、9ル99゚ デカルト座標系における自由水面力学的境界条件...

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1. 1.はじめに はじめに Navier-Stokes Navier-Stokes 式を基本式とする数値計算において、 式を基本式とする数値計算において、 本来 本来 自由水面では、 自由水面では、 圧力 圧力・表面張力 表面張力 ・せん断力が常にバランス せん断力が常にバランス するように 境界条件を課す必要がある。 するように 境界条件を課す必要がある。 適合座標系による自 適合座標系による自 由水面を含む流れ場の計算では、 由水面を含む流れ場の計算では、水面において流速及び局 水面において流速及び局 所水面勾配を決定できるので、 所水面勾配を決定できるので、この力学的境界条件を容易 この力学的境界条件を容易 に満足させられる一方複雑な水面形を含む流れ に満足させられる一方複雑な水面形を含む流れ (例えば沿 (例えば沿 岸域に発生する砕波等) 岸域に発生する砕波等)を再現することは 困難となる。 を再現することは 困難となる。 一 方、 方、 近年固定グリッド上で 近年固定グリッド上で VOF VOF あるいは密度関数 を用いた あるいは密度関数 を用いた 自由水面の計算が多く行われている。 自由水面の計算が多く行われている。この方法は逆に、 この方法は逆に、数 値的に安定した複雑な自由水面変化を表現できる一方で、 値的に安定した複雑な自由水面変化を表現できる一方で、 力学的境界条件を厳密に課すことが 困難であり、 力学的境界条件を厳密に課すことが 困難であり、 多くの研究 多くの研究 はこれを簡略化 はこれを簡略化 (例えば圧力のみ与 えるなど) (例えば圧力のみ与 えるなど)し、 し、 局所的 局所的 な力学的作用が無視されている。 な力学的作用が無視されている。 Longuet-Higgins(1992) Longuet-Higgins(1992) は、 は、自由水面で満足すべきゼロ接 自由水面で満足すべきゼロ接 線方向せん断力条件 線方向せん断力条件(式 (式 22)が曲率に比例した渦度の生成 が曲率に比例した渦度の生成 を強制することを証明している。 を強制することを証明している。 これは、 これは、 曲率を有する水面 曲率を有する水面 を扱う場合、 を扱う場合、 正しい水面下の渦度場を再現するためには、 正しい水面下の渦度場を再現するためには、こ の条件の適用が不可欠であることを示し、 の条件の適用が不可欠であることを示し、 例えば急峻な水面 例えば急峻な水面 形をもつ砕波過程と渦形成を再現する上で 重要な条件とな 形をもつ砕波過程と渦形成を再現する上で 重要な条件とな る。 る。また水面直下に存在する渦は、 また水面直下に存在する渦は、そのせん断力により水 そのせん断力により水 面を下方に巻き込み、 面を下方に巻き込み、 その近傍曲率の大きな水面形状 その近傍曲率の大きな水面形状(い (い わゆる わゆるscar scar )を形成することはよく知られている を形成することはよく知られている ( Sarpkaya Sarpkaya (1996),Brocchini & Peregrine(2001) (1996),Brocchini & Peregrine(2001) )。 )。この新たに形成された この新たに形成された 急峻な水面は再びその直下に曲率に応じた二次渦を生成す 急峻な水面は再びその直下に曲率に応じた二次渦を生成す るため、 るため、 非常に複雑な流れ場が強制的に構成されることにな 非常に複雑な流れ場が強制的に構成されることにな る。 る。 さらに、 さらに、曲率の変化に伴う表面張力の局所的な発生と圧 曲率の変化に伴う表面張力の局所的な発生と圧 力との不均衡は水面の不安定を誘発し、 力との不均衡は水面の不安定を誘発し、 結果として気泡の形 結果として気泡の形 成の原因ともなる。 成の原因ともなる。 これらは要するに、 これらは要するに、 水面下に渦を伴う流 水面下に渦を伴う流 れ場を正しく計算するためには、 れ場を正しく計算するためには、 自由水面の力学的境界条 自由水面の力学的境界条 件を簡略化なしに強制させる必要があることを意味する。 件を簡略化なしに強制させる必要があることを意味する。 本研究は、 本研究は、 自由水面を有する水塊の落下に伴う流れ場の 自由水面を有する水塊の落下に伴う流れ場の デカルト座標系における再現計算に デカルト座標系における再現計算に Level-Set Level-Set 法を導入し、 法を導入し、 表面張力及びせん断力を水面において満足させる方法を提 表面張力及びせん断力を水面において満足させる方法を提 案するとともに、 案するとともに、 境界条件の簡略化に伴う流れ場の変化につ 境界条件の簡略化に伴う流れ場の変化につ いて議論するものである。 いて議論するものである。 2. 2.数値計算法 数値計算法 当研究では乱流モデルとして 当研究では乱流モデルとしてLES LES を採用した。 を採用した。 全ての変数 全ての変数 は重力加速度、 は重力加速度、 水深、 水深、水の密度で無次元化され、 水の密度で無次元化され、 グリッド グリッド スケール成分とサブグリッドスケール成分とに 分解された変数 スケール成分とサブグリッドスケール成分とに 分解された変数 に対する に対するNavier-Stokes Navier-Stokes 式をフィルター操作することによって 式をフィルター操作することによって 得られた次式 を基本式として計算した。 得られた次式 を基本式として計算した。 2 1 (1) T D p Dt u r =- u u g ここで、 ここで、uuは流速、 は流速、 ρは密度、 ρは密度、ppは圧力、 は圧力、 ν T T は格子粘 は格子粘 性、 性、 gは重力加速度であり、 は重力加速度であり、 上にバーが付いた変数はフィル 上にバーが付いた変数はフィル タリングされたグリッドスケールの値を表す。 タリングされたグリッドスケールの値を表す。 水表面の伝達と表面張力は 水表面の伝達と表面張力は Level-Set Level-Set 法によって算出され 法によって算出され る。 る。Level-Set Level-Set 法では計算点から水面までの距離を表す 法では計算点から水面までの距離を表す Level-Set Level-Set 関数を全計算領域において定義し 関数を全計算領域において定義し(流体内を正、 (流体内を正、 流体外を負とする)、 流体外を負とする)、 計算領域内の全ての 計算領域内の全ての Level-Set Level-Set 関数φ 関数φ は次式に従って移流される。 は次式に従って移流される。 0 (2) t f f = u Level-Set Level-Set 関数を導入する利点の一つは、 関数を導入する利点の一つは、 水面の曲率とそ 水面の曲率とそ れに応じて生じる表面張力の大きさを容易に計算できることで れに応じて生じる表面張力の大きさを容易に計算できることで ある。 ある。 今回曲率の計算には次式を採用した。 今回曲率の計算には次式を採用した。 2 2 2 3 2 2 2 2 ( ) ( ) ( ) 2 2 2 (3) ( ) yy zz x xx zz y xx yy z x y xy x z xz y z yz x y z f k f f f f f f f f f f fff fff fff f f f = - - - = ここで、 ここで、κは曲率、 κは曲率、添え字付きのφはその方向へのφの偏 添え字付きのφはその方向へのφの偏 微分である。 微分である。 Level-Set Level-Set 関数が水面までの距離であり続けるためには、 関数が水面までの距離であり続けるためには、 数 time step time step ごとに|∇φ|→ ごとに|∇φ|→ 1 となるように 再初期化する必要 となるように 再初期化する必要 がある。 がある。当研究では次式が収束するまで繰り返し計算するこ 当研究では次式が収束するまで繰り返し計算するこ とによって再初期化した。 とによって再初期化した。 2 2 2 ( )( 1) 0 (4) () ( ) S t S f f f f f f f - = = x 3. 3.力学的境界条件 の強制アルゴリズム 力学的境界条件 の強制アルゴリズム 3.1 3.1 力学的境界条件 力学的境界条件 自由水面における力学的境界条件をそれぞれ法線方向及 自由水面における力学的境界条件をそれぞれ法線方向及 び接線方向に分離すると、 び接線方向に分離すると、満足されるべき境界条件は次のよ 満足されるべき境界条件は次のよ デカルト座標系における自由水面力学的境界条件の デカルト座標系における自由水面力学的境界条件の 強制アルゴリズムの開発 強制アルゴリズムの開発 Algorithms of enforcing kinetic boundary conditions to fre Algorithms of enforcing kinetic boundary conditions to fre 北海道大学工学部土木工学科 ○学生員 北海道大学工学部土木工学科 ○学生員 猿渡亜由未 猿渡亜由未 (Ayumi Saruwata (Ayumi Saruwata 北海道大学工学研究科助手 北海道大学工学研究科助手 正員 正員 渡部靖憲 渡部靖憲 (Yasunori Watana (Yasunori Watana 北海道大学工学研究科教授 北海道大学工学研究科教授 フェロー 佐伯浩 フェロー 佐伯浩 (Hiroshi Saeki (Hiroshi Saeki Ⅱ-43 平成16年度 土木学会北海道支部 論文報告集 第61号

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  • 1.1. はじめに はじめに

      Navier-StokesNavier-Stokes 式を基本式とする数値計算において、式を基本式とする数値計算において、 本来本来

    自由水面では、自由水面では、 圧力圧力 ・・表面張力表面張力 ・・せん断力が常にバランスせん断力が常にバランス

    するように境界条件を課す必要がある。するように境界条件を課す必要がある。適合座標系による自適合座標系による自

    由水面を含む流れ場の計算では、由水面を含む流れ場の計算では、 水面において流速及び局水面において流速及び局

    所水面勾配を決定できるので、所水面勾配を決定できるので、この力学的境界条件を容易この力学的境界条件を容易

    に満足させられる一方複雑な水面形を含む流れに満足させられる一方複雑な水面形を含む流れ (例えば沿(例えば沿

    岸域に発生する砕波等)岸域に発生する砕波等)を再現することは困難となる。を再現することは困難となる。 一一

    方、方、 近年固定グリッド上で近年固定グリッド上で VOFVOF あるいは密度関数を用いたあるいは密度関数を用いた

    自由水面の計算が多く行われている。自由水面の計算が多く行われている。この方法は逆に、この方法は逆に、数数

    値的に安定した複雑な自由水面変化を表現できる一方で、値的に安定した複雑な自由水面変化を表現できる一方で、

    力学的境界条件を厳密に課すことが困難であり、力学的境界条件を厳密に課すことが困難であり、 多くの研究多くの研究

    はこれを簡略化はこれを簡略化 (例えば圧力のみ与えるなど)(例えば圧力のみ与えるなど)し、し、 局所的局所的

    な力学的作用が無視されている。な力学的作用が無視されている。

      Longuet-Higgins(1992)Longuet-Higgins(1992)は、は、自由水面で満足すべきゼロ接自由水面で満足すべきゼロ接

    線方向せん断力条件線方向せん断力条件 (式(式 22))が曲率に比例した渦度の生成が曲率に比例した渦度の生成

    を強制することを証明している。を強制することを証明している。 これは、これは、 曲率を有する水面曲率を有する水面

    を扱う場合、を扱う場合、 正しい水面下の渦度場を再現するためには、正しい水面下の渦度場を再現するためには、ここ

    の条件の適用が不可欠であることを示し、の条件の適用が不可欠であることを示し、 例えば急峻な水面例えば急峻な水面

    形をもつ砕波過程と渦形成を再現する上で重要な条件とな形をもつ砕波過程と渦形成を再現する上で重要な条件とな

    る。る。また水面直下に存在する渦は、また水面直下に存在する渦は、そのせん断力により水そのせん断力により水

    面を下方に巻き込み、面を下方に巻き込み、 その近傍曲率の大きな水面形状その近傍曲率の大きな水面形状 (い(い

    わゆるわゆるscarscar))を形成することはよく知られているを形成することはよく知られている ((SarpkayaSarpkaya

    (1996),Brocchini & Peregrine(2001)(1996),Brocchini & Peregrine(2001))。)。この新たに形成されたこの新たに形成された

    急峻な水面は再びその直下に曲率に応じた二次渦を生成す急峻な水面は再びその直下に曲率に応じた二次渦を生成す

    るため、るため、 非常に複雑な流れ場が強制的に構成されることにな非常に複雑な流れ場が強制的に構成されることにな

    る。る。 さらに、さらに、曲率の変化に伴う表面張力の局所的な発生と圧曲率の変化に伴う表面張力の局所的な発生と圧

    力との不均衡は水面の不安定を誘発し、力との不均衡は水面の不安定を誘発し、 結果として気泡の形結果として気泡の形

    成の原因ともなる。成の原因ともなる。これらは要するに、これらは要するに、水面下に渦を伴う流水面下に渦を伴う流

    れ場を正しく計算するためには、れ場を正しく計算するためには、 自由水面の力学的境界条自由水面の力学的境界条

    件を簡略化なしに強制させる必要があることを意味する。件を簡略化なしに強制させる必要があることを意味する。

     本研究は、 本研究は、 自由水面を有する水塊の落下に伴う流れ場の自由水面を有する水塊の落下に伴う流れ場の

    デカルト座標系における再現計算にデカルト座標系における再現計算に Level-SetLevel-Set法を導入し、法を導入し、

    表面張力及びせん断力を水面において満足させる方法を提表面張力及びせん断力を水面において満足させる方法を提

    案するとともに、案するとともに、境界条件の簡略化に伴う流れ場の変化につ境界条件の簡略化に伴う流れ場の変化につ

    いて議論するものである。いて議論するものである。

    2.2. 数値計算法 数値計算法

    当研究では乱流モデルとして当研究では乱流モデルとしてLESLES を採用した。を採用した。 全ての変数全ての変数

    は重力加速度、は重力加速度、 水深、水深、 水の密度で無次元化され、水の密度で無次元化され、 グリッドグリッド

    スケール成分とサブグリッドスケール成分とに分解された変数スケール成分とサブグリッドスケール成分とに分解された変数

    に対するに対するNavier-StokesNavier-Stokes 式をフィルター操作することによって式をフィルター操作することによって

    得られた次式を基本式として計算した。得られた次式を基本式として計算した。

    21 (1)

    T

    D pDt

    υρ

    = − ∇ + ∇ + ⋅⋅⋅u u g  

    ここで、ここで、 uu は流速、は流速、 ρは密度、ρは密度、 pp は圧力、は圧力、 ννTTは格子粘は格子粘

    性、性、 ggは重力加速度であり、は重力加速度であり、 上にバーが付いた変数はフィル上にバーが付いた変数はフィル

    タリングされたグリッドスケールの値を表す。タリングされたグリッドスケールの値を表す。

     水表面の伝達と表面張力は 水表面の伝達と表面張力は Level-SetLevel-Set法によって算出され法によって算出され

    る。る。Level-SetLevel-Set法では計算点から水面までの距離を表す法では計算点から水面までの距離を表す

    Level-SetLevel-Set関数を全計算領域において定義し関数を全計算領域において定義し (流体内を正、(流体内を正、

    流体外を負とする)、流体外を負とする)、 計算領域内の全ての計算領域内の全ての Level-SetLevel-Set関数φ関数φ

    は次式に従って移流される。は次式に従って移流される。

    0 (2)

    φ∂

    + ⋅∇ = ⋅ ⋅ ⋅∂

    u   

      Level-SetLevel-Set関数を導入する利点の一つは、関数を導入する利点の一つは、 水面の曲率とそ水面の曲率とそ

    れに応じて生じる表面張力の大きさを容易に計算できることでれに応じて生じる表面張力の大きさを容易に計算できることで

    ある。ある。 今回曲率の計算には次式を採用した。今回曲率の計算には次式を採用した。

            

    2 2 2

    32 2 2 2

    ( ) ( ) ( )

    2 2 2(3)

    ( )

    y y zz x xx zz y xx yy z

    x y xy x z xz y z yz

    x y z

    φκφ

    φ φ φ φ φ φ φ φ φ

    φ φ φ φ φ φ φ φ φ

    φ φ φ

    ∇= ∇ ⋅∇

    + + + + + − − − = ⋅ ⋅ ⋅

    + +  

    ここで、ここで、κは曲率、κは曲率、添え字付きのφはその方向へのφの偏添え字付きのφはその方向へのφの偏

    微分である。微分である。

      Level-SetLevel-Set関数が水面までの距離であり続けるためには、関数が水面までの距離であり続けるためには、数数

    time steptime step ごとに|∇φ|→ごとに|∇φ|→ 11 となるように再初期化する必要となるように再初期化する必要

    がある。がある。当研究では次式が収束するまで繰り返し計算するこ当研究では次式が収束するまで繰り返し計算するこ

    とによって再初期化した。とによって再初期化した。

            22 2

    ( )( 1) 0 (4)

    ( )( )

    St

    S

    φφ φ

    φφ

    φ φ

    ∂+ ∇ − = ⋅⋅⋅

    =+ ∇ ∆x

        

    3.3. 力学的境界条件の強制アルゴリズム 力学的境界条件の強制アルゴリズム

      3.13.1力学的境界条件力学的境界条件

     自由水面における力学的境界条件をそれぞれ法線方向及 自由水面における力学的境界条件をそれぞれ法線方向及

    び接線方向に分離すると、び接線方向に分離すると、満足されるべき境界条件は次のよ満足されるべき境界条件は次のよ

    デカルト座標系における自由水面力学的境界条件のデカルト座標系における自由水面力学的境界条件の

    強制アルゴリズムの開発強制アルゴリズムの開発

    Algorithms of enforcing kinetic boundary conditions to free surfaces in Cartesian coordinate systemAlgorithms of enforcing kinetic boundary conditions to free surfaces in Cartesian coordinate system

    北海道大学工学部土木工学科 ○学生員 北海道大学工学部土木工学科 ○学生員  猿渡亜由未猿渡亜由未 (Ayumi Saruwatari) (Ayumi Saruwatari)

    北海道大学工学研究科助手北海道大学工学研究科助手  正員  正員  渡部靖憲 渡部靖憲  (Yasunori Watanabe) (Yasunori Watanabe)

    北海道大学工学研究科教授 北海道大学工学研究科教授  フェロー 佐伯浩 フェロー 佐伯浩       (Hiroshi Saeki) (Hiroshi Saeki)

      

    Ⅱ-43 平成16年度 土木学会北海道支部 論文報告集 第61号

  • うに書ける。うに書ける。

            

    2 (5)

    0 (6)

    n

    n t

    up

    nu ut n

    µ τκ

    µ

    ∂+ = ⋅ ⋅ ⋅

    ∂∂ ∂

    = ⋅⋅⋅∂ ∂

       

    ( + )   

    (6)(6)式のゼロ接線方向応力条件は、式のゼロ接線方向応力条件は、水面で満足される様に流水面で満足される様に流

    体内グリッドから流体外の固定グリッドへ速度外挿されるべき体内グリッドから流体外の固定グリッドへ速度外挿されるべき

    である。である。(5)(5)式の条件を達成するために以下の節で表す式の条件を達成するために以下の節で表す 22つのつの

    方法により計算を行い、方法により計算を行い、その差異を検討していく。その差異を検討していく。

    ..  3.23.2表面張力を体積力として与える方法表面張力を体積力として与える方法

      (1)(1)式の右辺に表面張力項を加えた次式を基本式として計算式の右辺に表面張力項を加えた次式を基本式として計算

    する。する。

            

    21 ( )

    (7)

    (1 cos( )( ) (8)

    2

    T

    Dp

    Dtδ φ τκ

    υρ ρ

    πφεδ φ

    ε

    = − ∇ + ∇ + + ⋅⋅⋅

    += ⋅⋅⋅

    u nu g  

           

    ここでεは流体内外を連続相と仮定した場合の水面を判定すここでεは流体内外を連続相と仮定した場合の水面を判定す

    る長さ尺度であり、る長さ尺度であり、 本計算ではε本計算ではε =2=2 ΔΔ xx とした。とした。 定義したδ定義したδ

    関数により、関数により、 φφ =0=0 近傍のみで表面張力を評価可能となる。近傍のみで表面張力を評価可能となる。

      3.33.3 表面張力を面積力として与える方法表面張力を面積力として与える方法

      (1)(1)式を基本式として計算し、式を基本式として計算し、(5)(5)式の法線方向粘性力を簡単式の法線方向粘性力を簡単

    のため無視し、のため無視し、 以下の条件を水面で直接与える。以下の条件を水面で直接与える。

               (9)p τκ= ⋅ ⋅ ⋅   ..

    4.4. 結果 結果

     自由水面を有する円柱状の水隗が着水した後の水面と、 自由水面を有する円柱状の水隗が着水した後の水面と、 水水

    面直下に発生する渦核分布面直下に発生する渦核分布 LESLES により再現し、により再現し、前章で示し前章で示し

    た表面張力の数値的取り扱いの差異による結果の依存性をた表面張力の数値的取り扱いの差異による結果の依存性を

    考察していく。考察していく。 それぞれのケースにおけるレイノルズ数それぞれのケースにおけるレイノルズ数 ReRe とと

    ウェーバー数ウェーバー数 WeWe、、 水柱の落下初速度水柱の落下初速度 vv00、、 表面張力の与え表面張力の与え

    方等については表方等については表 11 に示す通りである。に示す通りである。

      4.1 case1.4.1 case1.  ((図図 11参照参照))

     表面張力が働かない場合の計算結果である。 表面張力が働かない場合の計算結果である。 水隗の落下水隗の落下

    によって典型的な円状のスプラッシュが発生したによって典型的な円状のスプラッシュが発生した(time=700(time=700 ~~

    800)800)。。 静水面と柱状水隗が接する曲線状で渦輪が発生し、静水面と柱状水隗が接する曲線状で渦輪が発生し、

    時間と共に外側に広がっていく様子が確認できる。時間と共に外側に広がっていく様子が確認できる。水隗の上水隗の上

    部水面が静水面に到達したときに初期渦輪の内側に新たな部水面が静水面に到達したときに初期渦輪の内側に新たな

    渦輪が発生している渦輪が発生している(time=700)(time=700)。。

    表表 11

    体積力面積力体積力表面張力の

    与え方

    1.00.10.10.1v0

    1×104100100∞We

    5×104100010001000Re

    4321case

    体積力面積力体積力表面張力の

    与え方

    1.00.10.10.1v0

    1×104100100∞We

    5×104100010001000Re

    4321case

    図図11  case1:case1:表面張力が働かない場合表面張力が働かない場合

    Re=1000,We=Re=1000,We=∞∞,v,v00=0.1=0.1

    timetime

    =100=100

    timetime

    =200=200

    timetime

    =300=300

    timetime

    =400=400

    timetime

    =500=500

    timetime

    =600=600

    timetime

    =700=700

    timetime

    =800=800

    4.2 case2. 4.2 case2.  ((図参照図参照))

     表面張力を体積力として働かせたケースである。 表面張力を体積力として働かせたケースである。 表面張力表面張力

    が働くことによって柱状水隗上部が球状化しているのが見てが働くことによって柱状水隗上部が球状化しているのが見て

    取れる。取れる。 また、また、 球状化した水面下に渦が発生しており、球状化した水面下に渦が発生しており、 表表

    面張力が加わったことによって流体内の圧力場が変化するこ面張力が加わったことによって流体内の圧力場が変化するこ

    とが水面形や水面直下の渦の形成に影響を与えていることがとが水面形や水面直下の渦の形成に影響を与えていることが

    原因だと考えられる。原因だと考えられる。 またまたcase1case1と比較すると、と比較すると、 渦輪の発達渦輪の発達

    状況が異なることがわかる。状況が異なることがわかる。表面張力により特に水面近傍の表面張力により特に水面近傍の

    圧力場が変化するため、圧力場が変化するため、 渦強度ならびにそのスケールが影渦強度ならびにそのスケールが影

    響を受けたものと考えられる。響を受けたものと考えられる。

    平成16年度 土木学会北海道支部 論文報告集 第61号

  • 図図22  case2:case2:体積力として表面張力を与えた場合体積力として表面張力を与えた場合(3.1(3.1参照参照))

    Re=1000,We=100,vRe=1000,We=100,v00=0.1=0.1

    図図33  case3:case3:面積力として表面張力を与えた場合面積力として表面張力を与えた場合(3.2(3.2参照参照))

    Re=1000,We=100,vRe=1000,We=100,v00=0.1=0.1

    timetime

    =100=100

    timetime

    =200=200

    timetime

    =300=300

    timetime

    =400=400

    timetime

    =500=500

    timetime

    =600=600

    timetime

    =700=700

    timetime

    =800=800

    timetime

    =900=900

    timetime

    =100=100

    timetime

    =200=200

    timetime

    =300=300

    timetime

    =400=400

    timetime

    =500=500

    timetime

    =600=600

    timetime

    =700=700

    timetime

    =800=800

    timetime

    =900=900

    平成16年度 土木学会北海道支部 論文報告集 第61号

  • 参考文献参考文献

    1)Longuet-Higgins,1992.Capillary rollers and1)Longuet-Higgins,1992.Capillary rollers and

    bores.J.Fluid Mech.240,658-679bores.J.Fluid Mech.240,658-679

    2)Sarpkaya,1996.Vorticity,free-surface,and2)Sarpkaya,1996.Vorticity,free-surface,and

    surfactants.Ann.Rev.Fluid Mech.28,88-128surfactants.Ann.Rev.Fluid Mech.28,88-128

    3)Brocchini & Peregrine,2001.The dynamics of strong3)Brocchini & Peregrine,2001.The dynamics of strong

    turbulence at free surfaces.Part 1.Description.J.Fluidturbulence at free surfaces.Part 1.Description.J.Fluid

    Mech.449,225-254Mech.449,225-254

    4)Sethian & Smereka,2003. Level set methods for fluid4)Sethian & Smereka,2003. Level set methods for fluid

    interfaces.Ann.Rev.Fluid Mech.35,341-372interfaces.Ann.Rev.Fluid Mech.35,341-372

    5)J.A.Sethian,1996.Level set methods and fast march-5)J.A.Sethian,1996.Level set methods and fast march-

    ing methods.Cambridge university pressing methods.Cambridge university press

    4.3 case3. 4.3 case3.  ((図図33参照参照))

     表面張力を面積力として働かせたケースである。 表面張力を面積力として働かせたケースである。 2.2. のケーのケー

    スと比べ水隗の球状化の度合いが小さい。スと比べ水隗の球状化の度合いが小さい。その明確な理由その明確な理由

    は定かではないが、は定かではないが、 表面張力を体積力として扱う場合水面に表面張力を体積力として扱う場合水面に

    厚みを持たせているため、厚みを持たせているため、 表面張力のグリッド依存性があると表面張力のグリッド依存性があると

    いうことと関係しているのではないかと考えられる。いうことと関係しているのではないかと考えられる。

    4.4 case4. 4.4 case4.  ((図図44参照参照))

     当研究は砕波のシミュレーションへと発展させることを目的と 当研究は砕波のシミュレーションへと発展させることを目的と

    しているため、しているため、 砕波によりジェットが水面に貫入する時と同砕波によりジェットが水面に貫入する時と同

    オーダーでの条件で計算を行った。オーダーでの条件で計算を行った。 水隗の落下に伴って大水隗の落下に伴って大

    規模なスプラッシュが起こっていることがわかる。規模なスプラッシュが起こっていることがわかる。timetime

    step1000step1000 前後では、前後では、 キャビティー円周上に王冠状の変動がキャビティー円周上に王冠状の変動が

    見られる。見られる。これは、これは、王冠状の水面を再現しようとしているもの王冠状の水面を再現しようとしているもの

    の、の、 グリッドが荒くてそれを解像しきれていないものだと考えらグリッドが荒くてそれを解像しきれていないものだと考えら

    れる。れる。

    5.5. 結論結論

     静水への柱状水隗の着水を例に、 静水への柱状水隗の着水を例に、 数値計算結果の境界条数値計算結果の境界条

    件依存性を調べた。件依存性を調べた。 水面の境界条件として圧力の他に表面水面の境界条件として圧力の他に表面

    張力を取り入れたことによって、張力を取り入れたことによって、 水面の曲率が大きいところで水面の曲率が大きいところで

    水面形が変化していく様子を再現することができた。水面形が変化していく様子を再現することができた。 また、また、

    timetime

    =100=100

    timetime

    =200=200

    timetime

    =300=300

    timetime

    =400=400

    timetime

    =500=500

    timetime

    =600=600

    timetime

    =700=700

    timetime

    =800=800

    timetime

    =900=900

    timetime

    =1000=1000

    timetime

    =1100=1100

    timetime

    =1200=1200

    図図44  case4:case4:砕波によるジェット貫入時と類似した条件を与えた場合砕波によるジェット貫入時と類似した条件を与えた場合

    その水面形の変化に伴って水面直下に渦が発生する様子もその水面形の変化に伴って水面直下に渦が発生する様子も

    再現されている。再現されている。 水面の境界条件の取り扱いによって水面下水面の境界条件の取り扱いによって水面下

    の渦構造が変化する。の渦構造が変化する。数値パラメータの依存性のない一意数値パラメータの依存性のない一意

    の解を得るための境界条件強制法を開発する必要がある。の解を得るための境界条件強制法を開発する必要がある。

     今後は水面の境界条件としてせん断力の効果も取り入れて 今後は水面の境界条件としてせん断力の効果も取り入れて

    いくことによってより現実的な計算結果が得られるようにしていいくことによってより現実的な計算結果が得られるようにしてい

    くとともに、くとともに、 この方法を砕波の再現計算へと適用し砕波時にこの方法を砕波の再現計算へと適用し砕波時に

    水面直下の渦が水面にどのような影響を与えているかを調べ水面直下の渦が水面にどのような影響を与えているかを調べ

    ていく予定である。ていく予定である。

    平成16年度 土木学会北海道支部 論文報告集 第61号