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一連エフラツkt(D - FLASH ‥1- 空調鯨′/三i NTT東日本 関東病院 島谷聡 SATOSHISHiMATANI ㈱エヌ・ティ・ティファシリティーズ HmaEa架設IE3削 建築デザイン部担当課長 松田朗 AKIRAMATSUDA 工ヌ・ティ・ティファシリティ 市・建築設計本部 境・設備設計部担当課長 はじめに NTT東日本関東病院(旧関東逓信病院)は,医 療を取り巻く環境の変化の中で,患者中心の質の 高い医療を提供するために,旧棟を撤去し,再開 発を行うこととなった。旧棟は,昭和33年度日本 建築学会賞(作品)を受賞した建物で,当時,最 新の医療に対応できるよう先進の建築技術導入を 行いながらも豊かな療養環境を実現した病院であ ったことから,再開発にあたっては,その精神を 継承し,最新の医療に対応できる高機能な建築設 備を備えた建物でありながら,「人にやさしい病 院」であることをめざした。 再開発計画は,新病院の完成を迎えたところで あるが,今後,旧棟の撤去,既存建物の改修を行 い,並木道となる病院へのメインアプローチや, -ズ) ( 内山章 AKIRAUCHIYAMA 触)エヌ・ティ・ティファシ Wm田EHIE3凱 環境・設備設計部担当課長 患者のための庭園などの外構を整備す っている(写真-1,図一1)。 1. 建築概要 名称NTT東日本関東病院 所在地東京都品川区東五反田5-9- 用途地域第一種中高層住居専用地域 敷地面積33,147.26m2 建物用途病院 階数地上12階,地下4階,塔屋1階 主要構造地下1階より上:S造(制震 地下2階より下:SRC造 建築面積7,654.49m! 延床面積75,310.93m2(駐 病床数556床 建築主東日本電信電話㈱ 2 建築設備士 200卜2 写真-1建物外観

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一連エフラツkt(D -  FLASH   ‥1- 空調鯨′/三iff気

NTT東日本 関東病院

島谷聡

SATOSHISHiMATANI㈱エヌ・ティ・ティファシリティーズHmaEa架設IE3削建築デザイン部担当課長

松田朗

AKIRAMATSUDA工ヌ・ティ・ティファシリティ市・建築設計本部境・設備設計部担当課長

はじめに

NTT東日本関東病院(旧関東逓信病院)は,医

療を取り巻く環境の変化の中で,患者中心の質の

高い医療を提供するために,旧棟を撤去し,再開

発を行うこととなった。旧棟は,昭和33年度日本

建築学会賞(作品)を受賞した建物で,当時,最

新の医療に対応できるよう先進の建築技術導入を

行いながらも豊かな療養環境を実現した病院であ

ったことから,再開発にあたっては,その精神を

継承し,最新の医療に対応できる高機能な建築設

備を備えた建物でありながら,「人にやさしい病

院」であることをめざした。再開発計画は,新病院の完成を迎えたところで

あるが,今後,旧棟の撤去,既存建物の改修を行

い,並木道となる病院へのメインアプローチや,

-ズ) (

内山章

AKIRAUCHIYAMA触)エヌ・ティ・ティファシリティーズWm田EHIE3凱環境・設備設計部担当課長

患者のための庭園などの外構を整備する予定とな

っている(写真-1,図一1)。

1.建築概要

名称NTT東日本関東病院

所在地東京都品川区東五反田5-9-22

用途地域第一種中高層住居専用地域

敷地面積33,147.26m2

建物用途病院

階数地上12階,地下4階,塔屋1階

主要構造地下1階より上:S造(制震壁組込)

地下2階より下:SRC造

建築面積7,654.49m!

延床面積75,310.93m2(駐車場を含む)

病床数556床

建築主東日本電信電話㈱

2   建築設備士 200卜2

写真-1建物外観

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図-1 配置図

(撮影:門馬金昭建築写真事務所)

写真-2アトリウム

設計監理㈱エヌ・ティ・ティファシリティーズ

施工

〔建築〕大林組,竹中工務店,戸田建設,不動

建設,共立建設,佐藤工業JV

〔電気〕きんでん,六興電気,沖電気工業,三

和エレックJV

〔衛生〕ダイダン,三建設備工業,三晃空調,

川崎設備工業,須賀工業JV

〔空調〕日比谷総合設備,高砂熱学工業,東洋

熱工業,新日本空調,日設JV

2. 建築計画

建物構成は,病棟をL型看護単位2つ背中合わ

せにし,中央に共通の看護諸室をまとめる単純な

構成としている。その病棟下部に中央診療部門を

配し,低層の外来・管理部門との間に4層吹き抜

けのアトリウム空間を設けた(写真-2)c中央

診療部門(手術・放射線検査部門等)では,フレ

キシビリティを高めるために15mの大スパンを採

用し,外来部部門も地下1階以上を鉄骨道とする

ことで,スパンの制約から解放している。また,4階にISS(InterstitialSpace:設備階)

を設けて,手術部に対する医療設備変更・更新へ

の対応性の向上を図っている。 このほか,IDFス

ペース(IntermediateDistributionFrame)や2

重床を積極的に設けるなど,IT技術へのフレキシ

ビリティには特に配慮している。

病院を訪れる患者に対して,ストレスを少しで

も和らげられるよう,吹き抜け上部から柔らかな

自然光溢れるアトリウムを中心とした,わかりや

すく,色彩・素材感溢れる空間を提供している。

医療スタッフに対しては,緊張感の連続に配慮

し,スタッフゾーン-の自然採光を徹底している。

患者のみならず,病院にいる全ての人の緊張感を

和らげるよう,自然を感じられる緑のスペースを

屋上に配置した。

また,建物の配置計画にあたっては,静寂な住

2001・2・建築設備士3

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図-2 1階平面図

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図-3

宅地城に立地することから,セットバックと緑化

により,そのボリューム感を和らげ,外装も,落

ち着きのある割肌の妬器質タイルを使用すること

で,時とともに地域になじむ建築をめざした(図

-2,図一3)。関東病院における「人にやさしい病院」という

4建築設備士2001・2

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病棟階平面図

キーワードは,病院利用者だけでなく,地域環境,

さらには地球環境までの拡がりを意識したもので

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3. 設備計画

高度医療に追従できるよう多様な機能と高い信

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図-4 熱源設備フロー図

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頼性を確保しながら,患者に優しく,働く人にも

優しい,といったヒューマンインターフェースや,

地球環境保護対策をも考慮しながら,病院経営に

寄与できる経済性を追求した設備システムとして

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4. 空調設備

4.1熟源設備

病院の機能が,24時間継続できるようサポート

する空調用熱源設備のエネルギーは,天然ガスと

電気の2重化として安全性を確保している。

主熱源としては,エンジンからの排熱を利用し

た排熱投入型ガス焚吸収式冷温水機を4台,従熱

源として空冷式ヒートポンプチラーを2台設置し

ている。

エンジンからの排熱は,濫水槽(暖房・再熟),

排熱投入型吸収式冷温水機(冷房),貯湯槽(給湯・

シャワー)を経由するシステムとして,効率的に

排熱を吸収することとしている。

車路の空間部を利用して設けた冷水槽と温水槽

は,温度成層型蓄熱槽として計画し,平板型ディ

ストリビュータに改良を加えて蓄熱効率をアップ

している(図-4。

4.2空調設備

4.2.1中央待合部門(アトリウム)

不特定多数の患者が集中し,塵境が多く発生し,

室内環境の変化が激しいこのエリアは,自然光を

得るために,3階までを吹き抜け空間としている。

直達E]射による室内環境の悪化を防ぐために,ア

トリウム通路の壁面に設けたターミナルエアバン

と,床冷暖房システムと自然通風システムの組み

合わせとしている。

玄関部からの外気流入防止対策として,車椅子

利用者や老人にも利用しやすい,大型回転扉を設

置している。床面の結露防止対策として,夏の床

表面温度が26℃を下まわらないよう制御すると同

時に,扉開閉部から2m以内には配管を布設せず,

天井からの吹出しとしている(図-5。

4.2.2診療書肝1および中央診療部門

多様な患者が集まる外来部内では,空間部の給

2001・2蝣建築設備士5

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アトリウム 水平温度分布図 床上1.1m

アトリウム 水平気流分布図

アトリウム 断面温度分布図

アトリウム 断面気流分布図

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アトリウム 床表面温度分布図

図-5 アトリウム内温度・気流分布図

写真-3ISS内空調機配置図

排気計画が,院内感染防止や臭気対策として重要

である。今回の計画では,新鮮空気の供給エリア

を1,000m2単位にゾーニングし,各階に6カ所の

空調機械室を設置して給気と排気を平面的に処理

している。

診療部や中央診療部のゾーニングは,診療科別,

時間帯別,空気清浄度別に細分化し,空調機1台

6建築設備士2001・2

あたりの受け持ち面積を,200m2以内としてエリ

ア内の一般廊下や作業室の廊下面にターミナルエ

アバンを設置している。

柱や壁を利用した,狭い面積のAHU置き場は,

騒音対策,点検保守・機器更改スペースなどにつ

いて配慮している。 小部屋が多く発熱量も不均一

なエリアでは,各室ごとに温度制御を可能として

いる(図-6)0

4.2.3手術部門

手術室は空気清浄度が,クラス100/1,000を1

室,1,000/10,000のクラスを2室,10,000のク

ラスを7室,計10室を配置している。 そのうち陰

陽圧切替可能手術室と低温手術室を各1室確保し

ている。

各手術室には,余剰麻酔ガス排出装置を設けて

いるが,麻酔ガス濃度の上昇を防ぐために,外気

量を6回/hと若干多めに計画している。 1手術

室1台の空調機は手術室の上階ISSに設置してい

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図16 診療部門の空調機配置図

写真-4 病室用床置ファンコイルユニット

る。眼科手術室に設ける天井吊型顕微鏡への振動

対策として,床全面にコンクリートを打設したほ

か,空調機・風道・配管などに防振対策を実施し

て,使用に支障のないことを確認している。 ISS

を設けたことにより将来の横器更改や医療環境の

変化にも十分対応できるものとなっている(写真

-3)。4.2.4一般病室

患者が最も長く居住する病室については,冷暖

房によるストレスを受けにくいシステムとしてい

る。ファンコイルユニットは室内に入らず点検保

守ができるよう,廊下の壁面部に床置き型として

計画している(写真-4)。

写真-5 多孔吹出しパネルエアフローシステム

室内温度は入室者の好みで選択できるよう,各

室に操作パネルを用意している。 エネルギー消費

量の観点から,適切な温度について,看護婦から

助言してもらうこととしている。 水量は2方弁で

制御し,室内温度の状況により,風量も自動的に

強・中・弱に切替わるようになっている。

凝縮水が滞留した箇所に多くの雑菌が繁殖しや

すいことから,ドレンパンには5度の勾配をとっ

て凝縮水の滞留を防ぐことにしている。 比色法65

%の中性能フィルターを用意して空気質を確保す

ることにしている。吹出し口はベッドの天井部に

設置し,ベッドを包み込むように吹き出し,宙射

効果をもった「多孔吹出しパネルエアフロー」と

している(写莫-5)。 還り空気口は,ベッド近

傍からの臭気を素早く排気するために,床頭ユニ

200い2・建築設備士7

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凡 例

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地下駐車場換気兼用排煙システムの作動 フロー

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フアン室 駐車場

図-8駐車場換気兼用排煙システムの作動フロー

ットの下部に設けている。 ベッド近傍での風速は

0.05m/s前後となっており気流を感じない流れ

になっている。室内での垂直温度差は夏で1℃,

古建築設備士2001・2

冬で2℃となっている。

窓面等の外部負荷は,ブラインドボックス上部

からの吹出しと,窓台カウンター部からの還気で

除去することとしている。

外気量は通常2回/h,夜間1回/h,ベッドの

上での排壮時等5回/hの切り替えを可能として

いる。9月に実施した計測では当初の数値を満足

している。

4.2.5陰圧病室

結核や麻疹など,空気感染の恐れがある患者を

診察時等で発見したときの緊急隔離場所として計

画している。国で定める一類や二類の感染症病室

とは異なり,前室を持たないつくりとしている。

通常は一般病室として使用するために,空調機等

のシステムは同じにしている。 空気感染が予想さ

れる患者が入室した時は,ナースコーナーエリア

に設置した,陰庄切換えスイッチを操作すること

により,通常の給気用ダクトを閉鎖し,感染制御

用給気ダクトと排気用ダクトをオープンにして全

外気空調方式に変化させる。 排気ダクトの末端部

には,安全性を確保するためにHEPAフィルター

を設置している。1看護単位あたり1室の陰庄病

室を全フロアで9室確保している(図-7)。

4.3排煙設備

今回の計画ではアトリウムの自然排煙システム,

附室の加圧防排煙システム,駐車場の換気兼用排

煙システムについて38条の大臣認定を受け,病院

施設の安全性能を強化している。 これらのシステ

ムの特徴としては,火災時においてシステムがス

ムーズに作動するよう機構を複雑にしていないこ

とである。また,加圧防排煙システム以外は日常

的に機能している設備であり,火灸時にも同一の

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写真-6 西側メンテナンスデッキ

設備を使用して排煙することから,性能を日常的

に把握でき信頼性の高い設備である(図-8)。

5. 衛生設備

兵庫県南部沖地簾の教訓をもとに,非常時にお

いても地域医療の核として,3日間程度自立して

活動できる設備としている。 水は飲料と雑用の2

系統配管とし,1日使用量相当の貯水槽を設置し

ている。さらに患者と職員用の飲料水としてペッ

トボトルを3日分備蓄しているほか,井戸水を雑

用水の非常時用として確保している。 非常時の排

水槽は既存の蓄熱槽を利用して貯留する計画とし

ている。

給水・排水・給湯などに使用する配管材料には,

ステンレス管やライニング管を採用して長寿命化

対策としている。飾り柱内配管スペースや西側メ

ンテナンスデッキを,将来の機器や配管の更改や

増設スペースとしている(写真-6)0

病棟部では,廊下部に各病室単位の配管スペー

スを設けて,給水・給湯・排水管を立系統で配管

し,故障時での各病室への影響範囲を少なくして

いる。病室のトイレやシャワー用横走り配管は,

下階-の流水音低減や配管改修がしやすいよう床

上配管としている。

生活用排水を除く各種排水については,下水道

への負担を少なくするために,一定の処理をして

秦-1変圧器容量

巨 ii. 4P変電所

容量kVA)容量kVA電気方式 配電電圧

(1ト掛保安電灯 1 ¢3W 105!210 3,500 3,900 7,400

(2)一般動力3 </>3¥V 210 600 600 1,200

3 ¢3W 415 600 600

(3腺安動力3 (/>3 210 2,800 600 3,400

3 ¢3W 415 1,000 1,000

(4牒安装置動力

3 <p 3¥V 210 300 200 500

3 ¢3W 蝣115 1,200 200 1,400

3 ¢4W 240′′415 500 600 1,100

(5)防災電灯 1<fi 3¥V 105ノ210 200 200

(6)防艶動力3 ∂3W 210 200 200 400

30 3 415 600 150 750

(7)点検用電灯 1¢3W 105/′210 900 300 1,200

(8)点検用動力

3 ¢3W 210 500 500

3</>3¥V 415 1,000 200 1,200

3 4 4W 240′'415 300 500 800

ft s 10,200 7,950 21,650

放流している。ごみについても資源を有効利用す

るために分別収集を行い,生ごみについては肥料

化するシステムとしている。

厨房設備は,HACCPの概念を取り入れて活・

汚の動線を明確にするとともに,各機器の下部を

清掃しやすいように工夫している。

6.電気設備

6.1受変電設備

電力引き込みは特高22kV3回線を受電し,地

下4階と4階に変電所を設置して,建築設備と医

療用負荷に供給している。

特高および高圧母線は,定期点検時の停電を回

避するための系統分割を図り,低圧配電系統にお

いても病棟や緊急時の医療を行う医療機器や電灯

コンセント・空調機器に対しても二重化を図って

いる(表一日。受電方式22kV50Hzスポットネットワーク

変圧器3,500kVAx3台

契約電力4,800kW

変電設備

地下4階変電所13,700kVA(2,200kVA)

地上4階変電所7,950kVA(l,500kVA)

合計21,650kVA(3,700kVA)

[注;()内はバックアップトランス容量]

2001・2蝣建築設備士9

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6.2自家用発電設備

病棟や手術部,集中治療室,救急センターなど

停電発生を回避させる部門,停電時も医療行為を

行う検査部門や外来診療部門,給食や管理部門等,

院内全般にわたり,自家用発電機とコ-ジェネ発

電機による非常時の電源を供給している。 また,

災害時は3日間の運転を可能としている。

自家用発電機

6.6kVガスタービン2,000kVAx2台

(内1台は非常用発電機)

コ-ジェネ発電機

6.6kVガスエンジン500kVAx2台

6. 3無停電電源設備

手術室,ICU/SCU,CCU,HCUおよび救急セ

ンター等に供給する医療設備専用と,病院情報シ

ステム機器専用の無停電電源装置を設置している。

医療用UPS200kVAx3台(並列冗長運転)

情報用UPS200kVAx1台

6. 4建築情報設備

6.4.1テレコミュニケーション

事業所用電話交換機および移動体通信設備,音

声系および医療用・院内用の各種LANが構築され

ている。

情報通信ケーブルは,災害時の通信途絶防止を

図るため,2ルートの引込管路を設置している。

また,情報システム系ケーブル増設等の将来対

応や経済的な配線ルートを確保するためのインフ

ラとして建物の各フロアを格子状に,縦方向は二

系統に分割したケーブルラックを敷設している。

6.4.2テレビ共同受信BGM設備

病室やパブリックスペースへの映像と音楽を提

供し,療養環境と外来患者のアメニティ向上を図

っている。テレビはCATV方式とし,一般放送に加えて身

近な地域の情報を提供,特別室では有線音楽放送

を受信し多彩な番組から,ヒーリングミュージッ

ク等の好みの音楽を聴くことができる。

6.4.3駐車場管制設備

地下2階には業務用,地下3階と地下4階は患

者利用の駐車場としている。 駐車場は病院利用者

以外の駐車をご遠慮いただくために,有料制とし

入出庫ゲート・発券機・事前料金精算機等を設置

している0痛院の利用者には一定時間内の無料サ

ービスを行うなど,病院では運用面の検討が行わ

Jo建築設備士2001・2

れている。

6.4.417V設備(防災・防犯を除く)

放射線科やリハビリテーション科の待合室には

監視カメラを設置し,診察時に患者を待たせない,

時には患者の容体をモニターして対応するなど,

患者へのサービス向上を図っている。

6.4.5ナースコール設備

ディジタル型ナースコールを採用し,コミュニ

ケーションの快適化・迅速化,患者への快適療養

(医療)空間,看護婦の快適情報空間を提供して

いる。

1)コミュニケーションの快適化

患者からの呼びに対し5人(級)が同時に通話

することができ,スタッフコーナーが不在であっ

ても,PHCへ自動的に呼出しがかかり迅速な対応

が行われるので,患者を待たせることなくコミュ

ニケーションが行われる。

2)快適(生活・情報)空間の提供

廊下に設置したカラー液晶型廊下灯は常時

「花」を映し優しさと話題性を提供,通常時は患

者名を表示しない方法をとりプラハシー保護に役

立っている。必要時は,患者名や看護に必要な情

報を提供できる。この患者情報は,オーダリング

システムに連動して常に最新情報として表示され

ることから,ナース業務の省力化を実現している。

6.4.6外来診察表示設備

外来診療科の待合室に診察順番を示す表示盤を

設置し,診察室のオーダリング端末での患者呼込

み操作により,番号表示と音声により診察順番が

きたことを通知する。 本設備はオーダリング連動

方式を採用し,予約の有無による一連番号・診察

科・診察室・患者名・担当医などの患者データ,

診察終了データ・医師データなどを自動受信して

表示する。

6.4.7投薬表示設備

1階中央待合と2階レストランに投薬状況を表

示するディスプレイを設置している。

投薬システムで作成された情報(投薬番号・投

薬待ち番号・投薬待ち時間等)を受信し表示する。

本設備には,病院からのお知らせ情報を表示す

る機能を持ち,中央待合にてサービスできるよう

にしている。

Page 10: NTT東日本 関東病院 - jabmee.or.jpjabmee.or.jp/ichiran/pdf/2001/2001-02-02jabmee.pdf · .ら^、肝. 琵}rヨヨ断 アトリウム 床表面温度分布図 図-5 アトリウム内温度・気流分布図

6.5防災・防犯設備

6.5.1日動火災報知設備

非火敗報の防止,火災発生時の迅速な対応行動

ができるシステムで,防災センターに「GR型受

信機」を設置し,防災CRTによる監視形態を採

用している。アナログ式の感知器を採用し,初期

火災報からのトレンド監視を行うことで,火災進

行に対する現場への駆け付けや初期消火など適切

な処置が行われる。

GR型受信機5,080アドレス,自動試験機能付

総合操作盤,自動通報装置

6.5.2非常警報設備

防災センターに業務放送兼用型AMPを設置。

非常時の避難誘導や火災発生状況等を案内する。

防災監視卓にリモートを設置し,隣接する防欺

CRT情報がわかりやすい構成とし,的確な放送

ができるように配慮している。

非常放送AMP(業務放送兼用)2. 640W

(BGM装置内蔵)

6.5.3無線通信補助設備

建物東側出入口2カ所に消防無線車両の接続端

子,防災センターに無線機接続端子を設け,地下

1階から地下4階の通路・各部屋および駐車場と

◇  ◇  ◇

の無線交信ができる。駐車場部分は携帯電話サー

ビスとの統合を図っている。

6.5.4防犯設備

建物出入口,電算機室や薬剤部等の重要室,検

査・外来等の医用室,病棟,管理部門の諸室に,

入館・入室管理システムを採用している。入室管

理はICカードリーダー・IDカードリーダー・鍵管

理システムを使い分けている。

建物出入口や電算機室,病棟,アトリウムや主

要通路に監視カメラを設置し,防災センターでの

一元管理と必要時のVTR記録を行っている。

閉ifVr声

最高水準の医療と患者中心のサービスを目指し

て,多くの工夫を凝らした新病院棟は,平成12年

12月に診療を開始した。21世紀にふさわしいケア

-の提供を目指す病院に,この施設が調和し大き

く発展していくことを期待してやみません。

最後に,当病院の建設にあたり,設計・施工の

多岐にわたりご指導をいただいた病院の方々をは

じめ,多くの皆様に多大のご協力をいただいたこ

とを誌面を借りてお礼申しあげます。

(平成12年12月15H原稿受理)

◇  ◇  ◇

2001・2蝣建築設備士 11