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脂 質
基本的事項
●脂質(lipids) 水に不溶で、有機溶媒に溶解する化合物 栄養学的に重要な脂質 脂肪酸、中性脂肪、リン脂質、糖脂質、ステロール類
●機能 エネルギー産生の主要な基質 脂溶性ビタミンの吸収 ステロイドホルモン、ビタミンDの前駆体
●消化、吸収、代謝 トリアシルグリセロール ⇒膵リパーゼ ⇒消化・吸収 リン脂質 ⇒膵ホスホリパーゼA2 ⇒消化・吸収 コレステロールエステル ⇒コレステロールエステラーゼ ⇒消化・吸収
〈脂質全体のポイント〉
脂質は、目標量としてエネルギー比率(%エネルギー)で示した。 飽和脂肪酸については、生活習慣病予防の観点からエネルギー比率で示した。 必須脂肪酸であるn-6系脂肪酸、 n-3系脂肪酸の目安量は、総エネルギー摂取量の影響を受けない絶対量(g/日)で示した。
脂質とその構成 点線で囲んだ4項目について基準を策定した
中性脂肪と脂肪酸の分類 グリセリンと脂肪酸からなる トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール
グリセリン
脂肪酸1
脂肪酸2
脂肪酸3
COOH
COOH
COOH
脂肪酸
飽和脂肪酸(脂が多い):パルミチン酸(16:0)、ステアリン酸(18:0)
一価不飽和脂肪酸:オレイン酸(18:1)
多価不飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸 n-6系 リノール酸(18:2) アラキドン酸(20:4)
n-3系 α-リノレン酸(18:3) EPA(20:5)、DHA(22:6)
必須脂肪酸:リノール酸、α-リノレン酸、アラキドン酸
C-OH C-OH C-OH
〈脂質のポイント〉
• 0~5か月児は、哺乳量と母乳の脂質濃度から目安量を脂肪エネルギー比率で設定した。
• 6~11か月児は、 0~5か月児の目安量と1~2歳児の目安量の平均値を目安量とした。
• 小児・成人については目標量を設定した。 • 目標量の下の値は、必須脂肪酸の目安量を保証することを目的として設定した。
• 目標量の上の値は、飽和脂肪酸の目標量を考慮して設定した。
脂質の食事摂取基準 (脂質の総エネルギーに占める割合(脂肪エネルギー比率):%エネルギー)
性 別 男 性 女 性
年齢等 目安量 目標量 1(中央値2) 目安量 目標量 1(中央値2)
0~5(月) 50 ― 50 ― 6~11(月) 40 ― 40 ― 1~2(歳) ― 20~30 (25) ― 20~30 (25) 3~5(歳) ― 20~30 (25) ― 20~30 (25) 6~7(歳) ― 20~30 (25) ― 20~30 (25) 8~9(歳) ― 20~30 (25) ― 20~30 (25) 10~11(歳) ― 20~30 (25) ― 20~30 (25) 12~14(歳) ― 20~30 (25) ― 20~30 (25) 15~17(歳) ― 20~30 (25) ― 20~30 (25) 18~29(歳) ― 20~30 (25) ― 20~30 (25) 30~49(歳) ― 20~30 (25) ― 20~30 (25) 50~69(歳) ― 20~30 (25) ― 20~30 (25) 70以上(歳) ― 20~30 (25) ― 20~30 (25)
妊 婦
― ―
授乳婦 ― ― 1 範囲については、おおむねの値を示したものである。 2 中央値は、範囲の中央値を示したものであり、最も望ましい値を示すものではない。
脂肪エネルギー比率の目標量の下限 (20%エネルギー以上)
脂肪エネルギー比率の目標量の上限 (30%エネルギー未満)
1.肥満、糖尿病予防や死亡率(コホート研究からの報告)より、 欧米で低脂質とされているエネルギー30%未満が望ましい。 2.日本人の食生活とも近い値であり、実行しやすい。
〈飽和脂肪酸のポイント〉
• 動脈硬化性疾患、特に心筋梗塞の発症及び重症化予防の観点から、日本人の摂取実態も踏まえ、成人について目標量を設定し、エネルギー産生栄養素バランスに含めた。
• 小児期における飽和脂肪酸の摂取量と摂取源に関する記述疫学的研究、さらには小児期の飽和脂肪酸摂取量と成人期の動脈硬化関連疾患との関係を調べた研究や小児期に飽和脂肪酸摂取量を少なくした場合の安全性(成長障害など)を調べた研究が不十分なため、小児の目標量の設定は見送った。
飽和脂肪酸
飽和脂肪酸の食事摂取基準 (%エネルギー)
性 別 男 性 女 性
年齢等 目標量 目標量
0~5(月) ― ―
6~11(月) ― ―
1~2(歳) ― ―
3~5(歳) ― ―
6~7(歳) ― ―
8~9(歳) ― ―
10~11(歳) ― ―
12~14(歳) ― ―
15~17(歳) ― ―
18~29(歳) 7 以下 7 以下
30~49(歳) 7 以下 7 以下
50~69(歳) 7 以下 7 以下
70以上(歳) 7 以下 7 以下
妊 婦
―
授乳婦 ―
下限値がなくなった!!
(旧)4.5%~7.0%
なぜ消えたか?
これまで、
飽和脂肪酸摂取量が少ないと脳出血が増加する可能性がある
しかしながら、 動物実験で、飽和脂肪酸摂取の増加と脳出血の予防の関連性が認められない。
もしかしたら、飽和脂肪酸摂取減少による、動物性たんぱく質の摂取減少??
飽和脂肪酸の目標量の上限 (18歳以上で、7%エネルギー未満)
〈n-6系脂肪酸のポイント〉
• n-6系脂肪酸は、生体内でアセチルCoAから合成できないので、経口摂取する必要がある。
• 0~5か月児は、哺乳量と母乳中のn-6系脂肪酸濃度から目安量を設定した。
• 6~11か月児は、 0~5か月児の目安量と1~2歳児の摂取量の中央値の平均値を目安量とした。
• 小児・成人は、平成22年、23年国民健康・栄養調査の結果から算出されたn-6系脂肪酸摂取量の中央値を目安量とした。
• 妊婦については、平成19年から23年までの国民健康・栄養調査の結果から算出された妊婦のn-6系脂肪酸摂取量の中央値を目安量とした。
• 授乳婦については、平成19年から23年までの国民健康・栄養調査の結果から算出された授乳婦のn-6系脂肪酸摂取量の中央値を目安量とした。
n-6系脂肪酸
n-6系脂肪酸の食事摂取基準 (g / 日)
性 別 男 性 女 性
年齢等 目安量 目安量
0~5(月) 4 4
6~11(月) 4 4
1~2(歳) 5 5
3~5(歳) 7 6
6~7(歳) 7 7
8~9(歳) 9 7
10~11(歳) 9 8
12~14(歳) 12 10
15~17(歳) 13 10
18~29(歳) 11 8
30~49(歳) 10 8
50~69(歳) 10 8
70以上(歳) 8 7
妊 婦
9
授乳婦 9
過剰摂取のリスクが想定されるが、日本人に関する研究がないため目標量は設定しなかった。
(旧)10%EN未満
酸化の問題 炎症を惹起する物質 (PGE2、LTB4)の問題
しかし、
〈n-3系脂肪酸のポイント〉
• n-3系脂肪酸は、生体内で合成できず、欠乏すると皮膚炎などを発症するため、経口摂取する必要がある。
• 0~5か月児は、哺乳量と母乳中のn-3系脂肪酸濃度から目安量を設定した。
• 6~11か月児は、 0~5か月児の目安量と1~2歳児の摂取量の中央値の平均値を目安量とした。
• 小児・成人は、平成22年、23年国民健康・栄養調査の結果から算出されたn-3系脂肪酸摂取量の中央値を目安量とした。
• 妊婦については、平成19年から23年までの国民健康・栄養調査の結果から算出された妊婦のn-3系脂肪酸摂取量の中央値を目安量とした。
• 授乳婦については、平成19年から23年までの国民健康・栄養調査の結果から算出された授乳婦のn-3系脂肪酸摂取量の中央値を目安量とした。
n-3系脂肪酸
n-3系脂肪酸の食事摂取基準 (g / 日)
性 別 男 性 女 性
年齢等 目安量 目安量
0~5(月) 0.9 0.9
6~11(月) 0.8 0.8
1~2(歳) 0.7 0.8
3~5(歳) 1.3 1.1
6~7(歳) 1.4 1.3
8~9(歳) 1.7 1.4
10~11(歳) 1.7 1.5
12~14(歳) 2.1 1.8
15~17(歳) 2.3 1.7
18~29(歳) 2.0 1.6
30~49(歳) 2.1 1.6
50~69(歳) 2.4 2.0
70以上(歳) 2.2 1.9
妊 婦
1.8
授乳婦 1.8
魚で約90g/日
その他の脂肪酸
一価不飽和脂肪酸 トランス脂肪酸 共役リノール酸 ジアシルグリセロール 中鎖トリアシルグリセロール 植物ステロール 食事性コレステロール
⇒目標量の設定なし!!
炭水化物
基本的事項
●炭水化物(carbohydrate):組成式Cm(H2O)nからなる化合物
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〈炭水化物のポイント〉
• 炭水化物が直接ある特定の健康障害の原因となる報告は、生活習慣病の一つである糖尿病を除けば、理論的にも疫学的にも乏しいため、推定平均必要量(並びに推奨量)も耐容上限量も設定せず、エネルギー栄養産生バランスの観点から、1歳以上について、たんぱく質並びに脂質の残余として%エネルギーで目標量を設定した。
• アルコールについては、炭水化物ではないもののエネルギーを産生することから、炭水化物の合計量に含めた。ただし、アルコールの摂取を勧めるものではない。
• なお、糖類については、日本人においてその摂取量の測定が困難であることから、基準の設定は見送った。
炭水化物の食事摂取基準 (%エネルギー)
性 別 男 性 女 性
年齢等 目標量1,2(中央値3) 目標量1,2(中央値3)
0~5(月) ― ―
6~11(月) ― ―
1~2(歳) 50~65(57.5) 50~65(57.5)
3~5(歳) 50~65(57.5) 50~65(57.5)
6~7(歳) 50~65(57.5) 50~65(57.5)
8~9(歳) 50~65(57.5) 50~65(57.5)
10~11(歳) 50~65(57.5) 50~65(57.5)
12~14(歳) 50~65(57.5) 50~65(57.5)
15~17(歳) 50~65(57.5) 50~65(57.5)
18~29(歳) 50~65(57.5) 50~65(57.5)
30~49(歳) 50~65(57.5) 50~65(57.5)
50~69(歳) 50~65(57.5) 50~65(57.5)
70以上(歳) 50~65(57.5) 50~65(57.5)
妊婦
―
授乳婦 ― 1 範囲については、おおむねの値を示したものである。 2 アルコールを含む。ただし、アルコールの摂取を勧めるものではない。 3 中央値は、範囲の中央値を示したものであり、最も望ましい値を示すものではない。
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〈食物繊維のポイント〉 • 食物繊維の摂取不足が生活習慣病の発症に関連するという報告が多くあることから、目標量を設定した。
• 食物繊維摂取量との関連が最も明らかな生活習慣病は、心筋梗塞であると考えられ、レビューの結果得られた成人における理想的な摂取量と日本人成人における摂取量の中央値との中間値を目標量を算出するための参照値とした。
• 小児については、食物繊維摂取の重要性は示唆されているものの、生活習慣病等との関係についての直接的な根拠や量的な検討に資する情報が十分ではないことから、1~5歳については、目標量を設定せず、6~17歳に限って、成人と同じ方法で目標量を算出した。
• なお、目標量の算定に用いられた研究の多くは通常の食品に由来する食物繊維であり、サプリメント等に由来したものではない。したがって、通常の食品に代えて同じ量の食物繊維をサプリメント等で摂取した時に、同等の健康利益を期待できるという保証はない。
食物繊維の食事摂取基準 (g / 日)
性 別 男 性 女 性
年齢等 目標量 目標量
0~5(月) ― ―
6~11(月) ― ―
1~2(歳) ― ―
3~5(歳) ― ―
6~7(歳) 11 以上 10 以上
8~9(歳) 12 以上 12 以上
10~11(歳) 13 以上 13 以上
12~14(歳) 17 以上 16 以上
15~17(歳) 19 以上 17 以上
18~29(歳) 20 以上 18 以上
30~49(歳) 20 以上 18 以上
50~69(歳) 20 以上 18 以上
70以上(歳) 19 以上 17 以上
妊婦
―
授乳婦 ―
〈エネルギー産生栄養素バランスのポイント〉
• エネルギー産生栄養素バランスは、「エネルギーを産生する栄養素、すなわち、たんぱく質、脂質、炭水化物(アルコールを含む)とそれらの構成成分が、総エネルギー摂取量に占めるべき割合(%エネルギー)」としてこれらの構成比率を指標とした。
• 各種栄養素の摂取不足を回避すると共に、生活習慣病の発症予防とその重症化予防を目的とするものであるが、実質的には、前者を満たした上で、後者を主な目的とするものであるため、その指標は、目標量とした。
• 乳児については、母乳における栄養素の構成比をもって、好ましいエネルギー産生栄養素バランスと考えるものとし、1歳以上について、目標量を設定した。
エネルギー産生栄養素
30
〈エネルギー産生栄養素バランスのポイント〉
• 各栄養素の範囲については、おおむねの値を示したものであり、生活習慣病の予防や高齢者の虚弱の予防の観点からは、弾力的に運用する必要がある。
• 脂質については、その構成成分である飽和脂肪酸など、質への配慮を十分に行う必要がある。
• 炭水化物については、食物繊維の目標量を十分に注意する必要がある。
たんぱく質エネルギー比率の目標量の下限 (13%エネルギー以上)
• 推奨量以上であること。 • 非妊娠時・授乳時での、最高値は、13.3%EN(70歳) • 妊娠・授乳期では、14.3%EN(18-29歳妊娠後期)
たんぱく質の栄養素としての重要性から、やや高めに算定
たんぱく質エネルギー比率の目標量の上限 (20%エネルギー未満)
• 耐容上限量(好ましくない代謝、高窒素血症)を考慮。 成人 :19-22%EN 高齢者 :22-23%EN (2.0g/kg体重/日)
炭水化物エネルギー比率の目標量の上限 (65%エネルギー以下)
• たんぱく質、脂質の残余として設定。 ただし、精製度の高い穀類や甘味料では、ミネラル・ビタミンの 含有量が少なくなる。
たんぱく質(13%)、脂質(20%)⇒炭水化物は67%?⇒65%とした。
炭水化物エネルギー比率の目標量の下限 (50%エネルギー以上)
• たんぱく質、脂質の残余として設定。 たんぱく質(20%)、脂質(30%)⇒炭水化物は50% 食物繊維の摂取量が少なくならないように注意が必要。
エネルギー産生栄養素バランス (%エネルギー)
目標量1(中央値2)(男女共通)
年齢等 たんぱく質
脂質 3
炭水化物 4, 5
脂質
飽和脂肪酸
0~11(月) ― ― ― ―
1~17(歳) 13~20(16.5) 20~30(25) ― 50~65(57.5)
18~69(歳) 13~20(16.5) 20~30(25) 7 以下 50~65(57.5)
70以上(歳) 13~20(16.5) 20~30(25) 7 以下 50~65(57.5)
1 各栄養素の範囲については、おおむねの値を示したものであり、生活習慣病の予防や高齢者の虚弱の予防の観点からは、弾力的に運用すること。 2 中央値は、範囲の中央値を示したものであり、最も望ましい値を示すものではない。 3 脂質については、その構成成分である飽和脂肪酸など、質への配慮を十分に行う必要がある。 4 アルコールを含む。ただし、アルコールの摂取を勧めるものではない。 5 食物繊維の目標量を十分に注意すること。
基準とした値の幅の両端は明確な境界を示すものではない。柔軟に対応。 脂質ならびに炭水化物はそれぞれの栄養素の「質」 脂肪酸(飽和脂肪酸)や糖(食物繊維)の構成に配慮する。
何らかの疾患への取り組みの場合には、摂取実態を把握し、適正な構成比率を判断する。
エネルギー賛成栄養素バランスは他の栄養素の摂取量にも影響を与える。日本人の摂取量データを用いて詳細に検討する。 脂質の目標量の上限を算定するための研究の推進
活用上の注意と今後の課題