genzyme - 医薬品医療機器総合機構 · 2015. 5. 29. · genzyme ラロニダーゼ 2.7.3...

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genzyme ラロニダーゼ 2.7.3 臨床的有効性の概要 35 2.7.3 臨床的有効性の概要 2.7.3.1 背景及び概観 2.7.3.1.1 総合的有効性の概要 ラロニダーゼ(遺伝子組換えヒトα-L-イズロニダーゼ、以下 rhIDU)は、MPS I 患者で不足 している酵素を補充するため開発した。本臨床開発計画では、rhIDU 100 U/kg 0.58 mg/kgの週 1 回静脈内投与の有効性と安全性を評価するために、下記 3 つの臨床試験を実施した。 1/2 相試験(BIO7500-001)―MPS I 患者 10 例を対象とした非盲検試験。本試験は当初 計画した 52 週間の治験実施期間を延長し、市販製剤が入手可能になった時点(288 間)で終了した。 3 相二重盲検試験(ALID-003-99)―MPS I 患者 45 例(プラセボ群 23 例、rhIDU 22 例、無作為割付け)を対象とした、26 週間のプラセボ対照二重盲検比較試験。 3 相継続試験(ALID-006-01)―第 3 相二重盲検試験にエントリーした患者全例に非盲 検で rhIDU 182 週間投与した。 さらに、治験外提供(Expanded Access ProgramEAP)の患者の概要をまとめた。また、本邦 における MPS I 患者を対象とした安全性確認試験を目標症例数 5 例として実施中であり、そ の中間報告を参考として、さらに、欧米における承認後第 4 相臨床試験である 5 歳未満児患 20 例を対象とした試験成績の概要を参考としてまとめた。 2.7.3.1.2 臨床試験デザイン 1/2 相試験、第 3 相二重盲検試験、第 3 相継続試験、5 歳未満児対象臨床試験及び安全性確 認試験の目的、試験デザイン、登録患者数、試験期間及び選択・除外基準を表 2.7.3-1 に要約 した。患者の選択基準及び除外基準は年齢制限を除きほぼ同様であった。年齢は、第 1/2 相試 験、第 3 相二重盲検試験及び第 3 相継続試験では 5 歳以上を対象とし、5 歳未満児対象試験と は異なった。また、国内の安全性確認試験ではすべての年齢の患者を対象とすることとした。 3 相二重盲検試験に関しては、各治験施設における rhIDU とプラセボ群の症例数が1:1と なるようにコンピュータによる無作為化を行い、各施設におけるバランスをとるためブロッ ク法を用いた。 3 相二重盲検試験では、全項目について rhIDU 治療群とプラセボ群を比較し、有効性解析 を行った。第 3 相継続試験では、各群内でベースライン(第 3 相二重盲検試験において無作 為化を行う前に測定した測定値)及び登録時(第 3 相継続試験に登録する前に第 3 相二重盲 検試験で測定した測定値)と、182 週を比較して有効性解析をした。第 3 相継続試験では主要 有効性評価項目についてのみ比較を実施した。 rhIDU の用法・用量と評価時期はイヌの MPS I 試験に基づき設定した。また、評価計画は、イ ヌのモデルで得られた既知の改善及び MPS I 疾患の既知の兆候・症状に基づいて設定した。

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  • ggeennzzyymmee ラロニダーゼ 2.7.3 臨床的有効性の概要

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    2.7.3 臨床的有効性の概要

    2.7.3.1 背景及び概観

    2.7.3.1.1 総合的有効性の概要

    ラロニダーゼ(遺伝子組換えヒトα-L-イズロニダーゼ、以下 rhIDU)は、MPS I患者で不足

    している酵素を補充するため開発した。本臨床開発計画では、rhIDU 100 U/kg (0.58 mg/kg)

    の週 1回静脈内投与の有効性と安全性を評価するために、下記 3つの臨床試験を実施した。

    • 第 1/2相試験(BIO7500-001)―MPS I患者 10例を対象とした非盲検試験。本試験は当初

    計画した 52週間の治験実施期間を延長し、市販製剤が入手可能になった時点(288週

    間)で終了した。

    • 第 3相二重盲検試験(ALID-003-99)―MPS I患者 45例(プラセボ群 23例、rhIDU群 22

    例、無作為割付け)を対象とした、26週間のプラセボ対照二重盲検比較試験。

    • 第 3相継続試験(ALID-006-01)―第 3相二重盲検試験にエントリーした患者全例に非盲

    検で rhIDUを 182週間投与した。

    さらに、治験外提供(Expanded Access Program、EAP)の患者の概要をまとめた。また、本邦

    におけるMPS I患者を対象とした安全性確認試験を目標症例数 5例として実施中であり、そ

    の中間報告を参考として、さらに、欧米における承認後第 4相臨床試験である 5歳未満児患

    者 20例を対象とした試験成績の概要を参考としてまとめた。

    2.7.3.1.2 臨床試験デザイン

    第 1/2相試験、第 3相二重盲検試験、第 3相継続試験、5歳未満児対象臨床試験及び安全性確

    認試験の目的、試験デザイン、登録患者数、試験期間及び選択・除外基準を表 2.7.3-1に要約

    した。患者の選択基準及び除外基準は年齢制限を除きほぼ同様であった。年齢は、第 1/2相試

    験、第 3相二重盲検試験及び第 3相継続試験では 5歳以上を対象とし、5歳未満児対象試験と

    は異なった。また、国内の安全性確認試験ではすべての年齢の患者を対象とすることとした。

    第 3相二重盲検試験に関しては、各治験施設における rhIDUとプラセボ群の症例数が1:1と

    なるようにコンピュータによる無作為化を行い、各施設におけるバランスをとるためブロッ

    ク法を用いた。

    第 3相二重盲検試験では、全項目について rhIDU治療群とプラセボ群を比較し、有効性解析

    を行った。第 3相継続試験では、各群内でベースライン(第 3相二重盲検試験において無作

    為化を行う前に測定した測定値)及び登録時(第 3相継続試験に登録する前に第 3相二重盲

    検試験で測定した測定値)と、182週を比較して有効性解析をした。第 3相継続試験では主要

    有効性評価項目についてのみ比較を実施した。

    rhIDUの用法・用量と評価時期はイヌのMPS I試験に基づき設定した。また、評価計画は、イ

    ヌのモデルで得られた既知の改善及びMPS I疾患の既知の兆候・症状に基づいて設定した。

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    表 2.7.3-1: 試験デザイン

    項目 第 1/2相試験 第 3相二重盲検試験/第 3相継続試験 治験実施計画書

    番号 BIO7500-001

    二重盲検試験:ALID-003-99 継続試験:ALID-006-01

    方法 非盲検、多施設 二重盲検試験:多国籍、多施設、無作為化、プラセボ対照、二重盲検比較 継続試験:非盲検

    目的 MPS I治療における rhIDUの安全性及び有効性の検討

    二重盲検試験:MPS I治療における rhIDUの有効性及び安全性の検証 継続試験:rhIDUの長期投与による安全性及び有効性の検討

    患者数 10例 二重盲検試験:45例(rhIDU 22例、プラセボ 23例) 継続試験:二重盲検試験に参加した 45例

    試験期間 288週 二重盲検試験:26 週 継続試験:182週

    選択基準 ● 5歳以上の男女で、臨床診断及び酵素分析でMPS Iと確定診断された患者。

    ● 肝臓又は脾臓サイズの増加(該当年齢の正常値の≥ 1.5倍)、及び尿中 GAG濃度の上昇(該当年齢の正常値の≥ 5倍)を含むMPS Iの顕著な身体障害が確認された患者。

    ● 本人から同意取得した者、又は親(法定代理人)から同意を取得した患者。

    ● 治験の初め 6週を Harbor-UCLA臨床研究センターで参加可能な患者(最低片親又は法廷代理人と同伴)

    ● 近隣に本剤の投与、適切な安全性モニタリング、評価に必要な検体を採取することに合意し、実施可能である医師がいること

    ● MPS Iの測定可能な臨床徴候及び症状が確認され、MPS Iの診断が記録されており、かつ、線維芽細胞中又は白血球中のα-L-IDU活性が、測定検査機関データの正常下限値の 10%未満であること。

    ● 本人から書面で同意取得した者、又は親(法定代理人)から書面で同意取得した患者。

    ● 5歳以上の男女であること。 ● 妊娠可能な女性は、ベースライン時に

    妊娠テスト(尿中β-hCG)を受けて陰性であること(妊娠可能な女性及び性的に成熟した男性患者に対しては、必ず、試験期間を通して医学的に認められる避妊法をとるよう指導した)。

    ● 6分間自力で立ち、6分間に最低 5m歩くことができること。

    ● 再現性ある努力肺活量(FVC)の結果を出せる患者。

    ● ベースラインの FVCが予測正常値の80%以下である患者。5~7歳の小児については立位身長に対する Polgar予測値に基づき、8歳以上の患者については Hankinson予測値に基づく。

    除外基準

    ● 5歳未満の患者 ● 医師が、非協力的、所定の評価が実施

    不能、又は治験実施計画書の遵守できないと判断した患者。

    ● 病状が重篤な患者。 ● 命にかかわる状態で、緊急の臨床的処

    置が必要な患者。 ● 骨髄移植を受けたことがある患者。 ● 治験登録の 30日前以内に、本剤又は

    他の治験薬が投与された患者。

    ● 気管切開を受けたことがある患者。 ● 骨髄移植を受けたことがある患者。 ● 妊娠中又は授乳中の患者。 ● 治験登録の 30日前以内に、本剤又は他

    の治験薬が投与された患者。 ● 所定の評価及び追跡調査等で治験実施

    計画書の遵守が妨げられると考えられる医学的状態、重篤な合併症、その他の事由のある患者。

    ● rhIDU又は被験薬中の成分に対して、過敏症が知られている患者。

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    項目 5歳未満児対象臨床試験 安全性確認試験 治験実施計画書

    番号 ALID-014-02 ALID02205

    方法

    非盲検、多施設 非盲検、多施設

    目的

    [主要] 5歳未満のMPS I患者に対するrhIDUの安全性及び薬物動態の検討 [副次] 有効性の検討

    MPS I患者に対する rhIDUの安全性及び有効性の検討

    患者数

    20例 計画時:5例 中間解析時:1例

    試験期間

    52週 最大 2年間又は承認後、市販製剤への切り替え時のいずれか早い日まで

    選択基準

    ● 本治験に関連する如何なる処置の実施前に親又は法定代理人から治験への参加の同意が書面で得られた患者。本治験への組入れに関係なく、遺伝子型の検査に対して、親からの別の同意書が必要

    ● 登録時 5歳未満の患者 ● 線維芽細胞又は白血球のα-L-IDU酵素

    活性が正常値下限の 10%未満、又は検査機関の検出限界以下のイズロノダーゼ欠損が確認された患者

    ● 遺伝子型検査でMPSⅠであると臨床診断がなされた患者

    ● 本治験に適格な患者に対する本治験の代替治療のリスクとベネフィット及び神経変性によるMPSⅠの発現について親又は法定代理人に十分に説明したことを確認するため、親又は法定代理人が造血幹細胞移植について相談したことが診療録に記載されている患者

    ● 被験者(未成年の場合は代諾者)の文書による同意を得た患者。被験者が未成年の場合は年齢に応じた被験者本人のアセントを取得。

    ● 臨床症状に基づきMPS Iと診断されている患者

    ● 白血球α-L-IDU酵素活性が測定施設(SRL)の正常範囲下限の 10.0%未満であることによってイズロニダーゼ欠乏が確認されている患者

    除外基準

    ● 造血幹細胞移植を受けた患者又は造血幹細胞移植の考慮中の患者

    ● 登録時に急性水頭症の患者 ● 心血管系疾患、肝疾患、肺疾患、神

    経系疾患、腎疾患、その他重篤な併発疾患を含む臨床的に重大な臓器疾患(ただし、MPSⅠに関連するものは除く)を有する患者、又は治験責任医師が本治験に不適当又は生存期間が短縮する可能性があると判断した患者

    ● 登録前 3ヵ月以内に治験薬の投与を受けた患者

    ● Aldurazyme又は本剤の成分に既知の高度な過敏症のある患者

    ● 造血幹細胞移植(HSCT)の施行歴、又は施行予定のある患者

    ● 同意取得時に急性水頭症を合併している患者

    ● 臨床的に重要な器質的疾患(心血管系疾患、肝疾患、肺疾患、神経疾患、腎疾患等。ただし、MPS I関連症状は除く)又は他の重篤な合併症を有する患者。あるいは、治験責任医師の判断により、治験参加が困難な状況にある、又は生存期間の短縮に繋がる状況にあると考えられる患者

    ● 同意取得前 30日以内に治験薬投与(未承認薬を含む)を受けた患者

    ● JC0498の成分に対する重症な過敏症歴のある患者

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    なお、製法スケールの異なるロット間の安全性、有効性及び薬物動態の比較検討を第 1/2相継

    続試験の一部として実施した。

    第 3相二重盲検試験に続いて実施した第 3相継続試験は、非盲検試験であり、全例 rhIDUの

    投与を受け、rhIDUの長期投与における安全性と有効性を評価した。第 3相継続試験への適格

    基準は、第 3相二重盲検試験を完了した患者で、第 3相二重盲検試験でを 26回連続して行わ

    れる週 1回投与のうち 21回以上の投与を受けていること、第 3相継続試験への参加が禁忌と

    なる安全性の問題がないことを加えた。

    第 1/2相試験、第 3相二重盲検試験及び第 3相継続試験における有効性項目は、臨床上の有用

    性とライソゾーム中の GAG蓄積を示す基準を選択した。両試験ともに、肺機能、肝臓・脾臓

    容積及び睡眠時無呼吸等の有効性評価項目の他、疼痛スコア及び QOL等も評価した。有効性

    評価項目を表 2.7.3-2に示した。

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    表 2.7.3-2: 有効性評価項目

    評価項目 第 1/2相試験 第 3相二重盲検試験及び第 3相継続試験 1 5歳未満児対象臨床試験 安全性確認試験 主要評価項目 ● 肝臓及び脾臓容積

    ● 尿中 GAG濃度 ● %努力肺活量(%FVC) ● 努力肺活量 2 ● 6分間歩行検査(6MWT)

    副次的評価項目

    ● 関節可動域 ● ニューヨーク心臓学会(NYHA)

    分類スコアを含む心機能 ● 気道閉塞(AHI及び気道指数) ● 眼障害

    ● 無呼吸/低換気指数(AHI) ● 肝容積 ● CHAQ/HAQ障害指数(小児健康調

    査票/健康調査票;CHAQ/HAQ) ● 肩関節屈曲可動域

    三次的評価項目

    ● 中枢神経系異常 ● 骨障害 ● 思春期前患者における身長及び体

    重成長率

    ● 尿中 GAG濃度 ● 疼痛スコア(CHAQ/HAQ) ● 関節可動域 ● 患者の QOL ● 身長 ● 視力、眼圧検査及び眼科検査項目 ● 心機能 ● 医師の全般的評価(第 3相試験の

    み) ● 努力性呼気量(FEV1)及び全肺気量

    (TLC)、及び拡散能力(DL) ● 親/一次介護者の QOL ● 処置・入院等 ● 心拍数、呼吸数、及び酸素飽和度

    ● 酸素飽和度及び体重 ● 心エコー図 ● 肝サイズ ● 聴力検査 ● 眼科的検査

    視力、眼圧、眼底所見及びス

    リット・ランプ検査 ● 上部呼吸器ケアの必要度 ● 睡眠時検査

    睡眠時無呼吸低呼吸指数(AHI)

    Desatulation Index 第三者専門医の総合評価

    ● 発育速度 身長及び体重

    ● 尿中 GAG濃度 ● 治験責任医師の総合評価 ● 精神発達検査

    ● 尿中 GAG濃度 ● 肝腫大

    肝腫大の有無 サイズ(鎖骨中央線上の右肋骨弓下の肝臓下

    縁までの長さ) 容積(CT)

    ● Desaturation Index ● 努力肺活量(FVC) ● 6 分間歩行検査(6MWT) ● 医師による総合評価(著明

    改善・中等度改善・軽度改

    善・不変・軽度悪化・中等

    度悪化・著明悪化)

    1 第 3相継続試験では医師の総合評価以外、第 3相二重盲検試験と同じ評価項目。 2 第 3相継続試験のみ主要評価項目。

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    2.7.3.1.3 統計解析方法

    rhIDUのMPS I患者における臨床上の有用性を示すため、得られたデータを統合的に又は個別

    に要約した。3試験の有効性評価項目は、第 3相二重盲検試験では rhIDU投与群とプラセボ投

    与群間の平均変化量の比較、又は第 3相継続試験と第 1/2相試験では rhIDU投与群内でのベー

    スライン時からの平均変化量を算出した。第 3相二重盲検試験では ITT集団について、FVC

    予測正常値に対する割合(以下、%努力肺活量又は%FVC)及び 6分間歩行検査については共

    変量に対する共分散解析も行った。%努力肺活量と 6分間歩行検査は肺機能や機能容積を反

    映し、これらはMPS I患者におけるもっとも重要な項目であり、病態と死亡率の主要な要因

    となる。

    2.7.3.2 個々の試験結果の要約

    すべての臨床試験の概要を表 2.7.3-3に示した。

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    表 2.7.3-3: 臨床試験一覧

    治験実施計画

    書番号 試験デザイン

    状況/ 試験期間

    実施場所/施設数

    投与量 (静脈内 投与)

    投与期間 (週)

    登録/評価 可能患者数

    年齢: (歳)

    性別 (男/女)

    人種1

    C/B/H/A/他CTD該当箇所

    BIO7500-001 第 1/2相非盲検試験 完了

    9 / / ~ 0 / /

    米国: 13 100 U/kg 週1回

    288 10/10 平均 12.3

    (範囲: 5 ~22)6/4 10/0/0/0/0

    5.3.4.2.1(~152週) 5.3.4.5.1(153~288週)

    ALID-003-99 第 3相プラセボ対照二重盲検比較試

    完了 0 / / ~

    0 / /

    米国: 2 カナダ: 1英国: 1 ドイツ: 1

    100 U/kg週1回

    26 45/45 平均 15.5

    (範囲: 6 ~43)22/23 37/0/4/2/2 5.3.5.1.1

    ALID-006-01 第 3相非盲検継続

    試験

    完了 0 / / ~ 0 / /

    米国: 13 カナダ: 2英国: 1 ドイツ: 2

    100 U/kg週1回

    182 45/45 平均 15.5

    (範囲: 6 ~43)22/23 37/0/4/2/2

    5.3.5.2.2(~24週) 5.3.5.4.2(182週間)

    ALID-014-02 第 4相非盲検試験 (5歳未満児対象)

    完了 0 / / ~

    0 /

    英国:1 フランス:1ドイツ:1 オランダ:1

    100 U/kg週 1回

    26週から200 U/kgに増量の

    場合あり

    52 20/20 平均 2.9

    (範囲: 0.5 ~ 5.1)

    12/8 18/1/0/1 5.3.5.2.3

    ALID02205 安全性確認試験 実施中

    0 / / ~ 日本:1

    100 U/kg週 1回

    最大 2年間又は承認後、市

    販製剤への切

    り替え日のい

    ずれか早い日

    1/1 2.1 0/1 0/0/0/1/0 5.3.5.4.5

    治験外提供 個々の患者におけ

    る治験外提供 完了 ―

    100 U/kg週1回

    ― 19/19

    (0 / / 付) 平均 16.3 9/10 ― ―

    治験外提供

    ALID-007-01 個々の患者におけ

    る治験外提供 完了 米国: 1

    100 U/kg週1回

    米国: 28 (0 / / 付)

    1/12

    (0 / / 付)米国:10 米国: 0/1 1/0/0/0/0 ―

    1 C = 白人; B =黒人; H = ヒスパニック系; A = アジア人

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    2.7.3.2.1 臨床試験の概要

    2.7.3.2.1.1 第 1/2 相試験(BIO7500-001)

    幅広く分布する患者年齢とMPS Iの重症度を反映した 10例の患者に、rhIDU 125,000 U/Kg

    (再規定後 100 U/kg)を週 1回ゆっくりと静脈内点滴投与した。

    登録した患者 10例が 52週間を終了し、10例中 7例が市販品への切り替えまでの治験実施期

    間(最長 288週)を完了した。患者 008は、103週目の投与から 4日後、ウイルス性疾患に付

    随した無呼吸(呼吸停止)により死亡した。患者 002は、137週目の投与から 19日後に、側

    彎症の悪化による脊髄固定術後の合併症で死亡した。また患者 009は僧帽弁置換術のため入

    院し、その後合併症で 234週の投与から 25日後に死亡した。いずれも治験薬との因果関係は

    否定された。

    ベースライン時からの肝容積減少の平均値は、52週終了までのすべての時点で統計学的に有

    意(p

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    無作為割付けされた 45例の患者すべてが、試験実施計画書の 26週間を終了した。プラセボ

    投与群と rhIDU投与群での平均投与日数は、それぞれ 182.0日と 181.5日であった。被験薬の

    平均投与回数はプラセボ群 25.4回及び rhIDU群 25.3回であった。

    2例の患者で、重大な治験実施計画書違反と判定された逸脱が確認された。rhIDU投与群の1

    例は、治験担当医師が被験薬に関連なしと報告している SAE(大動脈弁狭窄症)のため入院

    した結果、試験実施期間中に 7回投与を受けられなかった。プラセボ投与群の1例は、以前

    に心臓移植とペースメーカー留置を受けていた。これらの 2例の患者は Per Protocol(PP)解

    析の対象から除外した。他の患者で投与できなかった理由は、病気、診療所までの移動上の

    問題、あるいは休暇のためであった。薬剤の毎週の平均投与量は、両群間で同様であった。

    第 3相二重盲検試験の ITT集団での主要評価項目の解析では、rhIDU投与による統計学的に有

    意で臨床的意義のある%努力肺活量の改善が認められ、また予め共変量を設定した共分散解析

    では統計学的に有意で臨床的意義のある 6分間歩行検査結果の改善が認められた。肝腫大と

    尿中 GAG濃度の低下から、ライソゾーム内蓄積は一貫して低下したと考えられた。MPS I疾

    患の他の症状を評価した有効性評価項目において、症状の重症度が比較的高い患者の部分集

    団で、統計学的に有意で臨床上意義のある相違もしくは傾向が認められた。以上のデータは、

    rhIDU投与がMPS I患者において有効であることを示すものである。

    2.7.3.2.1.3 第 3相継続試験(ALID-006-01)

    第 3相継続試験では第 3相二重盲検試験にてプラセボ投与を受けた患者に rhIDUを投与し

    (プラセボ/rhIDU群)、第 3相二重盲検試験にて rhIDU投与を受けた患者にも rhIDUを投与

    (rhIDU/rhIDU群)し、rhIDU長期投与時の有効性と安全性に関する追加データを収集した。

    この第 3相継続試験で測定した項目は、医師による総合評価を除き、第 3相二重盲検試験で

    採用した項目と同一である。

    適格患者に対し、第 3相二重盲検試験の投与開始から 27週に、第 3相継続試験の投与を開始

    した。第 3相継続試験期間中は、患者は 182週までもしくは市販製剤による投与を受けられ

    るようになるまで、rhIDU(100 U/kg)の週 1回投与を受けた。患者は第 3相二重盲検試験で

    通院した同じ医療機関で検査を受けた。一部の患者は、週 1回の rhIDU投与のために地元の

    医療機関に転院した。この場合は、治験担当医師と治験依頼者の開発担当者により患者の症

    状及びすべての関連する安全性情報を報告し評価することを条件とし、当該試験施設の施設

    内審査委員会/倫理委員会(IRB/IEC)による承認後、必要に応じて監督官庁からの承認を受

    けて行った。

    第 3相二重盲検試験に参加した患者 45例すべてが第 3相継続試験に登録した。本継続試験を

    完了した症例は 40例であり、プラセボ/rhIDU群の 5例は有害事象(2例)、患者の希望(2

    例)又は妊娠(1例)により治験を中止した。全 45例を ITT母集団に含めた。

  • ggeennzzyymmee ラロニダーゼ 2.7.3 臨床的有効性の概要

    44

    最終観察である 182週において、%努力肺活量は rhIDU/rhIDU群でベースラインから平均

    1.2%減少し、プラセボ/rhIDU群では登録時から平均 3.3%減少したが、いずれも臨床的に有意

    な変動ではなかった。一方、本継続試験にて新たに設定した評価項目である努力肺活量では、

    rhIDU/rhIDU群、プラセボ/rhIDU群とも継続期間中においても増加し続けた。

    6分間歩行距離は、rhIDU/rhIDU群でベースラインから 182週で 39.2m増加し、プラセボ

    /rhIDU群では登録時から 182週で 19.2m増加した。

    また、副次的(又は 3次)有効性評価である AHI、肝容積、肩関節屈曲可動域、尿中 GAG濃

    度においても二重盲検試験の rhIDU投与群でみられた効果が 182週間持続あるいはより改善

    し、本剤の 182週間投与による有効性が確認された。

    2.7.3.2.1.4 5 歳未満児対象臨床試験(ALID-014-02)

    欧米の市販後において、5歳未満児のMPS I患者 20例を対象として rhIDU 100 U/kgを週 1回

    52週間投与し、rhIDUの安全性及び薬物動態測定、さらに有効性について検討した。なお、

    投与量については 22週の尿中 GAG濃度が 200 µ/mg Crを超えていた場合、投与 26週から 200

    U/kgに増量することとし、20例中 4例が増量した。

    有効性評価については、本治験では多くの症例に精神(知的)障害が認められ、適切な有効

    性評価は困難と考えられたことから、副次的評価項目として設定し、また、第 3相試験で用

    いられた患者の理解力と協力を要する検査は実施しなかった。

    尿中 GAG濃度は、本剤投与後急速に低下し、ベースラインから投与 52週までの平均低下率

    は 61.3%であった。また、肝サイズは、ベースラインでは全例が異常と判定されたが、投与

    52週においては、50%で正常と判定された。このように、5歳未満の患者群において認めら

    れた尿中 GAG濃度及び肝腫大の低下は、蓄積した GAGの低下を示すものであり、より年齢

    層の高い患者群において得られた結果を元に予測された治療効果と一致するものであった。

    年齢・身長 Zスコアは、7例(39%)において 1年の本治験期間中一貫して増加し、投与 52

    週の睡眠時検査の総合評価は、15例中 10例(67%)で改善又は維持が認められた。左室肥大

    の患者の割合は、ベースラインでは 20例中 10例(50%)であったが、投与 52週又は最終評

    価時では 20例中 3例(15%)であった。治験責任医師によるベースラインと比較した投与 52

    週時の臨床状態の総合評価は 18例中 17例(94%)で軽度改善以上の改善と評価された。

    精神発達検査では、ハーラー型を対象として探索的に検討した結果、年齢が低いほど認知機

    能の改善がみられるという、年齢に依存した認知機能の改善がみられた(相関係数:-0.82)。

  • ggeennzzyymmee ラロニダーゼ 2.7.3 臨床的有効性の概要

    45

    2.7.3.2.1.5 安全性確認試験(ALID021205)

    本邦において、MPS I患者 5例を目標症例数とし、rhIDU 100 U/kgを週 1回投与し、200 年 月又は承認後、市販製剤への切り替え時のいずれか早い時点まで実施する計画である。

    本申請においては 歳のハーラー型女児 1例に対して行われた 24週分のデータを中間報告と

    してまとめた。なお、本症例は本治験開始前の 200 年 月 日より ICAP(International

    Charitable Access Program)にて医師が個人輸入した製剤が投与されており、本剤投与開始か

    ら 26週分のデータは本治験開始時にレトロスペクティブに収集されたデータである。

    本剤による反応性を検討した結果、治療開始 4週後において、尿中 GAGが 82.5%減少し、そ

    の後の反応性はほとんど変化することなく維持された。また、本剤の 21回投与時点において

    も肝腫大は認められたが、ベースライン時より肝臓容積は 38.4%減少した。本剤の 21回投与

    時点において Desaturation Indexの評価が実施されているが、アデノイド増殖症の悪化及び睡

    眠時無呼吸の悪化の治療のため、アデノイド切除術が施行されている。Desaturation Indexは、

    ベースライン時より 85.5%減少したが、本剤の効果とアデノイド切除術の双方によるものと考

    えるべきである。なお、この有害事象は治験責任医師により本剤投与との関連性は否定され

    ている。医師による総合評価は、主に被験者の身体的な発達を基準に判定される有効性評価

    項目である。本被験者の総合評価では、被験者の身体的な発達に加え精神的な発達も評価さ

    れ、著明改善と判定された。

    2.7.3.2.1.6 治験外提供(Expanded Access Program)

    BMT等の標準的な治療を受けることができず、また進行中の臨床試験の参加基準も満たして

    いない重篤な症状の後期MPS I患者に対する治療を行うため、治験外提供/例外的使用プロ

    グラムを計画した。本プログラムでは、有効性及び安全性情報を収集していないが、担当医

    師は、3ヵ月以上投与した後、患者ごとに有効性を評価した。死亡等の SAE及び投与関連反

    応(IAR)を報告した。安全性報告の内容は「2.7.4臨床的安全性の概要」に記載した。治験

    外投与で 3ヵ月以上の rhIDU投与を受けた患者について、患者背景及び医学的評価結果を示

    した(2.7.3.3.2.3)。

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    46

    2.7.3.3 全試験を通しての結果の比較と解析

    2.7.3.3.1 試験対象集団

    2.7.3.3.1.1 第 1/2 相試験

    2.7.3.3.1.1.1 患者の内訳

    本治験に登録した患者 10例が 52週を完了し、10例中 7例が本治験を完了した。中止症例は 3

    例であり、患者 008は、103週間の投与 4日後にウイルス性疾患に付随した無呼吸(呼吸停

    止)で死亡した。患者 002は、137週の投与から 19日後に、側彎症の悪化による脊髄固定術

    後の合併症で死亡した。また、患者 009は僧帽弁置換術のため入院し、その合併症により 234

    週の投与から 25日後に死亡した。

    2.7.3.3.1.1.2 患者背景及びベースライン時特性

    第 1/2相試験の患者集団は男性 6例と女性 4例で、登録時の年齢は 5歳~22歳、平均年齢は

    12.3歳(SD±5.2)であった。患者の平均身長は 130.62 cm (SD ±22.29、範囲 87.0~160.0

    cm)であり、平均体重は 36.20 kg (SD±16.99、範囲 14.8~64.5 kg)であった。10例の患者

    すべてが白人であった。

    6例の思春期前の患者(年齢 12歳以下)がこの試験に登録された(患者 002、003、004、005、

    008、009)。

    患者のMPS I病型は広範であった。表 2.7.3-4に示すように、内訳は、軽症の病型(シャイエ

    型)1例、中等症の病型(ハーラー・シャイエ型)8例及び重症の病型(ハーラー型)1例で

    あった。この試験の治験責任医師/医学専門家が、登録前に患者 10例全例を評価し、患者の病

    状を分類した。数例の患者は登録時点で広範な治療歴を有しており、これにはヘルニアから

    手根管症候群、頭蓋内圧上昇による障害に対する多様な外科処置が含まれていた。

    患者のベースライン時点での患者背景及びベースライン時特性を表 2.7.3-4 に示した。

    表 2.7.3-4: 患者背景及びベースライン時特性:第 1/2 相試験

    患者番号 年齢 (歳) 身長 (cm) 体重 (kg) 性別 人種 病型 001 1 13 3 男 白人 ハーラー・シャイエ型 002 1 12 2 女 白人 ハーラー・シャイエ型 003 12 2 男 白人 ハーラー・シャイエ型 004 12 3 男 白人 ハーラー・シャイエ型 005 1 12 2 男 白人 ハーラー・シャイエ型 006 2 15 6 男 白人 ハーラー・シャイエ型 007 1 16 5 女 白人 シャイエ型 008 8 1 女 白人 ハーラー型 009 11 2 女 白人 ハーラー・シャイエ型 010 1 16 5 男 白人 ハーラー・シャイエ型 本データは BioMarin Pharmaceutical社の承認時のもの。

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    47

    2.7.3.3.1.2 第 3相二重盲検試験と第 3相継続試験

    2.7.3.3.1.2.1 患者の内訳

    第 3相二重盲検試験では登録患者 45例をプラセボ投与群 23例、rhIDU投与群 22例に無作為

    に割付けた(ITT集団)。すべての患者が本試験を完了した。

    このうち 2例(プラセボ患者 030309で事前の心臓移植とペースメーカー留置、rhIDU患者

    030806で 7回未投与)については、有効性評価に影響を与える可能性があり、治験実施計画

    書からの逸脱と判定したため、PP集団から除外した。

    無作為割付けされた 45例の患者全例を含む ITT集団について、主要、副次的及び三次有効性

    評価項目の解析をした。更に治験実施計画書からの逸脱がなかった 43例の患者(PP集団)に

    ついても、主要有効性評価項目を解析した。

    第 3相二重盲検試験に参加した 45例の患者全例が第 3相継続試験に登録され、そのうち 40例

    が本継続試験を完了した。中止例は 5例であり、そのうち 2例は有害事象による中止(患者

    030502:本継続試験参加後 122日の 16回投与後に、被験薬に関連のない有害事象で死亡、患

    者 60607:有害事象により開始 166日後)であり、2例は患者の希望(患者 10303:注射針恐

    怖症、患者 50403:就学により投与スケジュールが守れないため)で中止し、1例(患者

    10707)は妊娠により投与 582日で中止した。

    2.7.3.3.1.2.2 患者背景とベースライン時特性

    1) 第 3相二重盲検試験

    無作為割付けされたすべての患者の患者背景及びベースライン時特性を表 2.7.3-5に示した。

    両投与群患者の男女分布は同様であり、患者の多くは白人(82%)であった。両投与群の患者

    の平均年齢も同様で、12歳以下(49%)であり、18歳以下が 73%であった。平均体重と平均

    身長は、両群ともにほぼ同様であった。

    MPS Iの病型の特定は治験担当医師の診断により実施した。プラセボ群でハーラー型 1例、

    ハーラー・シャイエ型 19例、シャイエ型 3例、rhIDU群でハーラー型 0例、ハーラー・シャイ

    エ型 18例、シャイエ型 4例であった。MPS I症状の発現からの平均年数は両投与群で同様で

    あり(両群とも平均 12.7年)、また、診断からの平均年数も投与群間でほぼ同等で、プラセ

    ボ群 8.7年、rhIDU群 9.4年であった。

  • ggeennzzyymmee ラロニダーゼ 2.7.3 臨床的有効性の概要

    48

    表 2.7.3-5: 患者背景及びベースライン特性 :第 3相二重盲検試験

    群 (ITT集団) 項目

    プラセボ rhIDU 合計 評価対象患者数(例) 23 22 45 性別: 男性 例(%) 11 (48) 11 (50) 22 (49) 女性 例(%) 12 (52) 11 (50) 23 (51) 人種 白人 例(%) 21 (91) 16 (73) 37 (82) 黒人 例(%) 0 (0) 0 (0) 0 (0) ヒスパニック 例(%) 0 (0) 4 (18) 4 (9) アジア人 例(%) 1 (4) 1 (5) 2 (4) 他 例(%) 1 (4) 1 (5) 2 (4) 年齢 ≤ 12 歳 例(%) 10 (43) 12 (55) 22 (49) 13 ≤ 18 歳 例(%) 8 (35) 3 (14) 11 (24) 19 ≤ 65 歳 例(%) 5 (22) 7 (32) 12 (27)

    例 23 22 45 平均 15.4 15.6 15.5 中央値 14.1 12.4 13.8 標準偏差 7.63 8.63 8.04

    年齢(歳)

    最小値、最大値 6, 39 7, 43 6, 43 例 23 22 45 平均 40.3 35.3 37.9 中央値 35.7 33.1 33.8 標準偏差 13.04 12.45 12.86

    体重(kg)

    最小値、最大値 22.5, 74.6 17.8, 61.5 17.8, 74.6 例 23 22 45 平均 137.2 133.5 135.4 中央値 136.0 133.6 136.0 標準偏差 12.05 16.07 14.12

    身長(cm)

    最小値、最大値 117.7, 163.8 97.2, 159.9 97.2, 163.8 %は ITT集団の患者数合計に基づく。

    MPS I患者のベースライン時特性を表 2.7.3-6に示した。

    平均 IDU活性%は両投与群において低く、群間での統計学的有意差はなかった(p=0.455)。

    主要な診断施設でのバックグラウンドデータでは、MPS Iの病型特定の有無に係わらず、患者

    の IDU活性%は、全例 1%未満であった(Hopwood&Muller, 1979)。%努力肺活量と 6分間歩

    行検査のいずれについても 2群間に統計学的有意差はなかった(それぞれ p=0.212と

    p=0.200)。ただし、rhIDU群の方が%努力肺活量が低く、また 6分間歩行検査での歩行距離

    が短いことから示されるように、疾病状態がより重度であると考えられた。

  • ggeennzzyymmee ラロニダーゼ 2.7.3 臨床的有効性の概要

    49

    表 2.7.3-6: MPS I 患者のベースライン特性 :第 3相二重盲検試験

    項目 プラセボ rhIDU 合計 評価対象患者数(例) 23 22 45

    例 23 22 45 平均 1.9 1.2 1.6 標準偏差 3.20 2.13 2.72

    IDU活性% (正常範囲の下限に対する割合)

    最小値、最大値 0.0, 9.9 0.0, 6.5 0.0, 9.9 例 23 22 45 平均 54.2 48.4 51.4 中央値 53.6 51.1 51.9 標準偏差 16.00 14.85 15.55

    %努力肺活量(%)

    最小値、最大値 18, 77 15, 70 15, 77 例 23 22 45 平均 366.7 319.0 343.4 中央値 360.0 348.5 358.0 標準偏差 113.68 131.41 123.62

    6分間歩行距離(m)

    最小値、最大値 60, 571 14, 591 14, 591

    2) 第 3相継続試験

    第 3相継続試験登録時におけるMPS I患者の特性を表 2.7.3-7に示した。

    表 2.7.3-7: 第 3 相継続試験の登録時 1における MPS I 患者の特性(ITT 集団)

    群 項目

    プラセボ/rhIDU rhIDU/rhIDU 合計 評価対象患者数(例) 23 22 45 %努力肺活量(%) 平均 53.6 53.7 53.7 標準偏差 14.24 18.61 16.33 最小値、最大値 30, 77 19, 88 19, 88 6分間歩行距離 (m) 平均 348.3 338.8 343.6 標準偏差 128.81 127.06 126.59 最小値、最大値 30, 505 33, 517 30, 517 1 第 3相継続試験の登録前の第 3相二重盲検試験の最終観察時

  • ggeennzzyymmee ラロニダーゼ 2.7.3 臨床的有効性の概要

    50

    2.7.3.3.1.3 5 歳未満児対象臨床試験

    2.7.3.3.1.3.1 患者の内訳

    MPS I患者 20例が本治験に組み入れられ rhIDU 100 U/kgの週 1回投与を開始した。2例が本

    剤と関連のない事象により死亡し、4例が投与 26週から 200 U/kgに増量された(2004年 1月

    1日以降に登録され、投与 22週の尿中 GAG濃度が 200µg/mg Crであった症例)。したがって、

    本治験の完了例は 100 U/kg投与が 14例、200 U/kg増量例が 4例であった。

    2.7.3.3.1.3.2 患者背景及びベースライン時特性

    5歳未満児対象臨床試験に組み入れられた 20例の人口統計学的特性及び他の基準値の特性を

    表 2.7.3-8に示した。平均年齢は 2.9歳で、身長及び体重は、それぞれ平均 86.0 cm及び 14.3

    kgであった。病型では、ハーラー型が 16例、ハーラー・シャイエ型が 4例であり、いずれも

    α-L-イズロニダーゼ活性は正常値下限の 1%以下であった。ベースラインにおいてMPSⅠの診

    断からの年数は平均 1.9年であった。

    表 2.7.3-8 人口統計学的特性及び他の基準値の特性

    rhIDU rhIDU 項目 区分

    (20例) 項目 区分

    (20例) 男 12 (60) ハーラー型 16 (80)

    性別 女 8 (40) 病型 ハーラー・シャイエ型 4 (20)

    白人 18 (90) シャイエ型 0 (0) 人種 黒人 1 (5) 1変異 0 (0)

    その他 1 (5) 遺伝子型

    2変異 20 (100) 平均±標準偏差 2.9±1.48 酵素活性 平均±標準偏差 0.1±0.28

    年齢(年) 中央値 3.0 (正常値下限 中央値 0.0 最小~最大 0.5~5.1 の%) 最小~最大 0.0~1.0 平均±標準偏差 14.3±3.44 平均±標準偏差 1.9±1.56

    体重(kg) 中央値 14.9 中央値 1.3 最小~最大 7.1~21.0

    診断からの 年数(年)

    最小~最大 0~5 平均±標準偏差 86.0±8.30 a) 立位で測定不能の場合、臥位で測定

    身長(cm)a) 中央値 86.0 最小~最大 72.5~104.1

  • ggeennzzyymmee ラロニダーゼ 2.7.3 臨床的有効性の概要

    51

    2.7.3.3.1.4 安全性確認試験

    2.7.3.3.1.4.1 患者の内訳

    被験者識別コード:0101の 1例が本治験に登録された。本症例は 200 年 月 日より ICAPを

    通じて医師により個人輸入された本剤による治療を開始後、200 年 月 日に本治験に参加し、

    治験継続中である。

    2.7.3.3.1.4.2 患者背景及びベースライン時特性

    被験者識別コード:0101はハーラー型で、ベースライン時において 歳、体重 1 . kg、身長

    は 8 . cmであった。人口統計学的特性及び病歴の要約を表 2.7.3-9及び 2.7.3-10に示す。

    表 2.7.3-9 人口統計学的特性及びその他の基準値の特性

    パラメーター 被験者識別コード:

    0101 性別 女性 年齢 体重(kg) 1 . 身長(cm) 8 . 体温(℃) 36.8 心拍数(回/分) 112 呼吸数(回/分) 24.0 収縮期血圧(mmHg) 102.0 拡張期血圧(mmHg) 58.0

    表 2.7.3-10 MPSⅠの病歴の要約

    パラメーター 被験者識別コード:

    0101 MPSⅠの病型 ハーラー型 症状が認められてからの年数 2.0 最初に診断されてからの年数 0.5 酵素活性(正常範囲下限に対する割合(%)) 2.78 最新の酵素活性測定からの時間(年) 0.6 尿中 GAG(mg/g creatinine) 551.0 Desaturation index (回/時) 16.5

  • ggeennzzyymmee ラロニダーゼ 2.7.3 臨床的有効性の概要

    52

    2.7.3.3.2 全有効性試験の結果の比較

    2.7.3.3.2.1 第 1/2 相試験

    2.7.3.3.2.1.1 主要有効性評価項目

    1) 肝容積

    MRIによる肝容積の評価は 52週のみを盲検下で行ったが、104週では非盲検下で行った。非

    盲検下で行ったMRIの結果、平均標準化肝容積は、投与前及び 6、12、26及び 52週の盲検下

    の平均標準化肝容積の 3%以内であった。

    本剤投与の結果肝容積の顕著な減少がみられ、10例中 7例で 6週までに 20%以上の肝容積の

    減少が認められた。この減少は、rhIDUを 2回投与後の理学的所見でも確認された。52週で

    は 10例中 7例で、104週では 9例中 7例で、20%以上の減少を示した。52週のいずれの測定

    時点でも肝容積の平均減少は、投与前の数値と比較して統計学的に有意であった(p < 0.001)。

    非盲検下のMRIの結果である肝容積の正常化及び投与前値に対する割合を表 2.7.3-11に示し

    た。

    表 2.7.3-11: 肝容積の正常化及び投与前値に対する割合 (非盲検 MRI 評価~第 104 週):第 1/2 相試験

    測定時期 患者数

    (例) 平均 SD 最小値 最大値

    20%減少した患者

    数(例)

    正常範囲

    内の患者

    数(例)1

    p値 2 (投与前値

    に対する)

    投与前 10 100 0 100.0 100.0 — 0 — 第 6週 10 77.76 7.12 67.8 93.8 7 8

  • ggeennzzyymmee ラロニダーゼ 2.7.3 臨床的有効性の概要

    53

    001 002 003 004 005 006 007 008 009 010

    Perc

    ent

    Body

    Wei

    ght

    1.6

    1.8

    2.0

    2.2

    2.4

    2.6

    2.8

    3.0

    3.2

    3.4

    3.6

    3.8

    4.0

    4.2

    4.4

    4.6

    4.8

    Weeks of Therapy0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120

    *

    図 2.7.3-1: rhIDU 治療中の肝容積の推移(非盲検、~第 104 週):第 1/2 相試験

    *患者番号 009は抗生物質に対する肝炎を発現。

    2) 脾容積

    肝容積の結果と同様に、52週でMRIによる脾容積の評価を盲検下で行い、104週では非盲検

    下で行った。盲検下と非盲検下の平均脾容積を比較したところ、投与前と 6、12、26、52週

    でその差はそれぞれ 2%以内であった。

    非盲検下で行ったMRIの脾容積の結果により、6週で 10例中 6例の脾容積が 20%以上減少し

    た。脾容積が 20%以上減少したのは、52週では 10例中 6例、104週では 9例中 4例であった。

    なお、26 週における患者番号 009 の脾容積はベースライン時と比較して約 2 倍であったため、

    26週の平均減少値に負の影響を及ぼした(表 2.7.3-12)。本症例は、抗生物質による肝炎を発

    症しており、26週で血清中 ALT上昇(正常値上限の 4倍)及び血清中 AST上昇(正常値上

    限の 5倍)が見られたため、この急性肝炎に関連して脾腫大が生じた可能性が高いと考えら

    れた。本症例では 46週までに ALTと ASTは正常値範囲内になった。

    52週までの全患者の脾容積減少率は 20.79%であった。脾臓の大きさの減少は、26週のいずれ

    の測定時点においても統計学的に有意であった。

    非盲検で行ったMRIの結果、52週で観察された減少は 104週においても維持されていた。

  • ggeennzzyymmee ラロニダーゼ 2.7.3 臨床的有効性の概要

    54

    表 2.7.3-12: 脾容積の正常化、投与前値に対する割合 (非盲検 MRI 評価、~第 104 週):第 1/2 相試験

    測定時期 患者数

    (例) 平均値 SD 最小値 最大値

    ≥20%低下 患者数 (例)

    正常範囲

    内の患者

    数 (例)1

    p値 2 (投与前値に対する)

    投与前 10 100 0 100.0 100.0 — 0 — 第 6週 10 74.48 12.33 56.2 94.7 6 3 0.007 第 12週 10 79.50 10.73 64.9 97.1 6 2 0.027 第 26週 10 94.29 41.64 63.6 204.4 4 1 0.524 第 52週 10 79.21 10.31 62.8 95.4 6 2 0.025 第 104週 9 77.94 14.39 59.1 101.1 4 1 ND3 1 正常範囲の 95%信頼区間上限以下 2 Student t検定 3 治験実施計画書に従い実施せず。 —:該当なし。

    非盲検で行ったMRIの結果から、患者 10例における体重に対する脾容積の割合の推移を図

    2.7.3-2に示した。脾容積における結果は肝容積と比較して明確なものではなく、一貫した変化

    もみられなかった。これは、脾臓の大きさが肝臓と比べて小さいということ、容積の変化が

    小さくても割合(%)が大きく変化することためであると考えられた。

    脾臓の大きさは数例の患者で大きく減少したが、2例では 52週で年齢に応じた正常な大きさ

    まで減少した。患者番号 004は、正常な脾臓の大きさを 104週まで維持していた。

    001 002 003 004 005 006 007 008 009 010

    Perc

    ent

    Body

    Wei

    ght

    0.0

    0.2

    0.4

    0.6

    0.8

    1.0

    1.2

    1.4

    1.6

    1.8

    2.0

    Weeks of Therapy0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120

    *

    図 2.7.3-2: rhIDU 治療中の脾容積の推移(非盲検 MRI 評価、~第 104 週):第 1/2 相試験

    * 患者番号 009は抗生物質に対する肝炎を発現

  • ggeennzzyymmee ラロニダーゼ 2.7.3 臨床的有効性の概要

    55

    3) 尿中 GAG濃度

    最も軽度の患者の尿中 GAG濃度は 63.25~112.8µg/mg Cr、中等度の患者の濃度は 100~

    300µg/mg Cr、最も重篤な患者の尿中 GAG濃度は 500µg/mg Crを超えていた。したがって、全

    患者の尿中 GAG濃度は投与前に高値を示し、疾患の重症度と相関性が認められた。

    rhIDUの投与開始後 2~3週で尿中 GAG濃度は急激に減少した。5~6回投与した後の尿中

    GAG濃度は投与前の尿中 GAG濃度の約 30%でほぼプラトーに達したと考えられる。rhIDU

    の投与をほとんど受けなかった 1例(患者番号 001)を除き、投与 152週における尿中 GAG

    濃度の低下は、以降の投与期間中もほぼ維持された。(図 2.7.3-3)。

    図 2.7.3-3: rhIDU 治療中の尿中 GAG 濃度の推移:第 1/2 相試験

    投与前の尿中 GAG濃度を 100%とした場合、26週で 31.28%、52週で 37.17%、104週で

    26.37%となり、152週の 7例では 21.47%であった(表 2.7.3-13)。6、12、26、52週の尿中

    GAG濃度の減少は、投与前値に対して統計学的に有意であった(p < 0.001)。

    尿中 GAG濃度に対する有効性評価基準は、投与前からの低下率に基づき投与 52週の各患者

    における尿中 GAG濃度が投与前から 50%以上低下した場合、有意な低下とした。また、2/3

    以上の患者で尿中 GAG濃度に 50%以上の低下がみられた場合、本剤による治療を有効とみな

    した。その結果、10例中 8例において 50%以上の低下が示され、本剤による治療は有効と評

    価された。

    既知の生理的変動により生じる濃度のばらつきを少なくするため、27~52週、53~104週、

    105~152週までの尿中 GAG濃度測定値の平均値を投与前の平均値と比較した。27~52週ま

  • ggeennzzyymmee ラロニダーゼ 2.7.3 臨床的有効性の概要

    56

    での尿中 GAG濃度を各患者の投与前の濃度と比較したところ、10例の患者全例が 50%減少

    を達成していた。投与前の尿中 GAG濃度の平均は 220.64µg/mg Crで、27~52週の平均排泄

    濃度は 81.12µg/mg Crで、平均減少率は 63%であった。53~104週の平均排泄濃度は

    74.42µg/mg Crで平均減少率は 66%、105~152週の平均尿中 GAG濃度は 41.60µg/mg Crで平均

    減少率は 81%であった。

    表 2.7.3-13: 尿中 GAG 量の変化(投与前値との比較):第 1/2 相試験

    測定時期 患者数

    (例)

    投与前値

    に対する

    割合(%) SD 最小値 最大値

    50%低下した患者

    数(例)

    p値 7 (投与前値に

    対して)

    投与前 10 100 0 100 100 N/A —

    第 6週 10 31.84 5.88 23.0 42.4 10 < 0.001

    第 12週 10 33.56 8.98 18.3 49.1 10 < 0.001

    第 26週 10 31.28 8.19 14.9 42.5 10 < 0.001

    第 52週 1 10 37.17 11.31 25.3 57.0 8 < 0.001

    第 104週 2 94 26.37 6.73 15.0 33.8 9 ND6

    第 152週 3 75 21.47 9.28 6.5 32.2 7 ND6 1 第 49週~第 52週間の観察回数 1回/患者のデータ 2 第 101週~第 104週間の観察回数 1回/患者のデータ 3 第 141週~第 152週間の観察回数 1回/患者のデータ 4 患者番号 008は第 103週~第 104週の間に死亡。 5 患者番号 002は最終投与(第 137週)の 19日後に死亡。患者番号 006の第 116~152週の尿中 GAG濃度は尿が希薄だったため検出されず。

    6 ND: 治験実施計画書に従い実施せず。 7 投与前値との比較: Student t検定

    表 2.7.3.14に、健康人の尿中 GAG濃度と比較した尿中 GAG濃度の減少を示す。尿中 GAG濃

    度の平均低下率は、27~52週で 79.6%、53~104週で 81.9%、105~152週ではほぼ 100%で

    あった。

  • ggeennzzyymmee ラロニダーゼ 2.7.3 臨床的有効性の概要

    57

    表 2.7.3-14:投与前値に対する各測定時点における尿中 GAG 濃度の低下率 (第 27~52 週、第 53~104 週、第 105~152 週):第 1/2 相試験

    患者番号 開始時年齢

    (歳) 投与前 GAG(µg/mg Cr)

    正常範囲 最大値

    (µg/mg Cr)

    低下率% 27-52 週 (n = 10)

    低下率% 53-104 週 (n = 10)

    低下率% 105-152 週

    (n = 8)1 001 17 159.25 21.7 62.1 66.3 79.3 002 10 267.53 46.1 77.7 76.5 95.5 003 9 112.80 46.1 103.4 89.1 115.5 004 8 191.25 46.1 94.3 100.3 98.3 005 12 194.30 46.1 81.7 81.2 97.2 006 22 204.90 12.1 77.7 87.1 NA 007 17 72.00 21.7 83.6 84.2 104.6 008 5 514.75 46.1 63.1 67.7 ND 009 9 286.45 46.1 78.6 79.6 96.6 010 14 203.15 21.7 74.0 86.8 101.9 平均 12.3 220.64 35.4 79.6 81.9 98.6

    1 患者 006の第 116~152週の尿中 GAG濃度は尿が希薄だったため検出されなかったため、第 105~152週の平均 GAGは算出せず。 NA = 該当なし。 ND = 実施せず. 患者 008は 103週と 104週の間に死亡。患者 002は第 136週まで測定し、105~152週のデータに含めた。

    2.7.3.3.2.1.2 副次的有効性評価項目

    1) 第 1/2相試験における関節可動域

    患者の肩の屈曲・伸展、膝の屈曲・伸展、肘の伸展を評価した。可動域の変化(最大屈曲又

    は伸展時の身体に対する肢の角度)と可動域の制限程度の変化(年齢調整を行った健常人の

    平均可動度とMPS I患者の可動度の差)の結果を解析した。

    26週までの患者間のばらつきは大きかったが、患者の大多数が 1つ又は複数の関節の可動域

    にある程度の改善を示した。52週で最も大きな改善を示した可動度は、肩の屈曲、右膝の伸

    展、肘の伸展であった。右肩の屈曲と左肩の屈曲の増加はそれぞれ 52週で 28.13度(p <

    0.001)と 26.12度(p = 0.002)であった。104週まで肩の屈曲の改善は維持された。右膝の屈

    曲と左膝の屈曲の増加はそれぞれ 52週で 3.52度と 2.78度で統計学的に有意な差はなかった

    が、投与前から 52週までの直線性が統計学的に示唆された(p = 0.025)。両膝の伸展は 104

    週でさらに改善した。右肘と左肘の伸展は 52週でそれぞれ 7.02度(p = 0.031)と 7.10度(p

    = 0.007)であり、統計学的に有意な向上を示したが、この改善は 104 週まで持続しなかった。

    右肩と左肩の平均伸展度は、投与前から 52週までは 5.07度と 7.60度、104週までは 15.91度

    と 14.66度と、それぞれ増加した。52週での改善度に統計学的有意差はなかった。

    右膝の平均屈曲度は有意に改善され、投与前 126.56度が 52週では 131.26度となった(p =

    0.016)。左膝の屈曲は、投与前の 126.56度から 52週の 130.14度まで改善されたが、統計学

    的有意差はなかった。右膝の屈曲において改善が認められた症例中に、104週で屈曲が減少し

    た症例が見られたが、それでも平均可動域は投与前の数値よりも良かった。左膝の平均屈曲

    度は、104週まで改善が認められた。

  • ggeennzzyymmee ラロニダーゼ 2.7.3 臨床的有効性の概要

    58

    関節可動域の改善により、手の器用さ及び握力の向上、歩行がさらに容易になり、腕や肩の

    動きを要するスポーツ等の活動に参加できるようになった。

    2) 心機能

    患者全例において、程度は異なるがMPS Iの特徴である既存の心疾患が認められた。すべて

    の患者が、心エコー図で弁の肥厚等何らかの異常を示したが、4例の患者の弁膜性心疾患が顕

    著であった。弁膜性心疾患に罹患しているこの 4例中、1例は心不全であった。

    (1) NYHA分類

    投与前に小児循環器専門医により 10例の患者全例を評価した。rhIDU投与の 52週までに、全

    例の NYHA分類は 1~2度改善された。投与前の NYHA分類が I度と認定された症例はな

    かったが(表 2.7.3-15)、52週までに患者の 50%(5例/10例)、104週までに 67%(6例/9

    例)が I度に分類された。

    NYHA分類の変化の平均は、26週(p = 0.008)と 52週(p = 0.002)で統計学的に有意に改善

    し、104週まで持続した(表 2.7.3-15)。関節の機能と気道の機能の改善が NYHA分類の向上

    の一因となったと考えられた。NYHA 分類スコアの改善は、個々の患者の心疾患(肺高血圧、

    弁逆流)に関する他の測定値における改善から、一次性又は二次性心疾患に対し、rhIDUが部

    分的にでも直接的な影響を与えたことによるものであることが示された。

    表 2.7.3-15: NYHA 分類スコア:第 1/2 相試験

    NYHA分類 (例) 測定時期 例

    I II III IV 最小値 分類

    最大値 分類

    p値 1

    投与前 10 0 3 6 1 II IV — 第 12週 10 2 4 3 1 I IV 0.063第 26週 10 3 6 0 1 I IV 0.008第 52週 10 5 4 1 0 I III 0.002第 104週 9 6 2 1 0 I III ND2 1 Wilcoxon符号付き順位検定 2 ND = 治験実施計画書に従い実施せず。

    (2) 心機能スコア

    心機能スコアは、NYHA分類の評価、ECG、心エコー図、胸部 X線及び心臓に関する理学的

    検査のデータの概略を示すものである。スコアが高ければ高いほど、重篤であることを意味

    する。

    心機能スコアの総計は、投与前の平均値 15.40(範囲 8.0~36.0)から 52週の平均値 12.15(範

    囲 5.0~31.0)まで、統計学的に有意に減少した(p = 0.008)(表 2.7.3-16)。平均スコアは

    104週でさらに 11.00に下がった(範囲 4.0~30.0)。肺高血圧及び弁逆流の平均スコアも、投

    与前から 52及び 104週において減少した。52週までの減少は、統計学的な有意差はなかった

    が、52週までの肺高血圧スコアの直線性が統計学的に示唆された(p = 0.030)。心機能スコ

    アについてはバリデーションを行っていないが、NYHA分類及び肺高血圧スコアの改善と共

    に、このスコアの減少は心疾患の改善傾向を示すものである。

  • ggeennzzyymmee ラロニダーゼ 2.7.3 臨床的有効性の概要

    59

    表 2.7.3-16: 心機能、肺高血圧、弁逆流スコア:第 1/2 相試験

    心機能スコア 肺高血圧スコア 弁逆流スコア 測定時期

    患者数

    (例) 平均 p値 1 平均 p値 1 平均 p値 1

    投与前 10 15.40 — 2.40 — 4.35 —

    第 12週 10 14.55 0.463 2.30 0.857 5.00 0.301

    第 26週 10 14.35 0.366 1.55 0.132 4.50 0.810

    第 52週 10 12.15 0.008 1.30 0.055 3.65 0.266

    第 104週 9 11.00 ND2 0.56 ND2 3.56 ND2

    線形傾向検定 (投与前 ~第 52週)

    p =0.007 p = 0.030 p = 0.122 1 Student t検定 2 ND = 治験実施計画書に従い実施せず。

    (3) 心エコー検査

    三尖弁逆流については、52週で 10例中 6例、104週では 9例中 6例で中等度に改善された。

    僧帽弁逆流は、52週で 1例の患者において著しく悪化し(0~4ポイントの尺度で重症度が 1

    から 3までスコアが上昇)、104週では 2スコア上昇した。4例の患者はやや悪化した(スコ

    アが 0.5~1上昇)。投与前に僧帽弁異常が認められた患者全例の僧帽弁逆流が増加したとい

    うことは、rhIDU治療を受ける前の座りがちの生活から活動的になったことを示していると考

    えられた。投与前スコアが 1+(0~4ポイント)から 52週の 2+、104週の 3+へとスコアが悪

    くなった患者 1例を除き、大動脈弁閉鎖不全の変化は最小であった。三尖弁逆流(TR)の圧

    較差のデータにおいては、実質的な肺高血圧症は認められず、ベースライン時 4例が中等度

    の肺高血圧症(30~40mmHgの圧較差)であったが、104週では 4例全例の TR圧較差は正常

    であった。

    試験に参加した中で最も重篤な心疾患に罹患していた患者は、52週において圧痕浮腫及び安

    静時の呼吸困難の回復、左心室径の減少、そして最も重要な洞調律の回復を含む大きな改善

    を示した。左心室径と左心房拡大が投与前の状態に戻ったことを除き、これらの改善は 104

    週まで維持された。

    3) 睡眠時無呼吸と気道閉塞

    無呼吸及び低呼吸事象の判定のために第 1/2相試験で使用した方法は、第 3相二重盲検試験や

    第 3相継続試験で使用した方法とは異なる。第 1/2相試験では鼻孔サーミスタを使用し、両第

    3相試験では鼻孔カニューレを使用した。したがって、両測定値を直接比較することはできな

    い。

  • ggeennzzyymmee ラロニダーゼ 2.7.3 臨床的有効性の概要

    60

    (1) 睡眠ポリグラフ

    睡眠ポリグラフの結果を表 21.7.3-17に示した。投与前に無呼吸であった 6例の患者全例にお

    いて、一晩に生じた無呼吸の回数が 26週で減少した。1例の患者は投与前では無呼吸は認め

    られなかったが、26週で無呼吸を認めた。米国胸部疾患学会(ATS)の指針(ATS, 1996)に

    従い、持続時間に関わらず閉塞性無呼吸の 1時間に生じる回数が 1回を超える場合を異常と

    した。9例の患者が投与前は低呼吸であったが、5例は 26週で一晩に生じる回数が減少し、2

    例は変わりなく投与前と 26週の両方で一回の低呼吸事象が生じ、2例の患者は 26週で事象の

    回数が増加した。一晩に低酸素になる時間(分)は、投与前に低呼吸であった 2例の患者で

    実質的に減少した。2例の患者が投与前は低酸素症ではなかったが、それぞれ 26週で一晩に

    つき 6分間の低酸素状態になった。無呼吸低呼吸指数(AHI)は 10例中 7例で減少した。平

    均の AHIは、投与前の 2.08から 26週で平均 0.97に減少し、減少率は 53%であった。

    表 2.7.3-17: 睡眠ポリグラフ(投与前値及び 第 26 週):第 1/2 相試験

    無呼吸 呼吸低下 低酸素事象

    (最小値、90% O2 以下)無呼吸低呼吸指数(AHI) 患者

    番号 投与前 26週 投与前 26週 投与前 26週 投与前 26週

    001 0 0 1 1 0 0 0.14 0.14

    002 7 2 27 1 48 1 4.45 0.39

    003 2 0 13 2 0 6 2.23 0.36

    004 3 0 1 1 0 NA1 0.63 0.16

    005 2 0 5 2 0 0 0.92 0.29

    006 0 0 12 6 61 28 1.96 0.93

    007 4 0 0 0 0 0 0.57 0.00

    008 0 5 1 17 0 0 0.13 3.11

    009 48 4 28 17 0 6 9.48 3.96

    010 0 0 1 2 0 0 0.27 0.35

    平均 — — — — — — 2.08 0.97 1 NA = 欠測値 特に第 26週で欠測した事象があったため、無呼吸、低呼吸、及び低酸素事象の平均値は得られなかった。

    投与前に一晩の無呼吸、低呼吸もしくは低酸素事象の回数が最大であった患者 3例(患者番

    号 002、006、009)は、投与期間中に改善した。

    患者番号 008は投与前には無呼吸も低酸素症もなく低呼吸事象のみであったが、26週で閉塞

    性無呼吸事象と低呼吸事象の回数が増加した。当時、この回数増加は上気道感染に起因する

    と考えられた。この結果から、52週で再試験を行った。52週では、無呼吸事象の回数がさら

    に増加し、低酸素事象も生じた。52週で、この患者は発達退行も示したが、恐らくこれは、

    脳のMRIスキャンで脳室拡大の進行が示されたように、頭蓋内圧上昇によるものと考えられ

  • ggeennzzyymmee ラロニダーゼ 2.7.3 臨床的有効性の概要

    61

    た。高圧水頭症は、CNS機能に影響し、咽頭の緊張を低下させることによって無呼吸事象が

    増加することになる。この患者は 61週で脳室腹腔(VP)シャントを受けた。

    (2) 気道の評価

    投与前と 6、12、26、52及び 104週において、MRIを使用して気道に関する指数(咽頭及び

    気管の気道の前後径と咽頭の全幅との比)を測定した。この指数は、52週までは変化が最小

    で、52~104週までの間に 19.60~42.11へ増加したことを示していた。

    6、12、26、52及び 104週で舌の大きさを測定したが、患者の中には減少した者もいた。7例

    の患者の舌の大きさが 52週で 0.1~0.9cmの範囲で減少し、1例の患者は舌の大きさに変化が

    なく、残り 2例の患者はそれぞれ 0.15cmと 0.10cmであったのがいずれも 0.20cmに増加した。

    2例の患者は 104週のデータがなかった。残りの 8例中、5例の舌の大きさが 0.1cmから約

    1.1cmに変化し、2例の患者はそれぞれ 0.1cmと 0.2cm増加し、1例の患者には変化はなかっ

    た。

    投与前から 104週までの気道の指数は、Kulkarniが報告した正常範囲(Kulkarni et al., 1987)

    まで明らかに改善されたが、MRIでは位置的な影響により、気道の指数と舌の大きさの正確

    な評価は困難であり、測定値にばらつきが現れ、結果の信頼性を確保することができなかっ

    た。

    4) 眼疾患

    (1) 視力

    4例の患者にはベースライン時に顕著な視覚障害はなかった。投与前の視力が最も悪い 3例の

    患者で、少なくとも片眼視力に改善が見られた。患者番号 001は、左目で 2~3フィート

    (0.61~0.91m)の距離で指を数えることができるだけであったが、52週では 20/800まで改善

    した。この患者は 104週で角膜移植を受け、左目の視力は 20/300になった。患者番号 002の

    視力は、右目は投与前の 20/400から 104週の 20/60へ、左目は投与前の 20/1000から 104週の

    20/200に改善された。患者番号 009の右目の視力は、投与前の 20/300から 104週では 20/80に

    改善された。

    (2) 緑内障及び眼圧

    10例中 9例の眼圧を投与前に評価したところ、眼圧が 20 mm Hg以上の者はいなかった。こ

    のように、治療効果を評価すべき疾患はなかった。10 例中 5 例は 104 週まで評価を受けたが、

    3例の患者は 26週までのみであった。一貫性のある変化は認められず、いずれの測定時点に

    おいても眼圧が正常範囲を超える患者はいなかった。

    (3) 角膜混濁

    10例の患者の投与前の角膜混濁の重症度は様々で、3例の患者は重度であり、3例の患者は極

    めて軽度、4例の患者は中等度であった。治験期間中に、眼科検査や角膜写真のいずれによっ

    ても角膜混濁に明白な変化が認められた患者はいなかった。

  • ggeennzzyymmee ラロニダーゼ 2.7.3 臨床的有効性の概要

    62

    2.7.3.3.2.1.3 追加有効性評価項目の結果

    1) 第 1/2相試験における中枢神経系(CNS)異常、交連性水頭症、腰椎穿刺、ウェクスラー児童知能検査等

    (1) 退行

    患者番号 008は、rhIDU投与開始前 4ヵ月間に急速に退行が進行した。この退行はMRIで観

    察された脳室拡大が原因の水頭症の進行に起因していた。退行進行加速のこのパターンは

    MPS I患者に認められる(Neufeld, 2001)。12週までに、この患者の言語能力は向上し、以前

    と比較して背筋を伸ばして座り、補助無しで立つことができるようになった。26週に撮った

    MRIにより、頭蓋内圧の増加が原因で脳室拡大が進行していることが示唆された。52週まで

    に患者の能力は減退して体幹の緊張が弱くなり、その結果、補助無しの移動は以前よりも困

    難になった。治験期間中に明らかに認められるほどの退行を示した患者は他にはいなかった。

    (2) 脳MRI検査

    ベースライン時と 6、12、26、52及び 104週で脳MRI検査を行った。この脳MRI検査は、血

    管周囲の蓄積の変化、白質/灰白質境界の不明瞭化、水頭症、CNS 及び頚髄部の髄膜の肥厚、

    その他の様々な所見を確認するため実施した(Kakkis et al., 1996)。血管周りのウィルヒョ

    ウ・ロバン腔(血管周囲)のライソゾーム内の GAG蓄積に起因する嚢胞様病変、軽度から中

    等度の水頭症、白質内の T2強調画像のシグナル強度の増加、J型のトルコ鞍等、数々の共通

    の異常が観察された。投与前と 6、12、26、52及び 104週のMRI画像を比較したところ、中

    等度の水頭症が 26週と 52週でわずかに悪化したが、患者番号 008以外の患者には有意な差

    はなかった。

    (3) 頚髄MRI検査

    この検査は、脊髄の実質内の T2強調画像のシグナル強度の増加に基づいて脊髄圧迫及び頚髄

    損傷の存在を評価するため実施した。投与前の評価で、骨異常及び髄膜の顕著な肥厚による

    脊柱管狭窄症が明らかとなった。T2強調像を評価したところ、このような患者の頚髄の周り

    には髄液が欠乏していることが明らかになった。これは、髄膜の肥厚及び脊柱管狭窄症のた

    めに、脊髄の髄膜が密着して移動空間がなくなったことを示唆している。投与前に患者番号

    001と 006に脊髄圧迫が認められた。104週では、この患者に脊髄圧迫のMRI変化は観察され

    なかった。しかし、患者番号 001は、頚椎の C3-C4亜脱臼のために 29週で脊髄圧迫が始まっ

    た。その後、この患者は頚椎癒合手術を受けた。患者番号 009では投与前と 52週までには脊

    髄圧迫は認められなかったが、104週で明らかに認められた。

    (4) 腰椎穿刺による髄液(CSF)の初圧測定と GAG濃度測定

    腰椎穿刺を、投与前に禁忌症のない 5例の患者、26週はそのうち 4例の患者、52週は残りの

    1例の患者で行った。初圧を記録し、CSFの GAG濃度測定を行った。表 2.7.3-18に CSFの初

    圧測定と GAG濃度測定の結果を示した。

  • ggeennzzyymmee ラロニダーゼ 2.7.3 臨床的有効性の概要

    63

    表 2.7.3-18: 腰椎穿刺結果: CSF の初圧測定と GAG 濃度測定 (第 1/2 相試験)

    患者番号 週 初圧測定(cm) CSF GAG (µg/mL)

    0 19.5 9.9 002

    26 27.8 9.2 0 50.0 11.9

    003 26 37.0 8.4 0 20.5 14.2

    004 52 24.0 10.7 0 21.0 11.8

    005 26 16.6 9.6 0 37.0 18.8

    008 26 37.0 18.9

    評価を受けた 5例の患者全例が投与前の初圧は異常(≥18cm)であったが、投与前(0週)と

    26週もしくは 52週の測定時点間で一貫したパターンを示さなかった。初圧は 2例の患者で増

    加し、2例で減少、1例には変化は認められなかった。

    5例中 4例の投与前の CSFの GAG濃度が、正常値上限である 10µg/mL(

    の で採用されている臨床検査値)を超えていた。10例中最も重度で

    あった患者番号 008を除き、GAG濃度は正常範囲内かほぼそれに近い数値まで減少した。

    患者番号 002の GAG濃度は投与前に既に正常範囲内にあったが、26週でさらに減少した。患

    者番号 008の GAG濃度には、明らかな変化はなかった。

    (5) ウェクスラー児童知能検査

    6例の患者が投与前にウェクスラー児童知能検査を受けた。1例の患者は軽度の精神発達遅滞

    に分類され、2例は境界線、2例は普通の下、1例は普通の上であった。3例のみが 26週後に

    再度、知能検査を受けた。この時のスコアには実質的な変化や一貫した変化は見られなかっ

    た。

    2) 骨格異常

    投与前、26及び 52週で、骨格の異常や変化を評価するため総合的な骨の調査を行った。また、

    患者番号 001の脊髄圧迫が悪化後の頚椎の亜脱臼をさらに評価するために 26週で側方屈曲伸

    展 X線を検査した。骨の調査により、この短期間にでは明らかな改善も後退も見られなかっ

    た。

    52週の屈曲伸展検査により、患者番号 007の C2-C3間に軽度の生理的な亜脱臼があることが

    明らかになった。患者番号 003にも 26週で C2-C3間に無症候性の亜脱臼があったが、誤って

    52 週の検査から除外してしまった。104 週の検査ではこの患者には変化は認められなかった。

    患者番号 009には L5-S1間に無症候性の前方亜脱臼があった。患者番号 001は脊髄圧迫悪化

    の重篤な有害事象を有していたが、26週で屈曲伸展評価を受けなかった。しかし、35週の有

    害事象報告書では、C3-C4間の亜脱臼が示唆されていた。患者番号 001を除き、認められた亜

    脱臼は無症候性であり、MPS I患者の共通の問題を示唆するものかもしれない。

  • ggeennzzyymmee ラロニダーゼ 2.7.3 臨床的有効性の概要

    64

    軽度の胸椎側弯症が投与前に患者 1例で認められた(患者番号 002)。26週では変化は認め

    られなかったが、52週で顕著な側弯症が認められた。104週ではこの患者に更なる変化は認

    められなかった。

    第 2 頸椎歯状突起形成異常は MPS I に共通の異常であり、これはすべての患者に認められた。

    患者全例が、MPS I特有の複数の骨異常である多発性異骨症をある程度有していた。骨機能に

    臨床上の有意な変化を示唆するような変化を報告した患者はいなかった。

    3) 身長と体重の成長率

    6例の思春期前の患者の身長は、投与前から第 52週で平均 6.0cm(平均増加率は 5.13%)、

    104週では平均 10.0cm(平均増加率は 8.39%)増加し、身長発育の正常化を示した。思春期前

    の患者の体重は、投与前から 52週で平均 4.2kg(平均増加率は 15.38%)、104週では平均

    7.9kg(平均増加率は 29.72%)増加した。この増加は実質的に大きく増加したことを示してお

    り、身長の増加だけではなく四肢の全体又は筋肉も増加したことを意味する。

    投与前の身長及び体重の増加率は、投与前 2年から 4年の間の過去の医療記録のデータを用

    いて計算した。6例の思春期前の患者の身長増加率は、投与前で 2.80cm/年、52週で 5.32cm/

    年(平均増加率 98.67%)で、体重増加率は、投与前で 1.65kg/年、52週で 3.49kg/年(平均増

    加率 135.33%)であった。身長増加速度の変化は統計学的にわずかに有意ではなかった(p =

    0.055)。体重増加率の変化は統計学的に有意であった(p = 0.036)。104週では、身長増加率

    の更なる増加は認められなかったが、体重増加速度は 4.14kg/年増加した。身長増加率は 52週

    で 6例の思春期前の患者のうち 3例で正常化した。体重増加率は、52週で 6例中 2例が正常

    であり、104週では 5例中 4例が正常であった。6例の思春期前患者の投与前、52週、104週

    での身長と体重の増加率を図 2.7.3-4 A 及び B に示した。

    A. 身長成長率 B. 体重成長率

    Patient

    Pretreatment 1 to 52 weeks 1 to 104 weeks

    Gro

    wth

    Rat

    e in

    cm

    per

    yea

    r

    0

    1

    2

    3

    4

    5

    6

    7

    8

    9

    10

    11

    12

    002 003 004 005 008 009

    Patient

    Pretreatment 1 to 52 weeks 1 to 104 weeks

    G

    row

    th R

    ate

    in

    ki

    logr

    ams

    per

    year

    0

    1

    2

    3

    4

    5

    6

    7

    8

    9

    10

    002 003 004 005 008 009

    図 2.7.3-4: 思春期前の患者における身長及び体重の増加率:第 1/2 相試験

  • ggeennzzyymmee ラロニダーゼ 2.7.3 臨床的有効性の概要

    65

    2.7.3.3.2.2 第 3相二重盲検試験と第 3相継続試験

    2.7.3.3.2.2.1 主要有効性評価項目

    呼吸機能不全がMPS I患者における死亡の主要な要因の 1つであることより、%努力肺活量を

    主要評価項目の 1つとして選択した。更に、患者の多くが関節硬直、関節拘縮、呼吸機能不

    全及び心臓血管疾患の併発により歩行困難となるため、6分間歩行検査を選択した。第 3相二

    重盲検試験では上記 2項目を主要有効性評価とし、プラセボを対照として本剤の有効性を検

    証することとした。第 3相継続試験では、長期間の治療となるため、%努力肺活量の算出に際

    してベースライン時の身長よりも検査時点の身長を用いる方が適切であると考えられた。し

    かし、MPS I患者の場合、発育に直接関係しない身長の変化、健常人とMPS I患者との発育パ

    ターン及び身体比率の差異が影響するため%努力肺活量は努力肺活量に対する治療効果の目安

    にすぎない。したがって、継続試験においては努力肺活量に対する長期の治療効果を測るた

    め、%努力肺活量と努力肺活量の両方の変動について検討した。

    1) 第 3相二重盲検試験における%努力肺活量

    患者来院時点の身長を用いて得た%努力肺活量の、ベースライン時から 26週までの変化を投

    与群間で比較した。26週間の二重盲検投与後に、rhIDU群は%努力肺活量の中央値の変化が

    1.0%増加したが、プラセボ投与群では 1.1%減であった。%努力肺活量のベースライン時から

    26週までの変化量の中央値は、rhIDU投与群で有意に高かった(p=0.028)。

    %努力肺活量の結果については、身長測定を繰り返すことに由来する姿勢の変化、成長、ばら

    つき等の影響を排除するため、算出に際して、ベースライン時の身長を使用した。表 2.7.3-19

    に、ベースライン時身長を使用した%努力肺活量のベースライン時から第 26週までの変化量

    を示した。

    ベースライン時身長を%努力肺活量の算出に使用した場合、両投与群間の差はより大きくなっ

    た。26週間の投与後では、%努力肺活量の変化量に、両投与群間で 5.9%の差があった(差の

    中央値は 3.0%、p=0.016)。

    rhIDU投与群における%努力肺活量は、ベースライン時で平均 48.4%であった。これは、米国

    胸部学会(ATS)(American Thoracic Society, 1991) に従うと重度の拘束性障害である。

    rhIDU群における%努力肺活量の変化量は 5.3%で、ベースライン値に対する相対的改善は

    11%(5.3/48.4)であった。これは、ATSに従うと臨床上有意であり、患者における週単位で

    のばらつきとは考え難かった。

  • ggeennzzyymmee ラロニダーゼ 2.7.3 臨床的有効性の概要

    66

    表 2.7.3-19: %努力肺活量の変化量(ベースライン~第 26 週、 ITT 集団 - ベースライン時身長):第 3相二重盲検試験

    プラセボ rhIDU 項目 ベース

    ライン 第 26週 変化量

    ベース

    ライン第 26週 変化量

    プラセボと

    の差 p値 1

    患者数

    (例) 23 23 23 22 22 22 —

    平均値 54.2 53.6 − 0.6 48.4 53.7 5.3 5.9

    中央値 53.6 54.0 0.0 51.1 54.2 3.0 3.0

    標準偏差 16.00 14.25 6.48 14.85 18.61 9.09 —

    最小値、 最大値

    18, 77

    30, 77

    − 19, 12

    16, 70

    19, 89

    − 18, 23

    0.016

    1 変化量中央値についてWilcoxon順位和検定

    ベースライン時%努力肺活量、ベースライン時 AHI、ベースライン時 TLC、ベースライン時

    肝容積、ベースライン時尿中 GAG濃度及び治験実施医療機関を共変量として共分散分析を

    行った。その結果、表 2.7.3-20に示すとおり、プラセボ群と rhIDU群間ではこれらの共変量に

    よる調整後においても 5%の有意水準で有意であった(p=0.0395)。rhIDU群ではプラセボ群

    に比し高い最小二乗平均を示し、26週における 2群間の%努力肺活量の差を支持するもので

    ある。また、決定係数(r2)は 0.900106であり、26週の%努力肺活量の 90%が本モデルで説

    明可能であった。なお、本モデルにおいて、ベースライン%努力肺活量及びベースライン肝容

    積の共変量は、26週の%努力肺活量に有意な影響を与えていた。

    表 2.7.3-20: 26 週の%FVC に対する共分散分析結果

    Source DF Sum of Square Mean Square F Value Pr > F Model 10 5445.920859 544.592086 18.92 < 0.0001 Error 21 604.386806 28.780324

    Corrected Total 31 6050.307664 — R-Square Coeff Var Root MSE FVCPCT MEAN 0.900106 9.640909 5.364730 55.64547

    Source DF Sum of Square Mean Square F Value Pr > F Treatment Group 1 138.695486 138.695486 4.82 0.0395

    Center 4 65.716487 16.429122 0.57 0.6867 Baseline % Pred FVC 1 3226.681775 3226.681775 112.11 < 0.0001

    Baseline AHI 1 12.031901 12.031901 0.42 0.5249 Baseline TLC 1 18.876856 18.876856 0.66 0.4271

    Baseline Liver Volume 1 265.580919 265.580919 9.23 0.0063 Baseline GAG Level 1 0.012479 0.012479 0.00 0.9836

    26週での%努力肺活量の平均値の改善が rhIDU群で観察された。一方、プラセボ群では変化

    量が減少した。この試験中に、rhIDU投与群の%努力肺活量は、12週、16週及び 20週で減少

    傾向を示したが、常にプラセボ群よりも高かった。12週から 20週の間での同様な減少傾向は、

    プラセボ群においても観察された。合併症、季節的影響、あるいは来院による患者の疲労等

    の種々の要素が、この減少傾向に影響を与えていると考えられた。それにもかかわらず

  • ggeennzzyymmee ラロニダーゼ 2.7.3 臨床的有効性の概要

    67

    rhIDU投与群の%努力肺活量は、この試験期間中のすべての時点でプラセボ群の対応する値よ

    りも高かった。両群間での差異は、26週の試験終了時点で最大となった。

    2) 第 3相継続試験における%努力肺活量

    ベースライン時(第 3相二重盲検試験における無作為化割付け前の最終測定)及び登録(第 3

    相継続試験への登録前の第 3相二重盲検試験における最終測定)から 182週までの%努力肺活

    量の変化量を、プラセボ/rhIDU投与群と rhIDU /rhIDU投与群について表 2.7.3-21に示した。

    継続投与 182週において、平均%努力肺活量は rhIDU/rhIDU群でベースラインから 1.2%、継

    続投与登録時から 2.6%減少し、また、プラセボ/rhIDU群では継続投与登録時から 3.3%減少し

    た。これらの変化量はそれぞれ、ベースライン値又は継続投与登録前の値の 1.6%、3.2%及び

    6.0%とわずかであり、臨床的に有意な変動ではなかった。

    表 2.7.3-21: %努力肺活量の変化量(ITT 集団) :第 3相継続試験

    記述 統計量

    ベースライン1 登録時 2 第 182週

    変化量 登録時

    2 ~ 第 182週

    変化量 ベースライン

    1 ~第 182週

    プラセボ/rhIDU 群 ( 23例)

    平均 54.2 51.0 47.7 − 3.3 —

    中央値 53.6 51.4 47.4 − 2.5 —

    標準偏差 16.00 13.15 13.69 9.07 —

    最小値、最大値 17.8, 77.4 28.8, 72.3 13.7, 72.6 − 26.3, 12.8 —

    rhIDU/rhIDU 群 ( 22例)

    平均 48.4 49.8 47.2 − 2.6 − 1.2

    中央値 51.1 50.4 50.5 − 2.2 0.1

    標準偏差 14.85 17.46 15.24 7.08 6.52

    最小値、 最大値 15.5, 70.4 18.8, 83.8 18.8, 71.5 − 12.7, 10.0 − 14.6, − 7.9 1 第 3相二重盲検試験の無作為化前の最終測定 2 第 3相継続試験の登録前の 第 3相二重盲検試験の最終測定

    第 3相二重盲検試験のベースライン時から第 3相二重盲検試験及び第 3相継続試験の試験測

    定時点での%努力肺活量の変化量を、rhIDU/rhIDU群及びプラセボ/rhIDU群について 図

    2.7.3-5に示した。

    総合的に、rhIDU/rhIDU群において、第 3相二重盲検試験中に観察された%努力肺活量の増加

    5.3%(プラセボ群と比較し統計学的に有意)は維持され、第 3相継続試験の最初の 24週間で

    さらに改善された(0.6%)。これらの所見は、観察された改善が一過性の変化ではないこと

    を示唆した。プラセボ/rhIDU群において、%努力肺活量は、登録から 24週まで穏やかに減少

    した(− 0.6%)。プラセボ/rhIDU群において同程度の奏効が得られていないことは、前述し

    たように多くの要素による可能性が考えられた。

  • ggeennzzyymmee ラロニダーゼ 2.7.3 臨床的有効性の概要

    68

    図 2.7.3-5: %努力肺活量の変化量

    (ベースライン* 及び登録時** ~第 182 週、ITT 集団): 第 3 相二重盲検試験、第 3相継続試験

    * Baseline= ベースライン、第 3相二重盲検試験の無作為化前の最終測定 ** Entry = 登録時、第 3相継続試験の登録前の第 3相二重盲検試験の最終測定。 %努力肺活量(%) をベースライン時立位身長で算出した。

    3) 第 3相継続試験における努力肺活量

    ベースラインから継続投与 182週における平均努力肺活量(L)を表 2.7.3-22に示す。

    rhIDU/rhIDU群では、26週投与の二重盲検試験でみられた努力肺活量の増加が 182週の継続

    投与期間においても維持され、更に増加した。プラセボ/rhIDU群では継続投与登録時から投

    与 182週において、平均値で 0.16 L(15%)増加した。これは