Linked Open Dataを用いた公的目標マッチングサービスの試作

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Linked Open Dataを用いた 公的目標マッチングサービスの試作 白松 , 大囿 忠親, 新谷 虎松 名古屋工業大学 大学院工学研究科 30SWO研究会, 国立情報学研究所, 2013-08-09

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人工知能学会 第30回セマンティックウェブとオントロジー研究会 (http://sigswo.org/A1301_program.htm )での発表資料です

Transcript of Linked Open Dataを用いた公的目標マッチングサービスの試作

Linked Open Dataを用いた 公的目標マッチングサービスの試作

白松 俊, 大囿 忠親, 新谷 虎松 名古屋工業大学 大学院工学研究科

第30回 SWO研究会, 国立情報学研究所, 2013-08-09

Outline 1. はじめに

– 公的目標マッチングサービスの要件 – これまでの取り組みと協業促進のための拡張

2. 公的目標のLinked Open Data – 大目標-部分目標の階層構造 – 震災復興に向けた公的目標LODの試作

3. 公的目標マッチングサービスの試作状況 – 類似目標検索のための類似度計算 – 2通りのユースケースと試作インタフェース

公共圏での協業促進の必要性 • 公共圏: 社会に関心を持つ自律的な市民が,

社会問題や公益について自由に議論・実践する場 – 利害関係者が多い問題 (例: 大規模災害からの復興など) に

住民が参画しつつ取り組むためには重要な概念

• 近年,Facebook等のSNS上で,社会問題解決のため 公共圏での協業を志向したコミュニティが増えている

• しかし,似た問題の解決を目指している他主体を 既存のSNS上で探すのは困難 – 誰が何を目指しているのかを公開/共有できる仕組みが必要

公的な目標をLOD化&似た目標を持つ他主体を検索可能にし, 協業の相手を探せる公的目標マッチングサービスを提供したい

公的目標マッチングサービスの要件 • 協業の相手となり得る他主体を探すため,

下記2条件のいずれかを満たす他主体を検索可能に – 目指す目標や注目する課題が似ている (多主体間で) – スキルやリソースを補い合える (2主体間で)

• 抽象的な目標を部分目標に細分化できる – 抽象的な大目標には,何をすれば協力できるか分かり難い – 「総論賛成・各論反対」状態への対処

• 「困ったこと」は認識しているが,自らがその解決を 目指すのはためらうような住民でも参加可能 – まず,気付きレベルの「困っている/解決したい課題」を入力 – その課題を見た実行力ある別の主体が,

その解決のための目標を新たに入力できるように

本稿の焦点 (2サイドマッチングに 限定しない)

これまでの取り組み (1/2) • ターゲット: 住民参画や公的討論を支援する技術

– 複雑に絡み合う社会問題: 災害リスク, インフラ老朽化, 少子高齢化, ... – 「お上がなんとかしてくれる」の限界 ⇒ 住民参画が重要に – 動機: 住民の知恵を結集する技術が欲しい.地域SNS?Twitter?

• アプローチ: LODで社会的課題の背景情報を共有化 (SOCIA) – 出来事と地域を基点とし,地域の問題の背景となる記事や意見を紐付け

• これまでの焦点: – 透明性 (transparency) – 参画 (participation) – 協業 (collaboration)

SOCIAオントロジー (核となるクラスのみ)

本稿の焦点

これまでの取り組み (2/2) LODデータセットSOCIAを核とした 住民参画Webプラットフォーム [Shiramatsu+ 12]

[Shiramatsu+ 12] Structuring Japanese Regional Information Gathered from the Web as Linked Open Data for Use in Concern Assessment. In Electronic Participation. Proc. of ePart 2012, Lecture Note in Computer Science, Vol. 7444, Springer, pp. 73-84.

議論の「種」 構造化

住民参画に活用 主体が目指す目標などの 属人的な背景情報は扱っていなかった

協業促進のための拡張プラン

Outline 1. はじめに

– 公的目標マッチングサービスの要件 – これまでの取り組みと協業促進のための拡張

2. 公的目標のLinked Open Data – 大目標-部分目標の階層構造 – 震災復興に向けた公的目標LODの試作

3. 公的目標マッチングサービスの試作状況 – 類似目標検索のための類似度計算 – 2通りのユースケースと試作インタフェース

目標記述のためのスキーマ Goalクラス • 説明文

dc:description • 部分目標

socia:subGoal

これらを用いた 目標間の類似度計算 類似目標を持つ

主体間のマッチング

目標の階層化

大目標-部分目標の階層構造LODの試作

震災復興

避難住民の帰還 震災がれき処理 放射能の除染

<http://data.open-opinion.org/socia/data/Goal/震災復興>

復興関連資料から人手で復興目標を抽出 http://data.open-opinion.org/socia/data/Goal?rdf:type=socia:Goal

山本修一郎: 要求工学 (第29 回) 前提条件ツリーと移行ツリー, ビジネスコミュニケーション 44(3), pp. 98-102 (2007)より

プロジェクト管理分野の理論 TOC (Theory of Constraint) における 前提条件ツリー (PRT; Prerequisite Tree) の簡易版と見なすこともできる

目標の階層構造に関連する プロジェクト管理分野のモデル

• 前提条件ツリー (PRT; Prerequisite Tree) – TOC (Theory of Constraint) [Goldratt 84] – 災害復旧への適用事例[程09, 大原11]もあり,本研究との親和性高

• 作業分割構成 (WBS; Work Breakdown Structure) – PMBOK (Project Management Body of Knowledge) [PMI 87]

公共圏での住民参画や協業を促進するためには,

1. SNS的な属人的情報としてオープンデータ化 2. モデルを知らずに目標データを入力できる平易さ

が必要

震災復興に向けた公的目標LODの試作

• 予備的検討のため,復興関連資料から人手で 公的な目標を抽出してLODを構築 http://data.open-opinion.org/socia/data/Goal?rdf:type=socia:Goal – アノテーター1名 – ニュース記事96記事+各地弁護士会による2資料 – 復興目標数: 657 – 派生したRDFトリプル数: 4349 – 「復興目標木」のルートノードは目標「震災復興」

部分目標の階層構造

部分目標

部分目標

「震災復興」 (復興目標木のルートノード)

「東北に観光客を誘致」 「新たな旅行商品を作る」

復興目標LODのインスタンス

目標記述

この目標を望んでいる主体

部分目標

事前準備

この目標を抽出した情報ソース

タイトル

http://data.open-opinion.org/socia/data/Goal/新たな旅行商品を作る

試作した目標LODの性質 • 対象地域の違う類似目標

– 例: 「大熊町の住民の帰還」「川内村村民の帰村」 – 共通概念や実体を切り出す作業の必要性 – 類似目標が推薦できれば,協業を促すだけでなく,

そのような共有概念を切り出す作業も支援可能 • 部分目標がどの粒度まで細分化されるかは

元の資料によってバラバラ – 目標を持つ主体自身が入力する場合も同様と考えられる – グラフの構造だけに基づく類似度計算は不適

Outline 1. はじめに

– 公的目標マッチングサービスの要件 – これまでの取り組みと協業促進のための拡張

2. 公的目標のLinked Open Data – 大目標-部分目標の階層構造 – 震災復興に向けた公的目標LODの試作

3. 公的目標マッチングサービスの試作状況 – 類似目標検索のための類似度計算 – 2通りのユースケースと試作インタフェース

協業の可能性のある他主体の検索時に なぜ目標階層構造が必要か

• 抽象的な大目標ではどう協力していいか分からない 目標階層構造により具体的な部分目標を検索可能に

• 短い目標記述のみを使った類似検索では, 語彙の違いによる再現率低下が予想される 目標記述と目標階層構造を併用して類似度計算すれば 再現率に寄与すると考えられる

目標階層構造に基づく類似度計算

• 特徴ベクトルを再帰的に作ってコサイン尺度で

(コサイン類似度)

sg∈sub(g): 目標gの部分目標

類似度

部分目標の構造を再帰的に使う

Bag-of -featuresベクトル

潜在トピック TF*IDF

ただし

LDAによる潜在トピックz の確率

語彙の違いによる 再現率低下に対処

2通りのユースケース • 本人による目標入力

– 主なターゲット – 本人が目標を公開し,方向性の似た他主体を検索 – 協業の可能性を広げる

• 第三者による目標入力 – 二義的なターゲット – ニュース記事等から,影響力ある主体

(例: 公人,行政,大企業) の目標を入力 – 「誰がどんな社会課題をどんなアプローチで

解決しようとしているか」に関する透明性を向上

試作インタフェース

目標タブ

タイムライン

最上位目標からのトピックパス

試作インタフェース

本人により入力された目標

第三者により入力された目標

入力時の引用元記事

部分目標

部分目標の追加

目標の似た主体の検索

試作インタフェース

運用イメージ

部分目標の追加 歩きスマホ防止 アプリを作ろう

歩きスマホの人危ないよ!

「困ってる/解決したいこと」タブ 歩きスマホを

減らす!

「目指してます」タブ

歩きスマホ防止条例

類似目標の検索

Androidで スマホ防止アプリ

作ります

協力

石巻ハッカソンでの協業を通じた 試作の取り組み

• 先月開催された復興イベント – ユーザになる人々との協業の機会

• 事前に「アイディアソン」 – 本研究のアイディアを説明 – 「問題解決に貢献できる

可能性に気付かせるアプリ」 • 3人×1日半でモックアップ試作

– デザイナーによるUIデザイン – 解決アイディアの具体化機能 – 必要スキルのタグ付け機能

• 本稿の試作UIとも一部共通 – 最終的には統合予定

• 例えばハッカソン終了後に新たな協力者を探す際にも 本研究の目指す目標マッチングサービスは有用と考えられる

関連するサービス 公的目標の共有 • Neighborland: http://neighborland.com/ (米国)

– 「地域に欲しいもの」のアイディア共有Webサービス – 定型文 “I want [欲しいもの] in [地区名]”

社会課題の共有 • FixMyStreet Japan: https://www.fixmystreet.jp/

– ゴミの投棄,道路の陥没,落書きなど 地域のインフラ不具合を公的な問題として投稿

– 行政による対応を迅速化 協業促進のためには,本研究が扱う類似目標マッチング

や公的目標の階層構造のオープンデータ化が必要

まとめ • 研究目標: 公共圏での協業を促進する目標マッチング • 課題: 既存SNSでは協業し得る他主体を探し難い • 目標の類似性に着目したアプローチ:

– 大目標-部分目標の階層構造をLOD化 具体化して参画しやすく – 部分目標を再帰的に用い,再現率を下げない目標類似度計算 – TOC等を理解せずに目標入力できるインタフェース – 石巻ハッカソンを通じた協業による試作の試み

• 残された課題 – 未完成部分の実装,目標類似度計算のパラメタの経験的調整 – Facebook等の既存SNSとの連携 – 目標の類似性だけでなく,スキルやリソースの相補性も加味