ディジタルRF通信システム開発における...

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はじめに Agilent 89400シリーズ・ベクトル・シグナル・アナライザ(VSA)は、ベ クトル変調解析(オプションAYA)機能を備え、規格/非規格の変調フォー マットを問わず、ディジタル変調された信号の不具合を簡単に発見・定量 化するための数値および視覚のツールを提供します。システム・ブロック 図のベースバンド、IF、RFにおける連続キャリアおよびバースト・キャリ ア(TDMAなど)の測定が可能です。外部フィルタリング、コヒーレントな キャリア信号、シンボル・クロック・タイミング信号などを必要としませ ん。オプションAYAを備えた89400シリーズVSAは、ガウシアン、ナイキ スト、ルート・ナイキスト、およびユーザ定義可能なフィルタ(アルファ、 BT調整可能)を内蔵し、またキャリアおよび設定したシンボル・レートに ロックできます。 送信されている信号に限らず、送信信号のエラーを正しい信号と比較して 発見、定量化、特定できることが重要です。本アナライザは、アイ・ダイ アグラムやコンスタレーション表示など、一般のベクトル変調解析ツール に加え、理想信号と比較した測定信号などの解析ツールも備えています。 測定更新は1秒間に2度行なわれ、アクティブ・システムに対する変化の影 響をすぐに解析することができます。さらに、高度なスペクトラム解析機 能が備わり、本アナライザの測定性能はさらに充実されています(詳しくは 「参考資料」を参照)。必要以上に外部装置やカスタム・ソリューションを 用意することなく、確度の維持とシステム開発時間の短縮を実現できます。 本書では、基本的なベクトル変調と測定のコンセプトについて解説し、続 いて測定とセットアップの例を示します。これらは、送信機システムを基 礎に説明しますが、I/Q信号を持つどのようなシステムでも、ここに示した 原理とツールを使用することができます。本書では、これらのアプリケー ションについて、本アナライザの測定パワーと使いやすさを示す例として 説明します。 ディジタルRF通信システム開発における ベクトル変調解析の応用 Product Note 89400-8

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はじめに

Agilent 89400シリーズ・ベクトル・シグナル・アナライザ(VSA)は、ベクトル変調解析(オプションAYA)機能を備え、規格/非規格の変調フォーマットを問わず、ディジタル変調された信号の不具合を簡単に発見・定量化するための数値および視覚のツールを提供します。システム・ブロック図のベースバンド、IF、RFにおける連続キャリアおよびバースト・キャリア(TDMAなど)の測定が可能です。外部フィルタリング、コヒーレントなキャリア信号、シンボル・クロック・タイミング信号などを必要としません。オプションAYAを備えた89400シリーズVSAは、ガウシアン、ナイキスト、ルート・ナイキスト、およびユーザ定義可能なフィルタ(アルファ、BT調整可能)を内蔵し、またキャリアおよび設定したシンボル・レートにロックできます。

送信されている信号に限らず、送信信号のエラーを正しい信号と比較して発見、定量化、特定できることが重要です。本アナライザは、アイ・ダイアグラムやコンスタレーション表示など、一般のベクトル変調解析ツールに加え、理想信号と比較した測定信号などの解析ツールも備えています。測定更新は1秒間に2度行なわれ、アクティブ・システムに対する変化の影響をすぐに解析することができます。さらに、高度なスペクトラム解析機能が備わり、本アナライザの測定性能はさらに充実されています(詳しくは「参考資料」を参照)。必要以上に外部装置やカスタム・ソリューションを用意することなく、確度の維持とシステム開発時間の短縮を実現できます。

本書では、基本的なベクトル変調と測定のコンセプトについて解説し、続いて測定とセットアップの例を示します。これらは、送信機システムを基礎に説明しますが、I/Q信号を持つどのようなシステムでも、ここに示した原理とツールを使用することができます。本書では、これらのアプリケーションについて、本アナライザの測定パワーと使いやすさを示す例として説明します。

ディジタルRF通信システム開発におけるベクトル変調解析の応用Product Note 89400-8

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背景

変調は、送信機から1台以上の受信機へ情報を運ぶための方法です。通信システムでは、低周波数の音声やデータを、長距離伝送が可能なRF波(高周波数キャリア)に「背負わせる」ために変調を使用します。情報(音声やデータ)は、一般に位相、周波数、振幅(またはそれらの組み合わせ)を変えることによってキャリアを変調するために使用されます。受信機は受信信号から変調を抽出(復調)して、必要な情報を回復します。

周波数帯によって異なる電磁波の伝播特性から、スペクトラムの各部分には、それぞれに適したアプリケーションがあります。通信市場における需要と供給の増大、ディジタル情報の直接・高信頼伝送に対するニーズの高まり、高い品質と秘匿性への要求などが、複雑化しているRF周波数スペクトラムの効率的な使用に

対する市場のニーズをさらに強めています。ディジタル変調は、これまでも使用されてきましたが、上記のようなニーズに対応するため、さまざまなアプリケーションによる応用が広まっています。ディジタル(複素またはI/Qとも呼ばれる)変調では、振幅と位相の変調の組み合わせを利用します。

多くのディジタル変調通信方式では、キャリア周波数を複数ユーザが使用(スペクトラムの同じ部分にアクセス)できるようにし、またシステムのDSP(ディジタル信号処理)部分における圧縮ゲインを利用することによって、使用可能なスペクトラムの有効利用を図っています。時分割多元接続(TDMA)は、そのような周波数共有の一つの方法です。これは、他のユーザがチャネルを使用する間はオフになっていて、短時間だけ送信されるバースト・キャリアを使用するものです。もう一つの共有方式は、必要な信号をコード・

シーケンスと結合させ拡散したスペクトラムを形成するもので、符号分割多元接続(CDMA)と呼ばれます。CDMA信号は同じスペクトラムを同時に占有し、広帯域ノイズのように相互に影響します。

図1は、ディジタルRF通信システムの基本ブロック図を示しています。これは、パーソナル通信システム、コードレス電話、特殊ディジタル・サービス・システム、携帯電話、ページャ、ワイヤレスLAN、専用基幹移動体システム、衛星通信サービス、GPS、ディジタル・オーディオ放送、配車ネットワーク、ディジタル・ビデオ、レーダ・システムなどのコアとなるものです。このような先進システムの開発、試験、インテグレーション、トラブルシューティングでは、信号劣化を引き起す要因を発見/特定するための、柔軟なテスト機能が必要です。また、規格化されていない変調方式が使用される場合も多くあります。

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目次

はじめに 1背景 2変調のコンセプト 3測定のコンセプト 4伝送、インテグレーション、デザインでの問題 8測定/表示ツールを使用した問題の発見 9測定のセットアップ 15ディジタル変調信号の生成 20任意信号源の生成 20信号の測定(任意信号源を使用) 21その他のツール 21まとめ 22コンフィギュレーション・ガイド 23用語解説 24参考資料 27索引 28

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変調のコンセプト

多くのディジタル無線システムにおいてキャリア周波数は固定のため、考慮しなければならないのは位相と振幅のみです。位相と振幅は、ベクトル座標(極座標)においての、I/Q平面上の個々の点として表すこ

とができます(図2)。Iは同相(位相基準)を、Qは直交(位相から90°のずれ)を意味しています。ここで、キャリアを、I/Q平面上のいくつかの定義済み位置と等しくすれば、符号化した情報を伝送することができます。それぞれの位置またはステート(システムによってはステート間の遷移)が一定のビット・パターンを表し、これが受信機によってデコードされます。それぞれのシンボル・タイミング時(受信機による信号解釈時)におけるI/Q平面上のステートのマッピングを、コンスタレーション・ダイアグラムと呼びます。理論的には一つの点になるはずですが、実際のシステムはさまざまな障害や雑音の影響を受けるために、ステートの拡散が生じます(各ステート周辺でドットが分散する)。

そのような変調フォーマットの例に、16QAM(16ステートの直交振幅変調)があります。このフォーマットは、4ビットの直列データを、振幅および位相からなる一つのステート(シンボル)へとエンコードします。図3は、このフォーマットを表した

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ディジタル通信システム���

送信機�

処理/�圧縮/�エラー補正�

符号�エンコード�

変調�

受信機�

復調�� �ビット・�デコード�

図1.セルラ無線、ワイヤレスLAN、配車網、その他多くのシステムがこのようなブロック図を使用しています。

IQダイヤグラム�

図2. ディジタル通信システムは信号の振幅と位相を使用して、符号化した情報を送信します。

16QAMステート・ダイヤグラム�

図3. Agilent 89400シリーズVSAにおいて、各ステートのバイナリ値はユーザ定義が可能です。

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ステート・ダイアグラムです。この変調フォーマットを生成するには、それぞれIおよびQキャリアは、送信する符号に対応した4種類の振幅レベルをとる必要があります。オプションAYA装備89400シリーズVSAは、16QAMの他にも32QAM、QPSK、DQPSK、π/4 DQPSK、GMSK、MSK、BPSK、8PSKなどの各変調フォーマット(図4)を復調可能です。

シンボル・レートは、コンスタレーションにおける各ポイント間をキャリアが移動する速度をいいます。使用するコンスタレーション・ステートが多いほど、あるビット・レートに対する必要なシンボル・レートは遅くて済みます。シンボル・レートは、信号を伝送するのに必要な帯域幅を決めるために重要です。シンボル・レートが低いほど、伝送に必要な帯域幅も狭くて済みます。ユーザが公称のシンボル・レートを入力した後、オプションAYA装備のAgilent89441A DC~2.65GHz VSAは、最大

レート6.67MHz(オプションAYA装備Agilent 89410A DC~10MHz VSAの場合9.52MHz)で、自動的にデータ(シンボル)伝送信号にロックします。

レシーバ・モードch1+jCh2の場合、本アナライザは、最大19.04MHzのシンボル・レートにロック可能です。

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サポートされる変調フォーマット�

BPSK DQPSKとQPSK

π/4 DQPSK

16QAM 32QAM MSK(GMSK含む)

8PSK

図4. Agilent 89400シリーズVSAがサポートする変調フォーマット

測定のコンセプト

ベクトル・ダイヤグラムは、ステートとそれらの間の遷移を示します。原点と図中の点との間に引いたベクトルは、表示シンボルあたりの設定可能ポイント数(最大20)とともに、ある瞬間での瞬時パワーを表します。測定および表示が可能なシンボルの最大数は、シンボルあたり1ポイントの設定を仮定すると4096となります(オプションUFG 4MB増設RAMが必要)。これは、選択した表

示形式(コンスタレーション、ベクトル、アイなど)にかかわらず適用されます。シンボル間の分解能Nポイントのときに、測定可能なシンボルの最大数は、次の式によって求めることができます。

最大シンボル数 =最大タイム・ポイント数Nポイント/シンボル

最大タイム・ポイント数は、System Utilityハードキー・メニューの[memoryusage]に続くソフトキー・メニューの[configure meas. memory]で設定できます。

伝送レート(bps)= シンボル・レート(Hzまたはステート/秒)

ビット数/ステート

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図5a.ベクトル・ダイヤグラムは、ステートが遷移する間のパワー・レベルを示します。

図5b.Iアイ・ダイヤグラムは、I成分の経時変化を示します(π/4 DQPSK信号)。

図5c.トレリス・ダイヤグラムは、シンボル・ステート間の位相軌跡を示します(GSM信号)。

図5d.シンボル・テーブルおよびエラー・サマリ表示では、復調ビット・ストリームや重要なエラー測定などが示されます。EVMやI/Q振幅誤差などの、詳細なエラー測定結果も得られます。

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IおよびQアイ・ダイアグラムも、一般的な解析表示の一つです。これらはI振幅対時間、Q振幅対時間をシンプルにマッピングしたもので、シンボル・タイミング時にトリガしたオシロスコープ画面ということができます。また、他にもトレリス・ダイアグラムを表示可能で、この画面は測定および理想(基準)信号の位相対時間(シンボルあたりの位相軌道)を表示します。MSK(minimum shiftkey)信号は振幅が一定で、位相を変化させて情報を伝達します。トレリス・ダイアグラムは、各シンボルにおける位相の遷移と軌道をマッピングするため、この信号の特性評価に使用されます。アイおよびトレリス・ダイアグラムは、シンボル・クロック検出ポイントを垂直軸によって表します。

シンボル・テーブルは、復調した結果、つまり各シンボルのバイナリ・ビットを表示します。マーカが使用できる同時マルチ・ディスプレイ・グリッドでは、コンスタレーション

/ベクトル/アイ・ダイアグラムでのデータ位置と、検出したビット・パターンを比較できます。またシンボル・テーブルでは、全体の振幅/位相誤差(およびシンボル位置に対するピーク誤差)、周波数誤差、振幅ドループ、原点(またはI/Q)オフセット、エラー・ベクトル振幅(%rmsおよびピーク)などのパラメータを示す、数値エラー・サマリも表示されます。

伝送された信号のエラーを、理想的な基準信号と比較して検出、定量、特定することができます。この理想的な基準は、誤差がないと仮定した信号の復調信号です。基準信号の生成については、図17で示しています。

エラー・ベクトル振幅

オプションAYA装備の89400シリーズVSAは、各ステートとその間の振幅/位相誤差(I/Q振幅およびI/Q位相誤差)、およびエラー・ベクトル振幅(EVM)を測定します。EVM測

定はNADC/PDC仕様が含むようになりましたが、その他のディジタル変調フォーマットでも誤差定量に有用な方法です。

EVMは、タイミング、振幅、周波数、位相、DCオフセットを補正した後の測定信号と、基準信号との間の、時間を関数とした位相ベクトル差の大きさをいいます。これを、図6で示します。

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EVM機能を使用したエラー解析�NADC π/4 DQPSK、Fs = 24.3kHz�

 シンボル・レートの誤差100Hz� アイ・ダイヤグラムでは大きな変化なし�・�・�

正しいシンボル・レート� シンボル・レート = 24.31kHz正しいシンボル・レート�

図7a.EVM機能を使用したエラー解析

エラー・ベクトルの概念�

測定�信号�

振幅エラー�(I/Q誤差振幅)�

エラー・ベクトル�

位相エラー(I/Q誤差位相)�

(理想)基準信号�

図6.エラー・ベクトル振幅(EVM)は、高感度の変調品質測定です。

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エラー・ベクトル振幅(エラー・ベクトル・タイム)では、従来の解析表示が明らかに示さないような信号伝送のエラーを発見できます。例えば、図7aは、シンボル・レートが誤差を持つ/持たない場合のNADC信号を示しています。アイ・ダイアグラムでは、誤差を検出できていません。図7bで示しているエラーは、アイおよびコンスタレーション・ダイアグラムによって検出することができません。

エラー・ベクトル・スペクトラムは、エラー・ベクトル・タイムのスペクトラム/周波数ドメイン表示です。この測定画面の中心周波数は、一般に送信機のキャリア周波数です(「測定のセットアップ - 同調」のセクションを参照)。従来は、キャリアからオフセットしたスプリアス信号は、コンスタレーション・ダイアグラムによって発見していました。このような場合、円内に散らばったステートや、ステートの理想位置周辺に集まったステートが示されまし

た。しかし近接したスプリアスの場合、必ずしもそのようには表示されません。エラー・ベクトル・スペクトラムでは、従来のスペクトラム・アナライザやコンスタレーション・ダイアグラムでは観察できなかった

オフセットのスプリアスを発見して、その周波数を測定することが可能です。図8は、キャリアから約7kHzオフセットしたスプリアスの例を示しています。

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�EVM機能を使用したエラー解析�

 不正なフィルタ補正、アルファ=0.4により、シンボル・ポイント間で大きな誤差が発生したNADC信号� このようなエラーは、アイ/ベクトル/コンスタレーション・ダイヤグラムでは発見が困難�・�・�

全復調シンボルの�エラー・ベクトル・�タイム(EVM)�

X軸をズームした�エラー・ベクトル・�タイム(EVM)�

ベクトル・ダイヤグラム�

アイ・ダイヤグラム�

図7b.EVM機能を使用したエラー解析

エラー・ベクトル・�スペクトラム�

エラー・ベクトル・�タイム�

図8.従来の測定では見えない近接スプリアスを示す、エラー・ベクトル・スペクトラム

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伝送、インテグレーション、デザインでの問題

ディジタル通信では、変調信号が情報を受信機から送信機へ運びます。したがって、システム・ブロック図の伝送経路にわたった信号品質が重要です。テスト・ソリューションの多くは、送/受信部のどこかが原因となって、最終的な受信信号の品質が低下していることを示します。しかしそのようなソリューションも、劣化の原因を特定し、またディジタル変調/復調器の品質を解析するのに十分なツールを内蔵していない場合が多くあります。

低質な伝送は信号品質の劣化をもたらし、高いビット誤り率(BER)となって表れます。BERテスタは、一定のリミットを超えるエラーの数を数えます。BERテスタでは、信号がなぜ、どれだけリミットを超えたか、またエラーが送/受信機のどこで発生したかがわかりません。Agilent89400シリーズVSAは、エラーを検出するだけでなく、送/受信機部のどこでエラーが発生したかを特定するユニークな機能を搭載しています。本書では、そのようなエラー特定の例として、本アナライザのベクトル変調エラー測定、およびその他の測定技法について説明します。

送信機における問題(欠陥)は、信号パワーの飛散をもたらし、許容外の帯域幅を占めて隣接チャネルへの干渉を起すことがあります。送信システムは、特にパルス信号の場合、オーバドライブを起しやすくなっています。パルス信号は、システムのパワーアンプに負担をかけるため、送信信号の完全性を損なう恐れがあります。また送信機と受信機の両方においても、振幅応答のフラットネス、送信周波数帯域での群遅延変動が、パワーアンプの出力ステージ、受信機の入力ステージでディジタル信号を歪ませることがあります。

トラブルシューティングの鍵は、送/受信システム内で信号劣化を起すと考えられる問題を識別することです。また、エラーのタイプについての手がかりが得られれば、その原因を突き止めることができます。本書では、オプションAYA装備89400シリーズVSAを使用し、伝送経路で発生する障害を特定するトラブルシューティングの測定例を示します。このような障害には、圧縮、LOフィードスルー、I/Q原点オフセット、I/Qゲイン不均衡、直交誤差、位相ノイズ、シンボル・タイミング・エラー、シンボル間干渉などがあります。また、同様の測定は受信機のインテグレーション、トラブルシューティングでも使用できます。

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測定/表示ツールを使用した問題の発見

例えば、すでに送信の問題となって表れそうな信号を、測定セットアップの間に増幅器において観察したとします。おそらくBERテスタがシステムの障害を示しているはずです。ここで問題の原因を突きとめるには、デバイスやシステム「ブロック」の前後で測定を行い、システム・ブロック図をさかのぼってトラブルシューティングを行なう必要があります。

パワーアンプにおいて

最初のステップとして、送信機の出力セクションのパワーアンプを調べます。パワーアンプが引き起すかもしれない問題には、信号圧縮、ステートまたはステート間での信号オーバドライブ(過剰な送信パワー)、チャネル漏洩などが考えられます。パワーアンプで起る可能性のあるその他の問題については、本書のセクション「送/受信機の全体」を参照してください。

• 圧縮パワーアンプのデザイナは、アンプを駆動するためのパワー・レベルを考慮する必要があります。パワーアンプは、リニアでなければなりません。信号の歪みを防ぐため、増幅器のレベルと出力セクションのゲインは厳密にコントロールし、圧縮を防止する必要があります。圧縮は、瞬時パワー・レベルが高すぎて増幅器が飽和するときに起ります。FM送信機のようなMSK変調方式では、飽和気味のほうが効率の良い場合もあります。しかし、大部分のディジタル変調システムで、圧縮はクリッピングや歪みの原因となります。その

結果として、信号の伝送効率が損なわれます。増幅器中のコンポーネントの寄生キャパシタンスの放電には一定の時間が必要なため、シンボル・ステートの一つで起った圧縮は多くの場合、次のステートに干渉します。IQ基準時間に対して測定したIQのベクトル・ダイヤグラムをみると、圧縮が生じているのがわかります(図9)。また、EVMが悪化し始めた場合にも、過大なレベルでの圧縮が疑われます。EVMの統計的な測定値は、シンボル・テーブルおよびエラー・サマリに含まれています。

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図9.圧縮は、ステート間の信号の遷移に影響を及ぼす場合もあります

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• パワー・スプラッタパワー・スプラッタは増幅器の歪みによって発生することがあり、その結果としてパワーが隣接チャネルに漏洩します。アナログ変調(および、ある種のディジタル変調)システムでは、これまで3次/4次相互変調除去などが増幅器歪みの測定に用いられてきました。しかし、より高次の歪み成分が隣接チャネル漏洩に大きな役割を果たすディジタル変調システムでは、このようなCW(連続波)アナログ測定が有効でない場合が多くあります。また、ディジタル・システムで考慮しなければならない点には、基地局ではいくつかの信号がランダムに相和されるため、個々の信号の歪み測定が複合的な結果を正確に反映しないこともあります。特にディジタル・システムでは、直接に隣接チャネル漏洩電力(ACP)を測定することが、スプラッタの発生を見つける最良の方法です。

ACP測定のための掃引LO方法は、基本的に静的な信号を前提とするため、時間的に変動する信号に対して適当とは言えません。「ゲート掃引」はこの問題を改善しますが、掃引時間が大幅に増加します。また、これらのゲート掃引は、繰り返し信号を前提としています。

89400シリーズVSAは、特定チャネルのパワーを測定できる、周波数選択可能なバンド・パワー・マーカを装備しています。また、全信号のディジタル化によって、掃引LOやゲート掃引による制限がありません。本シリーズVSAの信号処理は、高速に変化する信号を特性評価することができます。この点は、バースト信号の処理のために特に重要です。

変調器とその前において

理想的には、変調器のIとQへの入力に、2つの独立したベースバンド信号を入力しなければなりません。変調器からの出力は、RFとなります。実際の大部分の送信機では、IおよびQ信号はディジタル的に生成され、シンボル間干渉(ISI)フィルタ(これもディジタル)を通し、またキャリア信号の変調に使用する前に信号をアナログに変換するDACを通します。フィルタは、信号のスペクトラム占有をコントロールします。フィルタリングを行なわないと、変調器は帯域幅が無限の信号を送出することになり、チャネルが相互に干渉したり、スペクトルを浪費することになります。ISIフィルタは信号を帯域制限するだけでなく、送信

するパルス/信号を歪ませないよう、またシンボル検出時に次の信号に干渉しないようにします。ISIフィルタはシンボル周期の整数倍においてインパルス応答をゼロにして、送信シンボルが相互に干渉しないようにします。

DSPデザイナは、実際のシステムの変調器に組み込む前に、理想的な整合フィルタとオプションAYA装備89400シリーズVSAが提供する理想的な変調器とを使用して、ディジタル的に生成したIおよびQ信号と、理想的な変調器との適合性を検証できます。また、アナログのIおよびQベースバンド信号を、直接にアナライザのIFセクションのそれぞれチャネル1および2に入力することによって、DACの出力をテストできます。

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図10

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測定器レシーバ・モードに[IFセクション(Ch1+j*Ch2)]を選択すると、アナライザのブロック図から直交ミキサが取り除かれます。これによって、チャネル1データが信号の実数部に、チャネル2データが信号の虚数部となります。またオプションAYAおよびAY9(セカンド・ベースバンド入力チャネル)を装備すると、チャネル1がI(同相)成分、チャネル2がQ(直交位相)成分となります。

従来の掃引スペクトラム・アナライザを使用して、デザイン段階において、変調器性能の多くを数値により特性評価できます。そのような測定の代表的なものにリニアリティと歪みの測定があります。89400シリーズVSAもそれらの測定が可能で(スペクトラム・モード)、さらにシフト・コンスタレーション・ダイアグラムなど、視覚的な特性評価を行えます(「ゲイン不均衡と直交エラー」のセクションを参照)。さらに、本VSAが採用するディジタイジング/信号処理技術によって、位相情報が保存されます。このため、ミキサの出力、および変調器全体での位相測定が可能です。変調器のLO基準にフェーズ・ロックするだけで、LOに相対した各チャネル(I/Q入力)の位相を測定できます。この測定は、ミキサおよび変調器を通して、各チャネルについてLOに相対した位相バランスを直接測定する方法となります。

パワーアンプにおけるパルス(移動機から基地局に情報を送信したときなど)は、LOの位相/周波数の安定度に悪影響を与えることがあります。急速で大きなレベル変化は伝送

信号の処理に影響を与え、高いEVMという結果をもたらします。例えば、ターンオン・パルスが、電源に大きな瞬時電流を吐き出させることがあります。携帯電話などの小型送信機ではコンポーネントが密接に置かれているため、小さな信号の中で急に大きな信号が発生すると、回路間で電磁結合が起ることがあります。このような結合が、伝送信号に歪みを与えます。

LOの位相安定度は、PM復調測定と送信機パルスの同期によって測定可能です。基本的に、これは瞬時位相対時間の測定となります。一般に、同期信号は無線信号の中に置くことができます(“Tx_on”などのロジック・ライン)。このような同期信号を使用して、瞬時周波数対時間の測定により、LOの周波数安定度を測ることも可能です(FM復調)。

移動機の中には、異なった周波数を使い送/受信するものがあります。また、基地局が移動機に対して周波数を変えるコマンドを発して、次の基地局へすばやく受け継がせることがあります。変調器のLOは、安定した周波数を維持するためにフェーズ・ロック・ループ(PLL)を内蔵しています。LOがいかに周波数を速く変えられるかは、PLLの閉ループ応答によって決まります。本VSAは正しいドメイン - 変調で、変調器PLLの閉ループ応答を直接に測定することができます。アナライザの内蔵信号源によって変調した外部の信号発生器を、PLLへのベースバンド基準入力信号として使用します。周波数変換されたPLLの出力に対して、アナライザの復調器を使用します。閉ループ応答を直接に測定して

表示し、開ループ応答はアナライザの内蔵演算機能によって得ることができます。これにより、ループに介入したり開いたりする必要がありません。このような測定、およびPLLの性能評価については、『TranslatedFrequency Responce MeasurementsUsing the Agilent 89441A -ProductNote 89400-6』を参照してください。

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送/受信機内で発生する問題

信号やデータの完全性を損なうエラーは、送/受信機全体のどこでも発生する可能性があります。例えば、LOフィードスルーによってシンボル・ディテクタのスレッショルドが不正に設定されると、誤ったステートやビットを検出することになります。その他にも、エラーの原因として代表的なものに、ゲイン/位相の不均衡、干渉/スプリアス信号、妨害、雑音、シンボル・タイミング誤差、振幅/位相の非線形性、キャリア周波数のオフセット、AM-PM変換などが挙げられます。

熟練したエンジニアなら、トレースの重ね合わせなど柔軟な表示形式を使用し、また測定信号を基準信号と比較して、多くのエラーを発見でき

るかもしれません。しかし、より高速に確実に問題を発見するには、定量的な測定が最も有効です。エラー・ベクトル振幅(タイム)トレース(図11)は、信号品質を測定する最良の方法で、システムを通したトラブルシューティングを行う場合に使用します。

シンボル位置を識別するため、垂直バー/ドットをアクティブにできます。EVMトレースを使用し、信号伝送の間に発生したエラーを発見できます。トレースによって、エラーがどのステート(1つまたは複数)で発生したか、またはステート間の遷移で発生したかが分かります。トラブルシューティングの際に、いくつかのポイントでこの測定を行なえば、エラーの一貫性やパターンが分かって原因究明に役立ちます。

信号がシステムの伝送経路を進むにしたがって、一般にはエラーが軽減する(EVMが小さくなる)ことはありません。X軸のスケーリングを使用すれば、密接なポイントを拡大して、見やすく表示できます。EVMは、測定した信号の各ポイントにおいて、全体のエラー値への影響を解析できます。EVMの全体的な測定値(全シンボル検出/クロック位置にわたる%rms)は、エラー・サマリ・テーブルにあります。本書では、以下で送/受信機の一般的なエラーを検出するためのトラブルシューティング例について説明します。

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エラー・ベクトル・タイム画面�

TRACE A: Ch1 Err Vec TimeA Marker 2.4670782 ms 592.37m%

1%

LinMag100m%/div

0%

Start: 820.987654321 us Stop: 4.8950617284 ms

TRACE B:

LinMag

100m%/div

1%

0%

Ch2 Err Vec TimeB Marker 2.4670782 ms 592.37m%

Left: 2.28948772666ms Right: 2.67220377604

図11.エラー・ベクトル・タイム表示と、X軸スケーリング表示。上段のトレースは、シンボルおよびシンボル間での、測定信号と理想信号との差違、および決定時間(垂直バーで表示)を示しています。下段のトレースは、上段トレースで垂直のバンド・マーカが区切っている部分の拡大表示です。

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ゲイン不均衡と直交エラー

コンスタレーション・ダイアグラムから、信号劣化の特性について多くのことが分かります。ゲイン不均衡や直交エラーは、I側とQ側でのコンポーネント(フィルタ、DACなど)の差異による、整合が原因で起ることがあります。不均衡は、フィルタの応答がフラットでないなど、IFフィルタリングのエラーが原因でも発生します。また、AM-PM変換によっても起るこれらのエラーは、コンスタレーションの歪みをもたらし、その結果EVMの増大につながります。IQ Measured Timeのコンスタレーション・ダイアグラムを「理想グリッド」(図12の十字形)と比較すれば、微妙な不均衡でも発見できます。

理想グリッドは、理想的な基準ステートが発生すべき位置を示します。I/Qゲインの不均衡は、基準ステートに対する、測定コンスタレーションの歪みとなって表れます。I/Q直

交エラー(IとQが90°でない)は、傾斜したコンスタレーションとなって表れます。これらは、理想グリッドがなければ発見は困難かもしれません。また、ズーム・イン(スケールの拡大)とマーカの使用によって、微妙な不均衡でも視覚で発見できることが多くあります。図13は、そのようなゲイン不均衡(QのゲインがIに相対して低い)と直交エラーを示しています。それぞれで、点線が理想(基準)のコンスタレーションを示しています。

シンク・ワードを定義したシンク・サーチを使用すれば、本アナライザによってシンボル・ステートの適正な方向性が分かります。この機能によってI/Qの相対レベルが分かるため、システムの調整が可能となります。例えば、Qのゲインに比べてIのゲインを低く抑えるべきかどうか、またその反対かを判断できます。シンク・サーチの使用法については、本書の「測定のセットアップ - パルス変調信号」を参照してください。

シンボルおよびシンボル間での瞬時パワー

ベクトル・ダイアグラムは、シンボル・ステート間における信号の遷移を表示します。I/Q複素面の原点と、トレース上の点との間のベクトルの大きさが、瞬時パワー・レベルに相当します。この表示は、受信機のオーバドライブなど、システムのパーツにとって有害なレベルを観察・測定するのに優れた方法です。上段にベクトル画面、下段にシンボル・テーブルを重ねて表示し、マーカをカップリングすることによって、過大な信号レベルの発生場所、およびシ

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図12.理想グリッドを持つコンスタレーション・ダイヤグラム。理想ステート位置からの歪みを簡単に見てとれます。

ゲイン不均衡�

直交エラー �

図13.不均衡や直交エラーは、多くの場合にコンスタレーションの形状を歪ませます。

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ンボルに対する検出ビット(受信した1と0)を見ることができます。これによって、エラーを発生させるシンボル・パターンやステート遷移を解析できます。本書で前述したように、シンボル・テーブル(図5d)でも、ビット・エラーを発生させる受信信号の品質を示すエラー・サマリが表示されます。統計値(エラー計測)には、EVM、I/Q位相/振幅エラー、キャリア周波数エラー、振幅ドループ、I/Q原点オフセットなどがあります。

干渉信号、フィードスルー、ノイズ

干渉信号は、あるステートを通るたびに伝送信号の振幅と位相が違うというエラーを発生させます。これは、コンスタレーション・ダイアグラムではシンボル位置での拡散として表れます。I/Q振幅および位相エラー・ダイアグラムによって、定量的エラーがどのようなもので、どこで発生するかの解析が可能です。シンボルの拡散は、シンボル間干渉、ノイズ、原点オフセット、シンボル・タイミング誤差によっても起ることがあります。

コンスタレーション・ステートの周囲でシンボルが円形になる場合は、スプリアスや干渉トーンの存在を示しています。円の半径が干渉信号の振幅に比例しますが、この表示フォーマットには、原因特定の鍵となる干渉周波数についての情報がありません。干渉信号の存在を特定するには、まず最初に、アイ・ダイアグラムでアイ交差がシンボル「ライン」以外にあるかを見て、シンボル・タイミング回復が適正かどうか調べます。次にI/Q測定エラー(リニア振

幅、および位相)表示を見ます。そこで、エラーの徴候、周期性がないか、またバーストやパルスがないか調べます。

ディジタル変調キャリアにおける近接したレベルの低いスプリアスは、スペクトラム・アナライザでは発見できません。これは、ディジタル変調信号とランダム・ノイズとの見分けがつかないからです。また、コンスタレーション表示でも発見が困難な場合があります。

EVMトレースは、エラーの正弦性を示唆することがあります。しかし最も必要なのは、スプリアスの周波数を知る方法です。これに対しエラー・ベクトル・スペクトラムでは、キャリアからオフセットしたスプリアス信号が示されます。本書の図8、および「測定のコンセプト」を参照してください。

I/Qオフセット(I/Q平面の原点のシフト)は、伝送システムのLOフィードスルーを示すもので、一般に一定の仕様を満たすことが要求されます。これはエラー・サマリで表示されますが、オプションAYA装備89400シリーズVSAはグラフィック的に、また数値的にこのエラーの補正を行います(GSM信号の復調を除く)。したがって、コンスタレーションおよびベクトル・ダイアグラムでオフセットは表示されません。LOフィードスルーは一般にRFで発生しますが、システム中のどこでも発生の可能性はあります。I/Qオフセットにより、ミキサ障害や外来のDC電圧による不均衡などの問題を見つけることができます。

初めてシステムを統合する際に、理想システムのシミュレーションでは起らない結合や干渉が現れて、問題を発生させることがあります。このような問題には、一般にディジタルとアナログ・セクション間の結合、システム非線形性、電源干渉、温度ドリフトなどの環境要因が挙げられます。オプションのセカンド10MHz入力チャネル(オプションAY7)を装備した89441Aは、そのコヒーレンス測定で、さまざまな干渉源やフィードスルー問題の特定を行います。多くの場合、RF入力とAM/FM/PM復調を使用するだけで、信号の特性により問題の発生源を知ることが可能です。

コヒーレンス測定は、問題の発生源を特定します。図14は、ノイズ・ソースを特定する例を示しています。キャリアに接続したRF入力チャネルはPM復調され、一方で10MHzセカンド・チャネルでシステムのさまざまなポイントに接続します。内蔵のコヒーレンス機能は、この2信号を比較し、周波数ドメインにおける0(コヒーレンスなし)~1(完全にコヒーレント)間の値を計算します。コヒーレンスの値が1に近いほど、2信号が相関している可能性が高くなります。図の例では、ロケーション2におけるノイズは明らかにキャリアのPM復調とコヒーレントなことを示しています。コヒーレンス測定は、その他のエラー発生源の特定にも使用できます。

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測定のセットアップ

このセクションでは、ベクトル(ディジタル)変調信号に対する、89400シリーズVSAを使用した測定のセットアップを説明します。プロセスの概要としては、まず最初に適切な入力レンジと周波数スパンを設定します。次にRF入力チャネルを、必要なキャリアまたはIFに接続します。または、2つの10MHz入力チャネル(オプションAY7のセカンド・ベースバンド・チャネルを装備と仮定)を、それぞれ2つの独立したベースバンドIおよびQチャネルに接続します。次に、信号の変調フォーマットとシンボル・レートを選択します(一般に被試験システムによって定義済み)。解析に必要なシンボル数を入力し、ISIフィルタのタイプを選択します。最後に、スケーリングやマーカ、さまざまな表示形式を使用して測定、観察を行います。4つの基本ステップとしては、(入力の)接続、(スパンの)チューニング、(変調フォーマットの)選択、(画面の)表示となります。

接続...

図15のブロック図をトラブルシューティングのための、ハードウェア接続の基準として使用します。図中の幾何形は、それぞれ測定に使用するアナライザの入力に対応しています。

アナライザは、信号劣化の原因を特定するために、これらの入力位置のどこでも測定を行うことができます。ベースバンドIおよびQ入力信号を、それぞれ直接にチャネル1および2に接続して測定する場合は、IFセクションに対する本アナライザのレシーバ(Instrument Modeハードキー・メニュー内のソフトキー)を[Ch1 + j*Ch2]に設定します。

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干渉/フィードスルー測定結果� 図14.セ カ ン ド10MHzを使用して2つのベースバンドの位置に接続し、RF入力におけるPM復調とコヒーレンスによってそれらを比較した結果、ノイズ・ソースはロケーション2と特定。

ベクトル変調信号の測定方法�

送信機� 受信機�

Agilent 89410A-89441AOpt AYA, AY7, AY9

Agilent 89441AOpt AYA, AY9

= ベースバンド・チャネル1入力�

= ベースバンド・チャネル2入力�

= RF入力�

図15.ベースバンドからRFまで、システム・ブロック図中のさまざまなポイントで測定する場合の、アナライザへの入力

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チューニング...

アンテナまたはケーブルをアナライザのRF入力に接続して、アンテナの受信信号を測定します。アナライザをVector Instrument Modeに設定し、中心周波数を送信機のキャリア周波数に設定します。外来ノイズを防止するには狭い周波数スパンを設定します。しかし、フル・パワー・スペクトラムを観察し、またアナライザにとってキャリア・ロックが可能だけ、十分な幅がなくてはなりません。アナライザは、外部のコヒーレント・キャリアを必要としないで、キャリア信号に自動的にロック

します。一般に、ロックしてそれを維持するには、測定で使用する中心周波数はシンボル・クロック周波数の 2 %以内の必要があります。(π/4DQPSKなど、変調フォーマットによっては、シンボル・クロック・レートの約10%以下という中心周波数許容値でロック可能な場合もあります。)例えば、シンボル・クロック周波数が10kHzの場合、その2%は200Hzです。したがって、中心周波数は信号の真のキャリア周波数の200Hz以内の必要があります。アナライザの周波数スパン設定のためのガイドラインは、次の式で表されます。

「スパン・ファクタ」は1.28で、これは、アナライザの内部サンプリング・レートに関係しています。アルファは、使用するISIフィルタのシェープ・ファクタ(またはロールオフ)です。例えば、NADC規格使用時のシンボル・レートは24.3kHz、アルファは0.35です。したがって周波数スパンは約380kHz以下、32.8kHz以上となります。

バースト信号やパルスの場合には、トリガが必要になります。IFトリガはエンベロープ・トリガの一つで、信号の振幅変化を待ちます。CW(連続波、正弦波)や、エンベロープが一定の信号では、大きさが変化しないためにトリガできません。また、ディジタル信号によっては、ステート遷移の間にパワー・レベルが変動するため、IFトリガは使えません。システム内で外部トリガ信号(TTLレベル)を使える場合は、それを測定のトリガに使用できます。(パルス信号の復調については、本書のセクション「選択...」を参照してください。)

測定器モード、アナライザのレシーバ・タイプ、中心周波数、周波数スパン、トリガの設定が済めば、送信信号のパワー・スペクトラムを観察して、対象の信号が正しいこと、およびシステムの動作を確認します。またこれは、システムの問題を発見するための予備作業ともなります。送信中のディジタル変調信号がノイズのように見え、またISIフィルタの形状が既知でないとき、パワー・スペクトラムはフィルタの形状に類似するはずです(図16)。これで、X軸スケーリングを使用して送信機のターンオン/ターンオフ特性を測定し、パワー・スペクトラムのサイ

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図16.NADC信号のパワー・スペクトラムとバンドパワー・マーカ。Agilent 89400シリーズVSAが提供する真のRMSパワー検出と高精度のノイズ帯域幅が、今日のディジタル通信信号の測定に必要な確度と汎用性を提供します。

20*(シンボル・レート)> 周波数スパン >(1+アルファ)(シンボル・レート)

1.28

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ドローブで問題を容易に発見できるようになります。トランジェント信号の捕捉と、それらでの瞬時パワー/周波数/位相の測定については、『89400シリーズ ベクトル・シグナル・アナライザによる送信機過渡特性の測定 -Product Note 89400-5-』を参照してください。

選択...

適切な変調フォーマットを選択して、受信信号を復調します。[DigitalDemodulation]、[Demodulation setup]、[Demod format]の順にキーを押し、サポートされる変調フォーマットの一つを選択します。NADC、PDC、GSMの場合は、ワン・キーの自動コンフィギュレーションによってセットアップが行えます。この機能を使うと、シンボル・レート、周波数スパン、測定/基準フィルタ・タイプ、アルファ(またはBT)、定義されたシンボル数(結果長)が正しく自動設定されます。また、規格外の変調フォーマットを使用するとき、これらの値はすべて手動でも設定できます。

オプションAYA装備の89400シリーズVSAは、ナイキスト(ナイキストとルート・ナイキスト)およびガウシアンの、2つの定義済みISI整合フィルタを内蔵しています。また、ユーザ定義のフィルタもPCからアナライザへロードできます。例えば、フィルタの時系列インパルス応答に、20シンボルで、シンボルあたり20ポイントを入力します(=401タイム・データ・ポイント)。アナライザの理想受信機の完成には、「測定」および「基準」のフィルタが必要とされます(図17)。ユーザ定義のフィルタを使うと、試験のためのカスタム整合フィルタを作成する時間とコストを削減することができます。

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「測定」および「基準」の整合フィルタ�

(送信機)�

実際のデータ�

ISIフィルタ�(ルート・ナイキスト)�

(受信機�[Agilent 894xx])�

ISI「測定」整合フィルタ*�(ルート・ナイキスト)� 測定データ�

理想データ�

ISI「基準」整合フィルタ**�(ナイキスト)�

*「測定」フィルタ・タイプ: �オフ、�ナイキスト、�ルート・ナイキスト、�ガウシアン、�ユーザ定義��**「基準」フィルタ・タイプ: �方形、�ナイキスト、�ルート・ナイキスト、�ガウシアン、�ユーザ定義�

変調器�

復調器� 検出ビット�

理想/基準信号生成�

比較� エラー測定�

図17.送/受信機でのフィルタリングに選択性マッチング・フィルタを使用。検出ビットを既知の変調フォーマットおよびフィルタリングとともに使用して、理想信号を生成。

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パルス変調信号

一般に、TDMAやE-TDMAシステムなどのように、移動機から基地局への信号はパルス化されています。言い換えると、キャリアがオン-オフします。オンは受信機がデータを送信するときで、オフはデータ送信の終了です。このような場合、問題とする情報が送信される間のみを測定することが重要です。パルス信号の測定を確認するには、まずアナライザをベクトル・モードに設定し、表示フォーマットをメイン・タイムに設定します。そしてパルスやバーストを観察します。ディジタル復調モードの場合は、トリガ機能として「パルス・サーチ」を使用できます。これは、一定でないエンベロープ特性を持ったパルス・キャリアの、立ち上がりエッジと立ち下がりエッジを検出します。パルス・サーチは、[Time]ハードキー・メニューのトグル・ソフトキーでアクティブにできます。この機能は、あるタイム・レコード内で発生するパルスを検出するという点でIFトリガに似ています。IFトリガは、一定でないエンベロープ特性を持ったパルス・キャリアでは、その途中で誤ったトリガを起します。

パルス・サーチをオンにすると、アナライザはキャリアのオンをサーチし、続けてキャリアのオフをサーチします。キャリアを検出しなければ、“Pulse not found”が表示されます。つまり、アナライザはパルス全体(オフからオン、次にオンからオフ)を検出する必要があります。

1測定が2パルス以上を含むとき、アナライザは最初のパルスだけを測定します。他のパルスはすべて無視されます。これは、長いサーチ・レングスの場合に発生することがあります。サーチ・レングス(ユーザ定義可能)は、アナライザが収集するデータ量を設定します。目的とするパルスをサーチ・レコードの初めに合わせるには、トリガと「シンク・サーチ」をともに使用します。シンク・サーチ([Time]ハードキー・メニュー内)は、測定するビットを、指定したシンク・ワードに関連付けるために使用します。

ベクトル変調解析(オプションAYA)には、アナライザのエディタを使用してカスタムのソフトキーを割り当てるユーティリティが付属しています。これを使用して、変調フォーマットに対応させた、いくつかのシンク・ワードを切り替えるためのソフトキーを設定できます。またこのユーティリティを使用して、コンスタレーション/ベクトル・ダイアグラムのデフォルトのステート位置を変更することも可能です。デフォルトのステート位置設定を確認するには、[Instrument Mode]、[DigitalDemodulation]、[Demod format]、[State definitions]の順に選択します。

シンク・サーチは、パルス・サーチを使用する/しないにかかわらず有効にできます。つまりシンク・サーチは、連続波およびパルス信号に対する、測定範囲の位置決めに使用できます。シンク・サーチを使用するときは、サーチ・レングスが、ガード・ビットやランプ・ビットを含めたパルス全体を捕捉する十分な大きさを持つようにします。最適な結果を得るには、サーチ・レングスをパルス長の少なくとも1.5倍に設定します。サーチ・レングスは、復調および表示する情報量(結果長)よりも長く設定する必要があります。つまり、最小でも測定するシンボル数にわたってサーチを設定することになります。サーチ・レングスについてより詳しくは、アナライザのヘルプを参照してください。

さらに、収集データ(サーチ・レングス)内での復調データ(結果長)の位置を決める、シンク・ワードを基準としたオフセット(シンボル数で)を設定できます。これを、図18が示しています。サーチ・レングスおよび結果長は、[Time]ハードキーによって設定できます。オフセットを設定するには、[Time]ハードキーに続いて[Sync setup]を押します。このソフトキー・メニューは、シンク・パターンの設定にもあります。シンク・サーチがオンでシンク・パターンが検出されないときは、メッセージ“Sync Not Found”が表示されます。

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表示...

オプションAYA装備の89400シリーズVSAでは、柔軟性に富んだ表示フォーマットやマーカを使用できるため、エラーをたやすく発見できます。1画面、2画面(上下、または重ね)、4画面(上下、または4分割)をカラーで表示できます。画面の間でマーカを連動させれば、シンボルとエラーを対応させることも可能です。

本アナライザでは、いくつかの方法を使用して伝送信号のエラーを発見できます。例えば、「理想グリッド」- オーバレイ表示(I/Qタイムのコンスタレーションなど)を使用して、基準信号からの測定信号の偏移を調べます。X軸スケーリングは、測定トレースの細かな部分を拡大するために使用できます。また、エラーを最も正確に検出する方法には、エラー・ベクトル振幅/タイム、エ

ラー・ベクトル・スペクトラム、I/Qエラー振幅、I/Qエラー位相などのエラー測定があります。これらに関しては、本書のセクション「測定のコンセプト」で説明しています。

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オフセット�(シンボル数で)�

シンク・ワード�

目的とするリザルトのスタート�

結果長(表示される情報)�

データ・�ストリーム�

トリガ・ポイント�

サーチ・レングス�

パルス信号�

「新しい」サーチ・レングス�

図18.パルス・サーチとシンク・サーチを使用してバースト信号を測定可能

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ディジタル変調信号の生成

Agilent 89410Aが内蔵するベースバンド信号源(89441AはオプションでRF信号源を内蔵)は、ディジタル変調システムのスティミュラスとして使用でき、これをアナライザによって復調できます。固定の正弦波、ノイズ、チャープ、および任意の信号を生成できます。任意信号としては、測定した信号の実数8192(複素4096)ポイントのタイム・レコードをレコーディングし、スティミュラスとして再生できます。同じタイム・レコードを、連続して何度も再生可能です。これは、連続したデータや「生の」信号の代りとはなりません。しかし多くの場合、テストのために十分使用できます。

任意信号源の生成

ディジタル変調ソース信号を生成するには、ソフトウェア・パッケージによりデータを数学的に生成して、標準データ・フォーマット・ユーティリティ(89400シリーズVSAに標準で付属)を使用してコンピュータからアナライザの任意信号源にロードすることが可能です。このようなソフトウェア・パッケージには、The MathworksのMATLAB、MathsoftのMathCADなどがあります。または、テスト信号を測定し、それをデータ・レジスタにセーブして任意信号

源から出力することもできます。あるいは復調した基準信号を使って、ディジタル変調ソース信号をアナライザ内で生成することも可能です(図17参照)。この信号を、任意信号源から出力します。この信号は一度のレコーディングから構成され、連続・繰り返して再生します。内部でソース信号を生成するには、以下の手順のとおり行なってください。

1. 初期設定状態のアナライザから、ベクトル・モードを選択します。

2. 必要な中心周波数に設定します(通常はキャリア周波数に近似)。

3. 周波数スパンを設定します。目安として、シンボル・レートの2~3倍のスパンとなります。このステップは基準信号の生成に必要ではありません。しかし、信号を解析するために重要です。

4. アナライザからすべての信号入力を外します。入力ノイズのみが基準信号の生成に使用されます。

5.測定器モードをDigital Demodulationに設定します。Demodulation Setupメニューのソフトキーを使用して、変調フォーマット、シンボル・レート、アルファ/BTなどの変調パラメータを設定します。

6. 分布送/受信機ナイキスト・フィルタを使用するシステムについては、測定フィルタおよび基準フィルタに「ルート」フィルタを設定します。フィルタ・タイプ設定は、DemodulationSetupソフトキー・メニューにもあります。一般にその他のシステムには、基準フィルタとして、実際のシステム送信機で使用するのと同じフィルタを選択します。この手順に従って基準信号を生成する場合に、基準フィルタのみが結果に影響します。

7. 結果長は、測定シンボル数よりも25シンボル長く設定します。

8. Points/Symbolは、最低でも5に設定します。この数は多くの場合に適当ですが、ガウシアン・フィルタを使用し、BTが0.3以上の場合はさらに大きな値が必要です。特にBTが0.3を大きく超える場合は、10~20ポイント/シンボルの範囲で設定します。

9. Measurement DataをIQ Referenceに、またData FormatをConstellationに設定します。これにより、大きなノイズが表示されます。

10. このI/Q基準タイム・トレースをファイル、またはデータ・レジスタにセーブします。これで信号生成は終了です。

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信号の測定(任意信号源を使用)

1. ディジタル変調信号を生成するための、前に示した手順の1~3および5に従ってアナライザを設定します。

2. ケーブルで信号源出力とアナライザの入力を接続します。アナライザの信号源をオンにし、Source TypeにArbitraryを選択します。使用する任意データ・レジスタは、ディジタル変調信号をセーブしたレジスタの必要があります。信号をファイルにセーブした場合は、ファイルのデータをデータ・レジスタにロードします。

3. 入力レンジを、オーバロードが起きない最低の値に設定します。そのためには、[Range]を選択して、緑色のオーバロード・インジケータが点灯するまで、下矢印キー(フロントパネルのテンキーにある)を繰り返して押します。点灯したら、上矢印キーを一度だけ押します(またはオーバロード・インジケータが消えるまで)。

4. ナイキスト・フィルタを使用するシステムでは、アナライザのナイキスト基準測定フィルタを使用します。ガウシアン・フィルタを使用するシステムでは、基準フィルタにガウシアンを選択します。ユーザ定義フィルタを使用するシステムでは、同一のフィルタを基準フィルタに使用します。

5. さらに復調のためのセットアップとして、結果長を、最低でも信号生成のときよりも25シンボル少なく設定します。

6.トリガ・タイプをInternal Sourceに変更します。また、およそ20シンボルに相当するTrigger Delayを設定します。このディレイは、時間単位の設定が必要になります。20シンボルに相当する時間設定は、次のように

行います。まずMeasurement DataをIQ Measured Timeで表示し、DataFormatにLogまたはLinear Magnitudeを選択します。More Data Formatソフトキーを押し、「ドット」または「バー」を選択します。表示されるドットまたはバーは、各シンボルを示しています。マーカとフロントパネル・ノブを使用して、20シンボルをスクロールします。マーカのX値の単位が「秒」の場合は、[Re fLevel/Scale]、[X & Y units setup]、[Xunits]の順に押します。これにより、単位は秒からシンボルに変わります。ノブを使用し20シンボルだけスクロールしてから、「秒」に戻します。これをトリガ・ディレイとして使用します。

7. Measurement Dataおよび DataFormatから定義信号パラメータを設定することによって、信号は「ライブの」信号と同じように復調できます。

その他のツール

タイム・キャプチャ・モードでは、アナライザは入力をサンプリングしてRAMに記憶します。最大1Mサンプルの1チャネル・データ(オプションAY9拡張タイム・キャプチャを使用)、または500kサンプルの2チャネル・ベースバンド・データ(レシーバ・タイプ[Ch1 + j*Ch2]を使用)を記録できます。このデータは内蔵フロッピーディスク・ドライブ、または外部のドライブに転送して、研究室や他の場所でアナライザによるポスト処理を行えます。捕捉したデータに対しては、すべてのオンライン測定を行えます。これらの測定をタイム・キャプチャ・データに対して行えますが、このデータはソース出力を通して(フルで)再生はできません。タイム・レコードの一つだけ(実数8192ポイントまたは複素4096ポイント)が、任意ソース出力

を通して再生できます。これらの機能について、『89400シリーズベクトル・シグナル・アナライザの強力なタイム・キャプチャ機能 -Product Note89400-10』を参照してください。

アナライザの画面は、オプションUG7(アドバンスLAN)およびUFG(4MB拡張RAMおよび付加I/O)を使用して、室外からでも、世界のどこでもリアルタイムで見ることができます。またX Windowsアプリケーションとして、89400シリーズVSAはネ ットワークのどこにある XWindowsサーバでも、ディスプレイ・ウィンドウをオープンできます。X Windowsディスプレイでは実際の測定トレースを表示できるだけでなく、アナライザのフロントパネルをシミュレーションできます。遠隔ワークステーションから本アナライザを操作するには、マウスなどのポインティング・デバイスを使用して、必要なキーを押すだけです。これにより、R&Dラボは、遠く離れた製造現場でのトラブルシューティングを支援することも可能です。

さらに、その他の機能を挙げると -大切な測定セットアップやトレースをメモリまたはディスクに保存し、読み込むことが可能です。IBASIC(オプション1C2)を使用すればキーストロークの記録が可能になり、プログラムに組み込んだソフトキーからこれを呼び出してカスタムの測定を作成できます。また、本アナライザは操作マニュアル(ヘルプ・テキスト)を内蔵しています。これには、動作原理やセットアップ方法の説明、索引も含まれています。また、幅広いラインアップのHew l e t t -Packard周辺機器への直接出力、ワードプロセッサで使用可能なDOSファイルへのプリント/プロットによって、レポート作成も簡単です。

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まとめ

ベクトル変調解析(オプションAYA)を装備したAgilent 89400シリーズVSAは、今日の先進通信システムが使用するディジタル・レシーバと同様のアーキテクチャを採用しています。本アナライザの強力な測定機能は、(I/Q信号を使用する)ディジタル・システムのブロック図全体にわたって、特性評価とトラブルシューティングを行います。幅広い変調フォーマットのサポートに加えて、さらに強化された測定機能により、ベースバンド/IF/RF周波数におけるインテグレーション、トラブルシューティング、デザインにかかる時間の短縮が実現できます。

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スタンダードAgilent 89400シリーズVSA

• 優れた確度

• 高性能スペクトラム解析

• 周波数/位相/タイム/変調(AM、PM、FM)ドメイン

• バースト/過渡信号の解析

• 瞬時パワー測定

• 周波数/時間選択性パワー測定

• データ・ポスト処理のためのタイム・キャプチャ

• コヒーレンス測定

• 群遅延測定

• 内蔵信号源

ベクトル変調解析(オプションAYA)

• アイ/コンスタレーション/ベクトル(極座標)ダイヤグラム

• 自動キャリア/シンボル・ロック

• 変調フォーマット - QPSK、DQPSK、π/4 DQPSK、16QAM、32QAM、MSK、GMSK、8PSK、BPSK

• ユーザ選択可能フィルタ

-ガウシアン

-ナイキスト、ルート・ナイキスト

-アルファ(およびBT)の設定

-ユーザ定義フィルタ

• 強力な解析機能

- IQ振幅/位相エラー

-エラー・ベクトル振幅

-理想データ対測定データ

• RF/IF/ベースバンド測定

- RF入力

-ベースバンド[Ch1 + j*Ch2]

• 連続/バースト信号の測定

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コンフィギュレーション・ガイド

本書で説明の測定を実行するには、以下の構成を推奨します。

Agilent 89441A 2.65GHzベクトル・シグナル・アナライザ(またはAgilent 89410A DC~10MHzベクトル・シグナル・アナライザ)

オプションAYA ベクトル変調解析

オプションAY7 セカンド10MHz入力チャネル

オプションUFG 4MB拡張RAMおよびI/O

オプションAY9 1Mサンプルへの拡張タイム・キャプチャ

2.65GHzを超える測定には、次の構成を推奨します。

Agilent 89410A DC~10MHzベクトル・シグナル・アナライザ

オプションAYA ベクトル変調解析

オプションAY7 セカンド10MHz入力チャネル

オプションUFG 4MB拡張RAMおよび付加I/O

オプションAY9 1Mサンプルへの拡張タイム・キャプチャ

Agilent 89411A 21.4MHzダウンコンバータ

21.4MHz IFスペクトラム・アナライザ(Agilent 8566B、Agilent 70000シリーズなど)

便利な次のオプションを上記構成に追加できます。

オプションAY8 RF信号源

オプションUG7 アドバンスドLANサポート

新製品 89600シリーズベクトル・シグナル・アナライザについては、89600シリーズのブローシャ、データ・シートを参照してください。

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用語解説

ACP(Adjacent Channel Power): 隣接チャネル漏洩電力。ある周波数帯域のパワーは、89400シリーズVSAが内蔵するバンド・パワー・マーカによって簡単に測定できます。『89400シリーズ ベクトル・シグナル・アナライザによる周波数/時間選択パワー測定 -ProductNote 89400-1-』を参照。

BT(Bandwidth Time Product): アルファを参照。

EVM(エラー・ベクトル振幅): 理想(基準)ステート位置と、測定ステート位置との間に引いたベクトルの大きさ。%rmsとピークの2値を測定します(ピーク位置に対するシンボル数を表示)。

I/Qエラー(位相誤差): I/Q平面の原点から引いた、測定ステート・ベクトルと理想(基準)ステート・ベクトル間の角度。度数と%振幅の2値を測定します(ピーク位置に対するシンボル数を表示)。

I/Qエラー(振幅誤差): I/Q平面の原点から引いた、測定ステート・ベクトルの振幅と、理想(基準)ステート・ベクトルの振幅の差。%rmsとピークの2値を測定します(ピーク位置に対するシンボル数を表示)。

I/Qオフセット: 「I/Q原点オフセット」とも呼ばれます。検出決定ポイントにおける、変調キャリアの大きさに相対した、キャリア・フィードスルー信号の大きさ。キャリア・フィードスルーは、変調信号を生成するI/Q変調器のバランスを示します。変調器における不均衡はキャリア・フィードスルーを生み、復調I/Q信号でのDCオフセットとして表れます。

IFトリガ: エンベロープ・トリガの一種。測定信号の各タイム・レコードの振幅/パワー・レベルの変化を探します。IFトリガは、ステート間の信号遷移においてパワー・レベルが変動しやすい、ある種のディジタル変調信号には使用が困難です。またCWや、MSKフォーマットなどの振幅固定信号ではトリガできません。これらの場合、システムで外部トリガ信号(TTL)を使用できれば、それによって測定をトリガできます。またはベクトル復調を行う場合には、パルス・サーチやシンク・サーチの使用を考えます。

ISIフィルタ: IおよびQ信号はディジタル的に生成され、シンボル間干渉(ISI)フィルタを通って、変調を受けるアナログ信号に変換されます。フィルタリングなしでは、変調器は無限帯域幅の信号を出力し、これは送信できません。ISIフィルタは信号を帯域制限するだけでなく、送信するパルス/信号を歪ませないように、また次の信号を干渉しないように特に設計されます。ISIフィルタはシンボル周期の整数倍においてインパルス応答をゼロにして、送信シンボルが相互に干渉しないようにします。

アイ・ダイアグラム: 定義シンボル数に巻き付けた、I(またはQ)振幅対時間のマッピング。従来は、タイミング時にトリガしたオシロスコープによって測定されてきました。89400シリーズVSAでは、シンボル・クロック検出ポイントは画面上の垂直ラインで示されます。

アイ・レングス: アイ・ダイアグラムが表示する(巻き付ける)シンボルの数。

アルファ、BT(Bandwidth TimeProduct): フィルタのシェープ・ファクタで、ロールオフとも呼ばれます。アルファが小さいほど、フィルタはシャープになります。アルファがゼロのとき(ブリックウォール・フィルタ)、帯域幅はシンボル・レートと等しくなります。キャリア・セクションが必要とする実際の帯域幅は(占有帯域幅)、次の値で示されます -(シンボル・レート)×(1+アルファ)。

位相誤差: I/Qエラーを参照。

エラー・ベクトル・スペクトラム:エラー・ベクトル・タイムの周波数スペクトラム。この測定により、ディジタル変調システムの密接したスプリアス信号の周波数が示されます。

エラー・ベクトル・タイム: この測定は、エラー・ベクトル振幅の変動を経時の(シンボル決定タイミング・ポイントとポイント間の)信号変化として示します。

オフセット(QPSKおよびその他):無線/衛星システムには、オフセット・キー(スタッガ)と呼ばれる変調を使用するものがあります。これらのシステムでは、IおよびQデータ・ストリームの間にハーフ・シンボル・タイムのディレイが挿入されます。これによって、変調エンベロープがIおよびQの両キャリアで同期しません。これには、送信機が処理するピーク・パワーを多少減少できるメリットがあります。

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基準フィルタ: システムの受信機で使用されるISIフィルタとの整合のため、89400シリーズVSAで適用されるフィルタ。このフィルタは一般に、データ送信に使用するフィルタの2乗成分 -(送信機フィルタ)2です。基準フィルタは、「ホール・フィルタ」と呼ばれることもあります。

キャリア周波数誤差: このパラメータは、測定IF信号と予想IF信号間の周波数誤差を言います。RF周波数、LO周波数、ディジタイザ・クロック・レートの誤差はすべて、キャリア周波数誤差として表れることがあります。

キャリア・ロック: 89400シリーズVSAは、外部コヒーレント・キャリアの必要なく、自動的にキャリア信号にロックします。ロックしてそれを維持するには、アナライザの中心周波数をシンボル・クロック周波数の5%以内に設定する必要があります。

コヒーレンス: 2信号間の近似性を表す、2チャネル測定。特に、入力により発生した出力信号のパワーを測定するもの。値が1.0のときは完全にコヒーレントで(出力パワーのすべてが入力信号によって発生)、1.0よりも小さいと外来ノイズ、システム非線形性、予想しない入力信号などの存在を示すことがあります。

結果長: 表示されるデータ(シンボル)の総量。89400シリーズVSAが表示できるシンボルの最大数は、4096です(オプションUFGの4MB拡張RAMを使用した場合)。

コンスタレーション・ダイアグラム: I/Q平面上のステート位置の極座標マッピング。コンスタレーション・ダイアグラムでは、スプリアス信号が、シンボル決定タイミング・ポイントにおける理想位置を中心とする、円形パターン内のステートとして表われます。スプリアスの周波数は、理想ステート位置から円(実際の測定ステート)に引いたベクトルに直接に比例したものとなります。密接したスプリアスの発見は、この方法では困難です。また、このベクトルはエラー・ベクトルと等価です。経時変化するこのベクトルのスペクトラムを、エラー・ベクトル・スペクトラムと呼びます。

サーチ・レングス: 復調されるデータ(シンボル)の総量。この量は、表示される情報量(結果長)よりも大きい必要があります。

シンク・ワード: 送信データ・ストリーム中の特定ビット・パターンで、一般にビットを合わせたり、目的の情報の位置特定に使用されます。

振幅誤差: I/Qエラーを参照。

振幅ドループ: 「バースト振幅ドループ」とも呼ばれます。測定バーストの検出決定ポイントにおける信号の大きさの変化で、dB/シンボルで表します。このパラメータは、パルス信号において最も重要です。値が高いと、多くの場合にパルス変調プロセスにおける問題を示します。

シンボル・テーブルとエラー・サマリ: この画面は2つの部分から構成されます。上段部分はエラー・サマリで、受信信号のさまざまな測定パラメータを表示します。その項目には、EVM(シンボル#における%rmsと%ピーク)、振幅誤差(シンボル#における%rmsと%ピーク)、位相誤差(シンボル#における度数とピーク度数)、周波数(キャリア)誤差、I/Qオフセット、振幅ドループがあります。下段は受信機(89400シリーズVSA)が検出したシンボル・ビットの表で、1と0で表されています。表示シンボルの最大数は、設定した「結果長」によって決まります。シンク・サーチを使用すると、検出されたシンク・ワードが強調表示されます(検出されない場合、“sync notfound”が表示されます)。

シンボル・レート: コンスタレーションでキャリアがポイント間を移動する速度。例えばある無線が16Mbpsの周波数で動作し、ディジタル変調フォーマットが4ビット/ステートを使用するとき、キャリアは4Mボーの速度でステートを変える必要があります。したがってシンボル・レートは4MHzとなります。

シンボル・ロック: 89400シリーズVSAは、89441Aで測定する場合、最大伝送レート6.36MHzのシンボルにロックすることができます(89410Aの場合9.09MHz)。シンク・オフセット: 結果や表示情報のスタートを決めるための、シンク・ワードからのオフセット(シンボル数で)。

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測定フィルタ: 89400シリーズVSAで適用されるISI整合フィルタ。データ送信時に使用したフィルタとの整合のため、このフィルタの選択を行う必要があります。選択可能なフィルタ・タイプには、ナイキスト、ルート・ナイキスト、ガウシアン、ユーザ定義、およびオフがあります。フィルタ・タイプ「オフ」は、(制御された/必要な)シンボル間干渉を得るためISIフィルタを使用して送信しない、MSKなどのシステムで使用します。測定フィルタは、「ハーフ・フィルタ」と呼ばれることもあります。

タイム・キャプチャ: 連続したデータのストリームがサンプリングされ、ポスト処理のため、タイム・キャプチャRAM(最大=1Mサンプル)に直接に渡されます。ポスト処理の実行では「ノーマル」動作で可能なすべての測定、およびオンライン測定が可能です。

タイム・レコード: 各測定を計算するための、一続きの時間データ・サンプル。タイム・レコードの長さは可変で、設定した周波数スパン(ストップ周波数 - スタート周波数)に逆比例します。

中心周波数: この周波数は、一般に変調キャリア周波数に設定します。

直交誤差: I/Q間での、理想直交角度(90°)からの誤差の計測。

トレリス・ダイアグラム: 定義されたシンボル数をラップラウンドする位相対時間のマッピング。89400シリーズVSAでは、シンボル・クロック検出ポイントは画面で垂直ラインによって表されます。トレリス・ダイアグラムは、各シンボルにおける位相軌道を示すための有効な手段です。

入力レンジ: 89400シリーズVSAでは、許容入力レベルのレンジが仕様化されています(テクニカル・データ・シートを参照)。これらのレンジは、入力信号に対する感度が最大になるように設定する必要があります。このような設定のため、本シリーズのアナライザは、各入力チャネルの横にハーフ・レンジ/オーバロードを示すLEDを装備しています。レンジ設定の1方法として、オーバロード・インジケータが点灯するまで入力レンジをステップ・ダウンして、点灯したら1ステップ、あるいはインジケータが消えるまでステップ・アップします。レベルが非常に低い信号に対しては、アナライザに入力する前に増幅が必要かもしれません。またレベルが高すぎる信号に対しては、減衰が必要です。

パルス・サーチ: 送信データに対し、データのパルス(移動機から基地局への送信など)を探します。パルス・サーチを使用する場合、シンク・ワードを定義したシンク・サーチを必ず同時に使用して、アナライザが目的のパルスを検出できるようにします。

バンド・パワー: ある2つの周波数または時間の間の総パワーを言い、dBm、dBVrms、W、またはVrms2で表します。

フィルタ形状: 送信機のフィルタ(例えば「ルート・ナイキスト」)に整合させる、受信機のフィルタ(ISI)の形状。多くの変調フォーマットで、2種類の受信機フィルタが使用されます。このうち「測定」フィルタは送信機のものと同じで、「基準」フィルタは送信機フィルタの2乗成分です。

ベクトル・ダイアグラム: I/Q平面における、ステート位置とステート間での遷移経路(信号パワー)の極座標マッピング。

ユーザ定義フィルタ: 89400シリーズVSAにダウンロード可能なISI整合フィルタ。測定フィルタおよび基準フィルタを参照。

理想(基準)信号: I/Q基準信号とも呼ばれます。理想的な(エラーを含まない)信号を復調した結果の信号。この理想信号に対して、すべてのエラー測定(EVM、エラー・ベクトル・タイム、エラー・ベクトル・スペクトラム、I/Qエラー振幅/位相)においてI/Q測定信号が比較されます。89400シリーズVSAは検出ビットと既知のフィルタ、変調フォーマット、シンボル・レートなどをもとにこの信号を生成します。

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参考資料(関連カタログおよび参考文献)

『89400シリーズベクトル・シグナル・アナライザによる周波数/時間選択性パワー測定』カタログ番号:5091-7194J

『89400シリーズベクトル・シグナル・アナライザによる位相雑音測定』カタログ番号:5091-7193

『89400シリーズベクトル・シグナル・アナライザによるディジタル通信チャネルの特性評価』カタログ番号:5091-7195J

『89400シリーズベクトル・シグナル・アナライザによる送信機過渡特性の測定』カタログ番号:5091-7235J

『Translated Frequency Response Measurements Using the Agilent 89441A VectorSignal Analyzer -Product Note 89400A-9-』カタログ番号:5091-7412E(英語版)

『Downconverted Measurements Using the Agilent 89410A and Agilent 89411A -Product Note 89400A-9-』カタログ番号:5091-8691E(英語版)

『89400シリーズベクトル・シグナル・アナライザの強力なタイム・キャプチャ機能』カタログ番号:5091-8686J

『Digital Radio Theory and Measurements -Application Note-』カタログ番号:5091-4777E(英語版)

『Vector Signal Analyzers for Difficult Measurements on Time-Varying andConplex Modulated Signals』Hewlett-Packard Journal, December 1993, Ken J.Blue, Robert T. Cutler, Dennis P. O’Brien, Douglas R. Wagner, and Benjamin R.Zarlingo.

『A Firmware Architecture for Multiple High-Performance Measurements』Hewlett-Packard Journal, December 1993, Dennis P. O’Brien.

『Baseband Vector Signal Analyzer Hardware Desing』Hewlett-Packard Journal,December 1993, Manfred Bartz, Keith A. Bayern, Joseph R. Deiderichs, and DavidF. Kelley.

『RF Vector Signal Analyzer Hardware Design』Hewlett-Packard Journal,December 1993, Robert T. Cutler, William J. Ginder, Timothy L. Hillstrom, Kevinl. Johnson, Roy L. Mason, and James Pietsch.

『Raymond A. Birgenheier, Measuring the Modulation Accuracy of Pi/4 DQPSKSignals for Digital Cellular Transmitters』Hewlett-Packard Journal, April 1991.

『Signal Analyzer Facilitates TDMA System Design』Microwaves & RF, April1993., David Crim and Willam Turney of Motorola Inc., Radio TechonologyResearch Dept.,

『Measuring Peak/Average Power Ratio of the Zenith/AT&T DSC-HDTV SignalWith a Vector Signal Analyzer』IEEE Transactions on Broadcast, June 1993.,Cary Sgrignoli of Zenith Electronics Corporation

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[Ch1 + j*Ch2](測定ベースバンドI/Qを参照)

AM-PM変換, 12, 13

Bandwidth Time Product(BT、アルファ参照)

FM復調, 11, 14

I/Qオフセット, 14, 25

I/Q測定, 14

IFフィルタ, 13

ISIフィルタ(フィルタ整合を参照)

LAN, 21

LO安定度(測定), 11

LOフィードスルー, 12, 14

PM復調, 11, 14

X Windows, 21

X軸スケーリング, 12, 27

アイ・ダイアグラム, 5, 6, 7, 24

圧縮, 9

アルファ, 15~17, 24

アンテナ(での測定), 16

位相安定度, 11

位相誤差, 6, 26

エラー・サマリ, 5, 6, 14, 26

エラー・ベクトル・スペクトラム, 7, 14, 24

エラー・ベクトル振幅(EVM), 6, 7, 9, 11, 12,

14, 24

オフセット(シンボル), 18

基準(理想)信号, 6, 20, 25

キャリア・ロック, 16, 24

キャリア周波数, 7, 16, 24

キャリア周波数誤差, 14, 24

ゲイン不均衡, 13

結果長, 18, 26

検出ビット・パターン, 6, 14

原点オフセット(I/Qオフセットを参照)

コヒーレンス, 14, 24

コンスタレーション・ダイアグラム, 3, 13, 14,

24

コンフィギュレーション, 23

サーチ・レングス, 18, 26

周波数スパン, 16

受信機(理想), 17

信号源(内蔵), 20, 21

振幅誤差, 6

振幅ドループ, 6, 14, 24

シンク(サーチなど), 13, 18, 26

シンボル・クロック検出, 6

シンボル・タイミング回復, 14

シンボル・タイミング誤差, 12, 14

シンボル・テーブル, 5, 6, 13, 26

シンボル・レート, 4, 16, 26

シンボル(円形), 7, 14

シンボル(最大数), 4

シンボルあたりポイント数, 4, 17

シンボル拡散, 14

シンボル間干渉, 14

ステート位置(の変更), 18

スプリアス信号, 7, 14

スペクトラム・アナライザ, 7, 11

相互変調歪み, 10

送信機トランジェント, 17

測定のコンセプト, 4

測定のセットアップ, 15

測定ベースバンドI/Q, 10, 15

その他のツール, 21

タイム・キャプチャ, 21, 26

直交誤差, 11, 13, 26

伝送速度, 4

トリガ, 16, 18, 25

トレリス・ダイアグラム, 5, 6, 26

ノイズ, 14, 20

背景, 2

パルス・サーチ, 18, 26

パルス化信号(バースト信号を参照)

パワー(測定), 4, 9, 16

パワーの飛散, 8~10

バースト/パルス信号(パルス・サーチも参

照), 8, 10, 11, 16, 18

ハードウェア接続, 15

ビット誤り率(BER), 8

必要メモリ, 4

標準セットアップ, 17

フィルタ(整合), 10, 17, 25

フェーズ・ロック・ループ, 11

不均衡(ゲイン不均衡および直交誤差も参

照), 12, 13

ベクトル・ダイアグラム, 4, 5, 9, 13, 26

変調器, 10, 11

変調のコンセプト, 3, 4

変調フォーマット, 4

飽和, 9

ポスト処理(タイム・キャプチャを参照)

マーカ(バンド・パワー), 10, 16, 24

マーカ(連動), 6

まとめ, 22

問題の発見, 9~14

ユーザ定義フィルタ, 17, 26

理想グリッド, 13

隣接チャネル漏洩電力(ACP), 10, 24

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