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遠地実体波と強震波形から推定される 2007年新潟県中越沖地震の震源過程 引間和人・纐纈一起(東大地震研) Source process of the 2007 Chuetsu-oki Earthquake inferred from far field waveforms and strong motions Kazuhito HIKIMA and Kazuki KOKETSU (ERI, Univ. of Tokyo) 1. はじめに 2007年7月16日に発生した2007年新潟県中越沖地震(Mj 6.8)では多数の人的・物的被害が発生し, さらに震源域に位置する東京電力柏崎刈羽原子力発電所内の施設も被災した.これらの被害を生じ させた強震動の生成原因について考察し,また地震の発生機構について考えるためにも,この地震 の震源過程を知ることは重要である.本発表では,遠地,近地波形記録を用いた波形インバージョ ンにより震源過程の推定を試みた結果を示す.また,観測波形に見られる特徴的なパルスの生成位 置についても考察を行った. SFJD BILL FFC COLA RSSD ANMO PFO KIP MIDW XMAS TARA RAO HNR SNZO CTAO TAU WRAB NWAO MBWA KAPI COCO DGAR PALK MSEY KBL KURK ANTO ARU GRFO KONO BORG 2. 遠地実体波解析 はじめに,IRIS-DMCから収集した遠地実体波記録(P波34 点)を用いて点震源を仮定してメカニズム解を決定した.さ らにこの結果をもとに断層面を設定して断層上でのすべり分 布を推定した.このとき,観測波形と計算波形の残差が小さ くなるように断層面の走向・傾斜を修正した.また,大きな すべりが堆積層内で生じないように,上端深さが4km程度以 深になるように南東,北西に傾斜した2枚の断層面を設定し 断層面の深さを変化させた解析を実施した.その結果,南東 に傾斜した断層面を設定しその震源深さを9kmとした場合に 残差が小さくなった. どちらの断層面を仮定した場合でも,震源から南西方向に 向かって大きなすべりが分布している. 0 10 20 30 40 50 (s) Point source depth=10.5km M0= 0.733E+19 Nm (Mw 6.5) (strike,dip,rake)=(51, 36, 91) 3.7 3.8 3.9 4 4.1 4.2 4.3 0 5 10 15 20 Focal depth (km) Residual SE-dipping NW-dipping 138˚30' 139˚00' 20 km 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 (m) Mo=1.0x10 19 Nm (Mw 6.6) Focal depth=9km (str, dip)=(214, 54) NW-dipping 138˚00' 138˚30' 139˚00' 37˚00' 37˚30' 38˚00' 20 km 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 (m) Mo=1.1x10 19 Nm (Mw 6.6) Focal Depth=9km (str, dip)=(34, 36) SE-dipping 点震源を仮定して求めた解 解析に使用した観測点 断層面上のすべり分布 (左:南東傾斜,右:北西傾斜の断層面) 断層面の深さを変えた時の 残差の変化 小断層サイズ 4x4km KK001 NS 53.505 KK001 EW 43.214 KK001 UD 15.363 KK005 NS 47.818 KK005 EW 27.066 KK005 UD 12.560 NIG016 NS 1.771 NIG016 EW 2.068 NIG016 UD 1.256 NIG004 NS 1.557 NIG004 EW 1.180 NIG004 UD 1.047 NIG005 NS .987 NIG005 EW 1.976 NIG005 UD 1.046 NIGH12 NS 1.051 NIGH12 EW 1.063 NIGH12 UD 1.902 NIG024 NS 8.129 NIG024 EW 2.827 NIG024 UD 4.431 NIGH07 NS .609 NIGH07 EW .677 NIGH07 UD .516 NIG026 NS 2.731 NIG026 EW 1.749 NIG026 UD 2.237 NIG001 NS .604 NIG001 EW .585 NIG001 UD .380 NIGH15 NS .801 NIGH15 EW .811 NIGH15 UD 1.190 FKSH21 NS .378 .0 10.0 20.0 30.0 TIME(sec) 40.0 50.0 60.0 FKSH21 EW .795 .0 10.0 20.0 30.0 TIME(sec) 40.0 50.0 60.0 FKSH21 UD .652 .0 10.0 20.0 30.0 TIME(sec) 40.0 50.0 60.0 OBS SYN SE-dipping NW-dipping KK001 NS 53.505 KK001 EW 43.214 KK001 UD 15.363 KK005 NS 47.818 KK005 EW 27.066 KK005 UD 12.560 NIG016 NS 1.771 NIG016 EW 2.068 NIG016 UD 1.256 NIG004 NS 1.557 NIG004 EW 1.180 NIG004 UD 1.047 NIG005 NS .987 NIG005 EW 1.976 NIG005 UD 1.046 NIGH12 NS 1.051 NIGH12 EW 1.063 NIGH12 UD 1.902 NIG024 NS 8.129 NIG024 EW 2.827 NIG024 UD 4.431 OBS SYN NIGH07 NS .609 NIGH07 EW .677 NIGH07 UD .516 NIG026 NS 2.731 NIG026 EW 1.749 NIG026 UD 2.237 NIG001 NS .604 NIG001 EW .585 NIG001 UD .380 NIGH15 NS .801 NIGH15 EW .811 NIGH15 UD 1.190 FKSH21 NS .378 .0 10.0 20.0 30.0 TIME(sec) 40.0 50.0 60.0 FKSH21 EW .795 .0 10.0 20.0 30.0 TIME(sec) 40.0 50.0 60.0 FKSH21 UD .652 .0 10.0 20.0 30.0 TIME(sec) 40.0 50.0 60.0 3. 強震波形の解析 次に,遠地実体波解析と同様の断層面を設定して,近地強震波形を用いてすべり分布を求め た.強震波形は防災科研K-NETおよびKiK-netで観測された加速度波形に0.03~0.5Hzのバンド パスフィルタをかけ積分した速度波形を用いた.さらに,柏崎刈羽原発(1号機,5号機)で観 測された波形についても同様の処理を行い解析に使用した.グリーン関数を計算するための 速度構造は,震源付近で発生した7月16日21:08のMj4.4の余震波形を用いた波形インバージョ ン(Hikima and Koketsu,2005)により観測点毎に水平構造成層構造を求めて使用した.震源 インバージョンはYoshida et al.(1996)を改良した方法により行った. 震源深さを変えながら解析を行ったところ,遠地実体波解析と同様に南東・北西傾斜の断層 面ともに破壊開始点を9kmに設定したときに残差が小さくなった.しかし,傾斜方向による残 差の違いは有意ではなく,どちらの断層面が最適かを判断することは難しい.どちらの傾斜 方向を採用する場合でも,主要な破壊は破壊開始点よりも南西側にユニラテラル的に進展し たと考えられる.これは遠地実体波解析と同様の結果であり余震分布とも調和的である. 解析に使用した観測点と速度構造の例 (震源は本震発生後1週間の M2 以上の余震.気象庁一元化震源) 0.0 0.0 20.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 5.0 10.0 15.0 20.0 (km/s) (km) Velocity Depth 0.0 0.0 20.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 5.0 10.0 15.0 20.0 (km/s) (km) Velocity Depth 0.0 0.0 20.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 5.0 10.0 15.0 20.0 (km/s) (km) Velocity Depth NIG004 NIG026 NIGH12 NIG016 0.0 0.0 20.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 5.0 10.0 15.0 20.0 (km/s) (km) Velocity Depth Vp Vs 138˚ 139˚ 37˚ 38˚ 20 km K-K NIG004 NIG005 NIG016 NIG024 NIG026 NIG001 NIGH12 NIGH07 NIGH15 FKSH21 0 100 250 500 750 1000 1250 1500 (m) RD TR UD RD TR UD obs cal 0.006 - 0.006 (cm/ s) 0.008 - 0.008 0.002 - 0.002 0.0 20.0 (sec) 0.005 - 0.005 (cm/ s) 0.006 - 0.006 0.002 - 0.002 0.0 20.0 (sec) 138˚30' 139˚00' 37˚30' 20 km 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 (m) NW-dipping Mo=1.4x10 19 Nm (Mw 6.7) Focal depth=9km 138˚30' 139˚00' 37˚30' 20 km 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 (m) SE-dipping Mo=1.2x10 19 Nm (Mw 6.7) Focal depth=9km 強震波形の解析による 断層面上のすべり分布 (4×4km の小断層. 左:南東傾斜,右:北西傾斜の断層面) どちらの解析でも震源より南に 2~3のアスペリティが存在する 観測波形と計算波形の比較 (左:南東傾斜,右:北西傾斜の断層面) 波形の一致具合に大きな差はなく,この解析から断層の傾斜方向を判断するのは難しい. 一致度は十分ではなくグリーン関数を計算するための速度構造をさらに改良する必要がある. 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 観測波形と計算波形の比較 ( 南東傾斜の断層面) KKZ005 11 .1 k m 187.5deg 277.4 441.8 204.9 KKZ006 11 .3 k m 187.9deg 271.0 321.7 487.6 KKZ007 11 .4 k m 188.2deg 266.7 355.9 354.7 KKZ004 12 .3 k m 189.3deg 309.9 492.2 336.9 KKZ003 12 .5 k m 189.5deg 307.9 384.4 311.4 KKZ002 12 .6 k m 189.4deg 303.5 605.5 282.0 0 .0 20.0 40.0 (sec) KKZ001 12 .9 k m 189.3deg 311.2 679.9 408.0 Pulse 1 Pulse 2(?) Pulse 3 4. 柏崎刈羽原発での観測波形と震源過程 震源のごく近傍に位置する柏崎刈羽原発(KK)での観測波形のうち,特に基礎版上の波形は表 層地盤の影響が小さく震源過程を考える上で重要である.これらの波形には2~3の明瞭なパ ルスが見られ,震源インバージョンで得られたアスペリティに対応しているものと思われる. そこで,KK地点及び周辺の観測波形からパルスの到達時刻を読み取り,初動の到達時刻との 差をデータとして破壊開始点に対する相対的な震源位置を決定した.その結果1つめのパル スの発生源は破壊開始点の南西に,3つめのパルスの発生源はKK地点の西北西方向の沖合に 推定された.また,KK地点の観測波形のパーティクルモーションを見ると,パルス1は南北 方向に震動しているのに対して,パルス3の震動方向は西北西を向いている.この地震のメ カニズムは純粋な逆断層に近く,また観測されたパルスはSV波が卓越していると見なせば, これらの方向に発生源があることを示唆しており,決定された震源の方向と矛盾しない. 震源インバージョンではグリーン関数の計算に用いた構造や仮定した断層面の誤差により求 まったアスペリティの位置にもある程度の誤差が含まれてしまうため,決定された震源とは 完全には一致しないが,南東傾斜の断層面のすべり分布では求まったパルスの震源位置とア スペリティ位置とは比較的近い場所に位置するのに対して,北西傾斜の結果では特に南部の アスペリティはKK地点の南西に位置するので決定された震源とは離れている. 柏崎刈羽原発での地震計配置 (東京電力による) 柏崎刈羽原発で観測された加速度波形(各地点上から NS, EW, UD 成分) 赤線は P 波初動,青・紫線はそれぞれパルス 1・3 の読み取り時刻を示す. KKZ001_1R2.EW (X) 90.0 - 90.0 0.0 (kine) - 72.5 KKZ001_1R2.NS (Y) 90.0 - 90.0 0.0 (kine) 0.0 20.0 40.0 60.0 82.9 90 90 90 90 90 90 90 90 90 90 A B C D E A B C D E 1 号機水平動波形 KKZ005_5R2.EW (X) 90.0 - 90.0 0.0 (kine) - 54.9 KKZ005_5R2.NS (Y) 90.0 - 90.0 0.0 (kine) 0.0 20.0 40.0 60.0 70.6 90 90 90 90 90 90 90 90 90 90 A B C D E A B C D E 5 号機水平動波形 0 1000m 500 :既設地震計 :新設地震計 :既設地震計+新設地震計 5 K 1 K 2 K 3 K 4 K 5 K 6 K 7 1 θ 1 θ 2 磁北 真北 プラントの南北軸 1 θ 2 θ =18°54′51″ = 7°10′ 5 号機,1 号機でのパーティクルモーション(速度波形) 初動到達付近から2秒ごとにパーティクルモーションを表示.黒丸はプロットの開始点を示す.青,紫線は それぞれパルス1,3の震動方向を示す.パルス1は南北,パルス3は西北西方向に震動している. 相対震源決定により求まったパルス 1( 青 ), パルス 3( 紫 ) の発生源位置 それぞれの深さは 9km,7.5km に求まった. 黒丸は計算に使用した観測点位置(一部). 138˚30' 139˚00' 37˚30' 20 km 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 (m) 5. まとめ 遠地実体波,近地強震波形を使った震源過程解析を行い,2007年新潟県中越沖地震は震源か ら南西方向に破壊が伝播し,2つ以上のアスペリティが存在することがわかった.しかし,現 段階ではこれらの解析のみから断層面の傾斜方向を特定することは難しく,余震分布など他 の結果を合わせて総合的に判断する必要がある.また,KK地点などの観測波形に特徴的に見 られるパルスの発生源は,KK地点の北方と西北西~西方向に位置することが示唆される. 謝辞 解析には,K-NET,KiK-netの波形記録,気象庁一元化震源位置,地震研解析による震源位置を使用しました.また,柏崎刈羽 原子力発電所での観測記録は東京電力(株)により公開されたものです.記して感謝致します. P1-085 相対震源決定の方法(マスターイベント法) 基準震源 i に対する震源 j の相対的な震源位置を求めるとする. i から k 観測点への震源距離を Rik とすれば,その距離は k i ik X X R = 震源 i から震源 j へのベクトルを X とすれば X X X + = i j であり,j から k への震源距離は X X X X X R + = = k i k j jk となる. 通常のマスターイベント法では, X に比べて震源~観測点の距離が大きいと して上式を近似して X を線形最小自乗法で求めるが,今回は震源近傍の観 測点も使うため,近似はせずに上式のまま震源距離をもとめた.(そのため X の決定にはグリッドサーチを使った) 中越沖地震では,初動は P 波,パルスは S 波に相当すると考えて以下の解析をした. k 観測点で,震源 i について P 波走時[ ) ( p T ik ],震源 j について S 波走時[ ) ( s T jk ]の差を考える. i j ik jk i j ik jk ijk O O Vp R Vs R O O p T s T ps T + = + = ) ( ) ( ) ( 同様に,l 観測点についても, i j il jl i j il jl ijl O O Vp R Vs R O O p T s T ps T + = + = ) ( ) ( ) ( が得られる.ここで,OiOj はイベント i,j の発震時である. これらの差をとることにより, i il jl ik jk ijl ijk ijkl Vp R Vs R Vp R Vs R ps T ps T ps T + = = ) ( ) ( ) ( ) ( 1 ) ( 1 il ik jl jk R R Vp R R Vs = となり,それぞれの発震時はキャンセルされる.この値を観測値として計算値との残差二乗和が最小となる ように破壊開始点に対するパルス1,パルス3の相対震源位置を決定した. (例えば,Frémont and Malone , 1987) j event i event (master event) k station l station

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遠地実体波と強震波形から推定される2007年新潟県中越沖地震の震源過程

引間和人・纐纈一起(東大地震研)

Source process of the 2007 Chuetsu-oki Earthquake inferred from far field waveforms and strong motionsKazuhito HIKIMA and Kazuki KOKETSU (ERI, Univ. of Tokyo)

1. はじめに2007年7月16日に発生した2007年新潟県中越沖地震(Mj 6.8)では多数の人的・物的被害が発生し,

さらに震源域に位置する東京電力柏崎刈羽原子力発電所内の施設も被災した.これらの被害を生じ

させた強震動の生成原因について考察し,また地震の発生機構について考えるためにも,この地震

の震源過程を知ることは重要である.本発表では,遠地,近地波形記録を用いた波形インバージョ

ンにより震源過程の推定を試みた結果を示す.また,観測波形に見られる特徴的なパルスの生成位

置についても考察を行った.

SFJD

BILL

FFC

COLA

RSSDANMO

PFO

KIPMIDW

XMAS

TARA

RAO

HNR

SNZO

CTAO

TAU

WRAB

NWAO

MBWA

KAPICOCO

DGAR

PALKMSEY

KBL

KURK

ANTO

ARU

GRFO KONO

BORG

2. 遠地実体波解析はじめに,IRIS-DMCから収集した遠地実体波記録(P波34

点)を用いて点震源を仮定してメカニズム解を決定した.さ

らにこの結果をもとに断層面を設定して断層上でのすべり分

布を推定した.このとき,観測波形と計算波形の残差が小さ

くなるように断層面の走向・傾斜を修正した.また,大きな

すべりが堆積層内で生じないように,上端深さが4km程度以

深になるように南東,北西に傾斜した2枚の断層面を設定し

断層面の深さを変化させた解析を実施した.その結果,南東

に傾斜した断層面を設定しその震源深さを9kmとした場合に

残差が小さくなった.

どちらの断層面を仮定した場合でも,震源から南西方向に

向かって大きなすべりが分布している.

0 10 20 30 40 50 (s)

Point source  depth=10.5km  M0= 0.733E+19 Nm (Mw 6.5) (strike,dip,rake)=(51, 36, 91)

3 .7

3 .8

3 .9

4

4 .1

4 .2

4 .3

0 5 10 15 20F ocal depth (km )

Res

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SE-dippingNW-dipping

138˚30' 139˚00'

20 km0.0

0.5

1.0

1.5

2.0(m)

Mo=1.0x1019Nm (Mw 6.6)Focal depth=9km(str, dip)=(214, 54)

NW-dipping138˚00' 138˚30' 139˚00'

37˚00'

37˚30'

38˚00'

20 km0.0

0.5

1.0

1.5

2.0(m)

Mo=1.1x1019Nm (Mw 6.6)Focal Depth=9km(str, dip)=(34, 36)

SE-dipping

点震源を仮定して求めた解

解析に使用した観測点

断層面上のすべり分布 (左:南東傾斜,右:北西傾斜の断層面)

断層面の深さを変えた時の残差の変化

小断層サイズ 4x4km

KK001NS

53.505

KK001EW

43.214

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15.363

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1.557

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1.749

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40.0 50.0 60.0

OBSSYN

SE-dipping NW-dippingKK001

NS

53.505

KK001EW

43.214

KK001UD

15.363

KK005NS

47.818

KK005EW

27.066

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OBSSYN

NIGH07NS

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NIGH07EW

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NIG026EW

1.749

NIG026UD

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NIG001NS

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NIG001EW

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NIG001UD

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NIGH15NS

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NIGH15EW

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NIGH15UD

1.190

FKSH21NS

.378

.0 10.0 20.0 30.0TIME(sec)

40.0 50.0 60.0

FKSH21EW

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.0 10.0 20.0 30.0TIME(sec)

40.0 50.0 60.0

FKSH21UD

.652

.0 10.0 20.0 30.0TIME(sec)

40.0 50.0 60.0

3. 強震波形の解析次に,遠地実体波解析と同様の断層面を設定して,近地強震波形を用いてすべり分布を求め

た.強震波形は防災科研K-NETおよびKiK-netで観測された加速度波形に0.03~0.5Hzのバンド

パスフィルタをかけ積分した速度波形を用いた.さらに,柏崎刈羽原発(1号機,5号機)で観

測された波形についても同様の処理を行い解析に使用した.グリーン関数を計算するための

速度構造は,震源付近で発生した7月16日21:08のMj4.4の余震波形を用いた波形インバージョ

ン(Hikima and Koketsu,2005)により観測点毎に水平構造成層構造を求めて使用した.震源

インバージョンはYoshida et al.(1996)を改良した方法により行った.

震源深さを変えながら解析を行ったところ,遠地実体波解析と同様に南東・北西傾斜の断層

面ともに破壊開始点を9kmに設定したときに残差が小さくなった.しかし,傾斜方向による残

差の違いは有意ではなく,どちらの断層面が最適かを判断することは難しい.どちらの傾斜

方向を採用する場合でも,主要な破壊は破壊開始点よりも南西側にユニラテラル的に進展し

たと考えられる.これは遠地実体波解析と同様の結果であり余震分布とも調和的である.

解析に使用した観測点と速度構造の例(震源は本震発生後1週間の M2 以上の余震.気象庁一元化震源)

0.00.0

20.0

2.0 4.0 6.0 8.0 10.0

5.0

10.0

15.0

20.0

(km/s)

(km)

Velocity

Dep

th

0.00.0

20.0

2.0 4.0 6.0 8.0 10.0

5.0

10.0

15.0

20.0

(km/s)

(km)

Velocity

Dep

th

0.00.0

20.0

2.0 4.0 6.0 8.0 10.0

5.0

10.0

15.0

20.0

(km/s)

(km)

Velocity

Dep

th

NIG004

NIG026 NIGH12

NIG016

0.00.0

20.0

2.0 4.0 6.0 8.0 10.0

5.0

10.0

15.0

20.0

(km/s)

(km)

Velocity

Dep

th

VpVs

138˚ 139˚

37˚

38˚

20 km

K−K

NIG004

NIG005

NIG016

NIG024

NIG026

NIG001

NIGH12

NIGH07

NIGH15

FKSH21

0100250500750

100012501500

(m)

RD

TR

UD

RD

TR

UD

obscal

0.006

- 0.006

(cm/ s)

0.008

- 0.008 0.002

- 0.002

0.0 20.0(sec)

0.005

- 0.005

(cm/ s)

0.006

- 0.006 0.002

- 0.002

0.0 20.0(sec)

138˚30' 139˚00'

37˚30'

20 km

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0(m)

NW-dippingMo=1.4x1019Nm (Mw 6.7)Focal depth=9km

138˚30' 139˚00'

37˚30'

20 km

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0(m)

SE-dippingMo=1.2x1019Nm (Mw 6.7)Focal depth=9km

強震波形の解析による 断層面上のすべり分布 (4×4km の小断層.

左:南東傾斜,右:北西傾斜の断層面)

どちらの解析でも震源より南に2~3のアスペリティが存在する

観測波形と計算波形の比較 (左:南東傾斜,右:北西傾斜の断層面)

 波形の一致具合に大きな差はなく,この解析から断層の傾斜方向を判断するのは難しい. 一致度は十分ではなくグリーン関数を計算するための速度構造をさらに改良する必要がある.

0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0

0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0

観測波形と計算波形の比較( 南東傾斜の断層面)

K K Z 005 11 .1 km 187 .5deg277.4

441.8

204.9

K K Z 006 11 .3 km 187 .9deg271.0

321.7

487.6

K K Z 007 11 .4 km 188 .2deg266.7

355.9

354.7

K K Z 004 12 .3 km 189 .3deg309.9

492.2

336.9

K K Z 003 12 .5 km 189 .5deg307.9

384.4

311.4

K K Z 002 12 .6 km 189 .4deg303.5

605.5

282.0

0 .0 20 .0 40 .0(sec )

K K Z 001 12 .9 km 189 .3deg311.2

679.9

408.0

Pulse 1 Pulse 2(?) Pulse 3

4. 柏崎刈羽原発での観測波形と震源過程震源のごく近傍に位置する柏崎刈羽原発(KK)での観測波形のうち,特に基礎版上の波形は表

層地盤の影響が小さく震源過程を考える上で重要である.これらの波形には2~3の明瞭なパ

ルスが見られ,震源インバージョンで得られたアスペリティに対応しているものと思われる.

そこで,KK地点及び周辺の観測波形からパルスの到達時刻を読み取り,初動の到達時刻との

差をデータとして破壊開始点に対する相対的な震源位置を決定した.その結果1つめのパル

スの発生源は破壊開始点の南西に,3つめのパルスの発生源はKK地点の西北西方向の沖合に

推定された.また,KK地点の観測波形のパーティクルモーションを見ると,パルス1は南北

方向に震動しているのに対して,パルス3の震動方向は西北西を向いている.この地震のメ

カニズムは純粋な逆断層に近く,また観測されたパルスはSV波が卓越していると見なせば,

これらの方向に発生源があることを示唆しており,決定された震源の方向と矛盾しない.

震源インバージョンではグリーン関数の計算に用いた構造や仮定した断層面の誤差により求

まったアスペリティの位置にもある程度の誤差が含まれてしまうため,決定された震源とは

完全には一致しないが,南東傾斜の断層面のすべり分布では求まったパルスの震源位置とア

スペリティ位置とは比較的近い場所に位置するのに対して,北西傾斜の結果では特に南部の

アスペリティはKK地点の南西に位置するので決定された震源とは離れている.

柏崎刈羽原発での地震計配置 (東京電力による)

柏崎刈羽原発で観測された加速度波形(各地点上から NS, EW, UD 成分)

赤線は P 波初動,青・紫線はそれぞれパルス 1・3 の読み取り時刻を示す.

KKZ001_1R2.EW (X) 90.0

- 90.0

0.0

(kine)

- 72.5

KKZ001_1R2.NS (Y) 90.0

- 90.0

0.0

(kine)

0.0 20.0 40.0 60.0

82.9

90

90

90

90

90

90

90

90

90

90A B C D E

A B C D E

1 号機水平動波形KKZ005_5R2.EW (X) 90.0

- 90.0

0.0

(kine)

- 54.9

KKZ005_5R2.NS (Y) 90.0

- 90.0

0.0

(kine)

0.0 20.0 40.0 60.0

70.6

90

90

90

90

90

90

90

90

90

90

A B C D E

A B C D E

5 号機水平動波形

0 1000m500

○:既設地震計

●:新設地震計◎:既設地震計+新設地震計

5号機地震観測小屋

K1K2

K3K4

K5K6

K7

サービスホール地盤系

1号機地震観測小屋

1号機地盤系

5号機地盤系

6号機地盤系

θ1

θ2

磁北 真北

プラントの南北軸

1θ 2

θ=18°

54′51″

=7°

10′

◎◎

◎ ◎

◎ ◎

5 号機,1 号機でのパーティクルモーション(速度波形)

初動到達付近から2秒ごとにパーティクルモーションを表示.黒丸はプロットの開始点を示す.青,紫線はそれぞれパルス1,3の震動方向を示す.パルス1は南北,パルス3は西北西方向に震動している.

相対震源決定により求まったパルス 1( 青 ), パルス 3( 紫 ) の発生源位置

それぞれの深さは 9km,7.5km に求まった.黒丸は計算に使用した観測点位置(一部).

138˚30' 139˚00'

37˚30'

20 km

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0(m)

5. まとめ遠地実体波,近地強震波形を使った震源過程解析を行い,2007年新潟県中越沖地震は震源か

ら南西方向に破壊が伝播し,2つ以上のアスペリティが存在することがわかった.しかし,現

段階ではこれらの解析のみから断層面の傾斜方向を特定することは難しく,余震分布など他

の結果を合わせて総合的に判断する必要がある.また,KK地点などの観測波形に特徴的に見

られるパルスの発生源は,KK地点の北方と西北西~西方向に位置することが示唆される.

謝辞解析には,K-NET,KiK-netの波形記録,気象庁一元化震源位置,地震研解析による震源位置を使用しました.また,柏崎刈羽原子力発電所での観測記録は東京電力(株)により公開されたものです.記して感謝致します.

① ② ③

P1-085

相対震源決定の方法(マスターイベント法) 基準震源 i に対する震源 j の相対的な震源位置を求めるとする.

i から k 観測点への震源距離を Rik とすれば,その距離は kiik XXR −=

震源 i から震源 j へのベクトルを X∆ とすれば

XXX ∆+= ij であり,j から k への震源距離は

XXXXXR ∆+−=−= kikjjk となる.

通常のマスターイベント法では, X∆ に比べて震源~観測点の距離が大きいと

して上式を近似して X∆ を線形最小自乗法で求めるが,今回は震源近傍の観

測点も使うため,近似はせずに上式のまま震源距離をもとめた.(そのため

X∆ の決定にはグリッドサーチを使った)

中越沖地震では,初動は P 波,パルスは S 波に相当すると考えて以下の解析をした.

k 観測点で,震源 i について P 波走時[ )( pTik ],震源 j について S 波走時[ )(sTjk ]の差を考える.

ijikjk

ijikjkijk OOVpR

VsROOpTsTpsT −+−=−+−=∆ )()()(

同様に,l 観測点についても,

ijiljl

ijiljlijl OOVpR

VsROOpTsTpsT −+−=−+−=∆ )()()(

が得られる.ここで,Oi,Oj はイベント i,j の発震時である.

これらの差をとることにより,

i

iljlikjkijlijkijkl Vp

RVs

RVp

RVs

RpsTpsTpsT +−−=∆−∆=∆ )()()( )(1)(1ilikjljk RR

VpRR

Vs−−−=

となり,それぞれの発震時はキャンセルされる.この値を観測値として計算値との残差二乗和が最小となる

ように破壊開始点に対するパルス1,パルス3の相対震源位置を決定した.

(例えば,F rém ont and M alone , 1987)

j event

i event (master event)

k station l station