カンボジアだより - JICA · ラジオ体操の指導書を贈呈/国立体育...

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■JICA「実証事業」で小型精米工場/タイ ワ精機、コンポントムとタケオで 1 ■数字で見るカンボジア「精米輸出 量」 1 ■進む都市化、人口急増に対応/シハヌ ーク州病院を全面改修へ 2 ■ラジオ体操の指導書を贈呈/国立体育 教員養成校で 2 ■カンボジアひと模様 <特集>青年海 外協力隊50年 池田尚子さん 3 ■カンボジア事務所から 3 ■カンボジアの新聞から 4 ■活動のご案内 4 JICA「実証事業」で小型精米工場 タイワ精機、コンポントムとタケオで 富山県に本社のある「タイワ精機」はこのほど、JICAの「普及・実証事 業」として、コンポントム州とタケオ州の農協にミニライスセンター(小型 精米機)を設置、7月22日に開所式が行われた。普及・実証事業とは、途上国 の課題解決につながる技術や製品を持つ中小企業の海外進出を後押しする目 的で、一定規模の機材の調達・据付や、現地活動を支援するもの。 小型精米機を設置したのは、コンポントム州のサンコー農協とタケオ州 のサマキ農協。タイワ精機によると、メインの精米機は毎時1トン(玄米 ベース)の精米能力があり、高い精米歩留りと、低い砕米率が特徴。つま り、これまでの設備よりも、ムダなく美しい高品質の白米に仕上がるよう 開発されている。また、もみ殻を燃焼させた熱風を乾燥に使う「もみ殻燃 焼式乾燥機」を導入した。 カンボジアでは、余剰米が農家から直接近隣国に持ち出され、それら の国々で加工販売されているという。カンボジア政府はこの状況を改善す るため、生産から精米、輸出に至るまでコメの生産・流通の改善に取り組 み、2015年までに100万トンの精米輸出を目指す政策を掲げている。 なかでも、精米技術の向上は緊急課題の一つ。国内生産量の約半分の余 剰もみがそのまま国外に持ち出されているともいわれ、国内の精米能力が 低く、コメの品質が悪いことがカンボジア産米の流通を阻む一因となって いる。 タイワ精機は、「カンボジアブランド」のコメ輸出の一翼を担いた い、という熱意のもと、2009年にカンボジアで長粒種の精米機開発を開 始。2013年にはプノンペン経済特区に工場を建設し、精米機の現地生産・ 販売を始めた。 今回の普及・実証事業では、将来的に農協が自ら精米事業を運営できるよ うにすることを目的に、小型精米機の導入と技術指導を通してモデルケース をつくりあげる。同時に、セミナーなどを開いてライスセンター事業や農協 の精米事業を紹介し、カンボジア農家に普及を図りたいとしている。 数字で見るカンボジア <精米輸出量> ■ミニライスセンターの開所式 JICAカンボジア事務所 Aug 18, 2014 No. 36 カンボジアだより カンボジアは、国民の 6割以上が農業に従事し ている農業国だ。国内総 生産の約27%が農林水産 業。なかでも、コメは主 要産物で年々生産量が増 えている。 特に2010年にフン・セ ン首相肝いりの政策とし て「コメ輸出新政策(ラ イス・ポリシー)」が打ち 出されてからは生産量が増 え、右表にあるとおり、輸 出量も急増している。 0 50,000 100,000 150,000 200,000 カンボジアの精米輸出量(トン) 出典 関税消費税総局 4,000 192,600 176,200 51,300 15,800 5,000 2011 2010 2009 2008 2007 2012

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Page 1: カンボジアだより - JICA · ラジオ体操の指導書を贈呈/国立体育 教員養成校で 2 カンボジアひと模様 <特集>青年海 外協力隊50年 池田尚子さん

■JICA「実証事業」で小型精米工場/タイ

ワ精機、コンポントムとタケオで    1

■数字で見るカンボジア「精米輸出

量」 1

■進む都市化、人口急増に対応/シハヌ

ーク州病院を全面改修へ 2

■ラジオ体操の指導書を贈呈/国立体育

教員養成校で 2

■カンボジアひと模様 <特集>青年海

外協力隊50年  池田尚子さん    3

■カンボジア事務所から 3

■カンボジアの新聞から 4

■活動のご案内 4

JICA「実証事業」で小型精米工場タイワ精機、コンポントムとタケオで

富山県に本社のある「タイワ精機」はこのほど、JICAの「普及・実証事業」として、コンポントム州とタケオ州の農協にミニライスセンター(小型精米機)を設置、7月22日に開所式が行われた。普及・実証事業とは、途上国の課題解決につながる技術や製品を持つ中小企業の海外進出を後押しする目的で、一定規模の機材の調達・据付や、現地活動を支援するもの。

小型精米機を設置したのは、コンポントム州のサンコー農協とタケオ州のサマキ農協。タイワ精機によると、メインの精米機は毎時1トン(玄米ベース)の精米能力があり、高い精米歩留りと、低い砕米率が特徴。つまり、これまでの設備よりも、ムダなく美しい高品質の白米に仕上がるよう開発されている。また、もみ殻を燃焼させた熱風を乾燥に使う「もみ殻燃焼式乾燥機」を導入した。

カンボジアでは、余剰米が農家から直接近隣国に持ち出され、それらの国々で加工販売されているという。カンボジア政府はこの状況を改善するため、生産から精米、輸出に至るまでコメの生産・流通の改善に取り組み、2015年までに100万トンの精米輸出を目指す政策を掲げている。

なかでも、精米技術の向上は緊急課題の一つ。国内生産量の約半分の余剰もみがそのまま国外に持ち出されているともいわれ、国内の精米能力が低く、コメの品質が悪いことがカンボジア産米の流通を阻む一因となっている。

タイワ精機は、「カンボジアブランド」のコメ輸出の一翼を担いたい、という熱意のもと、2009年にカンボジアで長粒種の精米機開発を開始。2013年にはプノンペン経済特区に工場を建設し、精米機の現地生産・販売を始めた。

今回の普及・実証事業では、将来的に農協が自ら精米事業を運営できるようにすることを目的に、小型精米機の導入と技術指導を通してモデルケースをつくりあげる。同時に、セミナーなどを開いてライスセンター事業や農協の精米事業を紹介し、カンボジア農家に普及を図りたいとしている。

数字で見るカンボジア <精米輸出量> 

■ミニライスセンターの開所式

JICAカンボジア事務所Aug 18, 2014No. 36カンボジアだより

カンボジアは、国民の6割以上が農業に従事している農業国だ。国内総生産の約27%が農林水産業。なかでも、コメは主要産物で年々生産量が増えている。

特に2010年にフン・セン首相肝いりの政策として「コメ輸出新政策(ライス・ポリシー)」が打ち出されてからは生産量が増え、右表にあるとおり、輸出量も急増している。 0

50,000

100,000

150,000

200,000 カンボジアの精米輸出量(トン)        出典 関税消費税総局

4,000

192,600

176,200

51,300

15,8005,000

20112010200920082007 2012 年

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進む都市化、人口急増に対応シハヌーク州病院を全面改修へプレアシハヌーク州にあるシハヌーク州病院の起工式が、7月31日開かれ

た。同院は1964年に開院、州内で最高レベルの公的病院だが、建物の老朽化が進み、機材も古いことなどから、今年3月に契約が締結された無償資金協力に基づき、大規模な改修整備が行われることになった。

プレアシハヌーク州は人口約19万5,000人だが、近年の企業進出や観光客の増加に伴い、人口増加率は9.3%を記録している。シハヌーク州病院の患者数も増えており、救急病棟のベッド占有率は176%以上、2010年には他医療機関からの紹介が前年比で約3割増えた。今後もこの傾向が加速するとみられている。

整備計画では、救急・画像・手術棟、産婦人科・小児科病棟、内科・外科病棟など6棟を建設する。一部事務棟を除いては、エレベーター等を必要としない平屋建とし、病床規模は現在の100床から、130床とする。また、電気メスなど手術室用機材、X線撮影装置、病棟用寝台などの機材もそろえる。

これらの整備により、州病院の入院患者受け入れ数は、2011年の年間約6,000人から、2018年には年間約7,000人へ、外来・救急患者数は年間約19,600人から約26,700人へと増やすことが可能になる。高度な保健サービスが可能な地方の中核病院として、一層重要な役割を担うことが期待されている。

■シハヌーク州病院での起工式

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ラジオ体操の指導書を贈呈国立体育教員養成校で

日本のラジオ体操を教えるためのクメール語の指導書が完成し、7月18日、プノンペンの国立体育教員養成校で贈呈式があった。同校を卒業する約150人に、指導書の作成に取り組んだJICAの青年海外協力隊員(JOCV)の小林若菜さんらから手渡された。今後卒業生の若手体育教員を通して、日本のラジオ体操がカンボジアに広がっていく。

小林さんはクラチェ州教育局に配属され、青少年教育の一環として、日本の運動会を学校行事に採り入れるなどの活動をしている。運動会の準備体操としても重要なラジオ体操は、カンボジア国内でもJOCVなどを通して子供たちに教えられていたが、まとまった指導書はなかった。

小林さんは、国立体育教員養成校に派遣されているシニアボランティアの土谷龍一さん、教員や生徒たちと協力しながら、すでにあった図解にクメール語の解説をつけ、自らDVDを作成。一冊ずつにつけて贈呈した。「みんな喜んでくれました。これまでも、ラジオ体操の指導書が欲しいと言われていましたので、作ることができてよかったと思います。改訂版をつくり、新しく養成校に入る学生たちにも配布する予定です」と、話している。

■ラジオ体操の指導書を手渡す小林若菜さん(左手前)、土谷龍一さん(中央奥)ら

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カンボジアひと模様  <特集>青年海外協力隊50年 インタビューシリーズ

「おばけの声」を美しい音楽に  池田尚子さん(2000年~2002年、王立芸術大学)

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カンボジアに初めて青年海外協力隊員が派遣されてから、来年2015年で50年。半世紀に渡る協力と交流の軌跡を、日本とカンボジア両国の関係者の話を伺いながらたどります。初回は、音楽隊員として2000年から2002年までプノンペンの王立芸術大学に派遣された池田尚子さんです。

          ◆ 昨年、プノンペンのインターコンチネンタルプノ

ンペンで開かれたチャリティコンサート。カンボジアの若き音楽家たちを育てる目的で、収益はコンサートと並行して行われたオーディションの優秀者に贈られる。このとき、見事奨学金を勝ち取った声楽(テノール)の学生はこう言った。「10年以上前、日本人の先生が初めてオペラを見せてくれた。それが、この道を目指すきっかけになったのです」。

「先生」、池田尚子さん(38)。2000年から2002年の間、王立芸術大学に青年海外協力隊員として、西洋音楽を教えるために派遣された。カンボジアで初めて

の音楽隊員だった。当 時 、 王 立 芸

術大学音楽学部には、200人余りが学生登録していたが、実際に通っていたのは1割程度。内戦前は、西洋音楽を教える外国人

教師陣も充実し、楽器や施設も整っていたが、当時は何もかもが足りなくなっていた。カンボジア人の先生たちも、生活費のために別の仕事と掛け持ちせざるを得ない状態だった。集まる学生たちは、音楽の基礎教育を受けていない人たちがほとんど。なぜ芸大に来たのかを尋ねると「お

赴任して一ヶ月、カンボジア事務所での研修の一環で、ODA事業に関する業務だけでなく開発パートナーであるNGOの活動の視察も行いました。例えば、クメール伝統織物研究所は、内戦で失われたカンボジアの絹織物文化の復活を目的に日本人により設立され、現在では世界で認められる絹織物をカンボジア人によって生産できるようになり、伝統文化復興の一端を担っています。日本地雷処理を支援する会は内戦時代の負の遺産である不発弾・地雷処理に尽力

し、10年以上の活動で約30万個もの不発弾・地雷の処理を行ってきた団体です。こういった多面的な支援も一助となり、カンボジアは急速に成長しています。公園で語り合

いながら幸せそうにしている人々を見かけると、平和と発展がカンボジアにもたらしたものの大きさを感じることができます。

多くの日本人が成長の影で残されているカンボジアの抱える多くの問題に真正面から向き合っていることを誇りに思いつつ、今後より発展を遂げていくだろうカンボジアの未来のために私自身ができることを考えたいと思います。(近藤達仁、写真中央)

カンボジア事務所から

金がなくても入れる王立だから」「村で一番歌がうまい、と言われたから」。

壁は高いが、池田さんにはチャンスに見えた。「何もないということは、何でもやっていい、ということでした。手当り次第に取り組みました」。その中に、クメール語で解説を入れながら、オペラのDVDを見せる授業があった。オペラなど見たことがない人たち。独特の歌唱法は「おばけの声」と言われた。池田さんは「この音楽を美しいものとして分かち合いたい」と心から思った。

2年間の派遣期間では、なかなか結果を見ることが難しい、と池田さんは言う。「いら立ちも感じますが、一方で、時間をかけないとできないことがたくさんあるということを学びました。それでまたカンボジアに戻ってきてしまいました」。

帰国して大学院へ進学し、その後小学校の教員を経て2007年にJICAプロジェクトの業務調整員として再びカンボジアへ移住した。プロジェクトは地方行政官らの能力向上を目指すもので、音楽とは直接関係ない。

が、音楽でこの国とつながっていたい、と考える池田さんは、音楽教室の普及事業を立案し、日本のコンサルティング会社アイシーネットの主催する起業アイデアコンテストで優勝した。カンボジアの音楽教育の現場を体感した池田さんだからこその説得力があり、高く評価された。

貧しい人たちや地方の人たちにも、平等に音楽に触れるチャンスがあるように、願いを込めたプロジェクト。その第一歩となる音楽教室を、2015年には開設したいと考えている。

■当時の王立芸術大学での授業

■池田さんと家族

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発行責任者

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JICAカンボジア事務所6階Tel:023-211-673開館時間:月~金8:00-12:00、14:00-17:00

■カンボジアの新聞から、政治、経済、社会などのニュースをダイジェストでお伝えします。

カンボジアの新聞から(2014年7、8月)■カンボジアの経済成長率、7.5% カンボジアヘラルドによると、フン・セン首相は、2014年のカンボジアの経済成長が7.5%になる見込みである、と語った。農業、縫製品輸出、観光、建設セクターの伸びが経済を牽引した、としている。首相によると、カンボジアは2013年には経済成長率7.6%を達成、国内総生産は約150億ドルで、一人当たりのGDPは1,036ドルとなった。

■カンボジア政局、1年ぶりに正常化へ 昨年7月の選挙以来、国民議会をボイコットしていた野党・カンボジア救国党の国民議会議員55人が8月5日午後、シハモニ国王のもと議員の宣誓式を行った。昨年の選挙で、野党は123議席のうち55議席を占める票を得たが、選挙に不正があったとしてこの結果を受け入れていなかった。

■上半期観光客220万人超 カンボジア観光当局によると、今年1月から6月に、カンボジアを訪れた外国人は220万人を超え、前年同期よりも5.2%増えた。外国人で最も多いのは中国人で、2013年には約46万3,000人が訪れた。

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●ご案内

<開催済セミナー・イベント>8月8日(金) 人材育成支援無償事業 (JDS) 第14期留学生壮行会

<既報プレスリリース>7月18日(金) 日本とカンボジアの高校生が開発した「カンボジアのまんじゅう」試食会をイオンで実施

<Facebook掲載済ニュースハイライト>☆新ボランティアのホームステイ研修 in タケオ (7月25日掲載)☆JICAプラザカンボジアを知っていますか?(8月14日掲載)