f.labo Charter

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f.Laboは、ソフトピアにできた新しいプロトタイピング施設をベースにしたコミュニティで す。そこでは、さまざまな分野からの参加者、f.Laboの専任スタッフ、IAMASの教員、学 生、卒業生、そして外部のコラボレータが、それぞれのスキルを用いて、産業、教育、コ ミュニケーション、環境、経済といった、私たちの時代の最も重大な課題に取り組みます。 ローカルからグローバルまでスケールする、社会的志向のゴールをもってプロジェクトを実 施します。国内外のコミュニティとのネットワークを形成するため、3Dプリンタやカッティ ングマシンなどの工作機械を備えた一般市民のためのオープンな工房と、その世界的なネッ トワークである「FabLab」(ファブラボ)への参加も予定しています。 岐阜県は、製造業だけをみても、自動車、航空機、プラスチック、金属製品、窯業、土石、 化学、電気、工作機械など、多くの分野がバランス良く並んでおり、日本国内のみならず、世 界有数の企業も数多く擁しています。その一方で、中小企業においては下請けの割合が約7割 を占めています。そして、景気に大きく左右される下請けから脱して最終製品を創り出すこ とを模索したいが、どこから始めたらいいかわからない、というケースも多いようです。 マネジメントの父と呼ばれるドラッカーは、約60年前に「イノベーションこそマネジメント の中核に位置付けるべきである」と喝破しました。イノベーションは、既存の要素の新規な 結合で、対象とする分野には、技術のみならず社会までも含みます。例えば、日本の開国と それ以降の公的機関の発展を中心とした社会制度改革は、社会的イノベーションの成功例で す。しかしながら、イノベーションの対象として技術だけを考えてしまう傾向は世界的にみて も根強いものです。 実際に、技術を対象に、イノベーションをその名前に掲げた施設は多数ありますが、社会を 対象にした施設の例はほとんどありません。f.Laboでは、さまざまな産業、個人、企業、コ ミュニティなど、岐阜県にすでにある要素の新しい結合による社会的なイノベーションを起こ すことこそ、現状の様々な問題を解決していくかぎなのではないかと考えます。 活動の範囲はローカルばかりではありません。かといって、顔の見えないグローバルだけで もありません。残念ながら、ドラえもんのひみつ道具は、現代の科学技術ではそのほとんど が実現されていません。しかし、別の形で実現されているものはあります。例えば「どこで もドア」です。飛行機に乗ってはるばるでかけなくとも、ノートPCを開けてSkypeを起動す れば、ニューヨークと瞬時につながることができます。前世紀では、非常にコストがかかる ため、ごく限られた人々しか利用できなかった技術がほぼ誰でも利用できるようになったこ とにより、(事実上)瞬時にどこにでも出かけることができます。このような、別の形で実 現されたどこでもドアを活用することで、ローカルとグローバルの両方の視点を自在に行き 来しながら考えを深めていくことができるはずです。 文責:小林 茂(f.Laboプロデューサー/岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー[IAMAS]准教授) f.Labo設立趣意書 http://www.facebook.com/f.LaboOgaki

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Page 1: f.labo Charter

f.Laboは、ソフトピアにできた新しいプロトタイピング施設をベースにしたコミュニティです。そこでは、さまざまな分野からの参加者、f.Laboの専任スタッフ、IAMASの教員、学生、卒業生、そして外部のコラボレータが、それぞれのスキルを用いて、産業、教育、コミュニケーション、環境、経済といった、私たちの時代の最も重大な課題に取り組みます。ローカルからグローバルまでスケールする、社会的志向のゴールをもってプロジェクトを実施します。国内外のコミュニティとのネットワークを形成するため、3Dプリンタやカッティングマシンなどの工作機械を備えた一般市民のためのオープンな工房と、その世界的なネットワークである「FabLab」(ファブラボ)への参加も予定しています。

岐阜県は、製造業だけをみても、自動車、航空機、プラスチック、金属製品、窯業、土石、化学、電気、工作機械など、多くの分野がバランス良く並んでおり、日本国内のみならず、世界有数の企業も数多く擁しています。その一方で、中小企業においては下請けの割合が約7割を占めています。そして、景気に大きく左右される下請けから脱して最終製品を創り出すことを模索したいが、どこから始めたらいいかわからない、というケースも多いようです。

マネジメントの父と呼ばれるドラッカーは、約60年前に「イノベーションこそマネジメントの中核に位置付けるべきである」と喝破しました。イノベーションは、既存の要素の新規な結合で、対象とする分野には、技術のみならず社会までも含みます。例えば、日本の開国とそれ以降の公的機関の発展を中心とした社会制度改革は、社会的イノベーションの成功例です。しかしながら、イノベーションの対象として技術だけを考えてしまう傾向は世界的にみても根強いものです。

実際に、技術を対象に、イノベーションをその名前に掲げた施設は多数ありますが、社会を対象にした施設の例はほとんどありません。f.Laboでは、さまざまな産業、個人、企業、コミュニティなど、岐阜県にすでにある要素の新しい結合による社会的なイノベーションを起こすことこそ、現状の様々な問題を解決していくかぎなのではないかと考えます。

活動の範囲はローカルばかりではありません。かといって、顔の見えないグローバルだけでもありません。残念ながら、ドラえもんのひみつ道具は、現代の科学技術ではそのほとんどが実現されていません。しかし、別の形で実現されているものはあります。例えば「どこでもドア」です。飛行機に乗ってはるばるでかけなくとも、ノートPCを開けてSkypeを起動すれば、ニューヨークと瞬時につながることができます。前世紀では、非常にコストがかかるため、ごく限られた人々しか利用できなかった技術がほぼ誰でも利用できるようになったことにより、(事実上)瞬時にどこにでも出かけることができます。このような、別の形で実現されたどこでもドアを活用することで、ローカルとグローバルの両方の視点を自在に行き来しながら考えを深めていくことができるはずです。

文責:小林 茂(f.Laboプロデューサー/岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー[IAMAS]准教授) f.Labo設立趣意書

http://www.facebook.com/f.LaboOgaki

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f.Laboでの活動のかぎはオープンさとコラボレーションです。そのため、専門のスキルを深め、クリエイティブな思考を深めるためのワークショップ、ブレインストーミング、イベント、展覧会、公開講座などを開催します。 また、新しいプロダクト、サービス、プロセスに関するさまざまなアプローチを探求し、デザイン、産業、社会の新しい結びつきと機会を創出することを狙います。

f.Laboは次のような方針で当面の運営を行います。

• レーザーカッター、ペーパーカッター、3Dプリンタ、3D切削加工機などのデジタル工作機器を、導入ワークショップを受けた人々は、一定の時間枠ごとに予約することにより(当面は)無料で利用できます(材料は別途用意していただく必要があります)。これにより、アイデアを素早くプロトタイピングしながら発展させていくことができます。また、原則として見学は自由です。

• 2012年2月のオープン時に利用できる機材はレーザーカッターとペーパーカッター「Craft ROBO」です。準備が整い次第、3Dプリンター、3D切削加工機などを利用できるようにしていきます。

• 予約は直接現地、もしくは電話にて受け付けます。予約できるのはスケジュールが公開されている範囲(最長で2週間程度)です。前日までに予約できるのは、1週間について2コマまでですが、当日空きがあれば追加で予約することができます。

• f.Laboの設備は、プロトタイプの制作までを主な対象とします。販売を前提とした量産などで長時間の使用が必要となる場合には、外部の加工業者の利用を検討してください。

• f.Laboの設備を利用して作ったものは、そのサンプルを共有することを基本とします。共有の方法は、小さなものや短時間でできるものであれば1つ余分に作って加工時の設定などにデータと共に残す、時間のかかるものや高価な材料を必要とするものであれば写真で残す、などが基本になります。これらのサンプルは、f.Laboの広報などで使用させていただく場合があります。

• f.Laboにある図書やサンプルは、予約なく閲覧できます(ただし持ち出しはできません)。f.Laboにはない機器による加工や材料のサンプルなど、共有を目的としたサンプルの提供は歓迎します。

• アイデアを生み出し、共有し、プロトタイピングしながら発展させていくためのさまざまな手法に関して、f.Laboの専任スタッフ、IAMASの教員、学生、卒業生、外部の協力者などによる、単発または複数回からなるワークショップを積極的に開催します(ワークショップの受講料はその都度設定します)。

• f.Laboでは、お互いの活動を紹介できるようなミーティングを定期的に開催します。ミーティングでは、全員がなんらかの発表を行うことを原則とし、お互いのアイデアや課題を共有しながら、新しい結びつきを探求していきます。

• f.Laboの運営方針は定期的に見直します。公開の方法、期間、範囲、料金などは、実際の利用状況を反映させ、継続的に運用していけるように更新していきます。

http://www.facebook.com/f.LaboOgaki