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富田英司[email protected]

日本教育心理学会第52回総会2010年8月28日(土)

9:30-12:00

本研究は日本学術振興会による平成22年度科学研究費補助金「独創的で論理的なアカデミックライティングのための協調学習環境」(代表:鈴木宏昭,青山学院大学)の支援を受けて行われた。

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研究の背景• 作文評価の観点

– アーギュメントの構造への着目(鈴木他2007,Nussbaum & Kardash,

2005)

• アーギュメント構造の評価

– 要素の有無の判別が主流

– 評価の信頼性の確立が課題

• 自然言語解析によるアプローチ

– KWIC(Key Word In Context):”because”, “reason”

– 富田英司 (2010) 教育工学論文誌 ショートレター特集• 反論を想定するために使われる言いまわしを指標に

例)「~という主張もあるが,しかし」「確かに~,しかし」

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目 的

• 富田(2010)の提案する方法によって,作文のアーギュメント構成力を評価する

– 初歩的な講義によってどの程度のパフォーマンスの変化が見られるのか

– 反論を想定するために,どのような種類の表現がより使われるようになるのか

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方法①:参加者:

私立4年制大学の法学部・商学部の学生248名

(男111名,女137名)

そのうち,215名が全ての課題に回答

授業概要:

・思考に関する講義の一部として,アーギュメント研究を紹介

・アーギュメントの組み立て方についての講義

(Toulminのアーギュメント・スキーマ)

・マイサイドバイアスについての講義

・主張に理由や根拠をつける練習

・反論を想定する練習

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方法②:課題の手続き• プレテスト

– 用紙に記入。授業中に隣と相談せずに回答。20分間。

– 問1:「あなたは喫煙することについて一般的に賛成ですか反対ですか。あなたの立場を書いてから,なぜそう考えるか書いてください。その際,あなたと考えが異なる人を納得させるつもりで,あなたなりに説得力のある説明をしてください」

– 問2:上記と同様で,テーマを死刑制度の是非とした

• アーギュメントについての講義

• ポストテスト– 学期末テストの一部として実施

– 作文1:喫煙課題

– 作文2:自販機課題

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事例A(作文1:喫煙課題)

私は喫煙することに賛成です。確かに喫煙することで副流煙によって喫煙していない周りの人の健康を害してしまう恐れがあります。しかし、それは分煙を徹底することで未然に防ぐことができます。喫煙することは喫煙者本人の健康をも害していますが、それよりも本人には拭いきれない不安や怒り解消できないストレスを喫煙することで軽減させることが可能になります。身体に負担が少し生じてしまったとしても精神面での負担を軽くすることの方が私には大切に思われるから喫煙に賛成です。

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私は喫煙することに反対です。なぜなら,喫煙が体に害を与えることはずっと言われていることだし,それによって病気になって寿命を縮めることに全く利点を観じないからです。さらに,喫煙する本人に影響を及ぼすだけでなく,周りの人がその煙を吸ってしまう受動喫煙による被害は,本人以外の全く関係のない人に害を与えることにもなり,本人だけの問題では済みません。だから,私は喫煙することに反対です。

事例B(作文1:喫煙課題)

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分 析

1. テキスト情報への書き起こし

2. クリーニング

3. KH Coder(樋口, 2009)を用いたコーディング(http://khc.sourceforge.net/)

4. 談話パターンの出現傾向の比較

– 分散分析

– T検定

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KH Coderによるコード例:「かもしれない」+逆接

*a

seq(かも-しれる-が)[75]

*b

( <*a> & が(助詞-接続助詞) ) | seq(かも-しれる-しかし)[75] | seq(かも-しれる-けれど)[75] | seq(かも-しれる-けれども)[75] | seq(かも-しれる-しかしながら)[75]

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表1 各課題における各種「命題+逆接パターン」の頻度

プレ作文 ポスト作文

喫煙課題 死刑課題 喫煙課題 自販機課題

反論+逆接 0% 0% 3% 3%批判+逆接 0% 0% 0% 0%問題+逆接 8% 5% 10% 11%

できる+逆接 8% 9% 12% 19%確か+逆接 10% 8% 22% 24%かもしれ+逆接 11% 10% 26% 19%意見+逆接 1% 3% 10% 16%人+逆接 27% 18% 35% 16%考え+逆接 0% 0% 2% 22%主張+逆接 2% 0% 0% 0%考えられる+逆接 2% 1% 3% 4%思う+逆接 29% 31% 22% 30%発言する+逆接 0% 0% 0% 0%出現無し 37% 41% 23% 24%

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表2 「命題+逆接パターン」出現頻度の変化:種別にt検定

喫煙課題 プレ作文 ポスト作文t p

平均 SD 平均 SD

反論+逆接 0.00 0.06 0.03 0.17 -2.137 .034

問題+逆接 0.07 0.26 0.09 0.29 -.845 .399

できる+逆接 0.07 0.25 0.11 0.32 -1.725 .086

確か+逆接 0.09 0.28 0.21 0.41 -4.245 .000

かもしれ+逆接 0.10 0.31 0.25 0.43 -4.535 .000

意見+逆接 0.01 0.09 0.09 0.29 -4.549 .000

人+逆接 0.25 0.43 0.34 0.47 -2.308 .022

考えられる+逆接 0.02 0.14 0.03 0.18 -.904 .367

思う+逆接 0.26 0.44 0.21 0.41 1.379 .169

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「命題+逆接パターン」全体の出現頻度:1要因4水準分散分析(反復測定)

0.94 0.88

1.411.62

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

プレ:喫煙課題 プレ:死刑課題 ポスト:喫煙課題 ポスト:自販機課題

****

****

F = 20.07, df = 3, p < .0001

N = 215

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まとめ

• 「命題+逆接パターン」の出現傾向は,授業を経て有意に増加。

• この増加は課題の反復によるものとは言えない。

• 講義によるアーギュメント構成力の向上を今後検討する際の比較対象としても役立つ

• 限界:

– プレとポストで,参加者がおかれた状況が異なる

– 教員等によるマニュアル評価との比較による信頼性の検討

– 本手法はグループ全体の教育効果を検討するもの