JR北海道...

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2008 - 9「車両技術 236 号」 3 1.はじめに 老朽化の著しい 183 系特急形気動車の置換え用として、 283 系振子式特急形気動車よりコストパフォーマンスに優れ ている 261 系特急形気動車の 0 番代をベースに 1000 番代を 当社の苗穂工場で新製した。製作期間は 2005(平成 17)年 11 月から 2007(平成 19)年9月までの1年 10 箇月で、全 JR 北海道 261 系 1000 番代特急形気動車 ※仲 なか やま とおる 写真1 外観 要旨 北海道旅客鉄道株式会社(JR 北海道)では、十勝方面への特急列車として使用してきた 183 系特急形気動車の置換 え用として261 系 1000番代特急形気動車(以下、1000番代という。)を開発した。1000番代は、札幌~稚内間を運行 している「スーパー宗谷」で使用している261系0番代(以下、0番代という。)をベースに「スーパーとかち」仕様 として各種変更を行っている。製作にあたっては、構体及び台車を車両メーカの川崎重工業株式会社から購入し、床 上・床下ぎ装などを苗穂工場が中心となり JR 北海道グループ会社が一体となって施工する「ノックダウン方式」を採 用した。(編集部注:261系0番代車両は、本誌219号-2000年3月参照) ※ 北海道旅客鉄道㈱ 鉄道事業本部 運輸部 運用車両課 写真2 室内(グリーン車) 写真3 室内(普通車)

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  • 2008 - 9「車両技術236号」 3

    1.はじめに老朽化の著しい183系特急形気動車の置換え用として、

    283系振子式特急形気動車よりコストパフォーマンスに優れ

    ている261系特急形気動車の0番代をベースに1000番代を

    当社の苗穂工場で新製した。製作期間は2005(平成17)年

    11月から2007(平成19)年9月までの1年10箇月で、全

    JR北海道 261系1000番代特急形気動車

    ※仲なか

    山やま

    徹とおる

    写真1 外観

    要旨

    北海道旅客鉄道株式会社(JR北海道)では、十勝方面への特急列車として使用してきた183系特急形気動車の置換

    え用として261系1000番代特急形気動車(以下、1000番代という。)を開発した。1000番代は、札幌~稚内間を運行

    している「スーパー宗谷」で使用している261系0番代(以下、0番代という。)をベースに「スーパーとかち」仕様

    として各種変更を行っている。製作にあたっては、構体及び台車を車両メーカの川崎重工業株式会社から購入し、床

    上・床下ぎ装などを苗穂工場が中心となりJR北海道グループ会社が一体となって施工する「ノックダウン方式」を採

    用した。(編集部注:261系0番代車両は、本誌219号-2000年3月参照)

    ※ 北海道旅客鉄道㈱ 鉄道事業本部 運輸部 運用車両課

    写真2 室内(グリーン車) 写真3 室内(普通車)

  • JR北海道 261系1000番代特急形気動車4

    会社・車両形式�

    使用線区�

    基本編成�

    用途�

    車体製作会社�

    台車製作会社�

    機関駆動系製作会社

    個別の車種形式�

    車種記号(略号)�

    空車質量(t)�

    運転整備質量(t)�

    定員(人)�

    うち座席定員(人)�

    特記事項�

    北海道旅客鉄道㈱ 261系1000番代特急形気動車�

    函館本線・千歳線・石勝線・根室本線�

    5両�

    特急列車�

    ぎ装完成はJR北海道グループ会社�

    川崎重工業㈱�

    新潟原動機㈱・㈱日立ニコトランスミッション�

    構体製作は、川崎重工業㈱�

    空気ばね膨脹による車体傾斜システム採用�

    軌間(㎜)�

    許容軸重(kN)�

    動力方式�

    製造初年�

    1次製作両数�

    車両技術�

    1 067�

    -�

    分散�

    2006�

    13�

    236

    キロ261‐1100�

    Mcs�

    45.5 �

    45.5 �

    24�

    24

    キハ260‐1100�

    M1�

    43.2 �

    43.2 �

    50�

    50

    キハ260‐1300�

    M3�

    43.4 �

    43.4 �

    60�

    60

    キハ260‐1200�

    M2�

    43.4 �

    43.4 �

    60�

    60

    キハ261‐1200�

    Mc�

    44.8 �

    44.8 �

    56�

    56

    車両性能�

    駆動系主要設備�

    最高運転速度(㎞/h)�

    加速度(m/s2)�

    減速度�

    (m/s2)�

    基本編成当りの定格出力(kW)�

    定格速度(㎞/h)�

    基本編成当りの引張力(kN)�

    動力伝達方式�

    �ブレーキ制御方式��

    制御回路電圧(V)�

    こう配条件(‰)�

    抑速制御�

    車軸配置�

    運転保安装置�

    列車無線�

    非常時運転条件�

    130(設計最高:140)�

    0.61(2.2 ㎞/h/s)�

    0.69(2.5 ㎞/h/s)�

    1.61(5.8 ㎞/h/s)�

    3 380�

    -�

    210�

    変速1段、直結4段(全段自動切換)�

    電気指令式空気ブレーキ、

    排気ブレーキ、直通予備ブ

    レーキ、耐雪ブレーキ  

    (応荷重、滑走再粘着付)�

    DC100�

    25�

    -�

    2軸ボギー�

    ATS-SN�

    C形列車無線�

    機関10基中2基停止で25‰

    の上りこう(勾)配から起動

    可能�

    N-DMF13HZJ/1 485�

    338/台�

    2�

    N-DW16 A/約950�

    電気式(総括制御付)�

    1.86�

    1.431�

    1.093�

    0.887 �

    2.501�

    4.65~2.22�

    2�

    N-DM283G3/約175�

    25�

    2�

    回転電機子形�

    -�

    水冷�

    1 300�

    -�

    -�

    常用�

    非常�

    機関�

    液体�

    変速機�

    減速機減速比�

    全減速比�

    駆動軸数�

    補機駆動出力(kW)�

    油冷却方式�

    燃料タンク容量(㍑)�

    充電�

    発電機�

    形式/質量(㎏)�

    出力(kVA)�

    台数�

    励磁制御方式�

    形式/質量(㎏)�

    容量(kW)�

    主発電機�

    減速比�

    凡例  ●;駆動軸、○;付随軸�

    ←帯広� 札幌→�

    M3 M2M1Mcs Mc

    形式/質量(㎏)�

    出力(kW)�

    台数/両�

    形式/質量(㎏)�

    方式�

      直結1�

      直結2�

      直結3�

      直結4�

    表1 JR北海道 261系1000番代特急形気動車 車両諸元

  • 2008 - 9「車両技術236号」 5

    車体の構造・主要寸法�

    車体特性・構造及び主要設備�

    その他の主要設備�

    構体材料/構造�

    車両の前面形状�

    運転室 �

    長さ�

    (㎜)�

    連結面間�

    距離(㎜)�

    心皿間距離(㎜)�

    車体幅(㎜) �

    高さ�

    (㎜)�

    床面高さ(㎜)�

    ステンレス�

    貫通形�

    高運転台�

    21 200�

    20 800�

    21 670�

    21 300�

    14 400�

    2 812�

    3 970(先頭部)�

    3 982�

    1 150

    相当曲げ剛性(MN㎡)�

    相当ねじり剛性(MN㎡/rad)�

    曲げ固有振動数(Hz)�

    ねじり固有振動数(Hz)�

    内装材�

    側窓構造�

    妻引戸�

    �側扉�

    戸閉装置�

    �腰掛方式�

    車体連結�

    装置�

    空調換気�

    システム�

    車内主要�

    設備�

    -�

    -�

    -�

    -�

    アルミ化粧板、FRPなど�

    固定式ポリカ・ガラス複層ユニット�

    片引式�

    片引式 簡易気密式�

    2(先頭車)、1(中間車)�

    TK-107B�

    直動空気式�

    回転リクライニングシート�

    密着連結器・半永久連結器�

    密着連結器・半永久連結器�

    屋根上集中式�

    シーズ線式(座席取付)�

    強制換気�

    天井ダクト�

    直接照明・蛍光灯�

    車いすスペース、車いす対応便所�

    共用洋式、男子小便所�

    真空式�

    その他の主要設備(続き)�

    �補助電源�

    装置�

    蓄電池�

    �空調装置�

    暖房装置�

    �空気圧縮�

    機�

    空気タンク��

    前照灯�

    尾灯�

    標識灯�

    N-IV261A/613�

    4 kVA(AC100)、8 kW×2(DC100)�

    ベント形ポケット式アルカリ/315�

    40�

    N-AU201B/700�

    集中�

    30.2(26 000 kcal/h)�

    18�

    C1000H/115�

    760�

    -�

    150(第1)、80(第2)�

    245�

    HID、シールドビーム�

    LED

    台     車�

    �形式�

    支持装置�

    �けん引装置�

    ばね方式�

    軸距(㎜)�

    ばね�

    定数�

    (N/㎜)�

    台車最大長さ(㎜)�

    車輪径(㎜)�

    基礎ブレ�

    ーキ�

    ブレーキ倍率�

    �制輪子��

    ブレーキシリ�

    ンダ・個数�

    駆動方式及び駆動軸数�

    歯数比(減速比)�

    継手�

    軸受�

    質量�

    (㎏)�

    N-DT261A�

    -�

    ボルスタレス�

    軸はり式�

    一本リンク方式�

    空気ばね(まくら)、コイルばね(軸)�

    2 100�

    382�

    1 399�

    -�

    4 725(雪かき付)、3 890(その他)�

    810�

    踏面両抱き�

    -�

    10.76�

    合金鋳鉄制輪子�

    -�

    4�

    -�

    推進軸・1軸�

    2.501�

    -�

    密封複式円すいころ軸受�

    5 680(雪かきあり)、5 593(雪かきなし)�

    -�

    M台車�

    T台車�

    車体�

    軸箱�

    まくらばね�

    コイルばね�

    防振ゴム�

    M台車�

    T台車�

    M台車�

    T台車�

    M台車�

    T台車�

    M台車�

    T台車�

    ブレーキ�

    ブレーキチョッパ�

    ブレーキ抵抗器�

    ブレーキ装置�

    形式/質量(㎏)�

    形式/質量(㎏)�

    形式/質量(㎏)�

    -�

    -�

    N-C261A/99

    屋根高さ�

    屋根取付品上面�

    構造�

    片側数�

    形式/質量(㎏)�

    方式�

    先頭車�

    中間車�

    冷房方式�

    暖房方式�

    換気方式�

    配風方式�

    照明方式�

    移動制約者設備�

    便所�

    汚物処理�

    主幹制御器形式/質量(㎏)�

    速度計装置�

    車両情報制�

    御システム�

    非常通報装置�

    行先表示�

    器�

    車内案内表示�

    列車情報装置�

    �放送��

    車両間連�

    結�

    ワンハンドルマスコン/45�

    電気式速度計�

    N-IES261�

    TFTカラーLCD(640×480)�

    あり�

    あり(字幕)�

    あり(LED)�

    あり(LED)�

    -�

    あり�

    なし�

    NKE96、NKE100�

    連結器�

    モニタ装置�

    モニタ表示器�

    前面�

    側面�

    車内向け�

    車外向け�

    電気系�

    空気管系�

    軸ばね� 総合�

    形式/質量(㎏)�

    方式�

    容量�

    種類/質量(㎏)�

    容量(Ah)�

    形式/質量(㎏)�

    方式�

    容量(kW)�

    容量(kW)�

    形式/質量(㎏)�

    圧縮機容量(㍑/min)�

    電動機方式�

    元空気タンク(㍑)�

    供給空気タンク(㍑)�

    先頭車�

    中間車�

    先頭車�

    中間車�

  • JR北海道 261系1000番代特急形気動車6

    図1 編成図

  • 2008 - 9「車両技術236号」 7

    図2-1 形式図(Mcs)

    図2-2 形式図(M1)

    図2-3 形式図(M2)

  • 13両の新製を行った。

    新製の方法は、構体及び台車を車両メーカの川崎重工業

    ㈱から購入し、床上・床下ぎ装などを苗穂工場が中心とな

    りJR北海道グループ会社が一体となって施工する「ノック

    ダウン方式」とした。

    製作両数は、次のとおりである。

    キロ261-1100番代(Mcs):2両

    キハ260-1100番代(M1) :2両

    キハ260-1200番代(M2) :2両

    キハ260-1300番代(M3) :5両

    キハ261-1200番代(Mc) :2両

    2.編  成今回新製した車両は、2007(平成19)年10月1日のダイ

    ヤ改正から「スーパーとかち」として使用しており、基本

    編成は帯広方からMcs・M1・M3・M2・Mcの5両編成

    である。

    Mcs車とM1車、及びM2車とMc車をそれぞれ2両固定

    ユニットとしている。ユニット毎の管理を行うため、ユニ

    ット名を「ST」(Super Tokachi)としており、「ST-1101」

    のように、車両番号と組合わせてユニット名としている。

    (0番代の方は『SE』)

    2000(平成12)年3月から営業運転をしている「スーパ

    ー宗谷」の261系0番代は、4両編成(Mcs・M2・M1・

    Mc)であり、1000番代とはM1車とM2車の位置が異なる

    編成としている。また増結方法は、0番代では先頭部に増

    結する構造であるが、1000番代では中間車であるM3車を

    組入れることによって、最大10両編成とすることができる。

    3.車  体車体は、軽量ステンレス鋼で先頭部のみ鋼製としており、

    先頭形状、構体などは、789系0番代特急形交流電車をベー

    スとした高運転台構造であるため、0番代とは先頭部の印

    象が異なる。しかし、車体断面は0番代と同様に3°まで

    JR北海道 261系1000番代特急形気動車8

    図2-4 形式図(M3)

    図2-5 形式図(Mc)

  • 2008 - 9「車両技術236号」 9

    図3 車体断面

  • JR北海道 261系1000番代特急形気動車10

    図4 運転室機器配置

    写真4 運転台

  • 2008 - 9「車両技術236号」 11

    図5-2 床下機器配置(M2)

    図5-1 床下機器配置(Mc)

  • JR北海道 261系1000番代特急形気動車12

    車体傾斜できるように設計している。先頭車(Mc・Mcs)

    の全長は0番代より200 ㎜長くし、車体高さは、全車30 ㎜

    低くしている。また、スカート形状は、0番代と同様の排

    雪機能向上形としている。

    側引戸は、冬期間の開閉不良対策として0番代及び789系

    で使用している押付シリンダ式高気密側引戸を採用した。

    側引戸の有効開口幅は、Mc、Mcsの先頭側が700 ㎜、それ

    以外は900 ㎜としている。

    連結部ほろは、0番代の先頭部では自動ほろを設置して

    いるが、1000番代の先頭部は、アダプタ付きの通常のほろ

    を設置する準備工事を行っており、現在、ほろは設置して

    いない。中間連結部は、789系と共通化を図るため、耐久性

    の向上と冬期間の着雪防止を図ったゴム製の一体成形ほろ

    を採用した。

    各車両間には、ホームから車両の間に転落することを防

    止するためのゴム製転落防止ほろを設置している。

    車体外板の仕上げは、261系0番代のヘアライン仕上げか

    ら789系0番代と同じダルフィニッシュ(つや消し仕上げ)

    に変更している。

    4.客  室天井パネルは、0番代で使用していたFRP製が新火災対

    策に適合しないため、耐燃焼性及び耐溶融滴下性能の基準

    を満たしている新しい仕様のFRP製に変更した。また、小

    天井パネルも新火災対策に適合したメラミン化粧板に変更

    している。

    荷棚は、0番代を基本としているが溶融滴下対策のため、

    忘れ物防止用の「のぞき部」の透明アクリル板を廃止し、

    照明カバーとデザインを統一したアルミ板打抜き材を使用

    している。

    客室側窓は、今回、新たに開発した4㎜の強化ガラスと

    8㎜のポリカーボネートを11 ㎜の空気層を介してユニット

    化した構造(PC8A11TP4)であり、0番代の複層強化ガラ

    ス外側にポリカーボネート板を取付ける構造とは異なって

    いる。その他、側引戸、先頭車の貫通開戸、簡易運転台の

    窓にはポリカーボネートの単板を使用した。

    客室仕切戸はすべて自動ドアにしており、789系と同様の

    制御機一体形を採用して作業性の向上を図った。

    車側表示装置は、字幕式からLED方式に変更することに

    よって側引戸横の号車札を使用しないようにした。

    愛称名表示器は、0番代のEL板方式から789系の字幕方

    式に変更した。

    5.各車の特徴5.1 Mcs車

    「スーパー宗谷」の0番代ではグリーン席を9名、普通

    席を28名としていたが、1000番代では全席グリーン(定員

    24名)としている。

    腰掛は、0番代と同様に青の革張りのシートを採用し、

    2人掛けと1人掛けの3列とした。ヘッドレストは、可動

    式でお客様の使いやすい位置に合わせていただける仕様で

    ある。フットレストは、カーペット地と革地とひっくり返

    すことによってどちらも使え、靴を履いたままでも脱いで

    でもご利用していただける。ひじ掛部にはノートパソコン

    図6 動力特性

  • 2008 - 9「車両技術236号」 13

    などを置けるインアームテーブルを収納している。

    荷棚には読書灯を設置している。また、各側窓下の腰板

    部に電源コンセントを配置して、パソコンなどが使用でき

    るようにしている。

    後位出入台と客室との間に設置している車販準備室は、

    0番代のシャッタ付カウンタ方式ではなく、室内設備を含

    めて789系0番代と同様の個室構造としている。

    車販準備室の向かい側には、業務用室と多目的室を設け

    ている。多目的室は789系0番代と同様の構造としており、

    折りたたみ式ベッドなどを設置してサービス向上を図って

    いる。この室内には、非常通報スイッチ、車内用の車いす

    も設置している。

    車販準備室の隣には、上部にリネン庫、下部に荷物置場

    を設置している。

    前位出入台には、789系、283系と同様に車掌業務ができ

    るように車掌スイッチ、ブザー、非常引きスイッチなどを

    配置した車掌台を設けている。そのため、前位側引戸の引

    き方向が0番代と反対勝手になっている。

    5.2 M1車

    M1車には、車掌室、業務用室を設置している。0番代の

    車掌室には、運転所などの構内での入換えなどに使用する

    ことができる簡易運転台を設置していたが、1000番代では

    準備工事のみとしている。また、0番代では車掌室の向か

    い側はオープン車掌台としていたが、業務用室を新設して

    自動販売機設置スペースを廃止した。

    客室は、移動制約者用1人掛腰掛を0番代より1席増加

    して2席としたため、定員が51名から50名になった。

    出入台部には、便所の向かいに車いすが置けるスペース

    を確保している。

    便所は、下部はFRPユニット構造で上部はパネル構造

    の車いす対応の大形便所としており、789系0番代と同じ構

    造の真空式コンパクト便所とした。また、0番代には設置

    していない男子便所を新設した。これは789系0番代と同じ

    FRPユニットである。

    5.3 M2車

    M2車には電話室を設置しているが、0番代にある電話室

    内の簡易運転台は設置せず、M1車と同様に準備工事として

    いる。

    便所は、789系0番代と同じFRPユニット構造の共用便

    所を設置している。また男子便所は、M1車と同じFRPユ

    ニットとしている。

    洗面所は廃止し、そのスペースを男子便所として、0番

    代と同じ60名の定員を確保している。

    5.4 M3車

    M3車は0番代にはない車種であるが、M2車をベースに

    設計しており、定員はM2車と同じ60名としている。

    M2車との違いは、電話室を荷物置場にしたことのみであ

    る。

    便所関係は、M2車と同様に設置しているが、貫通路部の

    段差をなくすスロープを付けているため、設置位置を少し

    客室側に寄せている。

    車両の増結にはM3車を中間に組入れていく方式のため、

    連結装置を前後ともに密着式自動連結器にして、分割・併

    合をし易くしている。また、後位側の排気管の立上がり位

    置を、妻の外側ではなく、機器室内としている。

    5.5 Mc車

    Mc車には、Mcs車と同様に前位出入台に車掌台を設置し

    ている。

    定員は、0番代と同じ56名としている。

    6.台  車台車は、0番代と同じ空気ばね膨張による車体傾斜制御

    付き軸はり式軽量ボルスタレス方式である。しかし、0番

    代との違いは、全台車が動台車であることと、車軸ジャー

    ナル部の直径をφ110 ㎜からφ120 ㎜に変更し、設計最高

    速度を140 ㎞/hとしていることである。

    7.車両性能力行性能は、乗車率150 %時の起動加速度(0→60 ㎞/h)

    を0.61 m/s2(2.2 ㎞/h/s)としており、設計最高速度は140

    ㎞/h、営業最高運転速度は130 ㎞/hである。

    曲線通過速度は、車体傾斜制御時で300 m≦R<400

    m:本則+15 ㎞/h、400 m≦R<600 m:本則+20 ㎞/h、

    600 m≦R:本則+25 ㎞/hとしている。

    8.駆動装置駆動装置は、0番代ではM1車のみエンジンを1台として

    いたが、性能向上を図るため、今回は、M1車もエンジンを

    2台搭載した。それによって、エンジンは全車2台搭載と

    なった。

    エンジンは、排気ガス低減対策のため燃焼室の形状など

    を変更し、燃焼効率を改善しており、型式をN-DMF13HZH

    からN-DMF13HZJに変更している。エンジン出力は、338

    kW(460 PS)/2 100 min-1であり、0番代と同一である。

    また、0番代と同様に電車との併結運転を考慮した設計と

    しているため、制御電圧がDC100 Vとなっており、メンテ

    ナンスを軽減するためにエンジンのスタータはエアスター

    タとしている。

    補機駆動装置は、0番代のキハ261-104,キハ260-104の

    2両に搭載している定速回転装置(CSU: Constant

    Speed Unit)を全車2台搭載し、発電機出力軸の回転数を

    一定(1 800 min-1)に保つことにより安定した電源を確

    保し、サービスの向上を図っている。

    9.空調装置空調装置は、屋根上集中式で冷媒を新冷媒(R-407C)に

    変更し、環境にやさしい空調装置としている。ただし、大

    きさ、取付位置などを0番代と共通化したため、冷房能力

    は0番代と比べると若干低下(30 000 kcal/h→ 26 000

    kcal/h)している。

    空調制御は、冷房、暖房、換気、除湿の運転をオールシ

    ーズン自動制御することができるシステムにしている。レ

    ールヒータや各機器箱ヒータも外気温度によって自動制御

    する方式としている。また、トンネル走行時の耳つん防止

    のため、トンネル検知によって新鮮外気ダンパの開閉を自

    動で行うようにしている。

    なお、設定温度などの空調に関する操作は、運転室及び

    車掌室のモニタ画面で行うことができる。

  • JR北海道 261系1000番代特急形気動車14

    図7 動台車

  • 2008 - 9「車両技術236号」 15

    10.車体傾斜制御システム車体傾斜制御は、0番代と同じくジャイロ及び加速度計

    によって曲線を検知して車体を2°まで傾斜させるもので

    あり、振子式車両には及ばないが、低コストで曲線通過速

    度向上を図っている。

    なお、車体傾斜制御装置は0番代からモデルチェンジし

    ており、LV装置も改良している。

    11.モニタ装置各車両の機器動作状態を常時監視しており、異常時には

    画面に故障項目を表示するとともに、表示内容を自動で記

    録する。また、駆動装置、ブレーキ、空調、車体傾斜、側

    面表示器、愛称名表示器、車内表示器、自動放送などの状

    態監視及び操作を行うことができる。

    12.デザイン12.1 インテリアデザイン

    DSB(デンマーク鉄道)との共同デザインワークによる

    0番代のインテリアデザインを踏襲している。普通車の床

    敷物は0番代と同様にダイヤゴナルパターン(菱形模様)

    である。シート生地の色は、0番代が青(Mc)、緑(M1)、

    赤(M2)の3色に対して、1000番代は青(Mc,M3)と緑

    (M1,M2)の2色とした。

    グリーン席は、シートが0番代と同様に青の牛革製であ

    るが、床のじゅうたんは789系0番代と同じウール100 %の

    ロール式じゅうたんとしている。

    内妻仕切壁は、0番代と同様に天然木のつき(突)板を

    アルミ板に貼った化粧板を用いている。

    12.2 エクステリアデザイン

    0番代と同様に青のブロック塗りとしているが、エゾカ

    ンゾウをイメージしたイエロー部分を、エゾスカシユリを

    イメージしたオレンジ色に変更している。また、ロゴマー

    クも同様にイエロー部をオレンジに変更している。

    13.おわりに2009(平成21)年度を目途に、札幌~帯広間の「とかち」

    をすべて「スーパーとかち」にするため、261系1000番代

    を8両新製する計画をしている。次回の新製も、今回と同

    様に苗穂工場で製作する予定であり、引き続きグループ会

    社と一体になって技術継承及び技術力の維持・向上を図っ

    ていくことによって、安全で快適な車両をお客様に提供し

    ていく所存である。

    最後に今回の車両開発にあたり、多数の関係者にお世話

    になったことをこの場を借りて感謝申し上げる。