IoTを活用した スマート漁業への取り組み - Institute...

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IoTを活用した スマート漁業への取り組み 2018/09/13 (株)KDDI総合研究所 井戸上 彰、南 雄也、今成 浩巳、宇都宮 栄二 1

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IoTを活用したスマート漁業への取り組み

2018/09/13(株)KDDI総合研究所

井戸上 彰、南 雄也、今成 浩巳、宇都宮 栄二

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発表内容

◆ 研究の背景

◆ 取り組みの概要(SCOPE)

◆ 従来型スマートブイの特徴・課題

◆ 新型スマートブイの開発

◆ フィールド・トライアル

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1次産業へのIoTの活用

◆ 課題⚫ 高齢化・後継者不足⚫ 作業の効率化、技術(経験)の伝承

◆ 農業⚫ 比較的多くの事例あり➢ 温室、水田などにセンサー設置

◆ 漁業⚫ 養殖漁業のIoT➢ 報告例 - NTTドコモ(ICTブイ)など

⚫ 定置網: 本研究の対象➢ 自然環境に左右➢ 天然の魚が自然に入るのを待つむずかしさ➢ 漁師の経験・勘に頼る部分が大きい

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沿岸漁業の課題

シケの翌日には

魚が多く獲れる

水(海)の色をみれば

どんな魚がいるかわかる

天候や潮流の変化を捕らえる

日中の海面/海中の変化を捕らえる

例:水温、塩分濃度、酸素濃度など

今まで:漁師の経験と勘 これから:IoT(センサー)の活用

漁師の経験と勘を、センサーデータや気象情報で定量化

(機械学習)できれば、安定した漁業が営めるのでは?

漁業って博打の様なもの 網に入っている魚の量を推測する

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これまでの漁業

風、海の色、潮の流れ

勘・経験に基づく判断

会話・作業のみでの技術伝達

空振りも発生

漁師(事務所)

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獲れるかわからなくても出漁

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これからの漁業

漁師(事務所)

漁獲量データオープンデータ

海洋データ

出漁前にデータ分析

データによるノウハウ習得

✓計画的な出漁✓人件費・燃料コストの抑制

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前身のプロジェクト

実施場所 宮城県東松島市 浜市沖

事業概要 ①漁獲モデル適切な出漁判断でコスト効率を向上する

②小売モデル漁業者が小売店に獲れたての海産物を直送する

一般社団法人東松島みらいとし機構[代表幹事]、宮城県東松島市、大友水産株式会社、大野電子開発株式会社、東北大学、岩手県立大学、早稲田大学、株式会社KDDI総合研究所

(参加メンバー)

総務省「IoTサービス創出支援事業」として、2016年7月~2017年2月の間実施

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SCOPEの取り組み概要

SCOPE

データ選定 データ計測データ

解析・予測

(研究項目1)

(代表)仙台高専(研究項目2)

KDDI総合研究所(研究項目3)

早稲田大学

局所的海洋データを活用した漁業の効率化に関する研究開発

2017年度~2019年度(予定)

総務省戦略的情報通信研究開発推進事業

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SCOPEの取り組み(研究項目1)

◆ 局所的海洋データ収集手法の研究⚫ 主担当:仙台高等専門学校

⚫ 漁獲量予測に有効と考えられる局所的な海洋データの定義や絞り込み、データ取得・加工手法などの検討、調査

⚫ 魚の行動を左右すると考えられる「潮目」の検出手法や発生原理、魚の行動と関連に関する調査・検討

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SCOPEの取り組み(研究項目2)

◆ 漁業オペレーション効率化の研究⚫ 主担当:KDDI総合研究所

⚫ 局所的海洋データの収集作業と、実際の漁作業の両面において、漁師の作業(オペレーション)を効率化するための研究開発

⚫ 海洋データの収集に必要な機器の開発、漁獲量データ入力・参照など漁師の作業を支援するためのツールの開発

⚫ 中心的なIoTデバイスとして、各種センサーや通信機能を搭載する「スマートブイ」を開発・運用

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SCOPEの取り組み(研究項目3)

◆ 局所的海洋データを用いた漁獲量予測手法の研究⚫ 主担当:早稲田大学

⚫ 得られた局所的海洋データや周辺の気象データなどから、漁獲量を予測するためのデータ解析やモデル化に関する検討・評価

⚫ 定置網の構造とその中における魚の移動確率を考慮したモデル化、過去の漁獲実績と周辺気象データを用いて、漁獲実績に近い予測を実現する手法の提案・検証

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スマート漁業全体のシステム構成

定置網漁とスマートブイ

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データ収集・分析システム構成

【オープンデータ】(周辺気象データ、市場単位漁獲量等)

【スマートブイ】(漁場付近の海洋データ)

【漁業者情報】(漁業者単位漁獲量等)

閲覧

データベース

データ分析(漁獲量予測)

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フィールド・トライアル

東松島市

KDDI総合研究所

KDDI総合研究所は、2016年7月から、政府(総務省)の支援を得て、宮城県東松島市にて地元漁師と協力して、スマート漁業(漁業IoT)のトライアルを実施。

定置網量

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データ分析(これまで)

過去の漁獲量と気象データを用いて、漁獲量を予測したところ、前日比の増減(多い・少ないの2値)を70%の精度で的中できることを確認

Nは、過去何日分のデータを予測に用いるかを示している

本予測は、宮城県のオープンデータを用いて実施している。今後、スマートブイで得られたデータを使って予測精度の向上を進めていく予定。 15

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従来型スマートブイ(センサーブイ)

LTEアンテナ部

海中センサー部

海上センサー部

フロート部16

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従来型スマートブイと課題

海上センサー部(気温 / 気圧)

海中センサー部(水温 / 水圧 /

塩分濃度/ 加速度)

構造が複雑で汚れが付きやすい

◆ これまでの実証実験からの課題• 小型化・軽量化• 低消費電力化• センサーの長期的・安定的な動作

一次電池で動作(約1ヶ月稼動)

重さ20 Kg以上

通信アンテナ(LTE)

海中ケーブル(最大10m)

フロート

内部コントローラ・Raspbery Pi・LTE通信モジュール

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従来型スマートブイのバッテリー

・24V電池(24V→5V変換効率:87%)・電池種類:アルカリ単一乾電池・本数:32個(16直列、2並列)・稼働時間:約30日

バッテリー交換のためにブイの分解必要

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従来型ブイの汚れの例 (1)

ブイ本体

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従来型ブイの汚れの例 (2)

センサーモジュール

藻、泥、稚貝などの付着

センサーの性能低下

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新型スマートブイの開発

搭載センサーの絞り込み

小型化・軽量化

IoT向け通信方式対応

長期稼動(ソーラーパネル)

• 漁獲量と相関が強く、安定取得可能な水温に絞り込み

• 他のデータで代用できるセンサーを省略

多層水温センサー(1.5m / 3.5m / 5.5m)

新型スマートブイ

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搭載センサーの絞り込み

従来型ブイの搭載センサー

収集データの正確性

漁獲量予測との相関

新型ブイへの搭載

気温センサー

正確に計測できているが、気象庁観測データと同じ

強い気象庁観測データを利用

気圧センサー

正確に計測できているが、気象庁観測データと同じ

強い(季節性の魚)

気象庁観測データを利用

水温センサー

付着物の影響で正確な計測が困難

強い多層水温センサーを搭載

水圧センサー

付着物の影響で正確な計測が困難

低い 搭載せず

塩分濃度センサー

付着物の影響で正確な計測が困難

強い多層水温の時系列変化から推定

加速度センサー

海水の揺れのみ観測可能流向流速は計測困難

未確認 搭載せず

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仕様比較

項目 従来型スマートブイ 新型スマートブイ

幅x 高さ

φ400 mmx 2300 mm

φ387 mmx 1300 mm

重量 22 Kg 11 Kg

通信方式 LTELTE-M (Cat.M1) /LTE Cat.1

電源 一次電池二次電池+ ソーラーパネル

搭載センサー

気温、気圧、水温(1か所)、水圧、塩分濃度、9軸センサー

水温(複数個所)、塩分濃度、溶存酸素(接続は1種のみ)

稼動期間 約1ヶ月 約1年

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新型スマートブイの内部

2次電池(リン酸鉄リチウムイオン)

内部コントローラ

ソーラーパネル

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新型スマートブイの特徴

◆ 特徴⚫ 小型化・軽量化⚫ 低消費電力化/

稼動時間向上⚫ 構造が単純で

メンテナンスが容易

漁師によるブイ運用負荷軽減、効果的な連続データ取得を実現

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IoT向け通信方式(LTEベース)

LTE-Cat.1 Cat. M1 NB-IoT (Cat. NB1)

下り最大通信速度

10 Mbps 1 Mbps 250 kbps

上り最大通信速度

5 Mbps 1 Mbps 250 kbps (multi-tone) /20 kbps(single tone)

復信方式 全2重 全2重/半2重 半2重

周波数帯域 18 MHz 1.08 MHz 180 khz

モビリティ・サポート

あり あり なし(ハンドオーバー非対応)

新型スマートブイはLTE-Cat.1、Cat.M1をサポート26

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ブイ設置箇所(漁場エリア)

鳴瀬川河口付近の漁場内に、スマートブイ2台を設置

総務省事業での実験構成定置網・鮭漁を対象

(停止中)

LTE/LTE-Mのエリア内27

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水温測定結果の例 (1)

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水温測定結果の例 (2)

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まとめ

◆ 「IoTを活用したスマート漁業への取り組み」について紹介⚫ データに基づく漁獲量予測⚫ 新型スマートブイの開発、特徴

◆ 今後⚫ データ取得・分析の継続⚫ 他の共同研究機関とも協力しながら、

漁獲量予測の精度向上

漁業の効率化30