ポストコロナ期を見据えたニューノーマルにおける新たな学...
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溝上 慎一 Shinichi Mizokami, Ph.D.
http://smizok.net/ E-mail [email protected]
【略歴】1970年生まれ。大阪府立茨木高校卒業。神戸大学教育学部卒業、1996年京都大学助手、2000年同講師、2003年同准教授、2014年同教授を経て、2018年桐蔭学園へ移動。2019年同理事長、2020年より現在に至る。京都大学博士(教育学) *詳しくはスライドの最後にあるプロフィールをご覧ください
学校法人桐蔭学園 理事長桐蔭横浜大学 学長・教授
学校法人河合塾 教育研究開発本部 研究顧問
教育再生実行会議第2回WG報告 2020年9月24日
ポストコロナ期を見据えたニューノーマルにおける新たな学び-個別最適な学びに向けて-
ウエブサイト「溝上慎一の教育論」
http://smizok.net/education/今日の話に出てくる用語や概念の詳細を知りたい方はお読みください
資料4
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ポストコロナ期の新たな学びを検討する前提
① GIGAスクール構想を踏まえた教育の情報化・ICT活用の基礎固め② 新学習指導要領の実施・実現を踏まえる③ ①②を踏まえて教育学習のさらなる発展・深化を図る
文部科学省・国立教育政策研究所「OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント」(2019年12月3日)https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2018/01_point.pdf
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①ICTを活用した学び
②対面+ICTの学びのハイブリッド化
[意見補足] 少人数学級
本日の2つの観点 ~教育再生実行会議での検討課題を踏まえて
・アクティブ・ラーニングを止めない ・対話的・協働的な学びを深化させる・遠隔地(海外)や専門的現場(医療や史跡など)からオンライン中継・高校の課外学習としての高大接続教育・履修主義ではなく修得主義、飛び級制度の法的整備(カリキュラムベース)
・ Society 5.0を見据えて、世界から遅れを取るICT教育学習環境の急ピッチの整備・子どものICTリテラシーを育てる・家庭学習の促進 ・特別な配慮が必要な子どもへの支援・学習履歴(スタディ・ログ)を利用して、一人ひとりの学びを指導・支援する・デジタル教科書・教材の普及促進・多様な教育学習方法を創り出すメディアとなる・いかなる非常事態となっても子どもの学びを保障する など
・感染対策 ・手厚い指導により子どもを誰一人取り残さない・学校数が減っていく過疎地域等においては、少人数学級よりもオンライン授業(ハイブリッドな学び)を通じて他校との連携を図り、とくに対話的な学びを充実させていくべきである。その一方で、都市部では「新たな学び」により教室が不足する学校が発生する。地域や学校等の実情を踏まえて、ハイブリッドな学びや教室の確保などの計画的な環境整備を課題としてほしい。
個別最適な学びに向けて
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桐蔭学園の「学びを止めない」
自宅学習期間の双方向型オンライン授業(4~5月)1時限30分×6時限の短縮授業
桐蔭学園中等教育学校
コロナ禍の前からiPadを用いたICT教育の推進。これがあってこそ「学びを止めない」ができた
ロイロノート・スクールを用いた双方向型オンライン授業 Cisco Webex Meetingsを用いたグループ会議
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桐蔭学園小学校(YouTube)(2020年5月25日)
https://www.youtube.com/watch?v=TXytnopQp9c&feature=youtu.be
オンラインで繋がり、みんなでコロナを乗り切ろう!「おうちで!みんなで踊ろう!Neo桐蔭ソーラン 2020」
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桐蔭学園の総合的な学習・探究の時間(中学校・高等学校・中等教育学校)
自宅学習期間・分散登校中も「探究」を継続しています!
↑ 自宅学習期間中の「探究」の取り組みをアップ
高2生、中学1・3年生全員が発表。下の学年は先輩の発表を聴いて来年に繋げる(2019年11月)
感染対策を徹底して
今年も10月に実施
• ウェブサイトは生徒とのコミュニケーションメディア• オンラインから対面学習へと繋ぎます
オンラインから対面へ
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桐蔭学園のキャリア教育 「1分間スピーチ」を続けています(小学校~高校)
(中等教育学校)オンラインHRにおける1分間スピーチ(緊急事態宣言中5月) テーマ「「私の一番〇〇」(友だち)
(小学校)1分間スピーチ3年生以上の朝の会で日直がスピーチテーマ「クラスのみんなに伝えたいこと」
発表を聴いた後はみんなでポジティブフィードバック
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桐蔭学園の学園IR(Institutional Research) by トランジションセンター(IR部門)
〈所見〉4月から6月にかけてストレスの軽減がみられる高学年になるにつれ,自律的に学習に取り組んでいる。半数以上の児童・保護者がオンライン授業に満足している→繰り返し見られる,自身のペースで学習できる
子供たちの実態を調査しながら自宅学習・オンライン授業の展開
• 「在宅中の生活・学習状況に関する一斉調査」(4月-6月)
※小学校の例
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感染対策を徹底しながらALを止めない~桐蔭学園アクティブラーニング型授業
桐蔭学園高等学校(6月1週目)※授業の再開はここから始めました
桐蔭学園高等学校/中等教育学校※2学期開始(8月夏休み明け)、机を離した形で
桐蔭学園小学校(3年生「科学」)ほか実験でわかったことを班で発表 ※9月の授業です。
アクティブ・ラーニングなど様々な学習活動に対応したより柔軟性のあるスペース(学習空間)を、ハード面で、ソフト面と一体的に検討してほしい
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ALを発展させる~反転授業への挑戦
『読売新聞』2020年7月24日
[最前線]家で動画予習 学校で応用…「反転授業」学習の遅れ挽回
• 授業では、その授業外学習で学んだことをもとに、知識の確認や定着、活用、さらには協同学習など、アクティブラーニングを行う。→アクティブラーニングとの合流
• 対面学習+オンライン学習=反転授業従来教室の中(授業学習)でおこなわれていたことを外(授業外学習)にして、入れ替える教授学習の様式だと定義される。
(Lage, Platt & Treglia, 2000)
• 2010年頃より日本でも紹介されるようになる。• 授業時間数が不足しているといわれる高校の数学、理科、大学
のサイエンス科目で多く導入島根大学「基礎水理学」の反転授業
(溝上, 2014より)
flipped classroom
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(桐蔭学園小学校)
ICTを活用した個別最適の学び支援
←英語のパフォーマンス課題の20%分が「すらら」で指定。生徒の進捗状況が可視化される(桐蔭学園中学校・中等教育学校前期)
「すらら(AI搭載)」
• 正解のある基礎・補習的な学習には向いている• 学習履歴(スタディ・ログ)を利用した指導・支援がで
きる
• 「個別最適な学び」という場合には、正解のある、与えられる課題への学習だけでなく、自らの関心に基づいて個性的に取り組む学習も含めて考えられるべき
(→修得主義、飛び級制度などの法的整備を課題)
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オンライン授業ができなくても学びを止めない~コロナ禍以前より行っていた家庭学習課題を配付・回収
日々の家庭学習と教員団で添削フィードバック
現在はGIGAスクール構想も踏まえオンライン授業体制を構築中
「学びを止めない園部中学校」から学ぶ校長のリーダーシップと組織マネジメント
(京都府南丹市立)
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中学2年 社会科(2018年度研修会より)
園部中の定番スタイル!
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新学習指導要領に向けた取り組みもはやかった
(左)中学3年 理科(右)中学3年 社会科(2019年度研修会より)
※T「声が小さい」と指導。学習活動の中でコミュニケーション力を育成
AL&前に出てきて発表
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小 学 校・中 学 校 教 育(義務教育)
高等教育
高 校 教 育
人の発達を踏まえて、初等中等教育→高等教育→仕事・社会への移行(トランジション)として検討する
仕事・社会(予測困難な問題解決型の社会/Society 5.0)
2017年 2018年
資質・能力の三つの柱
①知識・技能
②思考力・判断力・表現力等
③学びに向かう力・人間性等
新学習指導要領
河合塾との共同調査「10年トランジション調査」(溝上監修, 2018)資質・能力は・個人内では伸びるが、・個人間ではクラス移動があまり起こらない
<課題1>
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• ニューノーマルにおける新たな学び(個別最適な学び)は、良いことばかりではない。これまで以上に子供たちに主体的な学び、課題への主体的な関与を求める動きが加速する。主体的に学べない子どもは脱落する可能性が高い(=休校期間中にも話題になった)。支援をしっかり補完させて検討すべきだ。
• 社会の認識を求めるという課題もある。「新たな学び」は、1989年の学習指導要領から進めている「個性を生かす教育」を現代版として翻訳し、いっそう推進するものである。しかし、個性化教育は必然的に大きな個人差を生む。それを社会的に言葉通りの「個性」と認識できればよいのだが。
• OECDのラーニングコンパス2030学びのエージェンシー(learning agency)→ ウェルビーイング
<課題2>
→仕事・社会へのトランジションの先に見るものはウェルビーイングでいいか?→主体的な学びに伴う非認知能力の育成は、すさまじい能力差を生み出す。社会は個性、ウェルビーイングの観点から「新たな学び」を捉えられるか?
「主体的な学び」を加速させる「新たな学び」に子供たちは耐えられるか?
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ご清聴有り難うございます
参考文献・溝上慎一 (2014). アクティブラーニングと教授学習パラダイムの転換 東信堂・溝上慎一 (2018). アクティブラーニング型授業の基本形と生徒の身体性(学びと成長の講話シリーズ1)東信堂・溝上慎一 (責任編集) 京都大学高等教育研究開発推進センター・河合塾 (編) (2018). 高大接続の本質―「学校と社会をつなぐ調査」から見えてきた課題- 学事出版
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学校法人桐蔭学園 理事長桐蔭横浜大学 学長・教授
1970年生まれ。大阪府立茨木高校卒業。神戸大学教育学部卒業、1996年京都大学高等教育教授システム開発センター助手、2000年講師、2003年京都大学高等教育研究開発推進センター准教授。2014年教授を経て、2018年9月に桐蔭学園へ異動。2019年同理事長、2020年より現職。京都大学博士(教育学)。
専門は、心理学(現代青年期、自己・アイデンティティ形成、自己の分権化)と教育実践研究(学びと成長、アクティブラーニング、学校から仕事・社会へのトランジションなど)。著書に『自己形成の心理学-他者の森をかけ抜けて自己になる』(2008世界思想社、単著)、『現代青年期の心理学-適応から自己形成の時代へ-』(2010有斐閣選書、単著)、『アクティブラーニングと教授学習パラダイムの転換』(2014東信堂、単著)、『アクティブラーニング型授業の基本形と生徒の身体性』(2018東信堂、単著)、 『学習とパーソナリティ-「あの子はおとなしいけど成績はいいんですよね!」をどう見るか-』(2018東信堂、単著)、『高大接続の本質-「学校と社会をつなぐ調査」から見えてきた課題-』(2018学事出版、編著)など多数。
日本青年心理学会理事、大学教育学会理事、“Journal of Adolescence”Editorial Board委員、文部科学省等の委員、大学の外部評価・高校の指導委員など。日本青年心理学会学会賞受賞。
http://smizok.net/