デジタルシフトを支えるこれからのシステムの方向性 徹底し...

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1/5 ページ http://www.fujitsu.com/jp/innovation/hybrid-it/ ホワイトペーパー ハイブリッド IT デジタルシフトを支えるこれからのシステムの方向性 徹底してお客様志向にこだわるクラウドとは 「クラウドファースト」の考え方が当たり前になり、実際の活用も広がっているパブリッククラウド。しかしこれに伴い、パブ リッククラウドが抱える課題も顕在化してきた。そのため基幹系システムのクラウド化を躊躇する企業も少なくない。それで は今後安心してクラウドシフトを進めていくには、どうすればよいのだろうか。具体的な処方箋を提示したい。

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デジタルシフトを支えるこれからのシステムの方向性徹底してお客様志向にこだわるクラウドとは

「クラウドファースト」の考え方が当たり前になり、実際の活用も広がっているパブリッククラウド。しかしこれに伴い、パブリッククラウドが抱える課題も顕在化してきた。そのため基幹系システムのクラウド化を躊躇する企業も少なくない。それでは今後安心してクラウドシフトを進めていくには、どうすればよいのだろうか。具体的な処方箋を提示したい。

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 ICTリソースを所有することなく、必要に応じて柔軟に利

用できるようにしたい。このようなニーズに対応すること

で、パブリッククラウド市場は大きな成長を遂げてきた。シ

ステム構築の際にまずパブリッククラウドを検討する「クラ

ウドファースト」も、すでに当たり前の考え方になっている。

 しかしパブリッククラウドの活用が広がることで、その課

題も顕在化してきた。セキュリティに関する不安は以前から

指摘されていたが、他にも様々な問題が存在することが明ら

かになってきたのだ。

 利用企業にとって最大の問題は、システム運用の主導権が

クラウドプロバイダー側に握られてしまうことだろう。例え

ばシステム保守のために計画停止が実施される場合、顧客の

都合に配慮せず、クラウドプロバイダーの都合で行われる

ケースは珍しくない。保守の予定に関する事前通知が来て

も、実際にいつ自分の仮想マシンが停止するのか、わからな

いことも多いのだ。予測できないシステム停止は、利用企業

にとって障害と同じ意味を持つが、一般的なパブリッククラ

ウドは、通知なく瞬断することもある。また仮に障害が発生

しても、その情報が適切な形で公開されず、再発防止策が説

明されないことも少なくない。

 パブリッククラウド固有の機能を活用することで、特定の

プロバイダーに「ロックイン」される危険性もある。オンプレ

ミスシステムでもベンダーロックインは大きな問題だった

が、これと同じことがパブリッククラウドでも起きつつある

のだ。

 このような問題から、基幹系システムのクラウド化を躊躇

している企業も少なくないはずだ。しかし今後、「所有から利

用」への流れは間違いなく加速し、基幹系システムもクラウ

ド化が必須の時代が到来するだろう。

 それでは、これからのクラウドシフトを安心して推進する

には、どうすればいいのだろうか。

問題解決の鍵は「顧客志向のクラウド」を選択すること

 その鍵は、クラウドサービスの選択にある。サービスの細

かい内容までしっかり吟味したうえで、顧客志向の強いクラ

ウドサービスを選ぶべきなのだ。その最有力候補となり得る

のが、富士通が提供する「FUJITSU Cloud Service K5」(以下、

K5)である。

 K5 は富士通が、ビジネスプロセス革新や新ビジネス創

造といった「デジタル革新」を実現するための基盤として、

2015 年 5 月に発表したクラウドサービス。その最大の特長

は、最新のオープン技術と富士通の長年にわたる知見やノウ

ハウを融合し、これまでオンプレミスで運用されてきた基幹

システム等の従来型の情報システム(SoR)と、デジタル革新

をドライブする新しいシステム(SoE)を、1つのクラウド上

に実装できるようにしている点にある。これによって SoRと

SoEのシームレスな連携が可能になり、長期的な成長にも対

応できるようになるのだ。

 また従来のクラウドサービスが抱えていた課題を解消して

いる点も、注目すべきポイントだと言える。「K5では、いつ

までも安心して使えるクラウドサービスを提供するため、お

客様志向を徹底して貫いています」と語るのは、富士通で K5

の事業責任者である太田雅浩。そして 3つの柱によって、こ

のビジョンを支えている(図1)と説明する。

 第 1の柱は「お客様が安全で安心して使える」環境を整備し

ていること。K5 は、国際的な情報セキュリティ規格である

ISO 27001、英国が定めるセキュリティ基準に対応した監査

(IT Health Check)を受審している。そして、FISC(金融情報

システムセンター)の安全対策基準にも対応。今後、業務委

託会社のコンプライアンスや業務運営の内部統制の報告枠組

みである SOC2、カード情報セキュリティの国際統一基準で

ある PCI DSSなど、様々なセキュリティ認証・規格を取得予

定である。またインターネット接続に加えプライベート接続

もネットワークオプションとして用意しており、利用企業か

らインターネットを介さずに接続することも可能になってい

る。

 第 2の柱は「お客様がベンダーに縛られず新しいテクノロ

ジーを使える」ようにすること。OSSを積極的に採用するこ

とで、ロックイン を回避できるようにしており、コミュニ

ティによる継続的な成長も享受できるという。

富士通株式会社デジタルビジネスプラットフォーム事業本部本部長太田 雅浩

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 このような「業務運用への徹底的なこだわり」は、富士通自

身の「クラウド利用企業」としての経験からもたらされたも

のだ。富士通では、社内の全システムを K5 上で動かすべく、

急ピッチで移行作業を進めている。対象となるシステムの数

は、富士通グループ全体で約 640。これらを動かすサーバー

数は、合計で約 1万 3000台に上る。これらを 5年間かけて移

行することで、350 億円の TCO削減を実現できると期待され

ている。

 「すでに『サービス停止時間数分』のサービスレベルには問

題なく対応できるようになっており、近い将来には無停止が

要求されるミッションクリティカルシステムも、K5 上で稼

働可能にします。ここまでできるクラウドは K5だけのはず

です」(太田)。

 このような社内での活用実践は、K5 が安心・安全に使え

ることを立証するうえでも、重要な意味を持つと言えるだろ

う。富士通のような大企業が既存システムすべてを K5に移

 そして第 3が「お客様の業務運用が廻る」よう配慮されてい

ることだ。

社内活用から生まれた業務運用への徹底的なこだわり

 「従来のパブリッククラウドでは、システム保守がどのよ

うに行われるかは、お客様にとって制御不可能な事象でし

た」と太田。大まかなメンテナンス情報はメール通知やダッ

シュボードで確認できたとしても、その詳細な内容やタイミ

ング、影響範囲等はわかりにくかったと指摘する。これに対

して K5では、メンテナンス対象のコンポーネントや影響範

囲、正確なダウンタイムなど、詳細で正確な情報を事前に通

知。通知されたタイミングでメンテナンスして欲しくない場

合には、調整することも可能だ(図 2)。利用企業の都合に合

わせて、運用できるようにしているのだ。

図1 :K5=お客様志向クラウド K5のサービスを支えている3つの柱。これによって従来のパブリッククラウドの課題を解消し、基幹系業務等のシステムも クラウド化できるようにしている

■ K5=お客様志向クラウド

クラウド利用の留意点に挑戦し、業務運用が廻り、いつまでも安心して使えるクラウドサービスをご提供

お客様ビジネスの成長と創造を支えるPaaS

お客様が安全で安心して

使える

お客様がベンダに縛られず新しいテクノロジー

を使える

お客様の業務運用が廻る

① OSS採用により、様々な サービスが標準提供され、 ベンダロックインが回避可能② コミュニティによる継続的な 成長を享受

① 全ての社内システムをクラウド上に移行、 自らの手で安心・安全を立証 →セキュリティ、性能、運用、クラウド効果② 様々なセキュリティ認証・規格を取得・取得予定 →ISO27000, SOC2, FISC, PCI DSS,  英国IT Health Check

業務運用の調整可能なサービスを提供するため、予め対処ができ、業務の継続性を高められる

*パブリッククラウドは一般的に5分程度停止することが前提

一般的なパブリッククラウドでは運用が不安

障害メールが来ても影響が分からない

再発防止策が説明されない

計画保守停止などでVMが再起動される時刻が

はっきりわからない

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行できるのであれば、他の企業システムも問題なく運用でき

るはずだ。このようなクラウドの登場によって、「基幹系等

の既存システムはオンプレミス、デジタル革新のための新た

なシステムはクラウド」といった常識も、根本から覆される

ことになるだろう。

 それでは企業システムのクラウドシフトは、今後どのよう

に進んでいくのか。

今後の企業システムは、最終的に2つの世界へと向かう

 企業シス テム のク ラウドシフト における最終的なゴー

ル は、大きく 2 種類あると太田は語る。1 つは SaaS のよう

に「サービス化された世界」。もう 1 つは「進化・維持可能な

Digitalizedな世界」だ(図3)。

 すでにパッケージの形で導入されているシステムは、今後

SaaSへと置き換えられ、サービス化された世界へと集約さ

れていくだろう。また社内で構築した業務システムでも、処

理内容の汎用性が高いものであれば、順次 SaaSへと移行し

ていくはずだ。独自性の低いシステムは自社開発し続けるよ

りも、すでに提供されているサービスを活用したほうが、コ

スト効率が高くなるからである。

 その一方で、独自性が高いシステムや、その企業の競争力

の源泉となっているシステムは、今後も自社開発が行われる

ことになるだろう。しかしその作り方は、大きく変化してい

くはずだ。アプリケーション全体をモノリシックな形(それ

自体で完結している一枚岩のような形)で作り上げるのでは

なく、PaaSの形で提供される様々なサービス(マイクロサー

ビス)を組み合わせる手法へとシフトしていくのである。こ

れによって柔軟かつ迅速な開発が可能になり、環境の変化に

も対応しやすくなる。また SoRと SoEの連携も容易になる。

これが「Digitalizedな世界」であり、このような開発パラダ

イムのシフトを「モダナイゼーション」という。

 「モダナイゼーションを進めるルートは、大きく 2つあり

ます」と太田。1 つは IaaS移行と PaaS活用を一気に行う方

法。もう 1 つは、最初に IaaS を使いクラウド移行したうえ

で、その後 PaaSを活用したシステムへの移行を進める方法

だ。「クラウド移行で下がったコストを使って一気にモダナ

イゼーションまで進めたほうが、効率が高くなり予算も確保

しやすくなります。その一方で、段階的な移行のほうがリス

クは低下します。どちらを選択するかは悩ましいところです

が、お客様のポリシーに従って選択すべきだと思います」(太

図2 :業務運用にこだわったK5の運用サービス メンテナンスを行う場合、詳細かつ正確な情報が事前に通知され、必要であればタイミングを調整することも可能。 利用企業の都合に合わせた運用が可能

■ 業務運用にこだわったK5の運用サービス

Uncontrollable な事象を Actionable に“お客様が制御できない事も、(事前に)対処できる”

・ コンポーネント・ 影響範囲・ 正確なダウンタイム 他

保守等によりVM再起動

が必要

さらにUncontrollable な事象を Controllable へお客様の運用に合わせて調整可能なクラウドへ進化

お客様は事前に対処可能!!

詳細で正確な情報通知

メール

サポートサービス

ダッシュボード

運用自動化API

イベント

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※このコンテンツは2017年2月にITpro Activeに掲載したものです。

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Copyright 2017 FUJITSU LIMITED

 一方、デジタル革新をドライブする、従来からの企業シス

テムには縛られない新しいシステム(SoE)についても、「顧客

志向のクラウド」は変わらない。この領域は、顧客価値を直接

伝えるサービス化へと進んでいる。そして、サービスと人と

の関係がサービス中心から人中心へ、さらには、サービスと

人がメッシュ構造でつながる時代へと向かおうとしている。

 Human Centric Innovationを掲げる富士通は、メッシュ

構造でつながる時代に向け、K5からマッチング、パーソナル

データストアなど、新しいつながりの実現を支えるクラウド

サービスの提供を予定している。

田)。

 K5ではそのために、IaaSと PaaSの両方を提供しており、

PaaSで使えるサービスの拡充も推進。また SoRと SoEの両方

をクラウド化できるだけではなく、ソフトウェアのクラウド

化を推進したいソフトウェア企業のニーズにも対応すること

で、SaaSと「Digitalizedな世界」とを融合したエコシステム

の確立も目指しているという。

 K5 のようなクラウドサービスは、業務の本質を理解した

企業だからこそ実現できたものだと言えるだろう。今後のク

ラウドシフトの加速に大きな貢献を果たすはずだ。

図3 :エンタープライズシステムの移行と進化 K5が可能にする企業システムの進化。最終的には、SaaSのように「サービス化された世界」と、モダナイゼーションによる 「Digitalizedな世界」へと、集約されていくことになる

■ エンタープライズシステムの移行と進化

お客様

モダナイゼーション

モダナイゼーション

マイグレーション

サービス化(PKGベンダ)

置き換え

Digitalizedな世界

サービス化された世界(電気/水道化)

Digitalizedされていく

Digital-Ready

進化可能

進化可能

Digital-Ready

進化可能

進化可能

Cloud Enabled

SaaS SaaS

手組み業務

パッケージ

置き換え