ICT活用研修プログラム開発・運用のイメージ図 -...

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やまぐち総合教育支援センター 研究紀要157集 第3巻(2018) 教員等のICT活用指導力向上のためのモジュール型研修プログラムの開発 調査研究担当 教育支援部 調 校 山口市立大歳小学校 山口市立川西中学校 山口県立防府商工高等学校 調査研究連携機関 山口大学教育学部 ICT活用研修プログラムのモジュール基本構成 ICT活用研修プログラム開発・運用のイメージ図 平成 28・29 年度やまぐち総合教育支援センター共同研究(本発表)

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やまぐち総合教育支援センター 研究紀要157集 第3巻(2018)

教員等のICT活用指導力向上のためのモジュール型研修プログラムの開発

調 査 研 究 担 当 教育支援部

調 査 研 究 校 山口市立大歳小学校

山口市立川西中学校

山口県立防府商工高等学校

調査研究連携機関 山口大学教育学部

ICT活用研修プログラムのモジュール基本構成

ICT活用研修プログラム開発・運用のイメージ図

平成 28・29 年度やまぐち総合教育支援センター共同研究(本発表)

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目 次

Ⅰ 研究の意図 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

1 研究の背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

2 開発の目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

Ⅱ ICT活用研修プログラムの概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

1 開発工程 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

2 開発のポイント ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

(1) 三つの大項目分け ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

(2) 研修プログラムのモジュール化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

(3) 研修モジュールの2部構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

(4) 研修材料のセット化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

(5) ICT活用指導力指標シートの活用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

3 研修プログラムの詳細 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

教師が使うICT ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

児童生徒が使うICT ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

情報モラル ・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9

Ⅲ 調査研究校での実践事例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12

1 研修モジュールを用いた校内研修 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12

(1) 山口市立大歳小学校 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13

(2) 山口市立川西中学校 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13

(3) 山口県立防府商工高等学校 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14

2 研修モジュールを生かした授業実践 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14

Ⅳ 教員のICT活用指導力の向上についての考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15

Ⅴ ダウンロードサイトの開設 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16

Ⅵ 研究のまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16

1 研究の成果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16

2 今後の展望 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17

担当者・調査研究校・連携機関 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17

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教員等のICT活用指導力向上のためのモジュール型研修プログラムの開発

- 1 -

Ⅰ 研究の意図

1 研究の背景

これからの新しい時代では、グローバル化の進展や人工知能(AI)の飛躍的進化等、社会の

加速度的な変化に対応できる資質・能力を子どもたち一人ひとりに確実に育む学校教育を実現し

なければならない。そうした中、教育におけるICT(情報通信技術)の活用は、子どもたちの

学習への興味・関心の向上や、分かりやすい授業の展開、目的や状況に応じて適切に情報手段を

使いこなすことができる情報活用能力の育成、そして、児童生徒の主体的・協働的な学びの実現

に効果的である。

教育におけるICTの有効性を高めていくためには、ICTの特性を知り効果的に活用した授

業をデザインできるICT活用指導力を有した教員の養成が重要であり、そのための教員研修が

これまでも行われてきた。しかし、研修により個人のスキルの向上は図られるものの、学校全体

へのICT活用指導力の向上を図るには至っていない状況が見られる。その要因として、学校の

実態に応じた校内研修が行われていないことや実際の授業を想定し、検討するような協働的な研

修とならなかったため、教員一人ひとりの授業実践に結び付かなかったことなどが考えられる。

また、教科に係る研修であれば、研修主任や教科主任がリーダーとなって校内研修を推進してい

くことができるが、ICTに係る研修となると、比較的新しい技術であることやその専門性から

校内に研修を推進する教員がいないため、校内研修を学校が主体となり、継続的に進めるのが困

難であることも考えられる。

このような実態に対して、ICTの活用を推し進めるには、場当たり的な支援だけでなく、学

校が主体的、継続的にICTに関する研修会を自校の教員で運営できるような研修プログラムが

必要であると捉えた。そのためには、学校の実態や状況の変化に柔軟に対応でき、ICT活用の

効果を実感できる協働的な活動を取り入れた研修プログラムの構築が必要不可欠であり、各学校

でカスタマイズできるモジュール(20分程度で研修が実施できる単位)として開発することが有

効であると考えた。

さらに、教員養成を担う山口大学教育学部と連携して、研修プログラムの開発やICT活用指

導力との関係性を検討し、共有することによって、教員として必要なICT活用に関する資質や

能力の育成に係る内容を大学のカリキュラムや授業に反映することとした。その結果、教員養成

の段階でICT活用指導力の向上が期待できる。このように、ICT活用指導力に関する教員養

成と教員研修を一体化することで、教員全体の質的向上に資すると考える。

2 開発の目的

前述の背景に鑑み、開発の目的を次のように設定した。

各学校の校内研修、やまぐち総合教育支援センターの研修及び大学における教員養成等で

主体的・継続的に用いることができるモジュール型ICT活用研修プログラムを山口大学教

育学部と連携して開発し、教員等のICT活用指導力を向上させる。

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教員等のICT活用指導力向上のためのモジュール型研修プログラムの開発

- 2 -

Ⅱ ICT活用研修プログラムの概要

1 開発工程

研修プログラム開発の研究期間は、平成28年度から29年度までの2年間とし、表1に示す工程

で開発することとした。

2 開発のポイント

研修プログラムは、各学校の実態に合わせてテーマを選択し、自校の教員がファシリテーター

となって短時間かつ継続的に校内研修を進めることができ、知識の習得だけではなく授業実践に

つながるようにするため、以下の五つの点を開発のポイントにした。

(1) 三つの大項目分け

文部科学省が公表している教員のICT活用指導力は、「教材研究・指導の準備・評価など

にICTを活用する能力」「授業中にICTを活用して指導する能力」「児童のICT活用を

指導する能力」「情報モラルなどを指導する能力」「校務にICTを活用する能力」の五つの

大項目で構成されている。そのうち、本研修プログラムでは特に授業に関係がある「授業中に

ICTを活用して指導する能力」「児童生徒のICT活用を指導する能力」「情報モラルなど

を指導する能力」の三つの大項目を研修内容とした。

(2) 研修プログラムのモジュール化

研修プログラムの三つの大項目の内容は、テーマや目的に合わせて各10程度の小項目(以

下、「研修モジュール」とする。)に分けた。一つの研修モジュールは、15~20分程度で研修

が進められるようにし、学校の実態や状況に合わせて必要な研修モジュールを選び、組み合わ

せて研修できるようにした。また、一つの研修モジュールを短時間で実施できるように設定し

たことで、多忙な学校現場において無理なく研修できるようにした。

(3) 研修モジュールの2部構成

研修プログラム全体に納めた各研修モジュールは、2部構成とした。ICTは比較的新し

い技術であることやその専門性からある程度の知識や理解が必要であるため、1部は講義型

として、ICT機器の使い方やICTを活用した授業の効果や留意点等について研修できる

ものにした。しかし、単に講義形式で知識を学ぶだけでは授業実践へと結び付きにくいた

め、2部ではワークショップ形式によって、授業場面を想定しながら実際にICT機器を

使ったり、知識やアイディアを出し合ったりして、教員同士が協働的に研修を進めること

で、体験的に理解できるようにした。

H28 6⽉ H29 5⽉7⽉ 6⽉8⽉ 7⽉10⽉ 8⽉11⽉ 10⽉12⽉ 11⽉

H29 1⽉ H30 1⽉2⽉ 2⽉3⽉ ダウンロードサイトの開設

「児童⽣徒が使うICT」モジュール修正「児童⽣徒が使うICT」モジュール開発、試⾏開始

「教師が使うICT」モジュール修正

「教師が使うICT」モジュール開発、試⾏開始

「児童⽣徒が使うICT」モジュール修正

「遠隔授業」モジュール開発、試⾏開始

「遠隔授業」モジュール修正

「情報モラル」「教師が使うICT」「児童⽣徒が使うICT」モジュール修正、再試⾏

「情報モラル」モジュール開発、試⾏開始

「情報モラル」モジュール修正

表1 研修プログラム開発工程

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教員等のICT活用指導力向上のためのモジュール型研修プログラムの開発

- 3 -

(4) 研修材料のセット化

研修で使うプレゼンテーション資料やファシリテーター用の読み原稿、演習で使用する資料

やワークシート等を全ての研修モジュールにセットした。これにより、ICTに自信がない教

員であっても、校内にICTに精通した教員がいなくても、誰でも負担なく研修を実施できる

ようにした。

(5) ICT活用指導力指標シートの活用

各研修モジュールと研修で身に付けられるICT活用指導力の関係を指標として一覧表(別

表①)で示した。教員の実態に合わせた研修モジュールを選択できるように、どの研修モ

ジュールで研修すれば、どのようなICT活用指導力を身に付けることができるのかを分かる

ようにした。

3 研修プログラムの詳細

各研修モジュールについて、詳細を以下に示す。本研究で開発した研修プログラムに収めた全

28種類の研修モジュールは、特定の教科や学年に焦点を当てず、小学校・中学校・高等学校・特

別支援学校で広く活用できるものにするため、汎用性があるテーマ等を設定した。また、目的に

合わせて短時間で効率よく研修できるように、各研修モジュールの1部のみ、もしくは2部のみ

でも行えるような内容にした。さらに、受講者にとって研修の目的が明確になるよう、研修の

ゴールを設定した。

番号 プログラム名 研修のゴール 研修内容

T1-1

授業におけるICT活用

(1部)

ICT機器の特性を理解

して、授業でのICT活

用のねらいを知る。

ICT活用の四つの

狙いと効果的に活用

するための発問・指

示、黒板との組み合

わせについて

T1-2

授業におけるICT活用

(2部)

日常的にICTを活用す

るために設置や準備につ

いて考える。

普通教室にICT機

器を移動して活用す

る場面を想起し、効

率的なICT環境に

していくための改善

点 を 考 え る ワ ー ク

ショップ

教師が使うICT

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教員等のICT活用指導力向上のためのモジュール型研修プログラムの開発

- 4 -

番号 プログラム名 研修のゴール 研修内容

T2-1

教育用コンテンツの利用

(1部)

より分かりやすい授業を

展開するために、ウェブ

上の教育用コンテンツを

活用する際のポイントを

知る。

教育用コンテンツ活

用のポイントと活用

上の留意点、活用の

よさについて

T2-2

教育用コンテンツの利用

(2部)

教育用コンテンツを活用

した模擬授業を体験す

る。

ウェブ上にある教育

用コンテンツを活用

した模擬授業の体験

(動画を視聴後、ジ

グソー活動を行う)

T3-1

分かりやすい授業のために

~大きく映して~

(1部)

分かりやすい授業のため

に、ICTを活用した授

業イメージをつかむ。

分かりやすい授業を

展開するためのIC

T 活 用 の ポ イ ン ト

「情報提示」「焦点

化」「発話」の組合せ

について

T3-2

分かりやすい授業のために

~大きく映して~

(2部)

授 業 場 面 を 決 め 、「 何

を」「どう」映し、「ど

う」話すのか、実践す

る。

「情報提示」「焦点

化」「発話」を組み合

わせた教材づくりと

模擬授業の体験

T4-1

つまずきをなくすために

~手元の動きを大きく映して~

(1部)

手元を大きく映し、ゆっ

くりと動きを見せ、分か

りやすく説明すれば、正

しい手順を確実に理解さ

せることができることを

知る。

ICT機器を活用し

て、手元の動きを大

きく映す効果とIC

T活用のポイントに

ついて

T4-2

つまずきをなくすために

~手元の動きを大きく映して~

(2部)

つまずきをなくすため

に、実際に手元の動きを

大きく映す体験をする。

手元の動きを見せる

演示場面に対する意

見交換と動画作成の

体験

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教員等のICT活用指導力向上のためのモジュール型研修プログラムの開発

- 5 -

番号 プログラム名 研修のゴール 研修内容

T5-1

習熟のために

~フラッシュカードを使って~

(1部)

身近にあるICT機器を

利用して、児童生徒の知

識・理解の定着を図るた

めのフラッシュ教材につ

いて知る。

子どもの知識・理解

の定着を図るための

フラッシュ教材とI

CT機器の活用につ

いて

T5-2

習熟のために

~フラッシュカードを使って~

(2部)

児童生徒の知識・理解の

定着を図るために、IC

T機器を活用したフラッ

シュ教材づくりを考え

る。

フラッシュ教材作成

のポイントとICT

機 器 を 活 用 し た グ

ル ー プ で の フ ラ ッ

シュ教材づくりの体

T6-1

共有のために

~考えや工夫の可視化~

(1部)

身近にあるICT機器を

利用して、児童生徒がも

つ知識や考え、工夫の共

有を図るための授業づく

りについて知る。

知識や考え、工夫の

共有を図るためにI

CTを活用する視覚

的効果等のメリット

について

T6-2

共有のために

~考えや工夫の可視化~

(2部)

児童生徒がもつ知識や考

え、工夫の共有を図るた

めに、ICT利用による

「共有させたいこと」を

盛り込んだ授業づくりを

考える。

対象学年や教科・科

目などを設定し、I

CT機器利用による

「 共 有 さ せ た い こ

と」を盛り込んだ授

業 を 考 え る ワ ー ク

ショップ

T7-1

インクルーシブ教育のために

(1部)

インクルーシブ教育の考

えに基づいた授業におけ

るICTの活用について

知る。

子どもの「困り」の

解消・軽減を図るた

めの視覚的提示、焦

点 化 し た 提 示 、 再

現・繰り返しによる

提示について

T7-2

インクルーシブ教育のために

(2部)

ある指導場面における児

童生徒の「困り」の予

想、対策を考えることを

通して、ICTの有効性

について話し合う。

予想される子どもの

「困り」を基に、「I

C T を 活 用 し た 指

導」と「ICTを活

用しない指導」とを

比較し、ICT活用

の利点を考えるワー

クショップ

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教員等のICT活用指導力向上のためのモジュール型研修プログラムの開発

- 6 -

番号 プログラム名 研修のゴール 研修内容

T8-1

タブレットを使って

(1部)

教師による授業における

タブレット型情報端末の

活用方法を知る。

タブレット型情報端

末の「即時性」を生

かした「拡大提示」

「動きの再現」「手元

の演示」について

T8-2

タブレットを使って

(2部)

実際にタブレット型情報

端末を操作しながら、授

業での活用場面を考え、

紹介し合う。

タブレット型情報端

末 に よ る 「 拡 大 提

示」「動きの再現」

「手元の演示」の体

T9-1

教師のための著作権

(1部)

著作権について理解し、

学校現場で著作権につい

て留意すべきことを正し

く知る。

著作権法における著

作物の利用と学校に

おける例外措置につ

いて

T9-2

教師のための著作権

(2部)

著作権に関する○×クイ

ズを通して学校における

著作権について深く理解

する。

学校における著作物

の利用に関する○×

クイズ全 21 問に挑戦

T10-1

遠隔授業の準備と設定

(1部)

遠隔授業を行う上での準

備物や設定について知

る。

遠隔授業の実施に必

要なICT機器や環

境、ソフトウェアの

設定方法について

T10-2

遠隔授業の準備と設定

(2部)

タブレット型情報端末を

使用した遠隔交流を体験

する。

二つのグループに分

かれて遠隔交流を体

験しながら、遠隔授

業のポイントを確認

T11-1

遠隔教育のために

(1部)

ICTを活用した遠隔授

業の具体例を知り、その

目的やICT活用の効果

について知る。

遠隔授業の様々な形

態と実施する上での

留意点について

T11-2

遠隔教育のために

(2部)

ICTを活用した遠隔模

擬授業を体験し、そのよ

さや留意点について考え

る。

二つのグループに分

かれて、テーマを基

にディベート形式の

模擬的な遠隔授業の

体験

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教員等のICT活用指導力向上のためのモジュール型研修プログラムの開発

- 7 -

番号 プログラム名 研修のゴール 研修内容

S1-1

活動の振り返りのために

~タブレットのカメラ機能を活

用して~

(1部)

児童生徒が活動を撮影

し、その動画を基に気付

きや新たな課題を発見す

るためのタブレット型情

報端末の活用方法を知

る。

活動の振り返り・改

善サイクルを必要と

する学習活動とそれ

に 活 用 で き る タ ブ

レット型情報端末の

カメラ機能について

S1-2

活動の振り返りのために

~タブレットのカメラ機能を活

用して~

(2部)

タブレット型情報端末を

活用して振り返ることを

体験し、その効果とよさ

について話し合い、共有

する。

「面接」の様子を撮

影し、児童生徒がタ

ブレット型情報端末

を用いて振り返るよ

さ に つ い て 考 え る

ワークショップ

S2-1

観察・実験を記録するために

~写真や動画を使って~

(1部)

児童生徒が観察や実験等

の記録を写真や動画とし

て撮影し、学習に役立て

ることについて知る。

観察・実験でICT

を活用した写真・動

画の具体例とICT

活用のメリットにつ

いて

S2-2

観察・実験を記録するために

~写真や動画を使って~

(2部)

タブレット型情報端末を

活用して、「雲の動き」

を撮影する体験をする。

タブレット型情報端

末 の カ メ ラ 機 能 を

使って、タイムラプ

ス又はインターバル

撮 影 に よ り 実 際 に

「雲の動き」を撮影

S3-1

課題を解決する情報を集めるた

めに

~インターネットを利用して~

(1部)

児童生徒がインターネッ

トを利用して情報を収集

し、整理して活用するこ

とについて知る。

紙媒体による「情報

収集」とICTによ

る「情報収集」のメ

リットの比較とIC

Tを使う場合の留意

点について

S3-2

課題を解決する情報を集めるた

めに

~インターネットを利用して~

(2部)

児童生徒がインターネッ

トを利用して情報を収集

し、整理して活用するた

めの工夫を考える。

各 学 校 で 設 定 し た

テーマについてイン

タ ー ネ ッ ト で 検 索

し、集めた情報をグ

ル ー プ で ま と め る

ワークショップ

児童生徒が使うICT

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教員等のICT活用指導力向上のためのモジュール型研修プログラムの開発

- 8 -

番号 プログラム名 研修のゴール 研修内容

S4-1

考えを伝えるために

~ICT機器を使って~

(1部)

集めた情報や自分の考え

を分かりやすく説明して

いくために、ICT機器

を活用して伝える力を身

に付けるためのポイント

を知る。

考えを伝えることに

対する発表者と聞き

手のメリットとIC

T機器を使うメリッ

トについて

S4-2

考えを伝えるために

~ICT機器を使って~

(2部)

集めた情報や自分の考え

を分かりやすく説明して

いくための工夫(ICT

活用の効果)を考える。

考えを伝える際のポ

イントを意識し、I

CT機器を使った伝

え る 活 動 「 学 校 P

R」を体験

S5-1

考えの可視化のために

(1部)

思考過程の可視化にIC

Tを活用するよさについ

て知る。

思考過程を見えやす

く可視化するために

動的に表す方法と書

き表す方法について

S5-2

考えの可視化のために

(2部)

ある問題に取り組み、考

えを書き表して伝える活

動を通して、ICTを活

用するよさについて理解

する。

配付された問題を解

き、考えを伝える活

動を通して、ICT

を活用するよさにつ

い て 考 え る ワ ー ク

ショップ

S6-1

一人学びを支援するために

~ヒントカードを見ながら~

(1部)

児童生徒が一人学びのと

きに、コンテンツを参考

にしながら学習を進めら

れることについて知る。

ヒントカード入りタ

ブレット型情報端末

の利用の仕方とIC

T活用のメリットに

ついて

S6-2

一人学びを支援するために

~ヒントカードを見ながら~

(2部)

ヒントカードを使った授

業を体験する。

ヒントカードを活用

し な が ら 、 1 か ら

100 までの自然数の

和を求める問題を解

いていく活動を体験

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教員等のICT活用指導力向上のためのモジュール型研修プログラムの開発

- 9 -

番号 プログラム名 研修のゴール 研修内容

S7-1

ドリル的学習として

(1部)

児童生徒が学習用ソフト

などを活用し、繰り返し

学習したり練習したりす

ることで、知識の定着や

技能の習熟を図れること

を知る。

子どもの学習意欲の

向上と教師の負担軽

減を図るICT機器

を活用したドリル的

学習について

S7-2

ドリル的学習として

(2部)

児童生徒がドリル学習を

行うときに、ICT機器

を利用することのよさを

体験・共有する。

体験によってICT

を使ったドリル的学

習のよさについて考

えるワークショップ

番号 プログラム名 研修のゴール 研修内容

M1-1

情報モラル教育とは

(1部)

情報モラル教育の概要や

狙いを知り、情報モラル

教育の必要性について理

解する。

情報社会における子ど

もの情報機器の利用実

態と情報モラル教育の

目標について

M1-2

情報モラル教育とは

(2部)

ネットトラブル事例につ

いて従来モラルと情報モ

ラルとに整理し、どのよ

うな指導をすれば、予防

できるかを考える。

ネットトラブル事例を

視聴し、情報社会にお

ける従来モラルと情報

モラルを考えるワーク

ショップ

M2-1

授業における情報モラル

(1部)

情報モラル教育の内容を

知り、情報モラル教育の

進め方を理解する。

情報モラル教育の五つ

の柱「情報社会の倫

理 」「 法 の 理 解 と 遵

守」「安全への知恵」

「情報セキュリティ」

「公共的なネットワー

ク社会の構築」につい

M2-2

授業における情報モラル

(2部)

ネットトラブルを未然に

防ぐにはどの領域の指導

が必要なのかを事例別に

整理する。

様々なネットトラブル

を情報モラル教育の五

つの柱に分類するワー

クショップ

情報モラル

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教員等のICT活用指導力向上のためのモジュール型研修プログラムの開発

- 10 -

番号 プログラム名 研修のゴール 研修内容

M3-1

家庭の役割

(1部)

ネットトラブルから児童

生徒を守るためには、家

庭の協力が必要であるこ

とを理解する。

家庭に協力してほし

い 「 フ ィ ル タ リ ン

グ」「ペアレンタルコ

ントロール」「家庭で

のルールづくり」に

ついて

M3-2

家庭の役割

(2部)

児童生徒に一番伝えたい

情報モラルを考えること

で、家庭の役割について

考える。

子どもに一番伝えた

い情報モラルをラン

キ ン グ す る ワ ー ク

ショップ

M4-1

メッセージ交換アプリによる

ネットいじめ

(1部)

メッセージ交換アプリを

使用したいじめの現状を

知る。

メッセージ交換アプ

リによるトラブルの

実態「誤解」「悪口」

「グループ外し」「既

読無視」について

M4-2

メッセージ交換アプリによる

ネットいじめ

(2部)

メッセージ交換アプリに

対するある学校の対策に

ついて意見交換すること

で 、 学 校 ・ 家 庭 に お い

て、対策としてできるこ

とを考える。

あ る 学 校 が 行 っ た

メッセージ交換アプ

リへの対策措置につ

いて、その賛否を考

えるワークショップ

M5-1

動画共有サイトへの投稿

(1部)

動画共有サイトの概要や

リスクを知り、動画共有

サイトに関する教育の必

要性について理解する。

動画共有サイトに潜

むリスクと利用する

ときのポイントにつ

いて

M5-2

動画共有サイトへの投稿

(2部)

動画共有サイトを利用す

る上で、児童生徒に身に

付けさせたいスキルにつ

いて考える。

動画共有サイトに関

するトラブル事例を

視聴し、投稿者側と

視聴者側の両者につ

い て 考 え る ワ ー ク

ショップ

M6-1

SNSや掲示板への投稿

(1部)

ネットの特性を理解し、

不適切な投稿が将来まで

影響することを知る。

ネット上の情報の特

性「残存性」「複製

性」「伝播性」と不適

切な投稿が将来に与

える影響について

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教員等のICT活用指導力向上のためのモジュール型研修プログラムの開発

- 11 -

番号 プログラム名 研修のゴール 研修内容

M6-2

SNSや掲示板への投稿

(2部)

不適切な投稿を防ぐため

に、情報発信するときに

注意しなければならない

ことを考える。

不適切な投稿が与え

る影響をネット上の

情報の特性に照らし

て 考 え る ワ ー ク

ショップ

M7-1

個人情報の流出

(1部)

ネット上に個人情報を記

載 す る こ と に つ い て 知

り、個人情報を守る大切

さを理解する。

個人情報が流出する

要因、流出による被

害、個人情報を守る

ための対策について

M7-2

個人情報の流出

(2部)

児童生徒が安易に個人情

報をネット上に発信して

しまう理由を考え、どの

ような指導が必要かを考

える。

ネットトラブル事例

を基に、安易に個人

情報を発信してしま

う子どもたちの気持

ち を 考 え る ワ ー ク

ショップ

M8-1

架空請求

(1部)

児童生徒が巻き込まれる

架空請求トラブルの実態

を知り、被害防止のため

の教育の必要性について

理解する。

架空請求トラブルの

未然防止と被害防止

のための対処スキル

について

M8-2

架空請求

(2部)

事例から児童生徒が架空

請求トラブルに巻き込ま

れた原因について考え、

ど の よ う な 指 導 を す れ

ば、被害を防止できるか

を考える。

架空請求に関するト

ラ ブ ル 事 例 を 視 聴

し、トラブルに巻き

込まれた原因と被害

防止のための知識・

スキルについて考え

るワークショップ

M9-1

ソーシャルゲーム

(1部)

ソーシャルゲームについ

て知るとともに、トラブ

ルの中で特に多い課金ト

ラブルについて知る。

ソーシャルゲームの

課金システムと課金

トラブルについて

M9-2

ソーシャルゲーム

(2部)

ソーシャルゲームの課金

トラブルの疑似体験を通

して、保護者の立場で留

意すべき点を考える。

ソーシャルゲームの

課金トラブルを疑似

体験し、家庭の役割

について考えるワー

クショップ

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教員等のICT活用指導力向上のためのモジュール型研修プログラムの開発

- 12 -

番号 プログラム名 研修のゴール 研修内容

M10-1

ネット依存

(1部)

ネットに過度に依存する

と 、 学 校 生 活 や 日 常 生

活、健康面にも支障をき

たすことを知り、自己管

理の大切さと情報メディ

アとの関わり方について

考える。

ネ ッ ト 依 存 症 の 症

状、依存のタイプ、

ネット依存によって

引き起こされる問題

について

M10-2

ネット依存

(2部)

ネット依存の傾向にある

児童生徒への信頼関係を

築くための有効な言葉掛

けを考える。

子どもへの言葉掛け

として、「わたし」が

主語になる「Iメッ

セージ」を活用した

ワークショップ

Ⅲ 調査研究校での実践事例

調査研究校として、山口市立大歳小学校、山口市立川西中学校、山口県立防府商工高等学校を

選定し、3校を対象に本研修プログラムの校内研修での実践及び教員のICT活用指導力につい

て検証した。

1 研修モジュールを用いた校内研修

調査研究校において、開発した研修プログラムのうち、各学校の実態や教員の関心に合わせて

研修内容を選択し、校内研修で実施した。調査研究校全体で、合計24件の研修モジュールを用い

た研修が行われたことが報告され、使用された研修モジュールの内訳としては、「教師が使うI

CT」の内容が多かった。そのことから、教員がICTを使って分かりやすい授業を実践するた

めに研修モジュールを活用した研修が実施されたことがうかがえる。中でも、図1で示したよう

に、タブレット型情報端末の基礎的な活用やフラッシュ教材の自作方法(習熟のために)につい

て研修する件数が多かった。また、特に高等学校においては、スマートフォン等の普及に伴い、

喫緊の課題となっている「情報モラル」についての研修が多く実施された。

習熟のために

16.7%

情報モラル教育とは

16.7%

動画共有サイトへの投稿

12.5%SNSや掲示板への投稿

個人情報の流出

タブレットを使って

教師のための著作権

メッセージ交換アプリによるネットいじめ

授業における情報モラル

図1 調査研究校の校内研修における研修モジュールの使用割合

12.5%

12.5%

8.3%

8.3%

8.3%

4.2%

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教員等のICT活用指導力向上のためのモジュール型研修プログラムの開発

- 13 -

(1) 山口市立大歳小学校

【情報モラル:「情報モラル教育とは」】

「情報モラル教育とは」の研修モジュールを用いて、情報モラル教育に対する意識啓発を

図っていく研修を実施した。ファシリテーターの経験や身近な問題等を盛り込みながら、教員

全体で情報モラル教育を実践していくことの共通理解を図ることができた。2部の演習を通し

て、それぞれの教員がもっている情報モラルについての知識や考えを共有することができ、児

童に対して情報モラル教育を適切に行っていくことの理解につながった。

【教師が使うICT:「習熟のために~フラッシュカードを使って~」】

調査研究校と同じ地区の小、中学校(各1校)との

合同研修会において、研修モジュールを活用した(図

2)。2部の演習では、ICTを活用したフラッシュ

カードの作成を行った。小、中学校の教員が同じグ

ループになり、フラッシュカードの内容を考えること

で、アイディアの共有とともに校種間の連携をどのよ

うに図っていくべきかについても検討できた。

以上を例に、校内研修に研修モジュールを活用した

ICT研修を位置付けて研修が進められた。主には課

題提示、教材・教具の拡大提示といったすぐに実践で

きる基本的活用を基に、同じ学年を担当する教員同士で実際の授業をイメージしたICT活用

の知識・技能について共通理解できた。

(2) 山口市立川西中学校

【情報モラル:「メッセージ交換アプリによるネットいじめ」】

SNSそのものを学校として禁止することの是非に

ついてのワークショップを実施したが、賛成・反対の

両方の意見交流が活発に行われ、ネットいじめ防止の

難しさを実感することができた。また、今回使用した

研修モジュールは、教員の研修だけではなく、授業で

生徒にさせてもいいのではないかという意見が出さ

れ、ICT活用研修プログラムの内容を授業にも活用

できるという可能性の広がりを見出すことができた。

【教師が使うICT:「タブレットを使って」】

「タブレットを使って」の研修モジュール用いて、タブレット型情報端末の特性を理解して

授業でどのように活用できるかを理解する研修を実施した。タブレット型情報端末の整備が進

み、少しずつICT活用に挑戦しようという気運が校内で高まる中で、タイミングよく研修会

を実施することができた。2部では教科ごとのグループでワークショップを行い、タブレット

型情報端末の活用場面を検討することで、実際の授業での活用をイメージすることができた。

以上を例に、短時間でも効果的な研修を行うことができるという研修モジュールの特性を生

かして、多忙な学校現場にあっても、職員会議後や放課後に、「ちょこっとICT」(図3)

と題して15分だけ時間を確保して研修を行う等、テーマを絞り込んだ研修を進めることができ

た。また、学校の実態に応じて2部のワークショップをアレンジするなどの工夫ができた。

図3 「ちょこっとICT」研修会

図2 小、中学校合同の研修会において

研修モジュールを活用

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教員等のICT活用指導力向上のためのモジュール型研修プログラムの開発

- 14 -

(3) 山口県立防府商工高等学校

【情報モラル:「SNSや掲示板への投稿」】

学校現場で頻繁に問題視される生徒たちのSNS利用について、ネットの特性を理解すると

いう基本的なことに触れ、トラブルに発展する原因を説明したことで、日頃SNSを利用して

いない受講者からも理解を得ることができた。また、情報教育に詳しくない若手の教員がファ

シリテーターとなり(図4)、SNSを実際に利用しながら感じている不安などを説明に盛り

込んだことで、生徒の感覚に近寄る機会となった。後半にグループディスカッションをしたこ

とで、目の前の生徒たちにどのような指導をしていく必要があるかについて、互いの意見を共

有することができた。

【教師が使うICT:「習熟のために~フラッシュカードを使って~」】

実物投影機やタブレット型情報端末を用いた教材づ

くりをグループで行い、生徒たちを授業に参加させる

ための工夫や主体的に学習に向かわせるためのきっか

けについて考えることができたという意見が出た。今

あるICT機器をうまく活用して、分かりやすく理解

しやすい授業実践につなげていく必要があることの共

通理解を図ることができた。

以上を例に、実際の授業場面を想定しやすい研修モ

ジュールによって、教員同士が活発に意見を交わす場

が設定され、研修の充実が図られた。カメラ機能で手

元を大きく映す方法やフラッシュ教材の利用といったスタートアップ的な内容を協働的に研修

したことで、部分的・補助的なICT活用が「分かりやすい授業」につながるということの理

解が深まった。

2 研修モジュールを生かした授業実践

1年目には、調査研究校において、研修モ

ジュールを用いた校内研修を実施したことが

きっかけとなり、ICTを活用した授業実践に

つながったことを確認することができた。小学

校では、調査を開始した当初、授業でICTを

活用する学級数は全体の約3割程度に留まって

いたが、研修モジュールを用いた研修実施後

は、全学級でICTを活用した授業が積極的に

進められるようになった。また、中学校と高等

学校では、校内のICT機器の整備が不十分で

あるという課題はあるものの、本研修プログラ

ムを用いた校内研修はICT活用の有効性の理

解につながり、限られたICT機器を共有し

て、教科を問わず様々な授業で実践されるよう

になった。

図4 若手の教員がファシリテーターと

なり実施された研修会

図5 授業実践の記録様式(記入例)

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教員等のICT活用指導力向上のためのモジュール型研修プログラムの開発

- 15 -

2年目には、前項図5のような様式を準備し、ICTを活用した授業の様子を記録できるよう

にした。様式には、授業を実践した学年や教科・科目、場面、ICT活用の目的のほか、校内で

授業実践の共有が図られるように、参観した教員からのアドバイスを記載できる欄等を設けた。

このような各学校の実践記録を県内の教員の共有財産と捉え、今後に事例集としてまとめていく

ことで、広く紹介していくことができるものと考える。

Ⅳ 教員のICT活用指導力の向上についての考察

文部科学省の「教員のICT活用指導力の基準(チェックリスト)」を用いて、平成28年5月

と平成29年1月に調査研究校の全教員を対象に実態を調査し、研修モジュールを用いて校内研修

が実施されたことによる教員のICT活用指導力について考察した。その結果3校に共通して、

本研修プログラムを活用したICTに係る校内研修が行われたことで、教員のICT活用指導力

が高まったことが以下のチャートから確認できる。

大歳小学校では、研究主題にICT活用を設定し、研修モジュールを用いた研修が継続的に実

施されたことで、基準(チェックリスト)の全領域において、教員のICT活用指導力が向上し

た(図6)。

川西中学校では、隙間時間を生かして研修モジュールを用いた研修が継続的に実施されたこと

で、ICT活用に対する意識の向上が図られ(図7)、結果的に授業でICTを活用する教員の

増加につながった。

2.0

2.5

3.0

3.5教材研究に活用

教師が活用

児童生徒が活用情報モラル指導

校務に活用

大歳小学校

H28年5月 H29年1月

2.0

2.5

3.0

3.5教材研究に活用

教師が活用

児童生徒が活用情報モラル指導

校務に活用

川西中学校

H28年5月 H29年1月

図6 教員のICT活用指導力の変容(大歳小学校)

図7 教員のICT活用指導力の変容(川西中学校)

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教員等のICT活用指導力向上のためのモジュール型研修プログラムの開発

- 16 -

防府商工高等学校では、研修モジュールによる研修を実施する際に、校内にあるICT機器を

使うことによって、これまでICTを活用することに抵抗感を抱いていた教員の意識まで向上す

る結果となった(図8)。

Ⅴ ダウンロードサイトの開設

開発した研修プログラムを広

く普及させるために、平成29年

3月末に「やまぐち総合教育支

援サイト」の「先生のページ」

内において、図9に示した専用

のダウンロードサイトを開設

し、パソコンとインターネット

環境があれば、学校ID・パス

ワードでダウンロードして使う

ことができるようにした。このようなダウンロードサイトを開設したことで、県内の各教育機関

で継続的にダウンロードして使われている。また、研修プログラムに対して関心をもった県外

(北海道・東京・岡山・広島・香川・徳島・高知)の教育機関からもダウンロードの申請を受け

た。ダウンロード数は、開設から平成30年2月末までの約11か月間の累計で6700件超を記録し、

研修実施後の受講者アンケートの記述内容も高評価を得ている。

Ⅵ 研究のまとめ

1 研究の成果

本研修プログラムが目的としていた、学校が主体となり継続的にICTに係る研修が進められ

るという点について、研修プログラムをモジュール化したことで、学校の実態に合わせて研修を

計画することができた。その上で、川西中学校の「ちょこっとICT」の実践に見られるよう

に、多忙な学校現場においても比較的容易に研修時間を確保でき、研修モジュールを選択しなが

ら継続的に研修を実施することができた。また、研修材料をセット化することで、防府商工高等

学校の実践に見られるように、情報教育に詳しくなくても誰でもファシリテーターになれるな

ど、専門的な知識が必要なICTの研修においても、校内の教員が主体となって研修を実施する

2.0

2.5

3.0

3.5教材研究に活用

教師が活用

児童生徒が活用情報モラル指導

校務に活用

防府商工高等学校

H28年5月 H29年1月

図9 ダウンロードサイト

図8 教員のICT活用指導力の変容(防府商工高等学校)

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教員等のICT活用指導力向上のためのモジュール型研修プログラムの開発

- 17 -

ことができた。さらに、各研修モジュールを2部構成にすることで、1部の講義で得た知識・理

解を活用し、2部のワークショップでは協働的に研修でき、教員のICT活用に対する意識や指

導力の向上につながった。そして、調査研究校からの聞き取りや実践全体から、本研修プログラ

ムは、校種や教科等に関係なく、汎用性があり、学年や教科といった小単位での研修に用いるこ

とによって、授業におけるICT活用をより具体的にイメージでき、有効性が高まるということ

が分かった。

2 今後の展望

今後は、調査研究校を中心に集積したICT活用に関する授業実践の記録を事例集としてまと

め、広く提供する。これにより、研修モジュールを活用して校内研修を進めることが、それぞれ

の教員等のICT活用指導力の向上につながることを普及していきたい。また、研修モジュール

の開発で得たノウハウを基に、小学校で平成32年度から、中学校で平成33年度から、高等学校で

平成34年度からそれぞれ必修として実施されるプログラミング教育に関する研修プログラムの開

発も試みていきたいと考えている。

担当者(やまぐち総合教育支援センター)

平成28年度

教育支援部 部 長 藤 村 慎一郎

主 査 藤 本 満 士

研究指導主事 佐 伯 英 哉

研究指導主事 松 田 雄 輔

研究指導主事 西 村 康 成

研究指導主事 森 寛 文

平成29年度

教育支援部 部 長 藤 村 慎一郎

主 査 藤 本 満 士

研究指導主事 永 久 亮

研究指導主事 松 田 雄 輔

研究指導主事 菊 谷 義 尚

研究指導主事 森 寛 文

調査研究校

平成28年度

山口市立大歳小学校 校 長 板 倉 豊

教 諭 椙 山 慎 也

山口市立川西中学校 校 長 久保田 裕 三

教 諭 高 井 邦 彦

教 諭 森 泰 一

山口県立防府商工高等学校 校 長 栗 林 正 和

教 諭 郡 司 淳

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教員等のICT活用指導力向上のためのモジュール型研修プログラムの開発

- 18 -

平成29年度

山口市立大歳小学校 校 長 岡 田 達 生

教 諭 椙 山 慎 也

山口市立川西中学校 校 長 山 田 敢 一

教 諭 高 井 邦 彦

山口県立防府商工高等学校 校 長 栗 林 正 和

教 諭 郡 司 淳

調査研究連携機関

平成28年度

平成29年度 山口大学教育学部

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【別表① ICT活用指導力指標シート】

T-1 T-2 T-3 T-4 T-5 T-6 T-7 T-8 T-9 T-10 T-11 S-1 S-2 S-3 S-4 S-5 S-6 S-7 M-1 M-2 M-3 M-4 M-5 M-6 M-7 M-8 M-9 M-10授業におけるICT活⽤

教育⽤コンテンツの利⽤

分かりやすい授業のために

つまずきをなくすために

習熟のために

共有のために

インクルーシブ教育のために

タブレットを使って

教師のための著作権

遠隔授業の準備と設定

遠隔教育のために

活動の振り返りのために

観察・実験を記録するために

課題を解決する情報を集めるために

考えを伝えるために

考えの可視化のために

⼀⼈学びを⽀援するのために

ドリル的学習として

情報モラル教育とは

授業における情報モラル

家庭の役割

メッセージ交換アプリによるネット

いじめ

動画共有サイトへの投稿

SNSや掲⽰板への投稿

個⼈情報の流出

架空請求

ソーシャルゲーム

ネット依存

基    準 

1授業でICT機器を活⽤するために、それぞれの機器の特性を理解して選択したり、教室の環境に配慮したりしながら準備・設置をする。

2学習に対する児童⽣徒の興味・関⼼を⾼めるために、タブレットやPC、提⽰装置などを活⽤する。

3 課題を明確につかませるために、タブレットやPC、提⽰装置などを活⽤する。

4 知識の定着を図るために、タブレットやPC、提⽰装置などを活⽤する。

5 ICT機器を活⽤して、児童⽣徒のノートや作品を提⽰し、考えや⼯夫の共有を図る。

6ICT機器を活⽤し、すべての児童⽣徒にとって分かりやすい授業をデザインすることができる。

1児童⽣徒が課題を解決するためにインターネットを活⽤して、情報を収集したり選択したりできるように指導する。

2児童⽣徒が活動の様⼦をタブレット等で撮影した動画を元に⾃分⾃⾝の活動の振り返りができるよう指導する。

3児童⽣徒が実験の過程や観察対象をタブレット等を使って撮影し、その画像や動画を実験や観察のまとめに活⽤できるよう指導する。

4児童⽣徒がコンピュータやプレゼンテーションソフトなどを活⽤して、分かりやすく発表したり表現したりできるように指導する。

5児童⽣徒が協働学習でタブレット等を使て線や⽂字を書き加えたり、図などを動かしたりしながら思考の過程を説明できるように指導する。

6児童⽣徒が⼀⼈学びの時に分からないことをタブレットに収められたコンテンツを使って解決できるよう指導する。

7児童⽣徒が学習⽤ソフトやインターネットなどを活⽤して、繰り返し学習したり練習したりして、知識の定着や技能の習熟を図れるように指導する。

1 情報モラル教育の概要やねらいを知り、情報モラル教育の必要性について理解する。

2 ネットトラブルを未然に防ぐにはどの領域の指導が必要なのかを事例別に整理する。

3児童⽣徒が発信する情報や情報社会での⾏動に責任を持ち、相⼿のことを考えた情報のやりとりができるように指導する。

4児童⽣徒がネットトラブルの加害者や被害者にならないようにSNS等の適切な使い⽅について指導する。

5児童⽣徒が情報社会の⼀員としてルールやマナーを守って、情報を集めたり発信したりできるように指導する。

6児童⽣徒がインターネットなどを利⽤する際に、情報の正しさや安全性などを理解して活⽤できるように指導する。

7インターネットに過度に依存しないように、⾃⼰管理の⼤切さと情報メディアとの関わり⽅について指導する。

8児童⽣徒がパスワードや⾃他の情報の⼤切さなど、情報セキュリティの基本的な知識を⾝に付けることができるように指導する。

児童⽣徒が使うICT 情報モラル教師が使うICT

児童⽣徒が使うICT

情報モラル

教師が使うICT