去施行への時は全身麻酔下へ移行を予定した。患者と会話しつつ疼痛部位を確認しつつ局所麻酔下に皮下切離を進めた。疼痛ポイントは鼠径管外と判断し、鼠径管解放は行わなかった。疼痛部位を確認し、その皮下組織を剪刃で切離を行った。その瞬間に疼痛は消失した。皮下切離による神経切離がなされ、疼痛から解放することがなされたものと考えられた。以降、疼痛の再発はない。①本症例の疼痛域は、右陰部大腿神経 大腿枝領域と考えられと推測された。②疼痛ポイント直下の皮下切離(denervation)を行い、疼痛の完全消失が得られた。③改善傾向がなく増悪を見る術後慢性疼痛は、3ヶ月を目処に神経切離術(皮下剥離)を試みることも検討されると思われる。
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病理所見から検討した鼠径ヘルニア術後神経因性慢性疼痛の発生成田 匡大1、森吉 弘毅2、花田 圭太1、松末 亮1、畑 啓昭1、山口 高史1、大谷 哲之1、猪飼伊和夫1
1京都医療センター 外科、2京都医療センター 病理診断科
【背景】鼠径ヘルニア術後神経因性疼痛の発生について病理所見から検討する。【方法】鼠径ヘルニア術後慢性難治性神経因性疼痛2手術例の病理組織標本を検討した。症例1は43歳男性で、鼠径ヘルニア根治術18ヶ月後に慢性疼痛に対して手術を施行。以降も持続する鼠径部痛および陰嚢部痛に対して2回目手術より70ヶ月後にメッシュ除去+Triple neurectomyを施行した。症例2は73歳男性で、持続する精巣痛に対して鼠径ヘルニア根治術より41ヶ月後にメッシュ除去+Triple neurectomy+精巣摘出を行った。【結果】症例1では、腸骨鼠径神経がメッシュにentrapmentされていた。腸骨下腹神経は2度目の手術で切離されており、切離断端は高度に肥厚していた。症例2では、収縮したメッシュが精索と一体化していた。病理学的に症例1の腸骨鼠径神経および症例2の陰部大腿神経陰部枝の神経損傷は見られなかった。一方で、神経周囲にメッシュに関連した炎症性変化が見られ、神経外膜を圧迫していた。症例1の腸骨下腹神経は神経細胞の増殖と肥厚が見られ、外傷性神経腫を来していた。症例2でも、精管周囲を走行する神経(paravasal nerves)の損傷は見られなかったが、メッシュに関連した炎症性変化により神経が圧迫されていた。【結語】神経損傷がなくても、メッシュに関連した炎症性変化により難治性神経因性疼痛は発生する。
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Mesh Bulgeによる再発を認めた腹壁瘢痕ヘルニアの一例片岡 淳、新田 敏勝、藤井 研介、玉岡 滉平、冨永 智、川﨑 浩資、石橋 孝嗣春秋会 城山病院 消化器センター外科
【はじめに】腹腔鏡下腹壁ヘルニア修復術(LVHR)は2012年より保険収載され、年々増加傾向にある。LVHRは簡便である一方で漿液腫やmesh bulgeの惹起が高いとされている。今回LVHRを施行し、mesh bulgeによる再発を認めた一例を経験したため報告する。【症例】73歳女性【現病歴】5年前に開腹下腹部大動脈リンパ節生検を施行した。約4年経って腹壁瘢痕ヘルニアを認めたため、LVHRを施行した。しかし術半年後、再度腹部膨隆を認めたため当科受診した。【身体所見】臍を右へ迂回する上下腹部正中切開創を認め。下腹部正中に5×5cmの膨隆を認めた。【術中所見・経過】前回認めたヘルニア門(20×15cm)に25.4×20.3cmのlight weight monofilament polypropylene meshをunderlayに留置したが、今回meshの反転は無く、その固定部がmesh bulgeにより頭側へずれ、再発していた。ヘルニア門の下縁の固定を強固に行うため 20.3×22cmのlight weight monofi lament polypropylene meshをunderlayに留置し、下縁をCooper靭帯にtackingし、double crown法による固定を施行した。術後5ヶ月現在も再発を認めていない。【考察】mesh bulgeは臨床的に腹壁の外方に圧排されることで膨隆ととらえられる。上記のように臨床症状伴うことから再発との鑑別は困難である。一般には肥満、ヘルニア門の大きい症例に頻度が多く、防止策としてIPOM-PLUSやmesh下縁を恥骨固定も検討されている。【結語】Mesh Buldeによる再発を認めた一例を経験したので報告した。
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子宮全摘後の腹壁瘢痕ヘルニアに対し腹腔鏡下修復術を施行した1例多賀谷信美、菅又 嘉剛、大矢 雅敏獨協医科大学越谷病院 外科
子宮筋腫に対する単純子宮全摘術後の腹壁瘢痕ヘルニアに対し、腹腔鏡下にVentralight ST(VST)を用いた修復術を施行したので報告する。症例は64歳の女性。23年前に子宮筋腫に対し腹式単純子宮全摘術が施行された。外来受診時には臍部左側の腹部膨隆を認め、圧痛や消化器症状はなく、ヘルニア内容は容易に完納された。CTにて臍部左側に約6cmのヘルニア門を認め、結腸および大網が脱出していた。術前に腹部超音波がイド下に体外よりヘルニア門外側3cmの皮膚および皮下のヘルニア内用の脱出領域にマーキングした。術中に皮膚マーキング部の外側の腹部に4本のポートを留置した。横行結腸および大網のヘルニア門の癒着を剥離した。20×15cmのVSTの上下左右の4か所にあらかじめナイロン糸を装着、腹腔内に挿入し、VSTを展開後、4カ所のナイロン糸をEndo-closeにて体外に誘導し、腹壁の皮下に結紮固定した。さらに固定部位の間に吸収性タッカーにてVSTを固定しヘルニア門周囲にも固定を追加した。手術時間は215分、出血量は少量、術後経過は良好で術後第5病日に退院となった。術後22ヶ月でのCTではヘルニアの再発は認められない。
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鼠径ヘルニア術後遅発性メッシュ感染に対してHybrid手術を施行した1例榎本 浩也、恒松 雅、北澤 征三、百川 文健、北川 和男、齋藤 良太、黒澤 弘二、増渕 正隆、渡部 通章厚木市立病院 外科
症例は70歳代、女性。48年前に左鼠径ヘルニアに対して手術が施行された。その後、同ヘルニアの再発に対して9年前にProlene Hernia System(PHS)法による修復術が行われた。今回、2年前より創部から膿汁流出あり、自然軽快したが4ヵ月前より再燃したため、加療目的に当院受診した。左鼠径部皮膚に排膿を伴う瘻孔を認めた。腹部単純CT検査では、左鼠径部に5cm大の範囲で低吸収域が認められ、液体成分が示唆された。その腹側では皮膚瘻を形成し、背側は腹腔内に突出していた。瘻孔形成を合併した左鼠径ヘルニア術後遅発性メッシュ感染と診断した。脈管損傷、腹腔内汚染対策、腹腔内臓器癒着を考慮し、腹腔鏡を併用した前方アプローチ(Hybrid手術)で行う方針とした。手術は感染組織、瘻孔とともにメッシュ除去を行った。腹腔鏡観察を併用することで微小な腹膜損傷を起こした際でも、腹腔内からの気腹ガス排出により、早期発見、修復が可能であった。メッシュ除去後はMcVay法で修復し、脈管損傷や腹腔内に膿汁流出することなく終了した。合併症なく術後5日で退院し、半年経過しているがヘルニア再発は認めていない。近年、鼠径ヘルニアに対するHybrid手術の有用性が報告されているが、遅発性メッシュ感染に対してが行われた報告は稀である。今回われわれは左鼠径ヘルニア遅発性メッシュ感染に対してHybrid手術を施行した1例を経験したので、若干の文献的考察を加え報告する。
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鼠径ヘルニア術後7年目に発症した遅発性メッシュ感染の1例橘 強、近藤 祐平、藤田覇留久、桃野 鉄平、青山 紘希、横山 大受、平田 渉、平井健次郎、大江 秀典、洲崎 聡、岡部 寛、光吉 明大津市民病院 外科
【はじめに】鼠径ヘルニア術後7年目にS状結腸憩室炎の穿通による遅発性メッシュ感染を発症した1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。【症例】83歳男性。7年前前立腺癌・左鼠径ヘルニアに対して腹膜外腔アプローチによる腹腔鏡下前立腺全摘除術・鼠径ヘルニア根治術を施行。定期受診時下腹部正中に発赤を伴う腫瘤を触知した。CTにて下腹部正中から左鼠径ヘルニアメッシュ周囲にS状結腸と接する炎症性腫瘤がみられた。ガストログラフイン注腸検査でS状結腸の壁不整及び腸管外への造影剤の漏出がみられ穿通を疑った。細菌培養でEnterococcus faeciumが検出されTAZ/PIPC、VCMによる保存的治療で改善なくハルトマン手術を施行した。S状結腸と腹壁・メッシュの癒着は強固であった。メッシュは可能な限り除去した。メッシュ除去術後は鼠径管後壁の補強は行わなかった。下腹部正中に皮下膿瘍を形成したが保存的に改善した。術後1年6ヶ月後の現在、感染再燃やヘルニアの再発は認めていない。【考察】起因菌として腸内細菌が検出されており、S状結腸憩室炎の穿通により腹腔内膿瘍が形成され、遅発性メッシュ感染を来したと考えられた。文献的には、メッシュ除去後のヘルニア再発率は低く、鼠径管後壁補強の必要性は少ないと考えられる。
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