アラブ連盟(LAS)加盟国間貿易を通じた アラブ諸...

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要約アラブ 域が およびグローバル する について, している。アラブ より大 域パターン 域パターン があり, からアラブ 題, またがる 題が まれる。しかし がら,こうしたアラ いずれ まだ く, した されている。 いえ, 6ヵ (バーレーン,ク ェート,オマーン,カター ル,サ ジアラ ア,アラブ )が GCCして したこ すように, 域レベル がアラブ いる。アラブ ブロックに 較して が, グローバル 題を まえ, がアラブ 域における 掛かりに いうコンセンサス しつつある。これが ように し,ア ラブ するために よう される めて あり, する。こうした から, アラブ LAS易がアラブ よう たらしうるかに ついて するこ たる している。 ,グローバル いう せた。 ,学 2つ プロセスが か,それ する いう われた。 らず, 易ブロック グローバル する する 易を するため ガルフ・リサーチ・センター サミール・プラダーン アラブ連盟(LAS)加盟国間貿易を通じた アラブ諸国間関係の考察と展望 83 センターニュース 2010・2/3

Transcript of アラブ連盟(LAS)加盟国間貿易を通じた アラブ諸...

-要約-

アラブ地域は,開発途上地域が地域経済統合

およびグローバルな経済統合を目指す際に直面

する機会と課題の両方について,非常に興味深

い事例を提供している。アラブ地域主義には,

より大局的な全地域パターンと準地域パターン

の双方があり,経済統合からアラブ統一問題,

資源の管理,環境への懸念までまたがる横断的

問題が含まれる。しかしながら,こうしたアラ

ブ地域主義の試みはいずれもまだ底が浅く,構

造的な硬直性の存在と結束した政治的意思の欠

如が指摘されている。とはいえ,最近湾岸6ヵ

国(バーレーン,クウェート,オマーン,カター

ル,サウジアラビア,アラブ首長国連邦)が湾

岸協力会議(GCC)の保護下で関税同盟として

の統合に成功したことが端的に示すように,準

地域レベルでの地域経済統合がアラブ地域で急

速に進んでいる。アラブ諸国間の貿易量は他の

地域経済ブロックに比較して非常に低水準だ

が,地域的課題やグローバルな課題を踏まえ,

準地域主義がアラブ地域における全地域的な経

済統合への足掛かりになるというコンセンサス

が浮上しつつある。これがどのように進展し,ア

ラブ地域主義を強化するためにどのような戦略

が実行されるのかは極めて重要な問題であり,

詳細な分析に値する。こうした背景から,本稿は

アラブ連盟(LAS)加盟国間の貿易がアラブ諸国

間の関係にどのような影響をもたらしうるかに

ついて分析することを主たる目的としている。

序 論

冷戦後の世界経済には,グローバル化と地域

主義という波が同時に押し寄せた。当初,学者

や政策立案者の間ではこの2つのプロセスが相

補的なものか,それとも相反するものかという

議論が幅広く行われた。地域主義は保護主義に

他ならず,差別的な貿易ブロックはグローバル

な多国間主義の論理に反すると主張する者もい

れば,国際貿易を推進するための基盤となる地

ガルフ・リサーチ・センター

上級研究員

サミール・プラダーン

アラブ連盟(LAS)加盟国間貿易を通じたアラブ諸国間関係の考察と展望

83 中東協力センターニュース2010・2/3

域主義をグローバル化へのパイプとみなす者も

いる。1990年以降の世界経済は重要な進化を遂

げた。かつて主要な地域経済が深く傾倒してい

た多角的貿易交渉に背を向け,「競争的自由化」

戦略を追求し始めたからである。この変化によ

り,二国間,少数国間および地域レベルでの経

済協定を通じて地域経済統合を目指すという革

新的なアプローチが示されただけでなく,セク

ター別に市場への特恵的アクセスが広まった。

「近隣の経済」の驚くべき成長が,競争力向上と

成長促進を目的とする効率志向の再構築をその

地域全体で推進した。その結果として,EU,

NAFTA,MERCOSUR,ASEANなどの強力な地

域貿易ブロックが台頭したのである。それを受

けて世界貿易に占める特恵ベースの比率が高ま

り,開発途上地域からの貿易離れが脅かされる

ことになった。その上,多国間主義の包括的な

仕組みの円滑化を目指すWTO交渉が行き詰ま

ったことから,開発途上地域は統合の進む世界

経済において自らの存在を示すために,ますま

す地域統合の強化を求めている。何よりも,現

在の世界的不況への反応として保護主義の亡霊

が世界中に広がりを見せる中,地域経済は(個

別交渉ではなく)団体交渉によって多国間政策

の場における立場を強めようと努力している。

こうした背景の下,アラブ地域はこの開放的

地域主義の流れに乗り遅れているように見え

る。アラブ連盟(LAS)加盟国間の域内貿易はい

くつかの統合の試みが失敗するといった様々な

困難にぶつかっており,活発な世界貿易や自由

貿易協定(FTA),地域貿易協定(RTA)の世界

的な急増を踏まえると印象が薄いと言わざるを

えない。このように LASには取り残される不安

の中で,域内の経済統合を促進するための努力

を強化しなければならないというプレッシャー

がかかっているのだ。1997年の大アラブ自由貿

易地域(GAFTA)の設立は,それ以前の貿易協

定や1981年の湾岸協力会議(バーレーン,クウ

ェート,オマーン,カタール,サウジアラビア,

UAEから構成され略称は GCC)および1989年

のアラブ・マグレブ連合(アルジェリア,リビ

ア,モーリタニア,モロッコ,チュニジア)と

いう成功例をもたらした他の準地域レベルの自

由貿易協定を除けば,最も重要なアラブの貿易

協定であった。これらの準地域主義の糸が撚り

合わさり,アラブ地域の包括的な全地域的経済

統合に向けたひとつの必要不可欠な動きになり

つつある。しかしながら,GAFTAはまだ明確な

効果をあげていない。アラブ連盟加盟国の国際

貿易が相変わらずふるわないためである。これ

には多くの要因が考えられる。すなわち,アラ

ブ経済間における差異(経済制度,立法,規制

など)と相補性の低さ,そして確実な紛争解決

の仕組みが存在しないために多くのアラブ諸国

が貿易協定上の義務を履行しない,取引費用が

高い,原産地規則における明確な定義がないこ

とが挙げられる。従って,こうした制約に取り

組み,アラブ経済の統一への機運を再燃させる

ことを意図するアラブ関税同盟およびアラブ共

同市場の設立交渉が現在進行している。これが

どのように進展し,アラブ地域主義を強化する

ためにどのような戦略が実行されるかは極めて

重要な問題であり,詳細な分析に値する。本稿

の主たる目的は,アラブ域内貿易が触媒として

アラブ連盟加盟国間の関係にどのように影響し

うるのかを分析することである。この分析では,

既存の地域貿易協定,準地域貿易協定,二国間

貿易協定を吟味することによって,アラブ諸国

間貿易の傾向と力学を明らかにする。

本稿の構成は,まずアラブ連盟の概要を説明

する。次にアラブ連盟加盟国の貿易志向性を分

析し,アラブ連盟の通商政策とアラブ諸国間貿

易の量と構造を分析する。その次に,アラブ地

域で成功している地域経済統合の力学を論じ

る。続けてアラブ諸国間貿易が LAS加盟国間の

全体的な関係にどのように影響するかについ

84 中東協力センターニュース2010・2/3

て,今後の展望を述べる。最後に本稿の結論と

して,実行可能な政策上のいくつかのポイント

を述べる。

アラブ連盟の概要

アラブ連盟はアラブ諸国の地域同盟として

1945年にカイロで設立され,原加盟国はエジプ

ト,イラク,ヨルダン,レバノン,サウジアラ

ビア,シリアの6ヵ国のみだった。しかし,そ

の後多くの国が加盟して,現在は22ヵ国(表1

参照)およびオブザーバー加盟国4ヵ国であ

る�。アラブ連盟の第一の目標は,アラブ諸国間

の協力を育成し,統一的なアラブ民族主義を推

進することによって,加盟国の独立と主権を守

ることである。アラブ連盟教育文化科学機関

(ALESCO)やアラブ統一会議(CAEU)の経済

社会理事会といった組織を通じて,アラブ連盟

は加盟国の利益に資する政治・経済・文化・科

学・社会プログラムを促進しようと試みてい

る。アラブ連盟の全加盟国は,イスラム諸国会

LAS加盟国 LAS加盟年月日 OIC GCC OAPEC AMU

エジプト 1945年3月22日 X X

イラク X X

ヨルダン X

レバノン X

サウジアラビア X X X

シリア X X

イエメン 1945年5月5日 X

スーダン 1956年1月19日 X

リビア 1956年3月28日 X X X

モロッコ 1958年10月1日 X X

チュニジア X X X

クウェート 1961年7月20日 X X X

アルジェリア 1962年8月16日 X X X

バーレーン 1971年9月11日 X X X

カタール X X X

オマーン 1971年9月29日 X X

UAE 1971年12月6日 X X X

モーリタニア 1973年11月26日 X

ソマリア 1974年2月14日 X

パレスチナ 1976年9月9日 X

ジブチ 1977年9月4日 X

コモロ 1993年11月20日 X

表1:アラブ連盟加盟国の他の地域機構への加盟状況

注:LAS=アラブ連盟,OAPEC=アラブ石油輸出国機構,AMU=アラブ・マグレブ連合,OIC=イスラム諸国会議機構,GCC=湾岸協力会議

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議機構(OIC)にも加盟している。同様に,小規

模組織である GCCおよびアラブ・マグレブ連

合の加盟国は,全てアラブ連盟に属している。

文化,宗教,言語は似通っているが,LAS

加盟国の経済・地理・気候の仕組み,天然資源,

生活水準の面では非常に多様性に富んでいる。

アラブ諸国全体の面積は1,400万平方キロにお

よび,世界の10.2%に相当する。人口は3億

3,000万人で,世界人口のおよそ5%を占める�。

エジプト1国だけでアラブ国家総人口の23%を

擁する。アラブ国家全体の2008年の GDPは1兆

8,500億ドルで,世界全体のおよそ3%を占め

た�。アラブ国家は資源が豊富で,GCC諸国,リ

ビア,イラク,アルジェリアのようにエネルギー

を基盤とする国もあれば,アラブ世界の食料庫

と呼ばれるスーダンのような農業国や,新興工

業国(エジプト,モロッコ)もある。1人当た

り所得も GCCに匹敵するほど非常に高い国か

らソマリア,モーリタニア,イエメンやパレス

チナのように非常に低い国まで様々である。こ

れらの特徴はアラブ地域の貿易パターンに大き

く影響しており,いくつかの国でその目的を達

成できない理由の一部となっている。

アラブ連盟の貿易志向性

アラブ連盟加盟国は,世界の他の地域と比べ

て国際貿易への依存度が極めて高い。LASは要

素賦存構造が独特である 石油が豊富で,水が

少ない ため,国際貿易がアラブ地域の成長と

経済開発に欠かせない要素となっている。LAS

諸国は世界貿易に依存するため,世界貿易動向

の循環パターンによる影響を非常に受けやす

い。このことは表2に示されるとおり,経済開

放度の指標として特定の LAS諸国の対 GDP比

貿易総額を見れば明らかである。財とサービス

の輸出入はいずれも各国の GDPのかなりの比

率を占めており,LAS経済にとって国際貿易が

いかに重要かを示している。

実際,アラブ連盟諸国の経済は非常に開放的

であり,2008年の貿易総額の対 GDP比率は平均

で106.8であった。アラブ経済が閉鎖的で保護主

義に走りがちというイメージは,昔の民族主義

的な言辞と輸入代替政策を反映したものである

が,今では実態とかけ離れている�。貿易に対す

る開放度(輸出入合計の対 GDP比)が最も低い

アラブ国家�はスーダンで,開放度指数の値は41

である。これに対し米国の開放度指数は29,日

国貿易総額(X+M) 輸出(X) 輸入(M)

2005 2006 2007 2005 2006 2007 2005 2006 2007

バーレーン 20.02 28.06 25.23 73.52 65.06 61.25 53.51 47.73 54.1

エジプト -4.03 -3.60 -2.36 34.25 34.13 33.38 38.27 37.73 37.73

ヨルダン -41.43 -37.44 -37.7 52.61 54.56 57.75 94.0 92.00 91.53

クウェート 35.72 32.96 23.04 63.99 67.88 59.90 28.28 25.12 25.62

レバノン -14.66 -12.49 -12.5 61.03 63.45 66.86 75.69 75.93 79.11

オマーン 27.09 28.4 24.67 63.02 62.14 63.12 35.93 37.51 39.87

サウジアラビア 33.004 32.69 31.1 59.38 62.61 64.2 26.37 29.92 34.16

シリア 1.46 3.86 -73.36 40.82 39.42 37.8 39.36 35.56 35.01

イエメン 4.96 0.44 -1.26 40.52 41.27 38.98 35.56 40.83 39.86

表2:貿易量の対 GDP比(2005~2007年)

注:2つの点(..)はデータがないか,個別に報告されていないことを示す。出典:The World Bank,Worldwide Trade Indicators(WTI)database(2008)

86 中東協力センターニュース2010・2/3

本は34である。つまり,スーダンでさえ,日米

両国よりも開放的なのである。他のアラブ経済

はいずれもさらに開放度が高く,最も高いのは

バーレーンの171となっている。これは主に,石

油を輸出し食料を輸入するというアラブ諸国の

貿易構造によるもので,従って財の貿易の比率

が比較的高くなっている。

過去10年間でアラブ連盟の世界貿易は著しく

成長した(表3参照)。2008年,アラブ連盟加盟

国の貿易総額は7,740億米ドルとなり,世界貿易

の5%を占めた。このうち輸出が4,250億米ド

ル,輸入は3,490億米ドルであった。

アラブ連盟からの輸出は石油と石油関連製品

に極めて集中しており,アラブ地域の2008年の

輸出総額の約72.1%を占める(図2および図3

参照)。アラブ地域はまた輸入食料への依存度が

高く,輸入食料は輸入総額の15%近くを占め,

GCCの平均は20%となっている。GCC諸国は

開放的な貿易体制を敷いており,平均関税率は

10%を下回るが,GCC非加盟のアラブ連盟加盟

国の大部分は平均関税率が15%に近いかそれを

上回る。

また,2008年にはアラブ連盟の輸出総額の半

分以上(54%)がアジア向け,3分の1以上が

欧米向けであった。輸入総額の43%がアジア,

38%が欧州からのものであった。アジアおよび

欧州との貿易額は,アラブ地域の貿易総額のお

よそ78%を占める(図4および図5参照)。

アラブ連盟の通商政策とアラブ諸国間貿易

1960年代から1970年代にかけて,他の開発途

上地域と同様に,アラブ連盟加盟国は自国産業

を保護し国内の財市場を発展させるために内部

志向的な通商政策を採用した。関税障壁の構造

から生じる他の利点に加えて,この保護主義的

シナリオは輸入関税を通じて財政政策にも役立

った。これが構造的硬直性の高まりにつながり,

貿易の発展を阻害した。しかし,1980年代に石

油価格が崩壊すると,状況は劇的に変化した。

アラブ連盟加盟国は貿易を自由化し,地域貿易

図1:アラブ連盟の開放度

出典:WTO Country Profiles,October2009

87 中東協力センターニュース2010・2/3

地域ブロック 指標 1990 1995 2000 2005 2006 2007 2008

LAS

輸出 87.8 106.1 233.1 468.3 484.1 702.1 425.3

輸入 68.5 96.8 152.2 280.3 254.1 447.8 348.7

貿易総額 156.3 203.0 385.3 748.6 738.2 1149.9 774.0

貿易収支 19.4 9.3 80.9 188.0 229.9 254.3 76.6

GCC

輸出 61.3 74.4 160.4 347.8 334.1 528.9 293.5

輸入 31.9 46.0 76.2 162.1 122.9 279.5 211.4

貿易総額 93.2 120.4 236.5 509.8 457.0 808.3 505.0

貿易収支 29.3 28.5 84.2 185.7 211.1 249.4 82.1

AMU

輸出 18.7 19.5 35.6 68.2 78.8 91.2 20.8

輸入 22.1 27.2 29.6 55.6 60.8 79.8 26.3

貿易総額 40.8 46.7 65.2 123.8 139.6 171.0 47.1

貿易収支 -3.4 -7.7 6.1 12.6 18.0 11.5 -5.4

表3:アラブ連盟加盟国の貿易指標(1990~2008年,単位:10億米ドル)

出典:COMTRADE Database,2009.

図2:アラブ連盟の輸出上位10品目 図3:アラブ連盟の輸入上位10品目

出典:UN COMTRADE Database,2009.

出典:UN COMTRADE Database,2009.

88 中東協力センターニュース2010・2/3

と国際貿易を統合して外部志向型貿易体制を整

えた。

1990年代初めから半ばにかけて,WTOへの加

盟,GAFTAの設立,そして重要な点として様々

な二国間貿易協定が個別のアラブ連盟加盟国と

米国や EUとの間で締結されたことにより,ア

ラブ連盟の貿易障壁は大幅に削減された。その

結果として貿易が活発化したが,望ましい水準

には達しなかった。それにもかかわらず,結果

的に地域の分業化が進み,アラブ連盟の経済的

福祉が向上した。また,いくつかの加盟国は,

機会費用が低く比較優位を有する製品の製造に

特化した�。

しかし,輸出促進政策は思うような結果を出

せなかった。公的独占,国有企業,民営化企業

の戦略的株式保有といった形ではいずれも,公

共部門が国家経済において圧倒的な存在となる

ためである。また,貿易業者と投資家は今もな

お官僚主義的で不透明な措置に直面している。

1980年代初め以降に導入された構造改革と民営

化プログラムは,各国および地域レベル双方で

の貿易開発努力を阻む障害を未だに取り除けて

いない�。このことはアラブ諸国間貿易の拡大

に直接的な影響を及ぼし,そのため他の地域ブ

ロックと比べてふるわない状況である(表4参

照)。相補的に機能しうる多様な資源と市場の双

方を活かすような,統一されたアラブ経済共同

体を形成する努力がなされているにもかかわら

ず,アラブ諸国間の貿易は常に低水準に留まっ

ている(図6参照)。

上記の通り,アラブ連盟の貿易総額に占める

域内貿易の比率は過去10年間,常に7~11%と

いう低率に留まっている。これに対し,先進地域

ではこの比率が非常に高く,EUの場合は61%,

APECは62%である。MERCOSURや ASEANの

ような開発途上地域の経済ブロックでさえ,そ

れぞれ21%,25%となっている。

指摘すべき重要な点として,アラブ諸国間貿

易においては国ごとのシェアと実績に大きな格

差がある(図7および図8参照)。アラブ諸国に

は,最も裕福な国から最も貧しい国,最も安全

な国から政治的混乱に脅かされている国,植民

地時代の影響が根強い国々,さらに準地域グ

ループに属する国とそうでない国というように

格差が存在する。GCCは依然として最も裕福な

国々で,アラブ諸国の中では活発でまとまりが

強いほうの準地域グループでもある。GCC諸国

が2008年のアラブ諸国間貿易に占めた割合は,

図4:アラブ連盟の輸出先 図5:アラブ連盟の輸入元

89 中東協力センターニュース2010・2/3

輸入が73%,輸出が40%であった。サウジアラ

ビアと UAEが最も高く,この2ヵ国だけでア

ラブ諸国間貿易総額の40%を占める。しかしパ

レスチナやレバノンなど,一部が政治的苦境に

陥っているマシュレク諸国と称される国々の域

内貿易に占める割合は,輸入が約18%,輸出が

28%だった。かつて植民地支配を受けた歴史的

経緯から貿易と投資がほとんど(貿易総額の

70%以上)欧州向けであるマグレブ諸国,それ

にソマリア,モーリタニア,イエメンなどの他

の開発途上国における域内貿易は,依然として

微々たるものである。

また,一部のアラブ諸国では貿易に占める域

内貿易の比率がかなり高いが,それでも全体の

貿易総額に占める域内貿易額の比率が低いの

は,これら国が主要石油輸出国でないからであ

る。結果として,こうした国が地域貿易に占め

るシェアは絶対値で見て非常に小さいため,貿

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

LAS 7% 7% 8% 8% 10% 8% 10% 11% 9% 11%

GCC 5% 5% 5% 5% 7% 4% 6% 7% 6% 6%

UMA 2% 2% 3% 3% 2% 2% 2% 3% 3% 7%

NAFTA 46% 46% 46% 46% 45% 44% 43% 42% 41% 40%

EU 65% 63% 63% 63% 64% 64% 63% 62% 63% 61%

APEC 69% 69% 68% 69% 68% 67% 66% 65% 64% 62%

ASEAN 21% 23% 22% 23% 24% 24% 25% 25% 25% 25%

MERCOSUR 22% 24% 23% 21% 22% 22% 22% 22% 21% 21%

WAEMU 14% 15% 13% 12% 14% 14% 13% 11% 12% 12%

表4:貿易総額に占める域内貿易の比率

出典:COMTRADE database,World Integrated Trade Solution2009

図6:アラブ連盟の貿易総額と域内貿易額

出典:UN COMTRADE Database,2009.

90 中東協力センターニュース2010・2/3

図7:アラブ連盟加盟国間の輸出(2008年)*

注:*レバノン,サウジアラビア,シリア,パレスチナ,クウェートの2008年のデータは概算値である(2007年から調整)。イラク,ソマリア,ジブチ,リビア,コモロのデータはない。

出典:UN COMTRADE Database,2009

図8:アラブ連盟加盟国間の輸入(2008年)*

注:*レバノン,サウジアラビア,シリア,パレスチナ,クウェートの2008年のデータは概算値である(2007年から調整)。イラク,ソマリア,ジブチ,リビア,コモロのデータはない。

出典:UN COMTRADE Database,2009

91 中東協力センターニュース2010・2/3

易総額に占める域内貿易の全体比率にさほど影

響を与えないのである。

また重要な点として,主要石油輸出国におい

ても貿易総額に占める域内貿易の比率はそれほ

ど高くなく,アラブ首長国連邦が8.9%,サウジ

アラビアが9.8%,カタールが7%,クウェート

が7.7%に留まっている。これは貿易総額に占め

る域内貿易の比率が貿易の活発な国では低く,

それほど活発でない国では高いことを意味する。

最も重要な点として,GAFTAでは石油資源

の豊富な国よりも資源に乏しく貧しい国々が地

域経済統合に熱心である。このことは,UN-

ESCWAがグローバル化調査年次報告書で推計

した地域統合指数とその順位から明らかである

(表5参照)。

アラブ地域は,構造的なボトルネックが地域

統合の障害となっている特異な地域である。構

造的には外部志向型だが,地理的に広大で人口

が少ない。後者2つの特徴がインフラの不備と

組み合わさって,地域貿易に対する大きな障害

となっている。例えば,ラバトからドバイまで

は約6,000kmの距離があるが,その間はほとん

ど何もない砂漠である。一方,リスボンとモス

クワは4,000kmしか離れていない。それに引き

換え,ラバトからマドリッドまでの距離はわず

か800kmだ。モロッコの貿易相手が主に欧州で

あることは驚くに当たらない(モロッコの対外

貿易の60%は対 EUであり,チュニジアの対外

貿易は圧倒的に対 EUで70%を超える)。

アラブ地域は地理的に広大で人口が少ないだ

けでなく,近代的な通信インフラの状態も標準

以下であることが多い。湾岸諸国を例外として

湾岸諸国では巨額の資金を投入して,過去に

全く存在しなかった道路網を新設し,少なくと

も主要交通ルートについては並行する鉄道路線

の建設事業を進めている 道路と鉄道の連結

の質は,首都近辺を離れた途端にどんどん劣化

していく。商品をアラブ国家から隣のアラブ国

家に運ぶことは容易ではなく,しばしば非友好

的な政治関係や複雑な通関手続きによってさら

に難しくなる。長距離の海運貿易の方が短距離

の陸上貿易より容易なことも多い。

さらに,アラブ諸国の主要輸出品目は未だに

原料であり,ほとんどが相補的というよりも互

いに競合する関係にある。たしかに,石油や天

然ガスが全く出ないアラブ諸国もあり,そうし

た諸国は近隣アラブ諸国への財やサービスの提

供に特化する傾向がある(例えばレバノンまた

はヨルダン)。しかしほとんどの場合,競合する

側面の方が相補性を上回る。こうした構造的要

因に加えて,近隣アラブ諸国同士が敵対し域内

貿易をさらに阻害するような紛争がいくつも起

きている。その結果として,世界で最も外部志

向の強い地域ができあがっているのである。

アラブ連盟における地域統合の試みの力学

伝統的に,アラブ地域は特異な地政学的存在

国2006年

順位 指数

ヨルダン 1 8.6849

レバノン 2 8.6518

バーレーン 3 5.1860

シリア 4 5.4281

イエメン 5 2.3161

オマーン 6 2.1113

カタール 7 2.0316

エジプト 8 1.4534

アラブ首長国連邦 9 1.2056

サウジアラビア 10 0.9517

クウェート 11 0.8266

リビア 12 0.6886

表5:地域統合指数の国別順位

出典:ESCWA,2009

92 中東協力センターニュース2010・2/3

と見られていたため,経済統合と関連付けられ

ることがなかった。事実,1950年代から1980年

代までの地域統合への早期の試みは完全に失敗

した�。が,その後は実質的な進歩が見られた。

こうして研究者はアラブ地域を「地域主義のな

い地域」と考えるようになった。しかしこの地

域は,地域経済統合の効果を評価するとしたら

矛盾に満ちている。複数の研究により,アラブ

地域での地域経済統合から期待される利益は,

構成国が構造的硬直性と政治的障害を克服した

くなるほど大きくないことが確認されている�。

しかし一方で,西アジアにおける地域統合計画

は,それが合理的な経済論理ではなく平和と安

定への地域的配慮のみを動機として進められて

いるという意味で,他のどの地域よりもはるか

に政治的なものである�。

アラブ諸国の多国間協定

アラブ連盟には,加盟国間の貿易と経済協力

を促進すべく努力を続けてきた長い歴史がある

(図9)。統合の最初の試みは,エジプト,イラ

ク,ヨルダン,レバノン,サウジアラビア,シ

リアが署名した1953年の「貿易の流れと運送規

則」に関する協定に遡る。この協定の目的は,

多数の農作物について関税を撤廃し,いくつか

の工業製品および農業製品については関税を

25%引き下げ,アラブ諸国産品および地元製品

の特恵的交易を強調することであった。しかし,

当時の貿易は,相補的というよりむしろ競合的

であった参加国の生産パターンによって妨げら

れた。また,特恵的交易の仕組みは広範囲での

分業と貿易利得をもたらすことができず,失敗

に終わった。

連盟の2つめの経済的成果は,1964年のアラ

ブ共同市場(ACM)�の創設であった。これは,

アラブ連盟による汎アラブ市場創設の試みの結

果として,アラブ経済統一会議(CAEU)の決議

によって実現した。ACMは,農業製品と動物製

品を除く全品目の制限を撤廃することにより,

アラブ諸国間の自由貿易を促進することを目指

していた。しかし,数々の社会的,政治的,経

済的理由から,ACMはその最終目標を達成で

きなかった。多くのアラブ諸国が参加しなかっ

たため,いくつかの関税と税金が撤廃されただ

けに終わった。アラブ世界はこれまで常に,

GCC諸国のような裕福な産油国と,モーリタニ

ア,ソマリア,スーダン,イエメンのような開

発途上で力のない国々で分かれていた。冷戦や

図9:アラブ地域の貿易協定

93 中東協力センターニュース2010・2/3

湾岸戦争のような大きな政治事件や,国内制度,

対外関係や政策の違いによって,アラブ諸国の

経済統合は妨げられ続けている。1978年から

1989年までに,CAEUは開発途上のアラブ国家

の加盟要件を緩和する措置を取り,ACMへの参

加によって開発途上国が被る損失を補填するた

めの資金提供を原則的に承認し,ACM非参加

国からの輸入に対する関税の統一化を準備し,

ACM活動の推進と ACM加盟国間の問題に対

応する委員会を設置し,統一関税法を承認した。

1973年の第1次オイルショックの後,アラブ

地域協力の焦点は貿易から投資にシフトした。

しかし,アラブ経済の開発のために資金を提供

する基金を先駆けて設置したアブダビやクウ

ェートを含む,産油国からの公的資金の流れは

微々たるものであった。アラブ諸国への資本流

入と世界に向けたアラブ諸国の輸出を促進すべ

く自由化を進める組織として,1974年にアラブ

諸国間投資保証社が創設された。その目的は,

アラブ諸国の資本投資に対する非商業リスク,

アラブ諸国の輸出信用に対する商業リスクおよ

び非商業リスクを保証することである。保険事

象が発生した場合の補償率は90%に達する。

しかし,1980年代の第2次オイルショックに

よって,アラブ諸国では経済改革と域内余剰資

本の活用を求める声が高まった。1981年には,

「貿易の促進と発展に関する協定」がアラブ連盟

経済社会理事会の加盟国によって署名された。

同協定は,工業製品と半製品に対する関税と非

関税措置の全廃を目指していた。効果はほとん

どなかったものの,この協定は貿易と投資が民

営化と自由化に向けてシフトしたことを浮き彫

りにし,特にエジプトとシリアでは自由貿易地

域創設のきっかけとなった。この動きは1995年

の世界貿易機関の創設,そしてグローバル化の

進展によって強化された。また,他の貿易ブロ

ック(欧州連合,北米自由貿易協定,東南アジ

ア諸国連合等)の精力的な進歩に比べて取り残

されることへの懸念から,CAEUは同年(1995

年),アラブ市場におけるアラブ諸国産製品に対

する関税を年率で10%ずつ引き下げていくこと

を再確認した。

アラブ連盟による貿易自由化に向けた最近の

試みは,大アラブ自由貿易地域(GAFTA)であ

る。アラブ連盟のアラブ経済社会理事会は,民

間セクターのより広範の自由な活動を可能に

し,他の国際貿易ブロックと競争できる完全な

アラブ貿易同盟の実現を主な目的として,この

計画を1997年に採択した。

GAFTAは1998年に創設され,連盟に加盟す

る18ヵ国(ヨルダン,アラブ首長国連邦,バー

レーン,チュニジア,サウジアラビア,シリア,

イラク,オマーン,パレスチナ,カタール,ク

ウェート,レバノン,リビア,エジプト,モロ

ッコ,スーダン,イエメン,アルジェリア)の

間でほとんどの関税が撤廃された2005年初頭

に,実質的に機能し始めた。GAFTAの主な目

的は下記の通りである�。

1.統合された再決済の枠組みにおいて,下記

の規則を踏まえてアラブ諸国の投資を誘致す

るため,様々な障壁および制限からアラブ諸

国間の自由貿易同盟を創設すること(GAFTA

システム,第4条)。

●加盟国間で取引されるいくつかのアラブ諸

国産品および製品について,外国製品に課

される様々な課徴金および制限を全て免除

すること。

●他の取引されるアラブ諸国産品および製品

の一部について,様々な課徴金と制限を

徐々に削減していくこと。

●アラブ諸国産品および製品が類似品または

代替品となる非アラブ産品と競争できるよ

う,徐々に保護していくこと。

2.様々な方策,特に製造に必要な資金の供給

手段を利用して,アラブ諸国産品の製造と取

94 中東協力センターニュース2010・2/3

引を調和させること。

3.アラブ諸国間貿易の資金調達と決済を容易

にすること(GAFTA,第2条)

主な条項は下記の通りである�。

1.アラブ諸国間で取引される物品に課される

関税率,手数料,税金を,1998年1月1日時

点の料率に基づいて平均10%の年率で徐々に

削減すること。

2.付加価値は完成時の製品価値の40%を下回

ってはならない(GAFTA,第9条)。

3.宗教,環境,安全保障および保健上の理由

により取引が禁止される製品は,GAFTA実

施計画の対象外とする。これらの製品は各国

の準拠法に服する。

4.行政的制限,数量制限,金銭的制限(非関

税障壁)を撤廃する。

5.下記の条件を踏まえて「農業カレンダー」

を実施する。

a.各国がリストに含める品目は最大10品目

とする。

b.各品目をカレンダーに記載できる期間は

(1年当たり)最長7ヵ月,全記載品目の合

計期間は最長45ヵ月とする。

c.農業カレンダーは輸入の禁止を認めるも

のではない。カレンダーに記載される品目

は輸入が認められるが,特定期間中,関税

率漸減の対象から外される。それ以外の期

間においては,記載品目であっても関税率

引き下げの対象となる。

6.いくつかの工業製品については,特定の規

則および条件を満たす場合,アラブ連盟社会

経済理事会の決定に基づいて GAFTA実施計

画の対象外とすることが可能である。

GAFTAは過去失敗に終わった試みを復活さ

せたが,過去の障害がまだ根強く残っているこ

とが明らかになっている。従って,アラブ諸国

間の貿易は改善されていない。原因となってい

るいくつかの制約要因としては,一部の加盟国

が協定を遵守せず非関税障壁が根強く残ってい

ること,アラブ諸国の規制や法律が曖昧で時に

は矛盾するために原産地規則の定義が不明確に

なっていること,官僚主義と運輸インフラによ

り取引費用,特に運送費が高くなっていること,

そしてアラブ諸国間の差別や相補性の欠如が挙

げられる�。

従って,地域統合を推進するアラブ連盟の組

織能力が不十分であったこと,その数年間は地

域統合を阻んだ他の支配的要因があったことが

明らかである。経済統合の主な障害のひとつは,

植民地としての歴史と列強の地域内政への干渉

に起因する「植民地の弁証論的思考」である�。

その結果,加盟国はグローバル化と自由化のプ

ロセスについて,その大きな潜在的機会を認識

するどころか,脅威と見なす体質を身につけて

しまった。政治的対立,指導者層の関心の薄さ

やアラブ連盟等の組織的枠組みの脆弱さに加え

て,もうひとつの主な要因は,産油国と非産油

国の間の信頼の欠如である。地域統合の試みが

石油超過利潤の共有を望む非産油国によって先

導され,国家統制主義的な経済開発イデオロ

ギーが政治化された政府間関係�のみを基盤と

する地域経済統合のビジョンを生み出したため

に,膠着状態が続き,地域統合は失敗した。

しばしば主張される点として,西アジアの域

内貿易が低水準なのは要素賦存構造が似通って

いて製品の相補性が欠如しているからであり�,

地域レベルの自由化協定が多大な貿易を生み出

すことはないといわれる。代わりに,域内貿易

の低迷が貿易障壁の結果なのであれば,アラブ

諸国間の貿易の伸びが地域貿易協定を有する他

の開発途上地域と比べて遅いことは明らかなの

だから,自由化協定によって貿易が促進される

かもしれないと主張することもできる�。アラ

95 中東協力センターニュース2010・2/3

ブ諸国間貿易の今ひとつの重要な側面は,準地

域内の貿易,特に湾岸諸国間およびマグレブ諸

国間の貿易が比較的高水準だという点である�。

これはある意味では,地域経済統合は準地域レ

ベルで促進すべきであり,準地域での統合が地

域全体での経済統合への足掛かりになりうるこ

とを示唆している。

この信念に基づき,アラブ諸国は共同市場へ

の第一歩としてアラブ関税同盟の創設を計画し

ており,また2009年1月にクウェートで開催さ

れた経済サミットでは,電力網と鉄道網の建設

が承認された。アラブ関税同盟は2015年までに

正式に発足し,この同盟を布石として2020年ま

でにアラブ共同市場が設立される見通しであ

る�。両計画とも,アラブ諸国間貿易の拡大と,

アラブ諸国と貧しい加盟国の間の投資の復活を

目的としている。いくつか困難な点があるもの

の,経済の自由化に向けた変化を後押しし,ア

ラブ地域全体の成長と開発の過程により積極的

に参加できるという見通しを民間セクターに与

えるプロセスにおいて,GAFTAが重要なステ

ップになると考えられている。この動機に基づ

いて,経済サミット参加国は力を合わせて今後

の計画の準備を進めている。民間団体,具体的

には商工会議所や業界団体がサミットに関与し

ている。しかし,アラブ諸国は引き続き仲裁の

仕組みを稼働させ,競争のルールを定め,貿易

サービスを含める必要がある。

アラブ地域における準地域主義

湾岸協力会議

GAFTAを別にすれば,GCCはアラブ地域に

おける準地域統合の成功事例である。湾岸協力

会議(GCC)の結成にあたって経済は二次的な

動機だったが,その経済協定は加盟6ヵ国,す

なわちバーレーン,クウェート,カタール,オ

マーン,サウジアラビア,アラブ首長国連邦の

経済統合の土台を築いた。GCC経済協定は1981

年11月25日に署名され,翌1982年全加盟国によ

り批准された。加盟国間の組織的かつ構造的な

協力は,GCC諸国の財務および経済担当大臣に

より構成される金融経済協力委員会が体現して

いる。

新経済協定には元の経済協定の包括的な改訂

が盛り込まれ,加盟国間の経済関係の基盤が築

かれると共に,GCC自由貿易圏が創設された。

新経済協定は1981年協定が達成した目標をさら

に推し進め,加盟国間の経済関係を強化すると

共に,経済政策,財政政策と金融政策,商法お

よび産業関連法,そして関税規則の調和化を図

るものである。この協定は,GCC諸国の自由貿

易圏を関税同盟に進化させることに貢献した。

自由貿易圏は1983年3月に設定され,約20年間

継続した後,2002年末までに GCC諸国の関税

同盟に取って代わられた。FTAは,輸出国の所

管当局による原産地証明の提出を条件として,

工業製品,農業製品,天然資源の免税を可能に

した。FTAではこの他にも重要な自由化措置が

取られた。例えば,GCC諸国で輸出入が行われ

る域内産品については,現地エージェントを通

じることなく,また原産地証明以外の手続きな

しに通関できること,原産地に疑義ありとして

域内産品に課された関税または保険料について

は,原産地が証明されれば製品所有者に払い戻

されること,GCC諸国の国境税関における旅行

者の携行品については遅滞なく通関手続きを行

って完了させること,そして GCC諸国の国境

税関における輸出者の原産地申告書の作成など

である。

GCC加盟国の首脳は2002年12月にドーハで

会合し,関税同盟の設立協定を採択した。この

協定の発効は2005年3月に予定されていたが,

実際には2003年1月1日に発効した。関税同盟

の主な原則は以下の通りである。全ての GCC

加盟国において税関規則,そして輸入・輸出・

再輸出手続きを統一する。通関ポイントを単一

96 中東協力センターニュース2010・2/3

にする,すなわち外部から見て GCC諸国の最

初の税関(空港または港)が全加盟国に輸入さ

れる物品を検査し,必要な書類が揃っているこ

とを点検し,禁止品が含まれていないことを確

認し,適用される関税を徴収して通関手続きが

完了したら,その後当該物品は自由に移動でき

る。GCC諸国の税関当局は全て,通関および統

計に関して統一された申告書(または文書)を

利用すべく努力する。統一された制度(GCC

諸国共通関税表)に従って製品を分類し規則を

執行するため,申告書(文書)を統一する。域

外から輸入される外国製品の共通関税率は5%

とし,当該品が到着する GCC諸国最初の通関

手続き地で適用される。食品,医薬品,医療器

具,書籍,新聞,雑誌,民用船および民用飛行

機,獣肉,木材,冷蔵品などの国民が必要とす

る多数の基本的物品,およびWTOの枠内で免

税を公約した GCCの一部諸国が免税品に指定

する全ての物品,GCC統一税関規則に規定され

る免税品(外交関連,個人の身の回り品,慈善

団体の必要品)の免税,および GCC諸国の通関

手続きの免除(生産に含まれる必要品)。免税と

なるのは上記品目および加盟国が全会一致で合

意した品目のみとする。タバコおよびタバコ製

品には最大100%の強制関税を課し,特定関税率

の最高率を適用する(数,重量と傾向を考慮)。

そして,関税の共通徴収と関税収入の加盟国間

での配分につき,相補的な規則を制定すること

の重要性である。

域内産品かどうかを判断するため,関税同盟

はまた原産地規則を制定した。同規則によれば,

物品は完全に域内で生産されるか,実質的に域

内で加工されたもの(域内付加価値が製品価値

の40%以上)でなければならない。輸入品の通

関手続きには原産地証明が必要であり,証明書

は輸出国の所管当局が提出し,認可機関の証明

を受けたものでなくてはならない。GCCはま

た,専門的サービス,企業向けサービス,電気

通信,銀行サービスや他の金融サービス,流通,

教育,環境関連サービス,保健サービスと関連

する社会的サービス,観光に属する100の小部門

について,サービス貿易を自由化した。加盟国

はその他のサービス部門および小部門を漸次自

由化していくことに合意した。

さらに,マスカットで開催された第22回サミ

ットでは,6ヵ国の中央銀行総裁を集めた委員

会に対し,「2010年1月1日までの単一通貨創設

を目的として,2002年末までにドルを基準通貨

として6ヵ国の通貨を指数化する」作業を委託

した。最終コミュニケによれば,「新合意は,国

際経済の舞台で起きた最近の出来事と調和する

ものである」。これは具体的には,GCC加盟国の

うち5ヵ国が加盟した世界貿易機関(WTO)の

要求を指す。アラブ首長国連邦で2005年12月に

開催され「ファハド王サミット」と呼ばれた第

26回 GCCサミットでは,加盟国は GCC諸国の

貿易政策の調和化を目的とする「共通貿易政策」

と題するロードマップを採択した。また,GCC

域内の人,財,サービスの移動を容易にする共

通国内政策を採択した。このサミットではまた,

GCC関税同盟の機能と,同盟が GCC諸国の対

OIC諸国貿易および商品貿易にもたらすプラス

効果が評価された。また,関税同盟の移行期間

を2007年末まで延長することも決定された。

2007年12月3日から4日にかけてドーハで開催

された第28回 GCCサミットでは,加盟国は

2010年の GCC通貨統一を予定通り進めるとの

決意を確認し,2008年1月1日から GCC共同

市場を発足させることを宣言した。共同市場で

は交渉条件がさらに自由化され,そのプロセス

をWTOに準拠させるために,資本と労働の移

動の自由化が盛り込まれた。

現在,GCCは世界的な貿易ブロックになりつ

つある。GCCの製品貿易総額の2004年から2008

年までの年間増加率は27.3%近くに達した。

GCC加盟国間貿易は依然低水準で,2008年の輸

97 中東協力センターニュース2010・2/3

出額は466億ドルだったが,過去4年間すなわち

2004~2008年には増加し,その年間増加率は

32.4%となった。2008年の GCC加盟国間の貿

易額は同地域の貿易総額の5.1%を占め,輸入の

比率は8.2%,輸出は7.8%だった。石油を除外

すると,同年の GCC加盟国間貿易のシェアは

若干増え,貿易総額の9%となる(輸入は15%,

輸出は26%)。2008年,UAEの域内貿易の55%は

サウジアラビア,オマーンおよびカタールに対

するもので,それぞれの比率は27.3%,16.2%,

11.5%だった。サウジアラビアについては域内

貿易の40%近くがバーレーンおよび UAEに対

するもので,それぞれの比率は23%,18%だっ

た。カタールでは域内貿易のほぼ83%が UAE,

サウジアラビアとバーレーンに対するものだっ

た(比率は44%,35%,2%)。オマーンについ

ては域内貿易の86%が UAE,サウジアラビアと

バーレーンに対するもので,比率はそれぞれ

70%,11%,5%。クウェートでは域内貿易の

50%近くがサウジアラビアと UAEに対するも

ので,比率はそれぞれ31%,19%。バーレーン

については域内貿易の83%がサウジアラビア,

UAEとオマーンに対するものであった(比率は

それぞれ64%,14%,5%)。

GCCの統合は少しずつ成熟しているが,数多

くの障壁が残っている。GCCは加盟国の輸出市

場としての重要性が高い。税関手続きや標準化

の基準の違いが存在する。域内の交通網が貿易

向きにできていないため,運送費は依然として

高い。さらに,GCCが完全な関税同盟として機

能するためには,まだ克服しなければならない

非関税障壁がいくつか残っているし,生産パ

ターンや輸出品目構成の調和化もまだ行われて

いない。

アガディール協定

準地域組織である GCCに加え,GAFTAの発

展を追求し,アラブ共通市場の創設努力に貢献

する多国間貿易協定が最近もうひとつ浮上して

きた。2004年にヨルダン,エジプト,チュニジ

ア,モロッコが署名したアガディール協定であ

る。この協定は2007年3月に発効した。GAFTA

と異なり,アガディール協定では EUの原産地

規則が適用され,アラブ諸国間の統合だけでな

く,外国(欧州)の投資をさらに誘致するため,

EU・地中海プロセスの下で,加盟国と EUとの

統合を推進することも目的としている。GAFTA

と同様,アガディール協定もいくつかの困難に

直面しており,その主なものは,米国が反対す

る EUの原産地規則の適用である。また,他の

FTAのパートナー国とも摩擦が起きている。特

に,米国とモロッコの FTAに関連して,モロッ

コが特定農産物を,当該農産物の純輸出国では

ない第三国から輸入する際に関税の引き下げを

拒否したことが挙げられる。この結果,農産物

をモロッコに無関税で販売することを考えてい

たアラブ諸国の貿易が阻害されると予想され

る。2008年11月,アガディール協定の加盟国は

繊維製品の貿易に関する議定書に署名した。全

体的に,企業トップおよび政治家の視点から見

たこの合意の影響は,期待を下回っている。

アラブ諸国の二国間協定

世界貿易機関や他の FTAへの参加に加えて,

アラブ諸国(特にエジプト,ヨルダン,モロッ

コ,チュニジア,パレスチナおよび GCC加盟

国)は過去10年間に,域内の二国間貿易ネット

ワークを発展させてきた。アガディール協定に

加盟しているアラブ諸国(エジプト,モロッコ,

チュニジア,ヨルダン)は,域内における二国

間貿易協定の急増の主な原動力とみなされてい

る。ヨルダンは1998年にチュニジア,シリア,

レバノン,エジプト,UAE,バーレーン,クウ

ェート,スーダン,パレスチナとの FTAに署名

したほか,リビア,アルジェリア,イエメンと

も貿易・協力協定を交わしている�。イラクと

98 中東協力センターニュース2010・2/3

の貿易協定も交渉中である。エジプトはレバノ

ン,シリア,モロッコ,チュニジア,リビア,

ヨルダン,イラクと FTAを交わしている。チュ

ニジアはアルジェリア,エジプト,リビア,ヨ

ルダン,モロッコ,シリア,モーリタニアと協

定を交わしている�。モロッコは UAEおよび

エジプトと FTAを締結しているほか,モーリタ

ニアとの協定を交渉している�。GCCはシンガ

ポールや EFTA4ヵ国(ノルウェー,スイス,ア

イスランド,リヒテンシュタイン)との協定を

含め,いくつかの自由貿易協定の署名に成功し

ている。欧州連合を含む他の国と交渉が行われ

ている。欧州連合との交渉は7年前に再開され

たが,まだ決着を見ていない。

このように,アラブ地域においては資源に乏

しい小国が地域統合を推進している。低い水準

から始まった域内貿易は大幅に増加する可能性

を秘めており,地域経済統合を強化する必要が

増している。従って,資源の豊富な諸国は適切

なアプローチを見定める必要がある。また,ア

ラブ地域においては政治的意思が引き続き地域

全体の経済統合に対する障害として働いてい

る。アラブ地域における汎地域主義は依然弱い

が,GCCのように成功している準地域レベルの

協力枠組みも存在しており,それが地域全体の

統合に向けた基礎になるかもしれない。さらに,

域内国と域内外の国との間で数多くの二国間自

由貿易協定や複数国間貿易協定が締結されてい

ることを踏まえれば,アラブ地域主義は流動的

な状態にあり,より広いレベルでの地域の複雑

性を示しているといえる。

展 望

最近,個々のアラブ諸国の相対的な経済力に

歴史的な変化が漸進的に生じている。過去には,

アラブ地域の政治的,文化的そして経済的な中

心は人口の多いレバント諸国とエジプトであっ

た。現在は,湾岸協力会議の加盟国がアラブ地

域の GDPの60%を占めている。その中でも,サ

ウジアラビアが GCCの GDPの60%を占める。

GCC諸国はさらに,域内の他の国々よりもグ

ローバル化のプロセスに深く統合されている。

相対的な力の変化は,今後数年のうちにさら

に重要な要因になるだろう。欧州連合の地中海

政策は,同連合とアラブ諸国の一部を含む地中

海パートナー諸国とのより緊密な経済統合地域

を創造することに基本的に失敗した。モロッコ

とチュニジアは例外と言えるかもしれないが,

欧州市場へのアクセスは,地域の経済開発にと

って限られた利益しかもたらしていない。モロ

ッコのケースでさえ,ヨルダンと同様,米国と

の経済統合が欧州連合との統合と同じくらい重

要かつ活動的であることが判明している(実際

には米国との統合の方が重要である。モロッコ

の対米貿易額は2005年の9億7,000万ドルから

2007年には2倍以上に増えて20億ドルに,ヨル

ダンの対米貿易額は同じ期間に6億4,400万ド

ルから3倍以上に増えて22億ドルとなった)。

しかし,湾岸諸国の急速な工業化が続くにつ

れて状況が変わるかもしれない。GCC加盟国の

経済の多様化がさらに進めば,域内の経済関係

を拡大する重要な機会がもたらされるかもしれ

ない。GCC諸国は全世界からの輸入に対して広

く開放的であり続けるだろうが,近隣アラブ諸

国も GCCの成功から利益を得られるようにな

るだろう。

GCCは域内の活発な心臓部になりつつあり,

その貿易の今後の進展が地域全体の特徴を決定

することになろう。当初,GCC諸国はWTO

に加盟し参画していくことをためらっていた

が,その段階は過去のものとなった。GCC関税

同盟の実際的な運用には引き続き困難が伴い,

湾岸諸国は対外的に統一した姿勢を示すことが

困難だと感じているが,状況は着実に進歩して

いる。

GCC諸国は,炭化水素を他の物質に転換する

99 中東協力センターニュース2010・2/3

潜在力に基づき,また炭素の回収と貯留に関与

していくことによって比較優位を構築し強化す

ることができる。GCC諸国の利益は,原油だけ

を輸出するのではなく,主に湾岸で生産される

精製石油製品および石油化学製品について外国

市場へのアクセスを確保することにある。石油

派生物に特化することは比較的狭いと思われる

かもしれないが,石油製品には驚くほど多数の

用途があることを考えれば,そうではない。い

ずれにせよ,その資源賦存構造が非常に特異で

あるという単純な理由により,GCC諸国は輸出

貿易に高度に特化する状況が続くだろう。

分業のパターンを踏まえれば,GCCと他のア

ジア諸国との貿易は間違いなく今後数十年間に

拡大していく。ここでは相補性が極めて明白で

あり,保護主義的政策が取られたとしても,強

力な構造的トレンドを変えることはできないだ

ろう。さらに,アジア市場は急成長している一

方で,欧州市場はひいき目に見ても伸び悩んで

いる。従って,アジアは GCCの石油化学製品輸

出の急成長を可能にする最良の機会を提供して

いるといえる。

国際社会が実際に,気候変動の脅威と炭素排

出量の削減に真剣に取り組むことになれば,炭

素の回収と貯留も競争的分業の重要な源泉にな

るかもしれない。事実,GCC諸国は炭素回収貯

留に取り組むのに理想的な立場にあり,このこ

とが,エネルギー集約的な生産プロセスに相対

的に特化するパターンを支持するさらなる理由

になるかもしれない。

GCC諸国はアフリカとの貿易拡大にも熱心

である。その動機は,部分的には食料安全保障

に関する懸念であり,また今後数十年間にアフ

リカが非常に有望な成長機会を提供するという

認識である。GCCの産業界はその機会の活用を

望んでいる。

このことは,新興国は主に OECD主要国との

貿易拡大に関心があるとする通常のパターンと

は逆に,GCC諸国が,途上国同士が援助する

「南南協力」の貿易および投資関係において原動

力となる役割を果たし,今後も続けていくこと

を意味する。この文脈において,アラブ地域内

の経済関係にも拡大の機会が見出され,今日に

至るまでアラブ地域を特徴づけている極端なま

での外部志向性が弱まることになるだろう。

ハブ・アンド・スポークス型の国際経済関係

を助長するとしばしば非難されてきた貿易自由

化とグローバル化のプロセスは,従って,全く

異なる方向に進化していくかもしれない。

OECD諸国は危機に陥っており,その早急な解

決は期待できない。そのため,その経済はしば

らくの間伸び悩むか減退し,その後,インフレ

懸念と政府債務を抑制する必要に直面しつつ困

難な回復期を迎えるだろう。対照的に,GCC

諸国のアジアおよびアフリカとの積極的な交流

は,新しい開発の力学を生み出す可能性を秘め

ている。

従って,逆説的ではあるが,先進工業国が古

き良き保護主義的措置に訴える誘惑を受ける一

方で,アラブ地域は引き続き GCCのリーダー

シップの下で自由化の道を進むのではないかと

思われる。そうなればアラブ諸国間の貿易にも

大きな影響が出るだろう。

結 論

本稿では,既存の地域貿易協定,準地域貿易

協定および二国間貿易協定の精査を通じてアラ

ブ諸国間の貿易を論じた。アラブ連盟が加盟国

の経済統合を促進すべく行ってきた数々の努力

(その主なものは大アラブ自由貿易地域すなわ

ち GAFTAである)にもかかわらず,域内貿易は

依然伸び悩んでおり,アラブ諸国の貿易は引き

続き域外に向いていることが示された。本稿で

は従って,既存協定のそれぞれについて,世界

貿易の拡大に比して域内貿易の活力を妨げてき

た潜在的な制約要因を探った。

100 中東協力センターニュース2010・2/3

地域主義は地域全体のレベルでは強くない

が,GCCのような準地域レベルの統合は,加盟

国が互恵行為としての貿易自由化に対する実践

的なアプローチを見出せば,アラブ地域全体の

経済統合に向けた足掛かりになるかもしれな

い。加盟国は,非排他的な複数国間貿易協定を

調和化させ,こうした協定が,加盟国間のスムー

ズな貿易および投資の幅広い基盤を提供する汎

地域主義というより大きな目標を阻害しないよ

うにする必要がある。しかし,各国市場の技術

的障壁や非技術的障壁について情報の非対称が

多々存在するほか,政治的意思も欠けている。

さらに,地政学的環境が変化し地理経済学的背

景が収斂しつつあることから,アラブ地域内の

統合を進め,一団となってグローバル化の利益

を共有しリスクを管理していくためには,従来

の枠にとらわれない戦略が必要とされている。

重要な点として,GAFTAを活性化させる必

要があり,そのためには,より明確で個別加盟

国の実情に即した規則を制定し直すべきであ

る。GAFTA加盟国は仲裁の仕組みを稼働させ

ることによって競争を抑え,相補性を強調しな

ければならない。また,アラブ連盟の加盟国は,

協定上の義務に対する真剣なコミットメントを

示す必要がある。この点,最近終了した経済サ

ミットで注目されたアラブ諸国への経済改革の

呼びかけによって,今後5年以内の関税同盟の

創設が実に魅力的なものになった。関税同盟は,

アラブ世界を完全に統合された貿易システムに

取り込み,2020年までの創設が予定されるアラ

ブ共同市場への道を開くものと考えられてい

る。そうした統合を実現するには,アラブ域内

の改革プログラムに対して多大な技術支援と財

政支援が必要である。従って,最初の一歩はす

でに踏み出されたものの,進歩を早める必要が

あり,そのためには明確な政治的意思が必要で

ある。

(注)

*筆者はMs.Sana Khelfiの研究サポートに感謝を捧げ

たい。本稿に示される見解は,筆者のものである。通

常の免責事項が適用される。

� オブザーバー加盟国4ヵ国はエリトリア,

ブラジル,ベネズエラ,インドである。

� United Nation,Statistic Division2009

� IMF World Economic Outlook,2008 esti-

mates.

� Giacomo Luchiani,“Arab Region in Interna-

tional Trade”,unpublished Policy Paper,GRC,

October,2008.

� 貿易額の対 GDP比は,国の財および商業

サービスの貿易総額(輸出+輸入,国際収支

ベース)を GDPで割ったもので,入手可能な

直近3年間のデータに基づく。GDPは名目値

で,市場為替相場を用いて計算される。

� 詳細については,ESCWA,“Arab economic

integration efforts:A critical assessment”(E/

ESCWA/ED/1999/11)を参照.

� ESCWA,“Assessment of the trade policy

trends and implications for the economic per-

formance of the ESCWA region”(E/ESCWA/

EDGD?2009/1)

� MENAにおける初期の地域統合努力の歴

史の概要については,Zarrouk,The Greater

Arab Free Trade Area:Limits and Possibilities,

in:Hoekman/Zarrouk,Catching up with the

Competition:Trade Opportunities and Chal-

lenges for Arab Countries,2000,p.285を参照.

推定値は研究により異なるが,一般的に,

MENA域内貿易が同地域の貿易総額に占め

る比率は非常に低く,ほとんどの国で1桁に

留まっている。これは世界の諸地域の中で,

南アジアに次いで最も低い水準である

(World Bank,Middle East and North Africa Re-

gion,2008 Economic Developments and Pros-

pects:Regional Integration for Global Competi-

101 中東協力センターニュース2010・2/3

tiveness,2009,p.36)。

� Tomer Broude,(2009),“Regional Economic

Integration in the Middle East and North Af-

rica:A primer”,Research Paper No.12‐09,the

International Law Forum of The Hebrew Uni-

versity of Jerusalem

� 1999年における ACM加盟国は,エジプト,

イラク,ヨルダン,リビア,モーリタニア,

シリア,イエメンだった。

� アラブ連盟のウェブサイトに掲載されてい

る GAFTAの情報。入手先は http://www.

arableagueonline.org/ las/arabic/categoryList.

jsp?level_id=110

� 同上

� “The Great Arab Free Trade Area:Impact on

Arab Economies”,Agricultural Policy forum,

National Agricultural Policy Center,Syria,2003.

� Bezen Balamir Coskun,“Region and Region

Building in the Middle East:Problems and

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� Giacomo Luciani,(2005),“Oil and Political

Economy in the International Relations of the

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� 詳細についてはいくつかの研究を参照のこ

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� 産業貿易省のウェブサイトを参照のこと。

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(この報告は,競輪の補助金を受けて作成された

ものです)

103 中東協力センターニュース2010・2/3