ベトナム人日本語学習者における 日本語漢字単語の処理過程 · (Diff...

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本論文は,課程博士候補論文を構成する論文の一部 として,以下の審査委員により審査を受けた。 審査委員:松見法男(主任指導教員),深澤清治, 宮谷真人 165 ベトナム人日本語学習者における 日本語漢字単語の処理過程 越日2言語間の使用漢字の異同と音韻類似性を操作した 読み上げ課題による検討 長 野 真 澄 (2017年10月4日受理) Processing of Japanese Kanji Words by Vietnamese Learners of Japanese: The Effect of Kanji Consistency and Phonological Similarities in a Naming Task Masumi Nagano Abstract: The Vietnamese language includes vocabulary derived from Chinese called Han- Viet words (tHán Vit), and each Chinese character (kanji) has a Vietnamese reading, which is referred to as Han-Viet sounds (âm Hán Vit). The purpose of this study was to investigate the phonological processing of Japanese kanji words by Vietnamese learners of Japanese. In the experiment, intermediate Vietnamese learners of Japanese were asked to perform a naming task. The target Japanese kanji words were selected by manipulating the kanji consistency and the phonological similarities between Vietnamese and Japanese. The results showed that participants had longer reaction times for words having both different kanji and low phonological similarity. This indicates that L2 orthographic representation has strong links to L2 phonological representation regardless of kanji consistency and that the activation of L1 phonological representation does not affect the processing of Japanese kanji words in a naming task. This differs from Chinese and Korean learners of Japanese, in which the activation of L1 phonological representation facilitates the processing of kanji words in naming. Key words: Vietnamese learners of Japanese, kanji words, Han-Viet words, Han-Viet sounds, naming task キーワード:ベトナム人日本語学習者,漢字単語,漢越語,漢越音,読み上げ課題 1.はじめに 近年,日本国内におけるベトナム人日本語学習者 が急増しており,2013年以降,国内における出身国別 の日本語学習者数では,中国人日本語学習者に次い 広島大学大学院教育学研究科紀要 第二部 第66号 2017 165-173 で第2位の位置を占めるようになった(文化庁文化部 国語課,2013)。ベトナム人日本語学習者は日本語教 育の現場において,いわゆる非漢字圏学習者と見な されることが多いが,実際には,その他の非漢字圏 学習者とは異なる特徴を持つ。それは,母語(native language:first language と ほ ぼ 同 義 と し て 以 下, L1)に「漢越語(tHán Vit)」と呼ばれる漢語由来 の語彙が数多く存在することである。ベトナムの現在 の公用表記は, 1910年代から急速に普及したクオック・ グー(Quc Ng)と呼ばれる表音文字であるが,そ

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 本論文は,課程博士候補論文を構成する論文の一部として,以下の審査委員により審査を受けた。 審査委員:松見法男(主任指導教員),深澤清治,      宮谷真人

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ベトナム人日本語学習者における日本語漢字単語の処理過程

─ 越日2言語間の使用漢字の異同と音韻類似性を操作した読み上げ課題による検討 ─

長 野 真 澄(2017年10月4日受理)

Processing of Japanese Kanji Words by Vietnamese Learners of Japanese:The Eff ect of Kanji Consistency and Phonological Similarities in a Naming Task

Masumi Nagano

Abstract: The Vietnamese language includes vocabulary derived from Chinese called Han-Viet words (từ Hán Việt), and each Chinese character (kanji) has a Vietnamese reading, which is referred to as Han-Viet sounds (âm Hán Việt). The purpose of this study was to investigate the phonological processing of Japanese kanji words by Vietnamese learners of Japanese. In the experiment, intermediate Vietnamese learners of Japanese were asked to perform a naming task. The target Japanese kanji words were selected by manipulating the kanji consistency and the phonological similarities between Vietnamese and Japanese. The results showed that participants had longer reaction times for words having both different kanji and low phonological similarity. This indicates that L2 orthographic representation has strong links to L2 phonological representation regardless of kanji consistency and that the activation of L1 phonological representation does not aff ect the processing of Japanese kanji words in a naming task. This diff ers from Chinese and Korean learners of Japanese, in which the activation of L1 phonological representation facilitates the processing of kanji words in naming.

Key words: Vietnamese learners of Japanese, kanji words, Han-Viet words, Han-Viet sounds, naming task

キーワード:ベトナム人日本語学習者,漢字単語,漢越語,漢越音,読み上げ課題

1.はじめに

 近年,日本国内におけるベトナム人日本語学習者が急増しており,2013年以降,国内における出身国別の日本語学習者数では,中国人日本語学習者に次い

広島大学大学院教育学研究科紀要 第二部 第66号 2017 165-173

で第2位の位置を占めるようになった(文化庁文化部国語課,2013)。ベトナム人日本語学習者は日本語教育の現場において,いわゆる非漢字圏学習者と見なされることが多いが,実際には,その他の非漢字圏学習者とは異なる特徴を持つ。それは,母語(native language:fi rst language とほぼ同義として以下,L1)に「漢越語(từ Hán Việt)」と呼ばれる漢語由来の語彙が数多く存在することである。ベトナムの現在の公用表記は,1910年代から急速に普及したクオック・グー(Quốc Ngữ)と呼ばれる表音文字であるが,そ

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長野 真澄

れ以前の公の文章は漢文であり,そこで用いられる漢字はベトナム独自の音で読まれた(川本,2000)。ベトナム独自の音は「漢越音(âm Hán Việt)」と呼ばれ,漢字表記が用いられなくなった現在でも,その音のみが漢越語とともに使用されている。 ベトナム人日本語学習者が漢字を学習する際,漢字に対応する漢越音を辞書やインターネットで調べる様子がしばしば見受けられる。また,彼らは未習の漢字単語について,構成漢字の漢越音を想起して意味推測を図ることもある。日本語漢字と漢越音を結び付けるものとして,過去には,常用漢字の漢越音一覧表(ド,1990)があり,最近では,日本国内のベトナム人日本語学習者の急増を受けて,彼ら向けに漢字の横に漢越音を併記した漢字教材や語彙教材の出版が相次いでいる。こうした状況の一方で,ベトナム人日本語学習者の漢字学習や漢字単語学習,また,その処理について,実証的に検討した研究は多くない。 L1で漢字表記あるいは漢語由来の語彙を使用する中国人日本語学習者や韓国人日本語学習者については,近年,漢字単語処理の研究が進められており,L1の漢字知識や漢語知識が日本語漢字単語の処理に影響を与えることが明らかにされている(e.g., 松見・費・蔡,2012;松島,2013)。では,ベトナム人日本語学習者の日本語漢字単語の処理において,L1の漢越語や漢越音の知識はどのように影響するのだろうか。本研究ではこの問題を扱う。

2.先行研究の概観

2.1 ベトナム人日本語学習者の漢越語や漢越音の知識に着目した研究  ベトナム人日本語学習者の漢越語の知識に着目した研究として,松田・タン・ゴ・金村・中平・三上(2008)と中川・小林(2008)があり,また,漢字学習における漢越音知識の利用について検討した研究として,タン(2003)が挙げられる。 松田他(2008)は,旧日本語能力試験の出題範囲にある漢字2字単語3,716語がベトナム語の翻訳同義語とどの程度使用漢字が一致しているか,について調査した。具体的には,日本語の漢字2字単語とベトナム語の翻訳同義語について,ベトナム語の翻訳同義語を漢字に置き換えた場合に,日本語単語と使用漢字が完全に一致するものと,部分的に一致するもの,そして全く一致しないものに分類し,それぞれの割合を調べた。その結果,使用漢字が完全に一致する翻訳同義語が全体の35.8%を占め,部分的に一致するものを含めると全体の50%を超すことが明らかになった。旧日本語能

力試験の級別に見ると,3級以下の語彙は一致度が低く,2級以上の語彙は一致度が高いという。このことから,松田他(2008)は,ベトナム人日本語学習者の漢越語の知識が,特に中級以上の習熟度になると日本語の語彙学習に有効に作用する可能性があることを指摘した。この指摘については実証的に検討する必要があるが,松田他(2008)は,ベトナム語と日本語(以下,越日)の翻訳同義語同士の関係性を明らかにした点で意義がある。 中川・小林(2008)は,漢越語と使用漢字が一致する日本語漢字単語について,ベトナム語と意味・用法がほぼ同じである「S(Same)語」,意味・用法にずれがある「O(Overlap)語」,意味・用法が異なる「D

(Diff erent)語」に分類し,中級以上のベトナム人日本語学習者を対象として,日本語単語の正誤判断テストを行った。その結果,「S 語」の正答率が最も高く,「O語」のうち,日本語にあってベトナム語にない用法のものが最も正答率が低かった。また,テスト後のフォローアップインタビューでは,「D 語」に関して「漢越語と関連付けて記憶していない」というコメントが多くみられた。このことから,中川・小林(2008)は,ベトナム人日本語学習者が日本語の漢字単語を学習するとき,一対一の語義対応がある場合は漢越語知識からの正の転移がみられるが,対応していない場合は負の転移か,漢越語知識を利用しない傾向がみられる,とした。 タン(2003)は,ベトナム国内の複数の大学で,日本語を学ぶ1~4年生を対象として漢字学習ストラテジーを調査した。ベトナムの日本語教育機関では,漢越音を漢字指導や漢字語彙指導に積極的に活用するところと,漢越語と日本語単語とのずれを考慮し,漢字と漢越音との対応に関する情報を積極的には導入しないところに分かれるという。しかし,調査の結果,機関の方針や教え方にかかわらず,ベトナム人日本語学習者は漢越音の知識を漢字学習に積極的に利用していることが明らかになった。具体的には,特に初級の学習を終えた2年生以上の学年において,「漢越音を記憶する」「漢越音から連想する」といったストラテジーが,

「辞書使用」や「繰り返し書く」などと並んでよく使用されていることが示された。このことから,ベトナム人日本語学習者は,ある程度のレベルになると,漢字とともに漢越音を記憶したり,漢越音から日本語漢字の音あるいは意味を連想したりする傾向があることが示唆されたといえる。 以上のことから,ベトナム人日本語学習者は,特に中級以上の習熟度になると,L1の漢越音の知識を利用しながら漢字単語学習を進める傾向があり,日本語

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ベトナム人日本語学習者における日本語漢字単語の処理過程― 越日2言語間の使用漢字の異同と音韻類似性を操作した読み上げ課題による検討 ―

単語と漢越語との関係性によっては,それに伴う転移があることがうかがえる。では,こうした学習の傾向は,ベトナム人日本語学習者の漢字単語の処理にどのような影響を与えるのだろうか。このことを検討する場合,参考にできるのが,L1に漢字語彙または漢語由来の語彙を持つ中国人日本語学習者や韓国人日本語学習者を対象とした漢字単語処理研究である。2.2 中国人日本語学習者及び韓国人日本語学習者を対象とした漢字単語処理研究  近年の中国人日本語学習者や韓国人日本語学習者を対象とした漢字単語処理研究の多くは,Kroll & Stewart(1994) の 改 訂 階 層 モ デ ル(revised hierarchical model)を理論的枠組みとして展開されている。改訂階層モデルは,バイリンガル(bilinguals)の心内辞書(mental lexicon)における表象間の関係をモデル化したものである。このモデルでは,単語の形態や音韻に関する情報が内在化する語彙表象

(lexical representation)は2言語間で分離・独立し,単語の意味情報が内在化する概念表象(conceptual representation)は2言語間で共有される,という想定のもと,各表象間の連結強度について言及される。中国人日本語学習者や韓国人日本語学習者を対象とした漢字単語処理研究では,改訂階層モデルを土台として心内辞書の仮説モデルを構築し,読み上げ課題や語彙判断課題における反応時間から,それぞれの課題特性に応じた単語の処理過程が検討されている。 中国人日本語学習者の心内辞書モデルでは,語彙表象内で形態表象(orthographic representation)と音韻表象(phonological representation)が区別されており,実験においても,中国語と日本語(以下,中日)の形態類似性と音韻類似性が操作されている。形態類似性は,中日の翻訳同義語で同じ漢字が使用されているか否かによって高低に分けられ,音韻類似性の高低は,日本語の漢字単語の音とその漢字の中国語での読み方が類似しているか否かによるものである。それらを操作した実験の結果,心内辞書において,中日で形態類似性が高い単語の形態表象は共有され(蔡・松見,2009),中日で音韻類似性の高い単語の音韻表象は,分離・独立しているが,2言語間で連結が強い(蔡・費・松見,2011)ことが示された。 蔡他(2011)は,中国人上級日本語学習者を対象に,語彙判断課題と読み上げ課題を用いて漢字単語の処理過程を検討した。語彙判断課題では,視覚呈示された文字列が有意味か否かを判断することが求められ,その反応時間には単語の形態処理から意味処理に至るまでの過程が反映される。一方,読み上げ課題では,視覚呈示された単語を声を出して読み上げることが求め

られ,その反応時間には単語の形態処理から音韻処理,さらには口頭での音声産出に至るまでの過程が反映される。実験の結果,語彙判断課題では形態類似性による促進効果が,また,読み上げ課題では音韻類似性による促進効果が,それぞれ顕著にみられた。具体的には,語彙判断課題で,形態類似性の高い単語が低い単語より反応時間が短かった。このことから,中国人上級日本語学習者においては,形態類似性の高低によって,意味処理の過程が異なることがわかる。また,読み上げ課題で,音韻類似性の効果が顕著であったことについて,蔡他(2011)は,音声出力が必要な課題特性により,音韻情報の利用程度が大きいためだと解釈した。 松見他(2012)は,中国人中級日本語学習者を対象に,蔡他(2011)と同様の手法で日本語漢字単語の処理過程を検討した。その結果,語彙判断課題と読み上げ課題の両方において,音韻類似性の促進効果がみられた。また,いずれにおいても形態類似性の効果はみられなかった。この結果と蔡他(2011)との比較から,中国人中級日本語学習者においては,日本語漢字単語が視覚呈示されると,課題にかかわらず,また,形態類似性の高低にかかわらず,中国語の音韻表象が迅速に活性化することが推察された。すなわち,習熟度がそれほど高くない中国人日本語学習者においては,日本語の音韻表象の形成度が高くないため,日本語の漢字単語を見ると,形態類似性の高低にかかわらず,まず中国語の音韻表象にアクセスすると考えられた。そこから,語彙判断課題の場合,音韻類似性の高い単語であれば,日本語の音韻表象も活性化し,中日の音韻表象から二重に意味アクセスがなされるため,音韻類似性による促進効果が生じたのであろう。また,読み上げ課題の場合は,中国語の音韻表象の活性化を経た後に,音韻類似性が高い単語であれば日本語の音韻表象も活性化し,音声出力が迅速になされるため,音韻類似性による促進効果が生じたと考えられる。 一方,韓国人日本語学習者についても,語彙表象における形態表象と音韻表象を区別した上で,材料単語の字体の異同や音韻類似性を操作した実験により,漢字単語の処理や心内辞書の表象間関係が検討されている。字体の異同とは,韓国語の翻訳同義語を韓国で使用される漢字字体(繁体字)に直した場合に,韓国語と日本語(以下,韓日)で字体が同じかどうか,である。また,ここでいう音韻類似性とは,韓日の翻訳同義語間の発音の類似性である。 松島(2013)は,初級終了以上の韓国人日本語学習者を対象として,読み上げ課題を用いて2つの実験を行った。実験1では,音韻類似性が低い単語の字体の異同を操作した結果,字体の異同による反応時間の差

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長野 真澄

はみられなかった。実験2では,字体が同じ単語の音韻類似性を操作した結果,音韻類似性による促進効果がみられた。このことから,松島(2013)は,音韻類似性が高い場合に韓日の音韻表象間の連結が強く,韓国語の音韻表象の活性化が日本語の音韻表象の活性化と音声出力を促進することを指摘した。 柳本(2016)は,韓国人上級日本語学習者を対象として,語彙判断課題による実験を行った。実験の結果,字体の一致による促進効果と音韻類似性の促進効果がともにみられた。柳本(2016)は,字体の一致による促進効果について,L1では漢字表記が使用されず,漢字の形態表象の形成度は低いと考えられることから,字体の異同によって,日本語漢字単語の形態表象と韓国語の音韻表象との連結強度が異なると解釈した。すなわち,字体の一致による促進効果がみられたのは,字体が同じ単語が字体の異なる単語よりも日本語の形態表象と韓国語の音韻表象との連結が強く,韓国語の音韻表象から概念表象へのアクセスが迅速になされたためだとした。また,音韻類似性の促進効果については,視覚呈示された日本語漢字単語の処理において,音韻類似性が高い場合は,韓国語の音韻表象の活性化を通して意味アクセスされると解釈した。 中国人日本語学習者を対象とした研究と,韓国人日本語学習者を対象とした研究とでは,単語属性の操作の仕方が異なるので単純に比較はできないが,いずれも L1の音韻表象の迅速な活性化が,視覚呈示された日本語漢字単語の処理に影響を及ぼすことが示されたといえる。

3.本研究の問題と目的

3.1 研究課題 ベトナム人日本語学習者の L1の漢越音や漢越語の知識は,日本語漢字単語の処理にどのような影響を与えるのだろうか。本研究では,視覚呈示された日本語漢字単語を読み上げる際に,その単語の漢越語との関係性や漢越音との類似性がどのように影響するかを検討することを研究課題とする。特に,中国人日本語学習者や韓国人日本語学習者における漢字単語処理との比較のため,L1の音韻表象の活性化が,日本語漢字単語の読み上げに関与するかどうか,また,関与する場合,どのように関与するか,という点に着目する。3.2 越日2言語間の形態情報と音韻情報の関係性 日本語漢字単語とベトナム語単語の形態情報の関係性については,松田他(2008)で分類されたように,日本語漢字単語の翻訳同義語であるベトナム語単語を漢字に直した場合に使用漢字が同じか否か,という点

がある。前述のように,松田他(2008)ではその関係について,完全一致から部分一致,さらに全く一致しないものまでの段階が示された。本研究ではこれに基づき,越日2言語間で使用漢字が完全に一致するものを「同形語」,全く一致しないものを「異形語」とする。 越日2言語間の音韻の関係性については,長野(2017)が越日2言語間の同形語と異形語のそれぞれにおける音韻類似性を調査した。長野(2017)は,日本語学習経験及び来日経験のないベトナム人を対象として,同形語と異形語の計220語について,日本語漢字単語を漢越音で読んだ場合に音韻が類似しているかどうかを7段階評定で判断するように求め,その平均評定値を一覧にまとめた。本研究では,その評定値に基づいて音韻類似性の高低を操作する。3.3 ベトナム人日本語学習者の心内辞書の仮説モデルと本研究の仮説 ベトナム人日本語学習者の心内辞書については研究情報が乏しいが,中国人日本語学習者や韓国人日本語学習者を対象とした研究成果から,図1のような仮説モデルが考えられる。特に,韓国人日本語学習者は,L1で漢字表記を用いず,漢語由来の単語を多く使用する点で,ベトナム人日本語学習者と共通点が多く,仮説モデルを想定する上で参考にできると考えられる。 ベトナム人日本語学習者の心内辞書においては,まず,L1で漢字表記が使用されないことから,L1の語彙表象に漢字の形態表象は存在しないだろう。また,中国人日本語学習者や韓国人日本語学習者と同様に,音韻類似性の高い単語の場合,越日の音韻表象間の連結が相互に強い可能性が考えられる(図1中央の実線の両向き矢印)。さらに,使用漢字の異同によって,日本語の形態表象とベトナム語の音韻表象の連結強度が異なると考えられる。具体的には,タン(2003)で示されたような,L1の漢越音知識を利用する漢字学習ストラテジーにより,同形語は,日本語の形態表象とベトナム語の音韻表象との連結が強い可能性がある

(図1の L2「形」から L1「音」に伸びる実線の矢印)が,異形語はベトナム語では非単語となることから,L1の音韻表象の形成度が同形語ほど高くなく,日本語の形態表象とベトナム語の音韻表象の間に同形語のように強い連結は形成されにくい(図1の L2「形」からL1「音」に伸びる点線の矢印)と考えられる。同様に,同形語の場合は,L1音韻表象から概念表象への連結は強固だと考えられるが,異形語の場合は,L1で非単語となるため,L1音韻表象から概念表象への連結は強くないと考えられる(図1で,L1「音」から概念表象に伸びる2本の矢印のうち,実線のものは同形語の場合を,また,点線のものは異形語の場合を表す)。

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ベトナム人日本語学習者における日本語漢字単語の処理過程― 越日2言語間の使用漢字の異同と音韻類似性を操作した読み上げ課題による検討 ―

 本研究では,ベトナム人日本語学習者の日本語漢字単語の処理における L1の影響を検討するために,越日2言語間の使用漢字の異同と音韻類似性を操作し,読み上げ課題による実験を行う。図1の仮説モデルをふまえると仮説は以下のようになる。仮説1 同形かつ音韻類似性が高い単語の場合,日本語の形態表象からベトナム語の音韻表象に迅速にアクセスされ,ベトナム語の音韻表象の活性化が日本語の音韻表象の活性化を促進する可能性がある。一方で,異形語の場合,ベトナム語の音韻表象へのアクセスは同形語ほど迅速ではないと考えられる。このことから,音韻類似性が高い単語においては,同形語が異形語より反応時間が短いだろう。また,音韻類似性が低い単語の場合は,ベトナム語の音韻表象の活性化は日本語の音韻処理に影響しないと考えられる。よって,同形語と異形語で反応時間の差は生じないだろう。仮説2 越日で音韻類似性の高い単語の音韻表象間の連結が強いと想定すると,同形語の場合も異形語の場合も,音韻類似性が高い場合に,ベトナム語の音韻表象の活性化が日本語の音韻表象の活性化を促進する可能性がある。その場合,同形語においても異形語においても,音韻類似性の高い単語が低い単語より反応時間が短いだろう。3.4 実験の目的 実験の目的は,ベトナム人日本語学習者が視覚呈示された日本語漢字単語を音声出力する際に,L1の知識が処理に影響するかどうかを検討することである。具体的には,越日2言語間における使用漢字の異同と音韻類似性を要因として操作し,これらの効果に関する仮説1と仮説2を検証することである。

4.方法

4.1 実験参加者  実験参加者は,ベトナム語を L1とする日本語学習

者19名(女性12名,男性7名)であった。平均年齢は20.4歳で,日本語の平均学習歴は3.8年であり,全員が日本の大学に在籍していた。また,全員が日本語能力試験 N2に合格しており,日本語の習熟度は中級程度であると判断できる。 4.2 実験計画 2×2の2要因計画を用いた。第1の要因は越日2言語間の使用漢字の異同であり,同形と異形の2水準であった。第2の要因は越日2言語間の音韻類似性であり,高低の2水準であった。2つの要因ともに実験参加者内変数であった。4.3 材料 単語材料は,国際交流基金(2002)の旧日本語能力試験2~4級の単語リストの漢字2字単語から,単語を構成する前漢字と後漢字の両方が初級から初中級にかけて導入される500字程度に収まるものに限って選定した(表1を参照のこと)。漢字の選定は,初級から初中級にかけての500字を扱っている日本語学習者向け漢字教科書を基準とした。具体的には,『Basic Kanji Book』vol.1・2(凡人社)と『ストーリーで覚える漢字』Ⅰ・Ⅱ(くろしお出版)に共通して登場する漢字のみとした。第1の要因である使用漢字の異同については,前述の松田他(2008)を参考とし,翻訳同義語同士で使用漢字が完全に一致するものを「同形語」とし,全く一致しないものを「異形語」とした。第2の要因である音韻類似性に関しては,長野(2017)に基づき,平均評定値3.0以上の単語を「音韻類似性高群」とし,平均評定値1.5以下の単語を「音韻類似性低群」とした。最終的に,「同形で音韻類似性が高い単語」,「同形で音韻類似性が低い単語」,「異形で音韻類似性が高い単語」,「異形で音韻類似性が低い単語」をそれぞれ16個選定し,計64個の単語リストを作成した。これらの単語は,松下(2011)に基づき,使用頻度が統制された。4種類の単語リストの使用頻度について,平均頻度を算出し,1要因分散分析を行った結果,主効果は有意でなく(F (3, 60) = 0.17,p = .914,η2 = .009),使用頻度は,4種類のリスト間でほぼ等質であると判断された。また,単語を構成する前漢字と後漢字の合計画数についても統制した。各リストの平均画数を算出し,1要因分散分析を行ったところ,主効果は有意ではなく(F (3, 60) = 0.68,p = .568,η2 = .033),画数もリスト間でほぼ等質であるといえる。

4.4 装置 日本語漢字単語の視覚呈示と,読み上げ課題における反応時間測定のため,パーソナルコンピュータ

(NEC PC-LL730TG)及びボイス・キーなどの周辺機

図1 ベトナム人日本語学習者の心内辞書の仮説モデル

L1 L2

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長野 真澄

器が用いられた。実験プログラムは,Super Lab 4.0(Cedrus 社製)で作成された。4.5 手続き 個別実験であった。実験参加者は,視覚呈示された日本語漢字単語をできるだけ早く正確に読み上げるように教示された。コンピュータ画面の中央に注視点が1000ms 視覚呈示され,2000ms の空白をおいて漢字単語が視覚呈示された。漢字単語の呈示時間は最大3000ms であり,呈示開始から3000ms 以内に読み上げの反応があれば,その時点で単語が消え,2000msの空白を経て次の漢字単語が視覚呈示された。漢字単語の視覚呈示開始から実験参加者が読み上げ始めるまでの時間が反応時間として計測された。1試行の流れを図2に示す。

 10試行の練習の後に本試行が行われた。本試行終了後に,実験参加者の言語学習歴や日本滞在歴に関する筆記回答式の調査及び,未知単語の有無の確認を行った。その際,実験参加者が実験材料の漢字単語を漢越音で読めるかどうかの確認も行った。

5.結果

 実験参加者19名のうち,本試行後に行った漢越音に関する筆記解答式の調査において,漢越音の知識が十分にあることが確認された13名(女性7名,男性6名)

を分析対象者とした。調査では,実験材料の漢字単語64個を漢越音で読めるかどうかを確認するために,64個の漢字単語すべてについてベトナム語表記で漢越音を記入するように求めた。その結果,6名は4~6割程度しか記入できなかったため,分析対象から外すこととした。残りの13名は8割以上の単語について漢越音を正確に記入できており,漢越音の知識が十分にあると考えられる。この13名の平均年齢は20.0歳であり,日本語の平均学習歴は3.8年であった。 分析対象は正反応時間のみであった。参加者ごとに平均正反応時間と標準偏差(SD)を求め,平均正反応時間±2.5 SD から外れたデータは全て分析の対象から除外した。また,各実験参加者の無答,誤答と日本語の未知単語,及び漢越音で読めなかった単語は分析対象から除外した。除外率は18.39%であった。 各条件における平均正反応時間と SD を表2及び図3に示す。条件別に算出した平均反応時間について,2

(使用漢字の異同)×2(音韻類似性の高低)の2要因分散分析を行った結果,使用漢字の異同の主効果は有意ではなかったが(F (1, 12) = 1.74, p = .211, η2 = .009),音韻類似性の主効果が有意であった(F (1, 12) = 7.46, p = .018, η2 = .043)。また,使用漢字×音韻類似性の交互作用が有意であった(F ( 1, 12)= 9.98, p = .008, η2 = .039)。そこで,単純主効果の検定を行った

1000ms 2000ms (3000ms)

表1 実験で使用された漢字単語の例

単語属性 日本語(漢越音読み) ベトナム語

同形語

+音意見(ý kiến) ý kiến

結果(kết quả) kết quả

-音銀行(ngân hàng) ngân hàng

会話(hội thoại) hội thoại

異形語

+音料理(liệu lý) món ăn

医者(y giả) bác sĩ

-音写真(tả chân) ảnh

荷物(hà vật) hành lí注 「+音」は音韻類似性が高いことを,「-音」は音韻類

似性が低いことを表す。

図2 実験における1試行の流れ

図3 各条件の平均正反応時間とSD

表2 各条件の平均正反応時間(ms)と誤答率(%)

単語属性 平均正反応時間 誤答率

同形語

+音 1136.32(128.31) 0.96(2.25)

-音 1138.80(128.12) 2.40(3.04)

異形語

+音 1106.63(140.63) 3.85(3.04)

-音 1221.00(139.94) 4.33(4.51)

注 ( )内はSD。「+音」は音韻類似性が高いことを,「-音」は音韻類似性が低いことを表す。

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ベトナム人日本語学習者における日本語漢字単語の処理過程― 越日2言語間の使用漢字の異同と音韻類似性を操作した読み上げ課題による検討 ―

ところ,(a)音韻類似性が低い場合に,同形語が異形語より反応時間が短いこと(F (1, 24) = 9.54, p = .005, η2 = .043),(b)異形語の場合に,音韻類似性が高い単語が低い単語より反応時間が短いこと(F (1, 24) = 16.96, p < .001, η2 = .078)がわかった。 各条件の誤答率を算出し(表2を参照のこと),逆正弦変換した値について,正反応時間と同様に2要因分散分析を行った。その結果,使用漢字の異同の主効果が有意であった(F (1, 12) =8.13, p = .014, η2 = .108)。音韻類似性の主効果と使用漢字×音韻類似性の交互作用のいずれも有意ではなかった(順に F (1, 12) =0.69, p = .421, η2 = .011 ; F (1, 12) = 0.55, p =.471, η2 =.014)。 各条件の平均正反応時間及び誤答率の結果により,反応時間が長い条件で誤答率が低い,逆に反応時間が短い条件で誤答率が高い,というトレードオフ

(trade-off )現象はみられなかった。よって,本実験の反応時間には,読み上げ課題に要する時間の相対的な長短が反映されているといえる。

6.考察

 仮説1と仮説2の検証結果をふまえて,ベトナム人日本語学習者が日本語漢字単語を読み上げる際の処理過程について考察する。 平均正反応時間において,音韻類似性が高い場合に,使用漢字の異同による効果がみられず,音韻類似性が低い場合にのみ,同形語が異形語よりも反応時間が短かった。このことから,仮説1は支持されなかったといえる。仮説1は,同形語において日本語の形態表象とベトナム語の音韻表象との連結が強いという想定に基づくものだったが,この結果から,その想定が否定されたことになる。 また,同形語の場合に音韻類似性の効果がみられず,異形語の場合にのみ音韻類似性の高い単語が低い単語より反応時間が短かったことから,仮説2は部分的に支持されたといえる。仮説2は,同形語でも異形語でも,ベトナム語の音韻表象の活性化により,日本語の音韻処理が促進されるという考えに基づくものであったが,この結果から,少なくとも同形語の場合はベトナム語の音韻表象の活性化は処理に影響しない,と解釈できる。他方,異形語の場合にのみベトナム語の音韻表象の活性化が処理に影響する,と考えるのは,表象間の連結関係に基づくと少し無理がある。 では,どのような処理過程が考えられるだろうか。まず,先に述べた交互作用の結果は,異形かつ音韻類

似性が低い単語のみが他の単語タイプに比べて反応時間が長い,とまとめることができる。すなわち,他の3つの単語タイプの読み上げの反応時間には有意な差がなかったといえる。このことから,ベトナム人日本語学習者においては,視覚呈示された漢字単語の音声出力が求められた場合に,使用漢字の異同にかかわらず,同じ処理過程をたどる可能性がある。その場合,日本語の形態表象から,ベトナム語の音韻表象を経ずに,直接日本語の音韻表象へアクセスすると考えられる。それゆえ,ベトナム語の音韻表象の活性化の影響を受ける前に音声出力がなされたと解釈できる。その中で,異形かつ音韻類似性が低い単語の反応時間が長かったことから,この単語タイプのみ,他の単語タイプに比べて,日本語の音韻表象の形成度が相対的に低く,そのために音声出力が遅れた可能性が考えられる。この単語タイプは,他の単語タイプと違い,L1単語と使用漢字が異なる上に音韻類似性も低く,他の単語タイプと異なる学習過程をたどる可能性があり,そのことが表象の形成度に影響したのではないだろうか。単語を学習する段階で,他の単語タイプは,L1単語との使用漢字の一致あるいは音韻類似性の高さが符号化や貯蔵の支えになるが,異形かつ音韻類似性が低い単語はそのような支えがない。このことから,異形かつ音韻類似性が低い単語は,他の単語タイプに比べて日本語の音韻表象の形成度の向上が遅れる可能性が考えられる。 本実験の結果から,研究課題に対する回答として,次のことがいえる。それは,ベトナム人日本語学習者が漢字単語を読み上げる際,その処理に L1の知識は無関係ではないが,中国人日本語学習者や韓国人日本語学習者における L1の知識ほどに強い影響はみられない,ということである。ベトナム人日本語学習者が漢字単語の音声出力を要求された場合,中国人日本語学習者や韓国人日本語学習者とは異なり,どの単語属性においても L1の音韻表象の活性化を経ずに処理がなされる可能性があるといえる。図1に示した仮説モデルは,表象間の連結関係について,次のような修正の必要があることが示された。すなわち,日本語の形態表象は,使用漢字の異同にかかわらず,日本語の音韻表象との連結が強い可能性が示唆された。また,日本語の形態表象からベトナム語の音韻表象への連結の有無と,越日の音韻表象間の連結強度については,現段階で明らかではない。以上の点について図1に修正を加え,読み上げ課題における入力と出力を示した心内辞書モデルを図4に示す。

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長野 真澄

7.おわりに

 本研究では,越日2言語間の使用漢字の異同と音韻類似性を操作した実験によって,ベトナム人日本語学習者における日本語漢字単語の処理過程を検討した。ベトナム人日本語学習者は,L1で漢字表記は使用しないものの,漢越語と呼ばれる漢語由来の語彙を持つ。L1で漢字表記または漢語由来の語彙を使用する中国人日本語学習者や韓国人日本語学習者と比較すると,その処理過程は大きく異なる可能性が示された。具体的には,ベトナム人日本語学習者においては,視覚呈示された日本語漢字単語を読み上げる場合,ベトナム語の音韻表象の活性化を経ずに音韻処理と音声出力がなされる可能性が示された。また,ベトナム語の翻訳同義語と使用漢字が異なり,音韻類似性も低い日本語漢字単語については音韻表象の形成度が低いことが示唆された。 本研究の意義として,これまで明確ではなかったベトナム人日本語学習者の漢字単語処理に及ぼす L1の影響について,中国人日本語学習者や韓国人日本語学習者との比較という観点から,一定の情報を提供できたことが挙げられる。今後の課題として,概念表象へのアクセスが必要となる語彙判断課題など,他の課題を用いて漢字単語の処理過程を多角的に明らかにし,ベトナム人日本語学習者の心内辞書について検討することが挙げられる。また,ベトナム人日本語学習者の漢字単語学習において,越日2言語間の使用漢字の異同と音韻類似性の高低がどのように影響するかを検討することも必要であろう。単語の処理と学習について総合的に検討することにより,ベトナム人日本語学習者の漢字単語指導に対して何らかの教育的示唆を提供することができる。

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L1 L2

???

図4 ベトナム人日本語学習者の心内辞書モデル

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ベトナム人日本語学習者における日本語漢字単語の処理過程― 越日2言語間の使用漢字の異同と音韻類似性を操作した読み上げ課題による検討 ―

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